イヌタデ 犬蓼

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Flora of Mikawa

タデ科 Polygonaceae イヌタデ属

別 名 アカマンマ
中国名 长鬃蓼 chang zong liao
英 名 bristly lady's-thumb ,Oriental lady's thumb , Asiatic smartweed
学 名 Persicaria longiseta (De Bruyn) Kitag.
 synonym Persicaria longiseta var. longiseta 狭義
 synonym Polygonum longisetum Bruijn
イヌタデの花
イヌタデの花2
イヌタデの小苞
イヌタデの托葉鞘
イヌタデの果実
イヌタデ葉裏の主脈
イヌタデ
イヌタデ花序
イヌタデの葉
イヌタデの葉表
イヌタデの葉裏
花 期 (5~)6~10月
高 さ 20~50(60)㎝
生活型 1年草
生育場所 道端、荒地などに普通
分 布 在来種 日本全土、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、陝西省、山東省、山西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、モンゴル、ロシア、インド、ネパール、ミャンマー、インドネシア、マレーシア、フィリピン原産
撮 影 豊川市  05.10.15
イヌタデは道端、荒地などで普通に見られる。
 1年草、高さ20~50(60)㎝。茎は赤味を帯びることが多く、葉は互生し、長さ3~8(13)㎝、幅1~2㎝の広披針~披針形、全縁、縁毛があり、先が尖り、基部は楔形。葉裏に腺点があり、主脈上に伏毛がある。長さ1~5㎝の円柱状の総状花序に紅色の花を密につける。花被は5裂し、淡紅色、花後は紅色になり痩果を包んで残る。雄しべは(6~)8本。花柱は3本。小苞は赤色、長い縁毛が多数あり、花の間から突き出る。托葉鞘は長さ5~7(~8)㎜の円柱形、先に托葉鞘とほぼ同長の剛毛がつく。痩果は長さ約2㎜の3稜形、赤色の花被に包まれたまま、黒褐色に熟し、光沢がある。花期は(5~)6~10月。2n=40。
 変種の var. rotundatum は日本には無く、葉の基部が円形で、2n=20。
 ヒメタデ Persicaria erectominor (Makino) Nakai は日本固有種。絶滅危惧種に指定されている。葉幅が3~6㎜と狭くて葉が細長く、基部は広い楔形。短い葉柄がある。托葉鞘の縁毛は長さ3~4㎜。雄しべが5~7個。葉の基部が円形のイヌタデの変種(var. rotundatum)と似ているが、葉幅、葉の基部、葉柄などが異なっている。
 類似のハルタデは開花が5~8月であり、托葉鞘の縁の毛は短く、痩果が普通、扁平な円形で基部の中央が膨れる。
 ハナタデはやや日陰にも生え、葉先が尾状に尖る。花序がやや長く、花がややまばらにつき、イヌタデの細いものとよく似ている。

イヌタデ属

  family Polygonaceae - genus Persicaria
 
 根茎又は匍匐枝がある。茎は直立又は、ときに、平伏又は攀縁(はんえん)し、単純又は分枝し、無毛又は有毛、まれに後方へ曲がった刺をもつ。葉は落葉、ほとんど茎葉、互生し、葉柄は有又は無。葉鞘は宿存又は古くなると崩壊して、全体に又は上部で脱落、普通、タン色、褐色又は帯赤色、紙質又は部分的~全体に葉質、まれに、下部が皮革質で上部が紙質、無毛又はざらつき~様々な毛があり、上部で2裂しない。葉身は披針形~卵形~矛形~矢じり形、縁は全縁又はまれに矛形に分裂する。花序は頂生、又は頂生及び腋生、穂状花序状、円錐花序状、又は頭状花序。花序柄は有る。花柄が有又は無。花は両性(しばしば、P. amphibia や P. hydropiperoidesにおいては機能的に単性)、鞘状苞(ochreola)の小束(ocreate fascicle)ごとに花が1~14個つき、基部は柄状にならない。花被は白色、緑白色、バラ色、赤色、又は紫色、鐘形又はつぼ形、まれに車形、まれに果時に肉質になり、無毛、ときに腺点(glandular-punctate)があり、花後に大きくなり又は大きくならない。花被片は4~5個、長さの1/2~1/3が合着し、花弁状、二形。外側の花被片は内側の花被片より大きい。雄しべは5~8個。花糸は分離又は基部で合着。外側の花糸はときに花被の筒につき、無毛。葯は黄色、ピンク色、又は赤色、楕円形~卵形。花柱は2~3個、直立又は開出~反曲し、分離又は合着。柱頭は頭状。痩果は包まれ又は突き出し、褐色~暗褐色~黒色、翼は無く、円盤形、両凸形、2~3稜形、又は回転楕円体、無毛。種子は胚が曲がる。x=10, 11, 12。
 世界に約132種あり、ほぼ全世界に分布する。

イヌタデ属の主な種

1 Persicaria amphibia (L.) Delarbre エゾノミズタデ 蝦夷の水蓼
  synonym Persicaria amphibia (L.) Gray var. amurensis (Korsh.) H.Hara 
  synonym Persicaria amphibia (L.) Gray subsp. amurensis (Korsh.) Sojak
  basionym Polygonum amphibium L.

  synonym Polygonum platyphyllum Li & Chang [Flora of China]ヒロハイワタデ

  synonym Pleuropteropyrum platyphyllum (Li & Chang) Kitagawa
  synonym Aconogonon platyphyllum (S.X.Li et Y.L.Chang) H.Hara
 北半球の冷温帯に広く分布。英名はamphibious bistort , water persicaria , water smartweed , willow-grass 。中国名は两栖蓼 liang qi liao 。海抜3700mの池、川岸、湿地、荒れ地に生える。
 多年草、水陸両生(amphibious)。根茎は水平。水生植物:茎は浮かび、無毛、節から根を出す。葉は長い葉柄があり、浮かぶ。葉身は長円形~楕円形、長さ5~12㎝×幅2.5~4㎝、無毛、基部は類心形、先は切形、縁毛は無い。陸生植物:茎は直立、高さ40~60㎝、単純又は基部で分枝する。葉柄は長さ3~5㎜。葉身は披針形~長円状披針形、長さ6~14㎝×幅1.5~2㎝、両面に伏した小剛毛があり、基部は円形、全縁、縁毛があり、先は鋭形。托葉鞘は筒形、長さ1.5~2㎝、膜質、まばらに剛毛があり、先は切形、縁毛は短い。花序は頂生又は腋生、穂状花序、長さ2~4㎝。苞は広漏斗形。花被は帯ピンク色又は白色、5深裂する。花被片は長円形、長さ3~4㎜。雄しべは普通、5個、突き出ない。花柱は2個。突き出し、中間まで合着する。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に包まれ、黒色、光沢があり、円形、レンズ形、直径2.5~3㎜。花期7~8月。果期は8~9月。2n=66, 88, 96。
 下記のヒロハイワタデ(Polygonum platyphyllum Li & Chang)はKewscienceではsynonymとされている。
 中国(遼寧省)原産。中国名は宽叶神血宁 kuan ye shen xue ning 。標高200~500mの山の斜面に生える。
 多年草。 茎は直立し、大きく、高さ約100㎝まで、無毛、枝は広がる。 葉柄は短いか、ほとんど無い。葉身は卵形または卵状披針形、長さ6~10㎝×幅2.5~5㎝、両面に直軟毛があり、基部は楔形または広楔形、縁は全縁またはわずかに波打ち、密な縁毛がある。托葉鞘は筒状、膜質、直軟毛があり、裂開性。花序は円錐花序、広がる。花序軸と枝は無毛。苞は卵状三角形、先は尖鋭形で、それぞれ2~3個の花がつく。小花柄は直立し、苞の長さに等しく、長さ約2㎜、無毛、先に関節がある。花被は白色、5深裂する。花被片は楕円形、長さ約2㎜。雄しべは8本、突き出ない。花柱は3本。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被を明らかに超え、通常直立し、褐色、光沢があり、長円形、三稜形、長さ4~5㎜。花期は6~7月。果期は8~9月[Flora of China]。

2 Persicaria angustifolia (Pall.) Ronse Decr. ヤナギイワタデ 柳岩蓼   synonym Aconogonon angustifolium (Pall.) H.Hara [YList]

  synonym Pleuropteropyrum angustifolium (Pall.) Kitag. [Flora of China]

  synonym Polygonum angustifolium Pall.
 中国(河北省、黒竜江省、内モンゴル)、モンゴル、ロシア(極東、東シベリア)原産。中国名は狭叶神血宁 xia ye shen xue ning。標高600~1600mの芝生の斜面、丘に生える。  多年草。 茎は直立し、高さ20~50cm、分枝する。 枝が広がり、条線があり、無毛。 葉柄は非常に短いか、ほとんど無く、葉身は狭線形、長さ3~6㎝×幅2~4㎜、両面とも無毛、中脈が目立ち、側脈は下面で不明瞭、基部は狭く、縁は顕著に外巻きし、先はやや鈍形。托葉鞘は早落性、筒状、膜質、脈があり、裂開性。花序は円錐花序、緩く、花序軸と枝は無毛。苞は褐色、卵形、膜質、先は鋭形、それぞれに1~3個の花がつく。小花柄は長さ1.5 ~ 2 mm、先端は関節状。 花被は白色または乳白色、5深裂する。花被片は楕円形、不等長、長さ2~2.5㎜。雄しべは8本、突き出ない。花柱は3本、短い。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に包まれ突き出ず、褐色、光沢があり、卵状菱形、三稜形、長さ2~2.5㎜。花期は7~8月。果期は8~9月

3 Persicaria attenuata (R.Br.) Sojak ペルシカリア・アッテヌアタ
  synonym Polygonum attenuatum R.Br.
 オーストラリア、レッサースンダ島、ニューギニア原産。湿原に生える。英名はvelvet knotweed, hairy knotweed, water smartweed。
 多年草、直立~平伏し、高さ1mまで。茎は膨れ、浮遊し、植物が水に浸かっていると長さ3mにもなり、無毛またはまばらに毛がる。托葉鞘は無毛または鞘に伏毛があり、先にはときに縁毛がある。葉は狭卵形、±鎌形、長さ5~20㎝×幅15~50㎜。様々な毛があり、通常少なくとも縁と主脈には長い白色の伏毛があり、葉身の面は無毛~ほぼ絨毛があり、通常は下面に密に腺点があり、上面に腺があることはあまりない。葉柄は長さ10~40㎜。花序は2~4個が十分な間隔をあけ、た密な円筒形の穂状花序であり、長さ4~13㎝×直径6~10㎜。花序柄は長さ4~5㎝。花被片は長さ3~5㎜、白色またはやや帯緑色、その長さの半分~2/3が自由部分。堅果はレンズ形、長さと幅が2.0~2.5㎜、暗褐色~帯黒色。花期は4~9月(オーストラリア)。

4 Persicaria barbata (L.) H.Hara ケタデ 毛蓼
  synonym Persicaria kotoshoensis (Ohki) Sasaki 
  synonym Persicaria flaccida auct. non (Roxb.) Nakai ex Sasaki
  basionym Polygonum barbatum L [Flora of China]
  synonym Polygonum omerostroma (Ohki) Sasaki
  synonym Polygonum kotoshoense Ohki
  synonym Polygonum omerostromum Ohki
 日本(琉球各島)、中国、台湾、インド、ブータン、ネパール、スリランカ、ミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ニューギニア原産。中国名は毛蓼 mao liao。別名はリュウキュウタデ。標高0~1300mの湿地、川岸、水辺に生える。
 多年草。 根茎がある。茎は直立、高さ40~90㎝、丈夫、有毛、単茎又は上部で分枝する。葉柄は長さ5~8㎜、密に小剛毛がある。葉身は披針形~楕円状披針形、長さ7~15㎝×幅1.5~4㎝、両面に毛があり、基部は楔形、縁は縁毛があり、先は尖鋭形。托葉鞘は筒形、長さ1.5~2㎝、膜質、密に小剛毛があり、先は切形、縁毛は長さ1.5~2㎝。花序は頂生、穂状花序、直立、長さ4~8㎝、数個の穂状花序がつき、円錐花序状になり、稀に単生。苞は漏斗形、無毛、縁に縁毛があり、各苞に花が3~5個つく。花柄は、短い。花被は白色又は帯緑色、5深裂する。花被片は楕円形、長さ1.5~2㎜。雄しべは5~8個、突き出ない。花柱は3個。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に包まれ、黒色、光沢があり、卵形、3稜形、長さ1.5~2㎜。花期は8~9月。果期は9~10月。2n=60。

4-1 Persicaria barbata var. barbataケタデ 毛蓼 狭義

4-2 Persicaria barbata (L.) H.Hara var. gracilis (Danser) H.Hara リュウキュウタデ 琉球蓼

  synonym Persicaria barbata (L.) H.Hara subsp. gracilis (Danser) Sojak

  synonym Polygonum barbatum var. gracile (Danser) Steward
  日本(琉球各島)、中国、インド、スリランカ、パキスタン、ミャンマー、ネパール、ブータン、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアに分布。中国名は細刺毛蓼 xi ci mao liao。湿り気のある場所に生える。
 1年草、直立し、高さ50~100㎝、ときに這い、平伏し、小数の枝がある。茎は弱く、細く、滑らかで、細かい条線や溝がある。葉は無柄からほぼ無柄、葉柄は長さ2~4㎜。葉身は長さ6~17㎝×幅1.2~3㎝、線形~線状披針形、基部は鈍形~円形、先は漸尖形、葉縁のザラつきを除いて平滑、中肋と葉脈に毛がある。托葉鞘は長さ1~3.5㎝、筒状、褐色、粗い伏毛があり、先の縁毛は鞘のサイズの2/3~同長。花序は長さ5~10cm、花が多数つき、分枝した総状花序になる。各花序には1~3個の細い穂状花序がある。花序柄は長さ0.5~3㎝、平滑。花は白色、幅1~2㎜。小花柄は長さ0.75~1.5㎜。花被片は5個、花弁状、長さ1.5~2.5㎜×幅0.75~1.25㎜、倒披針形~倒卵形、先は鈍形、2列につき、腺はない。雄しべは5~8本、花糸は長い。子房は長さ1~2㎜×幅0.75~1.5㎜、広卵形または球形、三稜形。果実は三稜形、長さ1.8~2㎜×幅1.2~1.5㎜、平滑、無毛、黒色で光沢がある。花期は通年、主に9~11月。

5 Persicaria biconvexa (Hayata) Nemoto タイワンミゾソバ 台湾溝蕎麦
  synonym Polygonum biconvexum Hayata
 台湾、インドネシア(スマトラ島)原産。中国名は双凸戟叶蓼 shuang tu ji ye liao。標高1500~2500mの斜面、林縁、濡れた溝に生える。
 1年草。 茎は斜上し、基部は平伏し、高さ30~80㎝、分枝し、角に沿って逆向きの刺がある。葉柄は長さ2~4㎝、しばしば狭い翼があり、逆向きの刺がある。葉身は矛形、両面には剛毛があり、まばらに短い星状毛があり、基部はほぼ切形~心形、縁には縁毛があり、中裂片は広楕円形または卵形で、通常は基部近くでくびれ、縁には縁毛があり、先は尖鋭形、基部の裂片は卵形で小さく、先は鋭形~鈍形。托葉鞘は筒状、長さ5~10㎜、先は切形、ときに先に草質の翼を持ち、縁毛がある。花序は末端または腋生、頭状花序。花序柄には腺毛がある。苞は披針形、長さ3.5~4㎜、先端は尖鋭形、縁毛があり、各苞に2個の花がつく。小花柄は苞より短く、長さ2~3㎜。花被はピンク色で、4深裂する。花被片は楕円形、長さ2.5~3.5㎜、先は鈍形。雄しべは5~6本、2輪につく。花柱は2本、中央より下で合着する。柱頭は2個、頭状。痩果は宿存する花被に包まれ、褐色、不透明、広卵形、両凸形、長さ約3㎜。花期は7~8月。果期は9~10月

6 Persicaria breviochreata (Makino) Ohki ナガバノヤノネグサ 長葉矢の根草

 日本(本州の関東地方以西、四国、九州)、朝鮮原産。愛知県絶滅危惧ⅠB類。ホソバノウナギツカミと似ているが、托葉鞘が短い。
 1年草。茎は根元から分枝して斜上し、高さ30~50㎝。葉は短柄がある。葉身は長楕円状披針形、長さ2~7㎝×幅1~2㎝、先は鋭形、基部は浅い矢じり形で3角形の耳部があり、縁毛がある。托葉鞘は短く、長さ2~6㎜、長い縁毛がある。枝先に短い総状花序をつけ、まばらに1~3個の花をつける。花被は5深裂し、淡紅色、長さ3~4㎜。痩果は3稜形、黄褐色、光沢があり、長さ2.5~3㎜。花期は8~10月(レッドデーターブック愛知)。

7 Persicaria bungeana (Turcz.) Nakai ハリタデ 針蓼
   basionym Polygonum bungeanum Turcz.
  朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は柳叶刺蓼 liu ye ci liao 。英名はprickly smartweed 。日本に帰化している。
 1年草。茎は直立又は斜上、高さ30~80㎝、分枝し、後ろ向きの刺がある。葉柄は長さ5~10㎜。葉身は上面が緑色、披針形~狭楕円形、長さ4~13㎝×幅1~3 ㎝、下面に小剛毛があり、上面は無毛、普通、中脈に小剛毛があり、基部は楔形、縁毛があり、先は鋭形~類尖鋭形。托葉鞘は筒形、長さ1~1.5㎝、膜質、先は切形、長い縁毛がある。花序は頂生又は腋生、穂状花序、長さ5~10㎜、普通、分枝し、基部で間隔が開く。花序柄は密に腺毛がある。苞は緑色、漏斗形、縁毛は無く、無毛、しばしば、少数の腺毛がある。花柄は苞より短い。花被は白色又は帯ピンク色、5深裂する。花被片は楕円形、長さ3~4㎜。雄しべは8個、2輪につき、突き出ない。花柱は2個、中間の下で合着する。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に包まれ、黒色、光沢が無く鈍く、円形、両凸面形、直径約3㎜。花期は7~8月。果期は8~9月。2n=20。

8 Persicaria capitata (Buch.-Ham. ex D.Don) H.Gross  ヒメツルソバ 姫蔓蕎麦

  basionym Polygonum capitatum Buch.-Ham. ex D. Don
 中国(広東省、広西チワン族自治区、貴州省、湖北省、湖南省、江西省、四川省、西蔵省、雲南省)、インド、スリランカ、、パキスタン、ネパール、ブータン、ミャンマー、タイ、ベトナム、西ヒマラヤ原産。中国名は头花蓼 tou hua liao 。英名はJapanese knotweed , pink-head knotweed , pink-head persicaria 。別名はカンイタドリ。原産地では標高600~3500mの山の斜面、谷間の日陰の場所に生える。観賞用に栽培され、世界に広く帰化し、日本でも普通に見られるようになっている。民家付近、石垣、土手に生える。
 多年草。 茎は匍匐し、叢生し、基部は木質で、まばらに腺毛が生えているか、またはほぼ無毛で、多数、分岐し、節から根を出し、節間は葉身より短い。小枝は直立し、角(かど)があり、まばらに腺毛がある。葉柄は長さ2~3㎜、ときに基部に耳がある。葉身はときに上面に大きな帯黒色の斑紋があり、卵形または楕円形、長さ1.5~3㎝×幅1~2.5㎝、両面に腺毛があり、基部は楔形、縁は全縁で腺毛があり、先は鋭形。托葉鞘は筒状、長さ(2~)5~8㎜、膜質、まばらに腺毛があり、先端は切形、縁毛がある。花序は頂生、頭状花序、単生または双生し、球形、直径6~10㎜、多数つく。花序柄には腺毛がある。苞は狭卵形、膜質。小花柄は非常に短い。花被はピンク色で、5深裂する。花被片は楕円形、長さ2~3㎜。雄しべは8本、突き出ない。花柱は3本、中央より下が合着し、花被と等長。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に包まれ、黒褐色、わずかに光沢があり、狭卵形、三稜形がほとんどで、やや厚いレンズ形も混じり、長さ1.5~2㎜、密に細点がある。寒さにも強く、日本では冬にも花が見られることがあり、花期は(5)6~9(11)月。果期は8~10(11)月。2n=22。
品種)  'Pink Bubbles'

9 Persicaria chinensis (L.) H.Gross ツルソバ 蔓蕎麦
  synonym Persicaria umbellata (Houtt.) Nakai 

  synonym Persicaria chinensis (L.) H.Gross var. thunbergiana (Meisn.) Okuyama

  basionym Polygonum chinense L.
 日本(本州の房総半島以西、伊豆諸島、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、南甘粛、広東省、広西省、貴州省、海南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、四川省、西蔵省、雲南省、浙江省)、台湾、インド、スリランカ、ネパール、ブータン、ミャンマー、バングラデシュ、カンボジア、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピン原産。中国名は火炭母 huo tan mu。英名はChinese knotweed。ハワイ、パキスタンなどに帰化している。海抜3000mまでの湿った谷、草が茂った斜面、混交林、谷の藪、山の斜面に生える。
 多年草。根茎は丈夫。茎はつる状に横に這い、斜めに立ち上がりまたは直立し、高さ70~100㎝、基部は木質で、多数分枝し、条線があり、無毛または後向きの剛毛がある。葉は互生し、葉柄は長さ1~2㎝、通常基部には耳があり、上部の葉は無柄。葉身は卵形、楕円形、または披針形、長さ4~16㎝×幅1.5~8㎝、両面とも無毛または剛毛があり、下面にときに葉脈に沿って毛があり、腺点があり、基部は切形または広心形、縁は全縁、先は短い尖鋭形。托葉鞘は筒状、長さ1.5~2.5㎝、膜質、無毛、多数の脈があり、先は斜め、縁毛はない。花序は頂生または腋生、頭状、長さ3~5㎜、通常数個の頭状花序が集合して円錐花序状になる。花序柄は密に腺毛がある。苞は広卵形で、それぞれに1~3個の花がつく。花被は白色またはピンク色で、5深裂する。花被片は卵形で、果時に大きくなり、肥厚し、青黒色(暗黒紫色)で肉質(液質)になる。雄しべは8本、突き出ない。花柱は3本、中央の下まで合着する。痩果は宿存する花被に含まれ、黒色、光沢がなくにぶく、広卵形、三稜形、長さ3~4㎜。花期は(5~)7~11月。果期は7~12月。2n=22。

9-1 Persicaria chinensis var. chinensis ツルソバ 狭義

  synonym Polygonum chinense var. chinense
 日本(本州の房総半島以西、伊豆諸島、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、南甘粛、広東省、広西省、貴州省、海南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、四川省、西蔵省、雲南省、浙江省)、台湾、インド、スリランカ、ネパール、ブータン、ミャンマー、バングラデシュ、カンボジア、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピン原産。中国名は火炭母 huo tan mu。英名はChinese knotweed。
 茎や枝は通常無毛。葉身は卵形または狭卵形で、長さ4~10㎝×幅2~4㎝。花期は7~9月。果期は8~10月。

9-2 Persicaria chinensis var. hispida (Hook.f.) Kantachot

  synonym Polygonum chinense var. hispidum J. D. Hooker
 中国(広西チワン族自治区、貴州省、湖南省、四川省、雲南省)、インド(アッサム州)、ラオス、ミャンマー、タイ原産。中国名は硬毛火炭母 ying mao huo tan mu。標高600~2800mの山の斜面、谷間の藪に生える。
 茎や枝は後向きの剛毛がある。葉身は卵形~楕円形、両面に剛毛がある。花期は7~10月。果期は7~11月。
9-3 Persicaria chinensis var. ovalifolia (Meisn.) H.Hara ヒロハツルソバ
  synonym Polygonum chinense var. ovalifolium Meisner
  synonym Persicaria malaica (Danser) Galasso
  synonym Polygonum chinense var. malaicum (Danser) Steward
  synonym Polygonum malaicum Danser
 日本南部、中国(貴州省、西蔵、雲南省)、インド、スマトラ、ネパール、アッサム州、ミャンマー、バングラデシュ、マレーシア、タイ、ベトナム原産。中国名は宽叶火炭母 kuan ye huo tan mu。標高1200~3000mの混交林に生える。日本南部が分布域に含められている。Kewscience, Flora of Chinaでも日本を分布域に含めている。和名はつけられていないようであり、中国名からヒロハツルソバとした。東京大学の原寛教授がヒマラヤなどの植物相の研究で持ち帰ったものが東京大学総合研究博物館の付近に繁茂しているといわれている。詳細不明。
 茎や枝は無毛。 葉身は広卵形または広楕円形、長さ10~16㎝×幅6~8㎝。花期は7~9月。果期は7~11月。
品種) 'Indian Summer'

10 Persicaria clivorum Seriz. サトヤマタデ 里山蓼
 日本固有種(本州、九州)。沢沿の林道脇の湿った場所、谷あいの放棄されたの水田跡、谷筋の土砂の堆積場などに生える。別名はヒメボントクタデ。
 茎は直立し、高さ35~80㎝。葉は長楕円形で長さ6~12㎝×幅1.5~3㎝、基部は漸尖形、先は鋭形、両面に毛が多く、中央部に明瞭な黒班がある。托葉鞘は筒状で、長さ4~8㎜、縁毛は葉鞘とほぼ同長又は多少短い。花序は長さ4~10㎝、花序の先は垂れ下がり、まばらに淡紅色の花をつける。花期は8~9月。ボントクタデに似ているが、葉の質がやや薄く、花がよりまばら。

