ヤエムグラ 八重葎
Flora of Mikawa
アカネ科 Rubiaceae ヤエムグラ属
英 名 | false cleavers , stickywilly |
中国名 | 猪殃殃 zhu yang yang |
学 名 | Galium spurium L. subsp. spurium synonym Galium spurium L. 広義 synonym Galium spurium var. echinospermum Klett & Richt. |
花 期 | 4~6月 |
高 さ | 20~30(長さ60~90)㎝ |
生活型 | 1年草、越年草 |
生育場所 | 道端,、荒地 |
分 布 | 在来種 日本全土、朝鮮、中国、台湾、モンゴル、ロシア、中央アジア、西南アジア、ヨーロッパ、北アフリカ、北アメリカ |
撮 影 | 蒲郡市形原町 02.3.24 |
ヤエムグラ Galium spurium L.は果実に毛がないトゲナシヤエムグラ var. spuriumsと果実に刺のある狭義のヤエムグラ var. echinospermon (Wallr.)Hayekとされてきたが、var. echinospermon(Wallr.)Hayekは日本でだけ使われ、POWOにはこの学名はなく、Flora of ChinaではGalium spurium var. echinospermum (Wallroth) Hayekが掲載されている。Galium spurium L. var. echinospermon (Wallr.) Hayek.は1953年のFlora of Japanにはすでに掲載されており、古くからechinospermonの綴りが使われている。これより古くからechinospermumの綴りが使われており、綴りの間違いではないかと思われる。
現在の学名は果実に刺があるものと無いものは区別せず、subsp. spurium(ヤエムグラ)にまとめられ、subsp. africanumとsubsp. ibicinumが新たに加えられ、広義のヤエムグラは3亜種とされた(POWO)。これに従えばGalium spurium L. var. echinospermon (Wallr.) Hayek.は使われなくなっていく。
ヤエムグラは1年草~越年草(秋に芽生えるものと、春芽生えるものがある、夏には枯れる)。高さ20~30㎝程度。茎は4稜形、長さ60~90㎝×幅0.5~2.5㎜、稜に下向きの刺が生え、節はほぼ無毛~長毛がある。葉は6~8輪生し、長さ10~30㎜×幅1.5~4㎜の広線形~狭倒披針形、輪生し、枝先では少なく、5個程度になる。輪生する葉の1対だけが十字対生する葉であり、他は托葉が変形したものである。これがこの属の特徴の1つである。葉の下部は漸尖形、縁は平坦または狭く外巻きし、先は鋭形で微凸形、針状(刺状)にやや下向きに尖る。葉の上面に先がやや曲がった微細剛毛があり、下面の縁と脈上に先が下向きに曲がった小刺があり、葉脈は1本。花序は頂生、腋生。(1)2~数個の花が集散花序につく。苞は葉状又は欠き、長さ1~5㎜。花序柄は長さ1~4㎝。小花柄は長さ0.5~15㎜。花冠は4裂し、直径1~1.5㎜、黄緑色~白色。花冠の下に2個の球をつけた形の子房がある。子房は長さ0.3~0.5㎜のほぼ球形、表面に先が鉤状に下向き(後ろ向き)に曲がった刺毛(鉤状毛)がある。雄しべは4本。分離果は2分果、熟すと、褐色になり、分果に分かれて取れやすくなる。分果は長さ2~2.5㎜のほぼ球形~腎形、鉤状毛は長さ0.1~1㎜、毛の基部は膨らまない(または膨らむ tuberculate hairs)。 種子は分果に1個ずつ入る。2n=20,40。花期は4~6月。果実の無毛のものもあるが、日本や中国ではほとんど見られない。
Galium spurium は広義の G. aparine 集団に属し、多様な倍数体 (2x and 4x, 2n = 20, 40) の要素をもつものとされてきた。G. aparine と G. spuriumは多くの変種があり、同義語が多く、誤りも多い。Galium spuriumの特徴は花と果実の大きさの形態的な相違であり、染色体数に高い倍数性や異数性を含まず、2n=20,40である。
シラホシムグラはアジア、ヨーロッパ、北アフリカ原産であり、中国名は原拉拉藤 yuan la la teng。英名はcleavers, stickywilly, catchweed bedstraw, common bedstraw, sticky weed, goose grass。海抜2500m付近までの森林の縁、川岸、牧草地、野原、農地に生える。中国では明らかに稀であり、おそらく導入されたものと推定されている。今日では帰化種として日本、南北アメリカ、オーストラリアなど世界に広く分布している。
シラホシムグラは1年草、平伏またはよじ登る。茎は高さ30~90㎝、4角(かど)があり、直径1~4㎜(ヤエムグラ 直径0.5~2.5㎜)、基部から分枝し、角(かど)に沿って後屈する小刺(retrorsely aculeolate)があり、節は無毛になる~細柔毛(pilose)がある。葉は茎の中間に6~10個輪生し、ほぼ無柄。葉身は乾くと紙質になり、狭倒披針形~狭長楕円状倒披針形、長さ10~60㎜×幅3~10㎜、通常、上面にやや微細柔毛(pilosulous)または微細剛毛(hispidulous)があり、下面には中脈に沿って後ろ向きの小刺があり、基部は鋭形、縁は平らから薄く外巻きして後ろ向きの小刺があり、先は鋭形で短い微突形、葉脈は1本。花序は頂生および腋生、集散花序に2~数個の花がつき、花序軸は無毛~小刺がある(aculeolate)。苞は葉状または欠き、長さ1~5㎜。花序柄は長さ1~5㎝。小花柄は長さ1~30㎜、やがて長くなり、果実の真下に曲がる。子房はほぼ球形、直径0.3~0.5㎜、鉤状の毛状突起がある。花は両性。花冠は黄緑色または白色[ほぼ白色:Jepson eFlora]、輻状花冠(rotate:車形)、直径1.5~2㎜(ヤエムグラ 1~1.5㎜)。裂片は4個、三角形~卵形で、鋭形。分果はほぼ球形~腎形、長さ2.5~5㎜、基部が膨らんだ長さ0.4~1.2㎜の鉤状の毛状突起が密に覆う。花期は3~7月。果期は4~11月[Flora of China]。染色体数は2n=22~88であるが、64と66が最も一般的である。
ヤエムグラ属
family Rubiaceae - genus Galium亜低木~多年草又は1年草。茎はしばしば弱く、よじ登り、しばしば顕著な刺があるか又は粘着性(sticky)があり (つまり、後ろ向きの小刺retrorsely aculeolate=マジックテープ velcro-like)。束晶(raphide)がある。葉は対生、ほとんどが葉状の托葉をもち、4又は6輪生又はそれ以上輪生し、普通、葉柄は無く、たまには柄があり、ダニ室はなく、下面の表皮にはときに点状~条線状の腺があり、ほとんどが1本の主脈をもち、たまに3脈又は掌状脈をもつ。托葉は葉柄間で普通、葉状、ときに減る。花序はほとんどが頂生と腋生(ときに腋生だけ)、密錘花序(thyrsoid)~円錐花序~類頭状花序、集散花序は花が数個~多数つき、又はまれに1花に減り、花序柄が有~無、苞は有り又は高次の軸ではとくに減り[又は苞はときに葉状で総苞状]、花柄の小苞は無い。花はほとんどが両性、1形、両全性(hermaphroditic)、ときに単性で雄花両性花同株(andromonoecious)、たまに両性花を含む異株(polygamo-dioecious)又は雌雄異株((dioecious)、花柄は有又は無、普通、ごく小さい。萼は拡大部が常に減るか又は無く、花托筒部分は子房に融合する。花冠は白色、黄色、黄緑色、緑色、まれにピンク色、赤色、暗赤色、又は紫色、車形=輻状花冠(rotate)~たまに鐘形~広漏斗形。筒部はときに短くなり、花弁が離生のように見え、内側は無毛。花冠裂片は(3 ~)4(~たまに 5)個、蕾では敷石状。雄しべは (3 ~)4(~たまに 5)本、花冠筒部の基部近くにつき、突き出る。花糸は発達し、又は±短くなる。葯は背着。子房は下位、2室、±双生、卵形、楕円系、又は球形、平滑、パピラがあり、いぼ状(tuberculate)又は鈎状毛又はまれに直毛があり、胚珠は各室に1個、直立して中軸につく。柱頭は2裂、突き出る。果柄があり、果柄はときに長くなり、果実は緑色、灰色、まれに白色(~赤色、橙色、又は黒色)、ほとんどが乾いた~革質の分離果、頻繁ではないがスポンジ状、まれに±肉質で液果状、楕円形~ほぼ球形。分離果(schizocarp)は2個の非裂開の分果(cocci, nutlets)に分かれ、各1種子をもち、ほぼ球形、楕円状長円形、又は腎形、平滑で無毛~いぼ状(tuberculate)及び/又は鈎状でくっつく毛状突起で覆われる。種子は小さく、腹に(内側)溝があり、種皮は膜質。胚乳は角質。胚は曲がり、子葉は葉状。幼根は円柱形、下位。
世界に600種以上があり、世界に広く分布する。
ヤエムグラ属の主な種と園芸品種
1 Galium aparine L. シラホシムグラ 白星葎synonym Asperula aparine var. aparine (L.) Nyman
アジア、ヨーロッパ、北アフリカ原産。中国名は原拉拉藤 yuan la la teng。英名はcleavers, stickywilly, catchweed bedstraw, common bedstraw, sticky weed, goose grass。海抜2500m付近までの森林の縁、川岸、牧草地、野原、農地に生える。中国では明らかに稀で、おそらく導入されたものである。今日では帰化種として日本、南北アメリカ、オーストラリアなど世界に広く分布している。日本でも2004年に大阪などで発見されてから、関東地方新潟県、九州など各地で帰化が確認されている。日本で確認されているシラホシムグラはヤエムグラに比べ、節間が広く、茎も太く、花が白色でやや大きく、葉の節の上下に白毛が密生する点で区別できるといわれている。茎の節に白毛があるのが特徴とされている。しかし、種の解説ではときに節の毛が少ないものもあるとされている。花の色も黄緑色のものもある。シラホシムグラとヤエムグラの確実な区別は果実の大きさと染色体数である。果実はシラホシムグラが長さ2~4(または2.5~4.5)㎜、ヤエムグラは長さ1~3㎜である。染色体数はヤエムグラは2n=20,40(x=10)、シラホシムグラは2n=22~88で主に64と66(x=11)である。
1年草、平伏またはよじ登る。茎は高さ30~90㎝、4角(かど)があり、直径1~4㎜(ヤエムグラ 直径0.5~2.5㎜)、基部から分枝し、角(かど)に沿って後屈する小刺(retrorsely aculeolate)があり、節は無毛になる~細柔毛(pilose)がある。葉は茎の中間に6~10個輪生し、ほぼ無柄。葉身は乾くと紙質になり、狭倒披針形~狭長楕円状倒披針形、長さ10~60㎜×幅3~10㎜、通常、上面にやや微細柔毛(pilosulous)または微細剛毛(hispidulous)があり、下面には中脈に沿って後ろ向きの小刺があり、基部は鋭形、縁は平らから薄く外巻きして後ろ向きの小刺があり、先は鋭形で短い微突形、葉脈は1本。花序は頂生および腋生、集散花序に2~数個の花がつき、花序軸は無毛~小刺がある(aculeolate)。苞は葉状または欠き、長さ1~5㎜。花序柄は長さ1~5㎝。小花柄は長さ1~30㎜、やがて長くなり、果実の真下に曲がる。子房はほぼ球形、直径0.3~0.5㎜、鉤状の毛状突起がある。花は両性。花冠は黄緑色または白色[ほぼ白色:Jepson eFlora]、輻状花冠(rotate:車形)、直径1.5~2㎜(ヤエムグラ 1~1.5㎜)。裂片は4個、三角形~卵形で、鋭形。分果はほぼ球形~腎形、長さ2.5~5㎜、基部が膨らんだ長さ0.4~1.2㎜の鉤状の毛状突起が密に覆う。花期は3~7月。果期は4~11月。[Flora of China]
Galium aparineグループ(G. sect. Aparine、正式には G. sect. Kolgyda s.l.の一部)は、1年生で極めて多形性があり、主に自殖性の倍数体複合体を形成し、G. aparine s.l.(広義の) または G. aparine agg(集合体) とも呼ばれる。多年生植物の祖先(ancestors)として考えられるのは、形態的に非常に近い東アジアの分類群 (例: G. sungpanense) や、エーゲ海固有の G. monachinii Boissier & Heldreich (2x、2n=22) やユーラシアおよびアフリカの G. spurium(2x および 4x、2n=20, 40)などの他の一年生植物である。異質倍数性によって、それらは地中海および西ユーラシアで G. aparine s.s.(狭義の) に寄与したようである。(4x、6x、8x で、±正倍数性およびわずかに振動する異数性染色体数)は、今日ではほぼ世界中で雑草になっている。(Ehrendorfer ら、Fl. Iranica 176: 239. 2005)。
Cufodontis(Oesterr. Bot. Z. 89: 245-247. 1940)やW. C. Chen(FRPS 71(2): 234-237. 1999)を含む多くの権威者は、これらの植物すべてをGalium aparine s.l. として扱い、var. aparine、var. echinospermum、var. leiospermum、var. tenerum の4つの変種とした。最初の変種は上記の G. aparine s.s. を指すが、最後の3つは G. spurium に割り当てる必要がある。ここでは、花と分果の大きさに基づいて2つの分類群を区別することが時々困難であるにもかかわらず、上で概説した G. aparine s.s. の狭い範囲と G. spurium の具体的な分離に従う。PE と KUN 植物標本館の広範な中国資料の関連調査により、G. spurium が一般的かつ広範囲に出現するのに対し、G. aparine s.s. はまれで時折しか記録されていないことが明確に示されている。東アジアのこのグループの将来の核型系統学の研究(karyosystematic studies)によってのみ、その分布と生態学的位置が明らかになる。G. aparineグループのメンバーが Galiumの他の1年生および多年生分類群とよく混同されることに関しては、G. spurium を参照。[Flora of China]
【THE BIOLOGY OF CANADIAN WEEDS. 86.の解説】
細長い1年草、根は枝分かれする。子葉は葉柄があり、卵形で、先端には通常切れ込みがあり、上面はややザラつき、長さ8~15㎜×幅6~9㎜。茎は緑色、柔らかく、自由に枝分かれし、多数あり、弱く、ばらばらで(straggly)、半平伏性または登攀・斜上性で、隣接する植物に付着または横たわり、長さ120㎝以下、断面は四角形で、突出した肋には反り返った刺(thornlike spine)が密集し、節があり、最初の節で枝分かれする。節は通常は密に綿毛が生えるが、ときにはほんのわずかである。葉は無柄で、節に4~8枚が輪生し、単葉、狭楕円状披針形、1脈があり、長さ30~60㎜×幅3~8㎜、通常、暗緑色、薄く緩く、微突形、葉縁は弱く後向きのザラつきがあり、上面は毛があり、下面は中脈に沿って一列の刺があり、刺は前向き。花は直径2㎜、輪生葉の葉腋から出る花序柄につき、花序柄あたり2~5個(5~6個の苞)の花が集散花序につく。花冠は4個の鋭形の裂片を持ち、白色。花は両性、4本の雄しべと2本の花柱を持つ1本の雌しべがある。花粉粒は赤道から見ると楕円形で、この六倍体植物の極直径(幅)は25~31µm。果実は分離果で、花ごとに2個の心皮があり、2個の球形の分果を形成する。果実は灰色、灰褐色または暗褐色で、外形は楕円形で、側面から見ると腎形で、刺を除いて長さ2~4㎜で、瘢痕はやや長楕円形、重さは100 個あたり0.3~0.6g。果実の表面は、長さ約0.8㎜の鉤状の剛毛で覆われ、その基部は膨れ、通常は果実の表面層が隆起して形成された小さな疣から刺が生じる。果実は刺がまばらなことがあり、非常にまれに平滑または疣状。染色体数は2n=22~88であるが、64と66が最も一般的である。基数はX=11[参考19 (1987)]。
【Flora IbericaのAsperula aparine var. aparineの解説】
標高0~2600mの荒地、耕作地に生える。
茎は長さ(12)50~167㎝×幅0.3~2.4㎜、通常丈夫で分枝し、ごく稀に、単純で弱々しい(flaccid)。葉は(5)6(5)6~9(10)9(10)輪生し、長さ(8)20~70㎜×幅(2.5)3~9.5㎜、長円状倒卵形または長円状楕円形、先が鈍形、ときに垂れ下がり、長さ3~10(14)㎜×幅1~4.5(5.5)㎜、葉柄があり、4~6輪生し、広倒卵形で鈍形、急に芒になり、芒は長さ(0.5)0.8~2.1㎜、まれに狭倒披針形で±鋭形、通常平らで、脈が太くなりまたはならず、膜質、基部は房状ではなく、通常は葉柄があり、ときにその前に2~4枚の原始葉(primordial leaves)が付き、 広倒卵形で、通常はザラつかない。花序は長さ11~85cm、向かい合った複合集散花序が形成され、まれに単純で花が単生、または、複合、少数花(pauciflorous)で花序軸がわずかにザラつき、または、ときに節ごとに花が1個つく。一般に苞を超える花序柄につく。一次花序の苞は長さ(5.5)10~50㎜ ×幅(1)1.5~7(8)㎜、弱々しく(flaccid)見える個体では長さ2~7(24)㎜×幅0.4~2(2.8)㎜、葉状、上部のものは披針形で鋭形。小苞は長さ1.4~4.7(17)㎜×幅0.45~1.2(4.5)㎜。小花柄は長さ0.1~4.5㎜、果時には長さ0.3~18(44)㎜×幅0.3~0.65㎜。花冠は直径(1.2)1.5~3㎜、クリーム白色、弱々しく見える個体は、直径0.9~1.6㎜で通常、帯緑色または黄緑色。花冠筒部は長さ0.25~0.3㎜。花冠裂片は(0.7)0.9~1.3㎜。雄しべの花糸は長さ0.3~0.5㎜。葯は長さ0.25~0.3㎜。子房は長さ0.8~1.2㎜、長さ0.4~0.8㎜の毛がある。花柱は長さ0.9㎜以下。分果は長さ(1.8)2.3~4.1㎜、長さ(0.2)0.4~1㎜の毛があり、基部に疣状突起がある。弱々しい個体では、分果は長さ1~1.8(2.2)㎜、ときに疣状突起の毛が無い。2n=22, 42, 44, 61-66, 66, 86, 88。(Flora Iberica)
品種) 'Nettleton Strangler'
2 Galium boreale L. エゾキヌタソウ 広義
synonym Galium boreale var. kamtschaticum (Maxim.) Nakai
synonym Galium koreanum Nakai チョウセンヤマムグラ(Korean lady's bedstraw)
synonym Galium boreale var. koreanum Nakaisynonym Galium boreale L. var. amurense (Poped.) Kitag. ヒロハキヌタソウ
synonym Galium amurense Pobed中国、ロシア原産。
日本、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア、インド、カシミール、アフガニスタン、パキスタン、南西アジア、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は北方拉拉藤 bei fang la la teng 。英名はnorthern bedstraw
多年草、直立、高さ20~65㎝。茎は4角(かど)があり、まれに短毛があり、節に小剛毛があり、角(かど)は厚くなる。葉は4輪生し、葉柄は無又はほぼ無。葉身は乾くと、紙質又は薄い革質、線状披針形~披針形、長さ(10~)15~40(~80)㎜×幅(1~)3~15㎜、無毛又はまばらに微軟毛~小剛毛及び/又は細柔毛(pilose)があり、下面はには条線~点状の腺の異型細胞(idioblasts)はなく、基部は楔形~ほぼ円形、縁は普通、外巻きで前向きの細かいザラつき~小剛毛があり、先は鋭形又は普通、狭く先細になり、先端は鈍形~円形。主脈は掌状、3本。花序は頂生、長い又は広円錐花序、長さ2~15㎝、最上部の葉腋と頂部に数個~多数の花がつく集散花序をもつ。花序柄は無毛又は節に微軟毛があり、平滑又はわずかにザラつく。苞は舌形、披針形、又は楕円形、長さ1~4㎜。花柄は長さ0.5~2㎜、果時に長さ3.5㎜以下に長くなる。子房はほぼ球形、長さ0.8~1道㎜、無毛又はまばら~密に小剛毛~微長軟毛がある。花冠は白色又は淡黄色、車形、直径3~4㎜、無毛になる。3/4又はそれ以上分裂し、裂片は4個、卵状披針形、鋭形。分果はほぼ球形、長さ1~2㎜、小堅果(pericarp)は硬くつくが、ときに±膨れ、無毛又は±密に毛があり、±伏し、斜上し、又は広がり、真っすぐ又は曲がるが、硬い、間違いなく、長さ0.3~0.5㎜の鈎状の毛状突起である。花期は5~8(~9)月。果期は6~10月。
2-1 Galium boreale L. var. boreale シベリアキヌタソウ
朝鮮、中国、ロシア、インド、パキスタン、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は北方拉拉藤 bei fang la la teng
葉身は狭披針形~線状披針形、幅1~3.9㎜、無毛。子房と分果は密に粗毛又は綿毛があり、わずかに曲がり、白色の毛状突起がある。花期は5~8月。果期は6~10月。
2-2 Galium boreale L. var. kamtschaticum (Maxim.) Maxim. ex Herder エゾキヌタソウ 蝦夷砧草
synonym Galium boreale L. var. koreanum Nakaisynonym Galium boreale L. var. ciliatum Nakai
(北海道、)朝鮮、中国、モンゴル、ロシア、カシミール、中央アジア(トルキスタン)、ヨーロッパ原産。中国名は堪察加拉拉藤 kan cha jia la la teng。
葉身は広披針形~卵状披針形、幅6~10㎜、下面はまばらに毛があるか、又は少なくとも脈がザラつく。子房と分果は密に粗毛又は綿毛がある。花期と果期は6~9月。
Flora of China では葉幅が広く、広披針形~卵状披針形としているが、北海道のエゾキヌタソウは葉が狭披針形~線状披針形で狭く、果実に曲がった毛があり、一致しない。
2-3 Galium boreale L. var. lanceolatum Nakai ホクセンキヌタソウ
synonym Galium boreale L. var. leiocarpum Nakaisynonym Galium physocarpum Ledeb.
