ヤマハッカ 山薄荷

mark

Flora of Mikawa

シソ科 Lamiaceae ヤマハッカ属

中国名 内折香茶菜 nei zhe xiang cha cai
学 名 Isodon inflexus (Thunb.) Kudo
ヤマハッカ花
ヤマハッカ花
ヤマハッカ花
ヤマハッカ花
ヤマハッカ茎
ヤマハッカ分果
ヤマハッカ茎
ヤマハッカ
ヤマハッカ葉表
ヤマハッカ葉裏
ヤマハッカ表裏の腺点
ヤマハッカ果実
花 期 9~11月
高 さ 60~90㎝
生活型 多年草
生育場所 日当たりのよい草地、道端
分 布 在来種 本州、四国、九州、朝鮮、中国
撮 影 新城市  05.10.15
ヤマハッカはハッカの名前がついているが、ほとんど臭わない。
 茎は4稜形、下向きい曲がった毛がある。葉は対生し、長さ3~6㎝の長楕円形~広卵形、葉の基部が急に細くなり、翼のついた葉柄に続く。葉柄は長さ0.5~3.5㎝。葉裏には腺点がある。花は総状花序につき、花冠は青紫色、長さ7~9㎜、上唇に濃紫色の班点が多数つき、下唇の縁が内巻きになって舟形に突き出す。雄しべ、雌しべとも花冠より短くて見えない。萼は長さ2.5~3㎜、短毛が密生し、先が5裂して5個の萼歯がほぼ同長、果時には大きくなる。果実は4分果、熟すと紫色~褐色になる。分果は長さ約1.5㎜。2n=24。
 白花品はシロバナヤマハッカという。
 ヒキオコシは全体に白っぽい。花がよく似ているが雄しべや雌しべが花冠から突き出る。
 イヌヤマハッカは葉の幅が狭く、基部はなだらかに細くなる。花がやや大きく、花冠に濃紫色の班点がない。萼が2唇形、3裂する上唇の萼歯がやや短い。
 コウシンヤマハッカカメバヒキオコシの変種であり、鋸歯が鋭く、葉先が鋭く尖る。2唇形の萼の上側の萼歯が長い。

ヤマハッカ属

  family Lamiaceae - genus Isodon

 低木、亜低木、多年草。根茎は木質、太い。葉は普通、葉柄が有る。葉は鋸歯状。集散花序に花が(1~)3~多数個つき、ほぼ疎な密穂花序、又は狭い~開いた又は円錐花序、まれに密な穂状花序になる。花柄がある。萼は鐘形~筒状鐘形、真っすぐ又は下向きに曲がり、しばしば、広がる。拡大部は等長又はほぼ等長の5歯又は2唇形、上唇は3歯、下唇は2歯。花冠筒部は突き出し、下向きに曲がり(declinate)又は急に下に曲がり、ときに真っすぐ、基部近くの外側に袋又は距がある。花冠拡大部は2唇形、上唇は4裂し、反曲又は反転する。下唇は全縁 凹面、舟状(navicular)。雄しべは4個、下向きに曲がる。花糸は分離、歯は無い。葯は室が2個、先は普通、合流して1つになる。花柱は先が短く2裂する。小堅果は類球形又はたまに、長楕円形~卵形、無毛又は有毛、平滑~顆粒状~斑点状。
 世界に約100種があり、アジアにほとんどあり、ごく少数がアフリカに分布する。

ヤマハッカ属の主な種

1 Isodon amethystoides (Benth.) H.Hara ダイトンヤマハッカ
 中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、湖北省、江西省、浙江省)、台湾に分布。中国名は香茶菜 xiang cha cai。標高200~900mの森林、湿った草地に生える。薬用として使用される。
 多年草、直立する。茎は高さ30~150㎝、密に密着し、内湾曲した軟毛または軟毛があり、腋生の小枝は不妊。葉柄は0.2~2.5㎝、葉身は卵形円形から披針形、長さ0.8~11㎝×幅0.7~3.5㎝、薄い紙質、上面はオリーブグリーン色、±密に微細剛毛があり、ときにほぼ無毛になり、下面は帯緑色、細柔毛または小綿毛があり、ときにほぼ無毛、基部は急に漸尖または広楔状漸尖形、縁は全縁の基部を除いて円鋸歯状、先は尖鋭形~鈍形。円錐花序は頂生、集散花序は緩く、花が多数つき、長さ2~9㎝×幅1.5~8㎝、散開した長い小枝がある。花葉は卵形、茎葉に似ており、より小さい。萼は鐘形、約・長さ 2.5㎜×幅2.5㎜、外側はまばらに多毛または無毛で、白色または黄色の腺が散在する。歯は 5 個、ほぼ等長、三角形、萼の長さの約 1/3。果時の萼は直立し、広鐘形、長さ4~5㎜×幅約 5㎜。花冠は青みがかった白色、白色、または帯紫色、上唇は帯紫青色、長さ約7㎜、外側にはまばらに微軟毛がある。雄しべは含まれる。花柱は含まれる。小堅果は卵形、長さ約2㎜、褐色~黄色または白色の腺がある。花期は6~10月。果期は9~11月。

