マンテマ
Flora of Mikawa
ナデシコ科 Caryophyllaceae マンテマ属
英 名 | spotted catchfly, Mediterranean Catchfly, mother marm, five-wounded catchfly |
学 名 | Silene gallica L. var. quinquevulnera (L.) W.D.J.Koch synonym Silene gallica L. 広義 synonym Silene gallica subsp. quinquevulnera (L.) Syme synonym Silene gallica f. quinquevulnera (L.) W.D.J.Koch synonym Silene quniquevulnera L. |
花 期 | 5~6月 |
高 さ | 20~50㎝ |
生活型 | 1年草 |
生育場所 | 海岸、河川敷、市街地 |
分 布 | 帰化種 ヨーロッパ原産 |
撮 影 | 御津町大草海岸 07.5.27 |
高さは20~30㎝。全体に長毛と腺毛が混生する。葉は長さ1~3.5㎝×幅1~10㎜、倒卵形~長円状楕円形、短い腺毛と短い単純毛と長い多細胞の毛がある。下部の葉は先が幅が広く、へら形となる。花は直径約1㎝。萼は通常長さ7~10㎜、腺毛があり、果時に膨れ、10脈があり、脈はしばしば紫色を帯び、5歯がある。花弁は5個、白色またはピンク色で、中央部に大きな深紅色(dark crimson)のしみ(blotch)があり、縁は白色、ほぼ全縁、付属体は明瞭、直立する。蒴果は卵形、長さ6~9㎜、熟すと先が6裂(花柱の2倍数の歯)する。
1 Silene gallica L. マンテマ 広義
ヨーロッパ、西アジア、コーカサス、北アフリカ、マカロネシア原産。英名はsmall-flower catchfly ,small-flowered catchfly ,small catchfly, smallflowered catchfly, windmill pink ,common catchfly, five-wound catchfly , French catchfly。common catchfly, English catchfly, French catchfly, French silene, gunpowder weed, Mediterranean catchfly, spotted catchfly(var. quinquevulnera), windmill pink。世界中に広く帰化している。
1年草、直根は細い。茎は直立し、分枝し、まれに分枝せず、長さ(8)15~45(60)㎝、しばしば縮んだ長い毛があり、短毛が混じり、上部に粘る腺がある。葉は対生し(節に2個つき)、葉身は粗く、斜上するざらざらの毛が両面にあり、微突形。根生葉は少数、枯れ、葉身は倒披針形~葉柄のあるへら形、長さ0.5~5㎝×幅3~15㎜。茎葉の葉身は楕円状披針形~倒披針形~披針形、長さ1~7㎝×幅1~15㎜、先は鈍形~短い尖鋭形~鋭形。花序は開き、総状花序の枝をもち、節間と苞は普通、ほぼ、果時の萼と同長、長さ1~5㎜、上部は長い。小花柄は長さ10(20)㎜以下、直立~開出し、腺毛がある。花は直径5~8㎜。萼は10脈が目立ち、花時に狭い筒状卵形、果時に卵形、口部でくびれ、長さ6.5~10(12)㎜×幅3~5㎜、脈間は膜質、縁には歯があり、脈上には長さ約2㎜の関節のある剛毛があり、脈は平行、脈間に腺毛がある。萼歯は線形~披針形、長さ2~2.5㎜、先は緑紫色、鋭形。花弁は白色又はピンク色(var. gallica)、しばしば、暗色の斑点(blotch)があり(var. quinquevulnera)又は全体が暗ピンク色になり、爪部があり、長さは均等でなく、全縁または歯がある。爪部は萼と同長、拡大部は楕円形~倒卵形、分裂は有又は無、長さ6(7)㎜以下、副花冠の付属体は2個、長楕円形~狭披針形、長さ1~1.5㎜。雄しべは萼と同長又は短い。花糸の基部に毛がある。柱頭は3個、萼に含まれる。蒴果は長さ6.5~9㎜、円錐形、萼と同長、6個の反曲する狭三角形の歯をもつ。分果柄(carpophore)は1㎜より短く、有毛。種子は長さ0.5~0.7㎜×幅(0.5)0.8~1.2㎜、暗赤褐色、腎形、角(かど)があり、表面は凹面、裏面が平らまたはわずかに凸面状、放射状のうねをもち、外側の縁は広く、横方向のうねがあり、疣状突起がある。2n=24(n=12)。花期は5~6月。
1-1 Silene gallica L. var. gallica シロバナマンテマ 基本変種
ヨーロッパ原産。海岸、河川敷、市街地に帰化している。基本変種にあたり、花色が白色~ピンク色。和名はシロバナマンテマだが、ピンク色もよく見られる。1-2 Silene gallica L. var. giraldii (Gussone) S.M.Walters イタリーマンテマ
synonym Silene giraldii Gussoneイタリア、サルデーニャ島原産。別名はケナシマンテマ。マンテマと誤認されていた。関東以西に帰化している。道端などの日当たりが良く、定期的に草刈が行われるような草地に生える。
1年草又は2年草。高さ20~50㎝。マンテマによく似ているが、茎や葉や萼筒が無毛、上部の腺毛もなく、粘着しない。葉は対生し、葉身は広披針形、全縁、先は鋭形、基部は無柄で、茎を抱く。花は枝の上部に数個つき、直径約1㎝。萼は萼筒がやや痩長で筒状鐘形、濃色の脈があり、口部はくびれ、萼歯は小さな披針形。花弁は5個、紅紫色~ピンク色。花期は4~6月。
マンテマ属(広義)
family Caryophyllaceae - genus Silene1年草、2年草又は多年草、しばしば、基部で傾伏し、ときに叢生する。直根は細く、しばしば丈夫、深い。枝分かれするてい幹がしばしば有り、匍匐枝を出す種もあり、根茎をもつものもある。茎は単純又は分枝し、円柱形、ときに角(かど)張る。葉は対生又はたまに輪生、下部で合着し、葉柄が有(根生葉)又は無(ほとんどの茎葉)。葉身は1~5脈があり、線形~倒卵形~へら形、草質、先は鋭形~鈍形。花序は頂生、ときに、腋生、単純又は分枝し、ときに凝縮した集散花序、頻繁に花が少数~単数になり、頻繁に腺毛があり、粘る。苞は対につき、草質又は薄膜質、又は欠く。総苞は無い。花柄は直立、まれに花が無柄又はほぼ無柄。花は両性、ときに単性(まれに異株)。萼片は下部で合着し、萼筒になり、長さ(4~)10~28(~40)㎜、萼筒は緑色~帯白色~紫色、10~30脈があり、円筒形~鐘形~つぼ形~棍棒形~円柱形、しばしば、膨れ、膜質、まれに草質。萼片の間の継ぎ目に1脈があり、草質。萼片は緑色又は紫色、1~5脈があり、広三角形~槍状長楕円形~線形、普通、筒部より短く、縁は帯白色薄膜質、先は鋭形~鈍形。花弁は5個、白色~ピンク色~深紅色~くすんだ紫色~紫色を帯びた汚白色、爪部がある。爪部は普通、目立ち、ときに小さく、まれに欠き、耳は2個。副花冠の付属体は2個、様々な形又は切り裂かれる。拡大部は普通、突き出し、目立ち、倒披針形~倒卵形、先は2裂、ときに1~4個の線形の裂片又は不規則な歯に切り裂かれ、又は長毛縁、まれに全縁になる。蜜腺は花糸の基部につく。雄しべは10個、まれに小数又は無、しばしば2形になり、長い雄しべは花弁に対生し、分果柄=心皮間柱(carpophore)から花弁とともに生じる。花糸は基部近くで分離し、仮雄しべは無い(まれに雌花に10個、分果柄(carpophore)から花弁とともに生じる)。子房は1~3~5室。花柱は3又は5個、たまに4個(雄花では欠く)、糸状、長さ1.5~20㎜、下部は無毛。柱頭は3又は5個、たまに4個、線形、花柱の外面に沿い、パピラがある。蒴果は卵形~球形、縫合線に沿って3~5バルブに裂開し、しばしば、6~10個の等形の歯に分かれる。分果柄(carpophore)は普通、ある。種子は約(5~)15~100(~500+)個、帯赤色~灰色~黒色、腎形~球形、普通、いぼ又はパピラがあり、縁の周りのパピラはときに大きく、膨れ、ときに縁に翼があり、付属体は無い。胚は周辺にあり曲がる。x=(10)12。
世界に約800種あり、主に北半球に分布する。
【狭義のマンテマ属 Silene】
1年草、2年草又は多年草、まれに亜低木。茎は直立、斜上又は匍匐する。葉は錐形~線形~披針形~卵状披針形~楕円形。花は両性又は単性。不稔の雄花は両性花の株に頻繁に生じる。不稔の雄花はしばしば、両性花より著しく短い雌雄蕊柄(androgynophore)と花弁をもつ。花序は単出集散花序~2出集散花序~密穂花序~花が単生。萼は筒形~漏斗形~鐘形~卵形、普通、10脈があり、5歯をもち、縁は膜質で縁毛があり、縁の形は1個の萼の中で歯が変化する。花弁は5個、ときに爪部に耳がある。拡大部は全縁、2裂、4裂又は不規則に切れ込み、色は様々。副花冠の鱗片がある。雌雄蕊柄(androgynophore)は± 目立つ。雄しべは10個。子房は普通、基部に3又は5個の隔壁をもち、胚珠は多数。花柱は3又は5個。完全花では萼の口から雄しべと花柱は突き出る。蒴果は裂開し、普通、歯を6又は10個、まれに5個もつ。種子は腎形、小さく、±いぼがあり、ときに、外側に刺があり又は縁に翼がある。
世界に約600種あり、主に北半球の温帯に分布するが、アフリカや南アメリカにも分布する。
センノウ属 Lychnis
蒴果は胞間裂開(septicidal)、5歯。果時に花柱の基部は後屈、宿存する。
マンテマ属(狭義) Silene蒴果は胞背裂開(loculicidal)、(または、普通、胞間裂開)、6又は10歯。果時に花柱の基部は宿存しない。
マンテマ属の主な種と園芸品種
1 Silene acaulis (L.) Jacq. コケマンテマbasionym Cucubalus acaulis L.
ヨーロッパ、ロシア、北アメリカ原産。英名はcushion-pink , moss campion。
多年草、マット状、クッション状になり、ほぼ無毛。根は直根、丈夫。てい幹は多数、分枝し、木質になる。花茎は直立、下部に葉が多く、長さ3~6(~15)㎝、古い葉は基部に宿存する。葉はほとんど、根生し、密集し、覆瓦状、無柄。葉身は1(~3)脈があり、線状錐形~披針形、長さ0.4~1(~1.5)㎝×幅0.8~1.5(~2)㎜、縁は軟骨質、しばしば繊毛があり、特に下部に多く、先は鋭形、無毛又はざらつく。花序は花が単生。花柄は長さ2~40㎜。花は両性又は単性、全ての植物は雄花と雌花の両方をもち、他は雌花だけをもち、類無柄又は花序柄に単生する。萼は10脈があり、側脈は無く、筒形~鐘形、長さ(5~)7~10㎜、草質、縁はしばしば紫色を帯び、歯状、ときに縁毛があり、±薄膜室、無毛。萼片は披針形~卵形、長さ1~2㎜。花弁は明るいピンク色、まれに白色、拡大部は不分裂~浅く2裂し、長さ2.5~3.5㎝、基部は狭くなり爪部になり、耳と付属体は発達が悪い。雄しべは雄花では突き出し、雌花では短いか又は発育不全になる。花柱は3個。蒴果は3室、円筒形、額の長さと等しいか又は2倍以下、6個の反曲する歯が開く。分果柄(carpophore)は長さ約1㎜。種子は薄褐色、腎形、幅0.8~1(~1.2)㎜、光沢が無く、浅いしわがある。 2n=24。花期は初夏。
品種) 'Alba' , 'Blush' , 'Correvoniana' , 'Correvoniana' , 'Elliott's Variety' , 'Frances' , 'Francis Copeland' , 'Helen's Double' (d) , 'Modter Buse' , 'Mount Snowdon' , 'Pedunculata' , 'Plena' (d) , 'Saxatilis' , 'Select' , variegata (v) , 'White Rabbit'
2 Silene akaisialpina (T.Yamaz.) H.Ohashi, Tateishi et H.Nakai タカネビランジ 高嶺びらんじ
synonym Silene keiskei Miq. var. akaisialpina (T.Yamaz.) Ohwi et H.Ohashi
日本(南アルプス)固有種。高山の岩礫地や草地に生える。多年草、直立し、高さ10~20(25)㎝。根茎は長く横に這い、よく分枝する。花茎は下向きの細毛があり、上部には短い腺毛が混じる。葉は対生し、葉身は披針形、長さ1.5~4㎝×幅0.3~1㎝、縁に突起状の鋸歯があり、縁毛があり、先は鋭形で尾状にはならない。茎の上部と下部の葉は小さい。花は枝先に1(2)個つく。小苞は無い。萼は暗紫色を帯びることが多く、長さ1~1.5cmの筒形、10脈があり、密に腺毛があり、先は5浅裂し、萼片は狭三角形で細長い。花は淡赤紫色、まれに白色、直径3~4㎝。花弁は5個、花弁の舷部(拡大部)は倒卵形で先端は2浅~中裂し、裂片は円く、下部は爪部となり、爪部の先端に耳状の突起がみられ、両性花では花弁は長さ35~38mm、雌花では花弁は長さ24~28㎜になる。花糸は中部以下に密な長い毛がある。花期は7~8月。
2-1 Silene akaisialpina (T.Yamaz.) H.Ohashi, Tateishi et H.Nakai f. leucantha (Takeda) H.Ohashi, Y.Tateishi et H.Nakai シロバナタカネビランジ
synonym Silene keiskei Miq. var. akaisialpina (T.Yamaz.) Ohwi et H.Ohashi f. leucantha (Takeda) Ohwi et H.Ohashi
白花品種。
3 Silene alpestris Jacq. シレネ・アルペストリス ⇒Heliosperma alpestre (Jacq.) Rchb.
オーストリア、イタリア、ウクライナ、ユーゴスラビア原産。英名はAlpine catchfly。標高1200~2500mの開けた石が多く、通常は石灰質の場所に生える。ヘリオスペルマ属(Heliosperma)は種子の頭に冠毛(crest)があることによりマンテマ属と区別され、ヨーロッパに約10種ある。
多年草、株立ちになり、高さ12~20cmまたはそれ以上になり、細い根茎で広がる。葉はロゼット状になり、線状披針形~狭倒卵形、長さは3㎝以上になる。頂生の集散花序に花が6個までつく。花は白色、直径1~1.2㎝。花弁には4~6個の裂片状の歯があり、爪部には縁毛がある。よく栽培されている品種の'Flore Pleno' フローレプレノは花が白色の八重で、バラ状の花を咲かせ、S. alpestris よりも葉が狭く、花弁の爪部は無毛であり、Heliosperma pusillum (Waldst. & Kit.) Rchb. [syn. Silene pusilla] の系統の可能性がある。花期は5~8月。
品種) 'Flore Pleno' (d) , 'Starry Dreams'
4 Silene antirrhina L. ムシトリマンテマ
北アメリカ(USA、カナダ、メキシコ)原産。英名はsleepy catchfly。標高0~2300mの乾燥した砂地または砂利のある場所、道端、畑、荒地、開けた森に生える。しばしば、燃えた後に出現する。日本でも道端などに帰化している。
1年草。直根は細い。茎は直立し、単純または分枝し、細く、高さ80㎝まで、無毛から下向きの微軟毛があり、特に下部に多く、上部の節間はしばしば粘る。。葉は節ごとに2枚つく。葉身は基部に縁毛があり、先は鋭形~鈍形。根生葉の葉身は倒披針形、へら形。茎葉は狭倒披針形~線形、長さ1~9㎝×幅2~15㎜、ザラつきまたは毛があり、まれに両面が無毛になる。花序は集散花序、開き、枝は通常斜上し、数個~多数の花がつき、発育不全の株では1個の花がつく。花:成熟した萼には10脈が目立ち、鐘形~卵形、長さ5~9㎜×幅3~5㎜、縁には歯があり、無毛、脈は平行で、淡色の接合部がある。萼片は通常紫色、三角形、鋭形、長さ約1㎜。花弁は白色、しばしば暗赤色を帯び、まれに完全に暗赤色になる。拡大部は卵形で、通常は2裂し、長さ約2.5㎜、萼よりわずかに長く、まれに花弁が無くなり、爪部は狭く、付属体は長さ0.1~0.4㎜。雄しべは花冠から突き出ない。花柱は3本。柱頭も突き出ない。蒴果は萼の長さと等長、6個の歯で裂開する。分果柄(carpophore)は長さ1㎜未満。種子は鈍い灰黒色、腎形、直径0.5~0.8㎜、細かいパピラがある。2n=24。花期は春~晩夏。
5 Silene aomorensis M.Mizush. アオモリマンテマ 青森まんてま
日本固有種。本州北部の青森県然岳とその周辺地域(白神山地の一部)、秋田県男鹿半島、和賀山塊の限られた地域に分布する。垂直に切り立った岩壁に生える。名前は1968年に青森県の然ヶ岳の岩壁で発見されたことに因む。
多年草、高さ10~25㎝。茎は腺毛が密生する。葉は対生し、根生葉は倒披針形で両面とも無毛、縁毛がある。茎葉は両面とも無毛、狭披針形、長さ2~8㎝、先は鋭形、腺毛が密にあり、基部は茎を抱く。茎頂および上部の葉腋に花を2~5個つける。花は白色、直径1.5~2㎝。萼は淡緑色、腺毛があり、膨れた壺形、10脈があり、萼片は5個、小さな三角形。花弁は5個、楔形、先は2裂し、更に細かく不規則に分裂し、爪部は不明瞭。花弁の幅や分裂には変異がある。2n=72(6倍体)。花期は5~7月。
6 Silene aprica Turcz. ex Fisch. et C.A.Mey. ヒメケフシグロ 姫毛節黒
synonym Silene morii Hayata
synonym Silene aprica var. ryukyuensis T.Yamaz. リュウキュウフシグロ
synonym Silene aprica Turcz. ex Fisch. et C.A.Mey. var. ryukyuensis T.Yamaz.
