ハルタデ 春蓼

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Flora of Mikawa

タデ科 Polygonaceae イヌタデ属

別 名 ハチノジタデ、オオハルタデ、ケハルタデ
英 名 spotted lady's-thumb, ady's thumb ,redshank
学 名 Persicaria extremiorientalis (Vorosch.) Tzvelev

 synonym Persicaria maculosa var. pubescens (Makino) Yonek.

 synonym Persicaria maculosa subsp. hirticaulis (Danser) Knutsson

 synonym Persicaria mitis var. hirticaulis (Danser) H.Hara & I.Ito

 synonym Polygonum persicaria L. var. pubescens Makino

 synonym Persicaria vulgaris Webb. & Moq. var. vulgalis

ハルタデの花序
ハルタデの花
ハルタデの蕾と果実
ハルタデの花柄の短い腺毛
ハルタデの托葉鞘
ハルタデの葉裏の中脈
ハルタデの茎
ハルタデの下部の節
ハルタデ
ハルタデの花被に包まれた果実
ハルタデ果実
ハルタデ葉表
ハルタデ葉裏
ハルタデ葉表の毛
ハルタデ葉裏の毛
花 期 4~10月
高 さ (10)30~100(~230)㎝
生活型 1年草
生育場所 畑、水田の畔、荒地、道端
分 布 在来種 日本全土、火山列島(硫黄列島)、朝鮮、千島列島、サハリン、ロシア原産
撮 影 西尾市 12.6.29
ハルタデは過去には、Persicaria maculosa Gray 又はPolygonum persicaria L.とされていた。いくつかの亜種や変種に分類され、日本のハルタデはsubsp. hirticaulis (Danser) S.Ekman et T.Knutsson であるとされていた。茎に毛が多く、花序柄に有柄の腺毛がある。これに対し、基本亜種はユーラシア(ヨーロッパ)原産であり、ヨウシュハルタデ subsp. maculosaといわれ、有柄の腺毛がないものである。北アメリカ(USA)では腺毛のあるハルタデは確認されず、密に腺毛のあるのはアメリカサナエタデであるとされてきた。USAのDaniel E. Athaら(2010)により詳細な検討が行われ、ヨウシュハルタデ(Persicaria maculosa)とオオイヌタデ(Persicaria lapathifolia)と明瞭に分けられるハルタデが確認され、学名が整理された。ハルタデの学名はFlora of the Russian Far East (Tzvelev 1989)による Persicaria extremiorientalis (Vorosch.) Tzvelevとされた。Flora of Japan (Yonekura 2006)でPersicaria maculosa subsp. hirticaulis (Danser) S. Ekman and T. Knutsson var. pubescens (Makino) Yonek., pro parteとして解説されたものであるが、これは正式名ではなく、pro parteと付されている。
