クモキリソウ 雲切草

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Flora of Mikawa

ラン科 Orchidaceae クモキリソウ属

学 名 Liparis kumokiri F.Maek.
クモキリソウの花序
クモキリソウの花
クモキリソウの花2
クモキリソウ葉縁
クモキリソウ
クモキリソウ葉
花 期 6~8月
高 さ 10~20㎝
生活型 多年草
生育場所 林内
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、沖縄、朝鮮、ロシア
撮 影 津具村木地師住居跡  03.7.5
偽球茎は卵形、普通、葉が2個つく。葉は長さ5~12㎝、幅2.5~5㎝の卵状楕円形、縁は細かく波打つ。総状花序に5~15個の花をつける。花は淡緑色、まれに淡紫褐色~黒褐色。萼片は長さ6~7㎜、内巻きして細い。側花弁2個は長さ6~7㎜の狭線形。唇弁は長さ5~6㎜、幅が広く、先が巻き込む。蕊柱は長さ約3㎜、上端に狭い翼がある。2n=30。
 ジガバチソウ Liparis krameri は葉の根元があまり立ち上がらなく、葉に網状の脈が見える。唇弁の幅も狭い。
 コクラン Liparis nervosa は世界に広く分布し、唇弁が長さ6~6.5㎜、幅4.5~5㎜、暗紫色、中央が凹み、反り返る。
 スズムシソウLiparis makinoana は日本、朝鮮、ロシアに分布し、唇弁が長さ12~18㎜と大きく、幅も広く、先が巻き込まない。台湾に分布するLiparis elongataは中国名は宝岛羊耳蒜(bao dao yang er suan) といいスズムシソウと同一ではないかともいわれている。
 セイタカスズムシソウ Liparis campylostalix Reichb= Liparis japonica は日本、朝鮮、中国、ロシアに分布し、スズムシソウに似て、草丈が高い。唇弁は長さ5~6㎜、幅3~3.5㎜、の先が巻き込まない。中国名は羊耳蒜(yang er suan) 。

クモキリソウ属

  family Orchidaceae - genus Liparis

 地上生(terrestrial)、岩生(lithophytic)、または着生(epiphytic)であり、根茎があり、まれに菌栄養性(mycotrophic)で葉は、縮小~鱗片状になる。茎は偽鱗茎(pseudobulbous)があり、ときに多数の節となり、肉質、束生または束生せず、若いときに不稔の苞に覆われる。葉は1~数枚、線形~卵形~楕円形、しなやかまたはしなやかでなく、質は薄い~革質、根生葉または茎葉(地上生種)、または偽鱗茎の先またはほぼ頂部の節から生じ(着生種)、基部に関節があるかまたは無い。花序は直立~垂れ下がり、総状花序、緩くまたは密に多くの花がつく。花の苞は宿存し、小さい。花は小または中型で、黄色、緑色、橙色、または紫色、しばしば半透明、普通、逆さになる(resupinate)。萼片は広がり、背萼片は分離、側萼片はときに、その長さの一部または全部が融合する。花弁は分離し、しばしば後屈し、しばしば線形で、萼片には似ない。唇弁はしばしば後屈し、卵形、長円形、または扇形で、全縁または分裂し、普通、基部にカルスをもち、距は無い。ずい柱(column)はアーチ状に内曲し、こん棒形、長く、先に翼があり、ときに基部に翼がある。葯帽(anther cap)は細い花糸に取り付けられ、2室。花粉塊は4個は2対になり、ろう質(waxy)、卵形、両側が平らで、各対に小さな粘着体(viscidium)がある。嘴状体(rostellum)は質が薄く、鈍い。蒴果はほぼ球形~楕円形、しばしば±3本の鈍いうね(隆起)がある。
 世界に約320種あり、熱帯アジア、ニューギニア、オーストラリア、南西太平洋の諸島、亜熱帯および熱帯アメリカに分布し、ヨーロッパに1種、北アメリカに2種ある。

クモキリソウ属の主な種と園芸品種

1 Liparis amabilis Fukuy. リパリス・アマビリス
 台湾原産。中国名は白花羊耳蒜 bai hua yang er suan。標高約900mの台北の森林に生える。
 草本植物、地生、小型。偽鱗茎は密集し、球形でやや扁平、直径約1cm、±白い膜質の鞘に囲まれる。葉は1枚。葉柄は短く、関節はない。葉身は卵形または卵状楕円形、長さ1~2cm、膜質または草質、基部は葉柄に沿下し、先は鋭形または鈍形。花序は長さ3~4 cm、1花または2花がつく。花の苞は三角形、非常に小さい。花は大きく、白色、唇弁には赤紫色の脈がある。小花柄と子房は長さ6~10mm。萼片は線形、長さ約・長さ1.2mm×幅3mm、3脈がある。花弁は糸状または狭線形、萼片とほぼ同長、幅約0.5mm、1脈がある。唇弁は円形または卵状円形、長さ約1.2cm、基部はわずかに狭まり、縁には微細な縁毛があり、先は円形または微突形、基部から中央上部まで延びるやや厚い縦の薄板が2枚ある。ずい柱は弓状、長さ約5mm、基部は広がる。花期は4月。

2 Liparis auriculata Blume ex Miq. ギボウシラン 擬宝株蘭
  synonym Liparis yakusimensis Masam.
 日本(琉球列島)、台湾原産。中国名は玉簪羊耳蒜 yu zan yang er suan。 鬱蒼とした森内、湿った場所に生える。
 多年草、地上生、しばしば大きく群生する。偽鱗茎は3~5㎝離れて生え、卵形、わずかに扁平、長さ1~2×幅約1.5㎝。 葉は2枚つき、 葉柄は鞘状、長さ4~6㎝、関節は無い。葉身は卵形、広卵形、または心形、長さ4~10㎝×幅3~8㎝、基部は円形~心形、葉柄に沿下し、先は鋭形。花序は20~30㎝。花序軸は花が数個~10個以上つく。花の苞は披針形、長さ1.5~2.5mm。花は直径約1cm、帯緑色、帯紫色、または濃紫赤色。小花柄と子房は長さ5~6mm。背萼片は線形、長さ6~7mm×幅1.5~2mm、先は鋭形。側萼片は背萼片に似るが、わずかに短く幅が広い。花弁はほぼ糸状、約・長さ6mm×幅0.5mm。唇弁は円形または卵状円形、長さ5.5~6㎜×幅約5mm、基部の近くに2個三角形の小さなカルスがあり、先は円形か、またはときに短突起がある。ずい柱は先が反り返り、長さ3~5mm、細く、狭い翼があり、基部が広がる。花期は5~7月。