2 Isodon effusus (Maxim.) H.Hara セキヤノアキチョウジ 関屋の秋丁字

 本州(太平洋岸、栃木県~愛知県)に分布。山地の木陰に生える。
 多年草、高さ30~90㎝。葉は対生し、長さ5~15㎝の長楕円形で先が長く尖り、短い葉柄がある。茎頂の総状花序に多数の花を片側に向けてつける。花は長さ約20㎜、幅5~6㎜の唇形花、花柄は長さ10~25㎜と長く、無毛。萼は小さく、5個の萼歯が尖る。果実は4分果。分果は長さ1.5~2㎜。花期は9~10月。

2-1 Isodon effusus (Maxim.) H.Hara f. leucanthus (Honda) H.Hara シロバナセキヤノアキチョウジ 白花関屋の秋丁字

 白花品種。

3 Isodon excisus (Maxim.) Kudo  マンシュウカメバヒキオコシ 満洲亀葉引き起こし

 日本、朝鮮、中国(河北省、黒龍江省、吉林省、遼寧省、山西省)、ロシアに分布する。中国名は尾叶香茶菜 wei ye xiang cha cai 。標高500~1100mの草原、森林の縁、森林に生える。日本が分布域に含まれている。
 多年草。茎は多数、直立、高さ60~100㎝、基部は半木質、まばらに毛がある。葉柄は長さ0.6~6cm、まばらに毛がある。下部の葉の葉身は広楔形~±切形で急に漸尖して沿下し、縁は粗い歯状鋸歯があり、上面は伏剛毛状微細剛毛があり、葉脈上に密に毛があり、下面は無毛、黄色の腺があり、葉脈上にまばらに毛がある。茎葉は対生し、円形または円形状形、長さ(4~)6~13㎝×幅(3~)4~10㎝、基部は楔形、縁は全縁または1個~少数の鋸歯があり、先端は切除され(excised)、先端の歯は長さ4~6㎝、側脈は3対または4対、隆起する。円錐花序は頂生または腋生、長さ6~15㎝。集散花序は花が(1~)3~5個つき、花序柄があり、密に毛がある。花葉は苞状、卵形、長さ5㎜まで。小苞は線状、長さ約1㎜。小花柄は長さ1~2㎜。萼片は鐘形、長さ約3㎜、外側に毛があり、腺があり、2唇形、長さの2/3までの2唇がある。下唇は上唇よりわずかに長く、長さ1.8㎜まで。萼歯は狭三角形、鋭形。果時に萼片はわずかに膨張し、長さ約4㎜になり、不明瞭に2唇があり、歯はほぼ均等である。花冠は帯紫色、紫色、または青色、長さ9㎜まで、外側に毛があり、腺があり、花冠筒部は長さ約4㎜。雄しべと花柱は含まれるか、わずかに突き出する。小堅果は褐色、倒卵形、長さ約1.5㎜、毛があり、腺がある。花期は7~8月。果期は8~9月。
3-1 Isodon excisus (Maxim.) Kudo f. albiflorus (Sakata) H.Hara シロマンシュウカメバヒキオコシ 白満洲亀葉引き起こし
 白花品種。

4 Isodon inflexus (Thunb.) Kudo  ヤマハッカ 山薄荷
  synonym Isodon inflexus (Thunb.) Kudo var. macrophyllus (Maxim.) Kudo

  synonym Isodon inflexus (Thunb.) Kudo f. leucanthus (Nakai) H.Hara シロバナヤマハッカ

  synonym Isodon inflexus (Thunb.) Kudo f. subglaber (Makino) H.Hara メヤマハッカ

  synonym Isodon inflexus (Thunb.) Kudo var. canescens (Nakai) Kudo シラゲヤマハッカ

 日本、朝鮮、中国に分布する。中国名は内折香茶菜 nei zhe xiang cha cai。インド、ドイツなどに帰化している。日当たりのよい草地、道端に生える。
 多年草、高さ60~90㎝。茎は4稜形、下向きい曲がった毛がある。葉は対生し、長さ3~6㎝の長楕円形~広卵形、葉の基部が急に細くなり、翼のついた葉柄に続く。葉柄は長さ0.5~3.5㎝。葉裏には腺点がある。花は総状花序につき、花冠は青紫色、長さ7~9㎜、上唇に濃紫色の班点が多数つき、下唇の縁が内巻きになって舟形に突き出す。雄しべ、雌しべとも花冠より短くて見えない。萼は長さ2.5~3㎜、短毛が密生し、先が5裂して5個の萼歯がほぼ同長、果時には大きくなる。果実は4分果、熟すと紫色~褐色になる。分果は長さ約1.5㎜。2n=24。花期は9~11月。
 POWOでは下位分類を認めていない。