 類似のサナエタデやオオイヌタデにも腺毛があり、腺毛の量、毛の量、毛の質、毛の幅にも変化がある。また、腺の量や質にも変化があり、判別は難しい。ハルタデは痩果の形に特徴があり、円盤形(レンズ形)の痩果の中央の基部が膨れることで明確に区別できる。サナエタデやオオイヌタデは托葉鞘の縁毛がほとんど無いが、ハルタデの托葉鞘には明瞭な縁毛がある。
[修正後の解説]
北アメリカ東部(コネチカット州、デラウェア州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ノースカロライナ州、ペンシルバニア州)、デンマーク、ノルウェーに帰化している。中国は帰化分布域に含まれない。
 1年草。高さ(10)30~100(~230)㎝。茎は分枝して、直立し、普通、赤紫色を帯び、上向きの伏した毛があり(ときに毛の基部がいぼ状になり)又はほぼ無毛になる。葉は互生し、下部で最も大きく、上部では小さくなり、長さ4~20(~28)㎝×幅0.5~2(~7)㎝、広披針形~狭卵形、葉先は鋭形、葉の基部は楔形、上面は緑色、中央に黒い斑紋が出ることが多く、側脈はアーチ状で12~35対、両面に伏した剛毛があり、主脈には幅が広い三角状の剛毛が特に多くあり、下面は明るい緑色、腺点がなくまたは不明瞭な腺点(または微細なパピラ)があり、葉縁は全縁、長さ0.5~1.1㎜の伏した剛毛の縁毛がある。葉柄は長さ5~8(~30)㎜、上向きの伏した剛毛がある。托葉鞘は膜質、外面は小剛毛がありまれに無毛、先(縁)には長さ1~3(~5)㎜の縁毛がある。花序は腋生および頂生、葉がある。花序柄は有柄の腺があり(ときに腺が非常に微細またはほとんど欠け)、ときに短く伏す。総状花序は花が密につき、長さ(1.5~)3~5(~8)㎝の円柱状、ほぼ直立、又は垂れ下がることもある。花序柄は有柄の黄色の腺毛と長毛がある。花被は長さ約2㎜、花時に白色、すぐに大きくなり淡紅色になり、筒部は花披の長さの1/5~1/3、先は4~5裂する。花被片は花時に長さ約1.5㎜。花柱は2(3)本(下部1/2が合着)。雄しべは5本。痩果を包んで残る花被は中央部がやや盛り上がり、脈は不明瞭で、先が2分岐するが、釣針形にならず、花被に腺がない。痩果は褐色~黒褐色、光沢があり、ときに光沢がなく、長さ2~2.5㎜、普通、扁平なほぼ円形で中央の基部が膨れ(tumescent)、先に短い微突起があり、ときに3稜形の痩果も混じる。2n=22, 44。花期は4~10月。
 夏~秋に開花するものは大形であり、形態的にオオハルタデと分類されていたが、DNA分析により差がなく、現在ではすべてハルタデに含めるという分類がされている。
 オオイヌタデサナエタデは花序がやや太く、花が白色で密につくことが多い。托葉鞘の縁毛は無いか又は長さ1㎜以下。花序柄に腺毛がある。葉裏や花被に明瞭な黄色の腺点がある。花被に包まれた痩果は扁平で、表面が普通、平ら、中の痩果は表面が少し窪む両凹レンズ形。ただし、外観が似たハルタデは花が白色、花柄の腺毛が黄色になり、葉裏の腺点も多く、托葉鞘の縁毛もやや短くまばらなことがある。イヌタデ Persicaria longiseta もよく似ているときがある。托葉鞘の縁毛が長く、筒部とほぼ同長。

