オオヤマサギソウ 大山鷺草
Flora of Mikawa
ラン科 Orchidaceae ツレサギソウ属
中国名 | 高山舌唇兰 gao shan she chun lan |
学 名 | Platanthera sachalinensis F. Schmidt |
花 期 | 7~9月 |
高 さ | 25~60㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 山地の樹林下、高山草原 |
分 布 | 在来種 北海道、本州、四国、九州、台湾、ロシア |
撮 影 | 八方尾根 07.7.28 |
多年草、高さ25~60㎝。根茎は塊茎、こん棒状紡錘形、長さ1.5~6㎝×幅0.4~0.9㎝。茎は直立し、丈夫で、いくつかの筒状の鞘があり、葉は1~3個つく。葉は茎葉、互生し、間隔が広く、卵状楕円形~披針形、長さ8~15㎝×幅2.5~5㎝、基部は茎を抱き、先は鈍形。花序柄は葉状の披針形の苞を数個、散在してつける。花序軸は長さ10~30㎝、ほぼ密~密に花が10~40個つく。花の苞は、長さが子房を超え、長さ8~27㎜、披針形。花は白緑色~ほぼ白色。花柄子房(小花柄と子房)は弧状、円筒状紡錘形、長さ6~18㎜。背萼片は花弁とともにフードを形成し、狭卵形、凹面状、長さ3~3.5㎜×幅約2㎜、無毛、3脈があり、先は鈍形。側萼片は後屈または広がり、卵状披針形、かま形、長さ4~4.5(6)㎜×幅約2㎜、無毛、3脈があり、先は鈍形。花弁は長円形、斜め、長さ3~3.5㎜×幅1.5~2㎜、2脈があり、先は鈍形。唇弁は強く後屈し、広線形、長さ5~7㎜×幅1~1.2㎜、全縁、先は鈍形。ディスク(disk:唇弁の下半部の側裂片との間の範囲を)は距の口の前に長円形のカルスをもつ。距は水平方向に広がり、わずかに弧状、円筒形、長さ10~20㎜、細く、先は鈍形。ずい柱は長さ2~2.5㎜。仮雄しべは楕円形、小さく、不明瞭。葯室は平行。葯隔は狭い。花粉塊は楕円形、長い花粉塊柄(caudicle)と小さくて狭い三角形の粘着体(viscidium)がある。嘴状体は凹面、V字形。柱頭の裂片は合流し、凹面状で、前縁がわずかに突き出す。花期は7~9月。2n=42。
オオキソチドリ Platanthera ophrydioides F.Schmidt は樹林下に生え、楕円形の大きい葉を茎の中央付近に1枚つけ、小さい葉が1~2個、その上につく。花序に花が3~10(15)個と少ない。花は黄緑色、水平につき、下向きになることが多い。距は長さ6~10㎜、下垂する。
ホソバノキソチドリ Platanthera tipuloidesは全体に小型。唇弁が相対的に長く、強く後屈しない。距は長い。
コバノトンボソウは花がまばらにつき、長い距が上向きに跳ね上がる。
ツレサギソウ属
family Orchidaceae - genus Platanthera多年草、地上生、中型。根茎は、細くて這う匍匐茎、または紡錘形~卵形の塊茎からなり、肉質、ときに束生し、普通、首に数本の糸状の根がある。茎は直立または斜上し、1~数枚の葉がつく。葉は根生葉または茎葉、互生まれにほぼ対生し、楕円形、卵状楕円形、または線状披針形、基部に鞘がある。花序は頂生の総状花序、無毛。花序柄は円筒形で、1個以上の葉状の苞(鱗片葉または上部の葉ともいわれる)がある。花序軸は花が少数~多数、緩くまたは密につく。花の苞は普通、披針形、草質。花はしばしば甘い香りがあり、逆さまになり(resupinate)、白色、緑色、黄緑色、ローズピンク色、または橙色、サイズは様々。小花柄と子房は捻じれ、先がアーチ形になり、円筒形~紡錘形、無毛。背萼片は普通、花弁と輻合し、フード状になり、凹面状で、短く、縁毛があるかまたは無毛。側萼片は広がるか後屈し、背萼よりも長い、縁は縁毛があるかまたは無毛。花弁は普通、萼片よりも狭い。唇弁は広がりまたは垂れ下がり、ときに強く後屈し、全縁で、舌形、ときに基部に小さな側裂片があり、または分裂して様々な程度に房状へりがあり、普通、わずかに肉質、ときに中心が厚くなり、ときにディスク(disk)の上にカルス(callus)があり、基部に距がある。距は普通、非常に長くて糸状、または狭円筒形、まれに短く円錐形になる。ずい柱は短く、丈夫で、葯の基部に対の仮雄しべがある。葯は直立し、幅が広く、2室が平行または散開し、葯隔が目立つ。花粉塊(pollinia)は2個、小塊(sectile)が有り、こん棒形、顆粒粉状(granular-farinaceous)、それぞれに明瞭な花粉塊柄(caudicle)と裸の粘着体(viscidium)がある。嘴状体(rostellum)は三角形、基部に2個の散開するアームがある。柱頭の裂片は合流し、凹面状で、嘴状体の下にあってその下部と融着するか、嘴状体に囲まれた凸面上にあるか、またはときに、距の口の前に配置された2個の別々の隆起した裂片になる。蒴果はが直立する。英名はfringed orchid , false orchidと呼ばれる。