synonym Silene oldhamiana Miq. ハマフシグロsynonym Silene aprica Turcz. ex Fisch. et C.A.Mey. var. oldhamiana (Miq.) C.Y.Wu
日本(本州の岡山県、四国の香川県、九州の福岡県、長崎県)、朝鮮、中国全土、モンゴル、ロシア原産。中国名は女娄菜 nu lou cai。高原、斜面、山地に生える。1年草または2年草、高さ30~70㎝、全体に密に灰色の毛がある。主根は丈夫で、わずかに木質化する。茎は直立し、単純または分枝する。根生葉は倒披針形または狭いへら形、長さ4~7㎝×幅4~8㎜、中脈が明瞭、基部は漸尖して長い葉柄になり、先は鋭形。 茎葉は倒披針形~披針形または線状披針形で、根生葉より小さい。小集散花序は柄がある。小花柄は直立し、長さ5~20(~40)㎜。苞は披針形、草質、縁毛があり、先は尖鋭形。萼は卵状鐘形、長さ6~8㎜、果時に長さ1.2㎝までになり、ほぼ草質、密に毛があり、縦の脈は緑色で、先で吻合する。萼歯は三角状披針形、縁は膜質、縁毛がある。雌雄蕊柄(androgynophore)は非常に短いか、廃れ、毛がある。花弁の爪部は下部に縁毛がある。拡大部は白色またはピンク色、倒披針形、長さ1~5㎜、萼と同等かそれよりわずかに長く、2裂する。副花冠の鱗片は舌形。雄しべと花柱は突き出ない。花糸は基部に縁毛がある。花柱は3本、基部に短毛がある。蒴果は卵形、長さ8~9㎜、萼と同等かそれよりわずかに長い。種子は灰褐色、球状腎形、長さ0.6~0.7㎜、肥厚、微細ないぼ状突起がある。花期は5~7月。果期は6~8月 。
ハマフシグロ(Silene oldhamiana)は浙江省から記載され、長さ4~5㎜のピンク色の花弁を持ち、独立種や変種とされたこともあるが、認められていない。台湾産のSilene morii Hayataは萼歯の形態の微妙な違いで区別されたが、認められていない。沖縄のヒメケフシグロは花柄が短く、果実も球状楕円形であり、変種のリュウキュウフシグロ(Silene aprica var. ryukyuensis)とされたが、認められていない。
7 Silene armeria L. ムシトリナデシコ 虫捕り撫子
ヨーロッパ、トルコ原産。英名はsweet William silene , garden catchfly。中国名は高雪轮 gao xue lun。和名の由来は花の下の茎の茶色の部分から粘液を出し、虫がくっつくことから。江戸時代末期に観賞用に導入され、帰化したもの。世界に広く帰化している。標高0~1200mの道端、荒地などで見られる。
1年生、ときに越年し、全体に無毛、±粉白色を帯び、ときに上部では粘る(花の下の茎の茶色の部分から粘液を出す)。直根は細い。茎は単純で、花序で分枝し、高さ(10~)20~40(~70)㎝。葉:開花前に根生葉が枯れ、葉身は披針状へら形、長さ2~5㎝。茎葉は無柄~抱茎、葉身は披針形~卵形または楕円形、長さ1~6㎝×幅5~25㎜、先は鋭形。花序は集散花序、苞がある。集散花序は頭状または細い枝先に花が集まって咲きます。 苞は槍状針状、長さ2~10㎜。小花柄は長さ0.1~0.5cm。花:萼は通常紫色を帯び、10脈があり、細長いこん棒形、先が5裂し、下部で狭くなり狭い筒になり、長さ13~17㎜×幅2.5~4㎜、やや膜質。萼片は卵状三角形、長さ約1㎜、先は鈍形。花弁はピンク色(まれに白色)、裂片はなく、拡大部は倒卵形、長さ約5㎜、基部の爪部は楔形、長さ6~8 mm、耳はなく、付属体は線形~披針形、長さ2~3㎜、先は鋭形。雄しべは10本、花弁の爪部よりわずかに長い。花柱は3(~4)本、突き出る。蒴果は長楕円形、長さ7~10㎜、6(または8)個の歯が広がって裂開する。分果柄(carpophore)は長さ7~8㎜、無毛。 種子は暗褐色、厚みのある腎状円形、直径約0.8㎜、厚さ約0.4㎜、しわがある。2n=24 (ヨーロッパ)。花期は5~6月(夏)。
品種) 'Aphrodite' , 'Electra' , 'Electra'
8 Silene baccifera (L.) Roth ナンバンハコベ 南蛮繁縷
synonym Cucubalus baccifer Linnaeus
synonym Cucubalus baccifer var. angustifolius L. H. Zhou
synonym Cucubalus baccifer var. cavaleriei H. Léveillé
synonym Cucubalus baccifer var. japonicus Miquel.synonym Silene baccifera var. japonica (Miq.) H.Ohashi & H.Nakai
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、河南省、湖北省、江蘇省、遼寧省、内蒙古、寧夏、陝西省、山東省、山西省、四川省、新疆ウイグル自治区、西蔵(チベット)自治区、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア、インド、ブータン、ネパール、カザフスタン、ヨーロッパ原産。中国名は狗筋蔓 gou jin wan。英名はJapanese berry catchfly。別名はツルセンノウ。薬用に使用される。森林の縁、低木林、草原に生える。
花の形が異国風という意味から南蛮と名がついているが、帰化植物ではない。三河では奥三河の山道沿いで見られる。ナンバンハコベ(var. japonica)とタカネナンバンハコベ(var. baccifera)に分けられていたが、現在では分類しない。
この種はナデシコ科の中で独特な、不規則に裂開する多肉質の漿果をつける。この種を別個の単型のナンバンハコベ属(Cucubalus)とする分類もある。
多年草。 根は白く、長い紡錘形で、断面は黄色。茎は短毛があり、つる状、茎と枝が広がると長さ50~150cmになる。葉柄は長さ3~5㎜。葉身は卵形、卵状披針形、または狭い楕円形、長さ1.5~5(~13)㎝×幅0.8~2(~4)㎝、紙質、両面の葉脈に毛が生え、基部は漸尖し、縁は全縁、縁毛があり、先は尖鋭形。 花はわずかに垂頭する(点頭ともいう:nutant:横向き~下向きにつく)。小花柄は長く、毛がある。萼は広鐘形(萼筒は半球形)、長さ9~11mm。萼歯は5個、卵状三角形で、萼筒とほぼ同じ長さで、縁毛があり、果時に平開~外巻きする。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ約1.5㎜。花弁は5個、離れてつき、倒披針形、長さ約15㎜×幅約2.5㎜、爪部は長くて狭く、拡大部(舷部)は途中で折れ曲がり、先が2裂する。雄しべ10本。花柱は3本、線形、雄しべと花柱は突き出ない。果実は漿果(baccate)、黒色、ほぼ球形、直径6~8㎜[長さ8~10㎜×幅6~8㎜]、多肉質、不規則に裂開する。種子は暗褐色~黒色、長さ1.7~1.9㎜×幅1.4~1.6㎜。花期は6~8月。果期は7~10月。2n=24。
9 Silene banksia (Meerb.) Mabb. ガンピセンノウ 岩菲仙翁
synonym Lychnis coronata Thunb. [Flora of China] センノウ属
synonym Silene sinensis (Lour.) H.Ohashi et H.Nakaisynonym Silene banksia (Dennst.) Mabb. f. verticillata (Makino) Yonek. クルマガンピ
朝鮮、中国(安徽省、福建省、湖南省、江蘇省、江西省、四川省(峨眉山)、浙江省)、ロシア原産。中国名は剪春罗 jian chun luo 。まばらな森林、低木のある草原に生える。薬用に使用され、栽培されている。日本、モンゴルに帰化している。多年草、高さ50~90cm、無毛。 根は叢生し、淡黄色、狭い紡錘形、わずかに肉質。 茎は1本、まれにまばらに叢生する。葉は卵状披針形、長さ(5~)8~15㎝×幅(1~)2.5㎝、両面とも無毛、縁に縁毛があり、基部は楔形、先は尖鋭形。2出集散花序に花が数個つく。小花柄は非常に短く、まばらに毛がある。苞は披針形、草質、縁に縁毛がある。花は直径4~5㎝。萼は筒形、長さ(2.5~)3~3.5㎝×幅3.5~5㎜、脈が目立ち、無毛、萼歯は長さ8~10㎜。花弁はサーモンピンク色、倒卵形、長さ(1.5~)2~2.5㎝、裂片がなく、先は不規則に切れ込みがあり歯状になる。爪部は萼を超えない。雄しべは突き出ない。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ1~1.5㎝。蒴果は狭い楕円形、長さ約2㎝。花期は6~7月。果期は8~9月。
クルマガンピ 車岩菲(f. verticillata)は葉が3輪生するもの。基本種に含められている。
品種) 'Haageana' , 'Lumina Mix' , 'Molten Lava'
10 Silene bungeana (D.Don) H.Ohashi et H.Nakai センノウ 仙翁
synonym Lychnis senno Siebold & Zucc. [Flora of China] センノウ属
synonym Silene senno (Siebold et Zucc.) S.Akiyama中国(安徽省、甘粛省、貴州省、河北省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、四川省、雲南省、浙江省)原産。中国名は剪红纱花 jian hong sha hua。標高100~2000mのまばらな森林、低木草原に生える。広く栽培されている。日本へは鎌倉時代末~室町時代初期に渡来した。
多年草、高さ50~100㎝、多細胞の腺の無い毛がまばらにある。 根は叢生し、淡い黄色、狭い円筒形、わずかに肉質。茎は1本、単純、または上部で分枝する。葉は楕円状披針形、長さ(4~)8~12㎝×幅2~3㎝、両面に毛があり、縁に縁毛があり、基部は楔形、先は尖鋭形。2出集散花序は花が多数つく。小花柄は長さ2~5(~15)㎜。苞は披針形、毛がある。花は直径は3.5~5㎝。萼は筒形~狭い漏斗形、長さ(2~)2.5~3㎝×幅2.5~3.5㎜、果時にわずかに膨らみ、脈に直軟毛がある。萼歯は三角形、長さ2~4㎜。花弁の拡大部は深紅色、三角状倒卵形、不規則に多数に深裂し、欠刻状の歯状裂片になり、爪部はしばしば萼を超え、狭い楔形、無毛。 雄しべと花柱は突き出ない。葯は暗紫色。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ1~1.5㎝。 蒴果は楕円形~卵形、長さ1~1.5㎝、萼筒から突き出る。種子は赤褐色、腎形、長さ約1mm、いぼ状突起がある。花期は7~8月。果期は8~9月。2n=24。
品種) 'Lumina Mix' , 'Lumina Salmon' , 'Molten Lava'
11 Silene caroliniana Walter シレネ・カロリニアナ
USA東部原産。英名はwild pink , Carolina campion。流通名はシレネ・ピンクパンサー又はシレネ・スパニッシュフラメンコ。
多年草、叢生し、直根は丈夫、てい幹は多数分枝し、木質。茎は斜上し、ほとんど分枝せず、高さ8~20(~30)㎝、柔らかい毛があり、柄のある腺が有又は無、まれに無毛。葉はほとんど根生し、葉柄があり、葉柄を含めて長さ3~12㎝。茎葉は2~4対つき、中部や上部の茎葉は無毛、短く、狭い。葉身は狭~広倒卵形、基部はへら形、翼のある葉柄に続き、先は鋭形~鈍形、両面とも無毛~微軟毛~軟毛があり、しばしば腺毛があり、少なくとも、葉柄には普通、縁毛がある。花序は花が(1~)3~15個つき、開き、苞がある。苞は葉状。花柄は斜上又は直立し、長0.2~0.8(~1.5)㎝、密に毛があり、頻繁に腺毛がある。萼は普通、緑色、目立つ8~10脈があり、狭い筒形、分果柄(carpophore)の周りの下部で狭くなり、長さ15~22㎜×幅5㎜以下、果時には幅が広く、棍棒形になり、軟毛又は腺毛があり、脈は平行、縫合部は淡色。萼片は円形、長さ1~3㎜、縁は普通、紫色を帯び、広く、膜質。花弁は広がり、普通、明るいピンク色、まれに白色、広倒卵形~狭倒卵形、萼の長さの2倍、基部は狭くなり、爪部になり、爪部は縁毛があり、萼の長さと同長又はわずかに長く、縁は全縁又は浅く分裂し、小円鋸歯状、耳は無い。付属体は長円形、分裂せず、長さ1.5~2㎜。雄しべは爪部の長さと同長。花糸は無毛。花柱は3(~4)本、最終的にはわずかに爪部を超える。蒴果は楕円形~倒卵形、長さ8~10㎜。種子は暗褐色、腎形状の球形、長さ1.3~1.5㎜、粗く、均等にパピラがある。花期は春。2n=48。
品種) 'Hot Pink' , 'Short & Sweet'
3亜種がある。
11-1 Silene caroliniana Walter subsp. wherryi (Small) R. T. Clausen
アラバマ州、カンザス州、ケンタッキー州、ミズーリ州、オハイオ州、バージニア州に分布。英名はWherry's pink 。標高0~500mの開けた、通常は石灰質の森に生える。
根生葉は葉柄に広い翼があり、葉身は狭倒披針形、普通、幅1.5~3㎝、先は鋭形、縁毛を除いてほぼ無毛。萼は長さ18~22㎜、長い。真っすぐな腺のない毛があり、毛は開出又は後ろ向き、白色、柔らかい。蒴果は長さ約10㎜。花期は春。
11-2 Silene caroliniana Walter subsp. caroliniana
ジョージア州、メリーランド州、ニュージャージー州、ノースカロライナ州、ペンシルバニア州、サウスカロライナ州、テネシー州、ウェストバージニア州に分泌。英名はCarolina wild pink。標高0~1000mの開けた、岩が多い、主に落葉樹林地帯に生える。
根生葉は葉柄に広い翼があり、葉身は倒卵形~広倒披針形、普通、幅1.5~3㎝、先は鈍形、両面に毛~類軟毛と腺毛があり、まれにほぼ無毛。萼は長さ15~18(~20)㎜、腺毛がある。蒴果は長さ約8(~10)㎜。花期は春。
11-3 Silene caroliniana Walter subsp. pensylvanica (Michaux) R. T. Clausen
コネチカット州、デラウェア州、ワシントンDC、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニューハンプシャー州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ノースカロライナ州、オハイオ州、ペンシルベニア州、ロードアイランド州、サウスカロライナ州、テネシー州、バージニア州、ウェストバージニア州に分布。英名はPennsylvania wild pink。標高0~1200mの開けた、しばしば砂利や岩が多い、主に落葉樹林に生える。
根生葉は葉柄にごく狭い翼があり、葉身は狭倒披針形、普通、幅0.5~1.5㎝、先は鋭形、両面とも無毛又はほぼ無毛(縁と下面の脈に毛がある)。萼は長さ15~18(~20)㎜、腺毛がある。蒴果は長さ約8(~10)㎜。花期は春。
12 Silene capitata Kom. タマザキマンテマ
synonym Melandrium capitatum Kom. ex Mori
朝鮮、中国(吉林省)原産。中国名は头序蝇子草 tou xu ying zi cao。
葉柄があり、葉身が広卵形~卵形、基部が円形~浅い心形、先は鋭形。花は淡赤色~紫色、花期は6~7月。
多年草、地下の器官はおそらく S. qiyunshanensisに似ている。茎は散在し、高さ20~40㎝、多数分枝し、絨毛が密生し、湾曲した毛が生える。葉は葉柄があり、広卵形または心状卵形、長さ約2㎝×幅1~1.5㎝、両面に湾曲した絨毛があり、基部は円形~浅い心形、先は鋭形で微小突起がある。花序は頭状。苞は草質で、最下の対は総苞を形成し、上部のものは披針形で小さい。小花柄は長さ2~4㎜、毛がある。萼は鐘形、長さ約8㎜、密に絨毛があり、まばらに腺毛があり、花後に膨れる。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ約1㎜、無毛。花弁は長さ1~1.2㎝。爪部は倒披針形、無毛、耳は目立たない。拡大部は淡赤色または紫色、倒卵形、2深裂~中裂以上になり、裂片は全縁。副花冠の鱗片はパピラがある。雄しべと花柱が明瞭に突き出る。蒴果は卵形、長さ約5㎜、萼より短い。種子は腎形。花期は6~7月。果期は8月。
Silene capitata、S. seoulensis(Silene yanoei)、および S. qiyunshanensis は、一緒になって非常に独特で独特の群落を形成し、その葉柄があり、心形の葉がこの属内で独特である。
13 Silene chalcedonica (L.) E.H.L.Krause アメリカセンノウ 亜米利加仙翁
synonym Lychnis chalcedonica Linnaeus [Flora of China] センノウ属
中国(新疆、甘粛省)、モンゴル、ロシア、カザフスタン原産。中国名は皱叶剪秋罗 zhou ye jian qiu luo 。英名はMaltese cross , scarlet-lychnis , croix de Jerusalem。USA,、カナダには野生化しているが偶発的(adventive)。標高0~300mの道端、荒れ地、開けた林地に生える。中国の庭園でも栽培されている。多年生、粗い、根茎があり、根茎は枝分かれし、丈夫。短い根茎からの不稔の矮性の腋芽が出る。茎は直立し、少数、分枝し、高さ50~100㎝、腺のない多細胞の剛毛がある。葉は基部がしっかりと無柄でつく。葉身は披針形~卵形、長さ5~12cm×幅2~6㎝、先は鋭形、両面にまばらにザラつく毛(直軟毛)があり、下面は縁と中肋にザラつく縁毛がある。根生葉は葉身が広へら形になる。花序は頂部の対の葉の間につき、ほぼ頭状(密集した散房花序状)で、2出集散花序に10~50個の花がつき、密集し、苞がある。苞は披針形、草質、縁毛がある。花は無柄~ほぼ無柄(小花柄は萼よりもはるかに短く、細い)、直径1~1.6(~2)㎝。萼は筒形または筒状棍棒形、萼には10脈があり、脈に直軟毛があり、花時に狭い筒形、果時にはこん棒形になり、長さ12~17㎜×幅約3㎜、縁は歯があり、萼歯は三角状披針形、長さ2.5~3㎜、粗い粗毛がある。花弁は緋色(橙赤色)で、ときに白色またはピンク色になり、爪部があり、爪部は萼に等しい。拡大部は広がり、倒卵形~広倒卵形、1/3まで深く2裂し、長さ6~11㎜、萼より短く、裂片は倒卵形で、それぞれに錐形の側歯がある。爪部は倒披針形、基部に縁毛がある。副花冠の鱗片(付属体)は筒状線形、先は鋭形、長さ2~3㎜。雄しべは萼に等しく、わずかに突き出る。柱頭は5本、萼に等しい。蒴果は卵形、長さ8~10㎜、5個の歯で裂開する。分果柄(carpophore)は長さ4~6㎜。種子は暗赤褐色、腎状円形、直径0.7~1㎜、鋭く尖ったいぼ状突起(粗いパピラ)があり、パピラは高さと幅がほぼ同じ。2n=24, 48. [モンゴル、ロシア]。花期は夏~秋。果期は秋。
品種) 'Alba' , 'Apricot' , 'Carnea' , 'Dawn Sky' , 'Dusky Salmon' , 'Lipstick' , 'Morgenrot' , 'Rauhreif' , 'Summer Sparkle'
14 Silene coeli-rosa (L.) Godron コムギセンノウ 小麦仙翁
synonym Lychnis coeli-rosa (L.) Desr.
synonym Eudianthe coeli-rosa (L.) Endl.
synonym Agrostemma coeli-rosa L.
synonym Viscaria oculata Lindl.