(1) Isodon inflexus (Thunb.) Kudo f. leucanthus (Nakai) H.Hara  シロバナヤマハッカ 白花山薄荷
 白花品種。

(2) Isodon inflexus (Thunb.) Kudo f. subglaber (Makino) H.Hara メヤマハッカ

(3) Isodon inflexus (Thunb.) Kudo var. canescens (Nakai) Kudo  シラゲヤマハッカ

(4) Isodon inflexus x I. umbrosus var. excisinflexus コシジヤマハッカ


5 Isodon japonicus (Burm.f.) H.Hara ヒキオコシ 引き起こし 広義
 日本(北海道の西南部、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(甘粛省、河北省、黒竜江省、河南省、江蘇省、吉林省、遼寧省、陝西省、山東省、山西省、四川省)、ロシアに分布する。中国名は毛叶香茶菜 mao ye xiang cha ca。別名はエンメイソウ 延命草。標高0~2100mの丘陵、雑木林、谷、森林、森林の縁、草原に生える。
 多年草。茎は直立し、高さ40~150㎝、基部は木質、ほぼ無毛、先は毛があり、腺があり、多数分枝する。葉柄は長さ1~3.5㎝、毛がある。葉身は卵形~広卵形、長さ(4~)6.5~13㎝×幅(2.5~)3~7㎝、紙質、毛があるかまたは微軟毛があり、腺があり、上面は暗緑色、下面は帯緑色、基部は広楔形、急に漸尖し、縁は円鋸歯状鋸歯、先は尖鋭形、先端の歯は卵形~披針形、側脈は5対で隆起する。円錐花序は緩く、開出し、頂生。集散花序は花が(3~)5~7個つき、花序柄があり、毛があり、腺がある。花葉は卵形、基部の1または2個を除き、集散花序よりかなり短い。小苞は線形、長さ約1㎜。萼は鐘形、長さ1.5~2㎜、帯青色、または密に外側に伏した帯白色の毛がある。萼歯は三角形、長さ0.5~0.7㎜、先は鋭形、下側の2萼歯はやや長く幅が広い。果時の萼片は筒状鐘形で、長さ4㎜まで、目立つ脈があり、わずかに湾曲する。花冠は帯紫色~青色、上唇に暗色の斑点があり、長さ約5㎜。雄しべは突き出ている。花柱は突き出ている。小堅果は帯褐色、3稜形、卵形、長さ約1.5㎜、先に疣がある以外は無毛。花期は7~8月。果期は9~10月。

5-1 Isodon japonicus (Burm.f.) H.Hara var. japonicus ヒキオコシ 引き起こし

  synonym Amethystanthus japonicus f. albidus Honda シロバナヒキオコシ

  synonym Rabdosia japonica f. albida (Honda) H.Hara

  synonym Isodon japonicus f. albiflorus (Honda) H.Hara シロヒキオコシ

  synonym Rabdosia japonica f. albiflora (Honda) H.Hara
 日本(北海道の西南部、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(甘粛省、河南省、江蘇省、陝西省、四川省)に分布する。中国名は毛叶香茶菜 mao ye xiang cha ca。標高0~2100mの丘陵、茂み、谷間に生える。胃がんの治療薬として使用される。
 葉は軟毛があり、腺毛があり、縁は鋸歯~円鋸歯状鋸歯がある。萼は密に伏した帯白色の毛がある。
 多年草、高さ50~100㎝。全体に白っぽい印象を受け、茎などに白毛が密生する。葉は対生し、葉柄は長さ0.5~2㎝。葉身は長さ5~15㎝の長楕円形、軟毛と腺毛があり、縁には鋸歯~円鋸歯状鋸歯がある。花冠は毛が密生し、長さ約5㎜の唇形、淡青紫色。上唇は4裂し、中央に濃色の斑点がある。下唇は舟形に突き出る。雄しべは4個、うち2個は短い。柱頭は2裂する。花には雄しべが花冠から突き出る花と雌しべが突き出る花の2形がある。萼は伏した帯白色の短毛が密生し、先が5裂して萼歯がほぼ同長。果実は長さ2.5~3㎜、4分果、萼筒に包まれて熟す。分果は長さ約1.6㎜、頭部に腺点がある。秋には黄色に紅葉し、冬には地上部は枯れる。2n=24。花期8~10月。