世界に約200種あり、ヨーロッパと北アフリカ、北温帯アジア、マレー諸島、ニューギニア、中央アメリカ、北アメリカに分布する。
ツレサギソウ属の主な種と園芸品種
1 Platanthera amabilis Koidz. ヤクシマチドリ 屋久島千鳥synonym Platanthera ophrydioides F.Schmidt var. amabilis (Koidz.) Masam.
synonym Platanthera amamiana Ohwi
synonym Platanthera pachyglossa var. amamiana (Ohwi) K.Inoue
日本固有種。九州(大隈半島、屋久島、奄美大島)に分布。林内に生える。
地下茎は伸長して長さ約2㎝。塊根は余り肥厚せず、長さ約1.5㎝×幅約 2㎜。草丈は10~25cm。葉は2~3枚つく。最下の葉は最大で、 茎の中途もしくはやや根生状に着き、強く抱茎、開出し、長楕円状披針形~卵形、葉縁は著しく波打ち、光沢のある深緑色、長さ2.5~6㎝×幅1~3㎝。上部の葉は急にもしくは漸次小さくなる。花序は花を(1~)3~6個、疎に着け、長さ(2~)3~8cm。苞は披針形。最下の苞は子房より短かいか又は同長、長さ6.5~12㎜。花は淡緑色。背萼片は狭卵形、長さ3.5~4.5(~6)㎜。側萼片は線状披針形、長さ5~7㎜。花弁は下半部が卵形、上半部が線状披針形、全体で長さ5~7㎜。唇弁は線状披針形、長さ7~9(~12)mm。距は細長く、主に水平に伸び、長さ10~16㎜×幅O.7~1.2㎜。ずい柱は長さ約3.5㎜。半葯は互いに離れ、内側に湾曲し、長さ約2.8㎜。花粉塊は柄を含めて長さ約2.5㎜。花粉塊柄は内側に湾曲し、長さ約1.6㎜。粘着体はほぼ円形で裸出。嘴状体は余り発達せず線状。柱頭は嘴状体の下で洞穴状。仮雄しべは目立たない。花期は8月。
2 Platanthera boninensis Koidz. シマツレサギソウ 島連鷺草
日本固有種。小笠原諸島固有。別名はムニンツレサギソウ、ムニンツレサギ。やや明るい林内や林縁に生える。
高さは20-50cm、茎に稜があり、葉は光沢があり、5-6個互生し、下部の2-3個が大きく、楕円形~長楕円形、光沢がある。総状花序は頂生、狭い円錐形、花を密に多数つける。花は白色。苞は披針形で花とほぼ同長。背萼片と側花弁は直立し、フード状になる。側萼片は斜め下方に開出する。唇弁は淡黄白色、舌状線形で長さ約7mm、前に突き出る。距は細く長さ約17mm、後方に突き出る。花期は2~3月。
3 Platanthera brevicalcarata Hayata ニイタカチドリ 新高千鳥 広義
3-1 Platanthera brevicalcarata Hayata subsp. brevicalcarata ニイタカチドリ 新高千鳥
日本(四国、九州、奄美大島)、韓国(済州島)、台湾原産。中国名は短距舌唇兰 duan ju she chun 。別名はツクシチドリ。針葉樹林、混合広葉樹林、草地に生える。
高さ7~20cm。根茎は細長く、這い、長さ2~6cm×直径2~5㎜、匍匐枝がある。茎は直立または上昇し、基部に1~2個の筒状の鞘があり、葉が1~2枚つく。葉は根生し、間隔が広く開き、長円形~楕円形、長さ2~6cm×幅1~3cm、基部はくさび形、先は鋭形。花序柄は細く、苞が1~4個つき、苞は葉状、披針形。花序軸は長さ3~5㎝、花が3~8個つく。花の苞は披針形、長さ7~11㎜、子房の長さとほぼ同長かまたはわずかに超える。花は白色。小花柄と子房は円筒状紡錘形、長さ7~10㎜。背咢片は花弁とともにフードを形成し、卵形~ほぼ円形、凹面状、長さ2.5~3㎜×幅2~2.3㎜、無毛、1脈があり、先は鈍形。側萼片は広がり、倒卵状楕円形、わずかに斜め、長さ4~5㎜×幅2~3㎜、無毛、1脈があり、先は鈍形。花弁は卵形、斜め、長さ2.5~3㎜×幅1.8~2㎜、1~2脈があり、先はほぼ鈍形。唇弁は後屈し、長円形、長さ4~5.5㎜×幅2~2.5㎜、全縁、先は鈍形。距は垂れ下がり、わずかに内曲し、円筒形、長さ約3㎜、先は丸い。ずい柱は短く、長さ約1.5㎜。仮雄しべは目立つ。葯室はほぼ平行。花粉塊は楕円形、細い花粉塊柄(caudicle)と球形の粘着体(viscidium)がある。嘴状体は突き出す。柱頭の裂片は合流し、わずかに隆起しており、前側の縁は葯室を超えて突き出る。花期は5~7月。
3-2 Platanthera brevicalcarata Hayata subsp. yakumontana (Masam.) Masam. ツクシチドリ 筑紫千鳥
synonym Platanthera brevicalcarata Hayata var. yakumontana (Masam.) Masam.
synonym Platanthera yakumontana Masam.鹿児島県に分布する。花序の花が2~3個と少ない。
4 Platanthera chorisiana (Cham.) Rchb.f. タカネトンボ 高嶺蜻蛉
日本(北海道、本州の中部地方以北)、ロシア、北アメリカ(アラスカ、USA)に分布。英名はChamisso's orchid。湿ったツンドラ、湿った草原や林縁、沼地に生える。
多年草、高さ4~20(~30)㎝。 葉は(1~)2(~4)枚つき、広がり、茎の基部にほぼ対性する。苞は茎の上部に(0~)1(~2)個つく。葉身は楕円形、披針形、またはほぼ円形、長さ2~9㎝×幅0.9~4㎝。穂状花序はやや緩い~密。花は不完全に逆さまになり(resupinate)、目立たず、帯緑色。側萼片は前に突き出す(porrect)。花弁は広卵形、縁は全縁。唇弁は前方に突出し、凹面状、円形、卵形、または楕円形、基部は厚くならず、長さ1.5~2.5㎜×幅1.2~2㎜、縁は全縁。距は丈夫な円筒形~袋状、先は鈍形、長さ0.7~1.25㎜。嘴状体(rostellum)の裂片は広がり、下向き、小さく、不明瞭。花粉器(pollinaria)は真っすぐ。花粉塊(pollinia)は葯室に囲まれて明瞭に残る。粘着体(viscidium)は長円形~ほぼ円状四角形。子房はかなり丈夫で、ほとんどが長さ2~4㎜。2n=42。花期は7~8月(Flora of North America)。
4-1 Platanthera chorisiana (Cham.) Rchb.f. var. chorisiana タカネトンボ 高嶺蜻蛉
花茎の高さは8-20cmと低い。葉身は円形~広楕円形、長さ2~6㎝×幅2~5㎝、先は円形。花序に花が数個~約10個。
4-2 Platanthera chorisiana (Cham.) Rchb.f. var. elata Finet ミヤケラン 三宅蘭
synonym Platanthera ditmariana Kom.
日本(北海道、本州の中部地方以北)に分布。
花茎が高さは20~40cmになる。葉は2枚が茎の中ほどに離れてつき、広楕円形~楕円形、長さ4~7㎝、先は鋭形。花数も多く花は20数個つく。
5 Platanthera convallariifolia Lindl. シロウマチドリ 白馬千鳥
synonym Platanthera hyperborea (L.) Lindl. var. viridiflora auct. non (Cham.) Kitam.
synonym Platanthera hyperborea auct. non (L.) Lindl.synonym Platanthera makinoi Y.Yabe
日本(北海道、本州の中部地方以北)、ロシアに分布する。英名はslender bog orchid , bog orchid。別名はユウバリチドリ。湿った草原に生える。 多年草、高さ20~60cm。茎はやや太く、中空、稜がある。葉は多数、互生し、長さ12cm×幅2.5cm・以下、長円状披針形、先は鋭形、茎の上部ほど小さくなる。花序は長さ20cm×幅1.7cm・以下、花が10~30個つく。花は帯緑色~黄緑色。苞は長円状披針形、下部のものは長く、上部のものは短い。背萼片は長さ5.5mm×幅3㎜・以下、広卵形、先は鈍形。側萼片は長さ6㎜以下、披針形。唇弁は線形、基部がわずかに広く、長さ8㎜×幅1.5㎜以下、先は鈍形。距は長さ5.5mm以下、円筒形、先は鈍形。蒴果は長さ1.5cm以下。2n=80(Sokolovskaya、1963)。花期は7~8月。
典型的なアジアのP.convallariifoliaは、唇弁が線形であり、距が唇弁の長さの約2/3で、こん棒形であるのが特徴。唇弁はときにわずかに披針形に変化し、距はやや嚢状になる。ずい柱はP.huronensisよりもいくらか広く見え、粘着体(viscidia)も明らかにかなり広くなる。アリューシャン列島とアラスカ半島からのいくつかの標本は、これらの花の特徴を示しているが、しかし、栄養的には、アラスカの標本の中には、葉の位置と向きが特徴的なものがある。花と栄養の特徴において、アラスカの植物はさらにP.huronensisと交雑しているように見える。アラスカの植物が本当にP.convallariifoliaかどうかは不明であり、アジアの種の状態も調査する必要がある。ここで言及されているP.convallariifoliaとアラスカの植物はどちらもP.huronensisとP.strictaの特徴を組み合わせているように見える。Platanthera convallariifoliaは、これら2種、またはP.strictaとP.dilatataの交雑によって生じた可能性があるため、識別が困難と思われる(Flora of North America)。
【アラスカのPlatanthera convallariifolia - Flora of North Americaの解説】 高さ15~27㎝。葉は少数~数個、かなり広く広がるように斜上し、茎に沿って散在するか、または一般に上部に緩く密集し、徐々に下部で苞になる。葉身は楕円状披針形~楕円状長円形、長さ4.5~12㎝×幅0.7~2.5㎝。穂状花序は中程度に密に花がつく。花は逆さまになり、派手ではなく、ときに目立つ、白緑色、おそらく唇弁はより帯黄色になる。側萼片は広がる。花弁は卵状かま形、縁は全縁。唇弁は下降し、線形~披針状線形、基部は厚くならず、長さ4~9㎜×幅1~2㎜、縁は全縁。距は細~著しくこん棒形、まれにより細く、長さ4~8㎜、先は鈍形。嘴状体の裂片は広く散開し、下向きで、わずかに角(かど)があり、非常に小さく、不明瞭。花粉器(pollinaria)は真っすぐ。花粉塊(pollinia)は葯室に囲まれるが、明らかにしばしば断片化する(fragmenting)。粘着体は長円形~長円状へら形~楕円状亜円形。子房は細くて丈夫で、ほとんどが長さ6~10㎜。花期は6月下旬~8月上旬。湿性草地、ツンドラ、沼地、沼沢地、小川の土手、海岸、水がしみ出る斜面に生育する。
6 Platanthera densa Freyn コウライチドリ 広義
朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は多叶舌唇兰 duo ye she chun lan。
6-1 Platanthera densa Freyn subsp. orientalis (Schltr.) Efimov コウライチドリ
synonym Platanthera chloranthella Nakai ex F.Maek.
synonym Platanthera metabifolia auct. non F.Maek.
synonym Platanthera chlorantha auct. non Cust. ex Rchb.
synonym Platanthera freynii Kraenzl.