スペイン、フランス、イタリア、アルジェリア、モロッコ、チュニジア原産。英名はrose-of-heaven。観賞用に栽培されている。
1年草。直根がある。茎は1~数本、直立し、無毛、高さ(15~)20~45(50)㎝。葉は無毛またはまばらにザラつく縁毛があり、緑色、線形~狭い披針形、先は尖鋭形、無柄、対の葉が短く合着し、長さ(20~)40~100㎜×幅(1~)2~5(~10)㎜。花序は緩く、花が(1~)3~7(~15)個つき、不規則な2出集散花序。小花柄は長さ(2.5~)4~6(~10)㎝。苞は葉状。雌花;萼は無毛、中央で最も幅が広く、口部でくびれ、10脈が肥厚し、隆起し、長さ(15~)20~28㎜。萼歯は線状尖鋭形、直立・開出する(erecto-patent)。花弁はピンク色または白色~帯青色(乾燥すると青みがかかる)。拡大部は浅い凹形。爪部は分裂しない。副花冠の鱗片は鋭形、暗色、長さ約2㎜。花柱は5本、直立し、先で曲がり、長さ約10㎜。蒴果は狭卵形で、萼に包まれ、長さ(7~)15~20㎜、歯が5個あり、2裂する。分果柄(carpophore)は長さ6~8㎜。種子は暗灰褐色、腎形、いぼ状、長さ0.6~0.9㎜。[Flora of New Zealand]。花期は5~7月。
品種) 'Angel Blue' , 'Blue Angel' , 'Blue Pearl' , 'Cherry Blossom' , 'Oculata' , 'Patio Mixed' , 'Pink German Catchfly' , 'Ruby Flax'
15 Silene cognata (Maxim.) H.Ohashi et H.Nakai チョウセンマツモト 朝鮮松本
synonym Lychnis cognata Maximowicz [Flora of China] センノウ属
朝鮮、中国(河北省、黒竜江省、河南省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、陝西省、山東省、山西省、浙江省)、ロシア原産。中国名は浅裂剪秋罗 qian lie jian qiu luo。標高500~2000mの山の斜面、峡谷、森林、低木林、草原に生える。多年草、高さ30~90㎝、毛が生え、まばらに多細胞の腺のない毛が混在する。根は叢生し、紡錘形、わずかに多肉質。茎は単純であるか、上部で分枝する。葉は卵状披針形、長さ5~11㎝×幅1~4㎝、葉脈に密に直軟毛があり、基部は広楔形で、先は鋭形。2出集散花序は数個の花をつけ、ときに葉腋に花を単生する。小花柄は長さ3~12㎜。苞には緩く絨毛がある。花は直径3.5~5㎝。萼は狭い鐘形、長さ2~2.5㎝×幅3.5~5㎜、脈に緩い絨毛があり、果時にわずかに膨らむ。萼歯は三角形、長さ約3㎜。花弁は拡大部が橙赤色または帯赤色、2裂し、先は鈍形で、それぞれに錐形の側歯があり、主裂片は倒卵形、縁は全縁または不明瞭な小歯がある。爪部は萼からわずかに突き出し、無毛、基部は狭い楔形。副花冠の鱗片は暗赤色、先は歯状。雄しべと花柱はわずかに突き出る。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ8~10㎜。 蒴果は狭楕円状卵形、長さ約1.5㎝。花期は6~7月。果期は7~8月。2n=24。
16 Silene colorata Poir. シレネ・コロラタ
地中海沿岸地域原産。英名はpink pirouette , dwarf pink star , Mediterranean catchfly。観賞用に栽培される。
1年草。茎は高さ50㎝以下、基部で分枝し、斜上~傾伏し、白色を帯び、短毛~軟毛があり、腺は無い。葉は対生、長さ10~25㎜×幅1.5~8㎜、倒卵状へら形~長円状披針形~長円状線形、上部の葉はしばしば、線状披針形。花序は総状花序、花は少数、直径平均24㎜。萼は長さ11~19㎜、円筒形、果時にこん棒形、有毛、萼歯は5個、卵形、縁毛がある。花冠はピンク色~帯紫色~白色、高杯形、5裂し、平開して花弁状になる。花弁は2裂し、裂片は線形、花弁の基部に明瞭な爪部がある。副花冠の鱗片(coronal scale)は倒披針形、鈍頭。子房上位。分果柄(carpophore)は蒴果の長さより長い。蒴果は横周裂開(circumscissile)、ほぼ球形。種子は腎形、長さ約2㎜×幅約1㎜、背に翼又は深い溝があり、平ら~細かい疣がある。品種名のpirouetteはバレエのつま先旋回。花期は3~4月。[Malta Wild Plants]、[Flora of Pakistan]、[Global Plants on JSTOR]
品種) 'Dwarf Pink Star' , 'Pink Pirouette' ピンクピルエット
17 Silene conica L. ヒメシラタマソウ 姫白玉草
ヨーロッパ、西アジア、コーカサス、中央アジア、北アフリカ原産。英名はconical catchfly , sand catchfly , striated catchfly。
1年草、直根性。 茎は1~数本、直立または斜上し、密に毛が生え、非常に短い腺毛と腺の無い毛があり、高さ(5~)15~50㎝。葉は密に短毛があり、線形または線状披針形、先は鋭形、無柄、長さ(10~)25~70(~100)㎜×幅1~7㎜。上部の葉は合着し、長さ10~50(~75)㎜×幅1~5㎜。花序は花が1~7個つき、非対称の2出集散花序。小花柄は長さ3~30㎜。苞は卵状尖鋭形、緑色、短い腺毛と腺の無い毛がある。雌花:萼には短い腺毛と腺の無い毛が密生し、花時は円筒形、果時は卵形、切形の基部近くで最も幅が広く、口部で収縮し、長さ10~15㎜、脈は30本あり隆起する。萼歯は錐形、直立して開出する。花弁はピンク色。拡大部は非常に短く、2裂し、爪部は幅広で、拡大部の基部が裂ける。副花冠の鱗片は長円形、鈍形、長さ約0.5㎜。花柱は3本、直立し、長さ約10㎜。蒴果は卵形で萼に包まれ、長さ7~10㎜、歯は6個。分果柄(carpophore)は無いかまたは非常に短い。種子は淡い鈍い褐色、扁平な腎形、鈍いいぼがあり、長さ約0.9㎜[Flora of New Zealand]。
17-1 Silene conica subsp. conica
ヨーロッパ、西アジア、コーカサス、中央アジア、北アフリカ原産。英名はconical catchfly , sand catchfly , striated catchfly。標高0~300mの乾燥した砂地または砂利の荒地、道端、牧草地、耕地に生える。
1年草。直根は細い。茎は直立または傾伏し、単純または基部で分枝し、長さ15~50㎝、粗く微軟毛があり、上部に有柄の腺がある。葉:下部の対の葉は合着し、葉身は1~3脈があり、線形~狭い披針形または倒披針形、長さ2~5 cm ×幅1.5~6 mm、先は鋭形。根生葉の葉身は倒披針形になる傾向があり、やや幅が広く、両面に粗く微軟毛がある。花序は花が1~13個つき、苞がある。苞は狭い披針状尖鋭形、長さ20㎜まで。小花柄は斜上し、長さ1~3㎝、有柄の腺があり、微軟毛がある。花は直径10~12㎜。萼は明瞭に約30脈があり、臍状に窪み(umbilicate)、花時に狭い円錐形で、果時に円錐状卵形になるがほとんど膨らまず、長さの1/3まで裂け、萼片は5個、狭く先が尖鋭形で長さ約5㎜あり、萼は長さ8~15㎜×幅5~7㎜、微軟毛があり、腺は有または無、脈は平行。花冠は目立ち、ピンク色、稀に白色または暗赤色、爪部があり、萼片をはるかに上回り、爪部は長さ約1.5㎜、萼と同長、拡大部は浅く2裂し、長円形、長さ3~6㎜、付属体は2個、長さ1~2㎜。雄しべは萼と等しい。柱頭は3本、萼に等しい。蒴果は卵形、長さ8~10㎜、狭い開口部を持ち、6個の歯で裂開する。分果柄(carpophore)は長さ1㎜未満。 種子は暗褐色、腎形、幅0.6~0.9㎜、いぼ状突起がある。2n=20 (ヨーロッパ)。花期は夏(FNA)。
17-2 Silene conica subsp. conomaritima D.Jord. & P.Pan.
synonym Pleconax conica subsp. conomaritima (D.Jord. & P.Pan.) Šourková
ブルガリア原産。18 Silene conoidea L. オオシラタマソウ 大白玉草
中国(新疆、西蔵)、モンゴル、中央アジア、西アジア、コーカサス、ヨーロッパ(フランス、スペイン)、北アフリカ(アルジェリア、エジプト)原産。中国名は麦瓶草 mai ping cao 。英名はlarge sand catchfly。薬用に使用される。
1年草、高さ25~60㎝、短い腺毛が生える。主根はわずかに木質化する。茎は単生、直立し、単純。根生葉は長円形~線状披針形、茎葉は線形または披針形、長さ5~8㎝×幅5~10㎜、毛があり、縁には縁毛がある。二花集散花序は少数または多数の花をつける。花は直立、直径約2㎝。 萼は緑色、円錐形、長さ2~3cm×幅3~4.5mm、基部で臍のように落ちくぼみ、果時に3.5cmまで膨らむ、下部は広卵形、直径6.5~10㎜、上部は漸尖し、縦脈は30本、短い腺毛がある。萼歯は狭い披針形、長さは萼の長さの1/3~3/3まで、縁は下部で狭い膜質になり、縁毛がある。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ1mmまで、無毛。花弁は長さ2.5~3.5㎝、爪部は萼に含まれ、狭い披針形、長さ2~2.5㎝、無毛、耳は三角形。拡大部はピンク色、倒卵形、長さ約8㎜、縁は全縁またはわずかに凹形、ときにわずかに不規則に刻み目ができる。副花冠の鱗片は白色、狭い披針形、長さ2~2.5㎜。雄しべと花柱が含まれるか、わずかに突き出す。花糸はまばらに短毛がある。花柱は3本。蒴果は梨形、長さ約15㎜×幅6~8㎜。種子は暗褐色、腎形、長さ約1.5㎜。花期は5~6月。果期は6~7月。2n=20。[Flora of China]
19 Silene coronaria (L.) Clairv. スイセンノウ 酔仙翁
synonym Lychnis coronaria (L.) Desr. センノウ属
西アジア、ヨーロッパ原産。英名はrose campion , crown-pink , dusty-miller , mullein-pink。中国名は毛叶剪秋 mao ye jian qiu luo。別名はフランネルソウ。道端、草地、庭に生える。世界中で広く栽培され、帰化している。道端などに逸出が見られる。
多年草、高さ50~70㎝。茎は直立し、白毛が密生する。茎や葉に柔らかい白毛が密生するため、フランネルソウの別名がある。 葉は対生し、長さ2~9㎝、幅1.5~2.5㎝の披針形~倒披針形~卵状披針形。花序はまばらな円錐花序。花は直径2~3㎝、花弁は5個、鮮やかな深紅紫色、まれに白色、ピンクもある。副花冠の付属体は長さ1.5~2.5㎜の狭披針形。雄しべと雌しべは花から突き出ない。萼は長さ18~20㎜、先が5裂し、萼歯は長さ4~7㎜、白毛が密生する。蒴果は長さ約15㎜、長円状卵形。種子は黒褐色、長さ約1㎜の腎形。花期は5~6月。
品種) 'Alba' , 'Angel's Blush' , 'Atrosanguinea' , 'Blushing Bride' , 'Blych' , 'Dancing Ladies' , 'Flottbek' , 'Gardener's World' , 'Hutchinson's Cream' , 'Oculata Group' , 'Pinkie' , 'The Flasher'
20 Silene dichotoma Ehrh. ホザキマンテマ
synonym Silene dichotoma subsp. dichotoma [FNA]
ヨーロッパ東部~東南部~中部(ハンガリー)、西アジア、コーカサス原産。英名はforked catchfly , two-branch catchfly。別名はフタマタマンテマ、マンテマモドキ。北アメリカ、ヨーロッパ、日本などに帰化している。標高0~2200mの耕作地、道端、森林の焼け跡、荒れた草原などに生える。
1年草、丈夫。直根は細い。 茎は直立し、上部で分枝し、通常は赤みを帯び、全体に大きく、長さ(20~)50~100㎝、粗い剛毛がある。葉は節ごとに2枚つく。下部の葉は葉柄があり、葉身は披針状へら形、長さ3~10㎝×幅6~30㎜(葉柄を含む)、基部は先細り、葉身と同長の葉柄になる。茎葉は無柄またはほぼ無柄、上部の葉ほど小さく、葉身は披針状楔形、長さ1.5~5㎝×幅3~15㎜、先は鋭形、両面に剛毛がある。花序は多数の斜上する細い枝を持ち、多数の花がつき、開き、剛毛があり、腺がありまたは腺がなく粘らない。花は節ごとに1個つく。苞は葉状~狭披針形、長さ5~10㎜、先は尾状尖鋭形。花はほぼ無柄。萼は明瞭な10脈があり、膨らまず、剛毛があり、5裂し、花時に筒形、果時に卵形、長さ(7~)10~15㎜×幅2.5~4㎜、脈は平行で、淡色の交連(commissures)がある。萼片は5個、反り返って広がり、狭披針形、長さ2~3㎜、先は尖鋭形。 花弁は白色まれにピンク色で、爪部があり、爪部は萼と同長、拡大部は倒卵形だが深く2裂し、長さ5~9㎜、先端は切形、付属体は長さ0.2㎜。雄しべは花弁を超え、一部の花では仮雄しべに退化する。花糸は白色。花柱は3本、白色、萼の長さの約2倍、長く突き出る。蒴果は萼に囲まれ、楕円形、6個の広がった披針形の歯から裂開する。分果柄(carpophore)は丈夫で、長さ1.5~4㎜、無毛。 種子は灰褐色~黒色で、凹面をもつ広腎形、直径約1㎜、しわがある。2n=24。花期は夏。
21 Silene dioica (L.) Clairv. アケボノセンノウ 曙仙翁
synonym Lychnis dioica L.
synonym Melandrium rubrum (Weigel) Garcke
ヨーロッパ、モロッコ原産。英名はred campion , red catchfly。北アメリカ、南アメリカ、ニュージーランドなどに帰化。標高0~500mの森林、生垣、庭園、川岸、開けた荒地に生える。広く栽培され、園芸品種も多い。
多年草。直根は細い。茎は斜上し、基部で傾伏し、分枝し、短い根茎があり、高さ80㎝まで、柔らかい毛があり、±腺があり、少なくとも上部にあり、まれにほぼ無毛。葉は茎の中間と上部では無柄、下部では葉柄があり、へら形になる。葉柄は根生葉の葉身と同長またはそれよりも長い。葉身は卵形~楕円形、長さ3~13㎝×幅10~50㎜(葉柄を含まない)、先は鋭形~尖鋭形、わずかに毛があり、下面の中肋には密に毛がある。花序は二出集散花序で、数個から多数の花がつき、開き、苞がある。苞は披針形、長さ4~20㎜×幅2~7㎜、草質、全体に柔らかい毛があり、長い隔壁のある毛があり、腺毛は無いかまたは腺毛がいくつかある。小花柄は斜上し、長さ0.2~3㎝、通常は萼より短い。花は単性、雄花のみを持つ株もあれば雌花のみを持つ株もあり、直径は20~25㎜。萼は8~12本の脈があり、鐘形、雄花は狭鐘形、雌花は広く、花時に長さ10~15㎜×幅7㎜以下。果時には幅11㎜になり、草質、縁には歯があり、柔らかい毛がある。萼片は5個、直立し、披針形、長さ2~3㎜。花弁は明るいピンク色で爪部があり、爪部は萼と同長かそれより長い。拡大部は水平に広がり、広倒卵形、無裂または2裂し、約・長さ12㎜×幅12㎜、付属体は4個、長さ約1㎜。雄しべと柱頭は花弁の爪部と同長。花柱は5本。蒴果は広卵形~球形、萼と同長、しばしば5裂し、(10個に裂ける) の歯は外巻きする。分果柄(carpophore)は無い。種子は暗褐色~黒色、広腎形、丸みがあり、長さ1~1.6㎜m、密で均一なパピラがある。2n=24。
品種) 'Alba Plena' (d) , 'Clifford Moor' (v) , 'Compacta' , 'David Baker' , 'Dorset' Silene Forrestii Group , 'Firefly' (PBR) (d) , 'Flore Pleno' (d) , 'Graham's Delight' (v) , 'Inane' , 'Innocence' , 'Jade Valley' , 'Kay's Winter Dream' , 'Minikin' , 'Pat Clissold' (v) , 'Pembrokeshire Pastel' (v) , 'Perkin' (v) , 'Purple Prince' , 'Ray's Golden' , 'Ray's Golden Campion' , 'Richmond' (d) , 'Rollie's Favorite' (PBR) , 'Rosea Plena' (d) , 'Rosea Plena Variegata' (d/v) , 'Rubra Plena' , 'Stella' , 'Sunshine n Daydreams' , 'Thelma Kay' (d/v) , 'Tresevern Gold' , 'Underdine' , 'Valley High' (v) , 'Variegata' , Zetlandica Group
22 Silene elisabethae Jan シレネ・エリサベサエ
synonym Melandrium elisabethae (Jan) Rohrb
synonym Silene vallesia Pollini
synonym Saponaria elisabethae (Jan) Fenzl ex Nym.