3 Liparis barbata Lindl. リパリス・バルバタ
  synonym Liparis indirae Manilal & C.S.Kumar
  synonym Liparis wrayi Hook.f.
 中国(海南島)、台湾、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、パプアニューギニア、フィリピン、スリランカ、タイ、太平洋の島々(サモア、バヌアツ)原産。中国名は须唇羊耳蒜 xu chun yang er suan。森林の土壌に覆われた岩に生える。
 地生の草本植物。茎は地下茎で、長さ 2~3(-10)cm、太く、肉質で、多数の節があり、白色の膜状鞘で±囲まれ、関節はない。葉は通常 2 枚。葉柄は鞘状で、長さ約 3 cm、関節はない。葉身は亜楕円形で、約・長さ6.5cm×幅2.8cm、膜質または草質、基部は葉柄に向かって狭くなり、先は鋭形または鈍形。花序は長さ約10cm、通常葉を越えない。花序軸は花が緩く、数個つく。花の苞は広卵状三角形、長さ約1mm。花は緑白色、しばしば唇弁に2本の赤色の縞がある。小花柄および子房は長さ6~7mm。背側の萼片は広線形、約・長さ7mm×幅1.3mm、目立たない3脈があり、先は鈍形。側萼片はほぼ長円形、約・長さ6.5mm×幅1.8mm、目立たない3脈があり、先は尖鋭形。花弁は狭線形、約・長さ7mm×幅0.5mm。唇弁は長楕円形、約・長さ5mm×幅3.5mm、短い縁毛があり、基部近くに2個のカルスがあり、先に向かってわずかに広がり、ほぼ切形で凹形。花柱はわずかに弓状で、長さ約3.5mm。花期は7月。2n= 42。

4 Liparis bootanensis Griff. チケイラン 竹蕙蘭
  synonym Liparis uchiyamae Schltr. ウチヤマラン

  synonym Liparis bootanensis Griff. var. uchiyamae (Schltr.) S.S.Ying キノエササラン

 日本(沖縄本島、石垣島、西表島)、中国、台湾、ブータン、インド北東部、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム原産。中国名は镰翅羊耳蒜 lian chi yang er suan。別名はウチヤマラン(内山蘭)、キノエササラン(木上笹蘭)。森林の縁、森林または日陰の木、谷に沿った岩または崖に生える。
 多年草、着生植物。偽鱗茎は密につき、卵形、卵状楕円形、または狭卵状円筒形、長さ0.8~1.8(~3)㎝×幅4~8mm。葉は1枚つく。葉柄は長さ1~7(~10)㎝、関節がある。葉身は狭長円状倒披針形、倒披針形、または狭楕円状長円形、長さ(5~)8~22㎝×幅(5~)11~33mm、紙質、葉柄に向かって狭まり、先は尖鋭形。花序は長さ7~24㎝。花序柄はやや扁平、両側に非常に狭い翼がある。花序軸はアーチ状または垂れ下がり、長さ5~12㎝、花が数個~20個つく。花の苞は狭披針形、長さ3~8(~13)mm。花はしばしば黄緑色で、ときに、わずかに褐色がかり、まれにほぼ白色。小花柄と子房は長さ4~15mm。背萼片は卵状披針形~長円状披針形、長さ5.2~8mm×幅1.3~2.3mm、先はほぼ鋭形~鈍形。側萼片は斜めの長円状披針形~楕円形、長さ5~7mm×幅1.5~2mm、先は鈍形。花弁は細い線形、長さ5.2~8mm×幅0.4~1mm。唇弁は広長円状倒卵形、長さ5~6.5mm×幅4~5.5mm、先の縁は全縁~わずかに不規則、先端は凹形~ほぼ切形状円形、広い短突起があり、基部に2個の様々な形のカルス(call)があり、横から見て、低く、丸く、三角形~掌状。ずい柱はアーチ形、長さ2.6~3.4mm、先には2個のかま形の三角形の翼がある。葯帽は長さ約1mm。蒴果は倒卵状楕円形、長さ8~10mm×幅5~6mm。果時の小花柄は長さ8~10mm。花期は8~10月。果期は3~5月。2n=38, 42。

5 Liparis cordifolia Hook.f. アリサンスズムシラン 阿里山鈴虫蘭

  synonym Liparis keitaoensis Hayata
 中国(広西チワン族自治区、西蔵、雲南省)、台湾、ブータン、北インド、ネパール、ベトナム原産。中国名は心叶羊耳蒜 xin ye yang er suan 。標高1000~2000mの森林、土壌で覆われた裂け目、または樹木の枝分かれの、腐植質に富んだ土壌に生える。
  多年草、地生または岩生。偽鱗茎は密集し、卵形、やや扁平、長さ2~3cm×幅5~12mm、±白色の膜質の鞘で囲まれる。葉は1枚。葉柄は長さ2~3cm、鞘状、抱茎、関節はない。葉身は緑色またはたまに白色の斑点があり、卵形~心形、長さ(3~)6~10(~17)cm× 幅(2~)3.5~8(~14.5)cm、膜質または草質、基部は心形で葉柄に沿下し、先は尖鋭形。花序は長さ6~12(~25)cm。花序柄はわずかに潰れ、両側に狭い翼がある。花序軸はしばしば10個以上の花がつく。花の苞は三角状披針形、長さ通常0.5~1mm。花は緑色または淡緑色、しばしば密につく。小花柄と子房は長さ6~10 mm。萼片は線状披針形またはほぼ線形、長さ6~7mm×幅約1.8mm、3脈があり、中脈はやや目立ち、縁は外巻し、先は鈍形または鋭形。花弁は糸状または狭線形、長さ6~7mm×幅約0.5mm、1脈がある。唇弁は倒卵状三角形、長さ6~7mm×幅約6mm、基部に向かって狭まり、基部近くで中空、中空の上に1対の目立たないカルスがあり、中脈は肥厚して±隆起し、縁は±波状、先端はギザギザの歯状、先は切形で微突形。ずい柱は湾曲し、長さ4~5mm、上部には幅広い翼があり、基部は膨れて厚くなり、翼はほぼ方形、片側は幅約1 mm。花期は10~12月。 2n=20。