7 Platanthera devolii (T.P.Lin et T.W.Hu) K.Inoue et T.P.Lin ヒビノトンボ
台湾原産。中国名は长叶舌唇兰 chang ye she chun lan。
8 Platanthera florentii Franch. et Sav. ジンバイソウ 神拝草
synonym Platanthera listeroides Takeda
日本固有種。北海道、本州、四国、九州に分布する。別名はミズモラン(水面蘭)。尾根などのやや乾いた落葉樹林内に生える。 多年草。根はひも状、長く伸びる。茎は高さ20~40㎝、単生して直立し、やや細く、緑色、縦の稜があり、茎に小型の鱗片葉が数個まばらに互生し、鱗片葉は広披針形、先が下を向く。葉は短い葉柄があり、ほぼ同形同大の2枚が根際に接近して互生し、やや対生状になり、長楕円形、長さ5~12㎝×幅3~6㎝、基部は広くさび形、縁は波状に縮れ、先は鋭形、表面に光沢がある。総状花序に花を5~10個、まばらにつける。花は淡緑色。苞は広披針形。背萼片は広卵形、長さ5~6㎜。側萼片は披針形で、背萼片より長く、長さ約10㎜、曲がる。側花弁は斜めの三角状卵形で背萼片とほぼ同長。唇弁は広線形、長さ7~10㎜、先は鈍形。距は長さ15~20㎜、下垂するか前方に曲がり、子房より長い。花期は8~9月。
9 Platanthera formosana (T.P.Lin et K.Inoue) Efimov タイワンヤマサギソウ
synonym Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. formosana T.P.Lin et K.Inoue [Flora of China]
台湾原産。中国名は宝岛舌唇兰 bao dao she chun lan。10 Platanthera fuscescens (L.) Kraenzl. ヒロハトンボソウ 広葉蜻蛉草
synonym Habenaria pugionifera W.W.Sm.
synonym Orchis fuscescens L.
synonym Perularia fuscescens (L.) Lindl.
synonym Platanthera ditmariana f. longibracteata Miyabe & Kudo
synonym Platanthera fuscescens var. orientalis Kraenzl.
synonym Platanthera herbiola Lindl.
synonym Platanthera pugionifera (W.W.Sm.) Schltr.
synonym Pseudodiphryllum chorisianum f. elata (Finet) Nevski
synonym Tulotis asiatica H.Hara
synonym Tulotis fuscescens (L.) Raf. ex Czerep.
synonym Tulotis fuscescens (L.) Czer. Addit. et Collig. [中国植物志]蜻蜓兰 qing ting lan
Kewscienceでは分布域に中国を入れているが、Flora of ChinaにはPlatanthera fuscescensの記載はない。中国植物志にはTulotis fuscescensが掲載されている。日本(北海道、本州の中部地方)、朝鮮半島、(中国)、ロシアに分布。山地の林内、林縁に生える。トンボソウに比べて葉が大きくて、広い
多年草、地上生、高さ25~50cm。根茎はやや肥厚し、横に這い、前年に延びた根茎の背から地上茎が出る。茎は直立し、中間に2~3枚の葉を互生し、その上部に鱗片が数個つく。大形の葉は楕円形~広楕円形、長さ15~20cm×幅4.5~10cm。花序に淡緑色の小さな花をやや密に多数つける。背萼片、側萼片、側花弁でかぶとをつくる。唇弁は基部で3裂し、側裂片は三角形、先は鋭形。距は円筒形、長さ7~9㎜、前方に曲がる。花期は6~8月。
【中国植物志 Tulotis fuscescens】
黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル省、河北省、山西省、山西省、甘粛省、青海省東部、山東省、河南省、四川省、雲南省北西部(徳欽)に分布。標高400~3800mの丘の中腹の森林または溝の脇に生える。朝鮮半島、ロシアのシベリア、そして日本にもある。タイプ標本は、ロシアのシベリアから収集された。
高さ20~60cm。根茎は手指のようで、肉質、細い。茎は丈夫、直立し、茎に1~2個の筒状の鞘があり、鞘の上部に葉があり、茎の下部にある2(~3)枚の葉は大きく、大きな葉は倒卵形~楕円形、直立して伸び、長さ6~15cm×幅3~7cm、先は鈍形、基部は狭くなり抱茎の鞘となり、大きな葉の上に1~数個の苞のような小葉がある。総状花序は細くて長く、多数の花を密につける。苞は狭披針形、直立して伸び、しばしば子房よりも長くんある。子房は円筒形状の紡錘形、捻じれ、わずかに曲がり、小花柄は長さ約1cm。花は小さく、黄緑色。中央の萼片(背萼片)は直立し、くぼみは舟形、卵形、長さ4㎜×幅3㎜、先は鋭形または鈍形、3脈がある。側萼片は斜めの楕円形、開き、中央の萼片よりわずかに長くて狭く、多少、後屈し、先は鈍形、3脈がある。花弁は直立し、斜めの楕円状披針形、中央の萼片と結合し、幅が2㎜未満、先は鈍形、わずかに肉質、1脈がある。唇弁は前方に伸び、多少垂れ下がり、舌状披針形、肉質、長さ4~5㎜、基部の両側に1個ずつ、小さな側裂片があり、側裂片は三角状かま形、長さ1㎜以下、先は鋭形。中裂片は舌状披針形、側裂片よりはるかに長く、長さ3~4㎜×幅1.5㎜、先に向かってわずかに先細になり、先端は鈍形。距は細く、細い円筒形、垂れ下がり、わずかに曲がり、端がわずかに太く、長さは子房とほぼ同長かわずかに長い。花期は6~8月。果期は9~10月。
11 Platanthera hologlottis Maxim. ミズチドリ 水千鳥
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は密花舌唇兰 mi hua she chun lan。別名はジャコウチドリ(麝香千鳥)。斜面の森林、谷に沿った湿った草原、山野の湿原に生える。
高さ35~85cm。根茎は長く這い、円筒形、細く、匍匐茎を出す。茎は直立し、基部に1~2個の筒状の鞘があり、葉は4~6枚つく。葉は茎葉、互生し、広い間隔でつき、線状披針形~広線形、長さ7~20cm×幅0.8~2cm、基部は茎を抱き、先は尖鋭形または鋭形。花序柄は細く、数個の披針形の苞が散在する。花序軸は長さ5~20cm、ほぼ密~密に多数の花がつく。花の苞は披針形または線状披針形、長さ10~15㎜×幅2~3㎜、長さは子房と等しくなく、先は尖鋭形。花は香りが強く、白色。小花柄と子房はわずかにアーチで、円筒状紡錘形、長さ10~13㎜。背萼片は直立し、花弁とともにフードを形成し、卵形または楕円形、舟形、長さ4~5㎜×幅3~3.5㎜、無毛、5~7脈があり、先は鈍形。側萼片は後屈し、楕円状卵形、斜め、長さ5~6(~7)㎜×幅1.5~2.5(~3)㎜、無毛、5~7脈があり、先は鈍形。花弁は卵形、斜め、長さ4~5㎜×1.5~2㎜、5脈があり、先は鈍形。唇弁は垂れ下がり、舌形~舌状披針形、長さ6~7㎜×幅2.5~3㎜、全縁、先は鈍形状円形。距は垂れ下がい、わずかに弧状、円筒形、長さ10~20㎜、子房を超え、細く、口部の近くに目立つ突起がある。ずい柱は短い。仮雄しべは目立ち、ほぼ円形。葯室は平行。葯隔は幅が広く、先はほぼ切形。花粉塊は倒卵形、長い花粉塊柄(caudicle)と披針形の粘着体(viscidium)がある。嘴状体は直立し、短い。柱頭の裂片は合流し、大きく、凹状で嘴状体の真下にある。花期は6~7月。果期は8月。2n=42。