イタリア原産。イタリアの南アルプスのコモ湖とガルダ湖の間に分布する。英名はlarge-flowered catchfly。痩せた石灰岩の砂利や石灰岩の裂け目に生える。
常緑多年草、群生し、高さ5~25cm。茎は斜上し、木質になり、しばしば赤色になり、腺毛があるのが特徴。根生葉はロゼットを作り、披針形、先が鋭形、長さ1.5~7(~10)㎝×幅8~10㎜、無毛、わずかに革質、緑色で光沢があり、全縁で縁毛がある。茎葉は対生し、上部ほど小さくなり、緑色、全縁。花序は枝先または上部の葉腋につき、花が数個つく。花は非常に華やかで、濃いピンク色~ピンクがかった赤色、直径3~4㎝、花弁が間を開けて5個、平開する。花弁の基部の爪部は明瞭で、基部に紫褐色の脈状の付属体がある。萼はやや膨れた筒状、10本の縦肋があり、粘性のある腺毛がある。蒴果は楕円形、長さ約20㎜。分果柄(carpophore)は短く、蒴果の長さの1/4。種子は多数あり、腎形、長さは約1㎜、平滑。花期は6~8月。
品種) 'Alba'
23 Silene fasciculata Nakai タンナシラタマソウ 耽羅白玉草
韓国固有種。済州島漢拏山の高い山地尾根部付近に生える。観賞用に栽培される。
多年草で、高さ10~20cm。根は太くて木質化し、基部から数本が出て、毛がない。全体的に紫色を帯びる。茎はまっすぐ直立し、ほとんど分枝せず、毛がなく、下部は紫色になる。葉は対生し、葉柄がほとんど無い。葉身は線形、長さ0.5~4㎝×幅1~5㎜、先端が長く鋭形。花は茎の頂部とその近くの葉腋につく。花序柄は長さ約1㎝。萼は円筒形。花弁は5個、先が2深裂し、裂片は長さ約4㎜。雄しべは10本、子房は3室。花柱は3分岐する。蒴果は長円形、先が6個に分かれる。 種子は腎形で、非常に小さい。花期は6~8月。
24 Silene firma Siebold et Zucc. フシグロ 節黒
synonym Melandrium firmum (Siebold & Zucc.) Rohrb.
synonym Silene firma Siebold et Zucc. f. pubescens (Makino) M.Mizush. ケフシグロ
日本(北海道、本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国全土、ロシア原産。中国名は疏毛女娄菜 shu mao nu lou cai , 坚硬女娄菜 jian ying nu lou cai。標高300~2500mの山地の草原、低木林地帯に生える。沖縄にはケフシグロ(f. pubescens)が分布するが、f. pubescensは現在ではフシグロに含められている。1年草または2年草で、高さは(30~)50~100㎝、通常は全体が無毛、ときに基部に短毛が生える。 茎は直立し、ときに基部は暗紫色になり、丈夫で、単純またはまばらに分枝する。葉は楕円状披針形~卵状倒披針形または倒卵状倒披針形、長さ4~10(~16)㎝×幅0.8~2.5(~5)㎝、基部は漸尖し、縁毛があり、先は鋭形。花は不規則な密錘花序(thyrse)につく。少なくとも上部の小集散花序には柄がなく、下部の小集散花序にはまれに柄がある。小花柄は直立し、長さ5~18(~30)㎜、通常は無毛。苞は狭い披針形。萼は卵状鐘形、長さ7~9㎜、無毛、果時には長さ1~1.2熟すと先が花柱の2倍数の6個に裂開する。に大きくなり、脈は緑色。雌雄蕊柄(androgynophore)は非常に短いかまたは廃れ、無毛。花弁は長さ2~3㎜と小さく萼からほとんど出ず、白色~ピンク色、爪部は倒披針形、無毛、耳があり、拡大部は卵形、先が2裂する。副花冠の鱗片は小さい。 雄しべと花柱は突き出ないかまたはやや突き出る。雄しべは10本。花柱は3本。蒴果は卵形、長さ8~11㎜、萼より短いかまたは長く、熟すと先が花柱の2倍数の6個に裂開する。種子は灰褐色、球状腎形、幅約1㎜、いぼ状突起がある。花期は6~7(10)月。果期は7~8(10)月。2n=48。
25 Silene fissipetala Turcz. ナガバビランジ
synonym Silene fortunei Vis.
synonym Silene argyi H. Leveille
synonym Silene fissipetala var. kiiruninsularis (Masam.) Veldkamp ムシトリビランジ
synonym Silene fortunei Vis. var. kiiruninsularis (Masam.) S.S.Ying
中国(安徽省、福建省、甘粛省、河北省、江西省、陝西省、山東省、山西省、四川省)、台湾原産。中国名は鹤草 he cao。低木林、高原、低山の低木草原に生える。この種は薬用に使用される。多年草、高さ50~80(~100)㎝。根は丈夫で木質化する。茎は叢生、直立し、多数分枝し、短い絨毛があるか、または無毛で、粘性がある。根生葉は倒披針形または披針形、開花時に枯れ、長さ3~8㎝×幅7~12(~15)㎜、若いときは両面とも無毛または絨毛があり、縁は縁毛があり、中脈が明瞭で、基部は漸尖して短い葉柄になる。 茎葉は短い不稔性の腋窩枝を持ち、根出葉より次第に小さくなる。花は直径 2(~2.5)㎝、直立し、緩く、花数の少ない密すい花序に花をつける。小集散花序は小花柄よりも短いか、それとほぼ等しい花序柄を持ち、対生し1~3個の花がつく。小花柄は長さ3~12(~15)㎜、細い。苞は線形、長さ5~10㎜、縁毛がある。萼は狭い筒形、長さ(2.2~)2.5~3㎝×幅約3㎜、無毛、果時に上部が膨らみ、棍棒状になり、縦脈は緑色または紫色。 萼歯は長さ1.5~2㎜。雌雄蕊柄(androgynophore)は果時に長さ1~1.5(~1.7)㎜、無毛。 花弁の爪部は萼を越えてわずかに突き出し、倒披針形、長さ1~1.5㎝、無毛。拡大部は突き出し、淡赤色、楔状倒卵形、長さ約1.5cm、先は2深裂~中裂以上であり、裂片は不規則で細かく切れ込む。副花冠の鱗片は舌状で、小さい。 雄しべと花柱はわずかに突き出す。花糸は無毛。花柱は3本。蒴果は長さ1.2~1.5㎝×幅約4㎜、萼より短いかそれに等しい。種子は暗褐色、円状腎形、わずかに扁平、長さ約1㎜。花期は6~8月。果期は7~9月。2n=30。
26 Silene flos-cuculi (L.) Greuter et Burdet カッコウセンノウ 郭公仙翁
synonym Lychnis flos-cuculi L.
ヨーロッパ~ロシア(シベリア)原産。北アメリカへ帰化。英名はmeadow campion , ragged-robin。別名はリクニス・フロロスクリ。標高0~800mの湿った牧草地、道路の側溝、川岸、湖岸に生える。
多年草。耐寒性がある。直根は細い。てい幹は枝分かれする。茎は直立し、花のつかないシュートは傾伏し、分枝し、高さ30~90㎝、上部に粗く反曲 した毛があり、下部はほぼ無毛。葉: 葉身はときに基部に縁毛があるのを除き無毛。下部の茎葉は倒披針形、へら形、長さ2~15㎝×幅4~30㎜。中間および上部の茎葉はほぼ無柄~無柄、基部で合着し、葉身は倒披針形~狭披針形、長さ3~8㎝×幅4~15㎜。花序は集散花序、開き、苞がある。集散花序は枝分れし、長い柄があり、花が3~30個つき、複合。苞は狭披針形、長さ2~25㎜、先は尖鋭形。小花柄は長さ0.3~2㎝。花は直径30~35㎜。萼は明瞭に10本の脈があり、鐘形、果時に長さ6~10㎜×幅4~7㎜、ほぼ膜質、縁には歯があり、萼歯は5個、卵形、長さ約3㎜、縁毛があり、先は尖鋭形。花弁はローズピンク色(まれに白色)、爪部があり、爪部は萼に等しく、拡大部は深裂し、裂片は4個、線形、広がり、長さ約1㎝。副花冠の付属体は2個、深く2股に分かれ、狭く、長さ約4㎜。雄しべは短く突き出る。柱頭は5本、短く、突き出る。蒴果は卵形~広卵形、萼の長さと同じで、5個の鋭い外巻きする歯で開く。分果柄(carpophore)は非常に短い(長さ0.5㎜未満)か、または無い。種子は暗褐色~黒色、腎形、長さ0.5~0.7(0.8)㎜、粗い疣状突起があり、突起は三角形、長さは幅とほぼ同じ。2n=24。花期は5~8月(夏)。果期は8~9月。
品種) 'Alba' , 'Jenny' , 'Nana' , 'Petite Jenny' , 'White Robin'
27 Silene flos-jovis (L.) Desr. シレネ・フロスジョビス
ヨーロッパ(アルプス)原産。英名はflower-of-Jove。アルプスの標高1000~2400mに生える。
高さ30~60cm、全体に密に白色の綿毛がある。葉は披針形。 部分花序は花が4~10個つき、ほぼ頭状花序になる。花弁は明るいピンク色で、長さ2~3㎝、縁があるか、またはわずかに深く、2裂し、裂片は先が丸く、副花冠は高さ約3㎜。花柱は5本。萼は長さ13~15㎜、均等の10本のうねがある。蒴果は長さ12~15㎜、開口部には5個の歯がある。花期は6~7月。(Flora Helvetica 2018)
品種) 'Nana' , 'Nana Peggy'
28 Silene foliosa Maxim. エゾマンテマ
日本(北海道)、朝鮮、中国(甘粛省、黒竜江省、内モンゴル、寧夏、山西省、北西省)、ロシア原産。中国名は石缝蝇子草 shi feng ying zi cao。標高1300~2000mの森林、山の草原、砂利の多い石の亀裂に生える。
多年草、高さ25~40㎝。 根は丈夫で木質化し、複数の冠をもつ。 茎は密集し、直立し、細く、基部に下向きの毛が生える。根出葉は開花時に枯れる。茎葉は、明瞭な不稔の腋生の枝を持ち、線状倒披針形または線状披針形、長さ2~4㎝×幅3~6㎜、中脈に短い絨毛があり、縁には短い縁毛があり、基部は漸尖し、先は尖鋭形。花は密すい花序につく。小集散花序は花が1~数個つく。小花柄は長さ4~6㎜、細く、粘性がある。苞は披針状線形、基部の縁は膜質、縁毛がある。萼は卵状鐘形、長さ6~8㎜。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ2~2.5 mm、まばらに毛がある。花弁の爪部は倒披針形で無毛。拡大部は白色、中裂以上に深く2裂し、裂片は線形、先は鈍形。副花冠の鱗片は小さい。雄しべと花柱が明瞭に突き出る。花糸は無毛。花柱は3本。 蒴果は球状卵形、長さ5~7㎜×幅2.5~3㎜。種子は灰褐色、腎形、長さ約1㎜。花期は7~8月。果期は8月。
29 Silene fulgens (Fisch. ex Spreng.) E.H.L.Krause エゾセンノウ 蝦夷仙翁
synonym Lychnis fulgens Fischer ex Sprengel [Flora of China] センノウ属
日本(北海道)、朝鮮、中国(貴州省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、山西省、四川省、雲南省)、ロシア原産。中国名は剪秋罗 jian qiu luo。低い丘の上の森林地帯、湿った日陰の低木のある牧草地に生える。多年草、高さ50~85㎝、まばらな多細胞の腺のない毛を持つ。根は叢生し、紡錘形、わずかに多肉質。茎は単純であるか、上部で分枝する。葉は卵形または卵状披針形、長さ3.5~10㎝×幅2~4c㎝、両面と縁には直軟毛があり、基部は円形まれに広楔形で、わずかに茎を抱き、先は鋭形。2出集散花序には数個の花がつき、密で、まれに散房花序状になる。小花柄は長さ3~12㎜。苞は披針形、草質、密に絨毛があり、縁に縁毛がある。花は直径3.5~5㎝。萼は狭い鐘形、長さ1.5~2.8cm×幅4~8㎜、絨毛があり、脈が密で、果時にわずかに膨らむ。萼歯は三角形。花弁は縁が深紅色で、1/2の深さまで2裂し、裂片は線形で、先は鈍形、ときに不明瞭に鋸歯状になり、各裂片には下部に横の歯がある。爪部は狭い披針形で、萼を超えない。副花冠の鱗片は暗赤色、狭い楕円形。雄しべと花柱はわずかに突き出る。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ約5㎜。蒴果は狭い楕円状卵形、長さ1.2~1.4㎝。花期は6~7月。果期は8~9月。2n=24。
30 Silene gallica L. マンテマ 広義
地中海沿岸地域(ヨーロッパ、西アジア、コーカサス、北アフリカ、マカロネシア)原産。英名はsmall-flower catchfly ,small-flowered catchfly ,small catchfly, smallflowered catchfly, windmill pink ,common catchfly, five-wound catchfly , French catchfly。common catchfly, English catchfly, French catchfly, French silene, gunpowder weed, Mediterranean catchfly, spotted catchfly(var. quinquevulnera), windmill pink。世界中に広く帰化している。
1年草、直根は細い。茎は直立し、分枝し、まれに分枝せず、長さ(8)15~45(60)㎝、しばしば縮んだ長い毛があり、短毛が混じり、上部に粘る腺がある。葉は対生し(節に2個つき)、葉身は粗く、斜上するざらざらの毛が両面にあり、微突形。根生葉は少数、枯れ、葉身は倒披針形~葉柄のあるへら形、長さ0.5~5㎝×幅3~15㎜。茎葉の葉身は楕円状披針形~倒披針形~披針形、長さ1~7㎝×幅1~15㎜、先は鈍形~短い尖鋭形~鋭形、微突形。花序は開き、総状花序の枝をもち、節間と苞は普通、果時の萼とほぼ同長、長さ1~5㎜、上部は長い。小花柄は長さ10(20)㎜以下、直立~開出し、腺毛がある。花は直径5~8㎜。萼は10脈が目立ち、花時に狭い筒状卵形、果時に卵形、口部でくびれ、長さ6.5~10(12)㎜×幅3~5㎜、脈間は膜質、縁には歯があり、脈上には長さ約2㎜の関節のある剛毛があり、脈は平行、脈間に腺毛がある。萼歯は線形~披針形、長さ2~2.5㎜、先は緑紫色、鋭形。花弁は白色又はピンク色(var. gallica)、しばしば、暗色の斑点(blotch)があり(var. quinquevulnera)又は全体が暗ピンク色になり、爪部があり、長さは均等でなく、全縁または歯がある。爪部は萼と同長、拡大部は楕円形~倒卵形、分裂は有又は無、長さ6(7)㎜以下、副花冠の付属体は2個、長楕円形~狭披針形、長さ1~1.5㎜。雄しべは萼と同長又は短い。花糸の基部に毛がある。柱頭は3個、萼に含まれる。蒴果は長さ6.5~9㎜、円錐形、萼と同長、6個の反曲する狭三角形の歯をもつ。分果柄(carpophore)は1㎜より短く、有毛。種子は長さ0.5~0.7㎜×幅(0.5)0.8~1.2㎜、暗赤褐色、腎形、角(かど)があり、表面は凹面、裏面が平らまたはわずかに凸面状、放射状のうねをもち、外側の縁は広く、横方向のうねがあり、疣状突起がある。2n=24(n=12)。花期は5~6月。
30-1 Silene gallica L. var. gallica シロバナマンテマ
地中海沿岸地域原産。世界中に広く帰化し、海岸、河川敷、市街地に生える。和名はシロバナマンテマだが、ピンク色もよく見られる。解説は広義マンテマと同じ。しばしば縮んだ長い毛があり、短毛が混じり、腺毛をもち、粘る。花弁が白色又はピンク色。
30-2 Silene gallica L. var. giraldii (Gussone) S.M.Walters イタリーマンテマ
synonym Silene giraldii Gussoneイタリア、サルデーニャ島原産。別名はケナシマンテマ。関東以西に帰化している。道端などの日当たりが良く、定期的に草刈が行われるような草地に生える。
1年草又は2年草。高さ20~50㎝。マンテマによく似ているが、茎や葉や萼筒が無毛、上部の腺毛もなく、粘着しない。葉は対生し、葉身は広披針形、全縁、先は鋭形、基部は無柄で、茎を抱く。花は枝の上部に数個つき、直径約1㎝。萼は萼筒がやや痩長で筒状鐘形、濃色の脈があり、口部はくびれ、萼歯は小さな披針形。花弁は5個、紅紫色~ピンク色。花期は4~6月。
30-3 Silene gallica L. var. quinquevulnera (L.) W.D.J.Koch マンテマ
synonym Silene gallica subsp. quinquevulnera (L.) Symesynonym Silene gallica f. quinquevulnera (L.) W.D.J.Koch
synonym Silene quniquevulnera L.
ヨーロッパ原産。英名は spotted catchfly, Mediterranean Catchfly, mother marm, five-wounded catchfly。世界中で栽培され、帰化している。YList, PlantNET, Electronic Flora of South Australiaなどではこの変種を認め、POWOやGBIFではvar. gallicaのsynonymとされる。
日本へは江戸時代の末期に渡来した。高さは20~30㎝。全体に長毛と腺毛が混生する。葉は長さ1~3.5㎝×幅1~10㎜、倒卵形~長円状楕円形、短い腺毛と短い単純毛と長い多細胞の毛がある。下部の葉は先が幅が広く、へら形となる。花は直径約1㎝。萼は通常長さ7~10㎜、腺毛があり、果時に膨れ、10脈があり、脈はしばしば紫色を帯び、5歯がある。花弁は5個、白色またはピンク色で、中央部に大きな深紅色(dark crimson)のしみ(blotch)があり、縁は白色、ほぼ全縁、付属体は明瞭、直立する。蒴果は卵形、長さ6~9㎜、熟すと先が6裂(花柱の2倍数の歯)する。
31 Silene gracillima Rohrb. センジュガンピ 千手岩菲
synonym Lychnis gracillima Makino
synonym Lychnis stellarioides Maxim.