synonym Galium boreale L. subsp. ussuriense (Poped.) Vorosch.
synonym Galium ussuriense Poped.朝鮮、中国、ロシア、中央アジア(トルキスタン原産。中国名は光果砧草 guang guo zhen cao。
葉身は広披針形~卵状披針形、幅6~12㎜、下面は無毛。子房と分果は無毛。花期と果期は5~9月。
3 Galium bungei Steud. トウヨツバムグラ 唐四葉葎 広義
synonym Galium gracile Bunge
日本、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は四叶律 si ye lü。
多年草、高さ5~50㎝、柔らかい帯赤色の塊茎又は糸状の根茎から直立する。茎はしばしば叢生し、4角(かど)があり、分枝せず又は少し分枝し、平滑、無毛で平滑、又は微直軟毛又は直軟毛があり、まれに後ろ向きの小刺があり、節に±小剛毛がある。葉は4輪生し、ほぼ無柄。葉身は乾くと紙質、卵状長円形~卵状披針形~披針状長円形~狭倒披針形、長さ(6~)8~20(~34)㎜×幅 (2~)3~7(~10)㎜、長さ/幅比は普通、3~5、無毛でときに中脈と縁付近に前向きの小刺があり、 又は全体に微直軟毛又は直軟毛があり、下面はときに腺点又は腺条線があり、基部は楔形、先は鋭形又はわずかに鈍形。1本の主脈と2本の側脈は普通、不明瞭。花序は頂生及び/又は腋生、集散花序~円錐花序、密集~緩く、集散花序に花が少数~数個つき、長さ1~5㎝。花序柄は無毛、平滑。苞は無~少数、へら形~狭楕円形、側部はやや扁平、長さ0.4~0.8㎜、無毛~小剛毛があり、平滑~いぼ状(tuberculate)。花冠は黄緑色又は白色、車形、直径1.5~2.5㎜、無毛になる。花冠裂片は4個、卵形~長円形、鋭形~尖鋭形。分果は楕円形、長さ1~2㎜、いぼ状(tuberculate)、刺状突起があるか、又は伏して曲がった~広がった鈎状の長さ約0.3㎜の突起状毛をもち、まれに無毛で平滑。花期は4~9月。果期は5~1月。
3-1 Galium bungei var. angustifolium (Loes.) Cufod. ガリウム・ブンゲイ・アングスティフォリウム
synonym Galium gracile var. angustifolium Loes.synonym Galium trachyspermum var. gracilens A.Gray
中国(安徽省、福建省、甘粛省、河北省、河南省、江蘇省、江西省、陝西省、山東省、山西省、浙江省)原産。中国植物誌では湖北省、湖南省、広西省、四川省、貴州省も分布域に含めている。中国名は狭叶砧草 xia ye zhen cao。英名はslender-leaf bedstraw。標高320~2200mの山や渓流の森林、低木林、草地に生える。ヒメヨツバムグラとされていたこともあるが、POWOではヒメヨツバムグラはヨツバムグラに含められ、ガリウム・アングスティフォリウムは中国固有とされている。
葉身は狭披針形または線状披針形、長さ1~3㎝×幅1~6㎜。花期は6~7月。果期は8~10月。
※ ヒメヨツバムグラはYListではGalium gracilens (A.Gray) Makinoであり、Galium bungei var. angustifolium (Loes.) Cufod.はそのsynonymとして含めている。POWOではヨツバムグラはGalium bungei var. trachyspermum (A.Gray) Cufod.であり、ヒメヨツバムグラ Galium gracilens (A.Gray) Makinoを含めている。
3-2 Galium bungei var. bungei トウヨツバムグラ 唐四葉葎 狭義
synonym Galium fukuyamae Masam. ノウコウムグラ
synonym Galium gracilens (A.Gray) Makino var. lutchuense (Nakai) T.Yamaz. リュウキュウヨツバムグラ
synonym Galium gracilens var. rotundifolium (Hayata) Hatus.synonym Galium lutchuense Nakai ex Kitag.
synonym Galium bungei var. miltorrhizum (Hance) K.S.Jeong & Pak ケナシヨツバムグラ
synonym Galium miltorrhizum var. lutchuense (Nakai ex Kitag.) H.Hara
synonym Galium trachyspermum var. miltorrhizum (Hance) T.Yamaz. in J. Jap. Bot. 66: 51 (1991)ケナシヨツバムグラ
synonym Galium pogonanthum Franch. & Sav.synonym Galium pogonanthum Franch. et Sav. var. trichopetalum (Nakai) H.Hara オオヤマムグラ
synonym Galium pogonanthum Franch. et Sav. var. yakumontanum T.Yamaz. ヤクシマヤマムグラ
synonym Galium pogonanthum Franch. et Sav.日本、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、遼寧省、内モンゴル自治区、寧夏回族自治区、陝西省、山東省、山西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾に分布。中国名は四叶律 si ye lü。標高100~2600mの丘陵地や山地の森林または牧草地、開けた野原、農地、溝の側に生える。
茎は無毛。葉身は下部が卵状披針形、上部は漸尖形。花序は円錐花序で緩い。花冠は無毛。果実には密に鈎状小刺(刺毛)がある。開花期は4~9月。果期は5~1月。
【ケナシヨツバムグラ】
(1) Galium trachyspermum A.Gray var. miltorrhizum (Hance) T.Yamaz. ケナシヨツバムグラ 毛無四葉葎
synonym Galium bungei var. miltorrhizum (Hance) K.S.Jeong & Paksynonym Galium miltorrhizum Hance
synonym Galium trachyspermum A.Gray var. nudicarpum Honda
日本(本州の中部地方以西、四国、九州)、朝鮮、中国原産。POWOではトウヨツバムグラ Galium bungei var. bungeiの異名とされている。YListではヨツバムグラの異名。
多年草。葉は卵状長楕円形~卵形で4枚輪生する。 果実に鉤状毛がほとんどないもの。
1年草または2年草。根茎は細く、紙質の繊維状。通常高さ10~18㎝。茎は直立するか、または果時に傾伏し、通常は二股に分枝し、帯赤色のひげ根の先端から分枝し、直径0.1~0.2美織、角(かど)は細く、4角(かど)があり、無毛。葉は4枚輪生し、単葉で、托葉はなく、2枚の葉が他の葉より大きい。葉柄は長さ0.5㎝未満で、下部の葉はほぼ無柄、1脈があり、卵状倒卵形または広披針形、長さ8~24㎜×幅5~7(8)㎜、先は尖頭形で非常に短い長さ0.1㎜の無色の小突起があり、基部は漸尖形、上面は光沢がなく鈍く無毛、下面も無毛、目立たないザラつく腺細胞があり、まれに上下の脈に乳頭状突起があり、縁は全縁、ほぼ反曲しまたは狭く外巻きし、無毛または縁に少数~数個の微細な毛がある。花序は頂生および/または腋生、集散花序~円錐花序、密~緩く、集散花序は主に2~3花または少数~数個の花がつく。花序柄は直立し、細く、4稜形、無毛、花時に長さ0.3~1.2㎝、果時に長さ1.5~3.0㎝、ときに腺細胞がある。小花柄は直立、毛細管状、細く無毛、長さ0.1~0.2㎝。苞はない。花は小さく、両性、萼はない。花冠は黄緑色、輻状花冠(rotate)、直径1.0~2.2㎜、無毛、4裂する。花弁は卵形または長楕円形、先は鋭形、短く漸尖して外側に曲がり、縁は全縁。雄しべは4本、花糸は細く、花冠に付生し、無毛、長さ0.1~0.3㎜。葯は卵形~楕円形、 長さ0.1~0.2㎜。子房は球形、長さ0.9~1.5㎜×幅1.5~2.3㎜、2個の分果からなり、表面は一般に鈍く、無毛。花柱は長さ0.3~0.5㎜、2分岐する。柱頭は頭状。果実は分離果、分果は長さ1.5~2.3㎜、腎形、無毛、まれに短い乳頭状突起があり、紫色~褐色。種子は腎形、黄色~黄褐色。花期は4~9月(Korean J. Pl. Taxon. 2017)。
3-3 Galium bungei var. hispidum (Matsuda) Cufod. ケヨツバムグラ 毛四葉葎
synonym Galium gracile f. hispidum Matsuda in Bot. Mag. (Tokyo) 26: 130 (1912)
synonym Galium trachyspermum f. hispidum (Matsuda) Ohwi [Ylist] in Bull. Natl. Sci. Mus. Tokyo 33: 86 (1953)
synonym Galium trachyspermum var. hispidum (Matsuda) Kitag.synonym Galium martini H.Lév. & Vaniot
日本(本州西部、九州)、朝鮮南部、中国(安徽省、福建省、甘粛省、河南省、湖北省、江蘇省、陝西省、山西省、四川省、雲南省、浙江省)原産。中国名は硬毛四叶律 ying mao si ye lü。標高100~3400mの山の斜面の森林または草原、河岸、開けた野原に生える。POWOでは中国固有種としている。
茎は開出する軟毛があり、毛状突起は茎の直径より短い。葉にも毛がある。花期は4~6月。果期は5~9月。
3-4 Galium bungei var. punduanoides Cufod.
中国(甘粛省、江蘇省、四川省、雲南省)原産。中国名は毛四叶律 mao si ye lü。標高900~3600mの山地の森林、茂み、または草原、開けた野原、川岸に生える。
茎は軟らかく、硬い毛があり、毛状突起は茎の直径より長い。花序はしばしば密集し、頂生する。花期は6~7月。果期は7~8月。
3-5 Galium bungei var. setuliflorum (A.Gray) Cufod. ヤマムグラ 山葎
synonym Galium pogonanthum var. setuliflorum (A.Gray) H.Harasynonym Galium setuliflorum (A.Gray) Makino
synonym Galium pogonanthum f. nudiflorum (Makino) Ohwi ケナシヤマムグラ
synonym Galium trachyspermum var. setuliflorum A.Graysynonym Galium koreanum (Nakai) Nakai
日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国(江蘇省、山西省)原産。中国名は毛冠四叶律 mao guan si ye lü。山地のやや乾いた場所に生える。YListでは学名をGalium pogonanthum Franch. et Sav.としているが、これはPOWOではGalium bungei var. bungeiのsynonymである。
多年草、高さ10~40㎝。茎は叢生し斜上して細く、平滑、基部で多数分枝する。葉は1対が大きく、1対が小さく、4個輪生する。葉は披針形~楕円形、ヨツバムグラより狭く、長さ10~20㎜×幅1~5㎜、葉縁と下面の中脈に短毛があり、葉形がやや歪である。花はごく細い集散花序に疎に2~3個つき、花は直径1.5~3㎜。小花柄は細く、長さ5~10㎜。花冠は淡緑色~黄白色~白色、4裂(まれに5裂)し、裂片は外面に白毛が生え、先は鋭形で先端に嘴状の小突起がある。ただし、花冠に白毛のない花(ケナシヤマムグラ)も混じることがある。白毛は花冠の下側に隠れるため、蕾を見ると確認しやすい(Flora of China:花冠裂片には少なくとも蕾の段階でまばらに毛がある)。花はヨツバムグラやヒメヨツバムグラより早く見られなくなる。果実は2分果。果柄は長さ5~10㎜。分果は長さ1~1.3㎜、白色の鱗状の逆刺(伏した乳頭状毛)がある。2n=22。花期は5~7月[ヨツバムグラ小記1950]。
【オオヤマムグラ 大山葎】
(2) Galium pogonanthum Franch. et Sav. var. trichopetalum (Nakai) H.Hara オオヤマムグラ 大山葎
本州の中国地方、四国に分布する。茎に開出毛が多く、葉にも毛が多いもので、ヤマムグラと同じで花冠に刺毛があるのが基準形であるが、ときに無毛のもの もある。POWOではヤマムグラではなく、トウヨツバムグラ Galium bungei var. bungeiの異名としている。3-6 Galium bungei var. trachyspermum (A.Gray) Cufod. ヨツバムグラ 四葉葎
synonym Galium trachyspermum A.Gray [Ylist]synonym Galium gracilens (A.Gray) Makino ヒメヨツバムグラ
synonym Galium trachyspermum var. gracilens A.Gray ヒメヨツバムグラ
synonym Galium venosum H.Lév.synonym Galium musyaense Masam.
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、山東省、四川省、浙江省)原産。中国名は阔叶四叶律 kuo ye si ye lü 。海抜800m付近以下の丘陵地の森林または草原、開けた野原、川岸、田のあぜ、道端に生える。
YListではヒメヨツバムグラをGalium gracilens (A.Gray) Makinoとしているが、POWOではこれをヨツバムグラ含めている。
多年草。高さ20~50㎝。茎は下部で分枝して直立し、断面は四角形で、無毛。葉は長さ6~20㎜×幅2~8㎜、基部側が最も幅が広く、長楕円形~卵形(広楕円形~惰円形~卵形~倒卵形、または広披針形)、4個が偽輪生し、先がやや尖る。葉4個のうち1対は托葉である。葉縁と葉下面にやや長い毛が生え、葉の幅が広いのが特徴であるが、やや狭いこともある。花序の枝は短く、小花柄は花時に長さ約1㎜、果時に1~3㎜と短く、花が固まってほぼ頭状につくのも特徴。花冠は直径1~1.5(2)㎜、淡黄緑色、深く4裂まれに5裂し、裂片の先は鈍形(ヒメヨツバムグラは鋭形)。雄しべ4本。花冠の下に半球2個をつけた2室の子房が見える。子房の表面には白色の曲がった鱗状の突起(短い屈毛)がある。果実は分離果、分果は長さ1~1.3(~1.5)㎜[Flora of China:1~2㎜]、白色の鱗片状毛(伏した乳頭状毛=短い屈毛)が密にあり、果柄は長くなる。花期は4~5月(日本では5~7月)。果期は4~7月。
【ヒメヨツバムグラ】
(3) Galium gracilens (A.Gray) Makino ヒメヨツバムグラ 姫四葉葎
synonym Galium trachyspermum var. gracilens A.Graysynonym Galium musyaense Masam.
synonym Galium bungei Steud. var. angustifolium (Loes.) Cufod.
日本(本州、四国、九州)、中国原産。別名はコバノヨツバムグラ(小葉の四葉葎)。日本に広く分布する普通種で、土手、丘陵に生える。YListではGalium gracilens (A.Gray) Makinoとしているが、これはPOWOではGalium bungei var. trachyspermum (A.Gray) Cufod.(ヨツバムグラ)の異名としている。
多年草、長さ55㎝以上に達する。茎は叢生し、しばしば、密で多数、直立し、しばしば、非常に細く、四角(かど)があり、平滑、節間が長い。葉は4輪生し、直立・開出または開出、または多少反り返り、線状披針形~披針形または長楕円状披針形、先は鋭形、下部は先細り、無柄または非常に短い葉柄があり、前向きの細柔毛の縁毛があり、上面は非常に薄く細柔毛があり(pilose)、下面の中脈に細柔毛があり、長さ14㎜×幅4.5㎜以下、ときに、長さ20㎜×幅6㎜になり、根生葉は短く、卵形または楕円形。集散花序は側生および頂生し、小さい。花序柄は細く(gracile)、長くは無い。苞は線形または広線形。小苞はしばしば微細。花は微細、淡緑色、幅1㎜、またはもう少し幅があり、小花柄がある。小花柄は細く(gracile)、糸状、無毛、しばしば果実よりも長く、しばしば果時に散開する。花冠は開出し、4深裂し、無毛。花冠裂片は卵形で、先は単に鋭形または尖り気味(acutish )。雄しべは4本、短い。花糸は糸状。花柱は2本、下半分が合着する。柱頭は頭状。果実は密に小鱗片状細柔毛(squamuloso-pilose)=伏した乳頭状毛があり、斜上する亜鈎状の(subuncinate)の短毛があり、長さ1㎜[Bot. Mag. (Tokyo) 17: 74 (1903)]。花期は5~7月。
ヒメヨツバムグラ Galium gracilens (A.Gray) Makino は下田産が基で全体痩せて小さい。葉は小さく、披針形~長楕円形、通常、長さ5~12㎜×幅1~3㎜。小花柄は纖細で長さ1~5㎜。花冠は直径約1㎜。果実も小さく、長さ0.7~1㎜、伏した乳頭状毛を有する 。本州から南へ台湾、朝鮮、中国中部にわたり知られている 。他種より各部が小さいので分るが、時によく生長した果期の標本ではリュウキュウヨツバムグラやケナシヤマムグラとの区別が難しい場合がある[原寛:ヨツバムグラ小記]。
(1)-1 Galium gracilens (A.Gray) Makino var. lutchuense (Nakai) T.Yamaz. リュウキュウヨツバムグラ 琉球四葉葎
synonym Galium lutchuense Nakaisynonym Galium miltorrhizum Hance var. lutchuense (Nakai) H.Hara
基準標本はWright採集の奄美大島、カケロマ島及びアクミ島産である。琉球及び台湾から知られている。POWOではGalium bungei var. bungeiの異名としている。
ヨツバムグラより小花柄が長く、長さ(1~)2~5㎜あり花序は 往々重なって大きくなり散開する点で異なり、一方 G. miltorrhizumとは果実に伏した乳頭状毛 を有する点で異なり両者の中間の性質を示している。
4 Galium dahuricum Turcz. ex Ledeb. ダフリアムグラ
synonym Galium davuricum Turcz. ex Ledeb. 誤り( Ledebourが protologueで使ったスペル)
(日本、)朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は大叶猪殃殃 da ye zhu yang yang 。多年草、細い帯赤色の根茎がある。茎は直立~斜上、弱く、平伏し、いばしばよじ登り、ときに2.5m以下になり、4角(かど)があり、角に沿って及び節に疎~密に後ろ向きの小刺があり、まれに±無毛になる。主茎の葉は5~6輪生し、ほぼ無柄。葉身は乾くと紙質、形は様々で、倒卵形~楕円状長円形~狭倒披針形、長さ(11~)15~40(~55)㎜×幅(2~)3~10(~14)㎜、上面の中脈沿い、下面、と平らな細い後屈の縁に疎~密に後ろ向き小刺があり、基部は鋭形~楔形、先は鋭形~鈍形~微突形、脈は1本。花序は円錐花序、腋生と頂生の数個~多数の花がつき、普通、ごく緩く、長さ7㎝以下の集散花序。花序軸は糸状でしばしば曲がりやすく、まばらに小刺があるか無毛。苞は少数、披針形。花柄は細く、長さ2~5㎜。子房は倒卵形、長さ約0.8㎜、密に開出又は伏した未発達の毛状突起があるか又は無毛。花冠は白色又は淡緑色、輻状花冠(rotate)、大きさは異なり、直径(1~)1.5~3(~4)㎜、無毛。 花冠裂片は4個、三角形、鈍形~鋭形、又は小さく微突頭。分果は楕円形、長さ約2㎜、伏した又は開出した鈎状毛(長さ0.3~0.5㎜)をもち、いぼ状(tuberculate)~完全に無毛で平滑、花柄(果柄)は長さ10㎜以上に長くなる。花期は6~9月。果期は7~11月。
分布域に日本が入るのはエゾムグラをGalium davuricum Turcz. ex Ledeb. var. manshuricum (Kitag.) H.Haraとした場合。
5 Galium divaricatum Pourr. ex Lam. コメツブヤエムグラ 米粒八重葎
地中海沿岸地域、黒海沿岸地域原案。英名はLamarck's bedstraw, slender bedstraw。北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどに帰化。日本では1992年に最初に神奈川県で採集され、その後、埼玉県、千葉県などでも確認されている。別名はヒメヤエムグラ。乾いた草地、道端に生える。細い1年草。茎は直立または斜上、よく分岐し、長さ30㎝まで、針金状になり、下向きの刺があり、無毛または短毛がある。葉柄は微細。葉は托葉とともに6~8個、輪生し、花枝では次第に2個まで減り、線形~倒披針形、長さ3~10mm、幅0.5mm、先は鋭形、しばしば無毛の剛毛があり、縁には前向きの毛がある。花序は茎頂や葉腋に生じ、花序は花が3~12個つく。花序柄は長さ5~20㎜(主に10~15㎜)。小花柄は主に長さ2~5mm(日本では1~2㎜)。花冠は長さ1㎜まで、直径0.5~1㎜、黄赤色(内側は黄緑色、外面は橙色を帯びる)。果実は平滑または上部にわずかに半球形の突起(細かいパピラ)があり、長さ0.5~1㎜、直径約0.5㎜。花期は6~7月。
6 Galium echinocarpum Hayata タイワンクルマムグラ 台湾車葎
台湾原産。中国名は刺果猪殃殃 ci guo zhu yang yang。標高900~3500mの山地の森林地帯、草地、排水溝沿いに生える。
多年草、根茎は帯赤色、糸状。茎は斜上~直立し、高さ10~40㎝、4角(かど)があり、無毛、平滑。葉は(4~)5~6枚が輪生し、ほぼ無柄。葉身は乾くと紙質、倒披針形、倒卵形、狭楕円形、または狭倒披針形、長さ6~25㎜× 幅2~7㎜、無毛またはときにまばらに剛毛~小直剛毛(strigillose)があり、基部は鋭形、縁は平らで平滑または前向きの小刺があり、先は鋭形~鈍形または円形で急に微突形、葉脈は1本。花序は頂生および上位の葉腋に生じ、花は緩く、少数~数個がつく集散花序。花序軸は無毛、平滑。苞は無いかまたは葉状、長さ2~6㎜、小花柄は長さ0.5~2㎜。子房はほぼ球形で、直径0.5~0.7㎜、密に小直剛毛があり、毛は未発達。花冠は白色、輻状花冠(rotate)、直径約2㎜、無毛、3/4以上の深さに分裂し、裂片は4個、三角形、先は鈍形。分果はほぼ球形~楕円形、長さ約2㎜、長さ約1㎜の密な鉤状毛があり、小花柄は長さ10㎜まで伸びる。花期は5月。果期は5~12月。
7 Galium formosense Ohwi ニイタカムグラ 新高葎
synonym Galium elegans auct. non Wall.