5-2 Isodon japonicus (Burm.f.) H.Hara var. glaucocalyx (Maximowicz) H. W. Li マンシュウヒキオコシ 満洲引き起こし

  synonym Isodon japonicus (Burm.f.) H.Hara var. glaucocalyx (Maxim.) H.Hara

  synonym Isodon glaucocalyx (Maxim.) Kudô
 日本、朝鮮、中国(河北省、黒龍江省、吉林省、遼寧省、山東省、山西省)、ロシアに分布する。中国名は蓝萼变种 lan e bian zhong。標高0~1800mの丘陵の森林の縁、草原、森林に生える。
 葉はまばらに軟毛があり、腺毛があり、縁は鈍鋸歯がある。萼は青みがかっており、外側に密に伏した軟毛がある。

6 Isodon longitubus (Miq.) Kudo  アキチョウジ 秋丁字

 本州(愛知県以西)、四国、九州、中国(安徽省、浙江省)に分布。中国名は长管香茶菜 chang guan xiang cha cai。英名はtrumpet spurflower。
 多年草、高さ1m以下。茎は4稜形、斜上し、帯紫色(林下では緑色のものも多い)、密に下向きの毛があり、基部で分枝し、不規則な草型になる。葉は対生し、葉柄は長さ(0.2~)0.5~2㎝、密に毛がある。葉身は披針状卵形~卵形、長さ3.5~12㎝、幅2~4㎝、紙質、葉の上面はオリーブ緑色、脈に毛又は小さな剛毛がある。葉の下面は緑紫色~淡緑色、密に脈上に毛があり、まばらに金色の腺点がある。葉の基部は楔形~楔状沿下し、縁は基部を除き、鋸歯縁、先は短く尖鋭形。側脈は3~4対、上向き。円錐花序は長さ10~20㎝、頂生及び腋生。集散花序は花を1~3(~5)個つけ、花序柄があり、細かい毛がある。上部の花序の葉(floral leaves)は類無柄、苞状、全縁。小苞は線形、細かい毛がある。萼は鐘形、長さ4~6㎜以下、帯紫色、外側の脈や縁に細かい毛があり、腺点もある。先は萼の中間まで切れ込む2唇形、上唇は反り返り、3個の先が尖った三角形の短い歯がある。下唇には2個の卵状三角形の先が尖った歯がある。萼は果時に長さ6㎜以下、脈が目立つ。花冠は紫青色、長さ2㎝以下、外面は微軟毛があり、花冠筒部は拡大部の長さの約3倍。雄しべは突き出ない。小堅果は暗褐色、扁球形、幅約1.5㎜。花期は6~10月。果期は10月。

6-1 Isodon longitubus (Miq.) Kudo f. albiflorus (Makino) H.Hara シロバナノアキチョウジ 白花秋丁字

 白花品種。

7 Isodon macrocalyx (Dunn) Kudo  タイワンアキチョウジ 台湾秋丁字

  synonym Rabdosia bifidocalyx (Dunn) H.Hara
  synonym Rabdosia taiwanensis (Masam.) H.Hara
 中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、湖南省、江蘇省、江西省、浙江省)、台湾原産。標高600~1700mの斜面の茂みや森林に生える。
 多年草。茎は多数、直立、長さ40~100(~150)㎝、密着した毛がある。葉柄は長さ(0.5~)2~3(~6.5)㎝。葉身は卵形、長さ(5~)7~10(~15)㎝×幅(2~)2.5~5(~8.5)㎝、紙質、ほぼ無毛、葉脈上に伏した毛があり、基部は漸尖沿下し、縁は円鋸歯状鋸歯、先は長い尖鋭形。総状花序は頂生および腋生、幅は狭く、長さ6~10(~15)㎝×約2.5㎝。集散花序は花序があり、(1~)3~5花がつき、尖った円錐花序を形成する。花葉はほぼ無柄、卵形。小花柄は長さ2~4mm。萼は広鐘形、長さ約・長さ2.7㎜×幅3㎜、軟毛があり、2唇形。萼歯は三角形、下側の2個はやや大きく、先は鋭形。果時に萼は6㎜まで膨張し、明瞭に2唇形。花冠は帯紫色~赤紫色、長さ約8㎜、まばらに微軟毛があり、腺があり、花冠筒部は長さ約4㎜、上唇は長さ約2㎜、下唇は長さ約4㎜。雄しべと花柱はわずかに突き出ている。小堅果は褐色、卵形、長さ約1.5㎜、無毛。花期は7~8月。果期は9~10月。