日本固有種。本州の中部地方から東北地方に分布。別名シラネガンピ 白根岩菲。山地の林縁や林内に生える
多年草、高さ50~100cm。茎が細くて弱く、真っすぐ直立し、ときに倒れて他の植物に寄りかかり、細かい軟毛がある。葉は対生し、無柄、葉身は狭い披針形、長さ5~15㎝、薄く、基部は円形、やや抱茎、縁は全縁、波打ち、先は次第に狭くなり長い鋭形、上面は無毛、下面は中脈上にわずかに毛がある。枝の先に花を数個つける。花は直径約2cm。花弁は5個、白色、花弁の先は凹形で縁は不規則な浅い鋸歯状になり、副花冠の付属体は白色、披針形で2個ずつつく。雄しべは10本、先が突き出し、花糸も白色。花期は7~8月。
32 Silene harae Nakai エゾヤママンテマ 蝦夷山マンテマ
synonym Silene Harai NAKAI. sp. nov Bot. Mag. (Tokyo) 46: 53 (1932)
日本固有種。北海道の小樽市銭函、上川地方層雲峡に分布する。多年草、根は木質、先で枝分かれする。茎は高さ18~32cm、基部で幅2~2.5㎜、無毛、緑色。根生葉は長い葉柄をもち、葉身は線状披針形、長さ7~8㎝×幅3~5㎜、両端が先細る。茎葉は同形で、葉柄は短く、葉柄の基部は透明で広がり茎を抱く。花序の節につく苞は長円状披針形、長さ8~15mm。小花柄は長く、長さ約2㎝、無毛。萼は鐘形、膨れ、長さ10~13㎜×幅8~10㎜、10脈があり、多少、分岐吻合する。花弁は白色で肉質、拡大部は長さ8㎜、先は2裂し、裂片は長円形、幅2㎜。花弁の基部には爪部がある。雄しべは10本、葯は紫色。花柱は3本、紫色[Bot. Mag. (Tokyo) 46: 53 (1932)]。
壷型の萼筒をもつこと。ロゼット状の葉を付ける栄養シュートと繁殖シュートの2型性が見られること。古い葉柄の基部が鱗片状とならないこと。これらの形態的特徴はトカチビランジ S. tokachiensis Kadota と類似している。
33 Silene hidaka-alpina (Miyabe et Tatew.) Ohwi et H.Ohashi カムイビランジ 神威びらんじ
日本固有種。日高山系と十勝地方のみに分布する。高山帯の岩場に生える。
34 Silene jenisseensis Willd. アシボソマンテマ
synonym Silene jenisea Poir.
synonym Silene tenuis var. jenissea Rohrb.
朝鮮、中国(河北省、黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、山西省)、モンゴル、ロシア原産。中国名は山蚂蚱草 shan ma zha cao。標高200~1000mの森林縁、森林に覆われた草原、高山のガレ場、草原、砂草原、山岳草原、砂利の多い草原、砂丘の縁に生える。
多年草、高さ20~50㎝。根は丈夫で木質化する。茎は叢生し、直立またはほぼ直立し、単純で無毛、通常は基部に多くの腋生の不稔ノシュートを持つ。根生葉は多数つき、狭倒披針形~披針状線形、長さ5~13cm×幅2~7㎜、中脈が明瞭、基部は漸尖して長い葉柄になり、基部の縁には縁毛がある。茎葉は少なく、小さく、基部を抱く。花は総状花序状の密に咲きます。 小集散花序は対生し、近位のものは通常複数の花を持ち、遠位のものは単一の花を持ちます。 花柄は非常に短い。 小花柄は長さ4~18 mm、無毛。 苞は卵形または披針形、基部はわずかに円錐状、縁は膜状、繊毛虫、先端は尖形。 萼は狭く鋸状で、果実はわずかに膨らみ、長さ8~10(~12)mm、無毛、縦脈は緑色または紫色。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ約2㎜、短毛がある。花弁の爪部は狭倒披針形、無毛で、明らかな耳は無い。拡大部は白色または淡帯緑色、中間まで2裂し、裂片は線形、先は鈍形。副花冠の鱗片は小さい。雄しべと花柱が露出する。花糸は無毛。花柱は3本。蒴果は卵形、長さ6~7㎜。種子は灰褐色、腎形、長さ約1㎜。花期は7~8月。果期は8~9月。2n=24。
34-1 Silene jeniseensis subsp. jeniseensis アシボソマンテマ 狭義
synonym Silene jeniseensis var. oliganthella (Nakai) Y.C.Chu チョウセンシラタマソウ
synonym Silene oliganthella Nakai朝鮮、中国(河北省、黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、山西省)、モンゴル、ロシア原産。中国名は山蚂蚱草 shan ma zha cao。標高200~1000mの森林縁、森林に覆われた草原、高山のガレ場、草原、砂草原、山岳草原、砂利の多い草原、砂丘の縁に生える。
34-2 Silene jeniseensis subsp. popovii Zuev
ロシア原産。
35 Silene keiskei Miq. オオビランジ 広義
日本固有種。本州に分布。山地に生える。
直立または傾伏し、高さ10~60㎝。花序は集散花序、3花咲き、花は赤紫色、直径約2~3cm。 花弁は爪部の先端に耳がなく、両性花では長さ24~30mm、雌花では長さ18~23mm。花糸は無毛またはまばらに短い毛がある。
35-1 Silene keiskei Miq. var. keiskei オオビランジ
日本(群馬県、埼玉県、神奈川県、山梨県、長野県、静岡県)固有種。低山帯~亜高山帯の岩場に生える。 高さ20~60㎝。茎は直立又は垂れ下がり、まばらに腺毛がある。葉柄はほぼ無。葉身は長さ1.5~6㎝、披針形~広披針形。花は2出集散花序状にややまばらに花がつき、直径2~3㎝、紅紫色。小花柄はほぼ無毛、萼筒は無毛、萼片は広三角形。花弁が不均等。
35-2 Silene keiskei Miq. var. minor (Maxim.) Ohwi et H.Ohashi ビランジ
synonym Silene keiskei Miq. f. minor (Maxim.) Takeda日本(本州の山地)に分布。基本種のオオビランジと比べて丈が低く、高さ10~30㎝、短毛があり、上部には腺毛が混ざる。葉柄はほぼ無。葉身は披針形~広披針形、縁毛がある。花は2出集散花序状にまばらにつく。萼筒は有毛、萼片は広三角形。花弁は紅紫色、2浅裂。蒴果は長楕円形、3裂。
35-2-1 Silene keiskei Miq. var. minor (Takeda) Ohwi et H.Ohashi f. albescens (Takeda) H.Ohashi, Tateishi et H.Nakai シロバナビランジ
35-2-2 Silene keiskei Miq. var. minor (Takeda) Ohwi et H.Ohashi f. procumbens (Takeda) Ohwi et H.Ohashi ツルビランジ
synonym Silene keiskei Miq. var. procumbens Takeda妙義山に見られる。オオピラシジと花や葉の形は殆んど同じであるが、茎が著しく伸び1m以上にもなるもの。
36 Silene kiusiana (Makino) H.Ohashi et H.Nakai オグラセンノウ 小倉仙翁
synonym Lychnis kiusiana Makino日本(九州、本州の岡山県以西)、朝鮮に分布。山間部の湿地に生える。
多年草。茎は高さ約1m以下、細く、他にもたれて直立し、下向きの短毛がある。葉は対生、無柄。葉身は長さ4.5~11㎝、基部が最も広く、茎を抱き、両面には微毛が散生し、縁毛がある。花は紅色。花弁は先端が繊細に分裂し、基部には小さな付属体がある。雄しべは10個、葯は濃紫色。花期は6~8月。
37 Silene koreana Kom. ネバリマンテマ 粘りまんてま
日本、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は朝鲜蝇子草 chao xian ying zi cao。
1年草又は2年草、高さ30~70㎝。主根は細い。茎は単生又はまばらに束生し、直立、上部でまばらに分枝し、基部、短毛があり、先は粘る。根生葉は開花初期に枯れる。茎葉は葉腋に短い不稔の枝をもち、披針形~線状披針形、長さ2~4(~6)㎝×幅2~8(~15)㎜、下面は中脈に毛があり、縁毛があり、中脈は目立つ。花は総状花序状の密穂花序につき、小集散花序には花が1個、対生し、花序柄はごく短い。花柄は長さ15~20㎜、細く、類無毛、粘る。苞は線状披針形、縁毛がある。萼は筒形~狭い鐘形、長さ8~9㎜×直径約2.5㎜、無毛。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ1.5~2㎜、有毛。花弁の爪部は狭い倒披針形、基部に縁毛があり、耳は明瞭ではない。拡大部は萼から突き出ず、白色、浅く、2裂し、副花冠の鱗片は小さい。雄しべと花柱ははっきり突き出し、花糸は無毛。花柱は3個。蒴果は球形、長さ7~8.5㎜、萼より短い。種子は暗褐色、球状腎形、長さ約1㎜。花期は7~8月。果期は8~9月。
38 Silene laciniata Cav. シレネ・ラキニアタ
USA、メキシコ原産。英名はIndian-pink , Mexican campion , Mexican-pink。
多年草。 直根は太くて多肉質。てい幹が分岐する。茎は1~数本、散在して直立し、基部で傾伏することもあり、上部で単純または多数分岐し、長さ20~120 ㎝、微軟毛またはざザラつく毛があり、ときに下向き、しばしば上部に腺があり、下部は無毛。葉は無柄または基部が狭くなって偽葉柄になり、葉身は両面に毛がある。下部につく葉は葉身が披針形~倒披針形、上部で最も広くまたはしばしば上部で小さくなり、茎の中間付近で茎葉は最も長く、葉身は線形~披針形または楕円形、長さ1.5~10㎝×幅2~30㎜。 花序は花が単生から単純な2出集散花序~複合で、花が3~5個~多数つき、長い枝を持つ。苞は小さく、線状披針形、または葉状。小花柄は長く、萼をはるかに超える。花:萼は緑色、10脈あり、広筒形、花時に長さ12~25㎜×幅4~8㎜、基部に向かって狭くなり、中央部が広くなり、果時に幅6~13㎜になり、両端が狭く、毛があり、腺がある。萼片は披針形、長さ2.5~5㎜、縁は膜質または膜質でなく、先は±鈍形。花冠は緋色、爪部があり、爪部は萼と同長かまたはそれより長く、拡大部は裂け、しばしば深く裂け、裂片は4~6個、線形、披針形、または長円形、小さな側歯がある場合があり、長さ6~15㎜。付属体は目立たず、長さ1~2㎜、歯がある。雄しべは花弁の爪部より長いが、裂片より短い。柱頭は3本、花冠に等しい。蒴果は長円形~卵形、または広い筒形で萼の長さと等しく、6個の斜上する歯で裂開する。果柄(carpophore)は長さ2~4㎜。種子は赤褐色、広腎形、長さ1.7~2.3㎜、側面にいぼ状突起があり、縁にパピラがある。3亜種がある。
品種) 'Jack Flash' , 'Starburst'
38-1 Silene laciniata subsp. californica (Durand) J. K. Morton
カリフォルニア州、メキシコに分布。英名はCalifornia pink。標高0~2200mの乾燥した開けた森林地帯、低木林のチャパラル、岩だらけの丘の中腹、崖に生える。茎は基部で傾伏し、バラバラから直立し、全体に葉があり、まばらに枝分かれし、地面の下に鱗片があり、柔らかく短い毛がある。葉:下部の葉身は倒披針形で、ときに広倒披針形、長さ2~6㎝×幅6~25㎜、基部は狭くなって偽葉柄になり、下面に短い毛があり、上面は無毛。茎の上部では無柄、葉身は披針形または卵状披針形~広楕円形、長さ2~9㎝×幅5~30㎜、先は鋭形~短い尖鋭形。花序はあまり発達せず、通常、花が1~3(~5)個つき、開いた集散花序で、苞がある。苞は葉状、披針形~卵状披針形。萼は広筒形、上部に向かって広がり、花時に長さ15~25㎜×幅4~8㎜、果時に倒卵形~こま形、幅13㎜まで、幅は長さの1/2以上ある。蒴果は卵形。2n=48, 72。花期は春~夏。
38-2 Silene laciniata subsp. greggii (A. Gray) C. L. Hitchcock & Maguire
アリゾナ州、ニューメキシコ州、テキサス州、メキシコに分布。英名はGregg’s Mexican pink。標高1600~3000mの乾燥したオーク、マツ、ジュニパーの森林地帯に生える。茎は直立し、先でよく分枝する。葉:下部の葉は倒披針形、しばしば広倒披針形、長さ3~6(~8)㎝×幅15~30㎜、両面にザラつく毛がある。上部の葉は短い葉柄があり、葉身は披針形~楕円形、小さくなり、長さ1~4㎝×幅3~10㎜、先は鋭形。花序はよく発達し、開き、3~5個の花がつき、苞あある。苞は披針形、長さ6~20㎜、先は鋭形。萼は広筒形、花時に長さ17~20㎜×幅4~5㎜、果時に幅6~9㎜に広がり、幅は長さの1/2未満で、基部に向けて狭くなり、臍のように窪む。2n=48。花期は夏~初秋。
38-3 Silene laciniata subsp. laciniata シレネ・ラキニアタ 狭義
カリフォルニア州、メキシコに分布。標高:0~1200mの低木林のチャパラル、オークの森、海の斜面、崖に生える。茎は斜上し、基部で傾伏し、上部で多数分枝し、下部はほぼ無毛、上部に腺毛がある。葉:下部の葉は倒披針形~披針形、長さ1.5~10㎝×幅2~10(~20)㎜、両面に短い±後向きの毛があり、ときに腺がある。上部の茎葉は無柄、葉身は線形~披針形、花序の中では小さくなり、長さ3~10㎝×幅2~10(~20)㎜、先は鋭形。花序はよく発達し、(3~)5~多数の花がつき、開き、複合の長い枝の集散花序、苞がある。苞は上部の葉に似ていて、小さくなる。萼は広筒形、花時に長さ12~26㎜×幅4~6㎜、果時に幅8mmまで、幅は長さの1/2未満で、基部に向かって狭くなる。蒴果は長円形。2n=96。花期は春~夏。
39 Silene latifolia Poir シレネ・ラティフォリア
アジア西部~中部、ヨーロッパ、北アフリカ原産。英名はwhite campion , white cockle。標高0~2800mの耕地、道端、荒地に生える。
北アメリカ、グリーンランド、南アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、中国、日本などに帰化。
1年草または短命の多年草。直根は木質。茎は直立または基部で傾伏し、分枝し、長さ100㎝まで、細かい粗毛が生え、上部に腺毛がある。葉身は両面に粗毛がある。根生葉は通常、開花時期には枯れる、葉柄があり、葉は長円状披針形~楕円形。茎葉は無柄、花序では小さくなり、葉身は披針形~楕円形、長さ3~12㎝×幅6~30㎜、先は鋭形。花序は数個の花をつけ(雌株では少ない)、開き、二出集散花序、苞がある。 苞はかなり小さくなり、披針形で草質。小花柄は長さ1~5㎝。花は単性で、雄花のみを持つ株もあれば雌花のみを持つ株もあり、芳香があり、直径は25~35㎜。脈のある雄株では無柄~短い小花柄、雌株は小花柄がある。萼は雄花に明瞭な10脈があり、雌花は20脈があり、雄花の萼は筒形で、雌花では卵形になり、果時に長さ10~20(~24)㎜×幅8~15㎜、縁には歯があり、粗毛と短い腺毛があり、萼片は長さ6㎜まで、広卵形で先は鈍形~披針形で先は尖鋭形。花弁は白色、広倒卵形、長さは萼の長さの約2倍、拡大部は広がり、無裂~2裂する。雄しべは萼よりわずかに長い。柱頭は(4~)5本、萼よりわずかに長い。蒴果は卵形、萼の長さに等しく、(4~)5個の開き~わずかに反り返った2裂の歯によって裂開する。分果柄(carpophore)は長さ1~2㎜。種子は暗灰褐色、腎形で丸く、丸々とし、長さ約1.5㎜、粗いいぼ状突起がある。2n=24。花期は夏~秋。
39-1 Silene latifolia Poir. subsp. alba (Mill.) Greuter et Burdet マツヨイセンノウ 待宵仙翁
synonym Lychnis alba Mill.synonym Silene pratensis (Raf.) Godr. et Gren.
synonym Silene alba (Mill.) E.H.L.Klause
synonym Melandrium album (Mill.) Garcke
ヨーロッパ、中央アジア、グリーンランド(北アメリカ)原産。中国名は白花蝇子草 bai hua ying zi cao。英名はwhite campion。別名はヒロハノマンテマ。道端、草地、市街地に生える。明治時代に観賞用に導入されたものといわれており、全国的に野生化している。br> 2年草又は多年草、高さ50~100㎝。茎は直立又は基部で平伏して分枝する。全体に短毛と腺毛ががあり、やや粘る。葉は対生し、長さ3~12㎝、幅6~30㎜の披針形~長楕円形、鋭頭、全縁、両面に毛がある。雌雄異株。花は単生、雄花だけと雌花だけの株がある。花柄は長さ1~5㎝、雄株の花柄は短い。花はよい香りがし、直径25~35㎜。萼は雄花にははっきりした10脈があり、雌花には20脈がある。萼筒が花後にほおずきのように膨らみ、果時には長さ10~20(24)㎜、幅8~15㎜になる。萼歯は5個、長三角形。花弁は白色、2深裂する。雄しべは10個。花柱は(4)5個。蒴果はほぼ萼と同じ大きさの卵形、熟すと裂開し、裂片は反り返らない。種子は長さ約1.5㎜、暗灰褐色。花期は7~8月。
40 Silene macrophylla Lag. シレネ・マクロフィラ
synonym Silene fimbriata Sims
synonym Silene multifida (Adams) Rohrb.
synonym Oberna multifida Ikonn.
ジョージア、トルコ原産。英名は fringed campion , fringed-flowered campion。シレネ・フィムブリアータ。標高1600~3000mの日陰の場所に生える。
多年草、茎は高さ80~150㎝、毛がある。茎葉は長さが幅の2倍以下で、卵状心形~卵状披針形、下部の葉は葉柄があり、緑色、3~5脈がある。花序は複合の2出集散花序。萼は長さ15~20㎜、大きく膨らみ、薄緑色、微軟毛がある。花弁は白色、爪部が突き出し、先に房状へり(白色のフリンジ)がある。 花冠柄(anthophore)は無毛、長さ3~4㎜。蒴果は長さ8~11㎜、萼の中に包まれ、無光沢。花期は7~9月。
品種) 'Marianne'
41 Silene macrostyla Maxim. クルマセンノウ 車仙翁
synonym Silene foliosa Maxim. var. macrostyla (Maxim.) Rohrb.
朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、遼寧省)、ロシア原産。中国名は长柱蝇子草 chang zhu ying zi cao。砂利の多い草原、乾燥した草原、森林に生える。 多年草、高さ50~90㎝。根は丈夫で木質化し、複数の塊になる。茎は単生または束生、直立し、単純または上部でまばらに分枝し、基部は後向きの毛があり、先は無毛になる。根出葉は開時に枯れる。茎葉は顕著な不稔の腋生枝を持ち、狭披針形、長さ4~9㎝×幅5~13㎜、両面とも無毛、縁に縁毛があり、中脈が明瞭で、基部が楔形、先は尖鋭形。 花は密錐花序(thyrse)につき、集散花序が1~数個つく。小花柄は長さ4~8㎜、細く、無毛。苞は披針状線形、縁は膜質、縁毛がある。萼はときに淡紫色、広鐘形、長さ4~6㎜、無毛。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ1~1.5㎜、短毛がある。花弁の爪部は無毛で、耳は目立たない。拡大部は白色、花弁の1/3~1/2まで2裂し、裂片は鈍形。副花冠の鱗片は小さい。雄しべと花柱がはっきり、突き出る。花糸は無毛。花柱3本。蒴果は卵形、長さ5.5~6.5㎜、萼より短い。種子は暗褐色、腎形、長さ約1㎜。花期は7~8月。果期は8~9月。42 Silene miqueliana (Rohrb.) H.Ohashi et H.Nakai フシグロセンノウ 節黒仙翁
synonym Lychnis miqueliana Rohrb.日本固有種。本州、四国、九州に分布。山地の林下に生える。
多年草、高さ40~80㎝。茎は直立し、上部で分枝し、節が太くなり、黒紫色を帯びる。葉は対生し、長さ4~12㎝、幅2.5~5㎝、先が尖り、縁に毛がある。花は3.5~5㎝。花弁は5個。花弁は長さ2.5~3㎝の倒卵形、先が円く、中央に明瞭な溝が見える。花弁の基部には花弁と同色の鱗片が2個ずつつく。雄しべ10個、5個ずつ2列につき、葯は紫色。萼は長さ2.5~3㎝の長円筒形、先が5裂し、蕾の時は2片が長い。蒴果は長楕円形、先が5裂する。種子は腎形、小突起を密生する。花期は7~10月。
42-1 Silene miqueliana (Rohrb.) H.Ohashi et H.Nakai f. argyrata (M.Mizush.) H.Ohashi et H.Nakai シロガネセンノウ
フシグロセンノウの白花品。42-2 Silene miqueliana (Rohrb.) H.Ohashi et H.Nakai f. plena (Makino) H.Ohashi et H.Nakai ザクロガンピ
八重咲の品種。43 Silene morrisonmontana (Hayata) Ohwi et H.Ohashi モリソンガンピ
台湾原産。中国名は玉山蝇子草 yu shan ying zi cao。標高3100~3400mの石と砂利の亀裂、ガレ場に生える。多年草、高さ10~15㎝。茎は叢生し、ほぼ平伏し、細く、単純で、有毛または無毛。葉は線形、長さ2~3.5㎝×幅1.5~2.5㎜、縁は縁毛があり、中脈は明瞭、縁は基部に不明瞭な歯があり、先は尖鋭形。花は単生し、頂生し、わずかに垂頭する(nutant)。小花柄は長さ6~8㎜、密に毛がある。苞は披針形、長さ1~1.4㎝×幅約2㎜、腺がある。萼は鐘形、長さ約15㎜×幅5~7㎜、脈に毛がある。萼歯は狭三角形、長さ3~4㎜、縁は縁毛があり、先は鋭形。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ2~3㎜、毛がある。花弁は長さ1.5~2㎝。爪部は袋状倒披針形、縁毛があり、耳は円形で、ときに不明瞭に不規則に切れ込む。拡大部は萼を超えて突き出し、白色、倒卵形、長さ4~6㎜、浅く分岐的に2裂し、裂片は狭楕円形または卵形で、ときに両側に1個の不明瞭な鈍い歯がある。副花冠の鱗片は扇形、長さ約1㎜、先が不規則に細かく切り込む。雄しべは突き出ない。花糸は無毛。花柱は3本、わずかに突き出る。蒴果は狭卵形、長さ8~10㎜。 種子は腎形で、縁に刺状突起がある。花期は6~7月。果期は9~10月。
43-1 Silene morrisonmontana var. morrisonmontana ニイタカガンピ
synonym Silene morrisonmontana (Hayata) Ohwi et H.Ohashi var. transalpina (Hayata) S.S.Ying
synonym Silene transalpina (Hayata) S.S.Ying台湾原産。中国名は玉山蝇子草 yu shan ying zi cao。標高3100~3400mの石と砂利の亀裂、ガレ場に生える。
毛が生える。
43-2 Silene morrisonmontana (Hayata) Ohwi et H.Ohashi var. glabella (Ohwi) Ohwi et H.Ohashi タイザンガンピ
synonym Silene glabella (Ohwi) S.S.Ying台湾原産。中国名は秃玉山蝇子草 tu yu shan ying zi cao 。
全体に無毛。
44 Silene noctiflora L. ツキミセンノウ 月見仙翁
synonym Elisanthe noctiflora (Linnaeus) Ruprecht
synonym Melandrium noctiflorum (Linnaeus) Fries
中国(新疆)、ロシア、カザフスタン、コーカサス、西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は夜花蝇子草 ye hua ying zi cao 。英名はnight-flowering catchfly , nightflowering silene , clammy cockle。標高1300~1800mの草原に生える。北アメリカ、ヨーロッパ、ニュージーランドなどに帰化。
1年草、高さ30~50(~90)㎝、密に短い毛がある。一次の根はわずかに木質化する。茎は直立し、単純またはまばらに分枝し、先に腺毛が生える。根生葉は長い楕円状倒卵形、長さ5~11㎝×幅2~4㎝、両面に絨毛があり、中脈と側脈が明瞭、基部は漸尖して短い葉柄になり、半抱茎、先は鋭形。上部の葉は無柄で、狭い楕円形または披針形。二花集散花序は花が少数、腺毛が生える。花は両性、直径約1.5㎝。小花柄は直立し、萼より短い。苞は披針形、腺毛がある。萼は筒形、長さ2~2.5(~3)cm×幅約5㎜、腺毛が多く、花後には膨らみ、楕円形になり、先でわずかにくびれ、縦の10脈があり、紫色、網状になる。萼歯は狭い披針形、長さ8~10㎜。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ約2mm。花弁は長さ約2.5㎝、爪部は萼を越えてわずかに突き出し、狭倒披針形、無毛、耳は三角形。拡大部は淡ピンク色、下部は黄色がかっており、倒卵形、長さ約6㎜、拡大部の1/2~2/3 まで深く2裂し、裂片は全縁またはわずかに不規則に切れ込み、日光の下で内巻きする。副花冠の鱗片は卵形、小さく、2~4歯がある。雄しべは突き出ない。花糸は無毛。花柱は3本、わずかに突き出る。蒴果は卵形、長さ1.5~1.8cm、萼より短い。種子は暗褐色、腎形、長さ約1mm。花期は6~7月。果期は7~8月。2n=24。
45 Silene nocturna L. ツキミマンテマ 月見まんてま
ヨーロッパ南部、西アジア、北アフリカ原産。英名はMediterranean catchfly , night-flowering catchfly 。
1年草。茎は直立し、単生又は分枝し、腺毛がある。葉は普通、等卵形~長楕円状楕円形、長さ10~40㎜×幅2~10㎜、多細胞の伏毛があり、縁毛がある。花は夜に開花する。花柄は普通、長さ2~10㎜、有毛、ときに、腺毛がある。萼は普通、長さ7.5~12㎜、多細胞の伏毛と単純毛があり、腺毛は無く、緑色、脈は紫褐色。花弁は2裂、ピンク色。蒴果は普通、長さ5~9㎜、円筒形、3歯から裂開し、それぞれ2個に割れる。
46 Silene nutans L. ヨルザキマンテマ 夜咲まんてま
ヨーロッパ原産。英名はNottingham catchfly , Eurasian catchfly
多年草。直根がある。茎は基部の根茎から生じ、剛毛があり、高さ30~60㎝。葉は剛毛があり、下部の歯は長楕円状へら形~倒卵状へら形、葉柄は長く、長さ3~8㎝。上部の葉は卵形~倒卵形、尖鋭形、無柄、長さ1~4㎝。花序は円錐花序、花が12~20個つき、直立する中央の花序軸と3個の花がつく側枝をもつ。花は下向きにつき、花柄は長さ(1~)2~5㎝。苞は披針形、尖鋭形、緑色。萼は腺毛があり、花時に狭円筒形、果時には膨れ、口部が狭くなり、10脈があり、長さ13~16㎜。花弁は白色、深く2裂し、爪部は分裂せず、長く突き出る。副花冠の鱗片は狭い三角形、鋭形、長さ約1㎜。花柱は3個、直立、先が反曲し、長さ約12㎜。蒴果は卵形、わずかに萼から突き出て、長さ10~12㎜、歯は6個、分果柄(carpophore)は長さ2~3㎜。種子は赤褐色、腎形、表面は平らで、背に溝があり、いぼ状、長さ約0.8㎜。
47 Silene orientalimongolica Kozhevn. シベリアセンノウ シベリア仙翁
synonym Silene linnaeaana Vorosch.synonym Lychnis sibirica L.
中国(内モンゴル)、モンゴル、ロシア、カザフスタン原産。中国名は内蒙古女娄菜 nei meng gu nu lou cai。草原、不毛地帯に生える。
Lychnis sibirica group は最近の研究により、Sileneに分類されことが示された(Oxelman et al.2001)。
1年草または隔年草で、高さは10~40cmで、全体に密に毛がある。主根は丈夫で木質化する。茎は直立し、単生または基部で多数分岐する。根生葉は葉柄があり、上部の葉は無柄。葉身は倒披針形または披針形、長さ2~5㎝×幅2~5㎜、中脈は下面に隆起し、両面に密に毛があり、基部は漸尖し葉柄になるかまたは無柄、先は鋭形。集散花序は頂生し、円錐形。苞は披針形、草質、縁毛があり、先は尖鋭形。小花柄は直立し、長さは不等、長さ5~20㎜、毛がある。萼は楕円形または卵状鐘形、長さ6~8㎜、果時には卵形、長さ約1㎝になり、腺毛があり、縦に10脈があり、緑色、先で密着する。萼歯は三角状披針形、縁は膜質、縁毛がある。雌雄蕊柄(androgynophore)は非常に短い。花弁は白色または淡赤色。拡大部は倒卵形で、先は浅く2裂する。爪部は狭い楔形。副花冠の鱗片は舌形。雄しべは突き出ない。糸は基部に毛が生える。花柱は3本、短く、基部に短毛がある。蒴果は卵形、長さ約8㎜、萼より短く、6歯がある。種子は灰褐色、腎形、長さ約0.6㎜、いぼ状突起がある、花期は6~7月。果期は7月~8月。
48 Silene pendula L. サクラマンテマ 桜まんてま
イタリア原産。英名はdrooping catchfly , nodding catchfly。中国名は大蔓樱草 da man ying cao。別名はフクロナデシコ。世界中で広く栽培され、帰化している。
1年草、傾伏するシュートを数本出す。直根は細い。茎は平伏又は斜上し、分枝し、葉がつき、長さ15~45㎝、洋毛状の毛があり、しばしば、まばらで、上部が粘る。葉は節に2個、下部の葉身は倒卵形~へら形、先は鈍形。上部の葉身は卵形~披針形、長さ2~5㎝×幅2~20㎜、先は鋭形、上面にはまばらに毛があり、下面は毛が多い。花序は偽総状花序、緩く、 葉状の苞腋に花が単生する。花柄は花時に直立、果時にははっきり反曲し、普通、萼より短く、軟毛と腺毛がある。萼は10脈が目立ち、倒卵形、特に果時に、棍棒形、分果柄(carpophore) の周りでくびれ、口部が狭くなり、へそ状に落ちくぼみ(umbilicate)、膨らみ、長さ13~18㎜、緩く、紙質、腺毛と腺の無い毛があり、まばらに羊毛状の毛があり、平行脈、緑色又は紫色、継ぎ目は淡色、裂片は三角形、長さ約2㎜、先は鈍形。花冠は明るいピンク色、爪部があり、爪部は萼と同長、拡大部は倒三角形、2裂し、長さ7~11㎜、裂片は散開し、卵形、付属体は2個、長さ1㎜以下、先は鋭形。雄しべはわずかに花弁の爪部より長い。柱頭は3個、花弁と同長。蒴果は萼に包まれ、卵状円錐形、6歯から裂開し、分果柄 (carpophore) は長さ3~6㎜。種子は暗褐色、広腎形、長さ13~15㎜、両面に浅いいぼのある同心の三日月形をもち、縁は大きく、深いいぼをもつ。2n=24(Europe)。[Flora of Nort America]。
品種) 'Celina' , 'Compacta' , 'Peach Blossom' , 'Ruberrina Compacta' , 'Triumph'
49 Silene platyphylla Franch. シレネ・プラティフィラ
synonym Silene platyphylla var. praticola (W.W.Sm.) C.Y.Wu
synonym Silene praticola W.W.Sm中国(四川省、雲南省)中部原産。中国名は宽叶蝇子草 kuan ye ying zi cao。標高2400~2700(~3200)mの森林の縁、低木林に生える。
多年草。根は円筒形。茎は散在し、高さ60~100㎝、よく分枝し、毛がある。葉は卵形、長さ6~8㎝×幅3~5㎝、下面に毛があり、縁には縁毛があり、3本または5本の脈が目立ち、基部はほぼ円形または浅い卵形で、先は鋭形。2出集散花序の下部の節間は長く、その他は短い。小花柄は長さ6~30㎜、微細剛毛がある。 苞は卵形で、草質、密に毛がある。萼は筒状こん棒形、長さ約1.5㎝、脈に密に刺状毛がある。萼歯は三角状披針形、縁は膜質、縁毛があり、先は鋭形または尖鋭形。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ1~2㎜。花弁は白色または淡赤色、長さ約2㎝。爪部は萼を越えてわずかに突き出し、倒披針形で無毛。拡大部は倒卵形、中間まで2裂し、裂片は楕円形で、両側に線形の裂片または狭い歯がある(var. praticolaでは浅い4裂)。雄しべはわずかに突き出す。花糸は無毛。花糸は明瞭に突き出る。蒴果は卵形、長さ8~10㎜、萼より短い。種子は暗褐色、腎形、長さ約1㎜、側部に耳穴(auricular pits)がある。花期は6~8月。果期は8~9月。
50 Silene qiyunshanensis X.H.Guo & X.L.Liu シレネ・キユンシャンエンシス
中国(安徽省)原産。中国名は齐云山蝇子草 qi yun shan ying zi cao。標高約400mの山地の砂利場に生える。多年草、全体に毛がある。茎は叢生し、拡散し、細く、太い不規則な根茎から生じる。ごく基部には葉がない(おそらく地下)が、葉のロゼットを形成し、地上レベルで分枝する。葉はほぼ心形~広卵形で、下部の葉は長さ4㎝までの長い葉柄があり、上部の葉の葉柄は次第に短くなる。茎葉は広卵形またはほぼ円形、長さ(0.5~)1.5~2(~3.5)㎝×幅(0.5~)1~2(~2.5)㎝、両面に絨毛があり、無毛になり、縁に縁毛があり、先は鋭形または微突形。二花集散花序は緩く、花序軸、小花柄および萼には密に毛がある。苞は卵形で、小さく、草質。小花柄は長さ0.7~2㎝。萼は鐘形、長さ4~5㎜、10脈があり、萼歯は卵状鈍形、長さ1.5~2㎜、密な絨毛がある。花弁は倒披針形、長さ7~9㎜、爪部は萼をわずかに越えて突き出る。拡大部は白色または淡ピンク色、4(または6)裂し、裂片は長円形。副花冠の鱗片は小さく、薄膜質。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ0.5~1㎜。雄しべは10本、突き出ない。花糸は基部で膨れ、無毛。花柱は3本。蒴果は卵形、長さ約2.5㎜、萼より短い。種子は紫褐色、円形~腎形、直径約0.7㎜、微細ないぼ状突起がある。花期は6~7月。果期は8~9月。
51 Silene regia Sims シレネ・レギア
USA(アラバマ州、アーカンソー州、ジョージア州、イリノイ州、インディアナ州、カンザス州、ケンタッキー州、ミズーリ州、オハイオ州、テネシー州)原産。英名はroyal catchfly。標高は100~400mの乾燥した草原、岩の多い開けた森、森林の端と茂みに生える。
多年生植物。 主根は丈夫で肉厚。 茎は数本、直立し、花序の下部が単純で、長さ50~160㎝、下部は無毛からまばらに後向きの毛があり、上部ではより密に茂り、腺がある。葉は花時に基部に向かって枯れ、10~20対になり、無柄、上部では徐々に小さくなる。葉身は3脈があり、披針形~卵形、基部は円形、長さ4~12㎝×幅20~50㎜、先は鋭形、尖鋭形ではなく、上面は無毛~ザラつく微軟毛があり、下面にはザラつく微軟毛がある。花序は頂生、集散花序、複合、花が多数つき、苞があり、花序柄があり、長さ15~25(~30)㎝×幅5~10㎝。 苞は披針形、長さ3~30㎜。花序柄は斜上する。小花柄は萼の長さの1~4倍、有柄の腺があり、微軟毛がある。花: 萼に明瞭な10脈があり、花時に筒形、長さ18~25㎜×幅3~4 mm、果時に中央で膨れ、長さ6~9㎜になり、臍のように窪み(umbilicate)、分果柄(carpophore)の周りの基部近くでくびれ、特に脈上に腺毛があり、脈は緑色 、萼片は長さ2~4㎜、中肋は披針形、縁はしばしば赤みを帯び、幅が広く膜質。花冠は緋色、爪部があり、爪部は萼と同長、拡大部は長円形~楕円形、分裂せず、まれに凹形または浅く2裂し、長さ10~20㎜×幅5~6㎜、先は丸く、付属体は2個、筒形、長さ2~4㎜。雄しべは突き出ている。花柱は3(~5)本、突き出る。蒴果は卵状楕円形、両端が狭く、萼の長さと等しく、6個(または8個または10個)の斜上する歯で裂開する。分果柄(carpophore)は長さ3~5mm。種子は暗赤褐色、腎形、長さ1.5~2㎜、平滑で光沢があり、側面は平らまたは凹面で、縁は角(かど)があり、浅いしわがある。2n=48。花期は夏~秋。
品種) 'Prairie Fire' , 'Prairie Fire'
52 Silene repens Patrin カラフトマンテマ 樺太まんてま
synonym Silene repens Patrin var. latifolia Turcz.
