トキソウ 朱鷺草

mark

Flora of Mikawa

ラン科 Orchidaceae トキソウ属

中国名 朱兰 zhu lan .
学 名 Pogonia japonica Reichb. fil.
トキソウの花
トキソウの花横と苞
トキソウの花弁
トキソウ
花 期 5~7月
高 さ 10~30㎝
生活型 多年草
生育場所 日当たりのよい湿地
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国
撮 影 長ノ山湿原 03.6.21
和名の由来はうすいピンクの花の色が鳥の朱鷺(トキ)の羽根の色に似ていることから。
 根茎は長さ10~20㎜、幅約2㎜。葉は根生し、長さ3.5~10㎝、幅0.7~1.7㎝の惰円形~楕円状披針形。苞は葉の上4~8㎝の位置に1個つき、長さ15~25(40)㎜、幅3~7㎜の狭楕円形~線状披針形~披針形。花は茎頂に横向きに単生する。子房と小花柄は長さ10~18㎜。萼片は長さ15~22㎜、幅2.5~3.5㎜の楕円状狭倒披針形。側弁は花弁に似て、長さ14~22㎜、幅3.5~5㎜。唇弁は長さ14~20㎜、幅3~4㎜、3裂する。側裂片は長さ約0.8㎜、三角状。中央裂片は長さ6~13㎜、幅3~4㎜、2~3列の房状突起があり、縁は繊維状の切れ込みがある。ずい柱は直立し、長さ7~10ミリ。果実は長さ20~25㎜、幅5~6㎜の惰円形。2n=18,20

トキソウ属

  family Orchidaceae - genus Pogonia

 多年草、地上生。 根茎は斜上し、円筒形、細い。根は束生し、細長く、繊維状、わずかに肉質。 茎は直立し、細く、葉が1枚つく。葉は楕円形~長円状披針形、草質~わずかに肉質、基部に鞘がある。花序は頂生、細く、普通、花が単生、まれに、花が2個または3個つく。花の苞は宿存性、葉状。 花は逆さまになり(resupinate)、華やか。 萼片は離生、等長、広がる。 花弁は離生、普通、ずい柱を超えて下向きに折れ曲がり、萼片よりわずかに幅が広く短い。唇弁は長円状倒卵形、全縁~中間より上で浅く3裂し、距は無く、縁は房状へりになり、ディスク(disk:唇弁の下半部の側裂片との間の範囲)は密にパピラがある。ずい柱は細く、先が広がる。葯床(やくしょう clinandrium:ずい柱の上部で葯を含んでいるくぼみ)は縁がぎざぎざ。葯は頂生、稔性。花粉塊は2個、顆粒状粉状(granular-farinaceous)、花粉塊柄や粘着体は無い。柱頭は表面が大きい。嘴状体は短く、幅が広く、柱頭の上に突き出る。蒴果は直立する。英名はbeard flower。
 世界に6種あり、東アジア、北アメリカに分布し、日本には3種ある。

トキソウ属の主な種と園芸品種

1 Pogonia japonica Rchb.f. トキソウ 朱鷺草
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国原産。中国名は朱兰 zhu lan。英名は
 多年草、高さ10~30㎝。根茎は長さ10~20㎜×幅約2㎜。葉は根生し、長さ3.5~10㎝×幅0.7~1.7㎝の惰円形~楕円状披針形。苞は葉の上4~8㎝の位置に1個つき、長さ15~25(40)㎜、幅3~7㎜の狭楕円形~線状披針形~披針形。花は茎頂に横向きに単生する。子房と小花柄は長さ10~18㎜。萼片は長さ15~22㎜、幅2.5~3.5㎜の楕円状狭倒披針形。側弁は花弁に似て、長さ14~22㎜、幅3.5~5㎜。唇弁は長さ14~20㎜、幅3~4㎜、3裂する。側裂片は長さ約0.8㎜、三角状。中央裂片は長さ6~13㎜、幅3~4㎜、2~3列の房状突起があり、縁は繊維状の切れ込みがある。ずい柱は直立し、長さ7~10㎜。果実は長さ20~25㎜、幅5~6㎜の惰円形。2n=18,20。花期は5~7月。
1-1 Pogonia japonica Rchb.f. f. lineariperiantha Satomi et T.Ohsawa イトザキトキソウ 糸咲朱鷺草
 側花弁の幅が狭い品種。
1-2 Pogonia japonica Rchb.f. f. pallescens Tatew. シロバナトキソウ 白花朱鷺草
 白花品種。

