ラン科 Orchidaceae

分類 被子植物(angiosperm)-単子葉類(Monocots) -キジカクシ目(Asparagales)
キジカクシ目はクサスギカズラ目又はアスパラガス目ともいわれる。 
分布 世界中に野生種だけで約1000属2万5000種存在し、植物界最大の科を形成している。熱帯の多湿地域に圧倒的に多く分布しているが、北極圏の寒帯まで広く世界中に分布している。日本には63属約170種が自生するといわれている。
特徴 単子葉植物の中で最も進化した科と考えられ、多様の形態を持つ。多年草、ときに短命、地上性(terrestrial)、着生(epiphytic)、岩生(lithophytic)、無機栄養生物(完全植物性autotrophic)又はまれに菌根栄養性(mycotrophic)植物(、まれによじのぼり蔓)。根茎、塊根又は根に菌根菌のある根茎をもつ。茎は仮軸性(sympodial)又は単軸性(monopodia)、普通、葉があり、ときに葉が苞のような鱗片に変わる。基部の1個又はそれ以上の節間がしばしば膨れ、偽鱗茎(pseudobulb、バルブ、偽球茎ともいう)を形成する。着生の種は気根の光合成不定根(photosynthesizing adventitious root)をもち、しばしば、1以上の死細胞の層がある。葉は1~多数、互生又はたまに対生、しばしば二列生 、ときに円柱形又は運河形(canaliculate)、無毛又はごくまれに有毛、しばしば肉質又は革質、基部はほとんど常に鞘があり、ときに関節があり(articulated)、ときに偽柄(false petiole)を形成し、全縁、先はしばしば凹形。花序は底生~側生~頂生、直立又は垂れ下がり、総状花序、穂状花序、類散形花序、円錐花序、花は1~多数つき、まれに偏側性(secund)又は二列に並ぶ。花は小~大、しばしばかなり華やか(showy)、普通、左右相称、ごくまれに放射相称、両性(ごくまれに、雌雄同株、多形性 polymorphic)、無柄又は有柄、小花柄と子房が180度ねじれ、逆向きになる(resupinate)ことがよくあり、たまに、ねじれず又は360度ねじれる。子房下位、1室、側膜胎座(又はまれに3室、中軸胎座)。胚種は小さく多数。萼片は3個、普通、離れ、ときに様々に合成し、背萼片(dorsal sepal)は2個の側萼片(lateral sepals)と異なる。側萼片はときにずい柱(column)の足につき、袋状、円錐形又は距状のあご(spurlike mentum)になる。花弁3個は分離し又はまれに部分的に萼片に合着し、萼片に似るか又は似ないで、しばしば、華やか。唇弁(しんべん lip ,labellum)は全縁、様々に浅裂又は2~3深裂し、唇弁の下半部の側裂片との間の範囲をディスク(disk)と呼び、ここに飾りが有又は無く、カルス(callus , pl. calli )、薄板=ラメラ(lamellate)、うね(ridged)、ヘアクッション又はとさかをもち、基部に距(spur)又は蜜腺が有又は無、縁は全縁~不規則に切れ込む。側花弁は2個つき、萼片とほとんど同じものが多い。雄しべと雌しべが合生して柱状になったずい柱(column)は短又は長、基部の足は有又は無、たまに、翼があり又は、先又は腹部に裂片又は腕がある。葯はほとんど1個、たまに2又は3個、ずい柱の頂部又は腹部につき、帽子状(caplike)又は縦の隙間から裂開する。花粉は普通、明瞭な花粉塊(pollinia)を形成し、離れていることは少ない。花粉塊は2、4、6、8個、粉状(mealy)、顆粒状粉状(granular-farinaceous)、ろう質(waxy)又は角状(horny)、小塊(sectile)が有又は無、無柄又は有柄(花粉塊柄 caudicle , stipe)又は1~2個の粘性のある粘着体(viscidium)につく。柱頭は3裂、中央の裂片はしばしば嘴状体(rostellum)に変わり、他の裂片は葯の後ろのずい柱の腹部の表面に埋め込まれ、又は2裂片が突き出る。果実は蒴果、まれに液果状、普通、3又は6個の隙間から横に開く。種子は非常に小さく、多数、ほこりのようであり、胚乳は無く、まれに翼がある。
栽培 観賞用に多数の改良品種が栽培されている。また、薬用にされるものも多く、熱帯で栽培されるバニラは果実を香料に用いる。
アツモリソウ属 クマガイソウ Cypripedium japonicum Thunb.