12 Platanthera hondoensis (Ohwi) K.Inoue オオバナオオヤマサギソウ 大花大山鷺草
synonym Platanthera sachalinensis F.Schmidt var. hondoensis Ohwi
日本固有種。本州、四国、九州に分布する。山地の樹林内や草原に生える。
オオヤマサギソウによく似ていて、オオヤマサギソウの変種とされたこともある。全体的に大型、特に距の長さが長く、側萼片の長さも長い。唇弁の基部にあるカルス(肉質隆起)が不明瞭。
多年草、高さ40~70㎝。茎にいくらか稜線がある。葉は茎の下部の2個が大きく、倒卵状長円形、長さ約10㎝、基部は多少鞘状になる。花茎は長く、総状花序を頂生し、花を20~50個つける。花は逆さまになる。花は白色~淡黄緑色まで変異がある。側萼片は長さ約8㎜(オオヤマサギソウは4~4.5(6)㎜)。唇弁は下方から後方へ外曲する。距は長さ3~4㎝(オオヤマサギソウは1~2㎝)。
13 Platanthera iinumae (Makino) Makino イイヌマムカゴ 飯沼零余子
日本固有種。北海道南部、本州、四国、九州に分布する。山地の林内に生える。愛知県の絶滅危惧ⅠB類。
多年草、高さ25~40㎝。地下茎はやや肥厚し、背側に芽をつける。地上茎は直立し、高さ25~40㎝。葉は互生し、中部の2枚は大型、葉身は長楕円形、長さ8~15㎝×幅2~4㎝、先は鈍形~円形、縁がやや波打ち、基部は鞘となる。上部の葉は小さく、披針形の鱗片状になる。花は茎の上部に多数穂状につき、黄緑色、苞は線状披針形で長さ5~7㎜。背萼片は卵形、長さ1.5~2mm。側萼片は長楕円形、やや長い。側花弁は狭卵形、背萼片に接してかぶと状となる。唇弁は卵形、長さ2~3㎜、白色、基部の左右に小さい側裂片があり、先は鋭形。距は白色、楕円形、長さ1~1.5㎜。花期は7~8月。
14 Platanthera japonica (Thunb.) Lindl. ツレサギソウ 連鷺草
日本(北海道、本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国原産。中国名は舌唇兰 she chun lan。山地の草地や林内に生える。
高さ35~80cm。根茎は塊茎、円筒形~狭卵形。茎は直立し、丈夫で、基部に数個の筒状の鞘があり、葉は(3~)4~6枚つく。葉は茎葉、互生し、間隔が広く開き、楕円形~狭楕円形、長さ10~18cm×幅3~7.5cm、基部は鞘になり、先は鈍形または鋭形。花序柄は丈夫で、3~4個の葉状の披針形の苞がある。花序軸は長さ10~18cm、花が10~28個つく。花の苞は狭披針形、長さ20~45㎜、基部の苞は長さが花を超え、先は尖鋭形。花は白色。小花柄と子房は真っすぐ~わずかにアーチ状、円筒形、長さ18~25mm。背萼片は直立し、花弁とともにフードを形成し、卵形、舟形、長さ7~8㎜×幅5~6㎜、無毛、3脈があり、先は鈍形または鋭形。側萼片は後屈し、卵形、斜めで、長さ8~9㎜×幅4~5㎜、無毛、3脈があり、先は鋭形。花弁は線形、長さ6~7㎜×幅約1.5㎜、1脈があり、先は鈍形。唇弁は垂れ下がり、または広がり、線形、長さ13~15(~20)㎜、全縁、先は鈍形。距は垂れ下がり、円筒形~糸状、長さ25~60㎜、子房よりもはるかに長く、細く、先は鋭形。ずい柱は長さ1~2㎜。仮雄しべは目立つ。葯室はほぼ平行。葯隔はかなり広く、先はほぼ小凹形。花粉塊は倒卵形、細い花粉塊柄(caudicle)と線形の粘着体(viscidium)がある。嘴状体は直立し、広三角形、短い。柱頭の裂片は合流し、凹面状で、嘴状体の真下にある。花期は3~7月。果期は5~9月。2n=42。
15 Platanthera longibracteata Hayata ナガヅメトンボ
synonym Platanthera sachalinensis auct. non F.Schmidt
synonym Habenaria longibracteata (Lindl.) Hook.f.
ミャンマー原産。
16 Platanthera longicalcarata Hayata ナガバチドリ
台湾原産。中国名は长距舌唇兰 chang ju she chun lan。
17 Platanthera mandarinorum Rchb.f. ヤマサギソウ 山鷺草 広義
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は尾瓣舌唇兰 wei ban she chun lan。林内や草地に生える。
高さ10~50cm。根茎は塊茎、卵形~紡錘形、長さ3~8cm×幅0.4~0.8cm。茎は直立し、基部に2~3個の筒状の鞘があり、1~2枚の葉がつく。葉は根生葉または茎葉、互生し、狭楕円形、長円形、または線状披針形、長さ3~12cm×幅0.8~3cm、基部は茎を抱き、先は鋭形または鈍形。花序柄は細くてやや丈夫、明瞭にうねがあり、葉状の披針形の苞が数個ある。花序軸は長さ3~22cm、緩く~ほぼ密に、花が3~20個つく。花の苞は披針形~卵状披針形、長さ8~20 mm、子房の長さと同長またはそれより長い。花は淡緑黄色~緑色。小花柄と子房はアーチ状、狭紡錘形、長さ10~14㎜。背萼片は花弁と輻合せず、広卵形~心形~三角形、凹面状、長さ4~7㎜×幅3~5.5㎜、無毛、3脈があり、先は鈍形または鈍い円形。側萼片は広がるかまたは後屈し、長円状披針形~広披針形~線状披針形、斜め、長さ5~9㎜×幅1.3~3.5㎜、無毛、3脈があり、先は鋭形~尖鋭形。花弁は広がり、卵状披針形または卵状線形、斜め、長さ6~9㎜×幅3~4㎜、3脈があり、先は鋭形~鈍形。唇弁は垂れ下がり、線状披針形~舌形、長さ7~10㎜×幅1~2.5㎜、全縁、先は鈍形。距は垂れ下がるか、水平に広がるか、または上向きに湾曲し、円筒形、長さ8~30㎜、先は鈍形~鋭形。ずい柱は長さ3~4mm。仮雄しべは楕円形、目立つ。葯室は散開または平行、葯隔は幅2~3㎜、先は凹形。花粉塊は楕円形、長い花粉塊柄(caudicle)とほぼ円形の粘着体(viscidium)がある。嘴状体は広三角形。柱頭の裂片は合流し、横向きの長円形、凹面状で、嘴状体の真下にある。
17-1 Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. mandarinorum ヤマサギソウ 山鷺草
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国原産。中国名は尾瓣舌唇兰 wei ban she chun lan。林内や草地に生える。
葉は楕円形~長円形、まれに線状披針形、長さ4.5~10cm×幅0.8~2.5cm。背萼片は広卵形~心形、長さ4~4.5㎜×幅3~4㎜。側萼片は長円状披針形~広披針形、長さ5~7mm×幅(1.5~)2~3mm。距は長さ15~30mm。 葯室は散開する。花期は4~6月。
17-1-1 Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. mandarinorum var. mandarinorum ハシナガヤマサギソウ 嘴長山鷺草
synonym Platanthera mandarinorum Rchb.f. var. elongatocalcarata Koidz.
