ミゾソバ 溝蕎麦

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Flora of Mikawa

タデ科 Polygonaceae イヌタデ属

別 名 ウシノヒタイ
中国名 戟叶蓼 ji ye liao
学 名 Persicaria thunbergii (Sieb. et Zucc.) H. Gross
 synonym Polygonum thunbergii Siebold & Zucc.
 synonym Polygonum arifolium Thunb.
ミゾソバの花
ミゾソバの紅花
ミゾソバの小苞
ミゾソバ花柄の腺毛
ミゾソバ葉状托葉鞘
ミゾソバ葉状托葉鞘
ミゾソバ茎と縁毛のある托葉鞘
ミゾソバ葉の星状毛
ミゾソバ
ミゾソバ花柄の腺毛付近の拡大
ミゾソバ果実
ミゾソバ葉
ミゾソバ葉柄
花 期 7~10月
高 さ 30~100㎝
生活型 1年草
生育場所 湿った場所
分 布 在来種  北海道、本州、四国、九州、朝鮮、台湾、中国、ロシア、インド
撮 影 岡崎市 05.10.16
タデ科イヌタデ属に分類される。
 1年草、高さ30~100㎝。茎は中空、角(かど)があり、下向きの小刺があり、根元は横に這い、立ち上がり、基部の節から根を出す。葉は互生し、葉柄は長さ2~5㎝、葉柄には狭い翼があり、後ろ向きの小刺がある。葉身は矛形~卵状鉾形、長さ4~10㎝、先が鋭く尖り、基部が耳状にはり出し、牛の顔のような形をしているのが特徴である。葉脈上に小刺があり、葉の両面にまばらに剛毛があり、まれに小さな星状毛がある。基部は類心形又は切形、縁に短い縁毛があり、中間の裂片は卵形~広卵形で先は尖鋭形、基部の裂片は小さく、先が鋭形~鈍形、葉の形には変化が多い。托葉鞘は筒形、短く、膜質、長さ7~20㎜、2形ある。上部に緑色の草質の円い翼をもち、縁は全縁又は円鋸歯のものと、縁毛だけの2種ある。花は頭状花序に10~20個集まってつく。花序柄は分枝し、下部は有毛、上部に赤色の腺毛が密につき、長毛及び小さな星状毛がある。苞は披針形、縁毛があり、各苞に花が3~4個つく。花柄は苞より短い。花被は長さ3~4㎜、ピンク色~白色、先の紅色が濃く、5深裂する。花被片は楕円形、長さ3~4㎜。雄しべ8個。花柱は3個、中間の下で合着する(1個で3裂)。柱頭は頭状。痩果は長さ3~3.5㎜の3稜形、緑白色~黄白色、光沢はない。図鑑などで色を記載したものが少なく、果実がソバの実に似ていると解説され、茶色ではないかと誤解しやすいが、ほぼ白色に近い。痩果を採取して時間が経ち、乾いてくると淡褐色~黄褐色~褐色になる。(葉形と果実の色変化参照)。花期は7~10月。2n=(34), 40。花期は7~9月。果期は8~10月。
 ミゾソバは変異が多く、類似種にコミゾソバ(Persicaria mikawana)、ニシミゾソバ(Persicaria hassegawae)があり、下位にヒカゲミゾソバ(var. coreana)、ヤマミゾソバ(var. oreophila)、オオミゾソバ(var. hastatotriloba)の3変種が分類されていたが、YListはヤマミゾソバ1変種だけとして、他はミゾソバに含めている。Kew(POWO)ではヤマミゾソバをミヤマタニソバ(Persicaria debilis (Meisn.) H.Gross ex W.Lee)のsynonymとしている。(ミゾソバ類の比較参照
 ミゾソバは長さ1~5㎝の地中枝を出し、閉鎖花をつける。地中の閉鎖花の痩果の方が大きく、長さ約4㎜。
 白花品種はシロバナミゾソバという。

【基本種に含められた変種】

(1) Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross var. oreophila (Makino) Murai ヤマミゾソバ 山溝蕎麦

  synonym Persicaria oreophila (Makino) Hiyama

  synonym Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross subsp. oreophila (Makino) Sugim.