6 Liparis elliptica Wight コゴメキノエラン 小米樹上蘭
  synonym Cestichis platybulba (Hayata) Kudô
 日本(屋久島)、中国(四川省、西蔵、雲南省)、台湾、インド、インドネシア、ミャンマー、ネパール、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、 太平洋諸島(フィジー、サモア)原産。中国名は扁球羊耳蒜 bian qiu yang er suan。標高200~1600mの森林の樹木に生える。
 着生草本。偽鱗茎は密につき、長円形または楕円形、扁平、長さ1~3cm×幅6~15mm。葉は2枚つき、狭楕円形または狭長円形、長さ4~12cm×幅1.2~2.8cm、紙質、基部は短い葉柄に向かって狭まり、関節があり、先は鋭形または短い尖鋭形。花序は弓状または垂れ下がり、長さ7~17cm。花序柄はやや扁平、時に少数の不稔の苞がある。花序軸は長さ4~8cm、数個~多数の花がつく。花の苞は披針形、長さ1.5~3mm、膜質。花は淡黄緑色。小花柄と子房は長さ約4.5mm。萼片は長円形~披針形、長さ4~5cm×幅1.5~1.8mm、先は鈍形。花弁は狭線形またはほぼ糸状、長さ3.5~4.5mm×幅約0.5mm。唇弁は円形またはほぼ卵状円形、長さ4~5mm、先はギザギザ、縁はパリパリに縮れ、特に先端が±縮れ、中央またはそれより上部の縁がで3裂し、耳状ひだとなり、先端は長い尖鋭形または短い尾状となる。ずい柱は長さ1.5~2mm、翼はない。蒴果は狭倒形形、長さ5~6mm×幅2~2.5mm。果時に小花柄は長さ約2mm。花期は11~2月。果期は5月。
品種) 'Roger'

7 Liparis elongata Fukuy. ナガボノスズムシラン 長穂鈴虫蘭
  synonym Liparis derchiensis S.S.Ying
 台湾原産。中国名は宝岛羊耳蒜 bao dao yang er suan。標高1800~2000mの森林に生える。
 地生草。偽鱗茎は束生し、卵形、長さ1.8~3cm×幅1.5~2.5cm、2~3枚の膜質の鞘で囲まれる。葉は2枚。葉柄は長さ5~9cm、基部は鞘状で、関節はない。葉身は卵形~長円形、長さ6~13cm×幅4~6cm、基部は葉柄に向かって狭くなり、先は鈍形。花序は長さ23~40cm。花序柄は長さ5~20cm、3稜がある。花序軸は長さ18~20cm、花は緩く10~20個つく。花の苞は三角形、長さ2~3mm、先は鋭形。花は大きく開き、淡緑色、唇弁の中央はしばしば紫色を帯びる。小花柄と子房は長さ約15mm。背萼片は反り返り、線形、長さ10~12mm×幅2.5~3mm、背側に竜骨があり、3脈があり、縁は外巻し、先は鈍形。側萼片は斜めの舌状披針形、長さ10~12mm×幅3~3.5mm、唇弁の下側で平行になり、背側に竜骨があり、3脈があり、縁は外巻きし、先は鋭形。花弁は線形、長さ10~12mm×幅約1mm、縁は外巻きし、側萼片より下側で後屈し、中央部から上向きに反り返る。唇弁は中央部で急に反り返り、楔状倒卵形、長さ10~12mm×幅7~10mm、基部は狭まり、カルスはなく、縁は全縁から不明瞭な小鋸歯があり、先は切形状円形、わずかに短突起がある。ずい柱は湾曲し、直径5~6mm。基部は2個のマウンド状に広がり、先には鈍形の翼を持つ。花期は6~7月。

8 Liparis formosana Rchb.f. ユウコクラン 幽谷蘭
  synonym Liparis nervosa var. formosana (Rchb.f.) M.Hiroe
 日本(九州南部~沖縄)、香港、台湾原産。中国名は低地羊耳蒜 di di yang er suan 。広葉樹林下に生える。
 多年草、地上生。偽鱗茎は束生し、円筒形、長さ5~15cm×幅1~1.5cm。 葉は2~4枚つき、斜めの楕円形~卵形、長さ7~12cm×幅4~6cm、鋭形。 花序は長さ約30cm。花序柄は長さ約15cm、翼がある。花序軸は長さ約15cm、花が15~30個つく。花の苞は三角形、長さ2~3mm、先は鋭形。花は緑色、紫色または帯紫色を帯びる。小花柄と子房は長さ11~14mm、6本の鋭いうねがある。背萼片は披針形、長さ10~12×幅2~2.5 mm、3脈があり、先は鈍形。側萼片は斜めの長円状披針形、長さ7~9mm×幅3~4mm、3脈があり、先は鋭形。 花弁は線形、長さ9~10mm×幅約1mm、1脈がある。唇弁は倒卵状楕円形、約・長さ7mm×幅5mm、基部の上に2裂する直立したカルスがあり、先は鋭形。 ずい柱は曲がり、長さ4~5mm、先の2個の三角形、基部に切形の翼がある。花期は2~5月。

8-1 Liparis formosana Rchb.f. f. aureovariegata K.Nakaj. コガネユウコクラン 黄金幽谷蘭

 葉が黄金色の斑入りの品種。

8-2 Liparis formosana Rchb.f. var. hachijoensis (Nakai) Ohwi シマササバラン 島笹葉蘭

 花も果実も少し小さい。唇弁の色は紫褐色であるがやや薄く、縁が緑色になる。

9 Liparis gigantea C.L.Tso リパリス・ギガンテア
  synonym Liparis nigra Seidenf.
  synonym Liparis macrantha Rolfe
 中国(広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、西蔵、雲南省)、台湾、ブータン、タイ、ベトナム原産。中国名は紫花羊耳蒜 zi hua yang er suan。標高500~1700mの常緑広葉樹林、日陰で湿った場所、土で覆われた岩場に生える。
 草本植物、地生または岩生。茎は緑色で円筒形、長さ8~20cm、直径約1cm、太く肉質、多数の節があり、下部は数枚の膜質の鞘に覆われる。葉は3~6枚つく。葉柄は鞘状、長さ2~5cm、関節はない。葉身は楕円形、卵状楕円形、または卵状長円形で、しわしばわずかに斜め、長さ9~17cm、幅3.5~9cm、膜質または草質、基部は斜め、葉柄に向かって狭まり、先は尖鋭形、短い尾状、またはほぼ鋭形。花序はほぼ頂生、長さ18~45cm。花序軸は6~16cm、数個から20個の花が付き、非常に狭い翼がある。花の苞は卵形、長さ1~2mm。花は濃紫赤色。小花柄と子房は長さ1.6~1.8cm。背萼片は線状披針形、長さ16~20mm×幅2.5~3mm、3脈があり、先は鈍形。側萼片は卵状披針形、長さ15~17mm×幅4~5mm、5脈があり、先は鈍形。花弁は線形または狭線形、長さ16~18mm×幅約0.8mm、1脈がある。唇弁は倒卵状楕円形または広倒卵状長円形、長さ9~15mm×幅12~18mm、基部は急に狭まり、後方に1対の広がる耳があり、縁は顕著に小歯状、先は切形でときに微細な微突形。ディスク(disk)には基部近くに2個のカルスがあり、カルスは三角形で高さ0.8~1mm。ずい柱は長さ6~8mm、両側に狭い翼がある。葯帽は長さ約2mm。蒴果は倒卵状長円形で、約・長さ2.8cm×幅1cm。果時の小花柄は長さ6~9mm。花期は2~5月。果期は11月。
品種) 'Clare'

