ミヤマムグラ 深山葎

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Flora of Mikawa

アカネ科 Rubiaceae プセウドガリウム属

学 名

Pseudogalium paradoxum subsp. franchetianum (Ehrend. & Schönb.-Tem.) L.E Yang, Z.L.Nie & H.Sun

 synonym Pseudogalium paradoxum (Maxim.) L.E Yang, Z.L.Nie & H.Sun 広義

 synonym Galium paradoxum Maxim. subsp. franchetianum Ehrend. et Schonb.

ミヤマムグラの花
ミヤマムグラの花
ミヤマムグラの花序
ミヤマムグラの葉
ミヤマムグラ
ミヤマムグラの葉脈
花 期 6~8月
高 さ 10~25㎝
生活型 多年草
生育場所 深山の陰地
分 布 在来種 日本全土
撮 影 稲武町 05.6.19
ミヤマムグラはアカネ科ヤエムグラ属からミヤマムグラ一種だけのプセウドガリウム属に変更された。日本の深山の林内に広く分布するものはPseudogalium paradoxum (Maxim.) L.E Yang, Z.L.Nie & H.Sunの日本の固有亜種(subsp. franchetianum)として分類されているが、亜種に分けず、広義に扱われることも多い。
 多年草。高さ10~25㎝。葉は4個(まれに3個または5個)輪生する。ただし、下部では2個対生となる。葉の向かい合った2個が小さく、2個が大きい。葉は長さ1~3㎝×幅5~20㎜の広卵形、基部が円形、先は鋭形、側脈は2~3対ありやや不明瞭、葉縁と縁近くの上面に短い剛毛があり、他は無毛。葉柄は明瞭、長さ4~12㎜。茎頂の短い花序に少数の花をつける。小花柄は太く、花時に長さ1~4㎜、果時に長さ6~7㎜になる。花は直径2~2.5㎜。花冠は白色、4深裂する。子房は鐘形または楕円状球形、鉤状毛が密にある。分果は楕円形、長さ約1.5㎜、密に白色の長い鈎状毛がある。花期は6~8月。
 基準亜種 Galium paradoxum subsp. paradoxum は朝鮮、中国、台湾、ロシア、インド、ネパール、ブータンに分布する。葉は長さ(10)12~30(40)㎜、幅(5)7~15(23)㎜の卵状披針形~卵形~広卵形。花冠の裂片の先は鈍形~ほぼ小突起形(subapiculate)~鋭形。果実には
 クルマムグラと同じような場所で見られる。クルマムグラは葉が6個輪生する。
 葉が4個輪生するキヌタソウは葉の3脈がはっきり見え、無柄。

プセウドガリウム属

  family Rubiaceae - genus Pseudogalium

 Galium属のほとんどのメンバーは、中国の分類群を含めて、Galium s.l. グループの他の属と混ざった3つの大きな系統群に分類される。例外は、Galium s.l. グループで最初に分岐した系統である Galium paradoxum Maxim. であり、これが新しい属(Pseudogalium L.-E. Yang, Z.-L. Nie & H. Sun, gen. nov.) として分割された。 この新属は、対生の葉と、2~4対の羽状側脈を持つ1本の主脈によって、他の Rubieaeの属から区別される。
 単一種の属である。

プセウドガリウム属の種

1 Pseudogalium paradoxum (Maxim.) L.E Yang, Z.L.Nie & H.Sun ミヤマムグラ 深山葎 広義

  synonym Galium paradoxum Maxim.
 日本全土、朝鮮、中国(安徽省、甘粛省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、吉林省、遼寧省、青海省、山西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア、インド、ネパール、ブータン原産。中国名は林猪殃殃 lin zhu yang yang。標高1200~4000mの森林、牧草地、水辺、日陰の(亜)高山の岩上に生える。プセウドガリウム属に分けられた(Yang Li-E 2018)。
 多年草、糸状の根茎から斜上する。茎は直立し、細く、高さ4~25㎝、4角(かど)に狭い翼があり、無毛、平滑、節だけにわずかに短毛がある。茎の中間の葉は対生し、葉状の托葉が4個輪生し、2個が明らかに小さい。下部の節では托葉は線形、長さ1.5~3㎜。葉柄は長さ1.5~10㎜。葉身は膜質、ほぼ円形~広卵形~卵状披針形、または楕円状長円形、長さ(5~)6~30(~40)㎜×幅(3.5~)5~15(~23)㎜、上面に散在する±伏した短毛があり、下面は無毛になり、基部は漸尖し、鈍形~切形、縁には前向きの微細剛毛の繊毛があり(hispidulous-ciliolate)、先は鋭形~円形、主脈は1本で、2~4対の羽状側脈がある。花序は頂生および上部の葉の葉腋に3~11個の花をもつ集散花序をつける。花序軸は3分岐し(trichotomous)、±散開する。苞は狭楕円形または舌形、長さ0.8~3㎜。小花柄は長さ1~3㎜。子房は卵形、長さ約0.5㎜、未発達の鉤状毛がある。花冠は白色で、輻状花冠(rotate)、直径2.5~3㎜、1/2~2/3まで分裂し、花冠裂片は卵形、先は鈍形~亜小突起形(subapiculate)~鋭形または尖鋭形。分果は卵形、長さ1~2㎜で、長さ0.8~1㎜の黄褐色の鉤状毛で密に覆われ、小花柄は太く長くなり、長さ11㎜まで伸びる。花期は5~8月。果期は6~9月。
 3亜種に分類されている。