8 Isodon serra (Maxim.) Kudo  オオヒキオコシ 大引き起こし

 朝鮮、中国(安徽省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、黒竜江省、河南省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、陝西省、山西省、四川省、台湾、浙江省)、ロシアに分布。中国名は溪黄草 xi huang cao。標高100~1200mの丘陵、川岸、川岸、茂み、森林、砂地に生える。
 高さ1.5(~2)m。花冠は長さ6㎜以下、紫色。
 多年草。茎は直立し、高さ1.5~2m、基部は±無毛になり、密に後屈した毛があり、先で多数分枝する。葉柄は長さ0.5~3.5㎝、先に広い翼があり、密に毛がある。葉身は卵形~卵状披針形、長さ3.5~10㎝×幅1.5~4.5㎝、薄い紙質、上面は暗緑色、下面は帯緑色、±無毛になり、まばらに帯黄色の腺があり、基部は楔形、縁は粗く内側に曲がった鋸歯があり、先端は±尖鋭形、側脈は4対または5対で隆起する。円錐花序は緩く、長さ10~20㎝、頂生。集散花序は5個~多数の花がつき、花序柄がある。花葉は短い柄があり、披針形~線状披針形。小苞は長さ1~3㎜、軟毛がある。萼は鐘形、長さ約1.5㎜、外側には密に白っぽい軟毛があり、腺がある。萼歯は直立し、狭三角形、ほぼ均等、長さ約0.8㎜。果時の萼は膨張し、広鐘形で、基部は ±つぼ形、長さ約3㎜、目立つ脈がある。花冠は紫色、長さ6㎜まで、外側に微軟毛がある。花冠筒部は長さ約3㎜。雄しべを含む。花柱を含む。小堅果は広卵形で、長さ約1.5㎜、先には帯白色の髭がある。花期は8~10月。果期は9~10月。

9 Isodon shikokianus (Makino) H.Hara ミヤマヒキオコシ 深山引き起こし 広義

  synonym Isodon excisus var. shikokianus (Makino) Kudô
  synonym Rabdosia shikokiana (Makino) H.Hara

  synonym Isodon shikokianus (Makino) H.Hara var. occidentalis Murata サンインヒキオコシ

 日本固有種。本州、四国、九州に分布する。

9-1 Isodon shikokianus (Makino) H.Hara var. shikokianus ミヤマヒキオコシ 深山引き起こし

 四国の山地に分布する。深山の林下に生える。
 多年草、高さ40~80㎝。葉は卵形、長さ3~8㎝×幅1.5~4㎝、基部は楔形、先は尖鋭形~尾状、縁には鋸歯があり、上面にわずかに毛がある。花序は頂生、長く、穂状花序状(幅の円錐花序状)になり、輪散花序は緩く、多段につく。花序軸や花序柄は紫褐色を帯びる。花冠は2唇形、青紫色、長さ5~6㎜、上唇は長立して、3裂し、裂片は狭三角状披針形、先がやや反り返り、下唇は前に突き出し、先が2浅裂し、上唇よりやや長く、先は鈍形。花期は8~10月。

9-2 Isodon shikokianus (Makino) H.Hara var. intermedius (Kudo) Murata  タカクマヒキオコシ 高隅引き起こし

  synonym Isodon lanceus (Nakai) Kudo
 本州(福島県以西の太平洋岸)、四国、九州に分布。山地の林内、林縁に生える。イヌヤマハッカと酷似しているが、葉裏の中脈は無毛で、花柄や萼に微細な腺毛があり、萼歯の先端が細長くなる。
 多年草、高さ40~80㎝。茎は4稜形、下向きの毛がある。葉は対生し、葉柄は長さ0.5~3㎝。葉身は長さ3~10㎝、幅1~3㎝、披針形~広披針形、ときに長卵形~卵形、先は尖り、基部は楔形、翼状になり、葉柄へと続く。葉表は無毛~有毛があり、葉裏の中脈は無毛、腺点は不明瞭。花は茎頂の総状花序に多数つく。花柄や小花柄には微細な腺毛が密生する。苞は長楕円形~広披針形。萼は微細な腺毛があり、2唇形、萼歯の先端が細長く、上側の3裂する萼歯の方が下側の萼歯より短い。花冠は長さ8~10(11)㎜、腺毛があり、青紫色、上唇は浅く4裂し、班紋はなく、下唇の縁が内巻きになって舟形に突き出す。雄しべ、雌しべとも花冠より短くて突き出ない。果実は4分果。花期は8~10月。