10 Liparis hostifolia (Koidz.) Koidz. ex Nakai シマクモキリソウ 縞雲切草

  synonym Liparis auriculata Blume ex Miq. var. hostifolia Koidz.
 日本(小笠原諸島父島、南硫黄島)固有種。
 1928年に記載された種(Sci. World (Chungking & Nanking) 26(4): 10 (1928))であり、1939年以降見つかっておらず、すでに絶滅した可能性が高いと考えられていた。平成29年の南硫黄島自然環境調査により採取され、国立科学博物館筑波実験植物園で平成29年11月に開花に成功した。
 形態のよく似たスズムシソウやセイタカスズムシソウと比べると、花色と開花期が異なる。開花時の高さ約12㎝。葉は2枚つき、長さ約9㎝。花は7個ほどつき、長さ約1㎝、緑色地に紫班が入る。花期は11月。

11 Liparis koreojaponica Tsutsumi, T.Yukawa, N.S.Lee, C.S.Lee et M.Kato オオフガクスズムシ 大富嶽鈴虫

  synonym Liparis makinoana Schltr. var. koreana auct. non Nakai
 日本(北海道)、朝鮮原産。別名はエゾノクモキリソウ。山地の林内の地上、岩上、落ちた木の幹の上などに生える。
 クモキリソウに似るが、クモキリソウでは、唇弁が小さい。
 地上生、岩上生。偽鱗茎は卵形、長さ1~2㎝。葉は2枚つき、卵状楕円形、鈍形またはほぼ鋭形、長さ10~20cm×幅2~6(~9)cm、2つ折になり、光沢があり、無毛、縁は全縁またはやや波うり、緑色。葉柄は長さ5~10cm、翼があり、葉身とほぼ同長。花序は頂生、総状花序、長さ15~35(~50)cm、花が4~16(~20)つく。花序軸は無毛、うねがあり、緑色。苞は卵形、先は鋭形、長さ1~5mm、緑色。小花柄のつく子房はこん棒形、捻じれ、長さ13~17mm、緑色、ときに基部が紫色を帯びる。背萼片は線状披針形、先はぼ鋭形、たまにわずかに外巻きし、直立またはやや反り返り、長さ10~11mm×幅2~2.5mm、帯紫色。側萼片は斜めの卵形または斜めの披針形、先はほぼ鋭形、やや外巻きし、上部が捻じれ、部分的に唇弁を包み込み、長さ9~11mm×幅2~3mm、帯紫色。花弁はかま形、線形、先は鈍形、強く外巻きし、垂れ下がり、ときにわずかに捻じれ、長さ10~12mm×幅0.5mm、帯紫色。唇弁は全縁または微細なギザギザがあり、卵状長円形、爪部があり、中間で強く反り返り、縁はときにわずかに外巻きし、先は鈍形または短突起があり、長さ9~12mm×幅6~9mm、帯紫色または緑紫色。ずい柱は円柱形、内曲し、円い翼があり、基部は広がり、腹側の基部に浅い溝があり、長さ5~6mm、緑色、腹側表面は淡緑色。花粉塊は4個、2対につき、ろう質(waxy)、黄色。葯帽は卵形、微突形、緑色。花期は6~7月。

12 Liparis krameri Franch. et Sav. ジガバチソウ 似我蜂草 広義

  synonym Leptorkis krameri (Franchet & Savatier) Kuntze
  synonym Liparis krameri var. viridis Makino.
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は尾唇羊耳蒜 wei chun yang er suan。林内に生える。
 多年草、地上生。偽鱗茎は小さく、±白色の膜質の鞘で囲まれる。葉は2枚つく。葉柄は鞘状、長さ0.5~3cm、関節はない。葉身は広卵形または卵形、長さ2~3(~8)cm×幅2~4cm、膜質または草質、基部は円形で葉柄に沿下し、縁は不規則な歯が顕著で、先は鈍形またはほぼ鋭形。花序は長さ6~7cmまたはそれ以上で、葉よりも著しく長い。花序柄は円筒形、わずかに扁平、狭い翼がある。花序軸は花が数個つく。花の苞は卵形、長さ約1mm。 花は緑色または紫赤色。小花柄と子房は長さ7~8mm。萼片は線形または線状披針形、長さ9~12mm×幅1.5~2mm、3脈があり、先はほぼ鋭形。 側萼片はわずかに斜め。花弁は糸状、長さ8~10mm×幅約0.5mm。唇弁は下部1/3が後屈し、ほぼ卵状長円形、長さ6~7mm、基部に大きな薄板のカルス(lamellate basal callus)があり、先は短い尖端があり、尾は長さ約1mm。 ずい柱はわずかにアーチ状になり、長さ2mm、ほぼ翼が無い。花期は6~7月。2n=30, 36。

12-1 Liparis krameri Franch. et Sav. var. krameri ジガバチソウ

  synonym Liparis krameri Franch. et Sav. var. shichitoana Ohwi

12-2 Liparis krameri Franch. et Sav. var. krameri f. albomarginata J.Ohara フクリンジガバチソウ 覆輪似我蜂草

 葉の斑入りで葉の周囲が白色になる覆輪の品種。

12-3 Liparis krameri Franch. et Sav. var. krameri f. viridis Makino アオジガバチソウ 青似我蜂草

 花が緑色の品種。

12-4 Liparis krameri Franch. et Sav. var. nikkoensis (Nakai) K.Inoue ヒメスズムシソウ 姫鈴虫草

  synonym Liparis nikkoensis Nakai
 日本の中部地方、関東地方、東北地方に分布する。亜高山帯~高山帯の草地や林縁に生える。
 クモイジガバチに似るが、唇弁が倒卵形で先端がほとんど巻き込まず、ふちに微細な突起がある。クモイジガバチは唇弁が倒三角形~倒心形で、先端中央部付近がで強く巻き込む。
 多年草。偽鱗茎は卵形、長さ4~7mm×直形3~4mm。葉は2枚が対生して根生し、披針形、長さ1.5~2cm×幅7~10mm、基部は漸尖し、縁は全縁、先はやや鈍形、葉脈は不明瞭。葉は対生し、2枚つく。花茎は直立し、高さ3~6cm、上部に3~4個の花をつける。小花柄と子房は長さ3~4mm、捻じれる。苞は卵形、長さ約1.5mm、先は鋭形。萼片は披針形、長さ約5mm、淡黄緑色。側花弁は長さ約3mm、帯黄色、糸状。唇弁は倒卵形、長さ約4㎜、縦の暗紫色の脈紋があり、縁には微細な突起があり、中央部は両縁が持ち上がり、上部はやや下屈し、先は円形で小突状に尖る。ずい柱は内曲し、黄色。葯は卵形。花期は6~7月。