synonym Platanthera mandarinorum Rchb.f. var. macrocentron sensu Ohwi
距が長さ25~35mmと長く、後方に水平に伸びる。
17-1-2 Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. mandarinorum var. macrocentron (Franch. et Sav.) Ohwi マイサギソウ 舞鷺草
synonym Platanthera neglecta Schltr.
synonym Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. mandarinorum var. neglecta (Schltr.) F.Maek. ex K.Inoue
距が長さ11~18mmとやや長く、上向きに斜上する。17-1-3 Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. mandarinorum var. oreades (Franch. et Sav.) Koidz. ヤマサギソウ 山鷺草 (狭義)
synonym Platanthera mandarinorum Rchb.f. f. brachycentron (Franch. et Sav.) M.Hiroe
synonym Platanthera oreades Franch. et Sav.synonym Platanthera mandarinorum Rchb.f. var. brachycentron (Franch. et Sav.) Koidz. ex K.Inoue
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮に分布する。日当たりのよい草地や湿地に生える。根の一部は紡錘状に肥厚する。茎は直立し、高さは20~40cmになり、やや縦の稜がある。葉は最下部の1個が大きく、狭長楕円形~線状長楕円形で、長さ5~11㎝×幅1~1.5㎝、その上部に小さい葉が2~5個あり、披針形。頂生の総状花序に淡黄緑色の花を5~15個つける。花の苞は披針形。背萼片は卵形~広卵形、長さ3~5㎜×幅2.5~4㎜。側萼片は披針形、背萼片より長い。側花弁はかま形で背萼片より少し長く、直立する。唇弁はやや肉質、舌形、長さ10~15㎜、先細となって下垂する。距は長さ7~12㎜、後方に水平またはやや下方に伸びる。ずい柱は平ら。葯室は平行、葯隔は幅広い。花粉塊は広倒卵形、淡黄色。花期は5~7月。
17-2 Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. maximowicziana (Schltr.) K.Inoue タカネサギソウ 高嶺鷺草 広義
synonym Platanthera komarovii Schltr. subsp. maximowicziana (Schltr.) Efimov
synonym Platanthera maximowicziana Schltr. [Kewscience]日本(北海道、本州の中部地方以北)、朝鮮(済州島)に分布。高山帯の湿った草地や岩場などに生える。
高さ10~15㎝。根は一部が肥厚し、紡錘形になる。茎は直立し、高さ10~15㎝。葉は茎に互生し、最下の葉は大型で、葉身は長さ3~4㎝×幅約2㎝、狭楕円形、先は鈍形、基部は茎を抱く。葉は茎の上部ほど小さくなり、上部では披針形になる。茎の上部に穂状に花を3~10個つける。花は淡黄緑色。苞は披針形、花から突き出し、目立つ。背萼片は長さ3.5~5.5㎜、卵形。側萼片は披針形、背萼片とほぼ同長。側花弁は背萼片よりやや長く、狭卵形。唇弁は舌形、約・長さ8㎜×幅4㎜。距は下向きに曲がり、長さ10~15㎜。花期は7~8月。
17-2-1 Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. maximowicziana (Schltr.) K.Inoue var. maximowicziana (Schltr.) Ohwi タカネサギソウ
17-2-2 Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. maximowicziana (Schltr.) K.Inoue var. cornu-bovis (Nevski) Kitag. マンシュウヤマサギソウ 満州山鷺草
synonym Platanthera cornu-bovis Nevski
synonym Platanthera komarovii Schltr. [Kewscience]
日本(北海道、本州の中部地方以北、鳥取県)、朝鮮、ロシア原産。山地~深山の草地、湿原に生える。 多年草、高さ30~60㎝。根は一部が肥大し、紡錘状となる。葉は互生し、数個が茎の中間につき、長楕円形で長さ10~20㎝×幅4~7㎝、基部は茎を抱き、先は鈍形。茎上部の葉は線形で小さい。花茎の上部に花を5~10個つける。花は淡緑色~緑白色。背萼片は卵形~広卵形、長さ3.5~5.5㎜。側萼片は披針形、背萼片とほぼ同長。側花弁は長卵形、背萼片より少し長い。唇弁は舌形。距は長さ2~3㎝、普通、下に曲がる。花期は6~7月。
18 Platanthera metabifolia F.Maek. エゾチドリ 蝦夷千鳥
synonym Platanthera chlorantha auct. non Cust. ex Rchb.
synonym Platanthera bifolia auct. non (L.) Rich.
synonym Platanthera extremiorientalis Nevski
北海道、千島、樺太に分布。別名はフタバツレサギ。海岸近くの草原に生える。
多年草、高さ20~50㎝。茎は直立、基部近くの下部に大型の2枚の葉が対生状に接してつく。葉は長楕円形、長さ8~15㎝×幅3~5㎝、基部はくさび形、先は鈍形。上部の葉は次第に小さくなり、披針形。頂生の総状花序にやや大型の花を密につける。花はやや緑を帯びた白色。苞は披針形。背萼弁は卵形、長さ5~6mm。側萼片は背萼片よりも長く、斜めの卵形、横に開く。側花片は広披針形、直立する。唇弁は淡緑色を帯び、先は鈍形、長さは約1㎝、下に垂れ下がる。距は長さ2~2.5㎝、下向きに曲がり、先端はやや太くなり、直径約1㎜。花期は6~8月。
19 Platanthera minor (Miq.) Rchb.f. ノヤマトンボ 野山蜻蛉
synonym Platanthera sigeyosii Masam.
日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は小舌唇兰 xiao she chun lan。別名はオオバノトンボソウ。丘陵地の林内、草原に生える。
多年草、高さ20~60㎝。根茎は塊茎、紡錘形、細長く、長さ1.5~6×0.4~幅1.5cm。茎は直立し、丈夫で、基部に1~2つの管状の鞘があり、葉が1~2(~3)枚つく。葉は互生し、普通は間隔が広く、楕円形、卵状楕円形、または長円状披針形、長さ6~15㎝×幅2~5㎝、基部は茎を抱き、先は鋭形または鈍い円形。花序柄は丈夫で、うねがあり、2~5個の葉状の披針形の苞がある。花序軸は長さ10~18㎝、緩く、多数の花がつく。花の苞は卵状披針形、長さ8~20㎜、基部の苞の長さは花を超え、先は尖鋭形。花は黄緑色。小花柄と子房はわずかに弧状で、円筒状の紡錘形、長さ10~15㎜。背萼片は直立し、花弁とともにフードを形成し、広卵形、凹面状で、長さ4~5㎜×幅3.5~4㎜、無毛、3脈があり、先は鈍形または鋭形。側萼片は後屈し、楕円形、斜め、長さ5~6(~7)㎜×2.5~3㎜、無毛、3脈があり、先は鈍形。花弁は卵形、斜め、長さ4~5㎜×幅2~2.5㎜、2脈があり、先は鈍形。唇弁は水平に広がり~わずかに垂れ下がり、舌形、長さ5~8㎜×幅1.5~2.5㎜、全縁、先は鈍形。距は垂れ下がり、円筒形、長さ11~18㎜、先は鈍形または鋭形。ずい柱は長さ3~4㎜。仮雄しべは目立つ。葯室はわずかに散開する。葯隔は幅が広く、先は凹面状。花粉塊は倒卵形d、細い花粉塊柄(caudicle)とほぼ円形の粘着体(viscidium)がある。嘴状体は広く、短い。柱頭の裂片は合流し、凹面状で、大きく、嘴状体の真下にある。花期は5~7月。2n=42。
19-1 Platanthera minor (Miq.) Rchb.f. var. mikurensis Hid.Takah. ミクラトンボソウ 御蔵蜻蛉草
伊豆諸島の御蔵島に自生する。花が小型で距がごく短いもの。
20 Platanthera nantousylvatica T.P.Lin ナントウトンボ
synonym Platanthera nantoualpestris T.P.Lin
台湾原産。南投蜻蛉蘭 nan tou qing ling lan。
21 Platanthera nipponica Makino コバノトンボソウ 小葉の蜻蛉草 広義
日本固有種。北海道、本州、四国、九州に分布する。陽当たりのよい湿地に生える。
多年草、高さ20~40㎝。茎は単一、直立し、細く、繊細である。葉は1個つき、広線形、長さ3~7㎝×幅3~10㎜、基部は茎を抱く。茎には鱗片葉がつくが茎に添ってつくため目立たない。花はやや偏側生にまばらに5個程度つき、淡黄緑色。苞は披針形で、子房より短い。背萼片は卵形、長さ2~2.5㎜。側萼片は長楕円形、長さ約3㎜。側花弁は斜長楕円形で背萼片よりやや長い。唇弁は舌状、やや肉質、長さ2.5~4㎜。距は長さ12~18㎜、細長く、距が後ろへはね上がってつくのが特徴。ずい柱は短い。葯室は平行して接する。2n=42。花期は6~8月。