synonym Galium kwanzanense Ohwi
台湾原産。中国名は关山猪殃殃 guan shan zhu yang yang。高雄市の標高600~3000mの山地、道や道路沿い、野原、開渠に生える。
多年草、平伏~直立し、高さ(5~)8~20(~30)㎝。茎は4角(かど)があり、疎~密に毛があり、角(かど)は厚くなる。葉は4個輪生し、無柄。葉身は乾くとほぼ膜質、黒緑色、広楕円形~倒卵形、長さ4~20㎜×幅3~10㎜、長さ/幅比は2以下、両面に少なくとも脈に沿って疎~密に毛があり、基部は楔形~鈍形、先は鈍形~円形で微突形、主脈は3本、掌状につく。花序は頂生および腋生、少数~多数の花がつき、長さ1~3㎝の集散花序。花序柄はまばらに細柔毛(pilose)がある~無毛で平滑。苞はへら形~卵形、長さ1.5~3㎜。小花柄は長さ1~4㎜。花は両性花。子房は倒卵形、長さ約0.5㎜、密に毛があり、鉤状毛がある。花冠は黄白色で、輻状花冠(rotate)、直径1~2㎜、無毛、裂片は4個、卵形、長さ0.4~0.8㎜、鋭形。分果は卵形、長さ約1㎜、密に白色~帯黄色の長さ0.4~0.5㎜の鉤状毛がある。花期は6~9月。果期は6~11月。
8 Galium japonicum Makino クルマムグラ 車葎
synonym Galium nipponicum Makino in Bot. Mag. (Tokyo) 32: 158 (1908), nom. superfl.
synonym Galium trifloriforme Kom. var. nipponicum Nakai北海道、本州、四国、九州、朝鮮原産。山野の木陰に生える。
多年草、ぐにゃぐにゃし、花時に乾くと葉が帯黒色になり、高さ10~30[50]㎝。根は細かいひげ根。茎は4稜形、叢生し、多数、直立するが、平伏-斜上し、しばしば基部で発根し、通常は単純、通常は平滑またはときに角(かど)に非常にわずかに微細突起があり、光沢があり、節に細柔毛(pilose)があり、節間は細い。葉は6~(または5~4、まれに7~)輪生し、開出または直立・開出し、短い葉柄があり、葉身は楕円状披針形、長円形、狭長円形、または披針形、先は尖頭状鋭形(cuspidate-acute)または尖頭状鈍形、基部は鋭形、長さ25㎜×幅11㎜に達して[通常長さ1~3㎝]下部の葉は小さく、卵状楕円形または線状披針形、無毛だが、細かい前向きのザラつく縁毛があり、ときに縁に向かって薄く細柔毛(pilose)があり、膜質、1脈があり、緩い脈があり、中肋は無毛である。集散花序は頂生し、幅1~1.5㎝。花序柄は2回2分岐または3分岐(trichotomous)し、直立・開出するが、果時には長くなり散開し、無毛。苞と小苞は線形または披針形、小苞はしばしば微細である。花は小さく、幅約3㎜、純白色、小花柄がある。小花柄は2~3本つく、直立・開出し、花時に長さ1.5~3㎜、果時に散開する。萼に長い毛が生える。花冠は直立・開出し、4深裂し、裂片は卵状楕円形、鋭形、長さ1.5㎜。雄しべは4本、短い。花糸は内曲する。葯は微細。花柱は2個、短く、直立・開出する。柱頭は頭状。子房は球形、鉤状の白色の剛毛が密にある。果実は2分果、密に鈎状剛毛があり、熟すと黒色になる。花期は5月。
同じように葉が6個輪生するオククルマムグラは葉の幅がやや広くて大きく、葉の先が丸く、先端だけが刺状に尖る。また、茎に下向きの刺があり、葉裏の主脈に毛がある。葉が4個輪生するミヤマムグラも似ているが、葉に明らかな柄があり、花期は6~7月(Bot. Mag.,Tokyo 17,194, p73-74, 1903)。
8-1 Galium japonicum Makino f. stenophyllum Kitag. ホソバノクルマムグラ 細葉の車葎
葉は4~6輪生し、狭長円形~倒披針形、先は尖頭状鈍形。花冠は白色、普通3裂する。9 Galium kamtschaticum Steller ex Roem. et Schult. エゾノヨツバムグラ 蝦夷の四葉葎 広義
synonym Galium rotundifolium var. kamtschaticum (Steller ex Schult. & Schult.f.) Kuntze
日本(北海道、本州、四国)、千島列島、サハリン、朝鮮、中国(黒龍江省、吉林省)、ロシア、北アメリカ(アラスカ、カナダ、USA)原産。中国名は三脉猪殃殃 san mai zhu yang yang 。英名は boreal bedstraw。標高1500~2300m[北日本では低く、約100mまで]の山地のやや湿った林内、溝の脇の草むらに生える。多年草、直立、高さ5~25㎝、糸状の根茎から出る。茎はほとんどが分枝せず、4角(かど)があり、無毛またはまばらに微細剛毛がある(hispidulous)。葉は4個輪生し、無柄またはほぼ無柄。葉身は乾くと黒褐色で紙質になり、広楕円形、卵形またはほぼ円形、長さ10~25㎜×幅6~17㎜、少なくとも葉脈上に無毛または髭があるが、その他は向軸は滑らか、向軸は腺条がなく、基部は楔形から鈍形、縁は前軸に繊毛または髭があり、先は±円形で通常は微髭がある。主葉脈は3本で、掌状。花序は小さく、甲状腺で、集散花序となり、頂部の葉の腋にでき、長さ2~6㎝、少数から数個の花が付き、緩い。花柄は無毛で滑らか。苞は葉状または舌状から狭楕円形で、長さ0.5~4㎜、小花柄は長さ1~5㎜。子房は亜球形で、長さ約1㎜、密に毛があり、広がる鉤状の毛がある。花冠は白色または緑がかった黄色で、輪生し、直径2.5~3(~4)㎜、無毛で、3/4 以上に裂け、裂片は4個、楕円状披針形または卵形三角形で鋭形。分果は卵形で、長さ1.5~2㎜、長さ0.8~1㎜ の密な鉤状の毛があり、小花柄は通常長さ15㎜まで伸びる。 花期は7~9月。
9-1 Galium kamtschaticum Steller ex Roem. et Schult. var. kamtschaticum エゾノヨツバムグラ 蝦夷の四葉葎
synonym Galium kamtschaticum Steller ex Roem. et Schult. var. acutifolium H.Hara オオバノヨツバムグラ
synonym Galium kamtschaticum f. intermedium Takeda ケナシエゾノヨツバムグラ
synonym多年草。高さ5~25㎝。茎は4稜があり、直立し、分枝する。葉は4個輪生し、長さ10~25㎜、幅6~17㎜の楕円形~広倒卵形、先が円く、先端が小さく尖る。葉の3脈が見え、縁や脈上に毛が生え、乾くと葉が黒褐色になる。葉柄は無い。花は茎頂の集散花序につく。花冠は直径2.5~3(4)㎜、白色、4裂する。雄しべは4個。子房には長い白毛が密生する。果実は長さ約0.15㎜。2n=22。花期は6~7月。
9-2 Galium kamtschaticum Steller ex Roem. et Schult. var. minus Sugim. ヤクシマムグラ 屋久島葎
synonym Galium yakusimense Masam.synonym Galium kamtschaticum Steller ex Roem. et Schult. var. yakusimense (Masam.) T.Yamaz.
屋久島に分布する。草丈は5~6㎝。葉は楕円形または長楕円形で、先はやや尖り、長さ5~10㎜×幅3~4㎜、果実には鈎状毛が密生する。全体に本州のオオパノヨツパムグラ G.kamtschaticum var. acutifoliumに似て、それを小型にした形である。
ナンゴグムグラの名で Galium kamtschaticum var. minum Sugimotoとして新変種が屋久島から報告されている。エゾノヨツバムグラの変種で小型である点からヤクシマムグラと同じものと考えられる。
10 Galium kikumugura Ohwi キクムグラ 菊葎
日本固有種(北海道、本州、四国、九州)。愛知県準絶滅危惧種。山地の林縁などに生える。花序に小 さい苞があることがよい特徴である。
多年草。茎は柔らか、斜上し、長さ20~40㎝。葉は4輪生し、楕円形~狭倒卵形、長さ6~15㎜×幅3~8㎜、先は円形~鈍形、微突頭り、縁に上向きの剛毛がある。花序は頂生又は腋生、花が1~3個つく。小花柄はほとんど無~長さ約5㎜、不等長、小花柄の基部に苞が1個あり、苞は披針形。花冠は白色、4深裂し、直径約1㎜。果実は楕円形、上向きに曲がった毛がある。花期は5~6月。(レッドデータブック愛知)
11 Galium kinuta Nakai et H.Hara キヌタソウ 砧草
synonym Galium boreale var. japonicum Maxim.
synonym Galium japonicum (Maxim.) Makino & Nakai
synonym Galium kinuta var. bracteatum (Nakai) Nakai & H.Hara
synonym Galium kinuta Nakai et H.Hara f. bracteatum (Nakai) H.Hara オトギリキヌタソウ
synonym Galium kinuta f. roseum Hayashi バライロキヌタソウsynonym Galium kinuta var. viridescens (Makino & Nakai) Matsum. & Nakai アオキヌタソウ
日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国(甘粛省、河北省、河南省、湖北省、遼寧省、陝西省、山西省、四川省、新疆ウイグル自治区)原産。中国名は显脉拉拉藤 xian mai la la teng。標高500~2100mの中湿の山地の斜面の豊かな森林、林縁、水辺の岩地、開けた草原、牧草地に生える。多年草、直立し、高さ20~60㎝。茎は4つの厚い角(かど)を持ち、無毛で平滑、節のみに微細剛毛がある(hispidulous)。葉は4個輪生し、ほぼ無柄または葉柄は長さ2㎜まで。葉身は乾くと大部分がやや革質になり、±緑色のまま、倒披針形~卵状披針形、ときに狭楕円形または卵形、長さ20~80㎜×幅4~20㎜、長さ/幅比は(2~)3~5(~6)、少なくとも葉脈に沿って小直剛毛(strigillose)または微細剛毛があるか、無毛になり、下面に疎~密に腺点から条線状の腺があり、基部は鋭形~円形、縁は平らから薄く外巻きし、前向きの繊毛~微細剛毛があり、先はほぼ鋭形~鋭形だがほとんど凹まず長く尖鋭形、主脈は3本で掌状になる。花序は円錐花序、長さ25㎝×幅15㎝・まで、最上部の葉腋と頂部に集散花序をつける。花は多数つき、緩く、しばしばやや散開する。花序柄は平滑、無毛または節に微細剛毛がある。苞は倒披針形~狭楕円形で、長さ1.5~3㎜。小花柄は長さ1.5~3㎜。子房は亜球形から倒形、長さ約0.8㎜で、平滑、無毛。花冠は白色~±紫色、輻状花冠(rotate)、直径2~2.5㎜、無毛、裂片は4個、卵形、先は尖鋭形。雄しべ4本。果実は2分果、1個だけとなることも多く、これが砧に似ている。分果はほぼ球形~倒卵形、長さ約2.5㎜、無毛で平滑。2n=66。花期は5~7(日本では7~9)月。果期は8~9月。
オトギリキヌタソウは苞の幅が広いもの。
12 Galium linearifolium Turcz. イトムグラ 糸葎
朝鮮、中国(河北省、湖北省、遼寧省)原産。中国名は线叶拉拉藤 xian ye la la teng。標高400~1800mの草地の斜面、森林、雑木林、山の牧草地に生える。
多年草、直立性、基部がわずかに木質化することもある。茎は高さ65㎝まで、4角(かど)があり、微細粗毛(hirtellous)または微軟毛があるか無毛になり、または平滑で無毛。葉は4枚輪生し、無柄またはほぼ無柄。葉身は乾くと革質、線状へら形、しばしばわずかに鎌形になり、長さ10~60㎜×幅1~4㎜、上面は無毛、弱き光沢があり、前向きの小刺が中脈に沿っておよび/または縁近くにあり、下面は無毛または中脈に沿ってまばらに微細粗毛があり、基部は楔形または鈍形、縁は前向きの小刺または軟毛があり、外巻きし、先は鈍形~鋭形、葉脈は1本。花序は頂生、円錐花序であり、数個~多数の花がつき、長さ1.5~5㎝の集散花序をつける。花序柄は微細粗毛がある~無毛で平滑。苞は狭楕円形、長さ1~3㎜ またはしばしば欠く。小花柄は長さ1.5~6㎜。子房は楕円形~倒卵形、長さ約0.8㎜、無毛、平滑。花冠は白色、輻状花冠(rotate)、直径約4㎜、裂片は4個、披針形、先が鋭形。分果は楕円形~ほぼ球形、長さ2.5~3㎜、無毛、平滑。花期は6~8月。果期は7~9月。
13 Galium monachinii Boissier & Heldreich ガリウム・モナチニー
ギリシャ、クレタ島原産。 峡谷の粗い石灰質のガレ場、乾いた河床、開けた森林に生える。
1年草。茎は長さ(2~)4~10(~16)㎝、斜上し、弱く、後向きまたは下向きのかかりのある小さな刺(retrorsly aculeolate)があり、特に下部にあり、上部はほぼ平滑で、弱く4角(かど)がある。葉は長さ4~7㎜x幅1.5~2㎜、5~6個輪生し、広倒披針形~狭倒卵形、先は短い芒状、上面にまばらな短毛があり、縁と中肋には柔らかい前向きのザラつきがあり、縁はかすかに外巻きする。花序は卵形。部分花序には1~3個の花つく。小花柄はかなり丈夫、真っすぐで、多少、直立する。花冠は直径1.5~2㎜、帯白色~帯ピンク色、無毛。花冠裂片は先が急に短い点で終わる(apiculate)。果実は(剛毛を除いて)長さ2.5~3.5㎜、円状卵形、かなり密な鉤状の剛毛がある。
14 Galium maximoviczii (Kom.) Poped. クルマバモドキ 車葉擬
synonym Asperula maximoviczii Kom.
朝鮮、中国(安徽省、河北省、黒龍江省、河南省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、陝西省、山東省、山西省、浙江省)、ロシア原産。中国名は异叶轮草 yi ye lun cao。標高1600~3800mの山地、開けた野原、溝の側にある森林、茂み、または草地に生える。
多年草、細い匍匐性の根茎から生える。茎は直立し、高さ0.3~1m、4角(かど)があり、平滑、節には微細剛毛がある(hispidulous)かまたは無毛。葉は4~6(~8)個が輪生し、ほぼ無柄または長さ6㎜までの葉柄がある。葉身は乾くと紙質、披針状長楕円形、披針状楕円形、または卵形~卵状披針形、長さ(23~)35~40(~53)㎜×幅(7~)9~10(~18)㎜、無毛または疎~中程度の微細剛毛があり、少なくとも主脈は無毛、縁は前向きの繊毛があるかまたは小刺があり、基部は鋭形~楔形、先は先細りし、短い鈍形~鋭形、脈は3~5本、掌状につく。花序は広い円錐花序、長さ4~20㎝×幅2~15㎝、緩く多数の花が付き、最上部の葉腋と先端に集散花序がある。花序柄は±無毛。苞は線形~狭楕円形で、長さ1~5㎜。小花柄は長さ2~4㎜。子房は倒卵形、側面が平らで、長さ約0.8㎜、無毛、平滑。花冠は白色、鐘形。花冠筒部は花冠裂片と±同長で、直径2.5~3.5㎜、花冠裂片は4個、卵状長楕円形、先が鈍形。分果は楕円形、長さ2~2.5㎜、無毛、平滑~顆粒状のパピラがある。花期は6~7月。果期は7~10月。
15 Galium minutissimum T.Shimizu セイスイムグラ
台湾(花蓮県)原産。中国名は微小拉拉藤 wei xiao la la teng。標高1800~2400mの山地に生える。
多年草(一年草ではない)、斜上し、叢生し、小さく、高さ2~3㎝。茎は4角(かど)があり、分枝し、無毛またはときに節に微細剛毛がある(hispidulous)。葉は4枚輪生。葉身は菱状長楕円形、長さ2~3㎜×幅0.8~1㎜、無毛または中脈に沿って微細剛毛があり、基部は漸尖し、先は鈍形、葉脈は1本。花序は頂生および一部腋生で少数の花がつく集散花序、花序軸は無毛。小花柄は長さ約2㎜。花は不明。分果は腎形、まばらに剛毛があり、先がは弱く曲がった毛状突起がある。
16 Galium mollugo L. トゲナシムグラ 刺無葎
synonym Galium flaccidum Salisb.
synonym Galium vulgare Gray
ヨーロッパ、北アフリカ原産。英名は false baby's breath , hedge bedstraw , white bedstraw。別名はカスミムグラ。雑草。北海道、宮城県、山形県で確認されている。牧草地や生垣のわきなどに生える。
常緑多年草、高さ30~120[150]㎝、多数の弱い茎が叢生し、茎は通常、傾伏する基部から±直立し、後に倒伏するか又は絡み付き、鈍角の4稜形、細く、無毛または下部に短く開出する毛がある。夏または秋に、短く細く、葉のついた多年生の側枝(offshoots)ができる。葉は6または8枚輪生し、前向きのザラつく縁毛があり、それ以外は無毛、線状長楕円形~倒披針形[倒卵形~広倒披針形]、ほとんどが長さ1~2.5[3]㎝、幅3~7㎜、平らで、著しく薄く、中央より上が最も幅広く、1脈があり、先端が急に狭くなり、尖頭形、表裏同色である。花序は頂生、しばしば散開状に分岐し、かなり目立つ集散状の円錐花序(cymose panicle)になり、多数花が緩くつき、花後に強く散開する(var. erectumは花序が密で岐の少ない枝生)。花冠は白色またはほぼ白色、幅2~5㎜(典型的な花冠は幅2~3㎜、 var. erectumは3~5㎜)。小花柄は花の幅より普通長い(var. erectumは短い)。果実は無毛、平滑、長さ1~1.5㎜。2n=22、44、66、88。花期は(7)8~9月[日本]。(Manual of Vascular Plants of Northeastern US and Canada)
16-1 Galium mollugo subsp. mollugo
synonym Galium mollugo var. elatum DC.