13 Liparis kumokiri F.Maek. クモキリソウ 雲切草
 日本(北海道、本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、ロシア原産。林内に生える。
 多年草、高さ10~20㎝。偽球茎は卵形、普通、葉が2個つく。葉は長さ5~12㎝、幅2.5~5㎝の卵状楕円形、縁は細かく波打つ。総状花序に5~15個の花をつける。花は淡緑色、まれに淡紫褐色~黒褐色。萼片は長さ6~7㎜、内巻きして細い。側花弁2個は長さ6~7㎜の狭線形。唇弁は長さ5~6㎜、幅が広く、先が巻き込む。蕊柱は長さ約3㎜、上端に狭い翼がある。2n=30。花期は6~8月。

14 Liparis liangzuensis T.P.Lin et W.M.Lin リパリス・リアングズエンシス
 台湾原産。中国名は良如羊耳蘭。岩上に生える。
 通常は岩生。偽鱗茎は密生し、通常は線状に並ばず、卵形でやや扁平、長さ約2.2cm、直径約1.2cm、葉は1枚~まれに2枚つき、線形、長さ20~26cm、幅1.3~1.4cm、基部に向かってごく徐々に狭まり、緑色。花序の茎は偽鱗茎の先端に生じ、直立またはやや弓形で扁平、花序を含めて長さ約18cm。花茎は長さ約8~9cm、通常は鞘状の苞を持たない。花の苞は披針形、小花柄と子房より短いかまたは長い。小花柄と子房は長さ3.5mm、帯緑色。花は小さく、直径2~3mm、薄緑色で広がる。萼片は長円形で、長さ2.5mm、帯淡緑色。花弁は線形、長さ2.3mm、萼片と同色で後屈する。唇弁は些細で(fiddle-shaped)、長さ2mm、幅2mm、先は下方に曲がり、先は広く、先端が短く、基部のディスク(disk)には2個の小さな突起がある。ずい柱は弓形になり、長さ1mm、前側にわずかに翼がある。嘴状体(rostellum)は白色。花粉塊は4個で黄色。花期は3~4月。

15 Liparis longiracemosa Tsutsumi, T.Yukawa et M.Kato アキタスズムシソウ 秋田鈴虫草

 日本(北海道、本州、四国、九州)に分布する。落葉樹林または針葉落葉混合林の半開放のやや湿った場所に生える。
 L. makinoanaに似るが、唇弁が小さく、萼片が広く、花序の花がまばら。
 多年草、地上生。偽鱗茎は卵形、長さ1~3.5㎝。葉は2枚つき、卵状楕円形、鈍形またはほぼ鋭形、長さ10~20㎝×幅2~6(~9)㎝、2つ折りになり、光沢があり、無毛、縁は全縁またはやや波打ち、緑色。葉柄は長さ3~10㎝、翼がある。花序は頂生、総状花序、長さ15~40㎝、花が4~40個つく。花序軸は無毛、うねがあり、緑色。苞は卵形、先は鋭形、長さ1~5㎜、緑色。小花柄のつく子房はこん棒形、捻じれ、長さ10~20㎜、帯紫色。背萼片は線状披針形、先はほぼ鋭形、たまにわずかに外巻きし、直立またはやや反り返り、長さ8~11㎜×幅2.5~3.5㎜、帯紫色。側萼片は、斜めの卵形または斜めの披針形、先はほぼ鋭形、やや外巻きし、長さ8~11㎜×幅2.5~3.5㎜、帯紫色。花弁はかま形、線形、先は鈍形、強く外巻きし、垂れ下がり、ときにわずかに捻じれ、長さ9~12㎜×幅0.5~1.0㎜、帯紫色。唇弁は全縁または微細なギザギザがあり、卵形、基部で反り返り、先は鈍形、短突起があり、長さ8~10㎜×幅5~7㎜、暗紫色、帯紫色、または緑色。ずい柱は円柱形、内曲し、上部に円い翼があり、基部で広がり、腹側の基部に浅い溝があり、長さ4~5㎜、緑色、腹側の表面は淡緑色、基部は紫色。花粉塊は4個、2対につき、ろう質(waxy)、黄色。葯帽は先に嘴があり、緑色~帯紫色。花期は6~7月。

16 Liparis makinoana Schltr. セイタカスズムシソウ 背高鈴虫草

  synonym Liparis liliifolia (L.) Lich. ex Lindl. var. japonica (Miq.) T.Hashim.

  synonym Liparis japonica sensu Maxim.

  synonym Liparis fujisanensis F.Maek. ex F.Konta et S.Matsumoto フガクスズムシソウ

  synonym Liparis koreana (Nakai) Nakai  コウライスズムシソウ 
 日本(北海道、本州)、朝鮮、ロシア原産。針葉樹林または落葉樹林の地上に生える。
 多年草、地上生。偽鱗茎は卵形、長さ1~3㎝。葉は2枚つき、卵状楕円形、先は鈍形またはほぼ鋭形、長さ7~20㎝×幅2~6㎝、2つ折りになり、光沢があり、無毛、縁は全縁またはやや波打ち、緑色。葉柄は長さ3~10㎝、翼がある。花序は頂生、総状花序、長さ10~35㎝、花が4~30個つく。花序軸は無毛、うねがあり、緑色。苞は卵形、先は鋭形、長さ1~5㎜、緑色。小花柄のつく子房は、こん棒形、捻じれ、長さ8~13㎜、緑色~帯紫色。背萼片は線状披針形、先はほぼ鋭形、たまにわずかに外巻きし、直立またはやや反り返り、長さ9~12㎜×幅2~2.5㎜、緑色。側萼片は、斜めの卵形または斜めの披針形、先はほぼ鋭形、やや外巻きし、長さ8~11㎜×幅2~3㎜、緑色。花弁はかま形、線形、先は鈍形、強く外巻きし、垂れ下がり、ときにわずかに捻じれ、長さ9~12㎜×幅0.5~1㎜、帯紫色。唇弁は全縁または微細なギザギザがあり、卵形、爪部があり、基部で強く反り返り、鈍形、先に短突起があり、長さ9~12㎜×幅6~9㎜、帯紫色または緑紫色。ずい柱は円柱形、内曲し、上部に円い翼があり、基部が広がり、腹側の基部に浅い溝があり、長さ4~5㎜、緑色、腹側の表面は淡緑色、基部は紫色。花粉塊は4個、2対につき、ろう質(waxy)、黄色。葯帽は先に嘴があり、緑色。花期は5~7月。
品種) 'Fuji' , 'Kuro Suzu'