10 Isodon trichocarpus (Maxim.) Kudo  クロバナヒキオコシ 黒花引き起こし

  synonym Isodon trichocarpus (Maxim.) Kudo f. leucanthus Okuyama ノハラヒキオコシ

 北海道、本州(近畿地方以北の日本海側)に分布。全体に大型。やや乾いた山地に生える。花冠は暗紫色、長さ5~6㎜。
 高さ50~150cm。茎は四稜形、稜にごく細かい毛があり、上部で分枝する。葉は葉柄が長さ1~3㎝、葉身は広卵形、長さ6~15㎝×幅3~7.5cm、質は薄く、上面にはまばらに毛があり、下面は網状脈が目立ち、腺点がある。花序は緩い大形の円錐花序状、花が多数つく。萼は毛があり、長さ約2.5㎜、萼歯は5個、果時には長さ3~3.5㎜になる。冠は暗紫色、長さ5~6㎜、上唇は直立して4裂し、下唇は舟形。分果は倒卵状円形、長さ約1.5㎜、白色の毛がある。 花期は8~9月。

10-1 Isodon trichocarpus (Maxim.) Kudo f. crythranthus Ikegami アカバナヒキオコシ 赤花引き起こし

 花が赤色の品種。POWOでは認められていない。

11 Isodon umbrosus (Maxim.) H.Hara イヌヤマハッカ 犬山薄荷

  synonym Isodon inflexus var. umbrosus (Maxim.) Kudô

  synonym Isodon umbrosus f. albiflorus Tuyama in J. Jap. Bot. 27: 340 (1952)シロバナノイヌヤマハッカ

  synonym Isodon umbrosus f. lilacinus Asai in J. Jap. Bot. 42: 201 (1967) ウスイロイヌヤマハッカ

  synonym Isodon umbrosus var. excisinflexus (Nakai) K.Asano in J. Jap. Bot. 47: 64 (1972) タイリンヤマハッカ

  synonym Isodon umbrosus var. latifolius Okuyama in J. Jap. Bot. 26: 319 (1951) コウシンヤマハッカ

  synonym Isodon kameba Okuyama ex Ohwi カメバヒキオコシ

  synonym Isodon umbrosus var. hakusanensis (Matsum. & Kudô) K.Asano ハクサンカメバヒキオコシ

  synonym Isodon umbrosus var. komaensis (Okuyama) K.Asano コマヤマハッカ=コウシンヤマハッカ

  synonym Isodon umbrosus (Maxim.) H.Hara f. glabricalyx Sugim.  メイヌヤマハッカ

 日本固有種。本州(関東地方西南部~中部地方東南部)に分布。林内、林縁に生える。
 多年草、高さ60~80㎝。茎は4稜形で、下向きの毛が生える。葉は対生し、葉柄は長さ0.5~2㎝。葉身は長さ3~10㎝、幅1~3(3.5)㎝の長楕円形~披針形、縁は鈍鋸歯~鋭鋸歯、葉先は鋭形、葉の基部は楔形~広楔形~切形、翼のついた葉柄に続く。葉表にまばらに毛が生え、葉裏の中央脈には曲がった毛が生え、葉裏には腺点がある。花序柄は紫褐色を帯び、開出する(または下向きに曲がる:f. lilacinus )短毛が密生する。花は総状花序状につく。苞は幅が広く、卵形~楕円形。萼は2唇形、短毛が密生し、萼歯は三角形、先は鋭形、上側の萼歯が下側よりやや長く、ほとんど同じ長さの時もある。花冠は短毛があり、青紫色~淡紅色または白色、長さ8~9(12~13:var. excisinflexus)㎜、上唇は浅く4裂し、班紋はなく、下唇の縁が内巻きになって舟形に突き出す。雄しべ、雌しべとも花冠より短く、舟の中に納まる。葯は黒褐色。果実は4分果、萼に2~4個の果実が入り、初め白色、熟すと萼とともに褐色になり、ほぼ平滑、数が少ないとやや大きくなる。2n=24。花期は9~10月。
 多数の変種や品種に分類されているが、POWOでは下位分類を認めていない。