synonym Galium mollugo var. erectum (Huds.) Fr.
synonym Galium mollugo var.var. erectum (Huds.) Domin
synonym Galium elatum Thuill.
synonym Galium erectum var. tyrolense (Willd.) Nyman
ヨーロッパ、ロシアに分布。 過去に多数の変種に分けられていたが、現在ではsubsp. mollugoに統合されている。集散状の円錐花序(cymose panicle)に花がやや小さく緩くつき、小花柄が長いものは細糸状で9㎜にもなる(普通型)と花序が密につき、小花柄が長さ2~4㎜の短いく、花が直径約4㎜と大きいもの(var. erectum)の両方が日本で確認されている。
16-2 Galium mollugo subsp. marmaricum Maire & Weiller
リビアに分布。詳細不明。
17 Galium monachinii Boiss. & Heldr. ガリウム・モナチニー
ギリシャ、クレタ島原産。標高(200~)600~1700mの峡谷の粗い石灰質のガレ場、乾いた河床、開けた森林に生える。
1年草、茎は長さ(2~)4~10(~16)㎝、斜上し、弱く、後ろ向きの小刺があり、特に下部にあり、上部はほぼ平滑、弱い4稜形。葉は長さ4~7㎜x幅1.5~2㎜、5~6個が輪生し、広倒披針形~狭倒卵形、先は短い芒状、上面にまばらに短毛があり、縁と中肋には柔らかい前向きの小刺があり、縁はほとんど外巻きしない。花序は卵形、部分花序には1~3個の花がつく。小花柄はかなり丈夫で、真っ直ぐ、多少、直立する。花冠は直径1.5~2㎜、帯白色~ピンク色、無毛。花冠裂片は先が小突形。果実は(剛毛を除いて)長さ2.5~3.5㎜、円状卵形、かなり密な鉤状剛毛を持つ。花期は4~5月。
18 Galium morii Hayata モリムグラ 森葎
台湾原産。中国名は森氏猪殃殃 sen shi zhu yang yang。標高2500~3400mの山地に生える。
多年草、直立し、高さ5~10㎝。茎は細く、4角(かど)があり、無毛。葉は4枚輪生し、無柄またはほぼ無柄。葉身は乾くと紙質、倒卵形、卵形、楕円形または楕円状長楕円形、長さ1~6㎜×幅1.5~10㎜、無毛または下面にまばらに毛があり、基部は鈍形、縁は平滑、先は鈍形または小突起がある鋭形、主脈は3本で掌状。花序は頂生またはときに腋生、花序は長さ0.5~1.5cmの少数の花をつける集散花序。花序柄と苞は無毛。小花柄は長さ1~2㎜。子房は密に小直剛毛(strigillose)があり、毛状突起は発達していない。花冠は白色、輻状花冠(rotate)、直径約1.2㎜、3/4以上の深さに分裂し、裂片は4個、卵形。分果はほぼ球形、直径約1㎜、密に±伏した鉤状毛がある。
19 Galium nakaii Kudo ex H.Hara ミヤマキヌタソウ 深山砧草
日本固有種(北海道、本州の東北地方)。愛知県の低山に見られる特殊なもの。愛知県絶滅危惧ⅠA類。普通のミヤマキヌタソウでなく、愛知県産の解説。
多年草。横走する地下茎があり、根は橙色を帯びる。茎は少数が束生し、高さ12~20㎝、平滑。葉は4輪生し、短柄がある。葉身は卵形~楕円形、長さ12~18㎜×幅7~10㎜、長さ6~15㎜×幅3~8㎜、先は鋭形~鈍形、微凸頭、基部はやや急に細まり、狭くさび形、縁と脈上には上向きの剛毛がある。花序は頂生又は上部の葉に腋生、小さく、花が2~5個のつく。苞は卵形~広披針形、長さ1.5~2㎜。花冠は淡黄緑色、4裂し、直径2.5~3㎜。果実には上向きに曲がった毛がある。花期は4月下旬~5月。(レッドデータブック愛知)
20 Galium nankotaizanum Ohwi ナンコムグラ 南湖葎
synonym Galium maborasense Masam.
台湾原産。中国名は南湖大山猪殃殃 nan hu da shan zhu yang yang。標高3000~3500mの低木林下や岩の割れ目に生える。
多年草、直立し、しばしば縮小し、高さ5~12(~20)㎝。茎は4角(かど)があり、疎~中程度に細柔毛があり、無毛になり、角(かど)は厚くなる。葉は4個輪生し、無柄からほぼ無柄。葉身は膜質、卵形、楕円形、または広披針形、長さ4~10㎜×幅2~5㎜、長さ/幅比は2~3で、両面に少なくとも中脈に沿ってまばらに粗毛があり、基部は楔形~鈍形、先は鋭形~鈍形、ときに小突形になり、主脈は1本、側脈は2本が弱く発達する。花序は頂生および上部の葉腋に生じ、集散花序には2~数個の花がつき、長さ2~16㎜、基部の葉より短い。小花柄は長さ0.8~4㎜。花は両性花。子房は倒卵形、長さ約0.5㎜、密に伏毛がある。花冠は白色、輻状花冠(rotate)、直径2~2.5㎜、1/2~2/3の深さに分裂し、裂片は4個で、卵形。小花柄の上の果実は反り返る~頭を下げる。分果は倒卵形~扁球形、長さ0.8~1㎜、灰黄色の毛が密にあり、毛は真っ直ぐまたはわずかに湾曲し、長さ約0.8㎜。花期は7月。果期は8~9月。
21 Galium niewerthii Franch. et Sav. ヤブムグラ 藪葎
日本固有種(関東地方南部)。丘陵地に生える。
多年草、蔓状、長さ40~60(~約80)㎝。茎は弱く、細く、無毛で、基部でわずかに分枝し、しばしば上部で分枝する。葉は4~5または6輪生し、開出または直立・開出し、楕円状長円形~狭い長円形、先は急に尖頭形または短い尖鋭形、基部は鋭形でほぼ無柄、まばらに前向きの微細突起状剛毛と剛毛縁毛があり、1脈があり、長さ26㎜×幅9㎜以下になる。花序柄は長くなく、頂生および側生して緩い頂生の円錐花序を形成し、糸状で2回分岐(di-trichotomous)する。小花柄は毛細管状、果実よりも長い。苞は尖鋭形状線形。小苞は微細で剛毛状(setaceous)。花は小さく、(白色~)帯緑色、直径2㎜。花冠は開出し、4深裂し、裂片は楕円状卵形、先に嘴がある。雄しべは短い。花柱は花冠より短く、基部で合着する。果実は無毛、長さ2.5㎜、分果は長円形。花期は7~8月。
22 Galium odoratum (L.) Scop. クルマバソウ 車葉草
日本(北海道、本州)、、朝鮮、中国、ロシア、南西アジア、ヨーロッパ、北アフリカ原産。アメリカに帰化している。英名はsweet woodruff。中国名は车轴草 che zhou cao。山地の林内に生える。
多年草、細い長い根茎がある。茎は直立、高さ10~50㎝、4角(かど)があり、節に小剛毛があるのを除いて、無毛、平滑。葉は6~10輪生し、葉柄は無又は長さ1㎜以下。葉身は乾くと紙質、倒披針形、長円状披針形、又は狭楕円形、長さ(6~)15~50(~65)㎜×幅(3~)4.5~15(~17)㎜、長さ/幅比は約4、縁に後ろ向きの小刺があり、上側とときに下面の中脈に前向きの微毛がある以外は無毛、基部は鋭形~楔形、縁は平ら、先は鋭形又は普通、鈍形で急に微突形、脈は1本。花序は頂生、花が数個~多数(4~12個)つく集散花序をもつ。花序軸は無毛、平滑。苞は無又は葉状、長さ1~3㎜。花柄は長さ1~4㎜。子房は楕円形~倒卵形、長さ約0.8㎜、密に小剛毛がある。花冠は白色又は青白色、±広漏斗形、長さ4.5~6.5㎜×幅3~7㎜、無毛。約1/2分裂し、裂片は4個、三角状へら形、鋭形。分果はほぼ球形、直径2~2.5㎜、密に長さ1~1.2㎜の鈎状毛がある。花期と果期は6~9月(日本では花期は5~7月)。
23 Galium paradoxum Maxim. ミヤマムグラ 深山葎 広義⇒プセウドガリウム属
⇒Pseudogalium paradoxum (Maxim.) L.E Yang, Z.L.Nie & H.Sunsynonym Galium paradoxum Maxim.
日本全土、朝鮮、中国(安徽省、甘粛省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、吉林省、遼寧省、青海省、山西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア、インド、ネパール、ブータン原産。中国名は林猪殃殃 lin zhu yang yang。標高1200~4000mの森林、牧草地、水辺、日陰の(亜)高山の岩上に生える。プセウドガリウム属に分けられた(Yang Li-E 2018)。
多年草、糸状の根茎から斜上する。茎は直立し、細く、高さ4~25㎝、4角(かど)に狭い翼があり、無毛、平滑、節だけにわずかに短毛がある。茎の中間の葉は対生し、葉状の托葉が4個輪生し、2個が明らかに小さい。下部の節では托葉は線形、長さ1.5~3㎜。葉柄は長さ1.5~10㎜。葉身は膜質、ほぼ円形~広卵形~卵状披針形、または楕円状長円形、長さ(5~)6~30(~40)㎜×幅(3.5~)5~15(~23)㎜、上面に散在する±伏した短毛があり、下面は無毛になり、基部は漸尖し、鈍形~切形、縁には前向きの微細剛毛の繊毛があり(hispidulous-ciliolate)、先は鋭形~円形、主脈は1本で、2~4対の羽状側脈がある。花序は頂生および上部の葉の葉腋に3~11個の花をもつ集散花序をつける。花序軸は3分岐し(trichotomous)、±散開する。苞は狭楕円形または舌形、長さ0.8~3㎜。小花柄は長さ1~3㎜。子房は卵形、長さ約0.5㎜、未発達の鉤状毛がある。花冠は白色で、輻状花冠(rotate)、直径2.5~3㎜、1/2~2/3まで分裂し、花冠裂片は卵形、先は鈍形~亜小突起形(subapiculate)~鋭形または尖鋭形。分果は卵形、長さ1~2㎜で、長さ0.8~1㎜の黄褐色の鉤状毛で密に覆われ、小花柄は太く長くなり、長さ11㎜まで伸びる。花期は5~8月。果期は6~9月。
3亜種に分類されている。
23-1 Pseudogalium paradoxum subsp. duthiei (Ehrend. & Schönb.-Tem.) L.E Yang, Z.L.Nie & H.Sun
synonym Galium paradoxum subsp. duthiei Ehrend. & Schönb.-Tem.中国(湖北省、四川省、西蔵省、雲南省)、インド、ネパール、ブータンに分布する。中国名は达氏林猪殃殃 da shi lin zhu yang yang。標高2700~4000mの日陰の(亜)高山の岩場に生える。
葉は広卵形~ほぼ円形、長さ(5~)6~10(~17)㎜×幅(3.5~)4~7(~10)㎜、基部が切形。花冠の裂片は鋭形~尖鋭形。花期は7~8月。果期は7~9月。
23-2 Pseudogalium paradoxum subsp. franchetianum (Ehrend. & Schönb.-Tem.) L.E Yang, Z.L.Nie & H.Sun ミヤマムグラ 深山葎
synonym Galium paradoxum Maxim. subsp. franchetianum Ehrend. et Schonb.
日本固有亜種。日本全土に分布。深山の林内に生える。花が小さく直径2~2.5㎜、分果に白色の長い鈎状毛が密にある。多年草。高さ10~25㎝。葉は4個(まれに3個または5個)輪生する。ただし、下部では2個対生となる。葉の向かい合った2個が小さく、2個が大きい。葉は長さ1~3㎝×幅5~20㎜の広卵形、基部が円形、先は鋭形、側脈は2~3対あり、葉縁と縁近くの上面に短い剛毛があり、他は無毛。葉柄は明瞭、長さ4~12㎜。茎頂の短い花序に少数の花をつける。小花柄は花時に長さ1~4㎜、果時にやや太くなり、長さ6~7㎜になる。花は直径2~2.5㎜。花冠は白色、4深裂する。子房は鐘形または楕円状球形、鉤状毛が密にある。分果は楕円形、長さ約1.5㎜、密に白色の長い鈎状毛がある。花期は6~8月。
23-3 Pseudogalium paradoxum subsp. paradoxum
synonym Galium paradoxum Maxim. subsp. paradoxum
synonym Galium stellariifolium Franch. & Sav.
synonym Galium syreitschikowii Lipsch.
朝鮮、中国(安徽省、甘粛省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、吉林省、遼寧省、青海省、山西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア、インド、ネパール、ブータンに分布する。中国名は林猪殃殃 lin zhu yang yang。標高1200~3000mの森林、牧草地、水域付近に生える。POWOでは日本を分布域に含めている。
葉は長さ(10)12~30(40)㎜×幅(5)7~15(23)㎜の卵状披針形またはときに卵形~楕円状長円形。花冠は裂片の先が鈍形~ほぼ小突起形(subapiculate)。花期は5~8月。果期は6~9月。
多年草、高さ4~25㎝。根茎は細く、匍匐茎を持つ。茎は直立または斜上し、4稜形、無毛。葉は膜質、下部の節に2枚対生する。上部の節に4枚(または5枚)輪生し、2枚は大きく、他の葉はしばしば托葉状に小さくなる。葉柄は長さ3~10㎜、下部では長く、上部に向かって徐々に短くなり、無毛またはまばらに細柔毛(pilose)がある。葉身は卵形~広卵形、長さ10~30㎜×幅5~20㎜、先は鋭形、基部は楔形~円形、短く漸尖し、葉柄になり、縁は全縁で、両面にまばらに毛があり、縁にも毛があり、羽状脈があり、目立つ中脈と2対の側脈がある。集散花序は頂生および上部の葉腋に付き、通常は3分岐し、長さ2~4㎝、枝はしばしば2分岐し(furcate)、少数の花が付き、各枝には2~3個の花をもち、花序柄は無毛。花は小さい。苞は線形で長さ1~2㎜。小花柄は花時に長さ1~2㎜、果時に長さ3~9㎜に伸び、無毛。萼(子房)は楕円形で長さ約1㎜、密に広がった長い鉤状の軟毛がある。花冠は輻状花冠(rotate)、白色、直径約2.5~3㎜、4(または5)裂し、裂片は卵形で鋭形、長さ約1.5㎜。雄しべは4本で、花冠裂片に互生し、花糸は短い。花柱は短く、長さ約0.7㎜、柱頭は2岐。子房は2室、密に開出する長い鉤状の細柔毛(pilose)がある。果実は乾燥しており、1 個または2個の分離果がある。分離果は球形、長さ約1.5~2㎜、密に開出する長い鉤状の細柔毛(pilose)がある(Taiwania 2010)。
24 Galium platygalium (Maxim.) Poped. キヌタモドキ 砧擬
synonym Asperula platygalium Maxim.
朝鮮、中国(黒龍江省、吉林省、山西省)、ロシア原産。中国名は卵叶轮草 luan ye lun cao。標高約1700mの山地の斜面の開けた森林に生える。
多年草、根茎は細く匍匐性。茎は直立し、高さ20~35㎝、4角(かど)が太く、平滑、節は無毛または微細剛毛(hispidulous)がある。葉は4(~6)枚が輪生し、ほぼ無柄で、葉柄は長さ2㎜まで。葉身は乾くと紙質~革質になり、楕円形または楕円状長円形~卵形、長さ(12~)20~25(~28)㎜×幅(7~)10~11(~15)㎜、主脈に沿って無毛または微細粗毛(hirtellous)~微細剛毛があり、基部は±急に狭まり短い葉柄になり、縁には前向きの繊毛があり、先は鈍形~ほぼ鋭形、主脈は3~5本が掌状につく。花序は散形花序状の密錘花序状花序(thyrsoid)、多数の花がつく円錐花序であり、最上部の葉腋から出る頂生と側生の集散花序を持つ。花序柄は平滑で無毛。苞は狭倒披針形または楕円形~舌形、長さ1~3㎜×幅0.5~1.5㎜。小花柄は長さ0.5~1.5㎜。子房は楕円形、長さ約0.8㎜、無毛。花冠は白色、漏斗形、筒部は裂片とほぼ同長、直径4~5㎜。花冠裂片は4個で、楕円状長円形。分果は卵形、長さ1.7~2.8㎜、無毛、平滑。花期は7~9月。
25 Galium pedemontanum (Bellardi) All. コヨツバムグラ 小四葉葎
は南ヨーロッパおよび隣接する小アジア原産。英名はpiedmont bedstraw。USAに広く帰化している。2019年に宮城県で初めて確認された。
1年草、茎は高さ10~25㎝,単純または基部で分枝し、直立または斜上し、細く、4稜形で稜には下向きの短い小刺があり、茎の上部には中程度~密に開出する長い軟毛がある。葉は節ごとに4個輪生し、短披針形~楕円形、長さ4~7㎜×幅2~2.5㎜、先は鈍形~円形で先端に微突はなく、中脈が1本あり、上面と縁および下面の中脈に先が尖り斜上する長~中程度の長さの毛があり、縁と下面中脈の毛は上面の毛よりも長く目立つ。花序は腋生、葉より著しく小さく、長さ2~2.5㎜、花が1~数個つく。小花柄は長さ約1.5㎜、白色の長毛がある。花冠は帯黄色、長さ約0.5㎜。子房は長さ約0.5㎜、平滑、せいぜいザラつく程度。分果は2個、直径約1㎜、無毛、花後の小花柄は後屈する。
26 Galium pseudoasprellum Makino オオバノヤエムグラ 大葉の八重葎
synonym Galium manshuricum Kitag. エゾムグラ
synonym Galium davuricum Turcz. ex Ledeb. var. lasiocarpum (Makino) Nakai
synonym Galium dahuricum var. lasiocarpum (Makino) Nakai [Flora of China]
synonym Galium pseudoasprellum Makino var. bingoense Murata et Ezuka ビンゴムグラ
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(甘粛省、河北省、黒龍江省、河南省、江蘇省、吉林省、遼寧省、青海省、陝西省、山西省、四川省、雲南省)原産。中国名は东北猪殃殃 dong bei zhu yang yang。標高300~1100mの森林、牧草地、溝の側に生える。多年草。高さ50~100㎝。茎は枝分れし、つる状になる。茎には4稜があり、小さな逆刺がある。葉は長さ1.5~2.5㎝、幅5~10㎜、4~6個輪生し、倒被針形~楕円形で、葉の先は急に狭まり短い刺状になる。上部では4~5個輪生、下部では5~6個輪生し、花序のつく葉は小さくて幅が狭い。枝先や葉腋から分岐した細長い花序を出し、黄緑色の小さな花を緩く、多数つける。花序柄と小花柄は長い。花冠は直径約1.5㎜、4裂する。子房と分果には密に密着または開出する鉤状毛がある。果実は2分果、直径1.5~2㎜。花期は6~7月。果期は8~10月。
YListではエゾムグラ(Galium manshuricum Kitag.)とビンゴムグラ(Galium pseudoasprellum Makino var. bingoense)を分けているが、POWOでは異名としている。
(1) Galium manshuricum Kitag. エゾムグラ 蝦夷葎
synonym Galium davuricum auct. non Turcz. ex Ledeb.synonym Galium davuricum Turcz. ex Ledeb. var. manshuricum (Kitag.) H.Hara [The Plant List]
エゾムグラ(Galium manshuricum Kitag.)は北海道に分布する。オオバノヤエムグラ、ハナムグラと ダフリアムグラ(G.dahuricum)に似るが、花序がまばらで散開し、小花柄は長く糸状で、G.davuricumに最も近い。G.davuricum と比べ葉の先が一層とがり、葉の縁や茎の節にある後ろ向きの毛が長く、葉の上面の中肋上に太い前向きの毛があり、子房にはやや倒れた鉤状毛が密生する。オオパノヤエムグラ(Galiump pseudo-asprellum Makino) は茎が長くのびて他物にからみつき、枝上の葉はしばしば4~5出になり、花序は頂生又は肢生し枝先で大きいまばらな円錘状をなし、小花柄はしばしば不同長で小苞をつけ、花は淡緑色、子房と果実にはには常に開出する鉤状毛を密生していて、明らかにエゾムグラとは別種である。
(2) Galium pseudoasprellum Makino var. bingoense Murata et Ezuka ビンゴムグラ 備後葎
北海道、本州に分布する。オオバノヤエムグラによく似るが、全体にやや繊細。葉が茎の基部から4輪生するが、まれに茎の中部では5(6)輪生する。オオバノヤエムグラは上部の枝のみで4輪生する。
27 Galium shikokianum Nakai ウスユキムグラ 薄雪葎⇒クルマバソウ属
synonym Asperula trifida Makino [POWO] クルマバソウ属
日本固有種。本州(関東地方南部以西)、四国、九州に分布。別名はヒメムグラ。山地の林縁や疎林内に生える。
多年草、高さ10~40㎝。単性生殖。根茎は細く、長く横に這い、節から発根する。茎は直立し、細長く、四角(かど)があり、角に沿っても平滑で無毛、節で毛がある。葉は4まれに5輪生、広がり、非常に短い葉柄があり、楕円状長楕円形(楕円形~卵形)、微突のある鈍形または鋭形、基部が鋭形、膜質、前向きの小刺の縁毛があり、上面の縁に薄く細柔毛(pilose)があり、長さ6~17㎜×幅8㎜以下、下面は淡色、中緑には前向きの細柔毛がある。集散花序は散房状の円錐花序になり、長さ11~20㎝。枝は直立・開出する。花序柄は2回3分岐または2分岐し、無毛、直立・開出し、またはときに開後すぐに散開する。苞は線状長楕円形。小苞は通常小花柄よりも短い。花は小花柄があり、小さく、直径24㎜、白色。小花柄は細く(gracile)、花よりわずかに長いかまたは短い。花冠は白色、漏斗形、短い筒部があり、拡大部は3裂、まれに4裂し、裂片は直立・開出し、卵形、鈍形、3脈がある。雄しべは3本、まれに4本、花冠筒部の上部につく。花糸は短く、糸状。葯は卵状楕円形。花柱は直立し、花冠筒部よりもわずかに短く、先端で2裂する。柱頭は頭状。果実は無毛、分果はほぼ平滑、楕円形、長さ1㎜またはもう少し長い[Bot. Mag. (Tokyo) 17: 72 (1903)]。花期は6~7月。
ウスユキムグラは葉の形がヨツバムグラに非常に似ていて、誤認することがある。葉の下面脈上と葉縁にのみ細柔毛があり、ヨツバムグラでは葉の両面全体に粗毛が散生する。ウスユキムグラは花冠に短いが筒部があり(クルマバソウ属)、分果の表面が平滑。
28 Galium spurium L. ヤエムグラ 八重葎 広義
synonym Aparine spuria (L.) Fourr. in Ann. Soc. Linn. Lyon, n.s., 16: 397 (1868)
synonym Galium agreste var. leiospermon Wallr. in Sched. Crit.: 59 (1822)
synonym Galium aparine var. leiospermon (Wallr.) Westerl. in Bot. Not. 1863: 140 (1863)
synonym Galium aparine proles spurium (L.) Samp. in Fl. Port., ed. 2: 540 (1947)
synonym Galium aparine var. spurium (L.) Hiern [Flora Iberica]
synonym Galium aparine subsp. spurium (L.) Hartm. in Sv. Norsk Exc.-Fl.: 23 (1846)
synonym Galium aparine f. spurium (L.) B.Boivin in Naturaliste Canad. 93: 433 (1966)
synonym Galium aparine var. spurium (L.) Wimm. & Grab. in Fl. Siles. 1: 120 (1827)
synonym Galium spurium var. genuinum Gren. in J.C.M.Grenier & G.Gordon, Fl. France 2: 44 (1850), not validly publ.