17 Liparis nervosa (Thunb.) Lindl. コクラン 黒蘭
 本州(茨城県以南)、四国、九州、世界に広く分布。中国名は见血青 jian xue qing。英名はtall liparis。常緑樹の林内の地上に生える。
 常緑性、地上生のラン。地上に太い多肉質の円柱形の偽球茎をつくり、長さ2~8(10)㎝、幅5~7(10)㎜、多くの節があり、普通、鞘に包まれ、上部は露出する。葉は茎の頂部に集まって3~6個つく。葉柄は鞘状、長さ2~3(5)㎝、茎を抱き、長く、葉身との境は不明瞭。葉身は卵形~卵状楕円形、長さ5~11(16)㎝、幅3~5(8)㎝、膜質~草質、基部は収縮し、葉柄に沿下する。葉縁は全縁、ほとんど波打たず、葉先は類尖鋭形。花序はほぼ頂生し、長さ10~20(25)㎝、花序軸に数個~10(15)個の花をつけ、ごく狭い翼がある。苞は三角形、長さ1(~2)㎜。花は暗紫色~暗紫褐色。小花柄と子房は長さ8~16㎜。背萼片は線形~広線形、長さ8~10㎜、幅1.5~2㎜、目立たない3脈があり、縁は外巻きし、先は鈍形。側萼片は狭い卵状長楕円形、わずかに斜めになり、長さ6~7㎜、幅3~3.5㎜、3脈があり、先は鈍形。側花弁は反り返り、糸状、長さ7~8㎜、幅約0.5㎜、1脈。唇弁は長楕円状倒卵形、長さ6~6.5㎜、幅4.5~5㎜、基部は狭くなり、基部の両側に長楕円状の突起(calli)があり、先は切形、中央が凹形。ずい柱は長さ4~5㎜、どちらかといえば丈夫で、上部は明瞭又は不明瞭であり、狭い翼がある。蒴果は倒卵状長楕円形~狭楕円形、長さ10~15㎜、幅4~6㎜、種子を散布した後も長く残る。果柄は長さ4~7㎜。種子は長さ0.3~0.5㎜、白色で微細な狭い紡錘形、不定に曲がる。肉眼では白色の粉のように見える。2n=36,40,42。花期は6~7月。

18 Liparis pterosepala N.S.Lee, C.S.Lee et K.S.Lee リパリス・プテロセパラ
 朝鮮原産。済州島の標高700~800mの谷の上流付近の森林地帯<に生える。
 L. pterosepalaは、葯冠の先端が細く反り返っており唇弁が強く反り返っている点で、Liparis kumokiri、Liparis koreojaponica、Liparis fujisanensisに類似する。しかし、L. pterosepalaは、その広い萼片と開花時期の早さによって、3つの類似分類群と区別することができる。分子系統学的解析により、L. pterosepalaはL. kumokiri、L. koreojaponica、L. fujisanensiにも近縁であることが示されている。L. kumokiri、L. koreojaponica、L. fujisanensi と比べると側萼片が広く、開花が早い点で異なる。
 陸生草本。偽鱗茎は卵形で、長さ2cm。葉は2個、卵状楕円形、鈍形または亜鋭形で、長さ8~10cm、幅4~5cm二つ折り(conduplicate)で光沢があり無毛、縁はやや波打つ緑色。葉柄は長さ2~5cm、翼がある。花序は頂生、総状花序、無毛、うねがあり、長さ12~15cm、濃い紫がかった花を6~9個つける。花の苞は卵形、先は鈍形、長さ1mm、緑色。背萼片は線状披針形、直立またはやや後屈し、ほぼ鋭形、長さ10~11mm、幅1.6~2.0mm、紫色。側萼片は斜めの卵形~斜めの披針形、外巻きし、上部が捻じれ、唇弁をやや包み込み、長さ6~7mm、幅3.0~3.3mm、緑紫色。側花弁は線形、強く外巻きし、垂れ下がり、ときにわずかに捻じれ、長さ9.5~11mm、幅0.6~0.8mm、紫色。唇弁は長円形で後屈し、ときに上部は緩く凹み、微細なギザギザがあり、先は鈍形または短突起形、先は基部より幅が広く、長さ6.5~8mm、幅4~6mm、暗紫色。ずい柱は内曲し、長さ4~5mm、先に翼があり、翼は三角形、基部は広く広がり、上部は緑色、基部は帯紫色。花粉塊は2対で4個、蝋質で黄色。葯帽は卵形、微突形、緑紫色。子房は小花柄があり棍棒形、捻じれ、長さ7~8mm、わずかに翼があり、基部は帯紫色、緑色。花期は5~6月。

19 Liparis purpureoviridis Ridl. ex Burkill & Holttum リパリス・プルプレオビリディス
 マレーシア、インドネシア原産。
 偽鱗茎は楕円形、直径約1cm。葉は1枚つき、大きく、直径約7.5cm、メタリックな紫色がかった緑色で、葉脈が深く、網目模様になる。花茎は直立し、頂生の総状花序に15個以下の花をつける。花は幅約1.8cm、萼片3個は線形、半透明の緑色。唇弁は半透明の繊維状の縁飾りが目立ち、紫色。花期は晩春~夏。
品種) 'Clare'

20 Liparis purpureovittata Tsutsumi, T.Yukawa et M.Kato シテンクモキリ 紫点蜘蛛切

 日本固有種。北海道、本州の東北地方・中部地方、四国に分布する。
 花が緑色のクモキリソウに似るが、唇弁の基部の溝が濃紫色になる。
 多年草、地上生。偽鱗茎は卵形、長さ1~2㎝。葉は2枚つき、卵状楕円形、縁は全縁またはやや波打ち。先は鈍形またはほぼ鋭形、長さ5~13㎝×幅2~5㎝、2つ折りになり、光沢があり、無毛、緑色。葉柄は長さ2~6cm、翼があり、葉身とほぼ同長。花序は頂生、総状花序、長さ10~25㎝、花が4~14個つく。花序軸は無毛、うねは緑色。苞は卵形、先が鋭形、長さ2~5㎜、緑色。 小花柄のつく子房はこん棒形、長さ8~11㎜、捻じれ、緑色、ときに、基部が紫色を帯る。背萼片は線状披針形、先はほぼ鋭形、たまにわずかに外巻きし、直立またはやや反り返り、長さ8~9㎜×幅2~2.5㎜、緑紫色。側萼片は斜めの卵形または斜めの披針形、先はほぼ鋭形、、外巻きし、上部は捻じれ、部分的に唇弁を包み込み、長さ7~9㎜×幅3~3.5㎜、緑紫色。花弁はかま形、線形、先は鈍形、強く外巻きし、垂れ下がる、ときにわずかに捻じれ、長さ8~9㎜×幅0.5㎜、帯紫色。唇弁は全縁またはギザギザになり、卵状長円形、短い爪部があり、中央で強く反曲し、返る、縁はときにわずかに外巻きし、基部はほぼ切形で基部の上で急に広がり、先は鈍形または短突起があり、長さ8~9㎜×幅6~7㎜、鈍い黄緑色、基部および中央の溝は薄紫色~暗紫色。ずい柱は円柱形、先は内曲し、円い翼があり、基部は長さ4~5㎜に広がり、腹側の表面は淡緑色、その他の部分は緑色。花粉塊は4個、2対につき、ろう質(waxy)の黄色。葯帽は卵形、微突形、緑色。花期は6~7月。