21-1 Platanthera nipponica Makino var. nipponica コバノトンボソウ 小葉の蜻蛉草
synonym Platanthera tipuloides (L.f.) Lindl. subsp. nipponica (Makino) Murata
synonym Platanthera tipuloides (L.f.) Lindl. var. nipponica (Makino) Ohwisynonym Platanthera tipuloides (L.f.) Lindl. f. nipponica (Makino) M.Hiroe
21-2 Platanthera nipponica Makino var. linearifolia (Ohwi) Masam. ナガバトンボソウ 長葉蜻蛉草synonym Platanthera linearifolia (Ohwi) Efimov
synonym Platanthera tipuloides (L.f.) Lindl. subsp. linearifolia (Ohwi) K.Inoue
synonym Platanthera tipuloides (L.f.) Lindl. var. linearifolia Ohwi鹿児島県大隈半島、屋久島に分布。
葉は線形。花序は花が数個しかつかない。花は黄緑色で距が長い。
22 Platanthera okuboi Makino ハチジョウツレサギ 八丈連鷺
日本固有種。伊豆諸島に分布する。草原に生える。
高さ約20㎝。葉は大きなものは1~3枚つき、普通2枚で、互いに接近し、やや対生状で、ロゼット状に地表に展開し、楕円形~長楕円形、厚く光沢がある。花茎は直立し、上部にやや大きい花が多数つく。花は白色。背萼片は白色、広卵形~心形であり、背萼片の側脈は3~4回分枝する。側萼片はやや鎌状に歪んだ長楕円状披針形で開出する。花弁ば歪んだ線状披針形~長楕円状披針形であり、基部に3脈があり上部で分枝する。花の若い時期には背萼片と花弁はかぶと状であるが、成熟すると背萼片は軽く外曲し、花弁と背萼片はやや直交するような位置になる。唇弁は広線形~舌状、側脈は何回も分枝を繰り返す。距は長さ30~45㎜であり、普通、水平に位置し、ほぼ真直ぐである。葯隔は広いが、前方に腕曲しているため、2つの葯室は接近している。仮雄しべは良く発達して目立つ。花期は5月。
23 Platanthera ophrydioides F.Schmidt オオキソチドリ 大木曽千鳥
synonym Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. ophrydioides (F.Schmidt) K.Inoue
北海道、本州、四国、南千島、サハリンに分布する。亜高山帯の針葉樹林内、林縁、湿原に生育する。多年草、紡錘状の塊根から花茎を伸ばし、高さ15~40㎝。茎には稜線がある。茎の中央付近に大きい葉を1枚つけ、上部に小さい葉(葉状の苞、鱗片葉)が1~2枚つく。大きい葉は楕円形で長さ3~6㎝×幅2~4㎝、基部は茎を抱く。頂生の総状花序にまばらに花を3~10(15)個つける。花は淡緑色、直径約1㎝。背萼片は広卵形、約・長さ5㎜×幅4㎜。側萼片は線形で左右に開き、背萼片より長い。側花弁は斜めの卵形、斜上し、ずい柱を囲む。唇弁は広線形、長さ6~8㎜。距は細い円筒状、長さ6~10㎜、下垂する。近縁のミヤマチドリP. takedae Makinoはよく似ているが、距が短く、長さ4㎜以下である。花期は7~8月。
23-1 Platanthera ophrydioides F.Schmidt var. ophrydioides オオキソチドリ 大木曽千鳥
synonym Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. ophrydioides (F.Schmidt) K.Inoue var. ophrydioides (F.Schmidt) Finet
北海道、本州の東北地方および中部地方の日本海側、南千島、サハリンに分布する。別名はミチノクチドリ。亜高山帯の林内に生育する。茎は高さ30~50㎝、やや繊細で稜がある。葉は2~3個つき、最下の葉が最も大きい。花は5~15個つき、淡緑色。唇弁は広線形、長さ6~8mm。距は長さ6~10㎜。
23-2 Platanthera ophrydioides F.Schmidt var. australis Ohwi ナガバノキソチドリ 長葉の木曽千鳥
synonym Platanthera ophrydioides F.Schmidt f. australis (Ohwi) Makino
synonym Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. ophrydioides (F.Schmidt) K.Inoue var. monophylla (Honda) K.Inoue f. australis (Ohwi) K.Inoue
本州の中部地方から紀伊半島、四国、九州に分布する。南西日本型。葉が細く、線状狭楕円形~広線形。
23-3 Platanthera ophrydioides F.Schmidt var. monophylla Honda ヒトツバキソチドリ 一葉木曽千鳥
synonym Platanthera ophrydioides F.Schmidt f. monophylla (Honda) Makino
synonym Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. ophrydioides (F.Schmidt) K.Inoue var. monophylla (Honda) K.Inoue
本州の関東地方から東海地方の太平洋側に分布するもの。別名はキソチドリ。亜高山帯の針葉樹林下に生える。茎は高さ15~30㎝。葉は1個。下部につく葉が1個で、基本種より小さい。
24 Platanthera pachyglossa Hayata リトウトンボ 広義
synonym Platanthera mandarinorum subsp. pachyglossa (Hayata) T. P. Lin & K. Inoue [Flora of China]
台湾分布。中国名は厚唇舌唇兰 hou chun she chun lan。葉は長円形~披針形、長さ5~12㎝×幅2~3㎝。 背萼片は広卵形、長さ5~6mm×幅4.5~5.5㎜。側萼片は長円形、斜め、長さ7~9mm×幅3~3.5mm。距は長さ8~15mm。葯室は平行。花期は6~8月。
24-1 Platanthera pachyglossa Hayata var. pachyglossa リトウトンボ
synonym Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. pachyglossa (Hayata) T.P.Lin et K.Inoue
synonym Platanthera angustata auct. non (Blume) Lindl.24-2 Platanthera pachyglossa Hayata var. amamiana (Ohwi) K.Inoue アマミトンボ 奄美蜻蛉
synonym Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. hachijoensis (Honda) Murata var. amamiana (Ohwi) K.Inoue
synonym Platanthera amamiana Ohwisynonym Platanthera angustata auct. non (Blume) Lindl.
synonym Platanthera amabilis Koidz. [Kewscience]
Kewscienceなどではヤクシマチドリ (Platanthera amabilis Koidz.)のsynonymとされている。
奄美大島固有種。屋久島でも確認されている。別名はアマミトンボソウ。山地の林緑や水はけのよい草地に生える。
ハチジョウチドリの変種として扱われることもある。ハチジョウチドリの花と殆ど変わらない。苞が花柄子房(小花柄+子房)とほぼ同長なのに対し、ハチジョウチドリは苞が花柄子房より長い。唇弁にアマミトンボは3本の脈があり、ハチジョウチドリは5脈。
多年草。茎は高さ10~15㎝、稜がある。地下には紡錘形の塊茎がある。茎の中間以下に2~3枚の葉をつける。葉は楕円形~狭長楕円形、長さ5~8㎝、基部は茎を抱き、縁は波打たない。頂生の総状花序は長さ5~8㎝、花を密につける。苞が花柄子房(小花柄+子房)とほぼ同長。花は黄緑色。唇弁に3脈がある。距は長くやや垂れ下がる。花期は3~5月。
24-3 Platanthera pachyglossa Hayata var. hachijoensis (Honda) K.Inoue ハチジョウチドリ 八丈千鳥
synonym Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. hachijoensis (Honda) Murata var. masamunei K.Inoue ヤクシマトンボ(アマミトンボモドキ)
synonym Platanthera hachijoensis Honda [Kewscience]synonym Platanthera mandarinorum Rchb.f. var. hachijoensis (Honda) Ohwi
synonym Platanthera ophrydioides F.Schmidt var. hachijoensis (Honda) F.Maek.