synonym Galium spurium subsp. glabrum Gaudin in Fl. Helv. 1: 441 (1828), not validly publ.
synonym Galium spurium var. leiospermon (Wallr.) Hayek トゲナシヤエムグラ
日本、朝鮮、中国、台湾、モンゴル、ロシア、中央アジア、西南アジア、ヨーロッパ、アフリカ、北アメリカ原産。中国名は猪殃殃 zhu yang yang。英名はfalse cleavers。オーストラリア、USA、イギリスなどに帰化している。【Flora of Chinaの解説】
アフリカ、ユーラシア、地中海沿岸地域原産。海抜 4,600 m 付近の開けた野原、川辺、農地、山の斜面に生える。現在では世界中に散発的に出現する。この種は時折、薬用として使用される。
1年草、平伏またはよじ登り蔓性、高さ30~50㎝。茎は4角(かど)があり、直径0.5~2.5㎜、基部から±分枝し、角(かど)に後屈する刺(retrorsely aculeate)があり、節は無毛になる~細柔毛(pilose)がある。葉は茎の中央部に6~8個輪生し、ほぼ無柄。葉身は乾くと紙質になり、狭倒披針形~狭長楕円状倒披針形、長さ5~40㎜×幅1~5(~8)㎜、通常、上面には微細柔毛(pilosulous)または微細剛毛(hispidulous)があり、下面の中脈と縁に沿って後屈する小刺があり(retrorsely aculeolate)、基部は鋭形、縁は平らから薄く外巻きし、先は鋭形で短く微突形になり、葉脈は1本。花序は頂生および腋生、集散花序には2~数個の花がつく。花序軸は無毛~小刺がある。苞は葉状または無く、長さ1~5㎜。花序柄は長さ1~4㎝。小花柄は長さ0.5~15㎜、やがて長くなり、果実の真下で曲がることが多い。子房はほぼ球形、直径0.3~0.5㎜、鉤状の毛状突起があるかまたは無毛。花冠は黄緑色または白色、輻状花冠(rotate)、直径1~1.5㎜、2/3以上の深さに分裂し、裂片は4個、三角形~卵形、先が鋭形。分果(mericarp)はほぼ球形~広腎形、長さ1~3㎜、無毛、またはしばしば基部から真っすぐ(straight from base)長さ0.1~1㎜の鉤状毛(uncinate trichomes)に密に覆われる。花期は3~7月。果期は4~11月。
果実の鉤状毛の基部は疣状ではない場合は表面から真っすぐと表現され、分かり難いが、参考19に写真(Fig3a)が掲載されている。果実の表面は平らでなく低く盛り上がり、その頂部から出る鈎状毛の基部は幅広く、先は次第に細くなる。疣状の場合は疣から毛が出て、疣のすぐ上はほとんど幅が広くならない(Fig2I)。
Galium spurium は基本要素(2x および 4x、2n=20, 40)から構成される多形性倍数体複合体G. aparine グループまたは 広義(s.l.)のG. aparineである。Ehrendorfer ら (Fl. Iranica 176: 234. 2005) に従い、G. spurium は、特に花と果実の大きさの差別化特性に関して種レベルで維持され、Cufodontis (Oesterr. Bot. Z. 89: 245-247. 1940) および W. C. Chen (FRPS 71(2): 237. 1999) のように、高次倍数体および異数体 狭義(s.s.)のG. aparine には含められない。Galium spurium は、稀少で一部疑わしい G. aparine s.s. とは対照的に、中国では非常に一般的であり、広く分布している。我々の知る限り、G. spurium の中国個体群の染色体数はまだ入手できていない。しかし、Novosibirskのこの種の 2n=40 という報告 (Krasnikov & Schaulo, Bot. Žurn. 75: 118-120. 1990) は、アフリカで報告されている同様の 4x 細胞型に対応する 4x G. spurium 細胞型がアジアで発生していることを示唆している。
Cufodontisによって認識され、W. C. Chenによって受け入れられた変種のうち、Galium spurium var. tenerum は縮小した標本を指し、極端な条件下ではあらゆる場所で変異として現れる可能性があり、分類学的には無関係である。しかし、遺伝的に固定された縮小した高山の生態型として、変種に認められる: G. spurium subsp. ibicinum (Boissier & Haussknecht) Ehrendorferが南西アジアの高山から記載されている(Ehrendorfer ら、前掲: 236 を参照)。一部の凝縮した中国の高山標本はこの分類群に属する可能性がある。
対照的に、Galium spurium var. echinospermum 対 var. spurium (= G. aparine var. leiospermum) は、有鉤毛果実と無毛果実を持つ遺伝的に固定された形態を指し、西ユーラシアと地中海では同じ個体群内に共存することが多く、分類学的形態として区別できる。中国では echinospermum 型しか見られず、var. spurium は明らかに存在しない。W. C. Chen (loc. cit.: 237) による言及は、無毛果実の G. ghilanicum (そこを参照) に関するものである。東アジアにおける G. aparine-G. spurium 倍数体複合体のより詳細な分析が切実に必要であることは明らかである。※現在POWOではGalium spurium var. echinospermum Klett & Richt.はGalium spurium subsp. spuriumの異名としている。
Galium aparine と G. spurium の多様性は大きく、そのため Galiumの他の1年生植物や多年生植物と多くの同義語が作られ、誤認されることが多々ある。これは特に、果実が強くイボ状(ただし鉤状毛ではない)である1年草 ミナトムグラ(G. tricornutum)や、後向きの刺のある茎と鉤状毛のある果実を持つ多年草、松潘拉拉藤(G. sungpanense)、ダフリアムグラ(G. dahuricum)などでありこれはしばしば花が大きい。
【THE BIOLOGY OF CANADIAN WEEDS. 86.の解説】
子葉は小さく、長さ5~10mm×幅2~4mm。葉は線形、長さ12~62㎜×幅2.5~6㎜、[常に先端にノッチがあり、;これは子葉の記述の誤りか?]G. aparine の葉よりも薄い緑色で硬く、より粘着性(sticky)がある。葉の数は、最初の節の4枚から徐々に増え、上位の節では8枚、時ときに9~10枚になる。茎は200㎝まで伸び、G. aparine よりも硬く、ザラつき、枝分かれが多い。茎の太さは、基部の2㎜から上部の4㎜まで増加する。花は直径1~1.5㎜、花冠は淡黄色~黄緑色。花粉粒の極径は20µm (Moore 1975)。果実は2個のほぼ球形の分果からなり、平滑または鉤状の刺があり、気孔があり(stomated)、平均サイズ・幅1.5㎜×長さ2.5㎜、平均重量は2.8mg。分果の刺は長さ約0.2㎜、8または9細胞からなり、平らな表面(写真Fig3aではわずかに盛り上がる程度)から出る。刺の表面は数層の透水層があり、内側は中空である。分果が吸水すると刺は透明になる。染色体の基本数は X=10 であり、2n=20(2倍体)。アフガニスタン (Podlech および Dieterle 1969)、ブルガリア (Ancev 1914、Moore 1975 が引用)、スウェーデン (Fagerlind 1934、Moore 1975 が引用)、アルバータ (Malik および Vanden Born 1984) など、遠く離れた場所から報告されている。G. aparineとは異なり、倍数性は観察されていない[Malik et. Vanden 1987]。
【Flora of Pakistanの解説】
1年草、弱い植物。茎は細かくザラつく~無毛、4稜形。葉は4~6枚輪生し、楕円形、披針形または倒披針形、長さ1~3(~5)㎝×幅0.5~1㎝、先は鈍形または稀に鋭形、中脈と縁は後向きの小刺があり、縁は±外巻き、葉柄は±無い。花序は腋生および頂生、集散花序。枝は上部で散開し、1~7個の花がつく。花序柄と小花柄はほぼ真っ直ぐで、小花柄は長さ約5㎜、ときに果実の真下で鋭く曲がる。花冠は白色または緑黄色で無毛、長さ約1㎜、裂片は卵形、先が鈍形。果実は2分果、無毛または有毛、長さ2~3㎜、熟すと黒色(Flora of Pakistan)。
【Flora HelveticaのGalium spuriumの解説】
G. aparineに似ていが、茎はわずか長さ10~40(~75)㎝。葉はわずか幅1~3㎜。花は緑黄色~帯白色、直径0.7~1.5㎜と小さい。熟した果実は高さわずか1.5~3㎜、平滑または鈎状剛毛があり、鈎状剛毛はパピラの上に乗っていない。
【Malta Wild Plantsの解説】
茎は長さ10~100(~160)cm、這い、弱いからやや丈夫、後屈した小刺(retrorsely aculeolate)があり、節に普通毛がある。葉は長さ(5~)30~35㎜x幅2.5~4㎜、6-10枚が輪生し、狭倒披針形、長い芒のある先端に向かって次第に狭まり、上面には多少毛と剛毛(setose)があり硬く、やや外巻きした縁と中脈には後屈した小刺がある。花序は狭卵形~円筒形(稀に縮小する)。部分花序は1~7個の花が付き、葉より長い。花序柄と小花柄は開出し、真っすぐだがしばしば果実の真下に鋭く曲がる。花冠は直径0.8~1.3mm、緑黄色、無毛。花冠裂片は鋭形。果実は長さ2~3mm、密に剛毛があるか(setose)または無毛。花期は3~5月。2n=20。
【Flora Iberica のGalium spuriumの解説】
ユーラシア、地中海地域、マカロネシア(カナリア諸島)原産。アメリカ、イベリア半島、バレアレス半島の大部分に帰化している。標高150~2000mの荒地に生える雑草。土壌は選ばない。
茎は長さ(8)20~100(140)㎝×太さ0.4~1.7㎜、単純または分枝し、繊細またはやや丈夫。葉は長さ(5)17~35(57)㎜×幅(0.5)1~2.8(4.5)㎜、6~9輪生し、線形、線状倒披針形、または線状楕円形、先は長さ(0.3)0.5~1.8㎜の芒があり、下部は徐々に漸尖し、縁は平坦または外巻きし、葉脈は全体的に肥厚し、膜質またはほぼザラつき、基部の葉は倒披針形で先が鋭形、または倒卵形で先が鈍形である。花序は長さ6.8~75㎝、対生する複集散花序の対または節ごとに1個、または1~2個の花を持つ単純な集散花序によって形成され、苞を超えるかそれに等しい花序柄上にある。一次花序の苞は長さ(3)5~38(57)㎜×幅(0.4)0.75~3(4.5)㎜、葉状。小苞は長さ1~2.8(4.5)㎜×幅0.2~0.7(1.1)㎜。小花柄は長さ0.4~2.1㎜、果時には長さ0.8~4(12)㎜×太さ0.2~0.6㎜。花冠は直径0.6~1.7㎜、黄緑色。花冠筒部は長さ0.15~0.25㎜、花冠裂片は長さ0.5~0.9㎜。雄しべの花糸は長さ0.15~0.3㎜。葯は長さ0.15~0.25㎜。子房は長さ0.5~0.9㎜、長さ0.1~0.4(0.5)㎜の毛があり、非常にまれに無毛になる。花柱は長さ0.7㎜以下。分果は長さ0.75~2.1(2.7)㎜、長さ(0.15)0.3~0.6(1)㎜の毛があり、通常、基部に疣状突起があり、まれに無毛になる。2n =20, 44(Flora Iberica)。
非常に多形性の分類群であり、その中に3変種が認められる。
b₁ 変種 Galium spurium var. spurium (L.) Wimm. & Grab. トゲナシヤエムグラ
果実は無毛、分布は限定的である。b₂ 変種 Galium spurium var. vaillantii (DC.) W.D.J.Koch. ヤエムグラ
synonym Galium valiantii DC.果実に鉤状剛毛があるもの。
丈夫な植物が含まれる。茎の太さは0.9~1.7㎜、葉と苞は長さ(5)17~38(57)㎜×幅(0.5)1~3(4.5)㎜、通常、平坦。一般的に複数花の集散花序。分果は長さ2.1(2.7) mm以下。
b₃ 変種 Galium spurium var. aparinella (Lange ex Cutanda) Ortega Oliv.
synonym Galium aparinella Lange ex Cutandasynonym Galium aparinella Lange
synonym Galium tenellum Jord.
synonym Galium parisiense L.
最も繊細な変種である。茎は太さ0.4~1.1㎜。葉と苞は長さ3~10(20)㎜×幅0.4~1.4(1.7)㎜、線形または非常に狭い倒披針形、平坦またはより普通に外巻きし、脈と通常は肥厚した縁をもつ。花序は一般的に花が少なく(花は1~4個)、花は直径0.75~1.5(1.7)㎜。両方の変種の間には多くの移行形態がある。
【Flora of Victoriaの解説】
ビクトリア州、西オーストラリア州、南オーストラリア州、ニューサウスウェールズ州に帰化している。北アフリカ、ヨーロッパ、アジア原産。西部全域に散在する森林地帯や岩場に帰化している。
1年草、平伏またはよじ登る。茎は細く、ほとんどが長さ10~100㎝、基部にいぼのある後向きに曲がった毛が散在する線状にあり、毛は長さ0.1~0.4㎜。葉と托葉はほぼ無柄で、ほぼ等長、ほとんどが4~6個の輪生だが、中には5~6個、ときに7~8個の輪生のものもあり、倒披針形またはへら形、長さ(4~)8~30(~60)㎜×幅1~5(~8)㎜、先は尖鋭形または鋭形でたまに頂毛が生え、上面は無毛または中脈に沿って疎~散在する毛があり、下面は中脈に沿った毛を除いて無毛、縁は平らまたは反曲する。花序は花が1~3(~5)個つき、ほとんどが輪生の葉を超えない。花序柄は長さ4~15㎜。小花柄は長さ0.5~5㎜。花冠は直径約1.2㎜で、クリーム色または帯緑色。果実は凹んだ球形、長さ(1.2~)1.5~2.3mm。分果は腎形~ほぼ球形、互いに接しているが成熟すると離れ、黒褐色または赤褐色で、基部が疣状で先端が鉤状の毛がある。花期は主に春。
ヤエムグラ(Galium spurium)の下位分類
過去には学名にGalium spuriumを含めた広義のGalium aparine L.とされ、多数の亜種や変種に分類されてきた。U.S.A.ではvar. aparine、 var. echinospermum、 var. leiospermum、 var. tenerum.の4変種とされていた。染色体数のなどの研究の進歩により、狭義のGalium aparine L.からGalium spuriumは分離独立し、Galium spuriumは3変種、var. echinospermum(ヤエムグラ)、 var. leiospermum(トゲナシヤエムグラ)、 var. tenerum.とされた。その後、var. leiospermumはvar. spuriumとされた。var. tenerumは小型の標本であり、極端な条件下ではあらゆる場所で変異として現れる可能性があり、分類学的には無関係であり、Galium spuriumに含められる。果実に刺のあるヤエムグラは、日本ではGalium spurium var. echinospermonとされているが、POWOやFlora of Chinaでは掲載されず、Galium spurium var. echinospermumとされている。綴りの間違いと思われる。現在では果実に刺があるものと無いものは区別せず、subsp. spuriumに統合され、subsp. africanumとsubsp. ibicinumが追加され、3亜種とされた(POWO)。
Galium spurium の3亜種
28-1 Galium spurium subsp. africanum Verdc. ガリウム・スプリウム・アフリカヌム
synonym Galium uniflorum Quézelサウジアラビア、イエメン、シナイ半島、アフリカ原産。
1年草、高さ0.4~3.0m、茎は弱く、茎の角(かど)に反り返った刺がある。葉は6~8枚輪生し、線状披針形~倒卵形、先端は明瞭な±糸状の尖端があり、上面は無毛、下面は真っすぐな毛または巻き毛が散在し、中脈と縁には粗く反り返った刺がある。花は単生またはまれに花序柄上に対につき、果時の小花柄は長さ35㎜まで。花冠は直径2㎜まで、緑白色、花冠裂片は長さが幅より長く、尖る。雄しべは非常に短い。子房は帯緑色~帯白色、長さ0.8㎜まで、刺がある。花期は9~12月。果実は白色で疣状突起がなく、鉤状毛で覆われる。分果は球形で直径4㎜。
28-2 Galium spurium subsp. ibicinum (Boiss. & Hausskn.) Ehrend. ガリウム・スプリウム・イビキヌム
synonym Galium ibicinum Boiss. & Hausskn.synonym Galium linczevskyi Pobed.