日本(北海道)、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、USA、カナダ原産。英名はpink campion 。中国名は蔓茎蝇子草 wan jing ying zi cao 。別名はチシママンテマ。標高0~3200mの北極圏および山岳地帯で、乾いた草が茂った斜面、開けた森林、ヤマヨモギの群生地、岩の露出部、崖錐、砂利平原などに生える。
多年草。直根は細い。てい幹は分枝し、木質で、地下に匍匐性の茎があり花芽と栄養芽の塊を生じる。茎は直立~ばらばらに広がり(straggling)、分枝しまたは単純で、葉があり、長さ7~35㎝、下向きの微軟毛がある。葉は節ごとに2枚つき、無柄、葉身は1脈があり、線形、披針形、または狭楕円形、基部に向かって先細り、先は鋭形、両面に微軟毛がある。花序は集散花序、複合、花が約(2~)5~20個つき、通常は小型で苞がある。苞は狭披針形、長さ2~15㎜。小花柄は斜上し、長さ0.1~1(~2)㎝、萼より短いかまたは長く、腺が無くまたは散在した腺を持ち、毛は白色、密で、短い。 花:萼は不明瞭な10脈があり、筒状鐘形、花時に長さ10~15㎜×幅3~5㎜、果時に棍棒形になり、幅5~6㎜になり、草質、絨毛があり、脈は紫がかった色または完全に紫色で、目立つ淡色の継ぎ目(commissures)はない。萼片は卵形、長さ1~2.5㎜、縁は広く薄膜質、先は鈍形。花冠はローズピンク色まれに白色、爪部があり、爪部は萼の長さに等しく、上部で広がり、拡大部は倒円錐形、2裂し、長さ3~7㎜、付属体は長さ0.7~1.2㎜。雄しべは萼の長さに等しい。花柱は3(~4)本、突き出る。蒴果は卵形で萼の長さに等しく、6(または8)個の広がった歯によって裂開する。分果柄(carpophore)は長さ4~7㎜。種子は灰褐色、翼がなく、腎形、長さ0.8~1㎜、側面にしわがあり、縁は短いパピラになる。2n=24, 48。花期は夏。
52-1 Silene repens Patrin var. apoiensis H.Hara アポイマンテマ
synonym Silene repens Patrin f. apoiensis (H.Hara) Kitam.
アポイ岳にのみ分布。茎の毛が少ない。茎や萼が紅紫色、葉裏も紫色を帯びる。POWOでは基本種に含める。53 Silene sachalinensis F.Schmidt カラフトビランジ 樺太びらんじ
synonym Melandrium kawashimae (Miyabe & Tatew.) Miyabe & Tatew.
synonym Silene kawashimae Miyabe & Tatew.
サハリン固有種。昭和の初期に、サハリンから園芸用に導入され、観賞用に栽培されている。多年草、高さ10~20㎝、全体に毛がある。根茎は地を匍匐し、先が斜上する。茎は傾伏~平伏し、葉は対生し、根生葉を除き無柄、葉身は長さ約1㎝、披針形、縁は全縁、縁毛があり、基部は漸尖し、先は鋭形。茎頂に1~3個の花を束生する。花は白色、萼は楕円形、緑色、密に毛がある。花弁は5個、卵形、先が浅く凹形、爪部は不明瞭。花期は5~6月。
54 Silene schafta Gmel. ex Hohen. シレネ・スカフタ
西アジア(アゼルバイジャン、イラン)原産。英名はCaucasian campion , autumn catchfly。丈夫で育てやすく、よく栽培されている。
多年草、ゆるく、マット状になる。茎は細く、岩を這い又は斜上し、長さ25~30㎝。花序は緩い二出集散花序、枝先に花が単生する。花は濃ピンク色~赤紫色。萼は細く、有毛、淡紫色、まれに淡ピンク色、長さ2.8㎝以下。花弁の拡大部は長さ約1㎝、浅く2裂する。各花弁の基部に副花冠の鱗片がつき、花の中央に持ち上がった環を作る。花期は7~10月。
品種) 'Abbotswood' , 'Brilliant' , 'Persian Carpet' , 'Robusta' , 'Shell Pink' , 'Splendens'
55 Silene seoulensis Nakai チョウセンマンテマ 朝鮮まんてま
朝鮮、中国原産。中国名は汉城蝇子草 han cheng ying zi cao
多年草、全体に有毛。茎は叢生、斜上し、高さ、40~60㎝、細く、まばらに分枝する。葉は広卵形~狭披針形、長さ3~6㎝×幅0.5~3㎝、両面にまばらに絨毛があるか又は脈上だけにあり、縁はざらざらの縁毛があり、基部は類無柄又は急に漸尖し、短柄があり、先は鋭形。花序は疎な2出集散花序、花が多数つく。苞は披針形。萼は鐘形、長さ約5㎜、無毛又は密に毛があり、果時に先が開き、縦の脈は暗緑色。萼歯は三角状卵形、長さ約1㎜。雌雄蕊柄(androgynophore)は無~長さ約1㎜、無毛。花弁は爪部が萼に包含され、倒披針形、無毛、耳は無い。拡大部は突き出し、卵形、長さ約5㎜、萼より短いか又はわずかに長い。種子は少数、大きく、類球形。花期は7~8月。果期は9~10月。
55-1 Silene seoulensis var. seoulensis
synonym Melandrium seoulense (Nakai) Nakai
葉は卵形~卵状披針形、長さ3~6㎝×幅2~3㎝。萼は無毛。
55-2 Silene seoulensis var. angustata Nakai
中国に分布。中国名は狭叶汉城蝇子草 xia ye han cheng ying zi cao 。
葉は狭披針形、長さ3~4㎝×幅5~10㎜。萼には密に毛がある。
56 Silene sieboldii (Van Houtte) H.Ohashi et H.Nakai マツモトセンノウ 松本仙翁
synonym Lychnis sieboldii Van HoutteLychnis sieboldii var.spontanea 日本(長野県、阿蘇)固有種。英名はSiebold's catchfly。山地の草原に生える。よく栽培されている。和名の由来は長野県松本にあったからともいわれてるが、もとは九州阿蘇のツクシマツモト(マツモトセンノウの変種)が原種のようである。
多年草、高さ30~80㎝。茎には下向きの毛が生え、茎、葉は濃い緑色。葉は対生し、長さ3~8㎝の長卵形~広卵形、毛を散生し、柄はない。花は直径約4㎝、5弁、朱色の花弁の先がハート形に切れ込み、先が不規則に歯牙状になり、側面に1個の刺状突起があり、花弁の基部に2個ずつ濃色の鱗片がつく。雄しべ10個、花糸も花弁と同色。花柱5個。萼は長さ2.5~3㎝の円筒形、先が5裂する。蒴果は長さ1.5~2.2㎝の惰円形、熟すと先が5裂する。種子は長さ約1.5㎜の腎形、小突起が密にある。2n=24。花期は6~7月。
57 Silene stenophylla Ledeb. スガワラビランジ 菅原びらんじ
ロシア(シベリア)原産。高山の砂礫地、湿潤なツンドラ地域に生える。
多年草、高さ15~25㎝。根茎は直立、丈夫、直径3~5㎜、地表面のすぐ下でよく分枝する。花茎が長さ15~2㎝、多少、帯紫色。花のつかないシュートは長さ5~6㎝。花のつかないシュートの葉は線形、長さ2~4㎝×幅1~2㎜、類皮革質、縁毛がある。葉柄の基部は葉鞘に合着する。葉鞘は皮革質、鱗片状。花茎の根生葉は花時に枯れる。茎葉は線形、長さ1~3.5㎝×幅1~2㎜、類皮革質、縁毛があり、基部で合着する。花茎に1~5個つき、斜め~直立。花柄は長さ1~3㎝、無毛。苞は卵形、尖鋭形、紫色、長さ4~6㎜×幅1~2㎜、基部で合着し、縁毛がある。小苞は線形、紫色、長さ3~4㎜×幅1㎜、無毛。萼は鐘形、長さ13~15㎜×直径7~9㎜、10脈があり、帯紫色、無毛。萼歯は広卵形、長さ3~4㎜、縁毛がある。花弁は淡ローズ色~白色、長さ15~16㎜×幅5㎜、2裂し、裂片は長楕円形、長さ4㎜×幅1㎜、爪部にはわずかに耳状。花弁の付属体は扇形、長さ約1㎜。雄しべは10個、葯は長さ1.5㎜。花糸は長さ9~11㎜。花柱は3個。分果柄(carpophores)は長さ3㎜、密に軟毛がある。花期は7~8月。
ロシア科学アカデミーが3万年以上前に凍結した果実の胎座からの培養に成功したと2012年に報告された。
58 Silene sunhangii D.G.Zhang, T.Deng & N.Lin シレネ・スンハンギー
中国中部(湖北省、湖南省)原産。標高1200~2200mの湿った常緑樹または落葉混交林に生える。
多年草。 植物は密な縁毛があり、塊根と、多くの花をつける2出花集散花序を持つ。茎は散在し、高さ30~80㎝、よく分枝し、毛がある。葉は楕円形、長さ4~10㎝×幅1~5㎝、無毛、3脈が目立つ。小花柄は長さ20~30㎜、毛がある。萼は筒状こん棒形、約、長さ1.5~2㎝、脈には密に毛が生える。萼歯は三角形、縁毛がある。花弁は淡紫色~赤色、長さ約2.5㎝。爪部は萼を越えて突き出る。 副花冠(catacorolla)には房がつき(tasseled)、拡大部は倒卵形、1/3まで2裂し、裂片は披針形で、両側に線状の裂片や狭い歯は無い。雄しべはわずかに突き出る。花糸は毛がある。蒴果は卵形、長さ10~20㎜。種子は暗褐色、腎形、長さ約1 ㎜、側部に耳孔(auricular pits)がある。花期は2~4月。果期は4~6月(2019記載)。
59 Silene takesimensis Uyeki et Sakata タケシママンテマ
韓国原産。鬱陵島沿岸の斜面や森の端に生える。
高さ20~50cmで、根の先から多くの主茎が出る。葉は対生し、線状披針形、中央部の葉は通常、長さ6~9㎝×幅7~10㎜、上部ほど小さくなる。花序は上部の枝先や葉腋に円錐花序を形成し、花は白色、小花柄は長さ4~15㎜、無毛。萼は円筒形、長さ約8㎜、10脈があり、先は5裂する。花弁は5個、楔形、長さ約12㎜、先は2裂し、裂片は長さ約2㎜。蒴果は楕円形で長さ約7㎜。花期は6~8月。果期は9~10月。
60 Silene tatarinowii Regel エダハリマンテマ 枝張まんてま
中国(甘粛省、貴州省、河北省、河南省、湖南省、内モンゴル、寧夏、山西省、陝西省、四川省)原産。中国名は石生蝇子草 shi sheng ying zi cao 。標高800~2900mの低木林、森林に覆われた石の山、岩の亀裂に生える。多年草、全体に細かい後ろ向きの毛がある。根は帯黄色、円筒形または棘状。茎は斜上または仰臥し(supine)、分枝し、ときに節に不定根が出る。葉は披針形または卵状披針形、稀に卵形、長さ2~5㎝×幅0.5~1.5(~2)㎝、両面に絨毛がまばらにあり、縁には短い縁毛があり、1本または通常3本の脈があり、基部は広楔形または漸尖し、葉柄になり、先は尖鋭形。二花集散花序は緩く、広い。小花柄は長さ8~30(~50)㎜、細く、毛がある。苞は披針形、草質。萼は筒状こん棒形、長さ1.2~1.5㎝×幅3~5㎜、縦脈は緑色、まれに紫色、無毛またはまばらに毛がある。萼歯は三角形、縁は膜質、短い縁毛があり、先は鋭形、稀に鈍形。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ約4㎜、無毛。花弁は白色、倒披針形で、爪部がないか、萼を超えてわずかに突き出し、無毛で、耳がある。拡大部は倒卵形、長さ約7㎜、拡大部の1/4まで浅く2裂し、それぞれ2個の側裂片と1個の小さな線形の裂片または細長い歯がある。副花冠の鱗片は楕円形、縁は全縁。雄しべが顕著に突き出ている。花糸トは無毛。花柱は顕著に突き出る。蒴果は卵形または狭卵形、長さ6~8㎜、萼より短い。 種子は灰褐色、腎形、長さ約1㎜。花期は7~8月。果期は8~10月。
61 Silene tokachiensis Kadota トカチビランジ 十勝びらんじ
synonym Silene stenophylla auct. non Ledeb.
日本(ニペソツ山)固有種。
特徴:1)茎は地表面でよく分枝し、有花茎と無花茎の2型がある。2)萼筒は鐘形あるいは壷形、長さ10cm あるいはそれ以上、多少とも膨大し、無毛。3)花弁の舷部が2裂し爪部の上部が耳状となり、爪部の上部向軸側に且、対の小鱗片(付属体)がある。4)花柱は3 本である。
多年草、高さ10~15㎝。根茎は直立し、太くて丈夫、直径4~10㎜。茎は地表面からよく分枝し、2形。花茎は長さ5~10㎝、花のつかないシュートは長さ5~8㎝。花のつかないシュートの葉は叢生し、線状へら形、長さ3~6㎝×幅3~4㎜、両面とも無毛、小さな鋸歯縁、歯柄の基部は合着し、鞘状になり、膜質、鱗片状ではない。前年の葉柄は宿存するが、鱗片状ではない。花茎の根生葉は宿存しない。茎葉は倒披針形、長さ1.3~3㎝×幅1~2.2㎜、縁がざらつき、基部で合着する。花はローズ色、下向き、花茎に3~5個つく。苞は卵形、鋭形、長さ5~7㎜×幅3~5㎜、帯紫色。外側にパピラがあり、膜質、縁毛がある。小苞は狭披針形、長さ約5㎜×幅1㎜。萼はつぼ形、長さ9~11㎜、直径7~9㎜、暗紫色、10脈がある。萼歯は5個、広卵形、長さ約2㎜、縁毛がある。花柄は長さ6~12㎜、萼と同長又は萼より短く、帯紫色、無毛。花弁は長さ13.5~14.5㎜×幅3~3.5㎜、2裂し、裂片は長楕円形、長さ4㎜×幅1.5㎜。爪部には耳がある。花弁の付属体は2個、長さ約1.5㎜、狭楕円形。雄しべは10個。花糸は長さ7~11㎜。葯は長さ約2㎜。花柱は3個。分果柄(carpophores)は長さ1.5㎜、密に軟毛がある。花期は8月。
62 Silene uniflora Roth シレネ・ユニフローラ
synonym Silene maritima With.
synonym Silene vulgaris subsp. maritima (With.) A. Love & D. Love
ヨーロッパ、アゾレス諸島、マデイラ諸島原産。英名はsea campion。別名はホテイマンテマ。多年草、長さ10~40㎝、多茎。根はかぶら形。茎は平伏、無毛。葉は肉質、披針形~倒披針形~楕円形~へら形、無毛、縁には縁毛又はパピラがある。花序は1個の2出集散花序、花が1~3(~7)個つく。苞は上部の葉に似るが、小さい。花は花柄があり、花序の中央の花は葉柄が長さ45㎜以下。萼は長さ12~20㎜×幅8~12㎜、卵状球形、窪みがあり、無毛、脈はときに薄く、強く網状、萼歯は長さ約3㎜、三角形、縁毛がある。花弁の拡大部は長さ4~9㎜、2裂し、裂片は卵状楕円形、白色、花冠は無く、爪部は先端で大きくなり、強く耳がある。蒴果は長さ6~9.5㎜×幅5~8.5㎜、球形、6個の反曲する歯がある。種子は長さ1~1.3㎜×幅1.2~1.8㎜、ときに、いぼ状。[Flora Iberica]
品種) 'Alba Plena' , 'Compacta' , 'Druett's Variegated' (v) , 'Flore Pleno' , 'Ice Cups' , 'Robin Whitebreast' (d) , 'Rosea' , 'Silver Lining' (v) , 'Swan Lake' (d) , 'Variegata' , 'White Bells'
63 Silene uralensis (Rupr.) Bocquet タカネマンテマ 高嶺まんてま
synonym Silene wahlbergella Chowdh.