(1) Isodon umbrosus (Maxim.) H.Hara var. excisinflexus (Nakai) K.Asano タイリンヤマハッカ 大輪山薄荷

  synonym Isodon kameba Okuyama ex Ohwi var. excisinflexus (Nakai) Okuyama

 本州(東北~北陸地方、日本海岸)に分布。  カメバヒキオコシより大形。花冠が長さ12~13㎜。葉の3裂が完全ではない。

(2) Isodon umbrosus (Maxim.) H.Hara f. albiflorus Tuyama シロバナノイヌヤマハッカ 白花犬山薄荷

 白花品種。

(3) Isodon umbrosus (Maxim.) H.Hara f. lilacinus Asai ウスイロイヌヤマハッカ 薄色犬山薄荷

 淡紅色品種。青紫色のイヌヤマハッカに混成する。花序柄の短毛は開出する直毛ではなく、曲がる。

(4) Isodon umbrosus (Maxim.) H.Hara f. glabricalyx Sugim. メイヌヤマハッカ

 詳細不明。br>

(5) Isodon umbrosus (Maxim.) H.Hara var. hakusanensis (Kudo) K.Asano ハクサンカメバヒキオコシ 白山亀葉引き起こし

  synonym Isodon kameba Okuyama ex Ohwi var. hakusanensis (Kudo) Okuyama ex Ohwi

 本州(長野県~滋賀県)に分布。山地の林内、林縁に生える。
 葉の中央裂片が幅広く、鋸歯があり、2段になる。
 多年草、高さ50~150㎝。茎は4稜形、下向きの短毛が生える。葉は対生し、長さ5~12㎝、の広卵形、鋭い鋸歯がある。葉先が3裂し、中央裂片が幅広く、鋸歯があり、先だけ細長く尖り、2段になる。葉柄は長く、根元にいくほど狭くなる翼がある。枝先に花穂を出し、唇形花を多数つける。花穂軸の苞葉は卵形。花柄には開出毛が密生する。花冠は青紫色、2唇形、上唇は4裂し、下唇はボート形。萼は2唇形、上唇は3裂、下唇は2裂し、萼歯は上側の萼歯が三角形で、下側の萼歯は短い。2n=24。花期は9~10月。

(6) Isodon umbrosus (Maxim.) H.Hara var. latifolius Okuyama コウシンヤマハッカ 甲信山薄荷

  synonym Isodon umbrosus (Maxim.) H.Hara var. komaensis (Okuyama) K.Asano

  synonym Isodon kameba Okuyama ex Ohwi var. latifolius (Okuyama) Okuyama

 本州(山梨県、長野県南部、静岡県、愛知県)に分布する。和名はイヌヤマハッカの変種で、甲信地方に多いことから。山地の林内、林縁に生える。葉先は3裂しない。同じイヌヤマハッカの変種のカメバヒキオコシの葉が3裂しないタイプであり、葉幅が4㎝以上と広い。萼の下唇の萼歯が低い。
 葉は対生し、柄があり、長さ5~10㎝、幅4~7㎝の卵形~狭卵形、鋭鋸歯縁、葉の基部は広楔形~切形、葉先が普通、長く尖り、葉先が3裂しない。葉幅がやや狭いもの(狭卵形)や、葉先が長く尖らないものや、やや浅く3裂するなどの変異も見られる。花は茎頂の総状花序に多数つく。花柄が長く、やや垂れ下がりぎみに花がつく。萼は2唇形、上側の3裂する萼歯(3歯の間の切れ込みの深さ約2㎜)の方が下側の萼歯(2歯の間の切れ込みの深さ1~1.5㎜)より長い。花冠は長さ9~11㎜、短毛があり、青紫色、上唇は4裂し、班紋はなく、下唇の縁が内巻きになって舟形に突き出す。雄しべ、雌しべとも花冠より短くて突き出ない。果実は4分果(3分果のことも多い)、褐色、長さ1.7~2.1㎜、鈍い3稜のある類球形。2n=24。花期は9~10月。

(7) Isodon umbrosus (Maxim.) H.Hara var. latifolius Okuyama f. albescens (Okuyama) Okuyama ex K.Asano シロバナコウシンヤマハッカ 白花甲信山薄荷

  synonym Isodon kameba Okuyama ex Ohwi var. latifolius (Okuyama) Okuyama f. albescens Okuyama

 白花品種。

(8) Isodon umbrosus (Maxim.) H.Hara var. leucanthus (Murai) K.Asano f. kameba (Okuyama ex Ohwi) K.Asano カメバヒキオコシ 亀葉引き起こし

  synonym Isodon kameba Okuyama ex Ohwi
  synonym Isodon excisus auct. non (Maxim.) Kudo
 本州(東北地方南部~中部地方東北部)に分布。和名は葉の形が亀のしっぽに似ていることからつけられている。
 多年草、高さ50~100㎝。茎は4稜形、下向きの短毛が生える。葉は対生し、長さ5~10㎝、幅4~9㎝の広卵形~卵形で、鋭い鋸歯がある。葉先が3裂し、中央が尾状に細長く伸びる。葉柄は長く、根元にいくほど狭くなる翼がある。枝先に花穂を出し、唇形花を多数つける。花穂軸の苞葉は卵形。花柄には開出毛が密生する。花冠は青紫色、2唇形、上唇は4裂し、下唇はボート形。萼は2唇形、上唇は3裂、下唇は2裂し、萼歯は三角形で上側の萼歯が長い。2n=24。