アフガニスタン、イラン、イラク、パキスタン、タジキスタン、トルコ、トルクメニスタン、ウズベキスタン原産。南西アジアの高山に生える。矮性の高山型として遺伝的に固定されたと認められる(Flora of China)。
茎は直立し、二股に分枝し、四稜形、角に後屈する小刺がある。葉は6枚輪生し、倒披針形、長さ10~15㎜×幅2~4㎜、縁はわずかにザラつきがあり、先は漸尖形、微尖頭形。花序は二股に分岐し、集散花序は1花がつき、花序柄は長さ15~25㎜。花冠は白色。果実は幅約3㎜、長い鉤状の剛毛が密にある。(Flora of Pakistan)
28-3 Galium spurium L. var. spurium ヤエムグラ 八重葎 狭義
synonym Galium spurium var. echinospermum Klett & Richt.synonym Galium aparine aparine L. var. echinospermum (Wallroth) T. Durand
synonym Galium aparine var. echinospermum T.Durandsynonym Galium aparine var. glaber St.-Lag.
synonym Galium aparine f. leiocarpum Makino トゲナシヤエムグラ
synonym Galium spurium var. leiospermon (Wallr.) Hayek
synonym Galium spurium L. var. echinospermon (Wallr.) Hayek. ヤエムグラ(おそらく綴りの誤り)
synonym Galium spurium var. echinospermum (Wallroth) Hayek ヤエムグラ
日本全土、朝鮮、中国、台湾、モンゴル、ロシア、中央アジア、西南アジア、ヨーロッパ、北アフリカ、北アメリカ原産。中国名は猪殃殃 zhu yang yang 。英名は false cleavers , stickywilly。和名は何重にも重なって生えることから。茎や葉の刺で、衣服にひっつくのできらわれる。日本のものは花が直径1~1.5㎜、果実は長さ2~2.5㎜、逆刺があるとされている。1年草~越年草(秋に芽生えるものと、春芽生えるものがある、夏には枯れる)。高さ20~30㎝程度。茎は4稜形、長さ60~90㎝×幅0.5~2.5㎜、稜に下向きの刺が生え、節はほぼ無毛~長毛がある。葉は6~8輪生し、長さ10~30㎜×幅1.5~4㎜の広線形~狭倒披針形、輪生し、枝先では少なく、5個程度になる。輪生する葉の1対だけが十字対生する葉であり、他は托葉が変形したものである。これがこの属の特徴の1つである。葉の下部は漸尖形、縁は平坦または狭く外巻きし、先は鋭形で微凸形、針状(刺状)にやや下向きに尖る。葉の上面に先がやや曲がった微細剛毛があり、下面の縁と脈上に先が下向きに曲がった小刺があり、葉脈は1本。花序は頂生、腋生。(1)2~数個の花が集散花序につく。苞は葉状又は欠き、長さ1~5㎜。花序柄は長さ1~4㎝。小花柄は長さ0.5~15㎜。花冠は4裂し、直径1~1.5㎜、黄緑色~白色。花冠の下に2個の球をつけた形の子房がある。子房は長さ0.3~0.5㎜のほぼ球形、表面に先が鉤状に下向き(後ろ向き)に曲がった刺毛(鉤状毛)がある。雄しべは4本。分離果は2分果、熟すと、褐色になり、分果に分かれて取れやすくなる。分果は長さ2~2.5㎜のほぼ球形~腎形、鉤状毛は長さ0.1~1㎜、毛の基部は膨らまない[または膨らむ]。 種子は分果に1個ずつ入る。2n=20,40。花期は4~6月。
日本のヤエムグラはYListでは学名がGalium spurium L. var. echinospermon (Wallr.) Hayek.とされているが、この学名は日本でだけ使われ、POWOにはこの学名はなく、Galium spurium L.var. spuriumのsynonymとされているのはGalium spurium var. echinospermum Klett & Richt. であり、Flora of ChinaではGalium spurium L.のsynonymとしてGalium spurium var. echinospermum (Wallroth) Hayekが掲載されている。Galium spurium L. var. echinospermon (Wallr.) Hayek.は1953年のFlora of Japanにはすでに掲載され、これより前からechinospermonの綴りも使われていた。YListではトゲナシヤエムグラのsynonymとしてGalium aparine L. var. leiospermum (Wallr.) Cufod.としているが、POWOではGalium spurium var. leiospermon (Wallr.) Hayekである。
Galium spuriumは多様な倍数体 (2x and 4x, 2n=20, 40) の要素をもつ広義の G. aparine 集団に属し、G. aparine と G. spuriumは多くの変種があり、 同義語が多く、誤りも多い。Galium spuriumの特徴は花と果実の大きさの形態的な相違であり、染色体数に高い倍数性や異数性を含まない。Galium aparineは日本ではシラホシムグラと呼ばれるようになった。日本で確認されているシラホシムグラはヤエムグラに比べ、節間が広く、茎も太く、花が白色でやや大きく、葉の節の上下に白毛が密生する点で区別できるといわれている。茎の節に白毛があるのが特徴とされている。シラホシムグラとヤエムグラの確実な区別は果実の大きさと染色体数である。果実はシラホシムグラが長さ2~4(または2.5~4.5)㎜、ヤエムグラは長さ1~3㎜である。染色体数はヤエムグラは2n=20,40(x=10)、シラホシムグラは2n=22~88で主に64と66(x=11)である。解説ではシラホシムグラに黄緑色の花のものもあり、ヤエムグラにも花が白色のものがあるとされているが、Jepson eFloraではシラホシムグラは花冠が直径約2㎜、ほぼ白色で、ヤエムグラは黄色と区別している。ヤエムグラの花が淡色で白っぽく見えるものも見かけるが、採取して室内で見ると淡黄緑色が確認でき、花の直径と白さで判別できるものと思われる。Flora of Chinaではシラホシムグラの果実の鈎状毛の基部が膨らみ、ヤエムグラでは膨らまないされているが、Flora IbericaやFlora of Victoriaではヤエムグラの果実の鈎状毛の基部が膨らんでいるとの記載がある。これらの果実の記載でもヤエムグラの果実は小さく、長さ1~3㎜である。
【Flora of Japan 1953のヤエムグラの解説】
ヤエムグラの綴りがechinospermonとなっている。これ以前の1926年にもechinospermonが使われている。
(1) Galium spurium L.var. echinospermon (Wallr.)Hayek ヤエムグラ
synonym Galium aparine var. echinospermom (Wallr.) Farwell
synonym Galium vaillantii DC.
synonym Galium strigosum Thunb.
synonym Galium agreste var. echinospermon Wallr.
synonym Galium spurium var. vaillantii (DC.)Gaud.
以下はそれ以前の異名
synonym Galium aparine L. (T.Nakai 1909)
synonym Galium spurium L.var. echinospermon (Wallr.)Desp. (Florula Musashinoensis in 1926 1923/1924)
synonym Galium spurium L.var. echinospermum (Wallr.)Desp. in Fl. Sarthe 118 1838
synonym Galium agreste var. echinospermum Wallr. in Shed.Crit. 59 1822
ばらつきのある1年草または2年草。茎は長く、よく分枝し、後向きにザラつく。葉は6~8の輪生、狭倒披針形または広線形、長さ1~3㎝×幅1.5~4㎜、先は鈍形で短い芒状の先端になり、基部は徐々に狭くなり、縁と下面の中肋に後向きのザラつきがある。花序は花が少数、腋生および頂生。花は小さく、淡緑色、開出する小花柄につく。果実は鉤状の刺がある。 花期は5~7月。低地の草が茂った斜面、荒れ地、茂み、山の低地に生える。北海道、本州、四国、九州。沖縄。サハリン、朝鮮、中国、ヨーロッパ、アフリカ。(2) Galium spurium var. spuriums トゲナシヤエムグラ
synonym Galium agreste var. leiospermom Wallr.
synonym Galium aparine var. spurium (L.) Wimmer
以下はそれ以前の異名
synonym Galium agrine f. leiocarpum Makino in Bot. Mag. (Tokyo)17, 77 p117(1903)
synonym Galium aparine var. spurium Kochsynonym Galium agreste β var. leiospermum Wallr.
ユーラシア原産。
小果には刺が無い。典型的な段階で北海道に野生化しているかどうかは疑わしい。
29 Galium sungpanense Cufod. ガリウム・スングパネンセ
中国(河北省、四川省、新疆ウイグル自治区)原産。中国名は松潘拉拉藤 song pan la la teng。標高3300mまでの高地の茂みや牧草地に生え、日陰の場所が多い。
多年草、細く、柔らかい根茎を持つ。茎は平伏または斜上し、長さ30㎝まで、4角(かど)があり、±後ろ向き小刺(retrorsely aculeolate)~やや微細剛毛がある(hispidulous)かまたは平滑。葉は5~6枚まで輪生し、無柄または基部は狭まり非常に短い葉柄がある。葉身は乾くと緑褐色になり、硬い紙質~ほぼ革質、倒披針形または狭楕円状倒披針形、長さ3.5~12(~15)㎜×幅1.5~3.5㎜、無毛から±微細剛毛があり、縁に沿って疎~密に後ろ向きの小刺があり、ときには下面の中脈にもあり、縁は薄く外巻きし、先は鋭尖形、葉脈は1本。花序は頂生および腋生の集散花序で、1~3個の花がつき、披針形の苞がある。花序柄は長さ10㎜以下、無毛、平滑。小花柄は長さ2~7㎜、果時には真っすぐで長くなる。子房は倒卵形、長さ0.5~0.8㎜、未発達の鉤状毛で密に覆われる。花冠は帯ピンク色または帯紫色、輻状花冠(rotate)、直径1.1~1.5㎜、無毛、裂片は4個、三角形で先が鈍形。果実は分果が倒卵形、長さ約2.5㎜、黄褐色の長さ0.4~0.8㎜の鉤状毛に密に覆われる。花期は7~9月。
FRPS (71(2): 233. 1999) の Galium sungpanense の説明には、実際に観察された資料と一致しない詳細がいくつか含まれており、他の分類群の標本に基づいている可能性があり、これは上記の説明で修正されている。(Flora of China)
30 Galium taiwanense Masam. タイワンヨツバムグラ 台湾四葉葎
台湾北部原産。中国名は台湾猪殃殃 tai wan zhu yang yang。標高 200~2100mの山地の斜面に生える。
多年草、平伏する。茎は4角(かど)があり、まばらに細かくザラつく。主茎の葉は6枚以下が輪生し、無柄。葉身は乾くと紙質?、倒披針形または狭倒卵状長円形、長さ(4~)10~20(~31)㎜×幅(1~)2-4㎜、上面は無毛で平滑、下面は無毛、または毛があって中脈に沿って後向き刺があり(retrorsely aculeolate)、基部は鋭形~楔形、先は鋭形または尖鋭形、脈は1本。花序は頂生および腋生で、少数~数個の花があり、通常規則的に3分岐した集散花序につく。苞は線形で長さ約2mm。小花柄は細く、長さ3~5㎜。子房は卵形、長さ約0.7㎜、無毛。花冠は白色、輻状花冠(rotate)、直径2~2.5㎜、2/3以上まで裂け。花冠裂片は4個、卵形、先が鈍形。分果は楕円形、長さ約2㎜、無毛。花期は5~7月。果期は7月。
31 Galium takasagomontanum Masam. タカサゴムグラ 高砂葎
台湾原産。中国名は山地拉拉藤 shan di la la teng。標高約2800mの針葉樹の山地に生える。
多年草(一年草ではない)、直立し、高さ約30㎝。茎は4角(かど)があり、細く、よく分枝し、無毛。葉は4または5枚が輪生し、無柄。葉身は狭卵形または卵形、下面は脈に沿って毛があり、先は尖鋭形、主脈は1本、または2本で短く、弱い側脈がある。花序は頂生、少数の花の3分岐の集散花序をもつ。花序柄は無毛。小花柄は長さ1~2㎜、無毛。子房は卵状亜球形、長さ約1㎜、未発達の毛状突起がある。花冠は白色、車形、直径約3㎜、裂片は4個、鋭形。分果はほぼ球形、密に鉤状の毛状突起がある。花期と果期は7月。
32 Galium tarokoense Hayata タロコヨツバムグラ
台湾原産。中国名は太鲁阁猪殃殃 tai lu ge zhu yang yang。標高1400~2700mの石灰岩の基質の日陰の場所に生える。
多年草、平伏~直立し、密集し、高さ5~8cm。茎は4角(かど)があり、無毛、平滑。葉は4枚輪生し、無柄またはほぼ無柄。葉身は乾くと紙質になり、菱状楕円形、楕円形、または倒卵形、長さ3~6㎜×幅2~3.5㎜、無毛、基部は鋭形~楔形、縁は平らまたは薄く外巻きし、先は鋭形~やや鈍形、葉脈は1本。花序は頂生および腋生の集散花序、花は1個~少数つき、長さ0.3~1.5cm。花序柄は無毛、平滑、小苞は無い。小花柄は長さ0~2㎜。子房は倒卵形、長さ約0.4㎜、側面に密に小直剛毛がある(strigillose)。花冠は淡黄色、車形、直径約2㎜、裂片は4個、三角状長円形、鋭形。分果は楕円形、長さ1~1.5(~2)㎜、密に長さ約0.3㎜の伏した鉤状毛がある。花期と果期は夏~冬。
33 Galium tokyoense Makino ハナムグラ 花葎
synonym Galium davuricum Turcz. ex Ledeb. var. tokyoense (Makino) Cufod.
日本、朝鮮、中国原産。中国名は钝叶拉拉藤 dun ye la la teng 。川岸の湿った草地、湿原などに生える。多年草、直立又は斜上し、よじ登ラない。茎は高さ30~70㎝、4角(かど)があり、後ろ向きの小さい刺がある。中間の茎葉は5~6輪生し、ほぼ無柄。葉身は乾くと紙質、類へら形~倒卵形、長さ(11~)17~35(~40)㎜×幅(2.5~)3~7(~10)㎜、上面と下面の中脈と常に縁にほとんど後ろ向きの小さい刺(刺状毛)があり、基部は鋭形、先は円形~凹形、急に先端が尖り、脈は1本。花序は密集し、集散花序、頂生又は最上部の葉腋につき、花は数個~多数、長さ4㎝以下。花序軸は粗く又は無毛で平滑。苞は少数で小さく、下部の花序枝にだけつく。花柄は長さ1~2㎜。子房は倒卵形、長さ約0.8㎜、無毛。花冠は白色、車形、直径1.3~3.5㎜無毛。花冠裂片は鋭形~鈍形。分果は倒卵形、長さ約2㎜、無毛、平滑又はいぼ状(微突起がある)。花期と果期は6~7月。
34 Galium tricornutum Dandy ミナトムグラ 港葎
synonym Galium tricorne auct. non Stokes
中国、インド、パキスタン、南西アジア、ヨーロッパ、北アフリカ、北アメリカ原産。中国名は麦仁珠 mai ren zhu 。英名はcorn cleavers。静岡県、兵庫県で確認されている。
1年草、弱く斜上~平伏又はよじ登る。茎は高さ5~80㎝、4角(かど)があり、しばしば少し分枝し、無毛になり、密に後ろ向きの小さい刺(retrorsely aculeolate)が角の上にある。葉は6~8輪生し、ほぼ無柄。葉身は乾くと、紙質、狭倒披針形~狭楕円形、長さ10~32㎜×幅2~6㎜、無毛になり、上側は無毛、下側は中脈に密に小さい刺があり、基部は鋭形、縁には密に後ろ向きと前向きの小さい刺があり、先は鋭形、脈は1本。花序は長い密錘花序(thyrsoid,)、集散花序は頂生と短い側枝に腋生、ほとんど花が3~5個つく。花序軸に後ろ向きの小さな刺がある。苞は無いか又は葉状、長さ3~5㎜。花柄は長さ0.3~2㎜。子房は楕円形~双生(didymous)、長さ0.3~0.5㎜、平滑~いぼ状~小刺状。花冠は白色(~黄白色~緑白色)、輻状花冠(rotate)、直径1~1.5㎜、深さ2/3又はそれ以上分裂し、花冠裂片は三角形。分果は類球形、長さ約3㎜×幅4~6㎜、パピラがあり、疣状(verrucose)~こぶ状(tuberculate )になるが、けっして鈎状毛をもたず、弓なりの長さ7㎜以下の花柄で垂れ下がる。花期は4~6(9)月。果期は5~3月。
35 Galium trifidum L. ホソバノヨツバムグラ 広義
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ロシア、カザフスタン、トルコ、ヨーロッパ、北アメリカ、グリーンランド、アイスランド原産。中国名は小叶猪殃殃 xiao ye zhu yang yang。英名はthreepetal bedstraw。さまざまな高度の湿った場所に生える。Flora of Chinaには未収録。中国高等植物(HPC)2004に記載がある。
多年草。茎は多数、しばしばよく分枝し、細くて弱く、他の植物に絡みつく傾向があり、角(かど)に後向きのザラつきがあるか、またはときに本質的に無毛のこともあり、節には明瞭な髭がなく、葉は葉柄があり、ほとんどが4輪生、まれに5~6輪生し、葉身は線形~狭楕円形~長円形、先は鈍形~円形、1脈があり、長さ4~19㎜、しばしば縁には広がるザラつきがあり、ときには下面の中脈にもまたザラつきがあり、それ以外は無毛。花序柄は多数、腋生または頂生、通常1~3本が短い腋枝に房状に集まり、±長く曲がりくねり、しばしば長さ1㎝を超え、各花序柄には花が1(2)個つく。花冠は無毛、帯白色~ピンク色、幅1~1.5(~1.8)㎜、3深裂し、花冠裂片は幅が長さとほぼ同じかまたは長さより広い。果実は無毛、成熟すると分果は散開してほぼ分かれ、分果は幅は1~1.75㎜、小果粒、球形、硬く、無毛、平滑、乾燥すると黒くなる。2n=24。花期は(3)6~8月。
5亜種がある。
35-1 Galium trifidum subsp. brevipes (Fernald & Wiegand) Á.Löve & D.Löve
synonym Galium brevipes Fernald & Wiegand北アメリカに分布。 英名はlimestone swamp bedstraw。沼地、川や湖の岸、沼地に生える。
葉は対生、葉身は単葉、全縁、ほとんどが長さ5~8㎜×幅1~2㎜。小花柄は平滑、弱くまたは弓状で、直立または広がる。花冠は放射相称、3裂し、直径は0.8~1㎜。果実は長さ0.08~0.1㎜、熟して乾いても裂開しない。
35-2 Galium trifidum subsp. columbianum (Rydb.) Hultén ホソバノヨツバムグラ 細葉の四葉葎
synonym Galium columbianum Rydb.synonym Galium cymosum Wiegand
synonym Galium taquetii H.Lév.