コアツモリソウ Cypripedium debile Reichb.fil.
イチヨウラン属 イチヨウラン Dactylostalix ringens Reichb. f.
イナバラン属 アリドオシラン Odontochilus japonicus (Rchb.f.) T.Yukawa
エビネ属 エビネ Calanthe discolor Lindl.
キエビネ Calanthe striata R.Br. ex Lindl.
オニノヤガラ属 オニノヤガラ Gastrodia elata Blume
ナヨテンマ Gastrodia gracilis Blume
カキラン属 カキラン Epipactis thunbergii A. Gray
キンラン属 ギンラン Cephalanthera erecta (Thunb. ex Murray) Blume
キンラン Cephalanthera falcata (Thunb.) Blume
クモキリソウ属 クモキリソウ Liparis kumokiri F.Maek.
コクラン Liparis nervosa (Thunb.) Lindl.
ジガバチソウ Liparis krameri Franch. et Savat.
クモラン属 クモラン Taeniophyllum glandulosum Blume
コケイラン属 コケイラン Oreorchis patens(Lindl.)Lindl.
サカネラン属 ヒメフタバラン Neottia japonica (Blume) Szlach.
フイリヒメフタバラン Listera japonica Blume form. albostriata (Masam.) Masam. 異分類
サギソウ属 サギソウ Pecteilis radiata (Thunb.) Raf.
シュスラン属 ミヤマウズラ Goodyera schlechtendaliana Reichb. f.
シュンラン属 シュンラン Cymbidium goeringii (Reichb. f.) Reichb. f.
シラン属  シラン Bletilla striata (Thunb.) Reichb.f.
クチベニシラン Bletilla striata 'Kutibeni'
セッコク属 セッコク Dendrobium moniliforme (L.) Sw.
ツチアケビ属 ツチアケビ Galeola septentrionalis Reichb. f.
ツレサギソウ属 オオヤマサギソウ Platanthera sachalinensis F. Schmidt
コバノトンボソウ Platanthera nipponica Makino
トンボソウ Platanthera ussuriensis (Regel et Maack) Maxim.
ノヤマトンボ Platanthera minor (Miq.) Reichb. f.
ホソバノキソチドリ Platanthera tipuloides (L.f.) Lindl.
ミズチドリ Platanthera hologlottis Maxim.
トキソウ属 トキソウ Pogonia japonica Reichb. f.
トラキチラン属 タシロラン Epipogium roseum (D.Don) Lindl.
テガタチドリ属 テガタチドリ Gymnadenia conopsea (L.) R.Br.
ニイタカヒトツバラン属 ウチョウラン Hemipilia graminifolia (Rchb.f.) Y.Tang, H.Peng et T.Yukawa
ニラバラン属 ニラバラン Microtis unifolia (G.Forst.) Rchb.f.
ネジバナ属 シロバナモジズリ Spiranthes sinensis (Pers.) Ames var. amoena (M.Bieb.) H.Hara form. albescens (Honda) Honda
ネジバナ Spiranthes sinensis (Pers.) Ames var. amoena (M.Bieb.) H.Hara
ノビネチドリ属 ノビネチドリ Neolindleya camtschatica (Cham.) Nevski
ヒスイラン属 ヒスイラン Vanda coerulea Griff. ex Lindl.
ヒトツボクロ属 ヒトツボクロ Tipularia japonica Matsum.
フウラン属 フウラン Neofinetia falcata (Thunb.) Hu
ミズトンボ属 ミズトンボ Habenaria sagittifera Reichb.f.
ムヨウラン属 ウスギムヨウラン Lecanorchis kiusiana Tuyama
エンシュウムヨウラン Lecanorchis suginoana (Tuyama) Seriz.
ヨウラクラン属 ヨウラクラン Oberonia japonica (Maxim.) Makino