  synonym Polygonum oreophilum (Makino) Hiyama
 陰地植物であり、山地の林内に生え、湿地や水中には見られない。植物体が長く伸び、側花序の柄が短く、葉は幅広くて中部でほとんど湾入せず、果実に著しい光沢があるのが特徴。Kew(POWO)ではミゾソバのsynonymとしている。YListではこの変種を認めている。
 1年草、高さ30~100㎝。全体に刺も毛も少なく、茎は直立せず、横屈地性と隠性屈湿性を持ち、節間が長く(ただし、節間が短く刺の多いものもある)、茎下部から分枝し、枝が散開して長く半ば地に伏す。茎の基部の節部から根を出し、3㎡以上に拡がることも稀ではなく、基部の各節から出す閉鎖花序の着く枝は短く3㎝前後である。葉柄は長く、翼は発達しない。葉は薄質で幅が広く、葉身の湾入部がほとんどない卵状三角形、頂裂片の先端は急に尾状に延びて突出し鈍頭、側裂片はやや三角状に尖り、先端も鈍頭、葉の基部は切形。葉身長1との比は、最大幅0.89、くびれ部(側裂片の上部幅)0.65、葉柄長0.44で葉柄がミゾソバ類中一番長い。先端の急尾状部を除けば最も三角状に近い数値が得られる。又最大幅と最小幅(くびれ部)の差は最も小さい。ただし、葉形に変化がある。花序の花数は5~8個と少ない。花は白色、花後は花被の先が紫褐色を帯びる。花柄が長く、腺毛がほとんどない。 果実(小堅果)はミゾソバより一層円味があって灰色がかり、灰色~灰緑色、著しい光沢がある(完熟して濃褐色のものもある)。花期は10月上旬~11月上旬。2n=38。

(2) Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross var. coreana (H.Lev.) Nakai ヒカゲミゾソバ 日陰溝蕎麦

  synonym Polygonum thunbergii Siebold et Zucc. var. coreanum Leveille

 ミゾソバ、オオミゾソバ、ヤマミゾソバの小形のもので起源的には多系統と考えられている。最近では分類せず、ミゾソバに含める。Kew(POWO)ではミヤマタニソバ(Persicaria debilis (Meisn.) H.Gross ex W.Lee)のsynonymとしている。全体に繊細で刺や毛が少なく、葉が三角形であるのが特徴。オオミゾソバ形やヤマミゾソバ形の葉のものもあるが、小型の葉のものと考えられ、いずれもミゾソバに含められる。
 1年草、高さ30~100㎝。全体に繊細で刺や毛が少ない。茎は中空、下向きの明瞭な小刺があり、根元は横に這い、立ち上がる。葉は互生し、ミゾソバの小型で耳がなく三角形、質はやや厚い。またはオオミゾソバ形の小さい形で葉身が長さ葉身8~13㎜。あるいはくヒカゲミゾソバ又はヤマミゾソバの小型のタイプがある。葉の基部は浅い心形~切形~楔形。葉柄には翼がある。花序の花数は少ない。花柄には赤色の腺毛、長毛及び小さな星状毛がある。花被は淡紅色~白色、ほとんど白色のものもあり、5裂する。托葉鞘は上部が葉のように丸く広がるものと縁毛だけの2種ある。痩果は長さ3~3.5(4)㎜の3稜形、黄緑色~淡褐色、光沢はない。果実が乾いてくると淡褐色になる。花期は6~9月上旬。2n=40。

(3) Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross var. hastatotriloba (Meisn.) Miyabe オオミゾソハ 大溝蕎麦

  synonym Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross subsp. hastatotriloba (Meisn.) Sugim.

  synonym Polygonum thunbergii Siebold et Zucc. var. hastatotrilobum (Meisn.) Maxim.ex Franch. et Sav.

 Kew(POWO)ではミゾソバのsynonymとしている。葉は長く大きく、葉身の湾入部は深く、基部はほこ形に両側へよく突出するのが特徴。
 茎は維管束の発達により、立上るか斜上する。葉面に毛が目立ち、茎の下向鈎刺も目立つ。茎頂部の通常花の花序枝は上部数節のみから長く突き出てよく目立ち、腺毛の発達がよい。葉は上部のものは急に縮小する。葉は長く大きく、葉身の湾入部は深く、基部はほこ形に両側へよく突出する。葉柄の翼は発達する。茎下部の閉鎖花序枝は長さ10~30㎝以上にも達し長く、果実はよく成熟するが、茎頂の通常花は多くは不稔である。痩果は灰緑褐色で光沢はない。葉身をlとすると最大幅の比0.68、最小幅(くびれ)0.30、葉柄0.39で ミゾソバ中湾入が最も大きい。因にサデクサは葉身長1、最大幅は0.93、最小幅は0.27、葉柄長は1でオオミゾソバに似ていても柄が長く葉身が狭長である。2n=40, 42。