(9) Isodon umbrosus (Maxim.) H.Hara var. leucanthus (Murai) K.Asano f. leucanthus (Murai) K.Asano シロバナカメバヒキオコシ 白花亀葉引き起こし

  synonym Isodon kameba Okuyama ex Ohwi f. leucanthus (Murai) Okuyama
 本州(東北地方南部~中部地方)に分布。
 カメバヒキオコシの白花品種。

12 Isodon websteri (Hemsl.) Kudô イソドン・ウェブステリ
 中国(遼寧省)原産。中国名は辽宁香茶菜 liao ning xiang cha cai。渓谷、低地に生える。
 多年草。茎は直立し、角に沿ってまばらに後屈する白色の細柔毛があり、先は無毛、分枝しないかまたは分枝する。葉柄は長さ0.5~3㎝、まばらに白色の細柔毛がある。葉身は広卵形、長さ3~6㎝×幅1.5~3.5㎝、上面は脈に沿ってまばらに細柔毛があるが、それ以外はほぼ無毛、下面は中脈に沿って細柔毛があるがそれ以外は無毛、まばらに帯黄色の腺があり、基部は広楔形、縁には円鋸歯状の鋸歯があり、先は鋭形~ほぼ尖鋭形、側脈は4~9対。円錐花序は頂生、花は少数、長さ約2㎝。集散花序には3個の花がつく。花葉は卵状披針形、最下部の1~2個を除き集散花序より短い。苞および小苞は微細で線形、長さ1~1.5㎜。萼は鐘形、長さ約1.5㎜、外側に毛がある。鋸歯は三角形、先端は鋭く、長さ約0.5㎜。果時の萼は膨張し、長さ5.5㎜以下、無毛、硬く、青みがかる。花冠は青色、長さ4~6 mm、外側に毛がある。雄しべは突き出ている。花柱は突き出ている。小堅果は褐色、扁平、無毛。花期は9月。果期は10月。

13 交雑種
(1) Isodon x arakii Murata ヤマアキチョウジ 山秋丁字
 ヤマハッカ(I. inflexus)とアキチョウジ(I. longitubus)の自然交雑種。

(2) Isodon ×akitaensis Fujiw., Yu. Abe & Y. Matsuda ミチノクヒキオコシ

 東北地方に分布。
 ヒキオコシIsodon japonicus (Burm. f.) H. HaraとクロバナヒキオコシI. trichocarpus (Maxim.) Kudôの自然雑種。茎葉の外観は両親種に類似するが、萼の形や花冠の色などは両親種の中間的形質を有する。ヒキオコシからは萼裂片の先端が鋭頭であること、分果の先端部に白短毛があること、クロバナヒキオコシからは雄しべと花柱が花外に突き出ること、果実の白短毛が著しく少ないことなどで区別される。
(3) Isodon x inamii Murata  セキヤノヒキオコシ
 ヒキオコシ(I. japonicus)とアキチョウジ(I. longitubus)の自然交雑種。
(4) Isodon x kurobana-akichoji Murata クロバナアキチョウジ 

(5) Isodon x kurobana-saninhikiokoshi Murata  クロバナサンインヒキオコシ

(6) Isodon x ohwii Okuyama クロバナヤマハッカ
 ヤマハッカ(I. inflexus)とクロバナヒキオコシ(I. trichocarpus)の自然交雑種。
(7) Isodon x surugensis Sugim. イヌヤマチョウジ
(8) Isodon x suzukii Okuyama  カメバヤマハッカ 
 ヤマハッカ(I. inflexus)とイヌヤマハッカ(I. umbrosus)の自然交雑種。

(9) Isodon x takakuma-akichoji Murata タカクマアキチョウジ

(10) Isodon x togashii Okuyama  コシジヒキオコシ

 サンインヒキオコシ(I. shikokianus var. occidentalis)とクロバナヒキオコシ(I. trichocarpus)の自然交雑種。

参考

1) Flora of China
 Isodon
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=116577
2) Taxonomy - GRIN-Global Web v 1.9.8.2
 Isodon
http://tn-grin.nat.tn/gringlobal/taxonomylist.aspx?category=species&type=genus&value=Isodon&id=61053)
3) 植物和名ー学名インデックス YList
 Isodon
http://ylist.info/