11 Persicaria debilis (Meisn.) H.Gross ex W.T.Lee ミヤマタニソバ 深山谷蕎麦

  synonym Polygonum debile Meisn

  synonym Persicaria triangularis var. glandulosa Honda ケミヤマタニソバ; Bot. Mag. (Tokyo) 59: 15 (1946)

  synonym Polygonum debilis f. purpurea N.Yonez.; J. Phytogeogr. Taxon. 33(1): 56 (1985)

  synonym Persicaria thunbergii var. coreana (H.Lév.) Nakai ヒカゲミゾソバ

 日本(本州、四国、九州)、朝鮮原産。英名はmountain nepalese smartweed。別名はベニミヤマタニソバ。山地の陰湿地に生える。
 1年草。茎は細く、根元から分枝し、下部は横に這い、先は斜上又は直立し、高さ15~50㎝になり、まばらに下向きの刺あり、多くは赤紫色を帯びる。葉は互生し、細長い葉柄があり、翼は無い。葉身は三角形、長さ1.5~5.5㎝×幅1.5~5.5㎝、各頂点は漸尖形(ときに基部の左右がやや張り出し、先は尖鋭形)、基部は切形、質は薄く、暗紫色の八の字形の斑紋があり、葉身と中脈に粗い刺を散生し、通常、星状毛はない。托葉鞘は長さ約4㎜、しばしば上部が緑色の葉状に丸く広がり、ごく短い縁毛がある。茎頂および上部の葉腋の細い枝先に花序柄を出し、先に小さな花が2~5個まとまってつく。花序柄や小花柄にときに腺毛がある(ケミヤマタニソバ)。花被は白色~~淡い紅色、5深裂する。花被片は広楕円形、長さ2~3㎜。雄しべは5~8本。花柱は3本。痩果は3稜形、長さ2.5(~3)㎜、褐色、光沢がある。花期は7~8(10)月。2n=16。
【ヒカゲミゾソバ Persicaria thunbergii var. coreana】
 現在ではミゾソバに含められるが、POWO(Kew)ではヒカゲミゾソバをミヤマタニソバsynonymとしている。
 1年草、高さ30~100㎝。全体に繊細で刺や毛が少ない。茎は中空、下向きの明瞭な小刺があり、根元は横に這い、立ち上がる。葉は互生し、質はやや厚く、葉形はミゾソバの小型で耳がなく三角形のもの~またはオオミゾソバ形の小さい形で葉身が長さ8~13㎜のもの~あるいはヤマミゾソバの葉が小型のものもヒカゲミゾソバとされていた。葉の基部は浅い心形~切形~楔形。葉柄には翼がある。花序の花数は少ない。花柄には赤色の腺毛、長毛及び小さな星状毛がある。花被は淡紅色~白色、ほとんど白色のものもあり、5裂する。托葉鞘は上部が葉のように丸く広がるものと縁毛だけの2種ある。痩果は長さ3~3.5(4)㎜の3稜形、黄緑色~淡褐色、光沢はない。果実が乾いてくると淡褐色になる。花期は6~9月上旬。2n=40。
 ヤマミゾソバ(Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross var. oreophila (Makino) Murai)も陰地植物であり、山地の林内に生え、湿地や水中には見られず、葉が三角状で似ている。植物体が長く伸び、側花序の柄が短く、葉は幅広くて中部でほとんど湾入せず、痩果はミゾソバより一層円味があって灰色がかり、灰色~灰緑色、著しい光沢がある(完熟して濃褐色のものもある)。花期は10月上旬~11月上旬。2n=38。

12 Persicaria dichotoma (Blume) Masam. ナツノウナギツカミ 夏の鰻攫
  synonym Persicaria ooagariensis Masam.
  basionym Polygonum dichotomum Blume
 日本(沖縄)、中国、台湾、インド、スリランカ、ラオス、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、オーストラリア、フィジー原産。中国名は二歧蓼 er qi liao 。別名リュウキュウヤノネグサ。溝や湿地に生える。
 1年草(多年草)。茎は斜上又は直立、高さ40~100㎝、しばしば、分枝し、まばらに後ろ向きの刺をもつ。 葉柄は長さ5~10㎜。葉身は披針形~狭楕円形、長さ5~10㎜×幅1~3㎜、両面とも無毛、下面の中脈に後ろ向きの刺をもち、基部は楔形~切形~類矛形、全縁、縁毛は無く又はごく短い縁毛があり、先は鋭形。托葉鞘は筒形、長さ1.5~2㎝、膜質、普通、無毛、先は斜めで縁毛は無い。花序は頂生又は腋生、密に短い刺があり、普通、1~2回二又分枝する。花序柄は腺毛がある。苞は広楕円形、長さ2~3㎜、縁毛があり、各苞に花が2~3個つく。花柄は苞より短い。花被は帯ピンク色、5深裂する。花被片は広楕円形、長さ2~3㎜。雄しべは5個、突き出ない。花柱は2個、分離。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に包まれ、褐色、光沢が無く、鈍く、円形に近く、両凸面(レンズ形)、直径2~2.5㎜。花期は6~7月。果期は8~10月。

13 Persicaria decipiens (R. Br.) K. L. Wilson ペルシカリア・デキピエンス

  synonym Polygonum decipiens R.Br.

  synonym Persicaria salicifolia (Brouss. ex Willd.) Assenov

  synonym Persicaria serrulata (Lag.) Webb & Moq

  synonym Persicaria serrulata var. asiatica Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 45: 114 (1931)

  synonym Polygonum serrulatum Lag.

  synonym Polygonum salicifolium var. serrulatum (Lag.) Maire & Weiller

  synonym Polygonum serrulatum var. salicifolium (Brouss. ex Willd.) Ball

  synonym Polygonum scabrum Poir.
 中国、インド、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマー、イラン、イラク、レバノン・シリア、パレスチナ、イエメン、トルコ、ヨーロッパ、ニューギニア、オーストラリア、ニュージーランド、チャタム島、アフリカ原産。英名はSlender Knotweed。
 1年草または短命の多年草、無毛またはほぼ無毛。茎は平伏または傾伏し、下部の節から根を出し、あまり枝分かれしない。根はかなり細い。主茎と枝の葉は似ている。葉柄は短いか、または無柄。葉身は長さ15㎝×幅4㎝・以下、披針形、しばしば暗色の斑紋があり、全縁または微細な小鋸歯があり、無毛またはときに両面の中肋に伏した毛があり、下面に腺点が多数あり、縁には伏した縁毛があり、基部は楔形~円形、先は尖鋭形。托葉鞘は長さ約1.5㎝、緑色またはピンク色、斜めの切形、先端に向かって広がらず、長い剛毛の縁毛[長さ約10~25㎜]がある。花は1~4個輪生し、単純または少数の枝があり、頂生または腋生の総状花序を形成する。総状花序は直立またはわずかに湾曲し、長さ1.5~8[9]㎝、ときに非常に細く、輪生が離れ、ときには幅が広く、円筒形で密に花がつく。花序柄は細く、上部の葉より長い。小花柄は苞に包まれているか、苞からわずかに突き出る。苞は切形、縁毛[長さ約1㎜]があるかまたは無毛。花被片は[5個、]長さ2~2.5[3]㎜、濃ピンク色~帯白色、腺は無く、花後に大きくなる。花被片は±楕円形、覆瓦状。堅果は長さ1.7~2.5㎜、両凸形~ほぼ平凸形[、通常3角形]、帯黒色、±光沢がある。2n=40。花期は11~6月。(Flora of New Zealand)[Flora of Zimbabwe]。

14 Persicaria dissitiflora (Hemsl.) H.Gross ex T.Mori コゴメタデ 小米蓼
  synonym Polygonum dissitiflorum Hemsley
 朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、貴州市、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、陝西省、山東省、山西省、四川省、浙江省)、ロシア原産。中国名は稀花蓼 xi hua liao。標高100~1500mの谷、丘陵地帯の草原、川岸に生える。
 1年草。 茎は基部で直立または基部で平伏し、高さ70~100㎝、分枝し、まばらに後向きの刺があり、通常は少数の星状毛がある。葉柄は長さ2~5㎝、星状毛が多く、しばしば後向きの刺がある。葉身は下面が薄緑色、上面が緑色、卵状楕円形、長さ4~15㎝×幅3~7㎝、上面にまばらに星状毛があり、中脈に沿って後向きの刺があり、上面にまばらに星状毛と剛毛があり、基部は心形または矢じり形、縁は短い縁毛があり、先は尖鋭形。托葉鞘は筒状、長さ0.6~1.5㎝、膜質、短い縁毛があり、斜め。花序は頂生または腋生の、円錐花序。花序柄は細く、赤紫色の腺毛がある。苞は緑色、漏斗形、長さ2.5~3㎜、縁には繊毛が強くあり、花は1個または2個つく。小花柄は長さ2~3mm。花被はピンク色、5深裂する。花被片は楕円形、長さ約3㎜。雄しべは7または8本、2輪につく。花柱は3本、中央より下で合着する。痩果は宿存する花被に包まれ、暗褐色、光沢がやや鈍く、球形、頂部が弱く三稜形、長さ約3㎜。花期は6~8月。果期は7~9月。

15 Persicaria erectominor (Makino) Nakai ヒメタデ 姫蓼
  synonym Polygonum erectominus Makino
  synonym Persicaria trigonocarpa var. viridiflora Nakai
 日本固有種。北海道、本州、四国、九州に分布する。水湿地に生え、農耕地や荒地など様々な環境にも生える。絶滅危惧種に指定されている。
 1年草。茎は下部が地を這い、高さ20~45cm、無毛、茎は通常やや細く、疎に分枝し、多少帯紅色。托葉鞘は筒状、薄く透明質、外面に疎に伏毛があり、縁毛 は長いか又は短かい(長さ3~4㎜)。葉は短い柄があり(やや無柄)、葉身は線形~線状披針形~広披針形、鈍頭状微尖~鋭頭~鋭尖頭、基部は広い楔形(狭脚~円脚)、非常に変化があり、長さ(3~)6~7(~8)㎝×幅(3)4~6(9)㎜、通常、薄膜質、稀にやや草質、側脈不明瞭、稀にやや明らか、縁辺と脈を除き無毛、稀に両面に疎に粗い短毛を布き、下面に微隆起点を布くが、腺点はない。総状花序はやや密に花がつき、直立、狭円筒状、長さ1.2~2㎝、下部の花は離在することが多い。頂生の花穂は単立、往々分枝し、花茎は時に毛管状。小苞の縁毛 は著しい。花被は暗紅色~淡紅色まれに白色、5深裂し、花被片は約2㎜、往々盤状腺点がある。痩果は3稜形、多くは黒色、長さ1.5~1.7(2)㎜。花期は5~10月。(参考6)

15-1 Persicaria erectominor (Makino) Nakai var. erectominor f. viridiflora (Nakai) I.Ito アオヒメタデ 青姫蓼

  synonym Persicaria erectominor (Makino) Nakai var. koreensis sensu I.Ito 
 花被が緑白色のもの。東北および北関東にはアオヒメタデが圧倒的に多い。氾濫原性の水湿地に生育する。

15-2 Persicaria erectominor (Makino) Nakai var. sungareensis (Kitag.) Kitag. マンシュウヒメタデ


16 Persicaria extremiorientalis (Vorosch.) Tzvelev ハルタデ 春蓼 

  synonym Persicaria maculosa subsp. hirticaulis (Danser) Knutsson

  synonym Persicaria maculosa var. pubescens (Makino) Yonek.

  synonym Persicaria mitis var. hirticaulis (Danser) H.Hara & I.Ito in J. Jap. Bot. 31: 220 (1956)

  synonym Persicaria mitis var. pubescens (Makino) Hiyama in J. Jap. Bot. 37: 30 (1962) オオハルタデ

  synonym Polygonum persicaria subsp. hirticaulis Danser in Bull. Jard. Bot. Buitenzorg, sér. 3, 8: 184 (1927) オオハルタデ

  synonym Polygonum persicaria var. pubescens Makino
  synonym Persicaria vulgaris Webb. & Moq. var. vulgalis
 Daniel E. Athaら(2010)により学名が整理された。学名はFlora of the Russian Far East (Tzvelev 1989)による Persicaria extremiorientalis (Vorosch.) Tzvelevとされた。Flora of Japan (Yonekura 2006)でPersicaria maculosa subsp. hirticaulis (Danser) S. Ekman and T. Knutsson var. pubescens (Makino) Yonek., pro parteとして解説されたものであるが、これは正式名ではなく、pro parteと付されている。
 YListではハルタデ(標準)はPersicaria maculosa Gray subsp. hirticaulis (Danser) S.Ekman et Knutsson var. pubescens (Makino) Yonek.とし、広義のハルタデはPersicaria maculosa Gray subsp. hirticaulis (Danser) S.Ekman et Knutssonとし、Persicaria maculosa Gray (s.l.)をそのsynonymとしている。POWO(Kewscience)ではPersicaria maculosa subsp. hirticaulis (Danser) KnutssonをPersicaria extremiorientalis (Vorosch.) Tzvelevのsynonymとした。
 これにより和名はPersicaria extremiorientalisをハルタデ、Persicaria maculosaをヨウシュハルタデ、Persicaria lapathifoliaをオオイヌタデとした。
 日本全土、火山列島(硫黄列島)、朝鮮、千島列島、サハリン、ロシア原産。英名はeast Asian smartweed , far-eastern smartweed。別名はハチノジタデ、オオハルタデ、ケハルタデ。北アメリカ東部(コネチカット州、デラウェア州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ノースカロライナ州、ペンシルバニア州)、デンマーク、ノルウェーに帰化している。中国は帰化分布域に含まれない。
 オオハルタデは花期が遅く、丈が高くなり、花序も長く、オオイヌタデに似たものであり、全体に毛が多くケハルタデとも呼ばれる。現在ではオオハルタデをハルタデに含めている。
【修正後の解説】
 1年草。高さ(10)30~100(~230)㎝。茎は分枝して、直立し、普通、赤紫色を帯び、直軟毛または上向きの伏した毛があり(ときに毛の基部がいぼ状になり)又はほぼ無毛になる。葉は互生し、下部で最も大きく、上部では小さくなり、長さ4~20(~28)㎝×幅0.5~2(~7)㎝、広披針形~狭卵形、葉先は鋭形、葉の基部は楔形、上面は緑色、中央に黒い斑紋が出ることが多く、側脈はアーチ状で12~35対、両面に伏した剛毛があり、主脈には特に多く幅が広い三角状の剛毛があり、下面は明るい緑色、腺点がなくまたは不明瞭な腺点(または微細なパピラ)があり、葉縁は全縁、長さ0.5~1.1㎜の伏した剛毛の縁毛がある。葉柄は長さ5~8(~30)㎜、上向きの伏した剛毛がある。托葉鞘は長さ1.3~2.5㎝、膜質、外面は小剛毛がありまれに無毛、先(縁)には長さ1~3(~5)㎜の縁毛がある。花序は腋生および頂生、葉がある。花序柄は通常、有柄の腺があり(ときに腺が非常に微細またはほとんど欠け)、ときに腺が短く伏す。総状花序は花が密につき、長さ(1.5~)3~5(~8)㎝の円柱状、ほぼ直立、又は垂れ下がることもある。花序柄は有柄の黄色の腺毛と長毛がある。花被は長さ約2㎜、花時に白色、すぐに大きくなり淡紅色になり、筒部は花披の長さの1/5~1/3、先は4~5裂する。花被片は花時に長さ約1.5㎜。花柱は2(3)本(下部1/2が合着)。雄しべは5本。痩果を包んで残る花被は中央部がやや盛り上がり、脈は不明瞭で、先が2分岐するが、釣針形にならず、花被に腺がない。痩果は褐色~黒褐色、光沢があり、ときに光沢がなく、長さ2~2.5㎜、普通、扁平なほぼ円形で中央の基部が膨れ(tumescent)、先に短い微突起があり、ときに3稜形の痩果も混じる。2n=22, 44。花期は4~10月。
【Daniel E. Athaら(2010)の新しい解説】
 1年草、高さ(0.1~)0.4~2.3m、細い~丈夫は直根がある。茎は基部で直径2㎝まで、下部では枝分かれしていないか、ほとんど枝分かれしておらず、赤褐色~紫色、茎の下部および中間には直軟毛あり、まれにほぼ無毛(glabrate)または伏した剛毛があり、その毛状突起は基部でわずかに広くなり、上部は細く、淡色でわずかに波打ち、長さ1~5㎜。托葉鞘(ocrea)は膜質、淡緑黄色、やや半透明、12~24本の肋があり、背面に剛毛があり、特に肋に沿って多く、まれに無毛、長さ1.3~2.5㎝、先(縁)は切形、剛毛があり、剛毛は長さ1~5㎜。葉は下部が最も大きく、上部では小さくなる。葉柄は長さ1~3㎝、伏した剛毛がある。葉身は狭卵形、長さ(6~)10~28㎝×幅1~7㎝、上面は暗緑色、通常は不明瞭だが中央に大きな紫色の山形斑紋があり(chevron)、非常に規則的かつまばらに剛毛があり、下面は明るい緑色、明らかに腺は無く、ごく規則的に(しかし中程度にまばらに)金色の剛毛があり、微細なパピラがあり、基部は楔形、縁は全縁、伏した剛毛があり、その毛状突起は巨視的には(acroscopically)アーチ型、長さ0.5~1.1㎜、先は長い尖鋭形、脈は羽状、下面の中脈は伏した剛毛があり、その毛状突起は太く、三角形、二次脈は弓状になり、12~35対あり、通常は剛毛がある。花序は腋生および頂生、葉がある。花序柄は有柄の腺があり(ときに腺が非常に微細またはほとんど欠け)、ときに短く伏す。総状花序は長さ(1.5 ~)3~8㎝×直径5~8㎜、密に花がつき、通常は紫色、まれに緑白色、基部に途切れがなく、通常は成熟すると下向きにうなずく。苞は斜上し、卵形、背面にまばらに剛毛があり、緑色の条線があり、先は鈍形~鋭形、剛毛があり、剛毛は長さ約0.2㎜。花は束生の部分花序(小束)あたり約6個つき、長さ2㎜m、花時は白色、すぐに大きくなりピンク紫色になる。小花柄は長さ約1.5㎜、苞からわずかに突き出る。花托筒は花の長さの1/5~1/3。花被片は(4)5個、長さ約1㎜(開花時)、楕円形、先は鈍形または円形、外花被片2個はわずかに僧帽形で、内側の花被片を超え、内花被片2(6?)個、平ら、脈は基部より上で3分岐し、直立し、乾いても隆起せず、上部は真っ直ぐで分岐しないか、まれに一貫性なく2分岐し、1つの分岐はその後散開するが、反曲しない。雄しべは5本、花托筒の先につき、花被片に互生し、長さ約0.8㎜、突き出ない。蜜腺は無い。子房は無毛、レンズ形。花柱は2本、長さの約1/2で合着し、上部で散開し、わずかに反曲し、果時には早落する。痩果はレンズ形(稀に三角形)、長さ(1.8~)2.0~2.3㎜×幅1.5~1.9㎜、面は平ら~凹面、両面とも基部が膨れ(tumescent)、基部は丸く、先は鈍形、短い短突起がある。果皮はマホガニー褐色、光沢があり、緻密な刻みがある。
 アジアと北アメリカ東部の範囲全体からのタイプ標本と多数のコレクションは、表面的には Persicaria lapathifolia(オオイヌタデ) と Persicaria maculosa(ヨウシュハルタデ)に似ているが、いくつかの重要な特徴において両方とは一貫して異なる。Persicaria extremiorientalisを他のすべてのイヌタデ属と区別する最も一貫した3つの形質は次のとおり。 1、基部の茎の節間には伏毛がある。 2、葉縁の剛毛は長さ0.5~1.1㎜。 3、痩果は側部が扁平、褐色、光沢があり、基部が膨れる(tumescent)。

Persicaria extremiorientalis を同属の Persicaria lapathifolia および Persicaria maculosa と区別する鍵

A. 茎の節間は無毛。托葉鞘の外面は無毛、頂部は無毛。 葉身は縁が無毛または長さ0.2mmの剛毛があり、下面は羊毛状毛(lanate)またはくも毛があり、または無毛、無毛の場合は腺点がある。苞は無毛、先は尾状または長い尖鋭形。果時の花被片の脈の先は二股に分岐し、両方の枝は強く、一貫して反り返る(釣針状に曲がる)。...........オオイヌタデ Persicaria lapathifolia
A. 茎の節間は毛があるかまたは無毛。托葉鞘の外面は剛毛があり、先は縁毛があるかまたは剛毛がある。葉身は縁に剛毛があり、剛毛は長さ0.2~1.1㎜、下面は剛毛があり、腺は無い。苞はまばらに剛毛があり、先は鈍形~切形。果時の花被片の脈の先は二股に分岐するか、または分岐しない。分岐している場合は、片方の枝のみが弱く反り返る(両方ではない)....................B
B. 基部の茎の節間は無毛。葉縁の剛毛は長さ0.2~0.5㎜。花序柄にまれに有柄の腺がある。 総状花序は長さ1~4cm、直立する。果時に 乾くと花被片の脈が顕著に隆起する。痩果はレンズ形または三角形、基部で最も幅が広いが、膨れない.....ヨウシュハルタデ Persicaria maculosa
B. 基部の茎の節間には伏毛がある。 葉縁の剛毛は長さ0.5~1.1㎜。花序柄は通常短い有柄の腺がある。総状花序は通常長さ3~8㎝、通常は下向きにうなずく、。果時に花被片の脈は、乾いても明瞭に隆起しない。痩果はレンズ形(まれに三角形)、基部が膨れる(tumescent)。......ハルタデ Persicaria extremiorientalis。
 オオハルタデはハルタデの変種に分類されていたが、現在ではハルタデの中に含められている。
16-1 Persicaria vulgaris Webb.& Moq. var. pubescens Nemoto オオハルタデ
  synonym Persicaria maculosa Gray subsp. hirticaulis (Danser) S.Ekman et T.Knutsson var. pubescens (Makino) Yonek.
 ハルタデの開花は春から夏までであるが、オオハルタデは夏から秋(6~10月)に花がつき、ハルタデが高さ30~60㎝とやや小さいのに対し、明らかに全体に大きい。オオイヌタデと同様に大豆畑などの雑草になっており、オオイヌタデとよく似ていて、花序の紅色が強い。ハルタデは葉の毛が多くて、細い。茎の節は膨らみ、まばらに毛が生える。オオハルタデ、ハルタデは花被に腺点が無く、オオイヌタデ、サナエタデは花被に腺点がある。
 1年草、高さ60~100㎝。葉は長さ10~20㎝、葉の形はオオイヌタデによく似ており、大きな葉は基部に弱いしわが出ることが多い。葉縁や葉脈に毛があり、葉裏は毛があり、腺点は不明瞭。小苞の縁は短い毛状になる。托葉鞘は円筒形、長さ1~3㎜の縁毛がある。花序は長く、やや垂れ下がることが多いが、垂れ下がらないこともある。花被片の脈はやや不明瞭、オオイヌタデのように釣針形にならず、花被片に腺点がない。果実は長さ約2㎜の扁平な円形、下部の中央が少し膨らみ、裏面の中央がやや凹む。ときに3稜形の果実が混じる。花期は6~10月。
【オオハルタデを含めたハルタデの修正前の解説】
 1年草。高さ30~60[~100]㎝。茎は分枝して、直立し、普通、赤紫色を帯び、上向きの毛があるか又は無毛。葉は互生し、長さ4~13[~20]㎝×幅0.5~2㎝、広披針形、葉先は鋭形、葉の基部は楔形。葉の中央に黒い斑紋が出ることが多く、両面に伏した剛毛があり、主脈には特に多い。葉下面に腺点がないか又は不明瞭な腺点がある。葉柄は長さ5~8㎜、上向きの伏した剛毛がある。托葉鞘の先には長さ1~3㎜の縁毛がある。花序は長さ3~5[6.5]㎝の円柱状、ほぼ直立、又は垂れ下がることもある。花柄は無毛又は有柄の黄色の腺毛と長毛がある。花被は長さ約2.5㎜、淡紅色、4~5裂する。花柱は2~3裂(2~3個で下部が合着)。雄しべは(5)6~7(8)個。痩果を包んで残る花被は中央部がやや盛り上がり、脈は不明瞭で、先が2分岐するが、釣針形にならず、花被に腺点がない。痩果は光沢のある黒褐色、長さ2~2.5㎜、普通、扁平な円形、中央下部が盛り上がるレンズ形、ときに3稜形の痩果も混じる。2n=22,44。花期は4~8[10]月。[]は統合されたオオハルタデ。

17 Persicaria filiformis (Thunb.) Nakai ex W.T.Lee ミズヒキ 水引

  synonym Persicaria virginiana (L.) H.Gross var. filiformis (Thunb.) J.M.H.Shaw

  basionym Polygonum filiforme Thunb.
  synonym Antenoron filiforme (Thumb.) Roberty et Vautier [Flora of China]
  synonym Antenoron filiforme var. filiforme
 日本全土、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西省、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、山東省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア、インド、パキスタン、ブータン、ミャンマー、ベトナム、フィリピン原産。中国名は 金线草 jin xian cao。英名はJapanese Jumpseed。標高100~2500mの山の斜面、谷間の森林に生える。
 多年草。高さ50~80㎝。茎は緑色~赤色、断面が円形、中実、直立し、線条があり、伏した剛毛があり、節が膨らむ。葉は互生し、葉柄は長さ1~1.5㎝、伏した剛毛がある。葉身は広楕円形~楕円形~狭楕円形~卵形、稀に倒卵形、長さ6~15㎝×幅4~8㎝、両面に伏した剛毛があり、基部は楔形、縁は全縁で縁毛があり、先は鋭形または尖鋭形。葉の中央に八の字形の黒い斑紋があることが多いが、ない場合もある。托葉鞘は筒形、長さ5~10㎜、膜質、短い縁毛がある。花序は頂生または腋生、長さ15~35㎝、細長く、小さな赤い花を横向きにまばらにつける。 花序柄は細く針金状。花被はバラ色、4深裂する。花被片は卵形、長さ約3mm、上側の花被片3個の半分ほどが赤く、下側1個が白く、これがミズヒキと呼ばれる由縁であり、花後に赤く大きくなる。雄しべは通常5本、突き出ない。花柱2本、果時まで宿存し、成熟すると拡大して硬くなり、長さ3.5~4mm、先が曲がって鉤状になり、花被から長く突き出る。痩果は宿存する花被に包まれ、長さ約2.5㎜、卵形、両凸形(レンズ形)、暗褐色、光沢がある。痩果の柄は長さ約1㎜、関節があり、熟すと関節がはずれて果実を離す。花期は8~10月。果期は9~11月。2n=44, 48。