synonym Galium trifidum var. brevipedunculatum Regel
synonym Galium trifidum var. pacificum Wiegand
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾、ロシア、北アメリカ原産。中国名は小叶猪殃殃 xiao ye zhu yang yang。英名はthreepetal bedstraw。水湿地に生える。
多年草。高さ10~50㎝。茎は細長く、直立または基部で地を這い、茎の断面は四角形で、稜にわずかに毛が生える。葉は各節に普通4個、まれに5~6個、輪生し、長さ7~14㎜×幅3~5㎜、先は尖らない。葉縁と葉裏の脈上に毛がある。小花柄は長さ1~8㎜。枝先の花序に2~5個の花をまばらにつける。花は白色、直径約2㎜。ヤエムグラ属の花冠は4裂するのが普通だが、ホソバノヨツバムグラだけ3裂、稀に4裂する。花冠の裂片は卵形、長さ約1㎜、幅約0.8㎜。雄しべ3個。花柱は長さ約0.5㎜、先は2裂する。果実はほぼ球形、直径1~2.5㎜、平滑、無毛、双生又は単生。2n=24(subsp. columbianum), 48(var. brevipedunculatum)。花期は6~8月。
35-3 Galium trifidum subsp. halophilum (Fernald & Wiegand) Puff
synonym Galium trifidum f. halophilum (Fernald & Wiegand) B.Boivin in Naturaliste Canad. 93: 433 (1966)
synonym Galium trifidum var. halophilum Fernald & Wiegand北アメリカ東部に分布。英名はsmall bedstraw。塩分の影響を受けた生息地に生息する。
植物は平滑または散在するザラつきがあり(scabrules)、わずかに多肉質。分離果は幅(2~)2.5~3.5(~5)㎜、小花柄は比較的太い。
35-4 Galium trifidum subsp. subbiflorum (Wiegand) Puff
synonym Galium subbiflorum (Wiegand) Rydb.Galium trifidum subsp. subbiflorum (Wieg.) Piper synonym Galium trifidum var. pusillum A. Gray
北アメリカ西部に分布。英名はthreepetal bedstraw。標高1700~3200mの山地の草原、湖の縁に生える。
矮性、房状またはマット状になる。茎は通常、高さ5~10㎝、長さ15㎝以下、無毛。葉は長さ4~10㎜、線状倒披針形~倒卵形、無毛。花は単生または1~4個が細い腋生の花序柄につく。花冠は3深裂し、裂片は広卵形で、斜上し、子房よりかなり長く、白色またはピンク色。2n=24。花期は6~9月。
35-5 Galium trifidum subsp. trifidum イトヨツバムグラ 糸四葉葎
ロシア、トルコ、ヨーロッパ、北アメリカ(全域)。グリーンランド、アイスランドに分布。英名はsmall bedstraw。塩分を含まない生息地に生息する。
茎と葉身に通常後向きのザラつきがあり、多肉質にならない。分離果は幅2~2.5(~2.8)㎜、小花柄は糸状である。
36 Galium trifloriforme Kom. オククルマムグラ 奥車葎
synonym Galium japonicum var. trifloriforme (Kom.) Nakai
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(黒龍江省、吉林省、内モンゴル、青海省)、ロシア原産。中国名は拟三花拉拉藤 ni san hua la la teng。標高2200~3400mの山地の森林、開けた野原に生える。
多年草、細い根茎から生える。茎は平伏~直立し、高さ(10~)25~40(~65)㎝、4角(かど)があり、大部分はわずかに後向きの小刺があり(retrorsely aculeolate)、節に微細粗毛がある(hirtellous)。主茎の葉は最大6(~8)個が輪生し、ほぼ無柄。葉身は乾くと紙質、帯黒色または緑色、狭倒卵形~倒披針形、長さ(12~)18~28(~50)㎜×幅(3~)5~10(~15)㎜、上面に前向きの微毛(microhair)がまばらにあり、下面に後向きの小刺が葉脈と葉縁に中程度にあり、基部は鋭形~楔形、縁は平らから薄く外巻きし、先は鋭形、鈍形、または円形で急に微突形になり、脈は1本。花序は腋生および頂生の集散花序で、上部の2または3節につき、ほとんどが2~8個の花をもち、花序軸は無毛、平滑。苞はないか少数で、狭楕円形~狭披針形で、長さ2~5㎜。小花柄は長さ約1.5㎜。子房は倒卵形、長さ約0.5㎜、密に微細剛毛があり(hispidulous)、毛状突起は発達していない。花冠は白色または淡緑色、輻状花冠(rotate:車形)、直径1.5~2㎜、無毛。花冠裂片は4個、三角形で鋭形。分果は楕円形、長さ1.5~2.5㎜、密に長さ約1㎜の鉤状の毛状突起があり、果時に小花柄は散開して長さ10㎜まで伸びる。花期は7~9月。
37 Galium triflorum Michx. ヤツガタケムグラ 八ケ岳葎
日本固有種(北海道、本州の八ケ岳)。林内に生える。
多年草、高さ20-40(-60)㎝。茎は傾伏して下部で横に広がり斜上し、4稜形、稜にはまばらに後ろ向きの刺がある。葉は通常6輪生し、葉身は狭長楕円形、長さ1~3㎝、先は白色のやや刺状になり、下面の中脈にまばらに後ろ向きの鉤状毛がある。花序は腋生および頂生の集散花序で花が2~4個つく。萼には鈎状毛がある。花冠は緑白色、直径約2mm、先は4裂する。雄しべは4本。子房は2室、各室に1個の胚珠がある。果実は直径1~1.5㎜。分果は2個、白色の鉤状毛が密にある。花期は7月。
38 Galium verrucosum Huds. イボミヤエムグラ 疣深山葎
ヨーロッパ南部原産。英名はwoodruff , warty bedstraw。
茎は高さ5~50㎝、直立~斜上、後ろ向きの小刺がありザラつく。葉は長さ5~17㎜×幅1.5~5㎜、 5~6(~7)輪生し、披針形、芒があり、上面は無毛、縁や中脈に後ろ向きのザラつきがあり、縁は外巻きしない。花序は長円形、部分的な花序はほとんど花が3個、葉より短い。花柄は長さ1~3㎜、花後に反曲する。集散花序の中央の花は両性、側部の花は雄性。花冠は直径(1~)2~2.5㎜、緑白色~白色、無毛。花冠裂片は鋭形。果実は淡緑色~わら色、球形、わずかに背腹が扁平、直径2~3㎜(長さ4~6㎜)、密に疣状突起に覆われる。へそは腹側にある。2n=22 。
39 Galium verum L. カワラマツバ 河原松葉 広義
synonym Galium floridum Salisb.
synonym Galium verum subsp. euverum Hyl.
synonym Galium verum var. typicum Rouy
日本、韓国、中国(安徽省、甘粛省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、江蘇省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、寧夏回族自治区、青海省、陝西省、山東省、山西省、四川省、新疆ウイグル自治区、西蔵、浙江省)、モンゴル、ロシア、インド、パキスタン、カシミール、カザフスタン、キルギス、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ(全域)、アイスランド、北西アフリカ(モロッコ、アルジェリア、チュニジア)原産。中国名は蓬子菜 peng zi cai。英名はlady's bedstraw。海抜0~4100m付近までの山地、草原、牧草地、河岸、開けた野原、溝の側、川岸、湿地、森林、茂み、谷間に生える。北アメリカに帰化している。
多年草、根茎と地下茎を持つ。茎は直立し、高さ(5~)15~70(~120)㎝、4角(かど)があり、密に微軟毛(puberulent)、微絨毛(villosulous)または微細粗毛(hirtellous)があり~稀に無毛で平滑。葉は茎の中央部に6~12枚が輪生し、無柄である。葉身は乾くと紙質~ほぼ革質、しばしば黒色になり、上面はやや光沢があり、下面はより色が淡色で、線形~線状長楕円形、長さ10~30(~50)㎜×幅1~2(~2.5)㎜、上面は無毛~密に毛があり、平滑~まばらに小刺がある(aculeolate)、下面は普通密に微軟毛~綿毛があり、まれに無毛になるかまたは無毛、基部は鋭形~楔形、縁は通常強く外巻きし、後ろ向きの小刺があり、先は鋭形で短い微突形で、先端は長さ1.5㎜以下、葉脈は1本。花序は密錘花序(thyrsoid)または円錐花序、頂生および腋生の集散花序には少数~多数の花がつき、やや密で、小苞がある。花序軸には通常密に微軟毛、微細粗毛があり、まれに無毛、平滑。苞は葉状±、長さ1.5~3㎜。小花柄は長さ1~3㎜。花は芳香があり、両性。子房は楕円形~ほぼ球形、長さ0.5~0.8㎜、無毛~密に毛が生え、直立する毛状突起がある。花冠は黄色~白色、輻状花冠(rotate)、直径約3㎜、無毛、3/4以上分裂し、裂片は4個、披針状長楕円形、ほぼ鈍形、鋭形~小突形。分果は楕円形で横に扁平、長さ1.5~2㎜、無毛~密に微細剛毛があり(hispidulous)、直立した毛状突起がある。花期は4~8月。果期は5~10月[Flora of China]。
カワラマツバ(Galium verum L.)の下位分類
多数の変種、亜種、品種に分類されてきた。Flora of Chinaでは8変種に分けている。現在はPOWOでは5亜種、1変種としているが、YListでは日本に分布する種を1亜種(subsp. asiaticum)だけとし、その下位を2変種(果実が無毛のvar. asiaticum , 果実が有毛のvar. trachycarpum)とし、さらに品種に分類している。【Flora of Chinaの8変種】
1 Galium verum var. asiaticum Nakai キバナカワラマツバ
synonym Galium verum subsp. asiaticum (Nakai) T. Yamazaki.日本、朝鮮、中国(安徽省、甘粛省、河北省、黒龍江省、河南省、湖北省、江蘇省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、山東省、山西省、四川省、浙江省 )、ロシアに分布。中国名は长叶蓬子菜 chang ye peng zi cai。
植物は丈夫で、高さ50~120㎝。葉身は長さ5~7㎝、上面は無毛、平滑。花冠は黄色。子房と分果は無毛。花期は6~8月。
2 Galium verum var. lacteum Maximowicz カワラマツバ 狭義
日本、朝鮮、中国(甘粛省、河北省、黒竜江省、吉林省、遼寧省、寧夏回族自治区、陝西省)原産。中国名は白花蓬子菜 bai hua peng zi cai。葉身は軟毛があり、上面はザラつく。花冠は白色。子房と分果は無毛。
3 Galium verum var. leiophyllum Wallroth ウスイロカワラマツバ
日本、中国(河北省、遼寧省、山東省)、ヨーロッパに分布。中国名は淡黄蓬子菜 dan huang peng zi cai。花は淡黄色。子房と分果は無毛。4 Galium verum var. nikkoense Nakai ニッコウカワラマツバ
日本、中国(山東省)に分布。中国名は日光蓬子菜 ri guang peng zi cai。葉身は無毛、上面は平滑。花冠は白色。子房と分果は無毛。
5 Galium verum var. tomentosum C. A. Meyer エゾノケカワラマツバ
日本、中国(甘粛省、河北省、黒龍江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、青海省、山西省、四川省、新疆ウイグル自治区)原産。中国名は毛蓬子菜 mao peng zi cai。葉身は軟毛があり、上面はザラつく。子房と分果には細柔毛(pilose)がある。花期は6~9月。
6 Galium verum var. trachycarpum Candolle エゾカワラマツバ
日本、朝鮮、中国(甘粛省、河北省、黒龍江省、河南省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、青海省、山西省、四川省、新疆ウイグル自治区、西蔵、浙江省)、ロシア、ヨーロッパ原産。中国名は毛果蓬子菜 mao guo peng zi cai。葉身は無毛で、表側は滑らか。子房と分果には細柔毛(pilose)がある。花期と果期は6~9月
7 Galium verum var. trachyphyllum Wallroth オオカワラマツバ
朝鮮、中国(安徽省、甘粛省、河北省、黒竜江省、河南省、江蘇省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、寧夏回族自治区、青海省、陝西省、山東省、山西省、四川省、新疆ウイグル自治区)、ヨーロッパ原産。中国名は粗糙蓬子菜 cu cao peng zi cai。葉身は軟毛があり、上面はザラつく。花冠は黄色。子房と分果は無毛。花期は5~8月。果期は8~9月。
8 Galium verum var. verum
日本、朝鮮、中国(甘粛省、河北省、黒龍江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、青海省、山東省、山西省、四川省、新疆ウイグル自治区、西蔵)、パキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。北アメリカおよびその他の地域に帰化。中国名は蓬子菜 peng zi cai。
葉身は通常1.5~3㎝、無毛、上面は平滑。花冠は黄色。子房と分果は無毛。花期は4~8月。果期は5~10月。
【中井(植物研究雑誌 1939)にGalium verumの11変種の検索表が掲載されている。】
1.果実は全く無毛
2.花冠は黄金色
3.花序は3~9花をつけ、葉より短い。茎は高さ20~40㎝、ほぼ直立し、上部は無毛~微毛があり、葉の上面は無毛。
……タカネカワラマツバ Galium verum var. japonalpinum Nakai(信州白馬山産の新変種)。後にキバナカワラマツバに含められた。POWOではGalium verum subsp. verumのsynonym?。
3.花序は長い円錐花序、葉より長い。4.葉の上面に刺~刺毛がある。茎は高さ50~120㎝。
……オオカワラマツバ Galium verum var. trachyphyllum Wallroth. ヨーロッパに分布し、満州、済州島にもある。
中国名は粗糙蓬子菜 cu cao peng zi cai。POWOではGalium verum subsp. verumのsynonym。
4.葉の上面は最初から無刺無毛5.茎葉は長さ3~5㎝、茎は高さ50~120㎝
……オオキバナノカワラマツバ(新変種) Galium verum var. asiaticum Nakai 朝鮮、中国、本州、九州に分布。
中国名は长叶蓬子菜 chang ye peng zi cai。ただし、葉は長さ5~7㎝まで。
5.茎葉は長さ1.5~3㎝。茎は高さ20~40㎝……キバナノカワラマツバ Galium verum var. praecox Nakai nom. illeg.[Láng ex Hagenb.] 欧州に広く分布し伊吹山、上高地、済州島にある。
Galium verum var. praecox Nakaiは現在では Galium verum subsp. verumのsinonymである。
=キバナカワラマツバ Galium verum var. luteum Nakaiは茎が無毛~上部で有毛、花冠が黄色、子房が無毛。北海道、本州、朝鮮に分布(植物研究雑誌 1920)
2.花冠は白色又は帯黄白色3.花冠は淡黄色または帯黄白色、葉の上面は無毛
…………ウスイロカワラマツバ(新称) Galium verum var. leiophyllum Wallroth.
本州、中国、ヨーロッパに分布。中国名は淡黄蓬子菜 dan huang peng zi cai。POWOではGalium verum subsp. verumのsynonym。
牧野博士のウスキカワラマツバの和名はそれよりも10年前に筆者の付けた別変種の和名と混同するため、改名した。
2.花冠は乳白色3.葉の上面には刺状の小突起または刺毛がある
…………カワラマツバ Galium verum var. lacteum Maxim. 日本(本州、四国)、朝鮮、中国に分布。中国名は白花蓬子菜 bai hua peng zi cai。
POWOではGalium verum subsp. asiaticum (Nakai) T.Yamaz.のsynonym。
3.葉の上面は、最初から無毛。…………ニッコウカワラマツバ(新変種) Galium verum var. nikkoense Nakai 日光の最も普通にあるから。中国名は日光蓬子菜 ri guang peng zi cai。
YListではカワラマツバに含めている。POWOではGalium verum subsp. asiaticum (Nakai) T.Yamaz.のsynonym。
1.果実は絨毛がある:POWOではGalium verum subsp. verumのsynonym2.花冠は黄金色
3.茎の上部には微毛またはやや毛がある。葉の上面は無毛。
…………エゾカワラマツバ Galium verum var. trachycarpum DC. 欧州に分布し、日本、朝鮮、中国、ロシア、サハリン、千島、ヨーロッパに分布。中国名は毛果蓬子菜 mao guo peng zi cai。POWOではGalium verum subsp. verumのsynonym。
3.茎は全部に密毛がある。葉の上面には小刺突起または刺毛がある。…………エゾノケカワラマツバ Galium verum var. tomentosum Nakai 北海道、千島、サハリン、中国に分布する。中国名は毛蓬子菜 mao peng zi cai。POWOではGalium verum var. tomentosum C.A.Mey. とし、Galium verum subsp. verumのsynonymとしている。
2.花冠は淡黄色または白色。3.花冠は淡黄色、葉の上面には小刺突起または刺毛がある
…………ウスキカワラマツバ(大正7年(1989)に中井命名発表済) Galium verum var. intermedium Nakai 北鮮と北海道に分布するが、1797年に発表した Galium ruthenicum Willd.(Galium verum subsp. verum)が同物だと欧州までにも分布することになる。
YListではエゾノカワラマツバに含めGalium verum L. var. trachycarpum DC. f. intermedium Nakaiとしている。POWOではGalium verum subsp. verumのsynonym。
3.花冠は白色、葉の上面には小刺突起または刺毛がある…………チョウセンカワラマツバ Galium verum var. album Nakai カワラマツバの果実に絨毛のあるものであって、従来は漠然とカワラマツバとして取扱っていた。北海道、本州の中部以北、北鮮にある。POWOではGalium verum subsp. verumのsynonym。
【Flora Japanの解説 1953】(1) Galium verum var. asiaticum Nakai キバナカワラマツバ 黄花河原松葉
synonym Galium verum L. var. luteum Nakaisynonym G. verum var. japonalpinum Nakai
北海道、本州、九州に分布。山地の草が茂った斜面に生える。花の色や毛は非常に変化に富む。
多年草。茎は直立し、上部でわずかに分枝し、特に節に短い毛がある。葉は8~10(~12)個の輪生、線形、長さ2~3cm、幅1.5~3㎜、先端に短い刺があり、下面に毛がある。花序は頂生および腋生、密に多数の花がつく円錐花序。花は緑白色~淡黄色、直径約2.5㎜。小果は楕円形、無毛。花期は7~10月。
(1)-1 Galium verum forma. luteornm Makino ウスイロカワラマツバ
花が淡黄色。
(1)-2 Galium verum forma. nikkoense (Nakai) Ohwi カワラマツバ
synonym Galium verum var. lacteum sensu. auct. Japan,,non Maxim.
