タシロラン 田代蘭

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Flora of Mikawa

ラン科 Orchidaceae トラキチラン属

別 名 タカトリラン
中国名 虎舌兰 hu she lan
英 名 drooping orchid , rose epipogium , ghost orchid , leafless nodding orchid
学 名 Epipogium roseum (D.Don) Lindl.
タシロランの花序
タシロランの花
タシロランの唇弁
タシロランの鞘状の葉
タシロラン
タシロランの蕾
タシロランの花横
花 期 6下旬~7月初旬
高 さ 10~45(60)㎝
生活型 多年草
生育場所 山地の常緑樹林内
分 布 在来種 本州(関東地方以西))、四国、九州、沖縄、台湾、インド、ネパール、ブータン、スリランカ、ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピン、アフリカ、オーストラリア、南太平洋諸島
撮 影 新城市  14.6.30
蒲郡市  15.7.10 
和名は発見者の田代善太郎氏の名をとり、牧野富太郎博士により命名された。愛知県の絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。愛知県レッドデータブックに記載されているように最近、増加傾向にある。2015年は蒲郡で約70本の群生が見られた。
 腐生植物、葉緑素がなく、全体に白黄色を帯びる。根茎は長さ1~5㎝、太さ0.5~2㎝の円筒状の卵形~楕円形、多数の節がある。茎は中空、直径3~7㎜の円筒形、直立する。鱗片葉は離れて1~8個つき、膜質、長さ7~13㎜の鞘状。茎頂に総状花序を出し、2~16個程度の花をつける。総状花序は花のつかない苞より上で、長さ10~20㎝。花は下部から開花する。苞は長さ7~12㎜、幅4~7㎜、紅紫色の斑点が普通ある。小花柄は長さ3~7㎜。萼片は長さ8~11㎜、幅1.5~2.5(3)㎜の線状被針形、先がほぼ尖る。側花弁は萼片に似るが、やや短く、幅が広く、長さ7~10㎜、幅2~3㎜の狭卵状被針形、鋭頭~鈍頭。唇弁は広げたとき、長さ8~12㎜、幅6~7㎜の広卵形、紅紫色の斑点があり、縁は微細な鋸歯状になる。唇弁の基部にある距は長さ3~5㎜、幅1.5~2.5㎜、長楕円形(円筒状)、先が丸く、子房側に突き出る。子房は長さ5~7㎜、惰円形、6脈がある。ずい柱は長さ2.5~4.5㎜、先端の葯は類球形、直径約4㎜。蒴果は長さ5~7㎜、幅約5㎜の楕円形。種子は長さ.3㎜、惰円形、網目模様がある。2n=68。

トラキチラン属

  family Orchidaceae - genus Epipogium

 多年草、地上生(terrestrial)、 全菌栄養性(holomycotrophic)。根茎は塊茎(rhizome)または珊瑚状地下茎(coralloid rhizome)、肉質。茎は直立し、肉質で、節に短い鱗片状の鞘の苞があり、白色または淡黄白色、葉は無く、無毛。花序は頂生、総状花序、花は数個~多数つき、一日[数日]限り(ephemeral)。花の苞(floral bracts)は卵状披針形、膜質。花は普通、垂れ下がり、逆さになり(resupinate)またはならず、黄白色で紫色(violet)または赤褐色の斑紋がある。小花柄は細く、しばしば長い。子房は広がる。萼片と花弁は似ており、輻合または広がり、離生で、披針形。唇弁は、平らにすると広卵形、肉質、凹面状、基部に距があり、全縁または3裂する。ディスク(disk:唇弁の下半部の側裂片との間の範囲)はパピラ(乳頭状突起)があり、縦のうね(隆起条)または薄板=ラメラ(lamellate)もある。距は幅が広く、短い袋状~長く、真っすぐまたはわずかに湾曲し、先が鈍形。ずい柱は短く、肉質、ずい柱の足は無い。葯は折りたたまれる(incumbent)かまたはほぼ直立する。花粉塊(pollinia)は2個、それぞれが深く裂け、こん棒形、緩い顆粒状粉状(granular-farinaceous)、それぞれが細い花粉塊柄(caudicle)を持ち、粘着体(viscidium)に付着する。柱頭はずい柱の基部に置かれる。嘴状体(rostellum)は幅が広く、ときに縮小して不明で、普通は柱頭から離れる。蒴果は楕円形または卵形、普通、早く成熟する。
 世界に5種あり、熱帯アフリカ、温帯および熱帯アジア、ヨーロッパ、南西太平洋諸島。オーストラリア北東部に分布し、日本には3種ある。

