ナヨテンマ 弱天麻

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Flora of Mikawa

ラン科 Orchidaceae オニノヤガラ属

中国名 细天麻 xi tian ma、山赤箭 shan chi jian
学 名 Gastrodia gracilis Blume
 synonym Gastrodia dioscoreirhiza Hayata

 synonym Gastrodia taiwaniana Fukuyama.イモネヤガラ(タイワンアケヤガラ)

ナヨテンマの蕾
ナヨテンマの花
ナヨテンマの花内部
ナヨテンマの果実
ナヨテンマの茎の鞘
ナヨテンマ
ナヨテンマ花序
ナヨテンマ花序と茎
花 期 (5~)6~7月
高 さ 10~60㎝
生活型 多年草
生育場所 常緑広葉樹林やスギやヒノキ植林の林床などの林内
分 布 在来種  日本(本州の千葉県・神奈川県・伊豆諸島・愛知県、静岡県・広島県、四国、九州)、台湾原産
撮 影 豊川市 24.6.14(花)
    24.6.24(果実)
ナヨテンマはラン科オニノヤガラ属の多年草。地上生、葉が無く、炭素源を根状組織に内生する共生菌に依存する全菌栄養性(holomycotrophic)植物。花後には蒴果が多数の細かい種子を放出し、糸状の匍匐茎を数本出し、広がる。愛知県の絶滅危惧ⅠA類に指定されている。
 ナヨテンマは多年草、高さ10~60㎝。根茎は褐色、円筒形または円錐形、長さ3~10㎝×直径0.3~2㎝、肉質、直軟毛がある。花序柄は淡黄色、長さ50cm以下、基部に数個[4~5個]の鱗片が散在する。花序軸は長さ3~10㎝、密に花が3~20[5~15]個つく。花の苞は卵形または楕円形、長さ2~4[2.5~3]㎜。花はうなずき、逆さに向き、黄褐色、唇弁は先が橙赤色に染まる。小花柄[4~7mm]と子房は長さ8~15㎜、小花柄は果時に15㎝[5㎝]までに伸びる。花被筒はつぼ形、長さ8~11[6~7]㎜×幅5~7㎜、側萼片との間に深い切れ込みがあり、基部が膨らみ、外面は平滑。萼片の自由な部分は卵形、長さ約2㎜、先は円形で普通3裂する。側花弁2個の自由部分は卵形、萼片よりはるかに短い。唇弁は赤橙色、単純、卵状三角形[三角形]、長さ5~6㎜、基部に爪部があり、縁は波打ち、先は鈍形。爪部は楕円形または亜球形のカルスの対をもつ。唇弁のディスク(disk)には2個の縦の薄膜(lamellae)をもち、わずかにパピラがある。ずい柱は長さ5~6㎜、先に対の半月形の翼をもつ。ずい柱の足は明瞭。葯は円形、長さ約1mm。蒴果は倒卵形または楕円形、長さ20~23mm×幅7~8mm。花期は5~6月[花期は6~7月]。2n=22。(Flora of China, [ ]はレッドデータブックあいち2020))
【津山尚:日本産オニノヤガラ属雑記 (2)の解説】
 腐生性。根茎は毛状または稀に無毛で、普通は退化した鱗片を持ち、長さ3.0~11.0㎝以上。長さ0.3~0.9㎝。茎は直立して細く、長さ10.5~61㎝、4~9個の膜状の基部鞘が緩く並ぶ。総状花序はやや短く、長さ0.5~3.7㎝で、やや密集して3~11個あり、稀に20個を超える花がつく。花は水平にうなだれるか、またはやや垂れ下がり、鐘形、淡褐色、子房を除いて長さ約10㎜、苞は小花柄よりかなり短く、卵形または楕円状卵形、鈍形、長さ2.0~4.0㎜。小花柄は子房より長く、細く、長さ3,0~5.5㎜、糸状で長さ5~15mm、直径0.3~0.5mm、最下端が最も長く太く、花後に急速に伸長して太くなり、成熟した果実では長さ1.1~2.3cm、直径0.5~1.0mmに達する。萼片筒部は下側の基部がわずかに膨らみ、口部で3裂し、下側の窪みは最も深く、筒部全長の1/4~1/3に達する。萼片はほぼ等形で、非常に鈍形、縁が不規則にわずかに波打ち、先端は尖端化し、3脈がある。脈は上方へほとんど分岐せず、萼片の先端から背側の中脈に沿って短い距離にやや疣がある(verruculose)。(側)花弁は非常に小さく、萼片筒(花被筒)の頂部下方に付く。萼片だけで筒状になる場合もあれば、花弁の基部がはさまって筒状になる場合もある。花弁は小卵形でわずかに不均等で下方に湾曲し、縁は波打つ。唇弁は唇弁基部(hypochile)を除いて長さ約6㎜、広卵形で先は尖頭形で鈍形、唇弁頂端(epichile)は縁全体が上下に強く微細に波打ち、特に中間部が強く、先端から下方に2枚の顕著な薄膜(lamellae)があり下方に走って小さくなり、5脈がある。唇弁基部(hypochile)は線形、わずかに内側に曲がり、中央部両側に直径0.8mmの球形の疣のあるカルスがある。ずい柱は真っ直ぐで前方両側に狭く翼があり、基部近くにU字形の窪み(柱頭)がある。子房は長さ3mmのこま形、基部は漸尖する。蒴果は広楕円形、長さ約1.5㎝、押したときの厚さ約0.5㎝。花茎は非常にもろく、軽く触れただけでも簡単に折れてしまう。この傾向は蕾のときにはさらに強い。この植物は、自然環境では、通常、3~5 株の群れで、または単独で生育している。6月27日から29日にかけて満開となり、7月10日には蒴果が完全に成熟し、細かい種子を放出しているのが観察される。花の後、母塊茎の上部近くから糸状の匍匐茎が数本出てくる。この事実は、H. Burgeff が1932年に著した「Saprophytismus und Symbiose」でこの属の他の種について述べたこととよく一致する。