ハルタデの類似種との比較

(1) Persicaria lapathifolia (L.) Delarbre オオイヌタデ
 高さ(5~)10~100(~180)㎝。茎は節間がほぼ無毛、上部に伏した毛があり、ときに腺点または有柄の腺があり、赤色を帯びることが多く、ときに帯赤色の斑点があり、うねがほとんどなく、節は膨らむ(生育する場所による)。葉は側脈が20~30対、上面に暗色の斑紋があり、両面とも通常無毛または下面に腺点が明瞭にあり、または羊毛状毛(lanate)~くも毛があり、縁毛は無~長さ0.2㎜。托葉鞘は面が無毛、縁は無毛まれに長さ1㎜以下の微毛がある。苞は無毛、先は尾状または長い尖鋭形。花序は長さ3~8(~10)㎝、先が垂れ下がる。花は小束あたり4~14個つく。花被片は4(~5)個、緑白色~ピンク色、腺点がありまたは無く、果時の花被片の脈の先は錨形。痩果は円盤形[両面が少し窪む両凹レンズ形]またはまれに3稜形。花期は(4~)7~11月。2n=22。n=11。
(2) Persicaria tomentosa (Schrank) E.P.Bicknell サナエタデ
 WFO Plant List(2022)ではこの種はオオイヌタデ(Persicaria lapathifolia (L.) Delarbre)のsynonymとされている。
 高さ30~50(~90)㎝。茎は無毛、緑色または紅色を帯び、ときに帯赤色の斑点があり、節が高くなる。葉は側脈が7~15対、縁に剛毛があり、上面にはまばらに毛があり、下面は通常ほぼ無毛で脈上に伏毛があり、黄色の腺点が密生するか、または初め、白色の綿毛が有り、下面に綿毛が密生するものあり。托葉鞘は面が通常無毛または綿毛が有り、縁は無毛~微毛。花序は長さ1~4(5)cm、直立し、先が垂れない(ときに晩期に垂れる)。花序柄はときに有柄の腺がある。苞は無毛、漏斗形。花被片は4または5個、淡紅色~白色、腺点があり、脈の先は錨形。痩果は表面が少し窪む両凹レンズ形、基部が膨れない。花期は5~10月。2n=22。
(3) Persicaria pensylvanica (L.) M.Gomez アメリカサナエタデ
 高さ10~200㎝。根は基部の節から発生することもある。茎はうねがあり、無毛または上部に伏毛があり、上部に腺は無くまたは有柄の腺がある。葉柄は長さ0.1~2(~3)㎝、無毛または伏毛がある。葉身はときに、上面に暗色の斑紋を持ち、上面は無毛または伏毛があり、下面は腺は無くまたは腺点があり、ときに上面にも腺点があり、縁には前向きのザラつきがある。托葉鞘は帯褐色、表面が無毛または伏毛があり、腺は無く、基部が膨れ、縁は縁毛が無くまたは長さ0.5㎜の剛毛がある。花序は長さ0.5~5㎝、直立または先が垂れる。花序柄は無毛または有毛、通常は有柄の腺がある。鞘状苞(ocreolae)は重なり、縁毛が無くまたは長さ0.5㎜までの剛毛の縁毛がある。花は小束(ocreate fascicle)あたり2~14個つく。花被は緑白色~バラ色、無毛、腺点はなく、花後に大きくなる。花被片は5個、脈は顕著、錨形ではなく(鉤状に曲がらない)。痩果は円盤形、まれに 3稜形、中央のこぶ(hump)がなく、表面が少し窪む両凹レンズ形。花期は5~12月。2n=88。
(4) Persicaria extremiorientalis (Vorosch.) Tzvelev ハルタデ
 高さ(10)30~100(~230)㎝。茎は通常、赤紫色を帯び、直軟毛があり、まれに伏した基部の広い長さ1~5㎜の剛毛がある。葉は側脈が(6~)12~35対、両面ともほぼ無毛、上面に不明瞭な暗色の斑紋(ときに明瞭)があり、葉縁の剛毛は長さ0.5~1.1㎜、下面に腺はなく、微細なパピラがある。托葉鞘は外面に剛毛があり、縁の剛毛は長さ1~5㎜。花序柄は通常短い有柄の腺がある。花序は長さ3~5(~8)㎝、直立または先が垂れ下がる。花被は淡紅色、紫色、まれに緑白色。果時に花被片の脈は、乾いても明瞭に隆起せず、脈の先は二股に分岐するか、または分岐しない。分岐している場合は、片方の枝のみが弱く反り返る(両方ではない)。痩果はレンズ形(まれに三稜形)、基部に膨れ(tumescent)=こぶ(hump)がある。花期は4~10月。2n=22 , 44。
(5) Persicaria maculosa Gray subsp. maculosa ヨウシュハルタデ
 高さ(10)30~70(80)㎝、茎は無毛。 葉柄は長さ5~8㎜、伏した小剛毛がある。葉は両面が無毛または下面に伏した剛毛があり、上面に暗色の斑紋があり、腺は無く、葉縁の剛毛は長さ0.2~0.5㎜。 托葉鞘まばらに剛毛があり、縁毛は長さ0.4~3(~5)㎜。花序柄は無毛まれに有柄の腺がある。花序は長さ1~4(6)cm、直立する。花被片は通常5個、ピンク色~赤紫色~暗紫色、果時に乾くと脈が顕著に隆起し、脈の先は二股分岐が有または無、有の場合は、片方の枝のみが弱く反り返る(両方ではない)。痩果は類円形又は広卵形、レンズ形または三稜形(凹面)、基部で最も幅が広いが、膨れない。花期は6~7月。2n=22, 40,42, 44。