17-1 Persicaria filiformis (Thunb.) Nakai ex W.T.Lee 'Variegata' フイリミズヒキ 斑入水引

 葉に白い斑が入る品種。広く栽培されている。

17-2 Persicaria filiformis (Thunb.) Nakai ex W.T.Lee f. albiflora (Hiyama) Yonek. ギンミズヒキ 銀水引

  synonym Antenoron filiforme (Thunb.) Roberty et Vautier forma albiflorum (Hiyama) H.Hara

  synonym Persicaria virginiana (L.) H.Gross var. filiformis (Thunb.) J.M.H.Shaw f. albiflora (Hiyama) J.M.H.Shaw

 白花品種。ミズヒキの花被片は4個に分裂し、そのうち上側3個が赤く、下側1個が白く、これがミズヒキと呼ばれる由縁だが、ギンミズヒキは花被片の4個すべてが白いものである。茎や葉などはミズヒキと変わらない。

18 Persicaria foliosa (H.Lindb.) Kitag. マンシュウヌカボタデ 満州糠穂蓼
  synonym Polygonum foliosum H.Lindb.
 日本、朝鮮、中国(安徽省、黒竜江省、江蘇省、吉林省、遼寧省、内モンゴル)、台湾、ロシア、北西ヨーロッパ、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン原産。中国名は多叶蓼 duo ye liao。海抜700mまでの水辺、川辺、溝沿いに生える。
 1年草。茎は傾伏、まれに直立、高さ40~60㎝、細く、多数、分枝し、無毛。葉柄はごく短いか又は無いに近い。葉身は狭披針形、長さ3~6㎝×幅3~5㎜、まばらに毛があり、下面の中脈は明瞭、両面とも側脈は不明瞭、基部は楔形、広楔形又は円形、全縁、縁毛は無く、先は鋭形。托葉鞘は筒形、長さ8~10㎜、膜質、まばらに伏した小剛毛があり、先は切形、縁毛は長さ0.5~3㎜。花序は頂生又は腋生、穂状花序、直立、緩く、長さ3~5㎝、細く、下部は間隔が開く。苞は漏斗形、無毛、縁毛があり、各苞に、花が1~2個つく。花被は帯ピンク色、5深裂する。花被片は狭楕円形、長さ1.5~2㎜。雄しべは5個。花柱は2個。痩果は宿存する花被と同長、黒色、光沢があり、卵形、両凸形、長さ1.2~2㎜、平滑。2n=20。
 KewとFlora of Chinaではvar. foliosa(var. nikaiiを含む)とvar. paludicolaの2変種に分類している。
YListでは3変種である。

18-1 Persicaria foliosa (H.Lindb.) Kitag. var. foliosa マンシュウヌカボタデ 満州糠穂蓼

  synonym Polygonum foliosum var. foliosum
 日本、朝鮮、中国(安徽省、黒竜江省、江蘇省、吉林省、遼寧省、内モンゴル)、台湾、ロシア、北西ヨーロッパ、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン原産。中国名は多叶蓼 duo ye liao 。Flora of Chinaでは中国に分布し、葉の基部が楔形、托葉鞘の縁毛が長さ0.5~1㎜。
 1年草。茎は傾伏、まれに直立、高さ40~60㎝、細く、多数、分枝し、無毛。葉柄はごく短いか又は無いに近い。葉身は狭披針形、長さ3~6㎝×幅3~5㎜、まばらに毛があり、下面の中脈は明瞭、両面とも側脈は不明瞭、基部は楔形、全縁、縁毛は無く、先は鋭形。托葉鞘は筒形、長さ[5~]8~10㎜、膜質、まばらに伏した小剛毛があり、先は切形、縁毛は長さ[0.4]0.5~3[4]㎜。花序は頂生又は腋生、穂状花序、直立、緩く、長さ3~5[~6]㎝、細く、下部は間隔が開く。苞は漏斗形、無毛、縁毛があり、各苞に、花が1~2個つく。花被は帯ピンク色、5深裂する。花被片は狭楕円形、長さ1.5~2㎜。雄しべは5個。花柱は2個。痩果は宿存する花被と同長、黒色、光沢があり、卵形、両凸形、長さ1.2~2㎜、平滑。2n=20。
【サイコクヌカボを含めない狭義のPersicaria foliosa var. foliosa】
 全体小形、高さ5~30㎝。花序は頂生、直立する。茎は繊細で直径0.5~10㎜、高さ30cm前後まで。節間は短い。葉柄は無柄~短柄。葉身は線形、ごく稀に線状披針形、先は鋭形、基部は狭く、長さ3~4㎝×幅3~4㎜で小形、通常無毛、盤状腺点がない。ごく稀に朝鮮産のもので疎に細毛と腺点の出るものがある。下面はルーペで通常粗渋性(ザラつき)、稀に平滑。托葉鞘は伏毛があり、縁毛は長さ0.4(~1)㎜。花序は花が断続してつき、多数、細く長く、直立稀に下垂し、下部は葉腋性。花被は曙紅色又は帯緑暗紅色で腺点がない。痩果は褐色、平滑、光沢があり、両凸形、ごく稀に3稜形、長さ1.3~1.8㎜。ヨーロッパから湿帯アジアにかけて広く分布する(参考6)。

18-2 Persicaria foliosa (H.Lindb.) Kitag. var. nikaii (Makino) H.Hara サイコクヌカボ 西国糠穂

  synonym Persicaria nikaii (Makino) Nakai in Rigakkwai 24: 300 (1926)

  synonym Polygonum foliosum var. nikaii (Makino) Kitam. in Acta Phytotax. Geobot. 20: 207 (1962)

 日本固有変種(本州の中部地方以西、四国、九州)。愛知県の準絶滅危惧種に指定されている。ため池、河川敷きに生える。KewやFlora of Chinaではこの変種を認めず、基本変種のsynonymとしている。花は著しく疎につき、痩果はやや大きく1.5~2mm。
 1年草、高さ30~60㎝。茎は下部が地を這い、節から根を出し、上部は斜上し、分枝し、無毛、帯赤色、多くは直径1.2~1.3㎜。短い葉柄がある。葉は長さ3~9㎝、幅2~9㎜の狭披針形~狭線形、先は漸尖し鋭尖頭、基部は鈍形~円形、質はやや厚く、下面は無毛のこともあるが、上面は常に多少の毛があり、下面の主脈上は明らかに毛があり、下面に普通、腺点がないが、往々盤状腺点がある。托葉鞘は長さ5~6(~10)㎜の筒状、短剛毛があり、縁毛は長さ2~4㎜。花序は長さ5~6㎝、淡紅色の花を著しくまばらにつけ、ときに下部に1~2個の小さい葉がつく。小苞の縁毛は長さ1.2~2㎜で著しく、ときに短く目立たない。痩果は長さ1.5~2㎜、茶褐色~黒褐色、光沢があり、両凸形レンズ形、まれに3稜形。花期は9~10月。
 標本の花被が乾くと暗色を帯びるが、ヤナギヌカボは白っぽく鈍い光沢がある。

18-3 Persicaria foliosa (H.Lindb.) Kitag. var. paludicola (Makino) H.Hara ヤナギヌカボ 柳糠穂

 日本(北海道、本州、九州)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は宽基多叶蓼 kuan ji duo ye liao。湿地、休耕田、溜池の縁に生える。 愛知県では確認されていない。花は少し断絶的に多数つき、痩果は小さく長さ1.2~1.5㎜。
 高さ30~60㎝、茎はやや細く、直径1~2㎜、太いものは下部の直径3㎜、帯赤色、無毛。托葉鞘に伏毛があって、縁毛は短かく目だたず、縁毛は長いもので1.5~2(3) ㎜まで。葉は線形~線状披針形で細長く、 漸尖し、鋭尖頭、基部は狭形または鈍形、ほぼ無柄、普通、長さ4~8㎝×幅4~8㎜、上面はやや無毛のものから細毛を布くものまで変化があり、下面はルーペで見えるザラつきがあり、調査の範囲では何れの標本もどれかの葉には常に盤状腺点があった。下面の主脈上には伏毛があり、側脈は不明瞭。穂状花序は頂生又は腋生で細く、通常、長円筒形、長さ5~8(9)㎝、やや鞭状でゆるく下垂し、花茎の基部の葉腋から花がつき、上部は僅かに断絶しながら、多数の花をつけ、そのため花茎の部分が明らかでない。往々、花序の下部に2~3の小葉をつけることがある。小苞の縁毛は目だたないが、稀に長いものは1~1.5㎜ある。痩果は両凸形(レンズ形)、稀に僅かに3稜形を混えることがあり、黒褐色、長さ長さ1.2~1.5㎜。花期は9~10月。(参考6)。

19 Persicaria glabra (Willd.) M.Gomez オオサクラタデ 大桜蓼
  basionym Polygonum glabrum Willd.
  synonym Polygonum densiflorum Meisner
  synonym Polygonum portoricense Bertoloni ex Endlicher.
 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、海南省、湖北省、湖南省)、台湾、インド、ブータン、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、ベトナム、フィリピン、南アメリカ、マダガスカル原産。中国名は光蓼 guang liao 。英名はsmooth smartweed。海抜100mまでの川岸、川辺、湿地に生える。
 1年草で、全体に無毛。 茎は直立し、高さは70~100㎝、節が太くなり、ほとんど分枝しない。葉柄は長さ8~10㎜、丈夫。葉身は披針形または長円状披針形、長さ8~18㎝×幅1.5~3㎝、基部は狭い楔形、縁は全縁、縁毛はなく、先は狭い尖鋭形。托葉鞘は筒状、長さ1~3㎝、膜質、多数の脈がある。花序は頂生し、穂状花序、長さ4~12㎝、通常は数個の密な穂が集合し、円錐花序状になる。苞は漏斗形で縁毛はなく、通常それぞれ3個または4個の花がつく。小花柄は大きく、苞よりも長く、頂部に関節がある。花被は白色またはピンク色で、5深裂する。花被片は楕円形、長さ3~4㎜、脈は細く、先で分岐し、下部で湾曲しない。雄しべは6~8本。花柱は2本、中央より下で合着する。痩果は宿存する花被に包まれ突き出ず、黒褐色、光沢があり、卵形、両凸形、長さ2.5~3㎜。花期は6月~8月。果期は7月~9月。

20 Persicaria glacialis (Meisn.) H.Hara ヒメタニソバ 姫谷蕎麦
  synonym Persicaria lyrata (Nakai) Nakai
  synonym Polygonum glaciale (Meisner) J. D. Hooker
  synonym Polygonum glaciale var. glaciale
 中国(甘粛省、河北省、青海省、陝西省、山西省、四川省、西蔵、雲南省)、インド、ネパール、シッキム、アフガニスタン原産。中国名は冰川蓼 bing chuan liao 。標高1300~4300mの斜面の草地、湿った渓谷に生える。
 1年草。 茎は高さ10~25㎝、細く、無毛で、基部でよく分枝する。葉柄は長さ1~2㎝、ときに狭い翼がある。葉身は卵形または広卵形、長さ0.8~2㎝×幅0.6~1㎝、両面とも無毛、基部はほぼ切形、広楔形、ときに葉柄に沿下し、狭い翼があり、縁は全縁または基部で2裂し、先は鋭形または鈍形。托葉鞘sは筒状、緩く、膜質、無毛、先は切形または2裂する。花序は頂生または腋生、頭状花序、小さく、直径5~6㎜。花序柄には上部に腺毛がある。苞は緑色、卵形または広卵形、草質、まばらに腺毛があるかまたは無毛、縁は膜質、先は鋭形。花被は白色またはピンク色で、5深裂する。花被片は楕円形、長さ0.5~1㎜。雄しべは通常 5本。花柱は3本、中間まで合着する。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に包まれ、黒色、不透明、卵形、3稜形または両凸形、長さ1~2㎜、細かい腺または穴がある。花期は6~7月。果期は7~8月。

21 Persicaria hassegawae Hanai & Seriz. ニシミゾソバ 西溝蕎麦

  synonym Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross var. hassegawae (Hanai et Seriz.) Yonek.

  synonym Persicaria hassegawae f. albiflora (Honda) Hanai & Seriz. in Shidekobushi 1: 25 (2008)

  synonym Persicaria hastatotriloba f. albiflora Honda in Bot. Mag. (Tokyo) 59: 14 (1946) シロバナオオミゾソバ

  synonym Persicaria thunbergii f. albiflora (Honda) Yonek. in Fl. Japan 2a: 152 (2006) シロバナニシミゾソバ

 日本固有種。本州(大阪府、滋賀県、富山県、石川県、福島県、群馬県、新潟県)、四国、九州に分布する。和名は西日本に多く分布することから。水田の畔や湿った場所に生える。宮崎県の絶滅危惧ⅠA類。Kew(POWO)ではシロバナニシミゾソバを含めている。ミゾソバは4倍体であるがニシミゾソバは2倍体である。コミゾソバも2倍体だが閉鎖花をつけない。
 1年草、高さ30~100㎝、主軸は長さ90~235㎝。地下に閉鎖花が付き、匍匐する閉鎖花序枝は長さ20~50㎝。葉は互生し、葉身は矛形、頂裂片は卵形、ミゾソバに似て、くびれが弱く中程度、先は鋭形でやや尾状尖鋭形、基部の側裂片はやや小さく、先が鋭形~鈍形、葉の基部は切形~ごく浅い心形、ただし葉の形は変化が多く、決めてにはならない。閉鎖花の果実も地中に付く。花期が遅く10月上旬~11月上旬である。2n=20。

22 Persicaria hastatosagittata (Makino) Nakai ナガバノウナギツカミ 長葉の鰻攫

  synonym Persicaria ussuriensis (Regel) Nakai
  synonym Polygonum hastatosagittatum Makino
 日本(本州、四国、九州)、中国(安徽省、福建省、広東省、広西省、貴州省、海南省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、西蔵、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア原産。中国名は长箭叶蓼 chang jian ye liao。 別名はナガバノウナギヅル(長葉の鰻蔓)。海抜3200mまでの水辺、川沿い、湿った場所に生える。
 1年草。茎は直立または基部で平伏し、高さ30~90㎝、分枝し、角があり、角に沿って 長さ0.3~1㎜の逆刺がまばらにある。葉柄は長さ1~2.5(~3)㎝、下向きの刺がある。 葉身は披針形~線状惰円形または楕円形~卵状長円形、長さ3~7(~10)㎝×幅1~2(~4)㎝、無毛または毛があり、下面に中脈に沿った逆刺があり上面にときに星状毛があり、基部は矢じり形または亜矛形(小さく3裂又はほぼ切形)、縁は短い縁毛があり、先は鋭形 または亜尖頭形。托葉鞘は筒形、長さ1~3㎝、膜質、先は切形、短い~長い縁毛がある。花序は頂生または上部の葉に腋生し、短い穂状花序状の総状花序になる。花序柄は2又分岐し、密に毛があり、疎~密に赤色~暗褐色の腺毛がある。苞は広楕円形または卵形、長さ2.5~3㎜、赤色の腺毛があり、縁に縁毛があり、通常それぞれに2個の花がつく。小花柄は苞より長く、長さ4~6㎜、赤色の腺毛がある。 花被はピンク色(淡紅色)、5深裂する。花被片は広楕円形、長さ3~4㎜。 雄しべは7または8本。花柱は3本、中央より下部で合着する。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に包まれ、暗褐色、光沢があり、卵形、明瞭な3稜形、長さ3~4㎜。花期は8~9月。果期は9~10月。2n=22。

23 Persicaria hydropiper (L.) Delarbre ヤナギタデ 柳蓼

  synonym Persicaria hydropiper (L.) Delarbre var. filiformis Araki

  synonym Polygonum hydropiper L.
  synonym Persicaria koreensis (Nakai) Nakai ホソバヌマタデ

  synonym Persicaria koreensis (Nakai) Nakai f. viridiflora (S.X.Li et Y.L.Chang) Kitag. ミドリホソバヌマタデ

 日本(本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国、台湾、モンゴル、ロシアからヨーロッパなどユーラシアのほぼ全体、スリランカ、インドネシア、フィリピンなどの諸島、北アフリカ(モロッコ、アルジェリア)、オーストラリア原産。中国名は辣蓼 la liao。英名はmarsh-pepper smartweed , redleaf , water-pepper 。別名はマタデ、ホンタデ。海抜3500mまでの川岸、川辺、湿った谷、湿った場所、水田の畦などに生える。北アメリカに広く帰化し、南アメリカ、南アフリカ、ニュージーランドなどにも帰化している。
 一年草。 茎は直立し、高さ[30]40~70[80]㎝、よく分枝し、無毛で、節が太くなる。葉はコショウのような辛味がある。葉柄は長さ4~8㎜。 葉身は披針形または楕円状形披針形、長さ4~8[10]㎝×幅0.5~25㎝、両面とも無毛、ときに中脈上に伏した小剛毛があり、下面に密に褐色の腺点があり、基部は楔形、縁には繊毛があり、先は尖鋭形。葉腋に多数の閉鎖花(cleistogamous flowers)が見られる。托葉鞘は筒状、長さ1~1.5㎝、膜質、まばらに伏した小剛毛があり、先は切形、短い[長さ約3㎜]縁毛がある。花序は頂生または腋生、穂状花序状、垂れ下がり、下部で途切れ、通常緩く、長さ3~8[10]㎝、細い。 苞は緑色、漏斗形、長さ2~3mm、縁は膜質、まばらに短い縁毛があり、それぞれに3~5個の花がつく。小花柄は苞よりも長い。花被は帯緑色、上部は白色またはピンク色で、5(または4)深裂し、帯褐色がかった透明な腺点がある。花被片は楕円形、長さ3~3.5㎜。雄しべは6本、まれに8本、突き出ない。花柱は2または3本。 痩果は宿存する花被に包まれ、黒褐色、光沢がなく、卵形、両凸形[レンズ形]または三角形、長さ2~3㎜、密に小さな穴がある[凸凹でざらつく]。花期は5~9月。花期は6~10月。2n=18~22(Flora of North America)。[]は他の報告からの追加。
品種)  'Fastigiata'
 Kewscienceでは以下の変種を認めていない。

23-1 Persicaria hydropiper (L.) Delarbre f. angustissima (Makino) Araki アザブタデ 麻布蓼

  synonym Persicaria hydropiper (L.) Delarbre var. fastigiata (Makino) Araki

 庭地や畑地に栽培される。別名はエドタデ。
 1年草、高さ30~50㎝、基部から多数分枝し、叢生、節は膨れる。葉は披針形、基部は漸尖し、葉柄になり、長さ2~5㎝×幅3~10㎜、ほぼ無毛、細腺点がある。葉鞘は短く、膜質、上部の縁毛だけがある。細い花穂を枝先に出し、下部の花は離れてつく。萼は長さ1.5~2㎜、白色、ときに淡紅色を帯び、基部は淡緑色、4~5裂し、細腺点がある。無花弁。6雄しべ。2花柱。痩果はレンズ形、長さ1.5㎜、黒可食。葉は辛味料として用いられる。ヤナギタデに比べ枝、葉は密につき、各部が小形、葉が狭線形の品種をイトタデ(f. angustissimum Makino) と呼ぶ(日本牧野植物図鑑)。

23-2 Persicaria hydropiper (L.) Delarbre f. purpurascens (Makino) Nemoto ムラサキタデ 紫蓼

  synonym Persicaria hydropiper (L.) Delarbre var. latifolia Araki
 葉や茎が紫色のもの。若芽(スプラウト)が刺し身のつまとして使われている。2n=20。

23-3 Persicaria hydropiper (L.) Delarbre f. viridis (Makino) Araki サツマタデ 薩摩蓼

  synonym Persicaria hydropiper (L.) Delarbre var. maximowiczii (Regel) Nemoto ホソバタデ

 別名はホソバタデ。f. viridisはアオホソバタデ。ホソバタデは全体に紅紫色を帯びるもの。葉を辛味料として食用とする。
 1年草。高さ30~40㎝。葉は互生し、葉柄があり、葉身は幅が狭くて長く、狭長披針形~線形、両端は長く尖り、腺点があり、葉に辛味がある。托葉鞘は円筒形。花序は穂状、細く、まばらに花をつけ、垂れ下がる。花被は4~5裂し、腺点がある。雄しべは6本。子房は狭卵形。花柱は2本。痩果は宿存する花被に包まれ、2面体の卵形。

23-4 Persicaria hydropiper (L.) Delarbre var. scabrida H.Hara ザラツキヤナギタデ

 本州、四国、九州、小笠原島、朝鮮、台湾に分布する。
 ヤナギタデは葉・葉鞘が無毛で、苞はしばしば縁毛を欠き、痩果は卵状楕円形で長さ2.5~3.5㎜。ヤナギタデと称しているものの中には、葉の中肋上や葉鞘に伏した剛毛があり、葉鞘は比較的茎に密着し、縁毛もやや長く、苞も縁毛を有し、痩果は卵円形で長さ約2㎜、葉は広披針形で両端が尖リ、質がやや堅いものがある。中間形があって、その区別は困難であるが、特に著しい形のものを変種として分ける。
 ボントクタデに似るが、ボントクタデにおいては、葉は概ね楕円状または卵状披針形で先端は急に鋭尖頭になり、葉や葉鞘の毛は更に多く、縁毛もさらに長く、花穂は痩長で疎花、花被は概ね5裂し、雄しべは約8本、痩果は三稜形が多いので区別できる(J. J. B. 14: 73 1938)。

24 Persicaria japonica (Meisn.) Nakai シロバナサクラタデ 白花桜蓼

  synonym Persicaria sterilis (Nakai) Nakai et Ohki 

  synonym Persicaria japonica (Meisn.) Nakai et Ohki subsp. micrantha (Nakai) Sugim.

  synonym Persicaria odorata (Lour.) Sojak subsp. conspicua (Nakai) Yonek. f. albiflora (Hiyama) Yonek.

  synonym Polygonum japonicum Meisn.[Flora of China]

  synonym Persicaria conspicua (Nakai) Nakai ex Ohki f. albiflora Hiyama

  synonym Polygonurn japonicum Meissn. var. macranthum Makino ヨウキヒタデ 楊貴妃蓼

  synonym Polygonum macranthum Meisn.
 日本全土、朝鮮、中国(東部~中部および東南部の低標高地に限る)、台湾原産。中国名は蚕茧蓼 can jian liao 。英名はJapanese Knotweed。別名はコサクラタデ、ヒメサクラタデ。標高0~1700mの湿地、休耕田、草地、溜池、溝、川岸に生える。
 花はサクラタデ Persicaria odorata (Lour.) Sojak subsp. conspicuaに良く似ているが、小さく、色が真っ白で、サクラタデより花序枝が多く、先が垂れ下がることが多い。花序の節当りの花数が2~3個ならサクラタデ、4~6個ならシロバナサクラタデ。シロバナサクラタデは痩果に光沢がある。
 多年草、根茎が水平。茎は直立、高さ50~100㎝、無毛、ときにまばらに小剛毛があり、茎は高く、枝分かれし、節が膨らむ。葉柄は短いか又は無柄に近い。葉身は披針形、長さ7~15㎝×幅1~2㎝、薄革質、先は尖鋭形、基部は楔形、葉縁付近や脈上に伏毛があり、毛の長さは0.5(~0.7)㎜以下、下面に腺点がある。托葉鞘は筒形、濃褐色、長さ10~18㎜、膜質、伏した剛毛があり、先は切形、縁毛は長さ1~1.2㎝。花序は1~5本に分枝し、細長く、先が垂れ下がることが多い。花序柄が長い。小苞の先に毛がある。花被は長さ3~4㎜、白色、5裂まれに4裂し、腺点がある。花は雌雄異株ではなく、異形花柱性であり(平塚・中尾 1996)、短花柱花と長花柱花の2形がある。短花柱花は雌しべの長さ約2.4㎜、雄しべの長さ4.3㎜、雄しべが花被より突き出る。長花柱の花は雌しべの長さ約4.3㎜、雄しべの長さ約2.4㎜、雌しべが花被から突き出る。雄しべは6個まれに7~8個。花柱は2まれに3分岐する。痩果は長さ約2.5㎜、レンズ形が多く、3稜形が混じり、黒色、光沢がある。花期は8~10月。2n=40(4倍体), 44(高4倍体), 49(低5倍体), 50(5倍体)、富山県では5倍体が最も多い。

24-1 Persicaria japonica (Meisn.) Nakai ex Ohki var. scabrida (Steward) Yonek. ケサクラタデ 毛桜蓼