ロシア、ヨーロッパ北部、北アメリカ(カナダ、アラスカ、USA)、グリーンランド原産。英名はnodding campion , polar campion。
多年草、叢生または叢生しない。直根は丈夫。茎は直立し、分枝または単純で、高さ5~40㎝、無毛または毛がある。葉:根生葉は少数または多数、葉柄があり、葉身は狭倒披針形、へら形、長さ1~13㎝×幅1~7㎜、縁は縁毛があり、無毛または毛がある。茎葉は1~5対、無柄、上部で大幅に小さくなり、葉身は線形~披針形、長さ0.1~4㎝×幅1~5㎜。小花柄は細いかまたは丈夫。花は直立またはうなずく。萼は明瞭な10脈があり、卵状楕円形~広鐘形、膨らみ、長さ11~18㎜×幅6~13㎜mm、薄い紙質、脈は紫色または褐色。萼片は卵形~三角形、長さ2~3㎜。花冠はくすんだピンク色、紫色、または赤色、爪部は萼よりも短く~同長、拡大部は爪部と明確に区分されず、卵形または倒卵形、無裂~2裂し、長さ1~4㎜。 雄しべは花弁より短い。花柱は5本、花弁より短い。蒴果は萼よりわずかに長く、10個の反り返った歯で裂開する。分果柄(carpophore)は長さ1~2㎜。種子は褐色またはすすけた褐色、幅広の翼があり、丸く~±角(かど)があり、翼を含めて直径1.5~2.5㎜。3亜種がある。
64 Silene virginica L. シレン・ビルギニカ
USA(アラバマ州、アーカンソー州、デラウェア州、ジョージア州、イリノイ州、インディアナ州、アイオワ州、カンザス州、ケンタッキー州、ルイジアナ州、ミシガン州、ミシガン州、ミズーリ州、ニューヨーク州、ノースカロライナ州、オハイオ州、オクラホマ州、ペンシルバニア州、 サウスカロライナ州、テネシー州、バージニア州、ウェストバージニア州)原産。英名はfire-pink 。標高200~1300mの落葉樹林、断崖、湿った樹木の茂った斜面に生える。
多年草。 直根は細い。てい幹は傾伏し、分枝し、葉の房と直立した花芽を出す。茎は下部~花序まで単純で、長さ20~80㎝m、腺毛があり、しばしば基部近くで無毛になる。葉:根生葉は多数つき、房状になり、葉柄があり、葉柄には縁毛があり、葉身は倒披針形、長さ3~10㎝×幅8~18㎜、基部はへら形、先は鋭形~鈍形、両面とも無毛、稀に微軟毛がある。茎葉は2~4対、広い柄状~無柄、上部で小さくなり、葉身は倒披針形~狭楕円形~披針形、長さ1~10(~30)㎝×幅4~ 16(~30)㎜、縁には縁毛があり、先は鋭形、短い尖鋭形、 無毛。花序は開き、斜上するしばしば長い枝を持ち、花が(3~)7~11(~20)個つき、苞があり、腺毛があり、しばしば密にあり、粘性がある。苞は葉状、披針形、長さ4~40㎜。花時に小花柄が直立し、果時には基部が鋭く曲がり、萼の2~1倍の長さになる。花: 萼は緑色~紫色、10脈があり、花時に筒形~狭倒円錐形、長さ16~22㎜×幅5~6㎜、果時にこん棒形で膨れ、長さ7~12㎜までになり、腺毛があり、萼片は披針形~長円形、長さ3~4㎜、縁は通常狭く膜質になり、先は鋭形または鈍形。花冠は緋色、萼の長さの2倍、爪部があり、爪部に縁毛があり、拡大部に向かって徐々に広がり、萼より長く、拡大部は倒三角形~長円形、深く2裂し、2個の小さな側歯があり、長さ10~14㎜、無毛またはほぼ無毛、付属体は2個、筒形、長さ3㎜m。雄しべは突き出し、花弁より短い。花柱は3(~4)本、雄しべと同長。蒴果は卵形、萼と同長、3(または4)個の歯から裂開し、ときに6(または8)個に裂ける。分果柄(carpophore)は長さ2~3(~4)㎜。種子は淡灰色(ash gray)、腎形、長さ1.5㎜、大きく膨らんだパピラを持つ。2n=48。花期は春。
品種) 'Pink Form'
65 Silene viscaria (L.) Borkh. シレネ・ビスカリア
synonym Lychnis viscaria L.
synonym Viscaria vulgaris Bernh.
ヨーロッパ、ロシア、トルコ原産。英名はsticky catchfly , clammy campion。
高さ30~60㎝、分枝せず、無毛。茎は上部の節で強く粘る。葉は狭披針形、基部ではロゼットになり、茎葉は根生葉より小さい。花序は高い円錐花序。花は直径約2㎝。花弁はにローズピンク色、長さ約2㎝、副花冠は高さ約3㎜。花柱は5個。萼はゴブレット形、長さ11~13㎜、10うねがある。蒴果は長さ約7㎜。花期は5~7月。2n=24。
品種) 'Alba' , 'Angel' , 'Fire' , 'Patio Mix' , 'Splendens Plena'[AGM]
66 Silene vulgaris (Moench) Garcke シラタマソウ 白玉草
synonym Silene cucubalus Wibel
synonym Silene venosa (Gilib.) Asch.
synonym Silene latifolia (Mill.) Britton et Rendle
中国(黒竜江省、内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区、西蔵)、モンゴル、ロシア、インド、ネパール、パキスタン、カザフスタン、コーカサス、西アジア、ヨーロッパ、北アフリカ原産。中国名は白玉草 bai yu cao。英名はbladder campion。標高200~2700mの牧草地、低木林地帯に生える。
多年草、灰緑色、高さ40~100㎝、全体が無毛。根はやや丈夫で木質化する。茎はまばらに叢生し、直立し、通常は灰色で、先で分枝する。葉は披針形~卵形、長さ4~10㎝×幅1~3(~4.5)㎝、下部の茎葉は明瞭な中脈があり、基部は漸尖し、先は尖鋭形または鋭形。上部の葉は楔形で、わずかに茎を抱く。花は通常、多数の花がつく2出集散花序、ときに密錐花序(thyrsoid inflorescences)。花はときに広がったり、わずかに垂頭(点頭)する。小花柄は萼よりも短いかそれ以下。苞は卵状披針形、草質。萼は通常紫色を帯び、広卵形で膨らみ、長さ1.3~1.6㎝×5~7㎜、ほぼ膜質、20本の網状脈がある。萼歯は広三角形、短く、縁毛がある。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ約2㎜、無毛。花弁は長さ1.5~1.8㎝。爪部は楔状倒披針形、無毛、耳は卵形。拡大部は萼を越えて突き出し、白色、倒卵形で、拡大部の基部まで深く2裂し、裂片は狭倒卵形。副花冠の鱗片は小さい。雄しべと花柱が顕著に突き出る。花糸は無毛。葯は紫色。 花柱は3本。蒴果はほぼ球形、直径約8㎜、萼より短い。 種子は球形の腎形、長さ約1.5㎜。花期は6~8月。果期は8~9月。2n=24, 48。
67 Silene wilfordii (Regel) H.Ohashi et H.Nakai エンビセンノウ 燕尾仙翁
synonym Lychnis wilfordii (Regel) Maximowicz [Flora of China] センノウ属
日本(北海道の日高、長野県、埼玉県)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は丝瓣剪秋罗 si ban jian qiu luo 。多年草。高さ45~100㎝、無毛又は軟毛があり、多細胞の腺毛が混じる。茎は単純又は上部で分枝する。葉は無柄、卵状披針形~狭披針形、長さ3~12㎝×幅1~2.5㎝、無毛、厚く縁毛がある。二出集散花序は密、花が多数つく。花柄は長さ3~20㎜。苞は線状披針形。花は直径2.5~3㎝。萼は狭漏斗形、長さ1.5~2㎝×幅4~5㎜、脈は目立ち、歯は長さ約3㎜。花弁は拡大部が明るい赤色、4裂し、冠裂片は錐形~広糸状、先は鋭形。爪部は狭い楔形。副花冠の鱗片は暗赤色、長楕円形。雄しべと花柱は突き出る。雌雄蕊柄(androgynophore)は長さ約5㎜。蒴果には先端が尖ったいぼがある。花期は6~7月。果期は8~9月。2n=24。
68 Silene yanoei Makino テバコマンテマ 手箱まんてま
synonym Melandrium yanoei (Makino) Williams
synonym Silene seoulensis Nakai
synonym Melandrium seoulense (Nakai) Nakai= Silene seoulensis var. seoulensis
synonym Melandrium seoulense var. ramosum Nakai in J. Jap. Bot. 13: 872 (1937)
synonym Silene seoulensis Nakai in J. Coll. Sci. Imp. Univ. Tokyo 26(1): 77 (1909)
synonym Silene seoulensis var. angustata C.L.Tang日本(四国)、朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、遼寧省)原産。POWOではSilene seoulensis Nakai をsynonymとし、var. seoulensis、var. angustataを含めている。
茎は叢生し、細くて長く、高さ25~45㎝、短毛を散生し、節は高い。葉は対生し、短柄があり、卵形~披針状卵形、長さ2~4㎝×幅1~1.5㎝、先は鋭尖形、下部の葉はへら状長楕円形、両面とも無毛、縁毛がある。花は茎頂に集散花序にまばらにつき、直径11~15(17~25)㎜、花柄は長い。萼は緑色、鐘形、5裂し、10脈がある。萼片は三角状披針形、先が尖る。花冠は白色、5裂し、花弁の先は浅く2裂する。副花冠の鱗片は2個。雄しべは10個。花柱は3個。子房は楕円状卵形、雌雄蕊柄は短い。蒴果は卵形、短柄がある。種子は多数。花期は7~9月。
【Flora of Chinaの解説】
(1) Silene seoulensis Nakai
朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、遼寧省)原産。中国名は汉城蝇子草 han cheng ying zi cao。
多年草、全体に毛がある。茎は叢生し、斜上し、高さ40~60㎝、細く、まばらに分枝する。葉は広卵形~狭披針形で、長さ3~6㎝×幅0.5~3㎝、両面に絨毛がまばらにあるか、または葉脈にのみあり、縁は縁毛がありザラつき、基部はほぼ無柄または急に漸尖して短い葉柄になり、先は鋭形。花序は緩く、多数の花がつく2出集散花序。苞は披針形。萼は鐘形、長さ約5㎜、無毛または密に毛があり、果時に先が開き、縦脈は暗緑色。萼歯は三角状卵形、長さ約1㎜。雌雄蕊柄(androgynophore)は廃れ、長さ1㎜まで、無毛。花弁の爪は萼に内包し、倒披針形、無毛、耳は無い(exauriculate)。拡大部は突き出し、白色、中間まで2裂する。雄しべはわずかに突き出す。花糸は無毛。花柱は突き出る。蒴果は卵形、長さ約5㎜、萼より短いか少し長い。種子は少数、大きく、ほぼ球形。花期は7~8月。果期は9~10月。
1a. 萼は無毛...................................................(1)a. var. seoulensis
1b. 萼には密な毛が生えている ..................(1)b. var. angustata
(1)a Silene seoulensis var. seoulensis
synonym Melandrium seoulense (Nakai) Nakai.
朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、遼寧省)原産。中国名は汉城蝇子草 han cheng ying zi cao。
葉は卵形または卵状披針形、長さ3~6㎝×2~3cm。 萼は無毛。
(1)b Silene seoulensis var. angustata C. L. Tang
中国(遼寧省南東部)原産。中国名は狭叶汉城蝇子草 xia ye han cheng ying zi cao。
葉は狭い披針形で、長さ3~4cm×幅5~10mm。 萼には密に毛がある。
69 その他
品種) 'Arkwrightii' , 'Bill MacKenzie' , 'Confetti' , 'Country Comet' , 'Frivola Rose' , 'Hot Stuff' , 'Ice Clips' , 'Jiggy Pink' , 'Jiggy White' , 'Longwood' , 'Lumina Bronze Leaf Red' , 'Orange Zwerg' , 'Pink Bells' , 'Purple Rim' , 'Rocking Robin' , 'Rolly's Favorite' , 'Snowflake' , Sparkling Rose = 'Sl 11 04-61' , 'Vesuvius' , 'Wisley Pink'
マンテマ属の類似属
センノウ属(マンテマ属に含められた)
family Caryophyllaceae - genus Lychnis2年草又は多年草。茎は直立。葉は披針形~卵状披針形、先は鋭形。花序は2出集散花序又はは花が単生。萼は筒形~狭い漏斗形~狭い鐘形、普通、膨らまず、10脈があり、5歯をもつ。花弁は5個、長い爪部があり、拡大部は白色、ピンク色又は赤色、全縁~2裂~4裂~不規則に切れ込む。副花冠の鱗片がある。雌雄蕊柄(androgynophore)は± 目立ち、無毛。雄しべは10個。子房は1室。胚珠は多数。花柱は5個、萼歯に対生し、家中の基部が果時に宿存する。蒴果は胞間裂開(septicidal)、5歯をもつ。種子は多数、腎形、小さく、± いぼがある。
世界に約25種があり、温帯のアフリカ、アジア、ヨーロッパに分布する。
【センノウ属の種】
1 Lychnis abyssinica (Hochst.) Liden
synonym Uebelinia abyssinica Hochst.
synonym Silene abyssinica (Hochst.) Neumayer
2 Lychnis alba Mill. マツヨイセンノウ
synonym Silene latifolia Poir. subsp. alba (Mill.) Greuter et Burdet
※ Lychnis alpina L. ⇒Silene suecica (Lodd.) Greuter & Burdet
3 Lychnis chalcedonica L. アメリカセンノウ
synonym Silene chalcedonica (L.) E.H.L.Krause
4 Lychnis coelirosa (L.) Desr. コムギセンノウ
synonym Silene coeli-rosa (L.) Godron
5 Lychnis cognata Maxim. チョウセンマツモト
synonym Silene cognata (Maxim.) H.Ohashi et H.Nakai
6 Lychnis coronaria (L.) Desr. スイセンノウ
synonym Silene coronaria (L.) Clairv
7 Lychnis coronata Thunb. ガンピセンノウ(ガンピ)
synonym Silene banksia (Meerb.) Mabb.
7-1 Lychnis coronata Thunb. var. verticillata Makino クルマガンピ
synonym Silene banksia (Dennst.) Mabb. f. verticillata (Makino) Yonek.
8 Lychnis crassifolia (T.C.E.Fr.) M.Popp
synonym Uebelinia crassifolia T. C. E. Fries
9 Lychnis flos-cuculi L. カッコウセンノウ
synonym Silene flos-cuculi (L.) Greuter et Burdet
10 Lychnis flos-jovis (L.) Desr.
synonym Silene flos-jovis (L.) Greuter & Burdet
11 Lychnis fulgens Fisch. ex Spreng. エゾセンノウ
synonym Silene fulgens (Fisch. ex Spreng.) E.H.L.Krause
12 Lychnis stellarioides Maxim. センジュガンピ
synonym Lychnis gracillima (Rohrb.) Makino
synonym Silene gracillima Rohrb
13 Lychnis kigesiensis (R. Good) M.Popp
synonym Uebelinia kigesiensis R.D. Good
14 Lychnis kiusiana Makino オグラセンノウ
synonym Silene kiusiana (Makino) H.Ohashi et H.Nakai
15 Lychnis kiwuensis (T. C. E. Fries) M.Popp
synonym Uebelinia kiwuensis T. C. E. Fries
16 Lychnis lagrangei (Cosson) Cosson
synonym Silene lagrangei (Cosson) Greuter & Burdet
17 Lychnis miqueliana Rohrb. フシグロセンノウ
synonym Silene miqueliana (Rohrb.) H.Ohashi et H.Nakai
17-1 Lychnis miqueliana Rohrb. f. argyrata M.Mizush. シロガネセンノウ
synonym Silene miqueliana (Rohrb.) H.Ohashi et H.Nakai f. argyrata (M.Mizush.) H.Ohashi et H.Nakai
17-2 Lychnis miqueliana Rohrb. f. plena (Makino) Okuyama ザクロガンピ
synonym Silene miqueliana (Rohrb.) H.Ohashi et H.Nakai f. plena (Makino) H.Ohashi et H.Nakai
18 Lychnis rotundifolia (Oliv.) M.Popp
synonym Uebelinia rotundifolia Oliv.
19 Lychnis senno Siebold et Zucc. センノウ
synonym Silene bungeana (D.Don) H.Ohashi et H.Nakai
※ Lychnis sibirica L. シベリアセンノウ⇒Silene linnaeaana Vorosch.
20 Lychnis sieboldii Van Houtte マツモトセンノウ
synonym Silene sieboldii (Van Houtte) H.Ohashi et H.Nakai
21 Lychnis viscaria L.
synonym Silene viscaria (L.) Borkh. シレネ・ビスカリア
22 Lychnis wilfordii (Regel) Maxim. エンビセンノウ
synonym Silene wilfordii (Regel) H.Ohashi et H.Nakai
23 Lychnis x haageana Lemaire オトメセンノウ 異分類
ナンバンハコベ属(マンテマ属に含められた)
family Caryophyllaceae - genus Cucubalus多年草。 葉は卵形~卵状披針形。花序は2出集散花序、花が少数つく。萼は鐘形、±果時に膨らむ。萼は5歯、鋸歯がある。花弁は5個、2裂する。副花冠の鱗片(coronal scale)がある。雄しべは10本。花柱3本。分果柄(carpophore)がある。果実は裂開がなく、やや肉厚で、熟すと乾く。
単一種(Cucubalus baccifer L.)の属で、ヨーロッパ、アジア北西部、アフリカに分布する。
ヘリロスペルマ属(マンテマ属から分離独立)
family Caryophyllaceae - genus Heliosperma多年草、雌雄同体。よく分化した茎をもち。2出集散花序。萼には10脈があり、吻合しない。雄しべの花糸は無毛。花柱は3本。果柄(carpophore)が発達し、短かく、無毛。蒴果は6裂片に裂開する。種子はレンズ形、両凸形、背面は長い毛に囲まれ、パピラがある。[sect. Heliosperma Rchb.]
世界に約10種があり、ヨーロッパに分布する。
【ヘリロスペルマ属の種】
Heliosperma alpestre (Jacq.) Rchb. - オーストリア、イタリア、ウクライナ、ユーゴスラビア
Heliosperma intonsum (Greuter & Melzh.) Niketić & Stevan.-ギリシャ
Heliosperma macranthum Pančić - アルバニア、ギリシャ
Heliosperma malyi (H.Neumayer) Degen - ユーゴスラビア
Heliosperma nikolicii (A.Seliger & Wraber) Niketić & Stevan.p - アルバニア、ユーゴスラビア
Heliosperma oliverae Niketić & Stevan. - アルバニア、ユーゴスラビア
Heliosperma pusillum (Waldst. & Kit.) Rchb. - ヨ-ロッパ
Heliosperma retzdorffianum K.Malý - アルバニア、ユーゴスラビア
Heliosperma tommasinii (Vis.) Vis. - アルバニア、ユーゴスラビア
Heliosperma veselskyi Janka - アルバニア、オーストリア、イタリア、ユーゴスラビア
参考
1) Flora of North AmericaSilene
Silene
Silene acaulis (L.) Jacq.
Silene
Silene
他の離弁花類 (1) (暫定リスト)
A New Species of Silene (Caryophyllaceae) from Hokkaido, Japan
北海道産マンテマ属の1新種トカチビランジ
Silene
ビランジについて(山崎敬)
日本と台湾のフシグロ類(大井次三郎・大橋広好)
大橋広好,立石庸一 中井秀樹 : ビランジとタカネビランジ
희귀, 특산식물 분포조사 종합보고서 (Caryophyllaceae)
29) 울릉장구채 Silene takeshimensis Uyeki & Sakat p68
Silene italica (L.) Pers. subsp. italica
Notulae ad Plantas Japoniae & Koreae XLI.
Silene Harai NAKAI. sp. nov. p53-54
Silene L.
Silene sunhangii (Caryophyllaceae), a new species from China
Silene gallica L.