トラキチラン属の主な種と園芸品種

1 Epipogium aphyllum Sw. トラキチラン 寅吉蘭
 日本(北海道、本州の福島県・栃木県・埼玉県・山梨県・長野県)、韓国、中国、台湾、ブータン、インド、カシミール、ネパール、ロシア、ヨーロッパ原産。中国名は裂唇虎舌兰 lie chun hu she lan。和名は日本で最初の採取者の神山虎吉氏を記念して牧野富太郎博士が命名した。針葉樹林などの林内、地面や岩などの裂け目、苔むした場所に生える。
 多年草、高さ10~30㎝。根茎は珊瑚状、長さ1.5~2.5㎝×幅1~1.8㎝、分枝する。茎は淡褐色、少数の膜質の鞘があり、鞘は茎を抱き、淡褐色、長さ5~9㎜、膜質。花序軸は緩き、花が2~6個つく。花の苞は狭卵形、長さ6~9㎜×幅2.8~4㎜。花は逆さにならず、普通、垂れ下がり、弱く~広く広がり、黄色で、ピンク色または淡紫色を帯びる。小花柄は長さ3~5㎜。子房は長さ3~5㎜。萼片は広がり、披針形~長円状披針形、長さ12~18㎜×幅2~3㎜、先は鈍形または鋭形。花弁は萼片に似ており、広がり、しばしば萼片よりわずかに広く、先が鋭形。唇弁は平らにすると心状卵形、凹面状、長さ6~10㎜×幅6~12㎜、基部近くで3裂する。側裂片は直立し、卵状三角形、長さ3~3.5㎜×幅約3㎜。中裂片は後屈し、卵状楕円形、凹面状、長さ8~10㎜×幅6~7㎜、側部の縁はほぼわずかにギザギザで、内巻し、先は鋭形。ディスクは縦の4~6本のうねがあり、うねは紫赤色でパピラがある。距は大きくて太く、長さ5~8㎜×幅4~5㎜、先は鈍形。ずい柱は長さ6~7mm。花期は8~9月。2n=68。

2 Epipogium japonicum Makino アオキラン 青木蘭
 日本(本州の中部地方以北、東北地方)、中国、台湾原産。中国名は日本虎舌兰 ri ben hu she lan。針葉樹林(トウヒ属)、広葉樹林の林床に生える。
 多年草、高さ10~30cm。根茎は塊茎、狭卵形、長さ1~3cm×直径0.4~1.5cm、多数の節がある。茎は1~6個の鞘が散在し、淡黄褐色で紫色の斑点と条線がある。鞘は抱茎、淡黄褐色、長さ約10㎜、膜質。花序軸は緩く、花が3~10個つき、ときに、先がわずかに曲がる。花の苞は卵状披針形、約・長さ10㎜×幅4㎜、先は鋭形~尖鋭形。花は逆さまになり、前に突き出す(porrect)~垂れ下がり、普通、大きく開き、褐色で、萼片、花弁、および唇弁はピンク色~栗色の斑点と条線がある。小花柄と子房は長さ約12㎜。萼片は弱く~広く広がり、卵状披針形、長さ8~11㎜×幅3~5㎜、3脈があり、縁は波打ち、先は鋭形~尖鋭形。花弁は萼片に似ており、広がりが弱く、わずかに斜め、長さ8~10㎜×幅5~6㎜、先は鋭形~尖鋭形。唇弁は平らにすると心状卵形、凹面状、長さ8~12㎜×幅9~10㎜、基部に距があり、全縁、側部の縁は内曲する。ディスクには密にパピラがある。距は垂れ下がり、子房から離れる方向に前に曲がり、長い円筒形、長さ6~9㎜×幅2~4㎜、子房より長く、先は浅く2裂する。ずい柱は長さ約8㎜、弧状。葯は卵形。花期は(8~)9月。

3 Epipogium roseum (D.Don) Lindl. タシロラン 田代蘭
  synonym Epipogium rolfei (Hayata) Schltr.
  synonym Epipogium poneranthum Fukuy.
  synonym Epipogium meridianum T.P.Lin
  synonym Epipogium kentingense T.P.Lin et S.H.Wu
  synonym Epipogium dentilabellum Ohtani et Shig.Suzuki
 日本(本州の関東地方以西、四国、九州、沖縄)、台湾、インド、ネパール、ブータン、スリランカ、ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピン、アフリカ、オーストラリア、南太平洋諸島原産。中国名は虎舌兰 hu she lan。英名はdrooping orchid , rose epipogium , ghost orchid , leafless nodding orchid。別名はタカトリラン。山地の常緑樹林内に生える。
 多年草、高さ10~45(60)㎝。腐生植物、葉緑素がなく、全体に白黄色を帯びる。根茎は長さ1~5㎝、太さ0.5~2㎝の円筒状の卵形~楕円形、多数の節がある。茎は中空、直径3~7㎜の円筒形、直立する。鱗片葉は離れて1~8個つき、膜質、長さ7~13㎜の鞘状。茎頂に総状花序を出し、2~16個程度の花をつける。総状花序は花のつかない苞より上で、長さ10~20㎝。花は下部から開花する。苞は長さ7~12㎜、幅4~7㎜、紅紫色の斑点が普通ある。小花柄は長さ3~7㎜。萼片は長さ8~11㎜、幅1.5~2.5(3)㎜の線状被針形、先がほぼ尖る。側花弁は萼片に似るが、やや短く、幅が広く、長さ7~10㎜、幅2~3㎜の狭卵状被針形、鋭頭~鈍頭。唇弁は広げたとき、長さ8~12㎜、幅6~7㎜の広卵形、紅紫色の斑点があり、縁は微細な鋸歯状になる。唇弁の基部にある距は長さ3~5㎜、幅1.5~2.5㎜、長楕円形(円筒状)、先が丸く、子房側に突き出る。子房は長さ5~7㎜、惰円形、6脈がある。ずい柱は長さ2.5~4.5㎜、先端の葯は類球形、直径約4㎜。蒴果は長さ5~7㎜、幅約5㎜の楕円形。種子は長さ.3㎜、惰円形、網目模様がある。2n=68。花期は6下旬~7月初旬。

参考

1) Flora of China
 Epipogium
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=111863
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Epipogium
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:60452048-2
3) World Flora Online
 Epipogium
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000013630;jsessionid=3C99CF6250FA711644E20847FF3797AA
4) 植物研究雑誌 42(10): 295–311(1967)
 日本およびその附近に産するタシロラン属について
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_042_295_311.pdf
5) World Checklist of Vascular Plants
 Epipogium
https://wcvp.science.kew.org/