 葉の両面に剛毛を密生する。Kewscienceでは基本種のsynonymとされている。

25 Persicaria kawagoeana (Makino) Nakai シマヒメタデ 島姫蓼

  synonym Polygonum kawagoeanum Makino [Flora of China]

  synonym Persicaria minor var. kawagoeana (Makino) Masam.
  synonym Persicaria tenella var. kawagoeana (Makino) H.Hara
  synonym Polygonum kawagoeanum Makino
  synonym Polygonum tenellum var. kawagoeanum (Makino) Murata
 日本(千葉県・和歌山県、九州、トカラ列島)、中国、台湾、インド、パキスタン、ネパール、ブータン、ミャンマー、マレーシア、インドネシア原産。中国名は柔茎蓼 rou jing liao。別名はフトボノヌカボタデ。標高0~1700mの湿った渓谷、荒地、野原の縁、水辺、水路などに生える。水中個体は地下茎が伸びて本来1年草であるが多年草のようになる。シマヒメタデ var. kawagoeanaとフトボノヌカボタデvar. tenellaを分けていたが、現在では同一種とする見解もある。KewscienceではPersicaria kawagoeanaとPersicaria minor (synonym Persicaria tenella)として分けて扱っている。Persicaria minorは日本を分布域に含めていない。
 1年草。茎は斜上又は傾伏、高さ20~50㎝、細く、普通、基部から分枝し、無毛、下部の節から根を出し、節間は2~3㎝。葉は互生、葉柄はごく短いか又は無柄に近い。葉身は狭披針形~線形、長さ3~6(9)㎝×幅4~8㎜、両面は有毛又は無毛、中脈に伏した剛毛があり、基部は普通、円形、縁に短い縁毛があり、先は鋭形、中央部には暗紫色の斑紋がある。托葉鞘は筒形、長さ(5)8~10(13)㎜、膜質、まばらに伏した剛毛があり、先は切形、縁毛は長さ2~4㎜。花序は頂生又は腋生、穂状花序、直立、密、長さ2~3㎝。苞は漏斗形、縁は大きく、縁毛があり、各苞に花が2~4個つく。花柄は長さ1~1.5㎜。花被はローズピンク色、5深裂する。花被片は楕円形、長さ1~1.5㎜。雄しべは5~6個。花柱は2個。柱頭は頭状。痩果は黒色、光沢があり、卵形、両凸面(レンズ形)、長さ1~1.5㎜。花期は5~9月。果期は6~10月。

26 Persicaria lanata (Roxb.) Tzvelev キヌタデ 絹蓼

  synonym Persicaria lapathifolia (L.) Gray var. lanata (Roxb.) H.Hara [YList]

  synonym Persicaria lapathifolia (L.) Gray subsp. lanata (Roxb.) Sojak

  synonym Polygonum lapathifolium var. lanatum (Roxburgh) Steward [Flora ob China]

  synonym Polygonum lanatum Roxburgh
 中国(西藏自治区、雲南省)、インド、アッサム州、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、シッキム、ミャンマー、ジョージア、アルメニア、アゼルバイジャン、南欧ロシア、ブルガリアに分布。中国名は密毛马蓼 mi mao ma liao、または白苦柱 bai ku zhu。標高200~1100mの畑の縁、溝沿いに生える。日本に帰化している。Flora of Chinaの解説では茎と葉身に蜜に羊毛状毛があるとされ、花序柄の腺については記述がないが、Flora of Pakistanの解説にはある。
 1年草、直立~ほぼ直立、高さ60~150㎝。茎は単純または分枝し、通常、帯赤色、特に節が帯赤色で白色の綿毛で覆われる。葉は短い柄があり、柄は長さ3㎜まで、葉身は披針形~楕円状披針形、長さ5~15㎝×幅0.8~2.5㎝、鋭形~尖鋭形形、両面に羊毛状毛がある(lanate:白色~灰白色(canescence)の綿毛)が、下面のほうが多い。托葉鞘(ochreae)は筒状、ときに節間を完全に覆い、±羊毛状毛があり、縁は縁毛が無い。 花序は枝があり、長さ2.5~5(~6)㎝、総状花序。花序柄は腺がなく、ときに羊毛状毛がある(lanate)。鞘状苞(ochreolae)はほぼ筒状、卵形、まばらに羊毛状毛がある。花は長さ約2.5㎜、短い小花柄がある。花被片は4枚、稀に5枚、赤色または白色。 雄しべは6本、花糸は糸状、花柱と±同長。子房は両凹形、花柱は2本、柱頭は2個、頭状。堅果(痩果)は長さ約2㎜×幅1.8~2㎜、両凹形、平ら、黒色で光沢がある。花期は4~9月。オオイヌタデ(Persicaria lapathifolia)によく似ているが、オオイヌタデは花序柄に乱雑に有柄の腺がある。(Flora of Pakistan)。

27 Persicaria lapathifolia (L.) Delarbre オオイヌタデ 大犬蓼
  basionym Polygonum lapathifolium L.
  synonym Persicaria lapathifolia subsp. lapathifolia
  synonym Persicaria lapathifolia (L.) Delarbre var. lapathifolia
  synonym Persicaria nodosa (Pers.) Opiz 葉裏に綿毛
  synonym Persicaria tenuiflora (Pers.) H.Hara

  synonym Persicaria lapathifolia (L.) Gray subsp. nodosa (Pers.) A.Love

  synonym Persicaria tomentosa var. glabrior Lunell

  synonym Polygonum lapathifolium var. salicifolium Sibthorp 绵毛马蓼 mian mao ma liao 2n=22

 日本(全土)、朝鮮、中国、台湾、アジア、ヨーロッパ、北アフリカ、北アメリカ、オーストラリア原産。 中国名は马蓼 ma liao。英名はcurlytop knotweed , pale knotweed , pale persicaria , pale smartweed , pink knotweed , dock-leaved smartweed , willow weed。標高0~1500(~1800)mの湿った場所、道端、氾濫原、荒地、耕作地に生える。
 USAのDaniel E. Athaら(2010)により学名が整理された。これによりUSAや東アジアに見られる類似種、ハルタデ(Persicaria extremiorientalis)、ヨウシュハルタデ(Persicaria maculosa)、オオイヌタデ(Persicaria lapathifolia)、アメリカサナエタデ(Persicaria pensylvanica)を明確に区別した。ただし、サナエタデ(Persicaria tomentosa)やキヌタデ(Persicaria lanata)など他にも類似種がある。
【修正した解説】
 1年草、高さ(5~)10~100[180:‍NEW SOUTH WALES FLORA ONLINE、アフリカでは3mとの記載もある]㎝。ときに根は下部の節から生じる。根茎や匍匐茎は無い。茎は直立~斜し、単純または分枝し、赤色を帯びることが多く、うねがほとんどなく、[茎の下部は節が膨らみ(生育する場所による)、]無毛、またはまれに、上部に伏した毛があり、ときに腺点または有柄の腺があり、茎面に暗紫色の細点が多い。托葉鞘(ocrea)は帯褐色、円筒形、長さ4~24(~35) mm、紙質、基部が膨らみ、縁は切形、縁は縁毛が無くまたは長さ1㎜までの剛毛の縁毛があり、表面は無毛、まれに剛毛があり、腺は無い。葉柄は長さ0.1~1.6㎝、通常は剛毛があり、ときに無毛。葉身はときに上面に暗色の三角形または三日月形のしみがあり、狭披針形~広披針形、長さ4~12(~22)[25]㎝×幅(0.3~)0.5~4(~6)㎝、基部は漸尖~楔形、縁は無毛または前向きの長さ0.2mmの剛毛があり、先は尖鋭形、[側脈は20~30対、]上面は主脈上に剛毛があり、下面は無毛または羊毛状毛(lanate)またはくも毛があり、無毛の場合は下面に腺点がある。花序はほとんどが頂生し、ときには腋生し、ほとんどアーチ状またはうなずき、通常途切れがなく、長さ30~80[100:神奈川県植物誌]㎜×幅5~12㎜。花序柄は長さ2~25㎜、しばしば有柄の腺がある。鞘状苞(ocreolae)は通常重なり、面は無毛、頂部の縁は縁毛が無いか、または長さ0.4㎜までの剛毛の縁毛があり、先は尾状または長い尖鋭形。小花柄は斜上し、長さ0.5~2.3㎜。 花は小束(ocreate fascicle)あたり4~14個つき、同型花柱性(homostylous)。花被は緑白色~ピンク色、無毛、腺点は無くまたは腺点があり、大部分が筒部と内花被片につき、花被はほとんど大きくならない。花被片は4(~5)個、その長さの約1/4~1/3の長さで合着し、倒卵形から楕円形、長さ2.5~3㎜、脈が目立ち、2~3個の外花被片の脈は上部で顕著に2股に分かれて錨形(anchor-shaped)になり、全縁、先は鈍形~円形。雄しべは5~6本、突き出ない。葯はピンク色または赤色、楕円形。花柱は2(~3)本、基部で合着する。痩果は花被に包まれるか、先が突き出して露出し、褐色~黒色、扁平な円盤形[両面が少し窪む両凹レンズ形]またはまれに3稜形、長さ1.5~3.2㎜×幅1.6~3㎜、光沢があるかまたは無くて鈍い、平滑。2n=22。花期は(4~)7~11月(Flora of North America、Daniel E. Athaら2010)。[]は他の報告からの追加。
【Flora ibericaの解説 Persicaria lapathifolia L.】
 1年草、茎は高さ(10~)30~70(~80)㎝、直立または平伏斜上し、分枝し、通常、節が太くなり、ときに帯赤色の斑点がある。葉は、長さ(7~)10~16(~21)㎝×幅(1~)2~3.5(~5)㎝、披針形または卵状披針形、先は漸尖形、縁は全縁またはやや縁が巻いて縁毛があり、しばしばワイン色~帯黒色の斑紋が中央にあり、上面は毛があり、下面にはときに密な綿毛があり-とくに下部の葉にみられ-、透明~帯黄色または無色の腺が明瞭に見られる。葉柄は長さ10(22)㎜まで。托葉鞘は長さ10~20㎜、膨れ、しばしば帯赤色の脈が目立ち、切形または非常に短い縁毛がある。花序は長さ7㎝まで、穂状花序状、密な円筒形。花被は杯状球形、帯白色またはピンク色、小花柄や托葉鞘と同様に黄色の腺が散在する。痩果は長さ約3㎜、レンズ形または3稜形、3面は凹形、光沢のある黒色、花被と同長またはわずかに突き出る。2n=22。n=11。

28 Persicaria lii Kitag. ヒメヌカボタデ
  synonym Polygonum procumbens Y.L.Chang & S.X.Li
  synonym Polygonum pronum C.F.Fang
 中国東北部(満州)原産。
 広域に分布するハナタデ Persicaria posumbu (Buch.-Ham. ex D.Don) H.Gross(=Persicaria posumbu (Buch.-Ham. ex D. Don) H. Gross)のsynonymともされる。

29 Persicaria longiseta (Bruijn) Kitag. イヌタデ 犬蓼
  basionym Polygonum longisetum Bruijn
  synonym Persicaria blumei (Meisn.) H.Gross

  synonym Persicaria longiseta (De Bruyn) Kitag. f. brevifolia (Makino) Hiyama マルバイヌタデ

  synonym Persicaria longiseta (De Bruyn) Kitag. f. breviseta (Meisn.) W.T.Lee

  synonym Persicaria longiseta (De Bruyn) Kitag. f. divaricatoramosa Hiyama イザリタデ

  synonym Persicaria longiseta (De Bruyn) Kitag. f.contractum Makino ウズタデ

 日本、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、陝西省、山東省、山西省、四川省、台湾、雲南省、浙江省)、モンゴル、ロシア、インド、ネパール、シッキム、ミャンマー、インドネシア、マレーシア原産。中国名は长鬃蓼 chang zong liao。別名はアカノマンマ。海抜 3000mまでの湿った渓谷、川岸沿いに生える。
 1年草。 茎は直立し、基部で上行または伏し、高さ30~60㎝、基部から分枝し、無毛で節が膨らむ。 葉柄は短いか、ほとんど存在しません。 葉身は槍形または広槍形、長さ5~13㎝×幅1~2㎝、葉脈に沿って背軸に付着し棘状、向軸に無光沢、基部は楔形または円形(var. rotundata)、縁は繊毛形、先端は鋭形または尖形。托葉鞘は筒状、長さ7~8㎜、膜質、まばらに毛があり、先は切形、縁毛は長さ6~7㎜。 花序は頂生または腋生、穂状花序、直立し、長さ2~4㎝、途切れる。苞は漏斗形、無毛、縁に長い縁毛があり、それぞれに5個または6個の花がつく。小花柄は苞と等長、長さ2~2.5㎜。花被はピンク色または赤紫色、5深裂する。花被片は楕円形、長さ1.5~2㎜。雄しべは6~8本。花柱は3本、中央より下部で合着する。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に含まれ、突き出ず、黒色、光沢があり、広卵形、三稜形、長さ約2㎜。花期は5~6月。果期は6~8月。2n=20(var. rotundata), 40。
 2変種あり、 var. longisetaは葉の基部が楔形で、2n=40。var. rotundataは葉の基部が円形、2n=20。
29-1 Persicaria longiseta var. longiseta イヌタデ 犬蓼 狭義
 日本、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、陝西省、山東省、山西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、モンゴル、ロシア、インド、ネパール、ミャンマー、インドネシア、マレーシア、フィリピン原産。中国名は长鬃蓼 chang zong liao 。英名bristly lady's-thumb ,Oriental lady's thumb , Asiatic smartweed。別名はアカマンマ。海抜3000mまでの湿った渓谷、川岸沿い、日本では道端、荒地などに普通に生える。
 1年草、高さ20~50(60)㎝。茎は赤味を帯びることが多く、葉は互生し、長さ3~8(13)㎝、幅1~2㎝の広披針~披針形、全縁、縁毛があり、先が尖り、基部は楔形。葉裏に腺点があり、主脈上に伏毛がある。長さ1~5㎝の円柱状の総状花序に紅色の花を密につける。花被は5裂し、淡紅色、花後は紅色になり痩果を包んで残る。雄しべは(6~)8本。花柱は3本。小苞は赤色、長い縁毛が多数あり、花の間から突き出る。托葉鞘は長さ5~7(~8)㎜の円柱形、先に托葉鞘とほぼ同長の剛毛がつく。痩果は長さ約2㎜の3稜形、赤色の花被に包まれたまま、黒褐色に熟し、光沢がある。花期は(5~)6~10月。2n=40。

29-1-1 Persicaria longiseta (Bruijn) Kitag. f. albiflora (Honda) Masam. シロバナイヌタデ 白花犬蓼

 白花品種。

29-2 Persicaria longiseta var. rotundata (A.J.Li) B.Li

  synonym Polygonum longisetum var. rotundatum A.J.Li [Flora of China]

  synonym Polygonum rotundatum (A.J.Li) F.Z.Li & C.Y.Qu

  synonym Polygonum sungareense f. rubiflorum (A.J.Li) S.X.Li & Y.L.Chang

  synonym Persicaria chrtekii Soják

  synonym Persicaria sungareensis Kitag. in J. Jap. Bot. 19: 62 (1943)

  synonym Polygonum chrtekii (Soják) Czerep.
  synonym Polygonum intricatum Kom.
  synonym Polygonum sungareense (Kitag.) Y.L.Chang & S.X.Li
 中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、陝西省、山東省、山西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、満州、チベット、モンゴル、ロシア原産。中国名は圆基长鬃蓼 yuan ji chang zong liao。海抜3100mまでの溝沿いの日陰の場所、水辺に生える。
 葉は基部が円形。2n=20。

30 Persicaria maackiana (Regel) Nakai サデクサ 叉手草
  synonym Polygonum maackianum Regel
 日本(北海度、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾、ロシア原産。中国名は长戟叶蓼 chang ji ye liao 。標高100~1600mの湿地、川岸、湖沼などの水辺、渓谷の日陰の草地に生える。
 1年草。茎は直立又は斜上、高さ30~80㎝、角(かど)があり、多数分枝し、後ろ向きの刺と密に星状毛がある。葉柄は長さ1~5㎝、後ろ向きの刺があり、密に星状毛がある。葉身は狭矛形、長さ3~8㎝×幅2~4㎝、両面に密に星状毛とまばらな刺があり、基部は心形、先は鋭形。托葉鞘は筒形、先に草質の翼があり、翼は円形、縁には歯がある。花序は頂生又は腋生。花序柄は分枝し、密な星状毛とまばらな腺毛がある。苞は披針形、普通、密に星状毛があり、各苞に花が2個つく。花柄は苞より短い。花被は帯ピンク色、5深裂する。花被片は広楕円形、長さ約4㎜。雄しべは8個、2輪につき、突き出ない。花柱は3個、中間の下まで合着する。痩果は宿存する花被に包まれ、濃褐色、光沢があり、卵形、3稜形、長さ約3.5㎜。花期は6~9月。果期は7~10月。2n=22。

30-1 Persicaria maackiana (Regel) Nakai f. albiflora H.Hara シロバナサデクサ

 白花品種。

31 Persicaria macrantha (Meisn.) Haraldson ペルシカリア・マクランサ

  synonym Persicaria odorata subsp. macrantha (Meisn.) Yonek. in J. Jap. Bot. 87: 163 (2012)

  synonym Polygonum macranthum Meisn.
 中国、インド(アッサム)、ミャンマー、バングラデシュ原産。サクラタデ(Persicaria odorata subsp. conspicua)がこの種の亜種とされていたこともある。
 丈が高く、直立する。茎は無毛またはまばらに剛毛がある。葉は葉柄があり、葉身は長さ7.5~15㎝、楕円状披針形、先は尖鋭形、無毛または下面にまばらに剛毛がある。托葉鞘はほぼ剛毛があり、縁毛は筒部と同長。総状花序は長くて狭く長さ7.5~15㎝、真っすぐ直立する。苞は密に覆瓦状につき、1個または2個が下に離れ、無毛、短い縁毛があり、腺は無い。花被は非常に大きく、直径約6㎜。堅果は大きく、長さ約3㎜、鈍角、漆黒で、非常に滑らかで光沢がある。

32 Persicaria maculosa Gray ヨウシュハルタデ 洋種春蓼 [広義]
  basionym Polygonum persicaria L.
 日本、朝鮮、中国、ロシア(東欧ロシア、西シベリア以西)、インド北部、パキスタン、ネパール、ブータン、ラオス、ベトナム、中央アジア、南西アジア、、ヨーロッパ、北アフリカ(アルジェリア、モロッコ、チュニジア、エジプト)原産。英名はJesusplant , lady's-thumb , redshank , spotted lady's-thumb。中国名は蓼 liao。北アメリカ、南アメリカ、オーストラリア、グリーンランド、アイスランドなどに帰化。
 1年草。 茎は直立または斜上し、高さ40~80㎝、分枝または単純で、まばらに毛があるか又は無毛になる。 葉柄は長さ5~8㎜、伏した小剛毛がある。葉身は披針形~楕円形、暗色の三角形の斑紋が中央にあり、両面に伏した小剛毛があり、中脈には密にあり、葉の基部は狭い楔形、葉縁には長い縁毛があり、葉先は鋭形~尖鋭形。托葉鞘は筒形、長さ1~2㎝、膜質、まばらに毛があり、先は切形、縁毛は長さ0.4~3㎜。花序は頂生又は腋生、穂状花序、長さ2~6㎝、通常数個の穂状花序が集合して円錐花序状なる。花序柄は腺毛があるか又は無毛。苞は漏斗形、縁毛があり、各苞に花が5~7個つく。小花柄は長さ2.5~3㎜。花被は赤紫色~暗紫色、通常は5深裂する。花被片は長円形、長さ2.5~3㎜、脈が目立つ。雄しべは6~7個。花柱は2個、まれに3個、中間の下で合着する。痩果は宿存する花被に包まれ、黒褐色、光沢があるか又は光沢がなく、類円形又は広卵形、両凸形(biconvex)、まれに3稜形、長さ2~2.5㎜、平滑。花期は6~7月。果期は7~9月。2n=22, 42(Flora of China)。
 1年草、茎は高さ(10)30~70(80)cm、直立または平伏~斜上し、±分枝し、節がわずかに太くなる。 葉は長さ(4)6~13(16)㎝×幅(0.8)1~3(4)㎝、披針形、ほぼ無柄、無毛または下面にわずかに毛があり、後者の場合は主に中脈にあり、全縁、縁毛があり、ときに中央に黒い斑紋がある。托葉鞘は長さ(6)10(14)㎜、±茎につき、まばらに毛があり、長さ4㎜までの±多数の縁毛がある。花序は穂状花序状、密、円筒形、小花柄は花被より短い。花被は長さ2~3㎜、濃ピンク色または淡ピンク色。痩果は長さ(2)3㎜、レンズ形または三角形、3つの凹面(concave)をもち、含まれるかまたはほとんど突き出ない。2n=40, 44; n= 22。(Flora Iberica)
 茎は高さ20~80㎝、平伏~直立し、分枝する。葉は披針形、長さが幅の4~6倍の長さ、通常、黒い斑紋があり、無毛または下面に毛があり、基部は茎に向かって狭くなる。葉鞘には長さ1~2(~5)㎜の毛がある。花序は密な円筒形で穂状花序。花は帯赤色または帯緑色、長さ約3㎜、熟した果実を包む。果実は暗褐色または黒色、光沢があり、長さ2~3㎜。花序や花には通常腺がないが、まれに腺がある。花期は7~10月(Flora Helvetica 2018)。
【USAのAtha, D. E., M. H. Nee & R. F. C. Naczi. 2010】
 USAでは明確に区別されていなかったハルタデ、オオイヌタデ類をアジアと北アメリカ東部の範囲のタイプ標本などにより区別し、学名もPersicaria maculosa、Persicaria lapathifolia、Persicaria extremiorientalisに整理した。Persicaria maculosaはヨウシュハルタデ、Persicaria lapathifoliaはオオイヌタデ、Persicaria extremiorientalisはハルタデである。ハルタデ(Persicaria extremiorientalis)は次のとおり、1、基部の茎の節間には伏毛がある。 2、葉縁の剛毛は長さ0.5~1.1㎜。 3、痩果は側部が扁平、褐色、光沢があり、基部が膨れる(tumescent)。
 ヨウシュハルタデは茎の節間が無毛。托葉鞘の外面は剛毛があり、先は縁毛があるかまたは剛毛がある。葉身は縁に剛毛があり、剛毛は長さ0.2~0.5㎜、下面は剛毛があり、腺は無い。苞はまばらに剛毛があり、先は鈍形~切形。総状花序は長さ1~4cm、直立する。花序柄にまれに有柄の腺がある。果時に 乾くと花被片の脈が顕著に隆起する。果時の花被片の脈の先は二股に分岐するか、または分岐しない。分岐している場合は、片方の枝のみが弱く反り返る(両方ではない)。 痩果はレンズ形または三稜形、基部で最も幅が広いが、膨れない 。
32-1 Persicaria maculosa Gray subsp. maculosa ヨウシュハルタデ 洋種春蓼
  basionym Polygonum persicaria L. var. persicaria 
  synonym Persicaria vulgaris Webb & Moq. 2n=44

  synonym Polygonum persicaria var. opacum (Samuelsson) A. J. Li, Fl. 暗果蓼 an guo liao

  synonym Polygonum opacum Sam.
 朝鮮、中国、ロシア(東欧ロシア、西シベリア以西)、インド北部、パキスタン、ネパール、ブータン、ラオス、ベトナム、中央アジア、南西アジア、ヨーロッパ、北アフリカ(アルジェリア、モロッコ、チュニジア、エジプト)原産。日本は帰化。英名はlady's thumb ,redshank。腺がほとんどないのが特徴。
 解説はFlora of China、Flora Iberica、Flora Helvetica、Athaら 2010から修正。
 1年草。 茎は直立または斜上し、高さ(10)30~70(80)㎝、分枝または単純で、茎の節間が無毛。 葉柄は長さ5~8㎜、伏した小剛毛がある。葉身は披針形、長さ(4)6~13(16)㎝×幅(0.8)1~3(4)㎝、ときに暗色の三角形の斑紋が中央にあり、無毛または下面に伏した剛毛があり、腺は無く、縁に長さ0.2~0.5㎜の剛毛の縁毛があり、葉の基部は狭い楔形、葉先は鋭形~尖鋭形。托葉鞘は筒形、長さ1~2㎝、膜質、まばらに毛があり、先は切形、縁毛は長さ0.4~3(~5)㎜。花序は頂生又は腋生、穂状花序、長さ1~4(6)㎝、通常数個の穂状花序が集合して円錐花序状なる。花序柄はまれに有柄の腺があるか又は無毛。苞は漏斗形、縁毛があり、各苞に花が5~7個つく。小花柄は長さ2.5~3㎜。花被はピンク色~赤紫色~暗紫色、通常は5深裂する。花被片は長円形、長さ2~3㎜、脈が目立ち、果時に 乾くと花被片の脈が顕著に隆起する。果時の花被片の脈の先は二股に分岐するか、または分岐しない。分岐している場合は、片方の枝のみが弱く反り返る(両方ではない)。雄しべは6~7本。花柱は2個、まれに3個、中間の下で合着する。痩果は宿存する花被に包まれ、黒褐色、光沢があるか又は光沢がなく、類円形又は広卵形、レンズ形、まれに3稜形で3つの凹面(concave)をもち、基部で最も幅が広いが、膨れず、長さ2~2.5㎜、平滑。花期は6~7月。果期は7~9月。2n=22, 42(Flora of China)。2n=40, 44; n=22。(Flora Iberica)
 var. opacum(暗果蓼)はsubsp. maculosaのsynonymとされている。痩果に光沢がなく、托葉鞘の縁毛が長さ0.4~1㎜と短いもの。

32-2 Persicaria maculosa var. amblyophylla (H.Hara) Yonek. シラカワタデ 白河蓼

  synonym Persicaria amblyophylla H.Hara in J. Jap. Bot. 12: 336 (1936)

  synonym Polygonum amblyophyllum (H.Hara) Kitam.

  synonym Polygonum persicaria L. var. amblyophyllum (H.Hara) Ohwi

  synonym Polygonum persicaria f. latifolium S.X.Li & Y.L.Chang

  synonym Persicaria maculasa Gray subsp. hirticaulis (Danser) S.Ekman & Knutsson var. amblyophylla (H.Hara) Yonek. [YList]

 日本(東北地方南部~関東)、朝鮮、中国(満州)。Flora of Chinaでは基本種に含められる。和名は発見地の福島県白河市に因む。肥沃な土地や農耕地などに生え、近縁種のオオイヌタデやハルタデなどと混生することも多い。分布がきわめて特異的で、国内の既知の産地は栃木、福島、宮城の3県のみであった。はじめ独立の種として記載されたが、後にオオイヌタデの変種とされた。ハルルタデ(オオハルタデ含む)に比べるとより大型で、オオイヌタデに近い。葉の性質も形を除けばケハルタデの型によく似てくる(参考10)。現在はヨウシュハルタデの変種とされている。
 大型の1年草、高さ1.5~2m。茎には短剛毛がまばらに生える。托葉鞘の口部の縁毛は粗毛があるのがむしろ普通で、長さは3~4㎜に達するものがある。オオイヌタデに近縁であるが、葉の形が非常に変わっている。葉は倒卵状長楕円形、中央より上部で最も幅が広く、先は円みを帯び、急に鋭尖頭となる。オオイヌタデの葉は中央以下で最も幅広く、先が長く鋭く尖リ、葉はハルタデも同様である。その特徴的な葉形から、基本種とは容易に識別できる。