synonym Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. hachijoensis (Honda) Murata
日本固有種。伊豆七島に分布する。山地の草地や林縁に生える。Kewscienceでは独立種としている。多年草。高さ15~30cmの多年草。大きな葉は 1枚で,茎の下部にあり、卵形,長さ約6cm×幅4~4.5cm、光沢があり、厚く、基部は茎を抱黄、先は鋭形。その上部の葉は間隔をおいて付き、次第に小さくなる。花茎は直立し、頂生の総状花序に淡黄緑色の花を多数つける。苞が花柄子房(小花柄+子房)より長い。背萼片は黄緑色、狭卵形、側脈は殆ど分枝なし。側萼片は広線形、強く反り返る。花弁は歪んだ卵状三角形で先端が細長になり伸長し、基部に普通 2脈があり、脈が上部で少数分枝する。背萼片はフード状で、花弁は先端が外へ伸長する。唇弁は狭三角形、側脈は基部で 1回分枝するだけである。距は長さ10~18㎜、普通、下方に強く腕曲する。葯隔は広く、葯室は互いに離れ、ほぼ平行である。花期は5~6月。
25 Platanthera peichatieniana S.S.Ying
台湾原産。中国名は北插天山舌唇兰 bei cha tian shan she chun lan。
26 Platanthera sachalinensis F.Schmidt オオヤマサギソウ 大山鷺草
日本(北海道、本州、四国、九州)、台湾、ロシア原産。中国名は高山舌唇兰 gao shan she chun lan。山地の樹林下、高山草原に生える。
多年草、高さ25~60㎝。根茎は塊茎、こん棒状紡錘形、長さ1.5~6㎝×幅0.4~0.9㎝。茎は直立し、丈夫で、いくつかの筒状の鞘があり、葉は1~3個つく。葉は茎葉、互生し、間隔が広く、卵状楕円形~披針形、長さ8~15㎝×幅2.5~5㎝、基部は茎を抱き、先は鈍形。花序柄は葉状の披針形の苞を数個、散在してつける。花序軸は長さ10~30㎝、ほぼ密~密に花が10~40個つく。花の苞は、長さが子房を超え、長さ8~27㎜、披針形。花は白緑色~ほぼ白色。小花柄と子房は弧状、円筒状紡錘形、長さ6~18㎜。背萼片は花弁とともにフードを形成し、狭卵形、凹面状、長さ3~3.5㎜×幅約2㎜、無毛、3脈があり、先は鈍形。側萼片は後屈または広がり、卵状披針形、かま形、長さ4~4.5(6)㎜×幅約2㎜、無毛、3脈があり、先は鈍形。花弁は長円形、斜め、長さ3~3.5㎜×幅1.5~2㎜、2脈があり、先は鈍形。唇弁は強く後屈し、広線形、長さ5~7㎜×幅1~1.2㎜、全縁、先は鈍形。ディスク(disk:唇弁の下半部の側裂片との間の範囲を)は距の口の前に長円形のカルスをもつ。距は水平方向に広がり、わずかに弧状、円筒形、長さ10~20㎜、細く、先は鈍形。ずい柱は長さ2~2.5㎜。仮雄しべは楕円形、小さく、不明瞭。葯室は平行。葯隔は狭い。花粉塊は楕円形、長い花粉塊柄(caudicle)と小さくて狭い三角形の粘着体(viscidium)がある。嘴状体は凹面、V字形。柱頭の裂片は合流し、凹面状で、前縁がわずかに突き出す。花期は7~9月。2n=42。
27 Platanthera sonoharae Masam. クニガミトンボソウ 国頭蜻蛉草
沖縄島,西表島、台湾に分布する。別名はソノハラトンボ。山地の渓流沿いの岩上、湿った草地に生える。和名は沖縄の国頭村で発見されたことによる。
多年草、高さ15~25㎝。地中に紡錘形の塊根がある。茎の下部に細くて長い葉を1~2枚つけ、上部では鞘状になり小さくなる。葉は披針形、長さ10~13㎝×幅約1㎝、基部には鞘があるかまたは茎を抱き、先は鋭形。総状花序は頂生、長さ約12㎝、花が5~15個つく。花は黄緑色~緑白色。苞は披針形、長さ約12㎜。側萼片は縁が内巻きし、開出する。花弁は斜めの卵状披針形、長さ1.8mm。背萼片と花弁はかぶと状になる。唇弁は長楕円形、長さ2.5㎜、3裂し、中裂片は先が鈍形。花期は9~11月。
28 Platanthera stenoglossa Hayata タイトントンボソウ 広義
日本(沖縄)、台湾、ネパール原産。中国名は 狭瓣舌唇兰 xia ban she chun lan。広葉樹林内、林縁、湿った岩上に生える。
高さ12~40㎝。根茎は塊茎、紡錘状、長さ2~5㎝×幅0.4~0.7㎝。茎は直立または上昇し、基部に筒状の鞘があり、葉が1枚つく。葉は根生葉、広楕円形~卵状楕円形、長さ3~15㎝×幅2~6㎝、基部は茎を抱き、先は鋭形または鈍形。花序柄はうねがあり、苞が1~3個の散在し、苞は小さく、鱗片状(非葉状)、披針形。花序軸は長さ5~15㎝、緩く、花が5~10個つく。花の苞は披針形~卵状披針形、長さ6~13㎜、子房より短い。花は淡黄緑色~緑色。小花柄と子房は弓なり、紡錘形、長さ8~16mm。背萼片は他の萼片と輻合せず、卵形、凹面状、長さ4~5㎜×幅2~4㎜、無毛、1脈があり、先は鋭形。側萼片は強く後屈し、線形で、長さ6~7㎜×幅0.8~1.5mmm、無毛、1脈があり、先は鈍形。花弁は直立し、広がり、三角形~卵状披針形、斜め、長さ4.5~6㎜×幅3~4㎜、2脈があり、先は鋭形。唇弁は線状披針形、長さ7~8㎜×幅2~2.5㎜、肉質、全縁、先は鈍形。距は水平に広がり、またはわずかに垂れ下がり、円筒形、長さ12~18㎜、細く、先は鈍形。ずい柱は長さ2.5~3㎜。仮雄しべは目立ち、楕円形。葯室はほぼ平行。葯隔は幅が広く、凹面。花粉塊は卵形で、細い花粉塊柄(caudicle)と円形の粘着体(viscidium)がある。嘴状体(rostellum)はわずかにアーチ形で、凹面状。柱頭の裂片は合流し、横向きに長円形。蒴果は直立し、紡錘形。花期は3~5月。
28-1 Platanthera stenoglossa Hayata subsp. stenoglossa タイトントンボソウ
synonym Platanthera chingshuishania S.S.Ying
synonym Platanthera stenosepala Schltr.
28-2 Platanthera stenoglossa Hayata subsp. hottae K.Inoue ソハヤキトンボソウ
本州の紀伊半島、九州に分布する。渓流沿いの岩壁に生える。
茎は高さ15~25cm、葉は1~2個が茎の下部につき、上側の1個は苞状になる。花は4~12個をまばらにつき、淡黄緑色。最下部の苞は長さ8~19㎜、イリオモテトンボソウと比べ苞が花柄子房(小花柄と子房)より長い。唇弁は舌形、長さ7~8㎜。距は長さ10~15㎜。
28-3 Platanthera stenoglossa Hayata subsp. iriomotensis (Masam.) K.Inoue イリオモテトンボソウ
synonym Platanthera stenosepala auct. non Schltr.
synonym Platanthera iriomotensis Masam.