synonym Galium verum var. nikkoense Nakai花は淡色、葉は上面が無毛。
(1)-3 Galium verum var. trachycarpum DC. エゾカワラマツバ 蝦夷河原松葉
synonym Galium verum var. ruthenicum Nakai北海道、本州に分布。山地の草地に生える。
子房は密に細柔毛がある。花は淡黄色。
(1)-4 Galium verum forma. album Nakai チョウセンカワラマツバ
花は白色。(1)-5 Galium verum forma. intermedium Nakai ウスキカワラマツバ
花はクリーム白色。(1)-6 Galium verum forma. tomentosum Nakai エゾノケカワラマツバ
アジア~ヨーロッパに広く分布。
全体に目立つ毛がある。
【その後記載されなかった変種】
(2) Galium verum var. asiaticum Nakai オオキバナノカワラマツバ
synonym Galium verum var. typicum Maxim.synonym Galium verum var. luteum Nakai in Tokyo Bot. Mag 34, 49 (1920)の一部
YListではキバナカワラマツバの別名としている。中国では长叶蓬子菜 chang ye peng zi cai、ただし、葉は長さ5~7㎝まで。茎は高さ50~120cm。上部は微軟毛または絨毛がある。葉は長さ3~5cm。花冠は黄色。子房は無毛。
(3) Galium verum var. praecox Láng ex Hagenb. キバナノカワラマツバ
synonym Galium luteum Lamarcksynonym Galium verum var. leiocarpum Ledebour
synonym Galium verum var. luteum Nakai in Tokyo Bot. Mag. 34, 49 (1920)の一部
synonym Galium verum var. luteum (La Marck) Nakai キバナカワラマツバ in Tokyo Bot. Mag. 34, 49 (1920)
北海道、本州、千島、朝鮮に分布。1920にはキバナカワラマツバとされている。YListではキバナカワラマツバの別名としている。茎は直立または基部で斜上し、通常は細い円柱形、無毛~上部は有毛、高さ20~40㎝。葉は長さ1.5~3㎝、下面には白色の毛がある。花冠は黄色。子房は無毛[J. Jap. Bot. 15: 344 (1939),1920]。
現在はGalium verum var. praecox NakaiはGalium verum subsp. verumのsynonym。
Galium verum L.の現在の下位分類
POWOでは5亜種、1変種に分類している。POWOでは狭義のキバナカワラマツバに狭義のカワラマツバを含めて(果実に毛にないもの)キバナカワラマツバ subsp. asiaticumとし、それ以外の日本で見られるものは広義のエゾノカワラマツバ Galium verum subsp. verumに含めている。果実に毛が無く、日本を分布域に含まないオオカワラマツバ(Galium verum var. trachyphyllum Wallroth. 粗糙蓬子菜 cu cao peng zi cai)はPOWOではGalium verum subsp. verumのsynonymとされている。
39-1 Galium verum subsp. asiaticum (Nakai) T.Yamaz. キバナカワラマツバ 黄花河原松葉
synonym Galium verum var. asiaticum Nakai in J. Jap. Bot. 15: 344 (1939) キバナカワラマツバ
synonym Galium lacteum (Maxim.) Pobed. in V.L.Komarov, Fl. URSS 23: 718 (1958)
synonym Galium verum var. lacteum Maxim. カワラマツバ 白花蓬子菜 bai hua peng zi cai 花は白色
synonym Galium verum f. lacteum (Maxim.) Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 34: 50 (1920)
synonym Galium verum f. nikkoense (Nakai) Ohwi in Bull. Natl. Sci. Mus. Tokyo 33: 86 (1953)
synonym Galium verum var. nikkoense Nakai ニッコウカワラマツバ 日光蓬子菜 ri guang peng zi cai
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(安徽省、甘粛省、河北省、黒龍江省、河南省、湖北省、江蘇省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、山東省、山西省、四川省、浙江省)、ロシア原産。中国名は长叶蓬子菜 chang ye peng zi cai。別名はカワラマツバ、キバナノカワラマツバ、ウスイロカワラマツバ、オオキバナノカワラマツバ標高100~1700m以下の山地の草原、開けた野原、河岸に生える。多年草、根茎と地下茎を持つ。茎は直立し、丈夫で、高さ(5~)15~70(~120)㎝、茎はヤエムグラ属には珍しく、断面が円形、密に微軟毛または絨毛があり~稀に無毛で平滑。葉は茎の中央部に6~10枚が輪生し、無柄である。葉身は乾くと紙質~ほぼ革質、しばしば黒色になり、上面はやや光沢があり、下面はより色が淡色で、線形~線状長楕円形、長さ10~30(~70)㎜×幅1~2(~2.5)㎜、上面は無毛、平滑またはザラつき~まばらに小刺がある(aculeolate)、下面は普通密に白色の微軟毛~綿毛があり、基部は鋭形~楔形、縁は通常外巻きし、後ろ向きの小刺があり、先は鋭形で短い微突形で、先端は長さ1.5㎜以下、葉脈は1本。花序は密錘花序(thyrsoid)または円錐花序、頂生および腋生の集散花序には少数~多数の花がつき、やや密で、小苞がある。花序軸には通常密に微軟毛、微細粗毛があり、まれに無毛、平滑。苞は葉状±、長さ1.5~3㎜。小花柄は長さ1~3㎜。花は芳香があり、両性。子房は楕円形~ほぼ球形、長さ0.5~0.8㎜、無毛~密に毛が生え、直立する毛状突起がある。花冠は黄色(キバナカワラマツバ 狭義)~緑白色~白色(カワラマツバ)、輻状花冠(rotate)、直径約3㎜、無毛、3/4以上分裂し、裂片は4個、披針状長楕円形、ほぼ鈍形、鋭形~小突形。分果は楕円形で横に扁平、長さ1.5~2㎜、無毛~密に微細剛毛があり(hispidulous)、直立した毛状突起がある。花期は(4)6~8月。果期は(5)6~10月。山崎(Fl. Japan 3a: 240. 1993)によると、Galium verum subsp. asiaticumにはGalium verumの日本型がすべて含まれ、より長い葉と粗毛がある(微細な軟毛ではない)茎によって典型的な亜種(subsp. verum)と区別される(Flora of China)。
39-2 Galium verum subsp. glabrescens Ehrend. ガリウム・ベルム・グラブレッセンス
synonym Galium bassitense J.Thiébautイラン、イラク、レバノン・シリア、トルコ原産。標高700~1800mの岩の多い斜面、低木林、耕作地に生える。茎、花序、葉の裏面が無毛になる~無毛の亜種。
有茎性の多年草、高さ(20~)50~120㎝。茎は一般に多数、直立または斜上、単枝またはまれに分枝、±円柱形で4本の隆起した線があり、無毛。葉は(6~)8~12輪生し、長さ(10~)15~30(~40)㎜×幅0.5~l(~2)㎜、倒披針状線形~ほぼ糸状、先は短い尖鋭形、縁は強く外巻きし、ザラつき、上面はわずかにザラつく~有毛、下面は無毛、乾くとしばしば黒色になる。花序は長楕円形~卵形、密、±葉があり、短くやや広がる枝があり、密に微軟毛があるか無毛。小花柄は長さ約1-2㎜、細く、果時に散開する。苞は長さ1~2㎜、披針形。花冠は黄金色、輻状花冠(rotate)、直径2~3.5㎜、裂片は卵状披針形、先は鋭形~短い小突形。分果は直径1~1.5 ㎜、細かい顆粒状、無毛ときに有毛。
39-3 Galium verum var. hallaensis K.S.Jeong & K.Choi ガリウム・ベルム・ハルラエンシス
synonym Galium pusillum Nakaisynonym Galium verum var. hallasanense M.Kim
朝鮮原産。済州島固有種。ハルラ山の水辺に生える。
高さ10~20㎝。茎は基部が平伏し、弱く、多数分枝し、細かい毛がある。葉は線形、主茎には各節に2枚の葉と5~9枚の托葉が輪生し、長さ6~8㎜、無毛、縁が外巻きする。枝では葉は6または4輪生し、長さ3~5㎜で無毛、縁が外曲する。花は黄色で小型、枝先に集まって円錐形の花序を形成する。花序柄は長さ2mm。花冠は直径2mm、4裂し、裂片は卵形、先が尖る。子房は無毛。雄しべは4本、長さ1㎜。、葯と雄しべの花糸は長さがほぼ同じで、花柱は2分岐し、無毛。柱頭は点状。果実は小型で、2個ずつつき、無毛。
39-4 Galium verum subsp. meridionale F.M.Vázquez & Crystal ガリウム・ベルム・メリディオナレ
スペイン原産。小川の縁に生える。多年草、下部の節は木質化し、通常は根を張り、多数の茎を出し、無毛~上半分に毛があり、2~3種類の毛状突起がある。毛の長さは短いものは0.01㎜まで。長いものは0.1㎜以下で、一部のものはほとんどが曲がった後ろ向きの毛で、長さ0.08㎜以下、乾くと帯灰色~わずかに粉白色、生え際は乾くと黒くなる。茎は長さ85㎝まで、直立し、単純、または短い枝があり、特に花序に近い上半分に枝がある。 葉は長さ(3)4~16(18)㎜×幅0.2~0.8(1)㎜、6~9(12)輪生し、真っすぐな線形、先の3分の1で直立し、中間3分の1で開出~後屈し、茎の基部3分の1で後屈し、縁は外巻きし、1本の明瞭な中脈があって下面で目立ち、上面と下面はザラつき、上面は明るい緑色、下面は帯灰色~わずかに粉白色、先には小突形がある(apiculate)。 花は円錐形の頂生の花序に集まり、線形~長楕円形、長さ(3)5~14(16)㎝、密。花は小花柄が長さ(0.4)0.6~1.3(1.5)㎜、剛毛があり、線状披針形の小苞が基部につき、長さ0.15㎜まで剛毛があり、先には長さ0.2㎜に達する突起(aculeus)がつく。花冠は直径1.5~2.5㎜、輻状花冠(rotate)、花弁は基部で融合し、成熟すると反り返り、花弁の先端は内側に曲がり、先端は長さ0.1㎜までの微突があり、通常花弁の下側には微細剛毛があり、毛は長さ0.05㎜以下、淡黄色~レモンイエロー。花冠筒部は長さ0.1~0.2㎜。雄しべは4本、後屈し、花糸はは花冠筒部に0.2~0.3㎜融着し、長さ(0.4)0.5~0.7㎜。葯は長さ0.2~0.4㎜、黄色。子房は長さ0.3~0.6㎜、卵形、通常は微細剛毛があり、毛は長さ0.03㎜以下。花柱は長さ0.5㎜以下。柱頭は球形。分果は長さ0.6~0.9㎜、ほぼ卵形、帯黒色、背に長さ0.03㎜以下の微細剛毛があり、他は平滑。花期は6~7(8)月。
39-5 Galium verum subsp. verum エゾノカワラマツバ 蝦夷の河原松葉
synonym Galium verum var. tomentosumm C. A. Meyer エゾノケカワラマツバ 毛蓬子菜 mao peng zi cai
synonym Galium verum var. trachycarpum DC. エゾノカワラマツバ 狭義 毛果蓬子菜 mao guo peng zi cai
synonym Galium luteum var. brachycarpum (DC.) St.-Lagsynonym Galium verum var. trachyphyllum Wallroth オオカワラマツバ 粗糙蓬子菜 cu cao peng zi cai 果実は無毛、ヨーロッパにも分布
synonym Galium verum var. leiophyllum Wallroth ウスイロカワラマツバ 淡黄蓬子菜 dan huang peng zi cai 果実は無毛、ヨーロッパにも分布
synonym Galium verum f. tomentosum (C.A.Mey.) Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 34: 50 (1920) エゾノケカワラマツバ 果実は有毛、ヨーロッパにな無い
synonym Galium verum f. album H.Hara in J. Jap. Bot. 10: 368 (1934) チョウセンカワラマツバ 花は白色
synonym Galium ruthenicum Willd.synonym Galium verum var. intermedium Nakai in Rep. Veg. Diamond Mountains: 185 (1918) ウスキカワラマツバ=エゾノカワラマツバ
synonym Galium verum var. japonalpinum Nakai in J. Jap. Bot. 15: 343 (1939) タカネカワラマツバ⇒キバナカワラマツバ
synonym Galium verum var. luteum (Lam.) Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 34: 49 (1920). キバナノカワラマツバ⇒キバナカワラマツバ
synonym Galium verum var. praecox Nakai in J. Jap. Bot. 15: 343 (1939). キバナノカワラマツバ⇒キバナカワラマツバ
※キバナノカワラマツバはキバナカワラマツバ変更され、Galium verum subsp. asiaticum (Nakai) T.Yamaz.のsynonymである。タカネカワラマツバとウスイロカワラマツバはキバナカワラマツバの別名とされる。オオカワラマツバは日本には分布しないが朝鮮、中国、ヨーロッパに分布し、果実が無毛である。Galium luteumの引用は、フランス産のタイプに基づくG. verumの古くから知られている同義語であり、W. C. Chen (引用元: 266) に従っている。Ehrendorfer et al. (引用元: 200–201) は、G. verum subsp. verum 内に、密度と毛の分布によって区別される2つの形態、すなわち無毛の子房と果実を持つ f. veruと、毛のある子房と果実を持つ f. subpubescensを認識したものである。したがって、彼らの f. subpubescens cor は、Cufodontis(引用元: 216–219)とW. C. Chen (引用元: 268–269) の var. tomentosum(エゾノケカワラマツバ)と var. trachycarpum(エゾノカワラマツバ) に対応する[Flora of China]。日本(北海道、本州)、韓国、中国(安徽省、甘粛省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、江蘇省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、寧夏回族自治区、青海省、陝西省、山東省、山西省、四川省、新疆ウイグル自治区、西蔵、浙江省)、モンゴル、ロシア、インド、パキスタン、カシミール、カザフスタン、キルギス、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ(全域)、アイスランド、北西アフリカ(モロッコ、アルジェリア、チュニジア)原産。中国名は蓬子菜 peng zi cai。海抜4000m付近までの山地の岩場、河岸、野原、溝の側、草原、牧草地、茂み、森林、海岸の草地などに生える。北アメリカおよびその他の地域に帰化している。 多年草、根茎と地下茎を持つ。茎は直立し、高さ20~70(~100)㎝、4角(かど)があり、密に微軟毛(puberulent)、微絨毛(villosulous)または微細粗毛(hirtellous)があり~稀に無毛で平滑。葉は6~12枚が輪生し、無柄である。葉身は乾くと紙質~ほぼ革質、しばしば黒色になり、上面はやや光沢があり、下面はより色が淡色で、線形~線状長楕円形、長さ10~30(~50)㎜×幅0.5~3㎜、上面は無毛~密に毛があり(エゾノケカワラマツバ)、平滑~まばらに小刺がある(aculeolate)、下面は普通密に微軟毛~綿毛があり、まれに無毛になるかまたは無毛、基部は鋭形~楔形、縁は通常強く外巻きし、後ろ向きの小刺があり、先は鋭形で短い微突形で、先端は長さ1.5㎜以下、葉脈は1本。花序は密錘花序(thyrsoid)または円錐花序、頂生および腋生の集散花序には少数~多数の花がつき、やや密で、小苞がある。花序軸には通常密に微軟毛、微細粗毛があり、まれに無毛、平滑。苞は葉状±、長さ1.5~3㎜。小花柄は長さ1~3㎜。花は芳香があり、両性。子房は楕円形~ほぼ球形、長さ0.5~0.8㎜、無毛~密に毛が生え、直立する毛状突起がある。花冠は黄色(エゾノカワラマツバ)~淡黄色(ウスキカワラマツバ)~白色(チョウセンカワラマツバ)、輻状花冠(rotate)、直径2~3㎜、無毛または有毛(シナノカワラマツバ)、3/4以上分裂し、裂片は4個、披針状長楕円形、ほぼ鈍形、鋭形~小突形。分果は楕円形で横に扁平、長さ1.5~2㎜、密に微細剛毛があり(hispidulous)、直立した毛状突起がある。花期は5~9月(日本では6~8月)。果期は6~10月。
39-6 Galium verum subsp. wirtgenii (F.W.Schultz) Oborny ガリウム・ベルム・ベルムウィルトゲニー
synonym Galium vernum var. wirtgenii (F.W.Schultz) Nymansynonym Galium wirtgenii F.W.Schultz
synonym Galium hypanicum Klokov
synonym Galium verum var. praecox Láng ex Hagenb.
synonym Galium verum subsp. praecox (K. H. Lang) Petr.
モンゴル、ロシア、ウクライナ、バルト諸国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、アルバニア、チェコスロバキア、フランス、ドイツ、オーストリア、ハンガリー、ポーランド、スイス原産。英名はWirtgen's Bedstraw。野原、牧草地、道端、荒れ地に生える。
多年草、群生する。根は長くよく枝分かれし、しばしば、木質の根茎を持つ。茎は硬くて真っ直ぐ、高さ30~80㎝、通常は分枝しないかまたはまばらに分枝し、通常は短い毛があり、または無毛、しばしば赤く膨れ、中央の茎部分は葉より1.5~2.5倍長い。葉と托葉は6~9個の輪生で多数つき、線形~線状披針形、先が尖り、縁が中脈まで巻き上がることはほとんどない。花序は頂生、まばらに分枝し、短縮した円筒形、花序の枝は通常節間より短く、小花柄は長さ1~2㎜。花冠は丸く、黄金色で、芳香は無く、約2/3分裂し、裂片は平開する。分果は腎形、表面に規則正しく並んだ疣状突起がある。2n=22。
YListのGalium verum L. subsp. asiaticum (Nakai) T.Yamaz.の分類
YListでは日本に見られるものをすべてGalium verum L. subsp. asiaticum (Nakai) T.Yamaz.に入れ、果実に毛にないものをvar. asiaticum、果実に毛のあるものをvar. trachycarpumに分類し、さらに花の色などで品種に細分類している。POWOではキバナカワラマツバに狭義のカワマツバを含めて(果実に毛にないもの)subsp. asiaticumとし、それ以外の日本で見られるものはGalium verum subsp. verumに含めている。果実に毛が無く、日本を分布域に含まないオオカワラマツバ(Galium verum var. trachyphyllum Wallroth. 粗糙蓬子菜 cu cao peng zi cai)はPOWOではGalium verum subsp. verumのsynonymとされている。(1) Galium verum L. subsp. asiaticum (Nakai) T.Yamaz. var. asiaticum Nakai f. lacteum (Maxim.) Nakai カワラマツバ 河原松葉 狭義
synonym Galium verum L. var. asiaticum Nakai f. nikkoense (Nakai) Ohwi
synonym Galium verum L. var. lacteum (Maxim.) Maxim. ex Makino in Bot. Mag. (Tokyo) 34: 49 (1920)
synonym Galium verum L. forma lacteum (Maxim.) Nakaiin Bot. Mag. (Tokyo) 34: 49 (1920)
synonym Galium verum L. var. nikkoense Nakai ニッコウカワラマツバsynonym Galium ruthenicum Willd.
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は 白花蓬子菜 bai hua peng zi cai 。当たりのよい草地、道端に生える。花が白色。子房・果実は無毛。
多年草。高さ30~80㎝。茎はヤエムグラ属には珍しく、断面が円形、直立する。葉は長さ2~3㎝の線形で、2個が対生し、同形の托葉がつき、6~10個の輪生となる。葉の上面は光沢があり、縁は下向きに曲がり、下面に短縮毛があり、先に短い刺がある。葉腋に円錐花序をつける。花冠は直径約2㎜、白色、4裂し、基部から平開する。花冠の下に2球を接したような丸い子房があり、子房は無毛。果実は直径1~1.5㎜、無毛。花期は7~8月。
(2) Galium verum L. subsp. asiaticum (Nakai) T.Yamaz. var. asiaticum Nakai f. luteolum Makino キバナカワラマツバ 黄花河原松葉 狭義
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ロシアに分布。別名はキバナノカワラマツバ、ウスイロカワラマツバ、オオキバナノカワラマツバ。日当たりの良い草地に生える。黄色花、子房無毛。多年草、高さ30~80㎝。茎はヤエムラ属には珍しく、断面が円形、直立する。葉は長さ2~3㎝の線形、2個が対生し、同形の托葉がつき、6~10個の輪生となる(ヤエムグラ属の特徴)。葉の下面に短毛が生え、茎にも細い毛が生える。葉腋から円錐花序を出し、多数の花をつける。花冠は直径約2㎜、黄色、4裂し、開出する。花冠の下の子房は無毛。果実は無毛。2n=44。花期は7~8月。
(3) Galium verum L. subsp. asiaticum (Nakai) T.Yamaz. var. trachycarpum DC. エゾノカワラマツバ 蝦夷の河原松葉
synonym Galium verum var. trachycarpum DC. 毛果蓬子菜 mao guo peng zi cai
synonym Galium verum var. intermedium Nakai ウスキカワラマツバ
synonym Galium verum L. var. trachycarpum DC. f. intermedium Nakai北海道、本州、南千島、朝鮮、中国、ロシア、サハリン、ヨーロッパにかけて広く分布する。中国名は毛果蓬子菜 mao guo peng zi cai。岩場や裸地、草地など日当たりの良い場所に生える。ヨーロッパでは根を赤色染料とし、茎の搾り汁をチーズ製造に利用した。
茎や葉には毛がある。花は黄色または淡黄色。子房、果実に毛がある。花期は6~7月。果期6~9月。
(4) Galium verum L. subsp. asiaticum (Nakai) T.Yamaz. var. trachycarpum DC. f. album Nakai チョウセンカワラマツバ 朝鮮河原松葉
synonym Galium verum var. album Nakaisynonym Galium verum L. var. lacteum auct. non Maxim
北海道、本州に分布。里や山地の乾いた草地に生える。
エゾノカワラマツバの花が白色の品種。子房有毛。
(5) Galium verum L. subsp. asiaticum (Nakai) T.Yamaz. var. trachycarpum DC. f. shinanense Hiyama シナノカワラマツバ 信濃河原松葉
花は白色、子房有毛。花冠に毛がある以外はチョウセンカワラマツバに一致する。茎は根元から毛が密生する。葉の上面には毛がある。花序には白い毛が生える。花冠は白色、外側には細柔毛(pilose)が生える。子房には絨毛がある。チョウセンカワラマツバの子房の毛は株によって長短があり、長いものでは 0.4㎜位のものさえときに見られるが、シナノカワラマツバの標本では0.15㎜位である。花柱は下部または中央よりやや下で 2岐するものが多いが、よきに上部で分岐するものも見られる。これらは同一品種中に起るばかりでなく、同一株でさえ不定のことが稀ではない。
(6) Galium verum L. subsp. asiaticum (Nakai) T.Yamaz. var. trachycarpum DC. f. tomentosum Nakai エゾノケカワラマツバ 蝦夷の毛河原松葉
synonym Galium verum L. var. tomentosum (Nakai) Nakai北海道、千島、サハリン、中国に分布する。中国名は毛蓬子菜 mao peng zi cai。
茎は全部に密毛がある。葉の上面には小刺突起または刺毛がある。花冠は黄金色。子房、果実に毛がある。花果期6~9月。
40 ハイブリッド
品種) Galium 'Victor Jones' (Giant Woodruff )
参考
1) Flora of ChinaGalium
Galium
Galium aparine
Galium
Observations on the Flora of Japan. (Continued from p. 62.) T. Makino
Galium japonicum Makino in Bot. Mag.,Tokyo, IX. (1895) p. 311
Planter nova Japonica e et Koreana IV.
119) Galium pusillum, NAKAI.
Notulæ ad Plantas Japoniæ et Koreæ, XXII
510) (a) Galium verum, LINNE var. luteum, (LA MARCK) NAKA p49-51
Planter nova Japonica e et Koreana IV.
中井猛之進: ホソバノキヌタソウとカワラマツバとの諸変種
原寛:ヨツバムグラ小記
檜山庫三: カワラマツバの一品、シナノカワラマツバ
新品種アケボノヤイ卜バナ(浅井康宏)
Galium verum var. asiaticum Nakai p831
原寛. 東亜植物註解(6) エゾムグラ
山崎 敬 ヤクシマムグラについて
Galium verrucosum
28. GALIUM Linnaeus, Sp. Pl. 1: 105. 1753.
Galium verum subsp. glabrescens.
アカネ科の日本新産帰化植物,コヨツバムグラ(新称)
Galium divaricatum Lam.
関口克己 シラホシムグラが出現!
Galium spurium L. False Cleavers
森田 弘彦:北海道に帰化したGalium mollugo L. カスミムグラについて
原 寛.東亜植物註解 (11) 43) トゲナシムグラ
Galium mollugo L.
ウスユキムグラ(アカネ科)Asperula trifida A.Gray p554