33 Persicaria madagascariensis (Meisn.) S.Ortiz & Paiva ペルシカリア・マダガスカリエンシス

  synonym Persicaria attenuata (R. Br.) Soják subsp. africana K.L. Wilson

  synonym Persicaria tomentosa Sasaki
  synonym Polygonum madagascariense (Meisn.) Meisn.
  synonym Polygonum tomentosum Willd.
 アフリカ、マダガスカル原産。英名はbristly snakeroot。海抜0~1800mのダム、湖、川の水域、または道路脇の排水路などの湿った草が茂った場所に生える。  多年草、直立またはばらばらに広がり、匍匐性の根茎から成長し、下部の節から根を出し、しばしば叢生する。葉は線状披針形~長円状楕円形、中肋は下面で目立つ。托葉鞘は帯黄色~褐色、膜質、長さ1~4㎝、外側に剛毛があり、先の縁には長い硬い剛毛がある。多数の穂状花序状の総状花序がつき、花序は花序柄があり、側生または頂生末。花は白色~淡ピンク色、蕾のときはピンクがかった赤色。堅果は光沢があり、黒色。

34 Persicaria manshuricola Kitag. エダハリタデ
  synonym Polygonum roseoviride var. manshuricola (Kitag.) C.F.Fang
  synonym Polygonum longisetum Bruijn var. longisetum [Flora of China]
 中国(吉林省)原産。Kewsienceには満州原産として掲載されているが、Flora of Chinaではイヌタデ(长鬃蓼 chang zong liao)のsynonymとしている。

35 Persicaria microcephala (D. Don) H. Gross ペルシカリア・ミクロケファラ

  synonym Polygonum microcephalum D. Don [Flora of China , The Plant List]

 中国、インド、ブータン、ネパール、シッキム原産。中国名は小头蓼 xiao tou liao。標高500~3200mの森林内、草地に生える。
 多年草。根茎は丈夫。茎は直立又は傾伏、高さ40~60㎝、角張り、分枝する。葉柄は長さ1~1.2㎝、翼がある。葉身は広卵形~三角状卵形、長さ6~10㎝×幅2~4㎝、両面とも無毛又は軟毛があり、歯の基部は類円形、葉柄に沿下し、翼を作り、葉縁は全縁、縁毛があり、葉先は尖鋭形。托葉鞘は筒形、緩く、長さ7~10㎜、有毛、先は切形、縁毛がある。花序は頂生、普通、双生、頭状、直径5~7㎜。花序柄は無毛又は腺毛がある。苞は卵形、先は鋭形。花被は白色又は帯ピンク色、5深裂する。花被片は楕円形、長さ2~3㎜。雄しべは8個、突き出ない。花柱は3個、中間の下まで合着する。柱頭は頭状。痩果は黒褐色、光沢がなく、広卵形、3稜形、長さ2~2.5㎜、斑点がある。
品種) 'Chocolate Dragon' (PBR) , 'Dragon's Eye' (PBR) , 'Purple Fantasy' , 'Red Dragon' (PBR) , 'Silver Brown' , 'Silver Dragon'

35-1 Persicaria microcephala (D. Don) H. Gross var. microcephala

  synonym Polygonum microcephalum var. microcephalum
  synonym Persicaria microcephala (D. Don) H. Gross
 花序柄は無毛。花被は白色。
35-2 Persicaria microcephala var. sphaerocephala

  synonym Polygonum microcephalum var. sphaerocephalum (Wallich ex Meisner) H. Hara

  synonym Persicaria sphaerocephala (Wallich ex Meisner) H. Gross.
 中国、インド、ネパールに分布。中国名は腺梗小头蓼 xian geng xiao tou liao。
 花序柄は腺毛がある。花被は帯ピンク色。

36 Persicaria mikawana Hanai et Seriz. コミゾソバ 小溝蕎麦

  synonym Polygonum mikawanum Hanai et Seriz.
 日本固有種。本州の福島県~兵庫県に分布。
 1年草、長さ15~80㎝。茎は下向きの小刺があり、星状毛が散生し、横に這い、先がやや立ち上がる。茎の基部は倒伏しない。葉は互生し、長さ3~7㎝×幅2~5(2~3)㎝、先は尖り、側裂片がやや後方へ張り出し、基部は浅い心形となる。側裂片の先は鈍頭。葉縁、葉裏の脈上に毛はあるが星状毛はない。葉柄は狭い翼があり、長さ1~3.5㎝(5~6㎜)、上向きの小刺があり、小さな星状毛がある。托葉鞘は長さ3~5㎜、上向きの小刺があり、上部が葉のように丸く広がるものと広がらないものがある。花は小さな総状花序に数個(3~7個程度)、集まってつく。花柄には腺毛はなく、小さな星状毛がある。苞は披針形、小苞は幅が広く、2脈があり、先が浅く2裂し、先端が黒くなる。花被は長さ約3㎜、幅約1.5㎜、筒部は長さ約2㎜、白色~白緑色、先は5裂し、淡紅色。花後は花被の先が淡褐色になり、下部の幅が広くなる。痩果は長さ約3㎜×幅約2㎜の3稜形、やや光沢がある。花被を取ったすぐの痩果は白緑色であり、放置すると淡褐色になり、未熟なものは白緑色のまま。花期は8~10月。2n=20。地中に閉鎖花はつけない。

36-1 Persicaria mikawana Hanai et Seriz. f. alboviridis Hanai et Seriz. ミドリコミゾソバ


37 Persicaria minor (Huds.) Opiz ペルシカリア・ミノル
  synonym Persicaria tenella (Blume) H.Hara
  synonym Peutalis minor (Huds.) Raf.
  synonym Polygonum minus Huds.
 台湾、ロシア、インド、パキスタン、ネパール、スリランカ、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、バングラデシュ、ラオス、マレーシア、タイ、ベトナム、フィリピン、ニューギニア、マリアナ諸島、ソロモン諸島、カロリン諸島、イラン、トルコ、ヨーロッパ原産。英名はSmall water-pepper。北アメリカやオーストラリアに広く帰化。標高0~100mの湿った、開けた場所に生える。
 1年草、高さ5~30(~40)㎝。根はときに下部の節から出る。根茎と匍匐茎は存在しない。茎は傾伏または斜上し、下部で分枝し、うねがほとんどなく、上部は無毛またはザラつく。托葉鞘は帯褐色の円筒形、長さ3~10 mm、紙質、基部は膨らまず、縁は切形、剛毛の縁毛があり、縁毛は長さ(0.3~)1~3(~5)㎜、表面は無毛または剛毛があり、腺点はない。葉柄は長さ0.1~0.2㎝、無毛または剛毛があり、葉はときに無柄。葉身は上面に暗色の三角形または三日月形の斑紋はなく、線形~線状披針形、長さ(1~)2~7.5(~10)㎝×幅(0.2~)0.4~1(~2.3)㎝、基部は楔形に向かって先細り、縁は前向きにザラつき、先は鋭形~尖鋭形で、面は無毛またはまばらに剛毛があり、特に中静脈に沿ってあり、腺点はない。花序は頂生および腋生、斜上~直立し、通常は下部で途切れ、上部では途切れず、長さ10~50㎜×幅2~4㎜。花序柄は長さ(0~)2~25㎜、ときに腋生の花序にはなく、花はそのため托葉鞘(ocreae)に囲まれ、無毛。鞘状苞(ocreolae)は下部では重ならないが、通常は上部で重なり、縁には長さ(0.1~)0.6~2(~2.7)㎜の剛毛の縁毛がある。小花柄は斜上し、長さ0.5~1㎜。 花は鞘束(ocreate fascicle)あたり1~3(~4)個、同型花柱。花被片はバラ色(roseate)~赤色、まれに白色、無毛、腺点はなく、ほとんど大きくならない。花被片は5個、その長さの約1/3が合着し、倒卵形~楕円形、長さ2.5~3㎜、脈は目立たず、錨型ではなく、縁は全縁、先は鈍形~丸い。雄しべは5(~6)本、突き出ない。葯は黄色からピンク色、楕円形。花柱は2(~3)本、基部で合着する。痩果は包まれ、褐黒色~黒色、両凸形、またはまれに3稜形、長さ(1.5~)1.8~2.3(~2.7)㎜×幅(1.1~)1.3~1.5(~1.8)㎜、光沢があり、平滑。花期は7~10月(FNA)。
 Persicaria tenella (Blume) H.Haraはsynonymとされているが、これはフトボノヌカボタデであり、本州(千葉県・和歌山県)、九州、トカラ列島に分布するとされている。シマヒメタデをPersicaria tenella var. kawagoeana(Persicaria kawagoeana)、フトボノヌカボタデをPersicaria tenella var. tenellaとする変種に分ける見解もある。
(1) Persicaria tenella (Blume) H.Hara フトボノヌカボタデ

(1)-1 Persicaria tenella (Blume) H.Hara var. tenella フトボノヌカボタデ 太穂の糠穂蓼 [狭義]

 茎葉や果実の形がヤナギヌカボに似ているが、花序は花が常に密集して、円筒形、直立する。シマヒメタデに比べて、全体やや短縮した形で、がっちりした感がある。節間、葉、花序などはやや短かく、花穂も短かく太い点が著しい。果はーまわり大きい。葉の先はやや急尖で、聞出する傾向が強いなどが異なる点である。生育状況によって稀に、伏臥、繊細、小形のものがある。
 全体やや硬く、茎は高さ30~60㎝、無毛、通常帯紅色、直径1㎜前後、下部1.5~2㎜、節間2~3㎝、でやや短かい。葉鞘は長さ5~8㎜、伏毛があり、縁毛は長さ約2(3)㎜。葉身は通常やや厚く、広線形~狭披針形、鋭尖頭、円脚~鈍脚、葉の最大幅は下部、両面多少の毛がある。下面に通常、盤状腺点があり、主脈は明らかに有毛、側脈は不明瞭。花穂は頂生又は腋生、花は密集して円筒状で短かく、長さ約1~2㎝×幅(3)4~5㎜、直立する。花茎は長さ約1㎝、まれに3㎝。小苞の縁毛は短かく目だたず、長さ約1㎜まで、稀に1.3㎜。果実は黒褐色、光沢があり、両凸形、長さ1.5~1.7㎜。(参考6)

(1)-2 Persicaria tenella (Blume) H.Hara f. albida (I.Ito) Yonek. シロバナフトボノヌカボタデ

 白花品のものを指し、標本は花期のもので全体繊細、花穂は細く、葉に腺点がない。

38 Persicaria muricata (Meisn.) Nemoto ヤノネグサ 矢の根草
  synonym Persicaria nipponensis (Makino) Nakai
  synonym Polygonum muricatum Meisn.

  synonym Persicaria nipponensis (Makino) H.Gross ex Harain in Bot. Mag. (Tokyo) 48: 892 (1934)

  synonym Persicaria nipponica Nakai
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、陝西省、四川省、西蔵省、雲南省、浙江省)、ロシア、インド、ネパール、ブータン、ラオス、タイ、ベトナム、フィリピン原産。中国名は小蓼花 xiao liao hua。海抜3300m以下の湿った谷、溝に生え、日本では水田や草地に普通に見られる。
 多年草、高さ30~50(~100)㎝。茎は基部が這い、先は斜上して長く、分枝し、茎には稜があり、黄緑色、赤味を帯びることも多く、稜上に長さ0.5~1㎜の小さい逆刺があり、刺のほとんど無いものもある。葉は互生し、葉柄は長さ0.7~2㎝、まばらに逆刺がある。葉身は長さ2.5~6㎝×幅1.5~3㎝、卵形~長円状卵形、下面にはわずかに星状毛、短毛があり、中脈上に逆刺がある。葉の上面は普通、無毛またはまばらに毛があり、まれに星状毛があり、葉の基部は広切形~円形~類心形、葉縁には縁毛があり、葉先は尖鋭形~鋭形。托葉鞘は筒形、長さ8~20㎜、膜質、無毛、先は切形で長い縁毛がある。花序は穂状花序、数個の穂状花序が集まってつき、円錐花序状になる。枝先の短い穂状花序に10数個が固まってつき、いびつな形をしていて丸くならない。花序の成長の良いものは惰円形になる。花序柄には密に短毛があり、疎~密に腺毛がある。腺毛は短毛より長く、腺が赤色。苞は広惰円形~卵形、長さ2.5~3㎜、先は尖鋭形、赤色になり、縁毛があり、赤い腺毛もあり、通常各苞に花が2個つく。小花柄は苞より短くて見えず、長さ0.5~2㎜、緑色、腺毛はほとんどない。花被は白色で先が淡紅色、5深裂する。花被片は広惰円形、長さ2~3㎜。雄しべは6~8本、2輪につく。花柱は3本、離生。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に包まれ、緑色~緑褐色~褐色、平滑、光沢があり、卵形、3稜形、長さ2~2.5㎜の3稜形、花期は9~10月。2n=20。

38-1 Persicaria muricata (Meisn.) Nemoto f. albiflora (Makino) Yonek. シロバナヤノネグサ 白花矢の根草

  synonym Persicaria nipponensis (Makino) H.Gross ex Nakai f. albiflora (Makino) Nemoto

 ヤノネグサの白花

39 Persicaria nakaii (H.Hara) Cubey オヤマソバ 御山蕎麦
  synonym Aconogonon nakaii (H.Hara) H.Hara [YList]
  synonym Pleuropteropyrum nakaii H.Hara
  synonym Polygonum nakaii (H.Hara) Ohwi
 日本固有種。北海道、本州の中部地方以北に分布する。高山帯の砂礫地に生える。
 多年草、根茎がある。高さ15~50㎝。茎は直立し、よく分枝して、紅色を帯び、枝はジグザグに曲がる。葉は互生し、葉柄は短く、長さ5~10㎜。葉身は卵形、長さ4~12㎝×幅2~5㎝、基部は円形~広くさび形、縁は全縁で、まばらに繊毛があり、両面とも無毛、下面の脈上に伏毛がある。托葉鞘は長さ5~7㎜、膜質、上半分が褐色、無毛または直軟毛がある。雌雄同株。総状花序は頂生し、円錐花序状、長さ4~5㎝、花が多数つく。花は両性、直径約3㎜、普通は白色~黄白色だが、淡紅色を帯びるものもある。花被は5深裂し、裂片は長さ約3㎜。雄しべは8本、長さは花被のほぼ半長。花柱は3本。痩果は長さ3~3.5㎜、宿存する花被より、やや長く、3稜形、褐色、光沢がある。花期は7~9月。

40 Persicaria neofiliformis (Nakai) Ohki シンミズヒキ 新水引

  synonym Persicaria filiformis (Thunb.) Nakai ex W.T.Lee var. neofiliformis (Nakai) T.B.Lee ex W.T.Lee

  synonym Antenoron neofiliforme (Nakai) Hara [Flora of China]

  synonym Antenoron filiforme (Thunb.) Roberty et Vautier var. neofiliforme (Nakai)A.J.Li

  synonym Polygonurn neo-filiforrne NAKAI in Tokyo Bot. Mag. XXXVI. p.117 (I922)

 日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ベトナム原産。中国名は短毛金线草 duan mao jin xian cao。林縁、半日陰に生える。
 多年草、 高さ50~80㎝ 。茎は中空、直立し、中間より下は無毛、中間より上は毛があり、中間より下は節が離れ、葉がない。葉柄は長さ1~1.5㎝、伏した剛毛がある。葉は間隔が短くつき、密に互生し、濃緑色、長円形~狭楕円形~卵形、稀に倒卵形、長さ(6~)9~12(~18)㎝×幅3.5~5.5(~8)㎝、両端が漸尖し、先は鋭形または尾状尖鋭形、上面は葉脈がほとんど窪まず、新鮮なときに葉は平ら、毛はほとんどなく、上面と縁には非常に短い毛(伏毛)がまばらにあり、光沢があり、さわるとゴムのような感触がある。葉下面は脈が明瞭で、側脈は平行に湾曲し、ややざらつく。葉には黒班がない。托葉鞘は筒形、褐色、長さ(0.5~)1.5~2.0cm、先は切形。葉は次第に小さくなり花序になる。穂状花序は頂生または腋生、長さ15~35㎝、花が疎につく。ミズヒキより花序が長く、花はミズヒキによく似ている。苞は漏斗形、長さ2~3㎜、縁毛があり、花が1~3個つく。小花柄は長さ3~4㎜。花被は長さ2.5~3.0㎜、赤色~バラ色、外側に赤色の脈があり、4深裂し、花被片は内側が帯白色になり、花後に大きくなる。花柱は2本、長さ2.5㎜、宿存し、成熟すると拡大して硬くなり、長さ3.5~4㎜、先が曲がって鉤状(unguiculati)になり、花被から長く突き出る。痩果は宿存する花被に含まれ、広卵形~卵形、両凸形、平滑、暗褐色~栗褐色、長さ3~3.5㎜。花期は8~10月。果期は9~11月。
 根は多年生。茎は高さ約50㎝、中間より下は無毛、中間より上は毛があり、中間より下は節が離れ、葉がない。葉は茎の中間で束生し、そのため、茎の中間の節間は短くなる。葉柄は長さ約1㎝。葉身は長さ9~12㎝×幅3.5~5.5㎝、全縁、卵形で両端が漸尖し、上面は平らで緑色、葉の上面と縁にはごくまばらに非常に短い毛があり、葉脈は凹まず、新鮮なときに葉は平ら、側脈は平行に湾曲する。托葉鞘は筒形、褐色、長さ1.5~2.0cm、先は切形。葉は次第に小さくなり花序になる。穂状花序は長さ約30㎝、花が疎につく。小花柄は長さ3㎜、先に関節がある。花被(perigonium)は長さ2.5~3.0㎜、外側に赤色の脈がある。花柱は2本、長さ2.5㎜、に爪がある(unguiculati)。痩果は広卵形栗褐色。(1922 Tokyo Bot. Mag. 36. p.117)
 多年草。根茎は丈夫で。茎は直立し、高さ50~80㎝、中空、線条があり、伏した剛毛があり、節が膨らむ。葉は間隔が短く、密に互生し、葉柄は長さ1~1.5㎝、伏した剛毛がある。葉身は楕円形または狭楕円形~卵形、稀に倒卵形、長さ6~15(18)㎝×幅4~8㎝、濃緑色、両面に伏した剛毛があり、基部は楔形、縁は全縁、先は鋭形または尾状尖鋭形。托葉鞘は筒形、褐色、長さ5~10㎜、膜質、外側に赤色の脈があり、短い縁毛がある。花序は頂生または腋生、長さ15~35㎝、細く、緩く花がつく。苞は漏斗形、長さ2~3㎜、縁毛があり、花が1~3個つく。小花柄は長さ3~4㎜。 花被はバラ色、4深裂する。花被片は卵形、長さ約3.0㎜、大きくなる。雄しべは通常5本、突き出ず含まれる。花柱は2本、宿存し、成熟すると拡大して硬くなり、長さ3.5~4㎜、先が曲がって鉤状になり、花被から長く突き出る。痩果は宿存する花被に含まれる、暗褐色、光沢があり、卵形、両凸形、平滑。花期は8~10月。果期は9~11月。標高100~2500mの森、藪、谷に生える。中国(安徽省、福建省、南甘粛、広東、広西、貴州、河南、湖北、湖南、江蘇、江西、南陝西、山東、四川、雲南、台湾、浙江) [日本、韓国、ミャンマー、ロシア(極東)]に分布(Flora of China)。

41 Persicaria nepalensis (Meisn.) H.Gross タニソバ 谷蕎麦
  basionym Polygonum nepalense Meisn.
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西省、貴州省、海南島、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、寧夏、青海省、陝西省、山東省、山西省、四川省、西蔵 、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア、アフガニスタン、インド、スリランカ、ブータン、ネパール、パキスタン、ミャンマー、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピン、パプアニューギニア、アフリカ、マダガスカル原産。英名はNepalese smartweed , Nepal knotweed , Nepal persicaria。中国名は尼泊尔蓼 ni bo er liao。標高200~4000mの山地、原野の斜面、谷など湿った場所に生える。ヨーロッパ、南北アメリカなどに帰化している。
 1年草。茎は傾伏または斜上し、高さは(10~)20~40(~50)㎝、根元でよく分枝し、無毛で、赤味を帯びることがあり、下部の節から発根する。下部の葉は葉柄があり、葉柄は長さ2~3㎝、翼がある。葉身は卵形または三角状卵形、長さ(1~)3~5(~9)㎝×幅(0.5~)2~4㎝、両面はまばらに剛毛があるかまたは無毛、まばらに黄色の透明な(緑色に見える)腺点があり、先は漸尖して鋭形、基部は広楔形、葉柄に沿下して目立つ翼があり、縁は全縁、上部の葉は小さく、ほぼ無柄または抱茎。托葉鞘は白緑色~帯褐色、筒形、長さ5~10㎜、薄い膜質、先は斜めの切形、縁毛はなく、基部に反り返った剛毛がある。花序は腋生または頂生し、花は頭状花序状に多数つき、1枚の葉状の苞(総苞葉 involucral leaf)が基部につく。花序柄は細く、上部に腺毛がある。各小苞は花を1個つけ、卵状楕円形、通常は無毛、縁は膜質。小花柄は苞よりも短い。花被は紫赤色または白色、まれに青色、通常は4深裂し、先が少し開くだけ。花被片は長円形、長さ2~3㎜、先は鈍形。雄しべは5または6本、花被の長さに等しい。葯は黒紫色。花柱は2本、基部で合着する。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に含まれ、暗褐色~黒色、光沢がなく、広卵形、両凸形、長さ2~2.5㎜、密に小さな凸凹がある。果実が暗褐色になっても花被は蕾のように見える。花期は5~8月。果期は6~10月。2n=48。

41-1 Persicaria nepalensis (Meisn.) H.Gross f. adenothrix (Nakai) Hiyama ネバリタニソバ

 基本種に含める。

42 Persicaria odorata (Lour.) Sojak ペルシカリア・オドラタ
  basionym Polygonum odoratum Lour.
 日本、韓国、中国、台湾、カンボジア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、タイ、ベトナム原産。
 2亜種に分類される。

42-1 Persicaria odorata (Lour.) Sojak subsp. odorata ベトナムコリアンダー

 カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、ミャンマー、マレーシア原産。英名はVietnamese-coriander , Vietnamese mint。東南アジアで栽培され、rau ram , Laska leaf , daun kesom , phak phai , chi krasang tomhom , Xiangliao (香蓼)と呼ばれる。中国在来、中国に帰化ともいわれる。P. wugongshanensis に似ている。P. wugongshanensisは葉と花被片に微細な腺をもち、花序は穂状で間隔が開く、花は2形、花柄は苞より長い。しかし明瞭に異なり、根茎が発達し、葉は披針形~狭い披針形。痩果に光沢がある。
 多年草、よく発達した根茎がある。全体に強いコリアンダーのような芳香(唐辛子風味)がある。茎は直立、無毛、高さ30~55㎝×直径2~3㎜、溝があり、基部に不定根がある。葉は全縁、披針形~狭披針形(卵状披針形)[広卵形~三角状卵形:Missouri Botanical Garden]、長さ(7~10)11~16㎝×幅1~1.5㎝、基部は楔形、先は尾状尖鋭形、両面とも無毛又は葉縁と下面の中脈にまばらに前向き剛毛又は毛がある。下面に黄色の腺点がまばらにある。葉柄は托葉鞘の基部につき、長さ2~4(5)㎜。托葉鞘は筒形、膜質、無毛、長さ11~16.5㎜、先端に短い縁毛(5㎜以下)がまばらにある[縁毛は葉鞘の1/3~1/2]。花序柄は長さ1~5㎝。花序は頂生、穂状花序状、普通、基部で不連続、長さ7~10㎝×幅約1㎝、1個又は多数の統合した円錐形。苞は膜質、漏斗形、縁には短い毛があり、長さ1~2㎜。花柄は苞より長い。花は両性、長さ3.1㎝以下。花被片は5個、倒卵形、白色又は淡ピンク色、長さ1.5~2.1(5~7)㎜、淡黄色の透明の腺点を持つ。雄しべ8個。花柱は普通、3個(まれに2個)、中間で合着する。花柱は2形。果実は長さ約1.5㎜、扁平な卵状3稜形、褐色、平滑、光沢がある[光沢がない]。花期は6~10月(主に晩夏)。果期は8~12月。

42-2 Persicaria odorata (Lour.) Sojak subsp. conspicua (Nakai) Yonek. サクラタデ 桜蓼

  synonym Persicaria japonica (Meisn.) Nakai ex Ohki subsp. conspicua (Nakai) Sugim

  synonym Persicaria macrantha (Meisn.) Haraldson subsp. conspicua (Nakai) Yonek.

  synonym Persicaria conspicua (Nakai) Nakai ex Ohki

  synonym Polygonum japonicum var. conspicuum Nakai  [Flora of China]

 日本(本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は显花蓼 xian hua liao。 水辺や湿地、水田の畔。
 1年草。高さ50~100㎝。葉は匂いが無く、互生し、長さ5~12㎝の披針形、先は鋭く尖る。葉縁と脈上にやや硬い毛(剛毛)がある。托葉鞘は褐色、長さ7~15㎜、縁毛は長さ4~7(5~12)㎜[葉鞘の1/2~2/3]。花序は1~3本に分枝し、細長く、曲がるが、先はあまり垂れ下がらない。花柄はやや長い。花被は淡紅色、まれに白色、腺点があり、5深裂し、長さ5~6㎜。雌雄異株。花序の節当りの花数は2~3個。雄花は雄しべが雌しべより長く、花被からやや突き出す。雌花は雌しべが雄しべより長い。花柱は3個。痩果は長さ約3㎜の3稜形、赤褐色から黒色に熟し、光沢は少ない。花期は9~10月。2n=44。