1-1 Pseudogalium paradoxum subsp. duthiei (Ehrend. & Schönb.-Tem.) L.E Yang, Z.L.Nie & H.Sun

  synonym Galium paradoxum subsp. duthiei Ehrend. & Schönb.-Tem.
 中国(湖北省、四川省、西蔵省、雲南省)、インド、ネパール、ブータンに分布する。中国名は达氏林猪殃殃 da shi lin zhu yang yang。標高2700~4000mの日陰の(亜)高山の岩場に生える。
 葉は広卵形~ほぼ円形、長さ(5~)6~10(~17)㎜×幅(3.5~)4~7(~10)㎜、基部が切形。花冠の裂片は鋭形~尖鋭形。花期は7~8月。果期は7~9月。

1-2 Pseudogalium paradoxum subsp. franchetianum (Ehrend. & Schönb.-Tem.) L.E Yang, Z.L.Nie & H.Sun ミヤマムグラ 深山葎

  synonym Galium paradoxum Maxim. subsp. franchetianum Ehrend. et Schonb.

 日本固有亜種。日本全土に分布。深山の林内に生える。花が小さく直径2~2.5㎜、分果に白色の長い鈎状毛が密にある。
 多年草。高さ10~25㎝。葉は4個(まれに3個または5個)輪生する。ただし、下部では2個対生となる。葉の向かい合った2個が小さく、2個が大きい。葉は長さ1~3㎝×幅5~20㎜の広卵形、基部が円形、先は鋭形、側脈は2~3対ありやや不明瞭、葉縁と縁近くの上面に短い剛毛があり、他は無毛。葉柄は明瞭、長さ4~12㎜。茎頂の短い花序に少数の花をつける。小花柄は花時に長さ1~4㎜、果時にやや太くなり、長さ6~7㎜になる。花は直径2~2.5㎜。花冠は白色、4深裂する。子房は鐘形または楕円状球形、鉤状毛が密にある。分果は楕円形、長さ約1.5㎜、密に白色の長い鈎状毛がある。花期は6~8月。
1-3 Pseudogalium paradoxum subsp. paradoxum
  synonym Galium paradoxum Maxim. subsp. paradoxum
  synonym Galium stellariifolium Franch. & Sav.
  synonym Galium syreitschikowii Lipsch.
 朝鮮、中国(安徽省、甘粛省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、吉林省、遼寧省、青海省、山西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア、インド、ネパール、ブータンに分布する。中国名は林猪殃殃 lin zhu yang yang。標高1200~3000mの森林、牧草地、水域付近に生える。POWOでは日本を分布域に含めている。
 葉は長さ(10)12~30(40)㎜×幅(5)7~15(23)㎜の卵状披針形またはときに卵形~楕円状長円形。花冠は裂片の先が鈍形~ほぼ小突起形(subapiculate)。花期は5~8月。果期は6~9月。
 多年草、高さ4~25㎝。根茎は細く、匍匐茎を持つ。茎は直立または斜上し、4稜形、無毛。葉は膜質、下部の節に2枚対生する。上部の節に4枚(または5枚)輪生し、2枚は大きく、他の葉はしばしば托葉状に小さくなる。葉柄は長さ3~10㎜、下部では長く、上部に向かって徐々に短くなり、無毛またはまばらに細柔毛(pilose)がある。葉身は卵形~広卵形、長さ10~30㎜×幅5~20㎜、先は鋭形、基部は楔形~円形、短く漸尖し、葉柄になり、縁は全縁で、両面にまばらに毛があり、縁にも毛があり、羽状脈があり、目立つ中脈と2対の側脈がある。集散花序は頂生および上部の葉腋に付き、通常は3分岐し、長さ2~4㎝、枝はしばしば2分岐し(furcate)、少数の花が付き、各枝には2~3個の花をもち、花序柄は無毛。花は小さい。苞は線形で長さ1~2㎜。小花柄は花時に長さ1~2㎜、果時に長さ3~9㎜に伸び、無毛。萼(子房)は楕円形で長さ約1㎜、密に広がった長い鉤状の軟毛がある。花冠は輻状花冠(rotate)、白色、直径約2.5~3㎜、4(または5)裂し、裂片は卵形で鋭形、長さ約1.5㎜。雄しべは4本で、花冠裂片に互生し、花糸は短い。花柱は短く、長さ約0.7㎜、柱頭は2岐。子房は2室、密に開出する長い鉤状の細柔毛(pilose)がある。果実は乾燥しており、1 個または2個の分離果がある。分離果は球形、長さ約1.5~2㎜、密に開出する長い鉤状の細柔毛(pilose)がある(Taiwania 2010)。

参考

1) Flora of China
 Galium paradoxum Maximowicz
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=242422531
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Pseudogalium
https://powo.science.kew.org/taxon/77194055-1
3) Molecular Phylogenetics and Evolution Volume 126 p 221-232(2018)
 Molecular phylogeny of Galium L. of the tribe Rubieae (Rubiaceae) –
 Emphasis on Chinese species and recognition of a new genus Pseudogalium
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1055790317307674
4) Taiwania, 55(2): 192-194, 2010
 Galium paradoxum Maxim. (Rubiaceae), a Newly Recorded Plant in Taiwan
https://taiwania.ntu.edu.tw/pdf/tai.2010.55.192.pdf