西表島固有の亜種。川沿いの崖地、まれに海岸の崖地に生える。
茎は高さ約20cm、葉は1枚、茎の基部につく。葉は網状脈が濃緑色。花はまばらに5~13個つき、淡緑色。苞は長さ3~10mm、花柄子房(小花柄と子房)より短い。唇弁は狭三角形、長さ5.5~6.5㎜。距は長さ約11㎜。
29 Platanthera taiwanensis (S.S.Ying) S.C.Chen, S.W.Gale et P.J.Cribb
台湾原産。中国名は台湾舌唇兰 tai wan she chun lan。
30 Platanthera takedae Makino ミヤマチドリ 広義
30-1 Platanthera takedae Makino subsp. takedae ミヤマチドリ 深山千鳥
synonym Platanthera ophrydioides F.Schmidt var. takedae (Makino) Ohwi
synonym Platanthera ophrydioides F.Schmidt subsp. takedae (Makino) Soó
日本固有種。北海道~本州(中部地方以北)に分布する。別名はニッコウチドリ。亜高山帯の針葉樹林下に生える。茎は高さ10~25㎝、紡錘状に肥厚する根から出て、4稜があり、稜に膜状のうねがある。葉は最下のものが特に大きく、広楕円形、先は鈍形、長さ5~7㎝×幅2.5~3㎝、基部は茎を抱く。上部の葉は次第に小さくなり、披針形。花は花序に5~15個つき、黄緑色。花の苞は披針形、普通、花よりやや長い。背萼片は広卵形、長さ5~6㎜×幅4~5㎜。側萼片は線形、背萼片より長い。側花弁は斜めの卵形、長さは背萼片とほぼ同長。唇弁は舌形、背萼片よりやや長い。距はとくに短く、長さ1~2mm、円錐形。ずい柱は扁平。葯室は平行。花粉塊はこん棒形、細い花粉塊柄の先に粘着体がつく。花期は7~8月。
30-2 Platanthera takedae Makino subsp. uzenensis (Ohwi) K.Inoue ガッサンチドリ 月山千鳥
synonym Platanthera ophrydioides F.Schmidt var. uzenensis Ohwi
synonym Platanthera uzenensis (Ohwi) F.Maek.
日本固有種。北海道、本州の中部地方以北に分布する。日本海側の高山の林縁や草原に生える。距が短いのが特徴。
茎は高さ20~30㎝、ときに40㎝に達する。葉は普通、3~5枚が互生し、最下の葉が最も大きく、葉身は卵形~広楕円形、長さ5~7㎝、その上部の葉は次第に小さくなる。総状花序に花が約10個つく。花は黄緑色~淡黄緑色。小花柄と子房の基部に葉状の苞がつき、苞は披針形、普通、花から突き出る。側花弁は背萼片とともにかぶとを形成するか、または背萼片とわずかに離れる。唇弁は長さ3~4mm。距は肉質で太く短く、長さ2.5~4mm、楕円形、基部がくびれる。花期は7~8月。
31 Platanthera tipuloides (L.f.) Lindl. ホソバノキソチドリ 細葉の木曽千鳥
synonym Platanthera tipuloides (L.f.) Lindl. subsp. tipuloides var. sororia (Schltr.) Soó
北海道、本州の中部地方以北、千島列島に分布する。中国名は筒距舌唇兰 tong ju she chun lan。亜高山帯の日当たりのよい草地に生える。別名はツブラトンボソウ。
多年草、高さ20~40cm。根茎は塊茎、細い紡錘形~円筒形、長く、長さ3.5~5㎝×幅0.3~0.6㎝。茎は細く、基部に筒状の鞘があり、葉が1枚つく。葉は長円状楕円形、長さ5~11㎝×幅0.8~2㎝、基部は抱茎、先は鈍形。花序柄は細く、葉状の卵状披針形の苞が2~3個ある。花序軸は長さ6~12㎝、まばらに10~20個の花がつく。花の苞は狭披針形、長さ12~15㎜、基部の苞は長く、子房を超える。花は黄緑色。小花柄と子房は円筒形、長さ9~12㎜、細い。背萼片は直立し、花弁とともにフードを形成し、広卵形、舟形、長さ2.5~3㎜×幅2~2.5㎜、無毛、3脈があり、先は鈍形。側萼片は後屈し、狭楕円形[卵形]で、長さ3~3.5㎜[2~3㎜]×幅1.2~1.3㎜、無毛、3脈があり、先は鈍形。花弁は直立し、卵形~狭卵形[長円形]、斜めになり、長さ2.5~3㎜×幅1~1.5㎜m、わずかに肉質、1脈があり、先は鈍形。唇弁は水平に広がり~垂れ下がり、広線形、長さ5~6㎜×幅1.2~1.5㎜、全縁、先は鈍形。距はわずかに垂れ下がり、ときに内曲し、円筒形、長さ12~17㎜、細く、先は鈍形。ずい柱は長さ約1.5㎜。葯室はほぼ平行。葯隔はわずかに凹状。花粉塊は倒卵形、短い花粉塊柄とほぼ円形の粘着体がある。嘴状体はかなり小さい。柱頭の裂片は合流し、凹面状で、嘴状体の真下にある。花期は5~7月[7~8月]。2n=42。(Flora of Chinaにより[]内は通常の日本の図鑑の数値)
32 Platanthera ussuriensis (Regel et Maack) Maxim. トンボソウ 蜻蛉草
synonym Tulotis ussuriensis (Regel) Hara
synonym Platanthera tipuloides var. ussuriensis Regel
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は东亚舌唇兰 dong ya she chun lan。湿った林内や林縁、峡谷に沿った日陰の場所に生える。
多年草、高さ20~55㎝。根茎は這い、長さ2~4㎝、細く、匍匐枝を出す。茎は直立し、細く、基部に1~2個の筒状の鞘があり、葉が2~3枚つく。葉は茎葉、つく間隔が広く、へら形~狭長円形、長さ6~14㎝×幅1.2~2.5(~3)㎝、基部は抱茎、先は鈍形または鋭形。花序柄は細く、1~数個の小さな披針形の苞がある。花序軸は長さ6~10㎝、緩く、花が10~20個つく。花の苞は狭披針形、長さ8~11㎜、先は尖鋭形。花は淡黄緑色。小花柄と子房は円筒形、長さ8~9mm。背萼片は直立し、花弁がフード状になり、広卵形、凹面で、長さ2.5~3㎜×幅2~2.5 mm、無毛、3脈があり、先は鈍形。側萼片は広がるかまたは後屈し、狭楕円形、わずかに斜め、約・長さ3㎜×幅1㎜、無毛、3脈があり、先は鈍形。花弁は狭長円状披針形、長さ2.5~3㎜×幅約1㎜、わずかに肉質、1脈があり、先は鈍形またはほぼ切形。唇弁は垂れ下がり、わずかに後屈し、狭舌状披針形、約・長さ4㎜×幅1㎜、基部に小さな側裂片があり、先は鈍形。基部の裂片はほぼ円形、先は円形。中裂片は舌状披針形または舌形、先は鈍形。距は垂れ下がり、わずかに内曲し、円筒形、長さ4~5㎜、子房より短く、細く、先は鋭形。花期は7~8月。果期は9~10月。2n=42。
33 Platanthera yangmeiensis T.P.Lin
台湾原産。中国名は阴生舌唇兰 yin sheng she chun lan。
34 ハイブリッド
(1) Platanthera x inouei Efimov
マンシュウヤマサギソウ×ホソバノキソチドリ
(2) Platanthera x okubohachijoensis K.Inoue ハチジョウアイノコチドリ
ハチジョウツレサギ×ハチジョウチドリ
(3) Platanthera x ophryotipuloides K.Inoue キソチドリモドキ
ホソバノキソチドリ×キソチドリ
参考
1) Flora of ChinaPlatanthera
Platanthera
Platanthera
Platanthera
Platanthera
ヤクシマチドリについて(井上健)
井上 健 ラン科ツレサギソウ属の推定自然雑種 2種
静岡県のラン科植物 杉本順一