43 Persicaria opaca (Sam.) Koidz. ペルシカリア・オパカ

  synonym Polygonum persicaria var. opacum (Samuelsson) A. J. Li

  synonym Polygonum opacum Samuelsson
 中国原産。中国名は暗果蓼 an guo liao。標高100~200mの川辺、畑の縁に生える。
 ハルタデ(Polygonum persicaria)の変種と分類されていた。
 痩果は光沢が無い。鞘は縁毛が短く、縁毛の長さ0.4~1㎜。

44 Persicaria orientalis (L.) Spach オオケタデ 大毛蓼
  synonym Persicaria pilosa (Roxb.) Kitag. 
  synonym Persicaria cochinchinensis (Lour.) Kitag.
  basionym Polygonum orientale L.
 朝鮮、中国、台湾、ロシア、インド、ブータン、スリランカ、バングラデシュ、カンボジア、ミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ニューギニア、オーストラリア原産。中国名は红蓼 hong liao。英名はprince'sfeather, kiss-me-over-the-garden-gate。別名はオオベニタデ、ベニバナオオケタデ。江戸時代に薬草として導入され、花が鮮やかなため全国で観賞用に栽培されるようになり、逸出して野生化している。道端、民家付近、荒地、耕作地などに生える。
 1年草、茎は直立、高さ100~200㎝、丈夫、上部で多数、分枝、密に開出する絨毛がある。葉柄は長さ2~10㎝、開出する絨毛がある。葉身は広卵形~広楕円形~卵状披針形、長さ10~20(~27)㎝×幅5~12㎝、両面に密に毛があり、脈には密に絨毛があり、葉の基部は円形~類心形、わずかに沿下し、葉縁には密に縁毛があり、葉先は尖鋭形。葉の下面には腺点がある。托葉鞘は筒形、長さ1~2㎝、膜質、絨毛があり、縁は切形、長い縁毛があり、普通、緑色の葉状の翼をもつ。花序は頂生又は腋生、穂状花序、わずかに垂れ下がり(生育がよいと垂れ下がることが多い)、長さ3~7㎝、数個の穂状花序がつき、円錐花序状になる。苞は緑色、広漏斗形、長さ3~5㎜、有毛、縁は長い縁毛があり、各苞に花が3~5個つく。花柄は苞より長い。花は2形。花被はピンク色~白色、5裂する。花被片は楕円形、長さ3~4㎜。白色。雄しべ7個、突き出す。花柱は2個、中間の下まで合着し、突き出ないか又は、雄しべが突き出ず、花柱が突き出す株もある。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に包まれ、黒褐色、光沢があり、ほぼ円形、レンズ形、直径約3~3.5㎜。花期は6~9月。果期は8~10月。2n=22。
品種) 'Cerise Pearls' , 'Shiro-Gane Nishiki' , 'Variegata' (v)

45 Persicaria paradoxa (H.Lév.) Kantachot ペルシカリア・パラドクサ

  synonym Polygonum chinense var. paradoxum (H. Léveillé) A. J. Li [Flora of China]

  synonym Polygonum paradoxum H. Léveillé,  中国(貴州省、四川省、雲南省)、タイ原産。中国名は窄叶火炭母 zhai ye huo tan mu。標高900~2600mの草が茂った斜面、谷間の藪に生える。
 ツルソバの変種に分類されていた。ツルソバより葉が細く、葉身は広披針形、長さ7~12㎝×幅1.5~2.5㎝。花期は7~11月。果期は7~12月。

46 Persicaria pensylvanica (L.) M.Gomez アメリカサナエタデ
  basionym Polygonum pensylvanicum L.
  synonym Polygonum maculatum Raf.
  synonym Persicaria mississippiensis (Stanford) Small
  synonym Persicaria pensylvanica f. pallescens (Stanford) Moldenke

  synonym Persicaria pensylvanica (L.) M.Gomez var. dura (Stanford) C. F. Reed 花序柄に伏毛がある

  synonym Persicaria pensylvanica var. laevigata (Fernald) W.C.Ferguson オトメサナエタデ 葉が無毛

 北アメリカ(USA,カナダ)原産。英名はPennsylvania smartweed , pinkweed。標高0~1800mの湿った荒れた場所、溝、川岸、耕作地、池や貯水池の縁に生える。
 1年草、高さ10~200㎝。根は基部の節から発生することもある。根茎と匍匐茎は存在しない。茎は斜上~直立し、単純または分枝し、うねがあり、無毛または上部に伏毛があり、上部に腺は無くまたは有柄の腺がある。托葉鞘(ocrea)は帯褐色、円筒形、長さ5~20㎜、紙質、基部が膨れ、縁は切形、縁毛が無くまたは長さ0.5㎜の剛毛の縁毛があり、表面は無毛または伏毛があり、腺は無い。葉柄は長さ0.1~2(~3)㎝、無毛または伏毛がある。葉身はときに、上面に暗色の三角形または三日月形の斑紋を持ち、狭~広披針形、長さ4~17(~23)㎝×幅(0.5~)1~4.8㎝、基部は楔形に先細り、縁は前向きのザラつきがあり、先は尖鋭形、表面は無毛または伏毛があり、下面は腺は無くまたは腺点があり、ときに上面にも腺点がある。花序は頂生および腋生、直立またはまれに先が垂れ下がり、途切れることはなく、長さ5~50㎜×幅5~15㎜。花序柄は長さ10~55(~70)㎜、無毛または毛があり、通常は有柄の腺がある。鞘状苞(ocreolae)は重なり、縁は縁毛が無くまたは長さ0.5㎜までの剛毛の縁毛がある。小花柄は斜上し、長さ1.5~4.5㎜。 花は小束(ocreate fascicle)あたり 2~14個が束生し、同型花柱性(homostylous)。花被は緑白色~バラ色、無毛、腺点はなく、花後に大きくなる。花被片は5個、その長さの約1/4~1/3が合着し、倒卵形~楕円形、長さ2.5~5㎜、脈は顕著、錨形ではなく(鉤状に曲がらない)、縁は全縁、先は鈍形~円形。雄しべは6~8本、突き出ない。葯は黄色、ピンク色、または赤色、楕円形。花柱は2(~3)本、基部で合着する。痩果は突き出さないか、または先が突き出し、褐色~黒色、円盤形、またはまれに 3稜形、中央のこぶ(hump)がなく、表面が少し窪む両凹レンズ形、長さ2.1~3.4㎜×幅1.8~3㎜、光沢があり、平滑。2n=88。花期は5~12月。

47 Persicaria perfoliata (L.) H.Gross イシミカワ 石見川、石膠
 世界全域に分布する雑草。英名はAsiatic tearthumb, mile-a-minute weed, Chinese tearthumb, devil's-tail。中国名は杠板归 gang ban gui 。
 1年草、つる性。茎には下向きの鋭い刺(逆刺)がある。葉は三角形、白緑色で、葉柄は葉縁でなく、葉身下部の縁寄りに楯状(T字状)につき、刺がある。托葉鞘は膜質で短く、上部は円形の葉のように広がり茎を取り囲む。枝先の丸い葉のような苞の上に花が10~20個の小さな花序をつける。花は淡緑色で小さく、花被は5中裂する。丸い苞の上に花被に包まれた丸い果実が多数乗り、秋には果実の花被の色は青~紫色に変わり目立つようになる。花被の中の果実は黒紫色、直径約3㎜の球形。1日に15cm成長し、7m以上になり、英名のMile-a-minute weedはこの特徴をよく表している。花期は6~10月。2n=24。

48 Persicaria posumbu (Buch.-Ham. ex D.Don) H.Gross ハナタデ 花蓼 広義

  synonym Polygonum posumbu Buchanan-Hamilton ex D. Don
  synonym Persicaria yokusaiana (Makino) Nakai 
  synonym Polygonum yokusaiana (Makino) Nakai

  synonym Persicaria yokusaiana (Makino) Nakai f. laxiflora (Meisn.) Hiyama

  synonym Persicaria posumbu (Buch.-Ham. ex D.Don) H.Gross var. laxiflora (Meisn.) H.Hara ナガホハナタデ(ヌカボハナタデ)

  synonym Persicaria caespitosa (Blume) Nakai subsp. yokusaiana (Makino) Sugim. ホソバハナタデ

  synonym Polygonum caespitosum Blume

  synonym Polygonum caespitosum subsp. yokusaianum (Makino) Danser

 日本全土、千島列島、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西省、貴州省、海南省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、陝西省、山東省、四川省、西蔵省、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア、インド、パキスタン、ネパール、ブータン、ミャンマー、バングラデシュ、ラオス、タイ、ベトナム、マレーシア、フィリピン原産。中国名は丛枝蓼 cong zhi liao。英名はAsiatic smartweed , Oriental lady's thumb。別名ヤブタデ。標高100~3000mの山の斜面の混交林、湿った谷に生える。
 1年草。 茎は傾伏し、高さ30~70㎝、細く、基部で分枝し、無毛で角(かど)がある。葉柄は長さ5~7㎜、伏した剛毛がある。葉身は卵状披針形または卵形、長さ3~6(~8)㎝×幅1~2(~3)㎝、紙質、両面にまばらに伏した剛毛があるか、無毛になり、中脈は下面で目立ち、基部は広楔形、縁は縁毛があり、先は尾状尖鋭形。托葉鞘は筒状、長さ4~6㎜、薄い膜質、伏した剛毛があり、先は切形、縁毛は長さ7~8㎜、丈夫。花序は頂生または腋生の穂状花序、緩く、長さ5~10cm、下部で途切れる。苞は帯緑色、漏斗形、無毛、縁に縁毛があり、それぞれに3個または4個の花がつく。小花柄は短い。花被はピンク色で、5深裂する。花被片は楕円形、長さ2~2.5㎜。 雄しべは8本、突き出ている。花柱は3本、基部で合着する。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に包まれ、黒褐色、光沢があり、卵形、三稜形、長さ2~2.5㎜。花期は6~9月。果期は7~10月。
48-1 Persicaria posumbu subsp. posumbu ハナタデ 花蓼
 日本全土、千島列島、朝鮮、中国、台湾、ロシア、インド、パキスタン、ネパール、ブータン、ミャンマー、バングラデシュ、ラオス、タイ、ベトナム、マレーシア、フィリピンに分布。別名ヤブタデ。山野の林内、道端、草地に生える。
 1年草。高さ30~60㎝。茎は基部がやや這ってから直立する。葉は長さ3~9㎝、幅1~3㎝の卵形~長卵形、基部は楔形、葉先が尾状に尖り、葉の中央部に普通、黒い班紋がある。葉の両面に毛があり、葉裏に腺点がある。葉が古くなると毛がとれてしまうことも多い。托葉鞘は長さ3~8㎜、縁毛は托葉鞘と同長程度又はやや長い。花序は長さ5~10㎝、細長く、直立し、白色~淡紅色の小さな花をまばらにつける。小花柄がイヌタデより長い。花被は4又は5裂し、腺点はない。花柱は3裂。雄しべは7(8)個。小苞の先はやや長い毛状になる。痩果は長さ2~2.5㎜、褐色、3稜形、平滑、光沢がある。日陰にあるものはほとんど花が朱色を帯びないものが多い。花期は8~10月。2n=40。

48-1-1 Persicaria posumbu (Buch.-Ham. ex D.Don) H.Gross var. posumbu f. albiflora (Iwata) Yonek. シロバナハナタデ 白花花蓼

  synonym Persicaria caespitosa (Blume) Nakai subsp. yokusaiana (Makino) Sugim. f. albiflora (Iwata) Sugim.

 白花の品種
48-2 Persicaria posumbu subsp. mearnsii (Elmer) Soják
  synonym Polygonum mearnsii Elmer
 フィリピンに分布。

49 Persicaria praetermissa (Hook.f.) H.Hara ホソバノウナギツカミ 細葉の鰻攫

  synonym Persicaria hastatoauriculata (Makino ex Nakai) Nakai
  synonym Polygonum hastato-auriculatum Makino ex Nakai
  synonym Polygonum praetermissum Hook.f.
 日本(本州の関東地方以西、四国、九州)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、西蔵、雲南省、浙江省)、台湾、インド、ネパール、ブータン、スリランカ、フィリピン、オーストラリア、タスマニア島原産。中国名は疏蓼 shu liao 。英名はspotted knotweed。標高1400~1800mの湿地帯、川辺、田の畔、水辺に生える。日本では低地に見られ、Flora of Chinaの解説とやや異なるところもある。
 1年草。 茎は傾伏または直立し、長さ30~90㎝、分枝し、角張っていて、角に沿ってまばらな逆刺(下向きの刺)がある。葉は互生し、葉柄は長さ5~10㎜、刺がある。葉身は披針形~狭長円形、長さ4~8㎝×幅0.5~1.5㎝、両面とも無毛またはまばらに毛があり、下面にまばらに中脈に沿って刺があり、基部は矢じり形(左右が細く突き出し)茎を抱き、縁は縁毛があり、先は鋭形。托葉鞘は筒状、長さ0.8~2㎝[Flora of China;1~1.5㎜]、膜質、基部には逆向きの刺があり、先は斜め、通常は短い縁毛がある。花序は頂生または上部の葉に腋生し、刺があり、緩く(花がまばら)、基部で途切れる。花序柄は二股分枝し、上部には腺毛がある。苞は漏斗形で、通常それぞれに2~4[Flora of China;3~5]個の花がつく。小花柄は苞より長く、長さ3~4㎜、無毛。花被は先が淡紅色又は白色[Flora of China;ピンク色]で、5深裂[Flora of China;4深裂]する。花被片は広楕円形、長さ3~4㎜。雄しべは4~5本、突き出ない。花柱は3本、中央より下部が合着する。痩果は宿存する花被に包まれ、暗褐色、光沢がなく鈍く、丸みのある3稜形[Flora of China;ほぼ球形、頂部が弱く3稜形]、長さ約2㎜[Flora of China;3㎜]。花期は6~8月。果期は7~9月。

50 Persicaria pubescens (Blume) H.Hara ボントクタデ 凡篤蓼
  synonym Polygonum pubescens Blume
 日本(本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西省、貴州省、海南省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、遼寧省(大連)、陝西省、山東省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、インド、パキスタン、ブータン、バングラデシュ、ミャンマー、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア原産。中国名は伏毛蓼 fu mao liao。海抜2700mまでの溝沿い、水辺、畑の縁に生える。
 1年草、高さ60~100㎝。茎は赤色を帯び、上向きの伏毛が多く、まばらに小剛毛があり(hispidulous)、上部で分枝し、節が膨らむ。葉は互生し、葉柄は長さ4~7㎜、密に小剛毛がある。葉身は卵状披針形~広披針形~披針形、長さ5~10㎝×幅1.5~2㎝、先は尖鋭形~鋭形、基部は広楔形、縁に縁毛があり、両面に密に小剛毛があり、中央部に八の字形の黒い斑紋があり、下面に腺点はあるが、少なく不明瞭。葉に辛味はない。托葉鞘は緑色、筒形、長さ1~1.5㎝、膜質、剛毛があり、縁毛は丈夫で長さ約8㎜。花序は頂生または腋生、紐状の穂状花序状、先が垂れ下がり、緩く、長さ7~15㎝、淡紅色の小さな花をまばらにつけ、下部では途切れる。苞は緑色、漏斗形、縁はほぼ膜質、縁毛があり、各苞に花が3~4個つく。花被は緑色、上部は赤色、5深裂し、花後は紅色が強くなり、下部の緑色を除き、全体がほぼ紅色になり、明瞭な帯紫色の腺点が密~疎にある。花被片は楕円形、長さ3~4㎜。雄しべは8本、突き出ない。花柱は3本、中間の下で合着する。雄しべは8個。痩果は宿存する花被に包まれ、黒褐色、卵形、3稜形、長さ2.5~3㎜、表面がざらつき(密に穴があり)、光沢がない。花期は8~9月。果期は9~10月。2n=(44)。
 変種や品種に分類されているが、認められていない。

50-1 Persicaria pubescens (Blume) H.Hara var. acuminata (Franch. et Sav.) H.Hara ボントクタデ 凡篤蓼 狭義

50-2 Persicaria pubescens (Blume) H.Hara f. macrantha M.Mizush. オオバナボントクタデ 大花凡篤蓼

 群馬県の妙義山で見られる。花被に包まれた痩果が長さ4.5㎜と大きいもの。

51 Persicaria pulchra Soják アラゲタデ 粗毛蓼

  synonym Persicaria attenuata (R.Br.) Sojak subsp. pulchra (Blume) K.L.Wilson [Ylist]

  synonym Persicaria tomentosa (Willd.) Sasaki
  synonym Polygonum pulchrum Blume
 日本(沖縄県の大東諸島)、中国(広東省、広西チワン族自治区)、台湾、インド、ミャンマー、アンダマン諸島、スリランカ、カンボジア、ジャワ、ラオス、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア原産。中国名は丽蓼 li liao。標高100~300mの沼地、湿地帯の浅い水域に生える。
 多年生、根茎がある。 茎は直立し、ときに下部が平伏し、高さは(60)80~100㎝、丈夫、単純、直軟毛があるか、または無毛になる。葉柄は長さ1~2㎝。葉身は広披針形、長さ10~15㎝×幅1.5~3㎝、両面に密に絹毛があり、基部は狭い楔形、縁は全縁、縁毛があり、先は長い尖鋭形。托葉鞘は筒状、長さ1.5~2㎝、膜質、密に毛があり、先は切形、縁毛は長さ4~6㎜。花序は頂生、円錐花序、直立し、長さ3~6㎝。苞は卵形で、伏した小粗毛があり、各苞に3個または4個の花がつく。小花柄は苞よりも長い。花被は白色、5深裂する。花被片は楕円形、長さ3~3.5㎜。雄しべは7または8本。花柱は2本、離生。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に包まれ、黒色、光沢があり、円形、両凸形、直径3~4㎜。花期は9~10月。果期は10~11月。

52 Persicaria rotunda (Z.Z.Zhou & Q.Y.Sun) Bo Li ペルシカリア・ロツンダ

  synonym Persicaria jucunda var. rotunda (Z.Z.Zhou & Q.Y.Sun) B.Li in Phytotaxa 91: 24 (2013)

  synonym Polygonum jucundum var. rotundum Z.Z.Zhou & Q.Y.Sun in Acta Phytotax. Sin. 45: 714 (2007)

 中国(江西省、安徽省)原産。湿地や湖岸の草が生い茂る地域に生える。
 1年草。茎は細く、無毛、根元から枝を6~26本出し、完全に傾伏し、長さ3~15㎝、葉がなく、暗褐色で、各節に多数のひげ根を出す。 各基部の枝の上部の節からさらに3~12本の花をつけるシュートが分岐し、高さ6~65㎝、平伏~直立し、緑色~紫赤色、節は膨らみ、紫色になる。葉はほぼ無柄。葉身は狭披針形~線状披針形、長さ1.5~12.5㎝×幅0.3~1.3㎝、側脈は9~16対あり、両面とも無毛、基部は円形、先は尖鋭形、縁は全縁、短い縁毛がある。托葉鞘は筒状、長さ4.5~11.5㎜、膜質、まばらに伏毛があり、先は切形、房状へり、縁毛は長さ2.2~5.3㎜。 序は頂生、直立し、穂状花序、密で、長さ0.5~3.8㎝。花序柄は長さ3.5~6.5㎝、無毛。苞は紫赤色、漏斗形、まばらに毛があり、縁はほぼ膜質、短い縁毛があり、各苞には4~7個の花が中につく。小花柄は苞より長く、長さ1.5~2.5㎜。 花は二形性。花被は5深裂し、ピンク白色。長花柱花(L-morphと呼ばれる)は長さ3.9~4.4㎜、雄しべは8本、長さ2.6~3.2㎜、花柱は3本、中央より下部で合着し、長さ4.3~5.1㎜、突き出る。短花柱花(S-morphと呼ばれる)は長さ3.7~4.2㎜、雄しべは8本、長さ3.8~4.9㎜、突き出し、花柱は3本、中央より下部で合着し、長さ2.4~2.9㎜。柱頭は頭状。蜜腺は8個、子房の基部につく。痩果は宿存する花被に含まれ、二形性。長花柱花(L-morph)は暗褐色、楕円形、三稜形、基部は円形~広楔形、先は尖鋭形、表面は光沢がなく、密な網状~穴があり、長さ3.6~4.2㎜×幅2.1~2.3㎜。短花柱花(S-morph)は黒色、卵形、三稜形、基部は広楔形、先は鋭形、表面は光沢がなく、、密な穴があり、長さ2.9~3.3㎜×幅1.8~2.1㎜。花期は7~12月。果期は7月末~1月。

53 Persicaria runcinata (Buch.-Ham. ex D.Don) H.Gross ニイタカタニソバ 新高谷蕎麦

  synonym Polygonum runcinatum Buchanan-Hamilton ex D. Don
 中国、台湾、インド、ブータン、ネパール、カシミール、シッキム、ミャンマー、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン原産。中国名は羽叶蓼 yu ye liao 。英名はlobed leaf knotweed 。標高800~3900mmの草地の斜面、山地の斜面、湿った渓谷、渓谷の茂みに生える。
 多年草。根茎は丈夫。茎はほぼ直立~斜上、高さ30~60㎝、角張り、軟毛があるか又はほぼ無毛、普通、節に後ろ向きの伏した剛毛がある。葉柄は長さ1~1.5㎝、狭い翼があり、基部に耳があり、上部の葉柄はしばしば短柄か又は類無柄になる。葉身は長さ4~8㎝×幅2~4㎝、羽状中裂する。頂裂片は三角形、大きく、先が尖鋭形。側裂片は1~3対、小さく、短い縁毛があり、両面にまばらに剛毛があるか又は無毛。托葉鞘は筒形、長さ約1㎝、膜質、有毛、先は切形、縁毛がある。花序は頂生、散房花序又は円錐花序、頭状、密、直径0.5~1.5㎝。花序柄は腺毛がある。苞は狭卵形、縁は膜質。花柄は苞より短く、細い。花被は帯ピンク色又は白色、5深裂する。花被片は狭卵形、長さ3~3.5㎜。雄しべは普通、8個、突き出ない。葯は紫色。花柱は3個、中間の下まで合着する。痩果は宿存する花被に包まれ、黒褐色、光沢が無く、卵形、3稜形、長さ2~3㎜。2n=22。
品種) Needham's form , 'Purple Fantasy'

53-1 Persicaria runcinata (Buch.-Ham. ex D.Don) H.Gross var. runcinata

  synonym Polygonum runcinatum var. runcinatum
 葉身は両面にまばらに剛毛がある。側裂片は1~3対。頭花は普通、双生、直径1~1.5㎝。
53-2 Polygonum runcinatum var. sinense Hemsley
  synonym Polygonum runcinatum var. exauriculatum Lingelsheim
 中国名は赤胫散 chi jing san 。
 葉身は無毛又は両面にまばらに短い剛毛がある。側裂片は1対。頭花は直径5~7㎜、数個の頭状の円錐花序をもつ。

54 Persicaria sagittifolia H.Gross ペルシカリア・サギッティフォリア

  synonym Persicaria senticosa var. sagittifolia (H.Gross) Yonek. & H.Ohashi in J. Jap. Bot. 72: 160 (1997)

  synonym Polygonum sagittifolium H.Lév. & Vaniot in Bull. Acad. Int. Géogr. Bot., sér. 3, 11: 342 (1902), nom. illeg.

  synonym Polygonum darrisii H.Lév. in Repert. Spec. Nov. Regni Veg. 11: 297 (1912)

  synonym Truellum darrisii (H.Lév.) Soják

  synonym Polygonum senticosum var. sagittifolium (H.Gross) C.W.Park

 中国原産。Flora of ChinaではPolygonum darrisii H. Léveilléのsynonymとしている。中国名は大箭叶蓼 da jian ye liao。Polygonum senticosumのsynonymとする見解もある。Polygonum sagittifoliumはPolygonum senticosumと托葉鞘の形が異なる(J. Jap. Bot. 72: 160 (1997))。Polygonum sagittifolium (Ortega) KuntzeはMuehlenbeckia sagittifolia (Ortega) Meisn.のsynonymでありアフリカ原産の別種。Polygonum darrisii H. Léveilléではなく、Polygonatum darrisii H.Lév.はキジカクシ科アマドコロ属であり、Polygonatum kingianum Collett & Hemsl.のsynonymである。
 中国( 安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、四川省、雲南省、浙江省)原産。中国名は大箭叶蓼 da jian ye liao。標高300~1700mの湿った谷、溝沿いに生える。
 1年草。 茎はよじ登り、または攀縁性、赤紫色、高さ1~2㎝、角張り、角に沿ってまばらに反り返った刺がある。葉柄は長さ3~6㎝、後向きの刺がある。 葉身は狭三角形または三角状矢じり形、長さ4~10㎝×幅3~5㎝、下面にまばらに中脈に沿って刺があり、上面は無毛、基部は矢じり形、縁は後向きの刺があり、先は尖鋭形。托葉鞘は筒状、先には緑色の草質の披針状耳形の翼があり、縁には縁毛は無い。花序は頂生または腋生、頭状。花序柄は通常単純で、まばらに刺がある。苞は狭卵形で、先は尖鋭形で、通常それぞれに2個の花がつく。小花柄は苞よりも短い。花被は白色またはピンク色で、5深裂する。花被片は楕円形。雄しべは8本、2輪につき、突き出ない。花柱は3本、中間まで合着する。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に含まれ、黒褐色、鈍く、ほぼ球形、弱い三角形、長さ約3㎜。花期は6~8月。果期は9~10月。