21 Liparis reckoniana T.C.Hsu リパリス・レッコニアナ
 台湾原産。雲頂羊耳蒜。標高1300~1600mの広葉樹雲霧林の苔むした樹幹に着生する。
 草本植物は着生し、高さ5~10cm。偽鱗茎は卵形、長さ5~10×幅3~5mm、鞘に包まれる。葉は2枚、膜質で楕円形または長円形、しばしば大きさが不揃いで、大きい葉は長さ2~4cm×幅8~18mm、小さい葉は長さ1~3cm×幅5~12mm、基部は長さ1~3cmの鞘になり、、関節はなく、先は鈍形、縁は平らまたはわずかに縮れる。花序は長さ1.8~6.0cm、花序柄は長さ1.5~4.0cm、花序軸は長さ0.3~2.0cm、緩く2~7個の花がつく。花の苞は卵状披針形、長さ1.5~2.0mm、先は鋭形。花は緑色、暗赤色を帯び、暗赤色の縞があり、幅約8mm。小花柄と子房は長さ5~6mm。萼片は広がり、側部の縁は強く外巻きする。背萼片は線状披針形、長さ6~7mm×幅約2mm、3脈があり、先はほぼ鋭形。側萼片は線形、長さ6~7mm×幅約1.5mm、3脈があり、先はほぼ鋭形。花弁は広がり、曲がり、線状の糸状、長さ6~7mm×幅約0.5mm、1脈があり、先はほぼ鋭形。唇弁は四角状卵形、長さ4~5mm×幅3.5~4.0mm、淡黄緑色で暗紫赤色の縞模様があり、縁は全縁、基部にカルスがあり、先はほぼ切形で短突起は長さ約0.5mm。カルスは肉質で円錐形、暗紫赤色、高さ約1.5mm、先はほぼ切形、前面に細溝がある(canaliculate)。ずい柱は弓状、長さ約3mm、基部はわずかに広がり、幅約1mm、上部には狭い翼があり、三角形のずい柱の歯(stelidia)を持つ。葯は広卵形、約・長さ0.3mm×幅0.5mm。花粉塊は2対で4個、蝋質で卵形。花期は4月上旬。

22 Liparis rubrotincta T.C.Hsu リパリス・ルブロティンクタ
 台湾原産。中国名は絳唇羊耳蒜。標高1800~2500mの崖上の岩に着生、山の尾根沿いの低木の下に地生する。種小名は赤みがかった唇弁に由来する。
 地生または岩生の草本植物で、高さ15~40cm。偽鱗茎は卵形、長さ15~30mm×幅15~25mm、鞘で囲まれる。葉は2枚で膜質、卵状楕円形または卵状長円形、大きさはほぼ等長、長さ3~8cm×幅2~5cm、基部は2~7cmの鞘になり、関節はなく、先は鋭形、縁は顕著に縮れる。花序は長さ10~35cm、花序柄は長さ7~15cm、花序軸は長さ3~25cm、3~30個の花が緩くつく。花の苞は三角形、長さ1.5~3mm、先は鋭形。花は帯緑色、ピンク赤色を帯び、幅15~20mm、小花柄と子房は長さ9~13mm。萼片は広がり、側縁は強く反り返る。背咢片は線状披針形、長さ9~10mm、約2.5mm、3脈があり、先は鈍形。側咢片は斜めの披針形~長楕円形、長さ9~10mm、約3mm、3脈があり、先は鈍形。花弁は広がり、湾曲し、線状糸状、長さ8~9mm、約1mm、先は鋭形。唇弁は倒三角形~長楕円形、中央付近で強く反り返り、長さ8~11mm、7~8mm、基部は黄緑色、中央から先端にかけて±紫赤色を帯び、基部には溝があり、溝に沿って2つの目立たない隆起が生じる。先は切形で微鋸歯状、先端縁は不規則に微細な鋸歯があり、側縁は反り返る。柱は弓状で長さ3~4mm、基部は著しく拡張し、幅約1.5mm、中央部は収縮し、先端には2つの広卵形がある。ステリディア;葯は広卵形、約1.3×1.2mm。花粉塊は2対で4個、蝋質、卵形。花期は5~7月。

23 Liparis sasakii Hayata ミヤマコクラン 深山黒蘭

  synonym Liparis krameri Franch. et Sav. var. sasakii (Hayata) T.Hashim.

 台湾原産。中国名は阿里山羊耳蒜 a li shan yang er suan。標高1500~2000mの森林に生える。
 草本植物、地生または岩生。偽鱗茎は扁平な卵形、長さ1.5~2.5cm、± 白色の膜質の鞘で囲まれる。葉は2枚つき、ほぼ無柄、関節は無い。葉身は倒卵形、長さ約5cm、膜質または草本、基部は楔形、先は鋭形または鈍形。花序は長さ約8cm、花序軸は長さ約2cm、5個の花がつく。花の苞は卵状三角形、長さ2~3mm。花は暗紫色、小花柄と子房は長さ約8mm。萼片は線状披針形、長さ12~13mm×幅 2~3mm、3脈があり、縁は外巻きし、先は尖鋭形、側萼片はやや斜め。花弁は線形、長さ10~12cm×幅約1mm。唇弁は楕円状卵形、長さ8~10mm×幅5~6mm、不明瞭に3裂する。側裂片は直立し、中裂片は卵形、長さ約6mm、縁には微細な縁毛があり、先には長さ約1.5mmの短い尾部がある。ディスク(disk)の基部にカルスがある。ずい柱はわずかに弓状で長さ3~4mm、両側に狭い翼部がある。花期は5月。2n=30。

24 Liparis suzumushi Tsusumi, T.Yukawa et M.Kato スズムシソウ 鈴虫草

  synonym Liparis makinoana auct. non Schltr.