2 Pogonia minor (Makino) Makino ヤマトキソウ 山鷺草
 日本(北海道、本州、四国、九州)、台湾原産。中国名は小朱兰 xiao zhu lan。草原に生える。  高さ13~16cm。根茎は長さ2~7㎜×幅約2㎜、数本の細長い根がある。茎は葉の下部に鞘があり、鞘は長さ7~12㎜。葉の長円形-披針形、長さ3~7㎝×幅0.4~1.2㎝、わずかに肉質、基部は茎を抱き、先は鋭形または鈍形。花の苞は葉の3~6cm上に位置し、狭披針形、長さ20~30㎜×3~4㎜。花は単生、頂生、直立し、大きく開かず、白色。小花柄と子房は長さ10~20㎜。萼片は狭倒披針形、長さ12~13(~15)㎜×幅2~3㎜、先は鋭形。花弁は萼片に似ており、狭卵状楕円形、長さ12~13(~15)㎜×幅2.5~4㎜、先は鋭形。唇弁は倒披針形、約・長さ11㎜×幅2㎜、中間の上で3裂する。側裂片は三角形、長さ約1㎜、先は鋭形。中裂片は長円形、約・長さ5㎜×幅2mm、3個の肉質の毛の冠毛があり、縁は不規則に小歯がある。ディスク(disk)は唇弁の基部から中裂片の基まで伸びる縦の3本のうねがあり、中裂片の冠毛に連続する。ずい柱は直立し、ほぼ真っ直ぐで、白色、長さ約7㎜。蒴果は長円形、長さ約20㎜。花期は5~6月。2n=18。
2-1 Pogonia minor (Makino) Makino f. pallescens (Nakai) Okuyama シロバナヤマトキソウ 白花山鷺草
 白花品種。

3 Pogonia subalpina T.Yukawa et Y.Yamashita ミヤマトキソウ 深山鷺草
 日本固有種。本州(東北地方と中部地方)に分布。高山の草地や砂礫地などに生える。
 地上生、高さ9~16㎝。根茎は円筒形、細い。根は4~6本、束生し、繊維状、円筒形、毛があり、長さ9.5㎝まで。茎は直立し、2うねがあり、基部に数個の鞘があり、緑色、基部は暗紫赤色、長さ6~11㎝。葉は1枚、開出状にほぼ直立し、披針形~倒披針形、先は鋭形または鈍形、肉質、革質、基部は狭くなり、茎を抱き、緑色、光沢があり(lucid)、長さ24~70㎜×幅10~20㎜。花の苞は葉の3.5~6㎝上に位置し、ほぼ直立し、披針形、先は鈍形、肉質、革質、宿存し、緑色、光沢があり、長さ11~40㎜×幅2~9㎜。花は単生、頂生。小花柄のつく子房はこん棒形、6溝があり、紫色を帯びた緑色、長さ10~22㎜×直径2㎜。背萼片は線状倒披針形、ほぼ鋭形~鈍形、全縁、開出し、淡ピンク色、長さ17~20㎜×幅4~4.5mm。側萼片は線状倒披針形、ほぼ鋭形~鈍形、全縁、わずかに斜め、開出し、淡ピンク色、長さ17~19.5㎜×幅4mm。花弁は倒披針形、先は鈍形、ほぼ全縁、抱茎、淡ピンク色、中脈に沿って幅の広い紫ピンク色の帯がつき、長さ16~19㎜×幅6~7㎜。唇弁は弱く反曲し、中間より上で3裂し、ディスクは幅の広いうねをもち、うねは基部から伸びて、中裂片の上のとさかに連続し、内面にはまばらに毛があり、基部に一対の球形のうねがあり、淡ピンク色~暗ピンク色で、クリーム黄色~クリーム色のうねと毛をもち、外面は無毛、平らにすると長さ15~18㎜×幅6~6.5mm。側裂片は斜め三角形、直立し、先の縁は不規則に欠刻状に切れ込み、長さ2mm。中裂片は狭三角状舌形、先は鈍形、長さ0.8㎜以下の毛のあるとさかがあり、先の縁は不規則に欠刻状に切れ込み~全縁、長さ4.5~6㎜×幅2~3mm。ずい柱はこん棒形、直立し、内側にパピラがあり、約・長さ11㎜×直径2.5㎜。葯床(やくしょう clinandrium:ずい柱の上部で葯を含んでいるくぼみ)は縁がぎざぎざ。蓋(operculum)は長方形、約・長さ2㎜×幅2.5㎜。花粉塊は2個、顆粒状~粉状、無毛、装飾器官なし。嘴状体は短く、幅が広く、柱頭の上に突き出す。花期は6~8月。

参考

1) Flora of China
 Pogonia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=126258
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Pogonia
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30001705-2
3) World Flora Online
 Pogonia
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000030573;jsessionid=57F18641290B516BEF87FCBA831A580E
4) Flora of North America
 Pogonia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=126258
5) Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., Ser. B, 43(3), pp. 79–86, August 22, 2017
 Pogonia subalpina (Orchidaceae): a new species from Japan ミヤマトキソウ
https://www.kahaku.go.jp/research/publication/botany/download/43_3/43-3_79.pdf
6) World Checklist of Vascular Plants
 Pogonia
https://wcvp.science.kew.org/