55 Persicaria sagittata (L.) H.Gross ウナギツカミ 鰻攫 広義
  synonym Polygonum sagittatum Linnaeus

  synonym Persicaria sagittata (L.) H.Gross var. sibirica (Meisn.) Miyabe f. tomentosa (H.Hara) H.Hara

  synonym Persicaria anguillana (Koidz.) Honda
  synonym Persicaria aestiva Ohki
  synonym Persicaria sagittata (L.) H.Gross var. aestiva (Ohki) Masam.

  synonym Persicaria sagittata (L.) H.Gross var. sibirica (Meisn.) Miyabe f. aestiva (Ohki) H.Hara

  synonym Persicaria sagittata (L.) H.Gross var. sibirica (Meisn.) Miyabe f. pilosa (H.Hara) H.Hara

  synonym Persicaria sagittata (L.) H.Gross var. sibirica (Meisn.) Miyabe f. sericea (Nakai) H.Hara

  synonym Persicaria sagittata (L.) H.Gross var. sieboldii (Meisn.) Nakai

  synonym Persicaria belophylla (Litv.) Kitag

  synonym Persicaria sieboldii (Meisn.) Ohki アキノウナギツカミ アジア産

  synonym Persicaria sieboldii (Meisn.) Ohki f. laevicaulis Seriz. 

  synonym Persicaria sieboldii (Meisn.) Ohki var. aestiva (Ohki) Okuyama

  synonym Persicaria sieboldii (Meisn.) Ohki var. paludosa (Kom.) Nakai ex Kitag.

  synonym Polygonum sagittatum L. 北アメリカ産
 日本(北海道、本州、四国、九州)、千島列島、朝鮮、中国、台湾、モンゴル、ロシア、インド、パキスタン、ネパール、ブータン、ミャンマー、北アメリカ(USA、カナダ)、ミニカ共和国原産。英名はArrow-leaf tearthumb, arrow-vine, renouee sagittee 。中国名は箭头蓼 jian tou liao 。
 1年草、攀縁し、高さ0.3~2m。茎は薄緑色~緑色、成熟するとしばしば赤紫色になり、1本~広範囲に分枝し、無毛、角(かど)があり、角に反曲する小刺(刺は長さ1~1.5㎜)をもち、しばしば、基部で傾伏し、普通、下部の節にひげ根を生じる。葉は葉柄があり、上部の葉はしばしば短柄や無柄になる。葉柄は長さ0.5~4㎝、無毛、角(かど)に後ろ向きの刺がある。葉身は上面が緑色、下面が薄緑色、広披針形~長円形、長さ2~8.5㎝×幅1~3㎝、質が薄く、下面は無毛、中脈の基部近くに後ろ向きの刺を普通もち、上面は無毛~密に伏した単純毛が多列にあり、基部は矢じり形~深い心形で、小さな円形又は三角形の裂片をもち、全縁、縁毛は有又は無、先は鋭形~類鋭形~鈍形。托葉鞘(葉鞘)は斜め、長さ(0.3)0.5~1.3㎝、薄膜質(紙質)、刺は無く、無毛、縁毛は有又は無、縁毛は長さ0.2~1㎜。花序は頂生又は上部の葉の腋につき、頭状花序又は長くなり、円錐花序状、間隔は開かず、長さ3~15㎝×幅4~10㎜、しばしば細く、普通、分枝し、普通、無毛、しかし、ときに下部に少数の反曲する刺をもつ。花序柄は長さ10~80㎜、普通、無毛、ときに下部に後ろ向きの刺をもつ。花序の花の小束(FNAではocreate fascicle)につく鞘状苞(ocreolae:sheathing bract, FOCではbract)は托葉鞘に似るが、かなり小さく、長さ1.5~3㎜、重なり、縁毛は無い。各花序の枝は多数の花が束生する密な頭状の房が頂生する。各苞には普通、花が2~3個、密集する。苞は披針形~狭楕円形、長さ3~5㎜、無毛、先は強く、尖鋭形。小苞は狭楕円形~楕円形、長さ3~4㎜、無毛、しばしば先端に縁毛がある。花柄は多くは斜上し、短く、長さ1~1.5㎜、無毛、小苞に包まれる。花被は白色~緑白色、しばしばピンク色や赤色を帯び、ときに全体がピンク色になり、無毛、長さ3~5㎜、5深裂する。花被片は5個、広楕円形、肉質ではなく、先は鈍形。雄しべは8個、分離、花被の基部に2輪につく。内側の雄しべは3個、長さ約2㎜。外側の5個は長さ1~1.5㎜。葯はピンク色、卵形。花柱は3個、中間まで合着(1個、中間まで3裂)し、長さ約0.5㎜、突き出ない。柱頭は3個。痩果は突き出ず又は花柱が突き出し、薄褐色~暗褐色~黒色、光沢が無~有、長さ2.5~4㎜×幅1.8~2.5㎜、普通、卵形、鋭い3稜形、有小斑点~平滑、先は鋭形。2n=40, (34)
 YList、Flora of China(FOC)では以下の変種を認めているが、POWO(Kewscience)では認めていない。

55-1 Persicaria sagittata (L.) H.Gross var. sibirica (Meisn.) Miyabe ウナギツカミ 鰻攫[狭義 アジア産]

 北海道~九州、東アジアに分布。畦畔、水辺、空き地など湿った土地に生育する。種内の変異が大きく、早生の畑地型が狭義のウナギツカミ、晩生の湿地型がアキノウナギツカミと呼ばれてきた。茎はつる状に伸び、下部は地を這い、上部は斜上する。茎は四角形で稜に逆刺がある。葉は互生、葉柄は長く、葉柄の基部には膜質の托葉鞘がある。葉の基部は心形~やじり形。茎上部の葉は短柄で、基部が矢じり形で茎を抱く。枝先に淡紅色の花を球状につける。花序は直径約1cm。花被片は5枚。上部が紅色~紅紫色を帯び、長さ約2.5mm。痩果は花被に包まれ、濃茶褐色に紫色を帯び、3稜形で光沢がある。長さ約3㎜。花期は5~10月。
55-2 Persicaria sagittata var.sagittata[狭義 北アメリカ産]
  synonym Polygonum sagittatum L.var.sagittata
 USA,カナダに分布。
 1年草、高さ20~150㎝、しばしば下部の節から根を生じる。茎は攀縁し、うねがあり、無毛、刺は長さ0.5~1㎜。托葉鞘はタン色~帯褐色、円筒形、長さ8~15㎜、紙質、基部は膨れ又は膨れず、刺があり、縁は斜め、長さ05~2.5㎜の剛毛の縁毛をもち、表面は無毛又は伏毛~開出毛がある。葉柄は長さ1~7㎝。葉身は広矛形~矛状心形~三角形、長さ(2~)6.5~13(~18)㎝×幅(1~)6~11(~16)㎝、基部は切形~切形状心形、縁は広矛形で裂片は散開し、縁毛があり、ときに、後ろ向きの刺もあり、先は尖鋭形、表面は伏毛があり、まれに上面が無毛になり、下面は星状毛がありまれに無毛になり、主脈にしばしば刺がある。花序は頭状花序又は円錐花序、間隔は開かず、長さ5~12㎜×幅3~8㎜。花序柄は長さ10~80㎜、下部に後ろ向きの刺があり、上部に星状毛と腺毛があり、腺は赤色又はピンク色。鞘状苞(ocreolae)は普通、重なり、ときに下部で重ならず、縁は縁毛が無く又は長さ0.5㎜以下の剛毛をもつ。花柄は多くは斜上し、長さ2~3㎜。各苞ごとに花が2~4個つく。花被はピンク色又は赤色、しばしば下部が白緑色、無毛、花後に大きくなり、果時に青色や肉質にならない。花被片は4個、長さの1/3~1/2が合着し、広楕円形、長さ5~6㎜、先は鋭形~鈍形。雄しべは(6~)8個。花糸は分離。葯はピンク色、楕円形。花柱は2個、分離。痩果は包まれ、暗褐色~黒色、両凸面、長さ3.5~6㎜×幅3~4㎜、光沢があり、平滑。花期は7~8月。果期は9~10月。2n=40

55-3 Persicaria sagittata (L.) H.Gross f. viridialba (Honda) H.Hara シロバナウナギツカミ 白花鰻攫

  synonym Persicaria sieboldii (Meisn.) Ohki f. espinulosa Seriz. 
 白花品種。

56 Persicaria sagittifolia H.Gross ペルシカリア・サギッティフォリア

  synonym Persicaria senticosa var. sagittifolia (H.Gross) Yonek. & H.Ohashi

  synonym Polygonum sagittifolium H.Lév. & Vaniot
  synonym Polygonum darrisii H.Lév. [Flora of China]
  synonym Truellum darrisii (H.Lév.) Soják
 中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、四川省、雲南省、浙江省)原産。中国名は大箭叶蓼 da jian ye liao。海抜300~1700mの湿った谷、溝沿いに生える。
 1年草。 茎はよじ登ったり、攀縁し、赤紫色で、高さ1~2㎝、角張り、角に沿ってまばらに反り返った刺がある。葉柄は長さ3~6㎝、後向きの刺がある。 葉身は狭三角形または三角状矢じり形、長さ4~10㎝×幅3~5㎝、下面にまばらに中脈に沿って刺があり、上面は無毛、基部は矢じり形、縁には後向きの刺があり、先は尖鋭形。托葉鞘は筒形、頂端には緑色の草質の披針形状耳形の翼があり、縁には縁毛はない。花序は頂生または腋生、頭状花序。花序柄は通常単純で、まばらに刺がある。苞は狭卵形で、先は尖鋭形で、通常それぞれに2個の花がつく。小花柄は苞よりも短い。花被は白色またはピンク色、5深裂する。花被片は楕円形。雄しべは8本、2輪につき、突き出ない。花柱は3本、中間まで合着する。柱頭は頭状。痩果は宿存する花被に含まれ、黒褐色、光沢は無く鈍く、ほぼ球形、弱く三稜形、長さ約3㎜。花期は6月~8月。果期は9月~10月。

57 Persicaria senticosa (Meisn.) H.Gross ママコノシリヌグイ 継子の尻拭

  synonym Polygonum senticosum (Meisn.) Franch. et Sav.
 日本(全土)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、山東省、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア原産。中国名は刺蓼 ci liao 。英名はprickly knotweed , many-spiny knotweed。別名はトゲソバ。茎の刺の量は変異が大きい。海抜100~1500mまたは低地の山の斜面、湿った谷、混交林、道端に生える。
 1年草、つる状(長さ1~2m)。茎はよく分枝し、赤色を帯び、茎や葉柄に下向きの刺(逆刺)と細毛がある。葉は三角形、全縁、葉柄は葉縁につき、長い。托葉鞘は膜質で短く、上部は葉質、腎形で、茎を抱く。花はミゾソバにそっくりの頭状花序で、花は直径約4㎜、約10個つく。花序の下には腺毛がある。春に咲き始め、秋まで咲いている。花被は5深裂し、雌しべは1個、雄しべは8個。花被は大きくなって果実を包む。果実は上端がやや尖り、長さ約3㎜、黒色。花期は5~10月。2n=24。
【Flora og Chinaの解説】perennialとされているが誤りらしい。
 多年草。茎は匍匐または斜上し、高さ1~2㎝、よく分枝し、角(かど)があり、角に沿って下向きの刺がある。葉柄は長さ2~7㎝、下向きの刺がある。葉身は三角形または狭三角形、長さ4~8㎝×幅2~7㎝、両面に毛があり、下面の葉脈に沿ってまばらに下向きの刺があり、基部は矛形または広心形、縁には下向きの刺があり、全縁、先は尖鋭形。托葉鞘は筒形、長さ5~10㎜、膜質、先端に緑色の草質の腎状円形の翼を持ち、縁には縁毛がある。花序は頂生または腋生、頭状花序、花は約10個程度つく。花序柄は枝分かれし、短い腺毛がある。苞は狭卵形、縁毛がある。小花柄は苞より短く、長さ1.5~2.5㎜、無毛。花被はピンク色で、5深裂する。花被片は長円形、長さ3~4㎜。雄しべは8本、2輪につく。花柱は3本、中央より下まで合着する。柱頭は頭状。痩果は大きくなった宿存する花被に包まれ、黒色、光沢がなく鈍く、ほぼ球形、直径2.5~3㎜。花期は6~7月。果期は7~9月。
 POWOでは変種は認められていない。

57-1 Persicaria senticosa (Meisn.) H.Gross f. albiflora (Honda) Honda シロバナトゲソバ 白花刺蕎麦

57-2 Persicaria senticosa (Meisn.) H.Gross var. inermis Sugim. トゲナシママコノシリヌグイ 

 刺のないママコノシリヌグイ。

58 Persicaria taitoinsularis (Masam.) Yonek. ダイトウサクラタデ 大東桜蓼

  synonym Persicaria japonica (Meisn.) Nakai ex Ohki var. taitoinsularis (Masam.) Masam.

 日本固有種(大東諸島)。池の畔の湿地に生える。
 多年草。茎は倒伏した茎から発根し匍匐しながら成長して斜上し、高さは60㎝以下。葉や托葉鞘はリュウキュウタデとほぼ同じ。托葉鞘や葉の下面脈上に毛がある他は無毛。全体の様子はケタデの無毛型であるリュウキュウタデに似るが、柱頭が2本で痩果が凸レンズ形である点で大きく異なる。また、この点で似ているシロバナサクラタデとは、花が2~3.2㎜と小さく、花柄が苞よりも短い点で区別できる。(国内希少野生動植物種に追加する種の概要について)

59 Persicaria taquetii (H.Lev.) Koidz. ヌカボタデ 糠穂蓼

  synonym Persicaria taquetii (H.Lev.) Koidz. var. minutula (Makino) Honda

  synonym Polygonum taquetii H. Leveille
 日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、広東省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、浙江省)、東ヒマラヤ原産。中国名は细叶蓼 xi ye liao 。標高0~400mの湿った谷、溝沿い、水辺に生える。
 1年草。茎は直立又は、基部で平伏又は斜上、高さ30~50㎝、細く、無毛、多数分枝し、下部の節から根を出す。葉柄はごく短いか又は無い。葉身は狭披針形、長さ2~4㎝×幅3~6㎜、両面にまばらに毛があり、基部は楔形、全縁、先は鋭形。托葉鞘は筒形、長さ5~6㎜、膜質、まばらに毛があり、先は切形、縁毛は長さ3~5㎜。花序は頂生又は腋生、穂状花序、長さ10㎝以下、細く、間隔が開き、普通、数個の穂状花序がつき、円錐花序状になる。苞は緑色、漏斗形、長さ約2㎜、長い縁毛があり、各苞に花が3~5個つく。花柄は苞より長く、細い。花被は帯ピンク色、5深裂する。花被片は楕円形、長さ1.5~1.7㎜。雄しべは普通、7個、突き出ない。花柱は2又は3個、中間の下まで合着する。痩果は宿存する花被に包まれ、褐色、光沢があり、卵形、両凸面形又は3稜形、長さ1.2~1.5㎜。花期は8~9月。果期は9~10月。2n=20。

60 Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross ミゾソバ 溝蕎麦

  synonym Polygonum thunbergii Siebold & Zucc.
  synonym Polygonum arifolium Thunb.

  synonym Persicaria oreophila (Makino) Hiyama in J. Jap. Bot. 34: 340 (1959) ヤマミゾソバ

  synonym Persicaria thunbergii var. oreophila (Makino) Nemoto

  synonym Persicaria thunbergii var. viridialba Iwata in Bot. Mag. (Tokyo) 54: 74 (1940)

  synonym Persicaria thunbergii f. viridialba (Iwata) Hanai & Seriz

  synonym Persicaria thunbergii var. stolonifera (Makino) H.Gross ex Nakai

  synonym Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross var. coreana (H.Lev.) Nakai

  synonym Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross var. stolonifera (F.Schmidt) Nakai ex H.Hara

  synonym Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross subsp. hastatotriloba (Meisn.) Sugim.

  synonym Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross f. inermis (Honda) Sugim.

  synonym Polygonum thunbergii Siebold et Zucc. var. hastatotrilobum (Meisn.) Maxim.ex Franch. et Sav. オオミゾソバ

 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、台湾、中国、ロシア、インド原産。中国名は戟叶蓼 ji ye liao 。別名はウシノヒタイ。
 1年草、高さ30~100㎝。茎は中空、角(かど)があり、下向きの小刺があり、根元は横に這い、立ち上がり、基部の節から根を出す。葉は互生し、葉柄は長さ2~5㎝、葉柄には狭い翼があり、後ろ向きの小刺がある。葉身は矛形~卵状鉾形、長さ4~10㎝、先が鋭く尖り、基部が耳状にはり出し、牛の顔のような形をしているのが特徴である。葉脈上に小刺があり、葉の両面にまばらに剛毛があり、まれに小さな星状毛がある。基部は類心形又は切形、縁に短い縁毛があり、中間の裂片は卵形~広卵形で先は尖鋭形、基部の裂片は小さく、先が鋭形~鈍形、葉の形には変化が多い。托葉鞘は筒形、短く、膜質、長さ7~20㎜、2形ある。上部に緑色の草質の円い翼をもち、縁は全縁又は円鋸歯のものと、縁毛だけの2種ある。花は頭状花序に10~20個集まってつく。花序柄は分枝し、下部は有毛、上部に赤色の腺毛が密につき、長毛及び小さな星状毛がある。苞は披針形、縁毛があり、各苞に花が3~4個つく。花柄は苞より短い。花被は長さ3~4㎜、ピンク色~白色、先の紅色が濃く、5深裂する。花被片は楕円形、長さ3~4㎜。雄しべ8個。花柱は3個、中間の下で合着する(1個で3裂)。柱頭は頭状。痩果は長さ3~3.5㎜の3稜形、緑白色~黄白色、光沢はない。図鑑などで色を記載したものが少なく、果実がソバの実に似ていると解説され、茶色ではないかと誤解しやすいが、ほぼ白色に近い。痩果を採取して時間が経ち、乾いてくると淡褐色~黄褐色~褐色になる。(a href="mizosobahikaku.htm" target="_self">葉形と果実の色変化参照)。花期は7~10月。2n=(34), 40。花期は7~9月。果期は8~10月。
 ミゾソバは変異が多く、類似種にコミゾソバ(Persicaria mikawana)、ニシミゾソバ(Persicaria hassegawae)があり、下位にヒカゲミゾソバ(var. coreana)、ヤマミゾソバ (var. oreophila)、オオミゾソバ(var. hastatotriloba)の3変種が分類されていたが、YListはヤマミゾソバ1変種だけとして、他はミゾソバに含めている。Kew(POWO)ではヤマミゾソバをミゾソバのsynonymとし、ヒカゲミゾソバをミヤマタニソバ(Persicaria debilis (Meisn.) H.Gross ex W.Lee)のsynonymとしている。シロバナミゾソバはYListでは品種として分類されているが、Kew(POWO)ではミゾソバのsynonymとしている。
【基本種に含められた品種、変種】

(1) Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross f. viridialba (Iwata) Hanai et Seriz. シロバナミゾソバ 白花溝蕎麦

  synonym Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross subsp. hastatotriloba (Meisn.) Sugim. f. viridans (Honda) Hanai et Seriz.

 ミゾソバの白花品種。

(2) Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross var. oreophila (Makino) Murai ヤマミゾソバ 山溝蕎麦

  synonym Persicaria oreophila (Makino) Hiyama

  synonym Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross subsp. oreophila (Makino) Sugim.

  synonym Polygonum oreophilum (Makino) Hiyama
 陰地植物であり、山地の林内に生え、湿地や水中には見られない。植物体が長く伸び、側花序の柄が短く、葉は幅広くて中部でほとんど湾入せず、果実に著しい光沢があるのが特徴。Kew(POWO)ではミゾソバのsynonymとしている。YListではこの変種を認めている。
 1年草、高さ30~100㎝。全体に刺も毛も少なく、茎は直立せず、横屈地性と隠性屈湿性を持ち、節間が長く(ただし、節間が短く刺の多いものもある)、茎下部から分枝し、枝が散開して長く半ば地に伏す。茎の基部の節部から根を出し、3㎡以上に拡がることも稀ではなく、基部の各節から出す閉鎖花序の着く枝は短く3㎝前後である。葉柄は長く、翼は発達しない。葉は薄質で幅が広く、葉身の湾入部がほとんどない卵状三角形、頂裂片の先端は急に尾状に延びて突出し鈍頭、側裂片はやや三角状に尖り、先端も鈍頭、葉の基部は切形。葉身長1との比は、最大幅0.89、くびれ部(側裂片の上部幅)0.65、葉柄長0.44で葉柄がミゾソバ類中一番長い。先端の急尾状部を除けば最も三角状に近い数値が得られる。又最大幅と最小幅(くびれ部)の差は最も小さい。ただし、葉形に変化がある。花序の花数は5~8個と少ない。花は白色、花後は花被の先が紫褐色を帯びる。花柄が長く、腺毛がほとんどない。 果実(小堅果)はミゾソバより一層円味があって灰色がかり、灰色~灰緑色、著しい光沢がある(完熟して濃褐色のものもある)。花期は10月上旬~11月上旬。2n=38。

(3) Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross var. coreana (H.Lev.) Nakai ヒカゲミゾソバ 日陰溝蕎麦

  synonym Polygonum thunbergii Siebold et Zucc. var. coreanum Leveille

 ミゾソバ、オオミゾソバ、ヤマミゾソバの小形のもので起源的には多系統と考えられている。最近では分類せず、ミゾソバに含める。Kew(POWO)ではミヤマタニソバ(Persicaria debilis (Meisn.) H.Gross ex W.Lee)のsynonymとしている。全体に繊細で刺や毛が少なく、葉が三角形であるのが特徴であるが、オオミゾソバ形やヤマミゾソバ形の葉の小型のものもヒカゲミゾソバに含められていた。
 1年草、高さ30~100㎝。全体に繊細で刺や毛が少ない。茎は中空、下向きの明瞭な小刺があり、根元は横に這い、立ち上がる。葉は互生し、ミゾソバの小型で耳がなく三角形、質はやや厚い。またはオオミゾソバ形の小さい形で葉身が長さ8~13㎜のもの。あるいはヒカゲミゾソバ又はヤマミゾソバの葉が小型のものもヒカゲミゾソバとされる。葉の基部は浅い心形~切形~楔形。葉柄には翼がある。花序の花数は少ない。花柄には赤色の腺毛、長毛及び小さな星状毛がある。花被は淡紅色~白色、ほとんど白色のものもあり、5裂する。托葉鞘は上部が葉のように丸く広がるものと縁毛だけの2種ある。痩果は長さ3~3.5(4)㎜の3稜形、黄緑色~淡褐色、光沢はない。果実が乾いてくると淡褐色になる。花期は6~9月上旬。2n=40。

(4) Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross var. hastatotriloba (Meisn.) Miyabe オオミゾソハ 大溝蕎麦

  synonym Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross subsp. hastatotriloba (Meisn.) Sugim.

  synonym Polygonum thunbergii Siebold et Zucc. var. hastatotrilobum (Meisn.) Maxim.ex Franch. et Sav.