  synonym Liparis japonica (Miq.) Maxim. var. makinoana sensu M.Hiroe

  synonym Liparis liliiflora auct. non (L.) A.Rich. ex Lindl.
 北海道南部、本州、四国、朝鮮、ロシア原産。林内に生える。
 L. makinoanaとL. longirace mosaに似ているが、花期が異なる(5~6月)、花序が短く(長さ10~25㎝)、唇弁が大きい(長さ14~17㎜、幅11~15㎜)。
 偽鱗茎は卵形、長さ1~3㎝。葉は2枚つき、卵状楕円形、先は鈍形またはほぼ鋭形、長さ10~20㎝×幅2~6(~9)㎝、2つ折りになり、光沢があり、無毛、縁は全縁またはやや波状、緑色。葉柄は長さ3~10㎝、翼がある。花序は頂生、総状花序。花茎は長さ10~25㎝、花が4~16個つく。花序軸は無毛、うねがあり、緑色。苞は卵形、先は鋭形、長さ1~5㎜、緑色。小花柄のつく子房はこん棒形、捻じれ、長さ12~19㎜、帯紫色。背萼片は線状披針形、ほぼ鋭形、たまにわずかに外巻きし、直立またはやや反り返り、長さ13~16㎜×幅3.5~4㎜、緑色~帯紫色。側萼片は、斜めの卵形または斜めの披針形、先はほぼ鋭形、やや外巻き、長さ13~16㎜×幅3.5~4㎜、帯緑色。花弁はかま形、線形、先は鈍形、強く外巻きし、垂れ下がり、時にはわずかに捻じれ、長さ13~16㎜×幅0.5~1.0㎜、帯紫色。唇弁は全縁または微細なぎざぎざになり、広卵形、爪部があり、基部近くで強く反曲し、鈍形または切形、先端には短突起があり、長さ14~17㎜×幅11~15㎜、帯紫色または緑紫色。ずい柱は円柱形、内曲し、上部に丸い翼があり、基部は広がり、腹側の基部に浅い溝があり、長さ5.5~7㎜、緑色、腹側の表面は淡緑色、基部は紫色。花粉塊は4個、2対につき、ろう質(waxy)、黄色。葯帽は先に嘴があり、緑色。花期は5~6月。

25 Liparis truncata F.Maek. ex T.Hashim. クモイジガバチ 雲居似我蜂

 日本固有種。本州、九州に分布。ブナやトチノキなどの夏緑広葉樹の樹幹上大木の樹幹に着生する
 多年草、着生、高さ3~10㎝。偽鱗茎は卵形。葉は2枚つき、卵形、縁は全縁で波打ち、表面に縦じわがあり、光沢があり。花は紫褐色、側花弁は横に張り出し、側萼片は前方に突き出る。唇弁は倒三角形~倒心形、基部はやや樋状に両縁が上がり、中央部付近は広がり、先が短く下屈または巻き、先端は切形で短突起があり、唇弁全体に縦の紫褐色の脈紋がある。唇弁の内側基部にあるカルス(肉質隆起)は、正面から見るとほぼ三角形にみえる。花期は7~8月。

26 Liparis yongnoana N.S.Lee, C.S.Lee et K.S.Lee リパリス・ヨグノアナ
 朝鮮原産。済州島に分布し。標高800~900mの渓流近くの森の苔岩に生える。
 Liparis yongnoanaは、葯冠の先端が嘴状で唇弁が弱く反り返っている点で、L. japonicaやL. makinoanaと呼ばれる植物に類似する。しかし、L. yongnoanaは唇弁に狭楕円形の線があること、唇弁の先端があまり窪んでいないこと、花柱が短いこと、花数が少ないことでこれらと区別できる。
 地生草本。偽鱗茎は卵形、長さ10~15mm。葉は2枚つく、葉身は卵状楕円形、先は鈍形またはほぼ鋭形、長さ5~7cm、幅3~4cm、二つ折り(conduplicate)で光沢があり、無毛、緑色、縁は波打つ。葉柄は長さ2~4cm、葉身とほぼ同長、翼がある。花序は頂生の総状花序、長さ9~12cm、帯緑色~帯紫色の花を4~5個つける。花序軸は無毛で、うねがあり、緑色。花の苞は卵形、先は鈍形、長さ1mm、緑色。背萼片は線状披針形、直立またはやや後屈し、ほぼ鋭形、長さ8~9mm、幅2mm、帯緑色。側萼片は披針形、外巻きし、唇弁の先端まで頭部に伸び、長さ7~8 mm、幅2.5mm、緑色。側花弁は線形、強く外巻きし、垂れ下がり、長さ7mm、幅0.5mm、緑色。唇弁は長円形で爪部があり、後屈し、先は凹形で先端に小突起があり、長さ9mm、幅7~8mm、中央部に楕円形の紫色の線がある。ずい柱は強く内曲し、長さ3.0~3.5mm、先に翼があり、翼は丸く、基部で広く広がり、緑色。花粉塊は2対で4個あり、蝋質、黄色。葯帽は卵形で嘴があり、緑色。子房は小花柄があり棍棒状、基部でのみ捻じれ、長さ7~8mm、わずかに翼があり、緑色。花期は6~7月。

参考

1) Flora of China
 Liparis
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=118682
2) Plants of the World Online(POWO)| Kewscience
 Liparis
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:331229-2
3) World Flora Online
 Liparis
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000012430
4) Flora of North America
 Liparis
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=118682
5) World Checklist of Vascular Plants
 Liparis
https://wcvp.science.kew.org/
6) ActaPhytotax.Geebot, 59 C:73-77 (2008)
 Liparis purpureovittata (Orchidaceae) : a New Species from Japan
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/59/1/59_KJ00004899890/_pdf/-char/en
7) Acta Phytotax,Geobot.S9(3):211-218(2008)
 A New SpeciesofLiparisfrom Japan and Korea Liparis koreojaponic
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/59/3/59_KJ00005124835/_pdf/-char/ja
8) J. Plant Biol. 53:190-200 (2010)
Two New Species of the Genus Liparis (Orchidaceae) from Korea Based on Morphological and Molecular Data
https://www.researchgate.net/publication/225437500_Two_New_Species_of_the_Genus_Liparis_Orchidaceae_from_Korea_Based_on_Morphological_and_Molecular_Data
9) Taiwania, 58(1): 1–6, (2013)
Two New Species of Liparis (Orchidaceae) from Taiwan L. reckoniana, L. rubrotincta
https://taiwania.ntu.edu.tw/pdf/tai.2013.58.1.pdf
10) Bull.Natl.Mus.Nat.Sci.,Ser.B,45(3), pp.107–118,(2019)
Taxonomic Reappraisal of Liparis japonica and L. makinoana (Orchidaceae)
https://www.kahaku.go.jp/research/publication/botany/download/45_3/L_BNMNS_B45-3_107.pdf