 Kew(POWO)ではミゾソバのsynonymとしている。葉は長く大きく、葉身の湾入部は深く、基部はほこ形に両側へよく突出するのが特徴。
 茎は維管束の発達により、立上るか斜上する。葉面に毛が目立ち、茎の下向鈎刺も目立つ。茎頂部の通常花の花序枝は上部数節のみから長く突き出てよく目立ち、腺毛の発達がよい。葉は上部のものは急に縮小する。葉は長く大きく、葉身の湾入部は深く、基部はほこ形に両側へよく突出する。葉柄の翼は発達する。茎下部の閉鎖花序枝は長さ10~30㎝以上にも達し長く、果実はよく成熟するが、茎頂の通常花は多くは不稔である。痩果は灰緑褐色で光沢はない。葉身をlとすると最大幅の比0.68、最小幅(くびれ)0.30、葉柄0.39で ミゾソバ中湾入が最も大きい。因にサデクサは葉身長1、最大幅は0.93、最小幅は0.27、葉柄長は1でオオミゾソバに似ていても柄が長く葉身が狭長である。2n=40, 42。(参考36)

61 Persicaria tinctoria (Aiton) Spach アイ 藍
  synonym Polygonum tinctorium Aiton
 中国原産。中国名は蓼蓝 liao lan。 英名はChinese-indigo , polygonum-indigo。中国で広く栽培され、染料または薬用に使われる。
 日本へは奈良時代に渡来。広く栽培され、染料として使われる。別名はタデアイ(蓼藍)、アイタデ(藍蓼)。
 1年草。茎は直立、高さ50~80㎝、普通、分枝する。葉柄は長さ5~10㎜。葉身は緑色、乾くと暗青緑色、卵形~広楕円形、長さ3~8㎝×幅2~4㎝、下面にはときに脈上に伏毛があり、上面は無毛、基部は広楔形、縁には短い縁毛があり、先は鈍形~わずかに鋭形。托葉鞘は筒形、長さ1~1.5㎝、膜質、伏毛があり、先は切形、縁毛は長い。花序は頂生又は腋生、穂状花序、密、長さ2~5㎝。苞は緑色、漏斗形、縁毛があり、各苞に花が3~5個つく。花柄は苞の長さと同長、細い。花被は帯ピンク色、5深裂する。花被片は卵形、長さ2.5~3㎜。雄しべは6~8個、突き出ない。花柱は3個、下部で合着する。痩果は宿存する花被に包まれ、褐色、光沢があり、広卵形、3稜形、長さ2~2.5㎜。花期は6~9月。果期は8~10月。2n=40。

62 Persicaria tomentosa (Schrank) E.P.Bicknell サナエタデ 早苗蓼

  synonym Persicaria lapathifolia (L.) Gray var. tomentosa (Schrank) H.Gross

  synonym Persicaria lapathifolia var. incana (Roth) Knutsson
  synonym Persicaria linicola (Sutulov) Nenukow ex Büscher & G.H.Loos

  synonym Persicaria lapathifolia (L.) Delarbre var. incana (Roth) H.Hara [YList]

  synonym Persicaria lapathifolia (L.) Delarbre var. maxima (Regel) Nemoto

  synonym Persicaria scabra (Moench) Moldenke
  synonym Persicaria scabra var. incana (Roth) Tzvelev
  synonym Polygonum tomentosum Schrank

  synonym Persicaria lapathifolia (L.) Gray var. pallida (With.) A.Love

  synonym Persicaria lapathifolia auct. non (L.) Gray 
  synonym Polygonum lapathifolium L. subsp. pallidum (With.) Fr.

  synonym Persicaria lapathifolia (L.) Delarbre var. salicifolia (Sibth.) Miyabe ウラジロサナエタデ 

 日本全土、南西諸島、千島列島、サハリン、ロシア、カザフスタン、ウズベキスタン、イラン、ヨーロッパ(ロシア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ブルガリア、フィンランド、チェコスロバキア、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、クレタ島、東エーゲ海諸島、フェロー諸島マガダン、北コーカサス、ノルウェー、沿海州、スウェーデン、トランスコーカサス(アゼルバイジャン、アルメニア、ジョージア)、ウクライナ)、アイスランド原産。道端、畑に生える。中国名は糙葉蓼(小早苗蓼)。和名は開花が5、6月頃の田植えの時期に始まることから。別名はナツタデ。学名はPOWO(Plants of the World Online=Kew Gardens:Kewscience)ではPersicaria tomentosa (Schrank) E.P.Bicknellとしている。アラゲタデ(Persicaria pulchra)のsynonymはPersicaria tomentosa (Willd.) Sasakiであり混同しやすい。また、ペルシカリア・マダガスカリエンシス(Persicaria madagascariensis)のsynonymもPersicaria tomentosa Sasakiとされていた。WFO Plant List(2022)ではこの種はオオイヌタデ(Persicaria lapathifolia (L.) Delarbre)のsynonymとされている。YListではオオイヌタデの変種(var. incana (Roth) H.Hara)としている。
 1年草、高さ30~50(~90)㎝。茎は無毛、よく分枝し、円柱形、節が高く、ときに茎に斑点があり、質は硬くなく、緑色または紅色を帯びる。葉は互生し、披針形~卵状披針形、長さ(4)6~10(12)㎝×幅1~2cm、縁は全縁、毛があり、基部は楔形、先は尖鋭形、側脈は斜上し、7~15対、上面にはまばらに毛があり、下面は黄色の腺点が密生し、毛はほとんどなく、脈上に長三角状の毛がある。初め、葉に白色の綿毛を布くものがあり、葉の下面に密に綿毛があるものもある。托葉鞘は膜質で縁毛は無いか、または長さ(0.4)1㎜以下。円柱状の総状花序は長さ1~4(5)㎝で先は垂れない。ただし、時期の遅いものは花序が垂れ下がる。花序柄は通常、腺毛が無いが、花序柄に腺毛が多く、葉下面の腺点も多く、花被の腺点も多く、花が全体に黄色を帯びているものもある。苞は漏斗形、縁は無毛。花被は長さ約3㎜、淡紅色~白色、4~5裂し、腺点があり、花後も痩果を包んで残る。雄しべは5~6本。花柱は2(3)分岐。痩果は黒褐色、直径約2㎜の扁平な円形、表面が少し窪む両凹レンズ形、花被の脈は先が2分岐し、釣針状に曲がる(錨形)。花期は5~10月。2n=22。

62-1 Persicaria lapathifolia (L.) Delarbre var. salicifolia (Sibth.) Miyabe ウラジロサナエタデ 裏白早苗蓼 異分類

  synonym Persicaria scabra (Moench) Mold var. salicifolia Miyabe
 Kewscienceではウラジロサナエタデをサナエタデに含めている。
 サナエタデは毛が少なく、葉裏に腺点が密生する。ウラジロサナエタデは葉裏に綿毛が密生する。毛の特に多いものは葉表や茎にも綿毛がある。それ以外はサナエタデと差異がなく、花柄に腺毛があり、痩果も同じ両凹レンズ形である。

 学名の類似種


(1) Persicaria decipiens (R. Br.) K. L. Wilson ペルシカリア・デキピエンス

  synonym Polygonum decipiens R.Br.

  synonym Persicaria salicifolia (Brouss. ex Willd.) Assenov, (1966), nom. illeg., non S. F. Gray.

  synonym Polygonum salicifolium Brouss. ex Willd.
  synonym Persicaria serrulata (Lag.) Webb & Moq

  synonym Persicaria serrulata var. asiatica Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 45: 114 (1931)

  synonym Polygonum serrulatum Lag.

  synonym Polygonum salicifolium var. serrulatum (Lag.) Maire & Weiller

  synonym Polygonum serrulatum var. salicifolium (Brouss. ex Willd.) Ball

  synonym Polygonum scabrum Poir.

  synonym Polygonum scabrum var. salicifolium (Brouss. ex Willd.) Dinsm.


63 Persicaria trigonocarpa (Makino) Nakai ホソバイヌタデ 細葉犬蓼

  synonym Persicaria erectominor (Makino) Nakai var. trigonocarpa (Makino) H.Hara

  synonym Polygonum trigonocarpum Makino
 日本固有種(北海道、本州)。河畔や堤防の側の草地に生える。
 1年草、茎は細長く、無毛、下部で疎に分枝し、平伏し、上部は斜上し、高さ約30㎝、長さは50㎝を超えることもある。葉は互生し、ほぼ無柄、線状披針形~線状長楕円形、長さ5~10㎝、先は漸尖して鋭形、基部は鋭形、草質、青緑色、標本では側脈やや明らか。稀に上面の縁辺に細毛があり、下面は脈を除いて無毛、乾くと、微隆起点があり、盤状腺点は北海道産と武蔵、小合溜産の2枚を除いて常にある。托葉鞘は口部の縁に毛がある。花穂は枝頂に少数、狭円柱状、長さ約3㎝、花が密につき、下部は花が離在すること稀。花被は鮮淡紅色、盤状腺点がある。痩果は黒色、3稜状楕円形、長さ(1.5~)1.8~2㎜。(参考6)

63-1 Persicaria trigonocarpa (Makino) Nakai var. roseoviridis (Kitag.) Kitag.モリイヌタデ

  synonym Persicaria erectominor (Makino) Nakai var. roseoviridis (Kitag.) I.Ito

  synonym Persicaria roseoviridis Kitag
 これは満州産のもので、全体ホソパイヌタデに大層よく似ているものである。原記載は葉鞘は透明質、無毛とあるが、標本では毛のあること多く、又ホソパイヌタデにも葉鞘透明質のものがあってこの点変らず、花被に腺点があり、果の形、大きさも同じで、同一物と見なされる場合もあるが、次の点がちがうようである。ホヅパイヌタデに比べて、花穂、花茎はより伸長し、頂生花穂は通常分枝、下部の花は通常離在、花は帯緑淡紅色、葉は膜質に近いが時にははっきりせず、下面に全く盤状腺点がない。(参考6)

64 Persicaria virginiana (L.) Gaertner バージニア・ノットウィード

  synonym Polygonum virginianum Linnaeus
  synonym Antenoron filiforme var. kachinum (Nieuwland) H. Hara
 北アメリカ(カナダ、USA、メキシコ)原産。英名はjumpseed , Virginia knotweed。標高0~500mの豊かな落葉樹林、氾濫原林、乾燥した森林、茂みに生える。中国、ブータン、インド(アッサム)、ミャンマーに帰化している。中国名は毛叶红珠七 mao ye hong zhu qi。
 多年草、高さ45~60(~130)㎝。根茎がる。茎はうねがあり、無毛または剛毛がある。托葉鞘は褐色がかった透明、円筒形、長さ10~20㎜、基部が膨らむかまたは膨れず、縁は切形、長さ0.5~4㎜の剛毛の縁毛があり、表面は剛毛~綿毛がある。葉柄は長さ(0.1~)1~2㎝、葉はときに無柄。葉身は長さ5~17.5㎝×幅2~10㎝、基部はほぼ楔形、先は鋭形~尖鋭形(長い尖鋭形)、下面は毛があり、上面は剛毛があり、ザラつく。花序は長さ(50~)100~350㎜×幅7~15㎜。花序柄は長さ10~70㎜、毛があるかまたは上部が無毛。鞘状苞(ocreolae)は重なり合わず、縁は長さ3㎜までの剛毛の縁毛がある。小花柄は斜上~開出し、長さ0.5~1㎜。花は小束ごとに1~3個つく。花被は白色、緑白色、またはまれにピンク色で、無毛、で果時に大きくなる。花被片は楕円形~倒卵形、長さ2.5~3.5㎜、先は鋭形~尖鋭形。花糸は離生で、外側のものはときに花被筒に付着する。葯は黄色またはピンク色、卵形。花柱は離生。痩果は先と花柱を除いて包まれ、褐色~暗褐色、両凸形、長さ3.5~4㎜× 幅2~2.8㎜、鈍く~光沢があり、平滑からしわがある。2n=44。花期は7月~10月。果期は9~11月。
品種) 'Alba' , 'Ballet' , 'Batwings' , 'Brush Strokes' , 'Compton's Red' , 'Guizhou Bronze' , 'Lance Corporal' , 'Moorland Moss' , 'Painter's Palette' (Variegated Group) , 'Variegata' , Variegated Group (v)

65 Persicaria viscofera (Makino) H.Gross ネバリタデ 粘蓼
  synonym Polygonum viscoferum Makino

  synonym Persicaria robusta (Makino) Yong J.Li オオネバリタデ

  synonym Persicaria viscofera var. robusta (Makino) Hiyama
 日本(本州の関東地方以西、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾、ロシア原産。中国名は粘蓼 nian liao。標高500~1800mの湿った渓谷、山地の斜面に生える。
 1年草。茎は高さ30~70㎝、普通、上部で分枝し、毛がある。葉柄はごく短いか又はほぼ無い。葉身は披針形~広披針形、両面に剛毛があり、脈に密にあり、縁に長い縁毛があり、基部は円形~楔形、先は尖鋭形。托葉鞘は筒形、長さ6~12㎜、膜質、長い剛毛があり、先は切形、縁毛は長い。花序は穂状花序、緩く、長さ4~7㎝、基部に間隔が開き、数個の穂状花序がつき、円錐花序状になる。花序柄は無毛、まばらに粘る腺がある。苞は緑色、漏斗形、無毛だが、縁毛があり、各苞に花が3~5個つく。花柄は苞より長い。花被は帯緑色、5(~4)深裂する。花被片は楕円形、長さ1~1.5㎜。雄しべは7又は8個、突き出ない。花柱は3個、中間より下で合着する。痩果は宿存する花被に包まれ、黒褐色、光沢があり、卵形、3稜形、長さ約1.5㎜、平滑。花期は7~9月。果期は8~10月。2n=22(北海道), 24。
 下記の変種、品種は認められていない。

65-1 Persicaria viscofera (Makino) H.Gross var. viscofera ネバリタデ

65-2 Persicaria viscofera (Makino) H.Gross f. viridescens (Nakai) Hiyama アオネバリタデ

65-3 Persicaria viscofera (Makino) H.Gross var. robusta (Makino) Hiyama オオネバリタデ

  synonym Persicaria makinoi (Nakai) Nakai 
  synonym Persicaria excurrens (Steward) Koidz. 
 葉が細く、毛が短い。

65-3-1 Persicaria viscofera (Makino) H.Gross var. robusta (Makino) Hiyama f. laevis (Kitag.) Hiyama イヌネバリタデ

  synonym Persicaria makinoi Nakai f. laevis (Kitag.) Kitag. 
  synonym Persicaria makinoi Nakai var. laevis (Kitag.) Honda

66 Persicaria viscosa (Buch.-Ham. ex D.Don) H. Gross ex T.Mori ニオイタデ 匂い蓼

  synonym Polygonum viscosum Buchanan-Hamilton ex D. Don
 日本(本州の関東地方以西、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾、ロシア、インド、ネパール原産。中国名は香蓼 xiang liao 。標高1900m以下の道端、草原、溝の縁に生える。
 1年草。匂いがある。茎は直立又は斜上、高さ50~90㎝、多数分枝し、密に粗毛と腺毛がある。葉柄は短いか又はほぼ無い。葉身は卵状披針形~楕円状披針形、長さ5~15㎝×幅2~4㎝、両面に剛毛があり、脈に密にあり、全縁、短い縁毛が密にある。 托葉鞘は筒形、長さ1~1.2㎝、膜質、密に腺毛と粗毛があり、先は切形、縁毛は長い。花序は頂生又は腋生、穂状花序、長さ2~4㎝、普通、数個の穂状花序がつき、円錐花序状になる。花序柄は密に粗毛と腺毛がある。苞は漏斗形、粗毛と腺毛があり、縁にはまばらに長い縁毛があり、各苞に花が3~5個つく。花柄は苞より長い。花被は帯ピンク色、5深裂する。花被片は楕円形、長さ約3㎜。雄しべは8個、突き出ない。花柱は3個、中間より下で合着する。痩果は宿存する花被に包まれ、黒褐色、光沢があり、広卵形、3稜形、長さ約2.5㎜。花期は7~9月。果期は8~10月。2n=(22)。

67 Persicaria wallichii Greuter et Burdet ワリッチー
  synonym Polygonum wallichii Meisner
 中国、インド、ネパール、シッキム原産。中国名は球序蓼 qiu xu liao。標高2500~3400mの山地のの斜面の混合林、湿った渓谷に生える。
 1年草。茎は類直立又は斜上、高さ20~30㎝、無毛。葉柄は長さ1~2㎝、翼は無く、普通、基部に耳がある。葉身は広心形~卵状心形、長さ3~5㎝×幅2~3.5㎝、下面にまばらに剛毛があり、上面はほぼ無毛、基部は類心形、全縁、短い縁毛があり、先は尖鋭形。托葉鞘は筒形、長さ6~8㎜、膜質、軟毛があり、先は切形、縁毛は短い。花序は普通、双生の頭状花序、直径5~8㎜。花序柄は無毛。苞は卵形、先は鈍形、無毛。花被は白色、5深裂する。花被片は広楕円形、長さ2~3㎜。雄しべは普通、8個。花柱は3個、中間より下で合着する。柱頭は頭状。痩果は黒色、光沢が無く、卵形、3稜形、長さ2~2.5㎜、密に斑点がある。花期は7~8月。果期は8~10月。2n=22。

68 交雑種
(1) Persicaria x musashinoensis Hiyama イヌハナタデ
 イヌタデとハナタデの自然交雑種。
(2) Persicaria × fennica (Reiersen)Stace
 Persicaria alpina(Koenigia alpina ) x Persicaria weyrichii(Koenigia weyrichii )
品種) 'Johanniswolke'

(3) その他ハイブリッド
品種) 'Indian Summer' , 'Pink Elephant' , 'Silver Dragon' (PBR)

オオイヌタデ、サナエタデ、アメリカサナエタデ、ハルタデ、ヨウシュハルタデの区別

(1) Persicaria lapathifolia (L.) Delarbre オオイヌタデ
 高さ(5~)10~100(~180)㎝。茎は節間がほぼ無毛、上部に伏した毛があり、ときに腺点または有柄の腺があり、赤色を帯びることが多く、ときに帯赤色の斑点があり、うねがほとんどなく、節は膨らむ(生育する場所による)。葉は側脈が20~30対、上面に暗色の斑紋があり、両面とも通常無毛または下面に腺点が明瞭にあり、または羊毛状毛(lanate)~くも毛があり、縁毛は無~長さ0.2㎜。托葉鞘は面が無毛、縁は無毛まれに長さ1㎜以下の微毛がある。苞は無毛、先は尾状または長い尖鋭形。花序は長さ3~8(~10)㎝、先が垂れ下がる。花序柄はしばしば有柄の腺がある。花は小束あたり4~14個つく。花被片は4(~5)個、緑白色~ピンク色、腺点がありまたは無く、果時の花被片の脈の先は錨形。痩果は円盤形[両面が少し窪む両凹レンズ形]またはまれに3稜形。花期は(4~)7~11月。2n=22。n=11。
(2) Persicaria tomentosa (Schrank) E.P.Bicknell サナエタデ
 WFO Plant List(2022)ではこの種はオオイヌタデ(Persicaria lapathifolia (L.) Delarbre)のsynonymとされている。
 高さ30~50(~90)㎝。茎は無毛、緑色または紅色を帯び、ときに帯赤色の斑点があり、節が高くなる。葉は側脈が7~15対、縁に剛毛があり、上面にはまばらに毛があり、下面は通常ほぼ無毛で脈上に伏毛があり、黄色の腺点が密生するか、または初め、白色の綿毛が有り、下面に綿毛が密生するものあり。托葉鞘は面が通常無毛または綿毛が有り、縁は無毛~微毛。花序は長さ1~4(5)cm、直立し、先が垂れない(ときに晩期に垂れる)。花序柄はときに有柄の腺がある。苞は無毛、漏斗形。花被片は4または5個、淡紅色~白色、腺点があり、脈の先は錨形。痩果は表面が少し窪む両凹レンズ形、基部が膨れない。花期は5~10月。2n=22。
(3) Persicaria pensylvanica (L.) M.Gomez アメリカサナエタデ
 高さ10~200㎝。根は基部の節から発生することもある。茎はうねがあり、無毛または上部に伏毛があり、上部に腺は無くまたは有柄の腺がある。葉柄は長さ0.1~2(~3)㎝、無毛または伏毛がある。葉身はときに、上面に暗色の斑紋を持ち、上面は無毛または伏毛があり、下面は腺は無くまたは腺点があり、ときに上面にも腺点があり、縁には前向きのザラつきがある。托葉鞘は帯褐色、表面が無毛または伏毛があり、腺は無く、基部が膨れ、縁は縁毛が無くまたは長さ0.5㎜の剛毛がある。花序は長さ0.5~5㎝、直立または先が垂れる。花序柄は無毛または有毛、通常は有柄の腺がある。鞘状苞(ocreolae)は重なり、縁毛が無くまたは長さ0.5㎜までの剛毛の縁毛がある。花は小束(ocreate fascicle)あたり2~14個つく。花被は緑白色~バラ色、無毛、腺点はなく、花後に大きくなる。花被片は5個、脈は顕著、錨形ではなく(鉤状に曲がらない)。痩果は円盤形、まれに 3稜形、中央のこぶ(hump)がなく、表面が少し窪む両凹レンズ形。花期は5~12月。2n=88。
(4) Persicaria extremiorientalis (Vorosch.) Tzvelev ハルタデ
 高さ(10)30~100(~230)㎝。茎は通常、赤紫色を帯び、直軟毛があり、まれに伏した基部の広い長さ1~5㎜の剛毛がある。葉は側脈が(6~)12~35対、両面ともほぼ無毛、上面に不明瞭な暗色の斑紋(ときに明瞭)があり、葉縁の剛毛は長さ0.5~1.1㎜、下面に腺はなく、微細なパピラがある。托葉鞘は外面に剛毛があり、縁の剛毛は長さ1~5㎜。花序柄は通常短い有柄の腺がある。花序は長さ3~5(~8)㎝、直立または先が垂れ下がる。花被は淡紅色、紫色、まれに緑白色。果時に花被片の脈は、乾いても明瞭に隆起せず、脈の先は二股に分岐するか、または分岐しない。分岐している場合は、片方の枝のみが弱く反り返る(両方ではない)。痩果はレンズ形(まれに三稜形)、基部に膨れ(tumescent)=こぶ(hump)がある。花期は4~10月。2n=22 , 44。
(5) Persicaria maculosa Gray subsp. maculosa ヨウシュハルタデ
 高さ(10)30~70(80)㎝、茎は無毛。 葉柄は長さ5~8㎜、伏した小剛毛がある。葉は両面が無毛または下面に伏した剛毛があり、上面に暗色の斑紋があり、腺は無く、葉縁の剛毛は長さ0.2~0.5㎜。 托葉鞘まばらに剛毛があり、縁毛は長さ0.4~3(~5)㎜。花序柄は無毛まれに有柄の腺がある。花序は長さ1~4(6)cm、直立する。花被片は通常5個、ピンク色~赤紫色~暗紫色、果時に乾くと脈が顕著に隆起し、脈の先は二股分岐が有または無、有の場合は、片方の枝のみが弱く反り返る(両方ではない)。痩果は類円形又は広卵形、レンズ形または三稜形(凹面)、基部で最も幅が広いが、膨れない。花期は6~7月。2n=22, 40,42, 44。

参考

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  Polygonum
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=126398
2)GRIN
  Persicarias
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=15859
3) 米倉浩司:日本とその周辺のタデ科植物に関する新知見 (II) 
 植物研究雑誌 The Journal of Japanese Botany』Vol.87 No.3 (June 2012) p151-168
 サクラタデ、シロバナサクラタデ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_087_151_168.pdf
4) Flora of North America
 Persicarias
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=124629
5)热带亚热带植物学报 2019, Vol. 27 Issue (4): 465-468
 香辣蓼, 中国春蓼属(蓼科)一新归化植物
http://jtsb.scib.ac.cn/html/2019/4/4052.htm
6)植物研究雑誌 1956年 31巻 6号 p.170-178
 伊藤至: ヒメタデ類小記
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/31/6/31_31_6_4002/_pdf/-char/ja
7)植物研究雑誌1 第44巻第12号昭和44年12月 p378
 フトボノヌカボタデとシマヒメタデ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/44/12/44_44_12_5872/_pdf/-char/ja
8) Flora of Pakistan @ efloras.org
 Persicaria
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=5&taxon_id=126398
9) 環境省
 国内希少野生動植物種に追加する種の概要について
https://www.env.go.jp/press/files/jp/104227.pdf
10) 植物研究雑誌第37巻第1号昭和37年1月 P28
 牧野標本館雑記(7) (檎山庫三)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/37/1/37_37_1_4760/_pdf/-char/ja
11 )Polygonum sagittatum in Global Plants on JSTOR
 Polygonum sagittatum
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12) New Flora of the British Isles
 Persicaria sagittata 
https://books.google.co.jp/books?id=nJ3YP28EjscC&pg=PA438&lpg=PA438&dq=Persicaria+sagittata%E3%80%802n&source=bl&ots=jgJ4xFzztR&sig=ACfU3U0qmpF-eJSS-xKAxlqwb8qDqtUcYw&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwiIqeG9nMbmAhWCAYgKHc8CD0U4ChDoATABegQIChAB#v=onepage&q=Persicaria%20sagittata%E3%80%802n&f=false
13) Journal of Phytogeography and Taxonomy 51 : 59-61, 2003
Polyploidy of Persicaria japonica(Polygonaceae)in Toyama Prefecture, central Japan
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14) 植物研究雑誌 第37巻 第1号 昭和37年1月 p3-10
 土井田幸郎 タデ属植物の属内分化に関する考察(1)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/37/1/37_37_1_4752/_pdf/-char/ja
15) 植物研究雑誌 Journ. Jap. Bot. Vol.33 No.5 1958 p145
 オオバナボントクタデ(水島正美)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/33/5/33_33_5_4255/_pdf/-char/ja
16) VicFlora - Royal Botanic Gardens Victoria
 Persicaria
https://vicflora.rbg.vic.gov.au/flora/taxon/03fdc569-16be-4d5b-8d81-c68b1eb949ec
17) 千葉県生物多様性センター 1-2 種子植物
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https://www.bdcchiba.jp/wp-content/uploads/2023/07/02%E3%81%AE1_%E5%8D%83%E8%91%89RDB%E7%A8%AE%E5%AD%90%E6%A4%8D%E7%89%A9.pdf
18) 植物研究雑誌 1936年 12巻 5号 p341-342
 原 寛 :東亜植物考(其十一) 69 シラカワタデ(新称)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/12/5/12_12_5_1733/_pdf/-char/ja
19) The Journal of the Torrey Botanical Society 137(4): p333–338 (2010)
Persicaria extremiorientalis (Polygonaceae) is established in the flora of the eastern United States of America.
https://www.inaturalist.org/posts/85573-the-far-eastern-smartweed-persicaria-extremiorientalis-is-established-in-north-america
20) JSTOR Global Plants
 Persicaria salicifolia
https://plants.jstor.org/compilation/persicaria.salicifolia
21) Phytokeys 126: 127-138 (2019)
Persicaria jucunda var. rotunda (Polygonaceae, Persicarieae), a distinct distylous taxa raised to specific rank
https://phytokeys.pensoft.net/article/35442/
22) 雑草研究 Vol.48 (別) (2003) p84-85
 外部形態および分子マーカーによる北海道のテンサイ畑に多発するタデ類の種の識別
 イヌタデ、オオイヌタデ、オオハルタデとハルタデ
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23) International Journal of Plant Sciences 3(2):2319-3824(2014)
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 FAMILY POLYGONACEAE IN INDIA
https://www.cibtech.org/J-Plant-Sciences/PUBLICATIONS/2014/Vol-3-No-2/JPS-018-013-SRIVASTAVA-FAMILY-INDIA.pdf
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 Polygonum macranthum Meisn.
https://flora.indianbiodiversity.org/content/polygonum-macranthum-meisn
25) BHL
 Persicaria linicola Nenjukov.l.c. Flora of the U.S.S.R
https://www.biodiversitylibrary.org/page/30156535#page/542/mode/1up
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https://www.jstage.jst.go.jp/article/jplantres1887/36/431/36_431_en117/_pdf/-char/ja
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 槍山庫三:ヤマミゾソバについて
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/34/11/34_34_11_4450/_pdf/-char/ja
31) 神奈川県 自然誌資料(6):13-20(1985)
 長谷川義人:ミゾソバ類について
https://nh.kanagawa-museum.jp/www/pdf/nhr6_013_020hasegawa.pdf
32) 神奈川県植物誌 2001
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 ヤナギタデとボントクタデ(原寛) ザラツキヤナギタデ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/14/1/14_14_1_2036/_pdf/-char/ja