イヌホオズキ類の比較
Flora of Mikawa
イヌホオズキ類
イヌホオズキ類の分類は果実に含まれる球状顆粒や種子の数、種子の大きさを重要なポイントとするため、判別が困難である。わかったつもりでいても果実を調べると違っていたということも多い。
日本ではイヌホオズキ、アメリカイヌホオズキ、オオイヌホオズキ、テリミノイヌホオズキの主な4種があり、このうちテリミノイヌホオズキは垂れ実型とカンザシイヌホオズキ型が確認報告されている。学名も変遷があり、過去に訂正されていることが多い。これらの公表データも種々あり、神奈川県植物誌のデータ等が次表である。
表1 神奈川県植物誌に示されたデータ
※ ()内はThe Jepson Manualのデータ
[]内はCDFAデータシートのデータ
【】内はオンタリオ州発信のontarioweeds.comのデータ
アメリカイヌホオズキの花は花冠の裂片が反り返っていることが多いが、よく調べてみると、平開した花も多く、平開した花の直径を測ってみたところ、かなり大きいことが解った。これをきっかけにイヌホオズキ類を調べた。この中で、オオイヌホオズキに花が似て、大きいのにかかわらず、球状顆粒が0~4個のものが見つかった。これがSolanum douglasiiであると思われる。アメリカイヌホオズキに似て、花が淡紫色になり、果実がややテリミノイヌホオズキに似るものは果実に球状顆粒数が多いものと少ないものが混じる。これがムラサキイヌホオズキと呼ばれるものと推測される。テリミノイヌホオズキは垂れ実型とカンザシイヌホオズキ型が確認でき、カンザシイヌホオズキ型に球状顆粒が1~2個あるものが稀にあるだけで、垂れ実型は球状顆粒が全くないものだけであった。結果が次の表である。
表2 調査結果
※ 果実中の種子数は果実が小さいと明らかに少なくなるため、種子数は果径が7㎜以上のものを集計した。()内は果実の径が7㎜未満の全てを含めたとき。
※ 表1の範囲から全く外れるデータは赤色、範囲外に及ぶデータは青色とした。
※ ダグラスイヌホオズキはSolanum douglasiiと思われるものの仮称。
※ ダグラスイヌホオズキの球状顆粒数の()は花の未確認のものを含めたとき。
※ テリミノイヌホオズキにはこの表にあてはまらないものがある。
※ 調査データ数は表7参照
1 The Jepson Manualのデータ、CDFA(CALIFORNIA DEPARTMENT OF FOOD AND AGRICULTURE) のデータ、カナダのオンタリオ州のデータを考慮すると大きな違いはないと思われる。カリフォルニアにはアメリカイヌホオズキはないため、オンタリオ州のデータも参考にした。
1 オオイヌホオズキと思って採取したものの中に球状顆粒が少ないものが見つかった。球状顆粒はあっても4個以下であり、無いものもある。データ数が少ないときは花柱が短い種と考えたが、データ数を増やしたところ、オオイヌホオズキにも花柱の短いものがあり、球状顆粒以外のデータはほとんど一致してしまった。アメリカのサイトを検索したところSolanum douglasii にデータがほぼ一致することがわかった。Douglas' nightshadeと呼ばれているため、ひとまず、ダグラスイヌホオズキと呼ぶことにする。
この表にあてはまらないものが新たに見つかった(2011/12/10)。全体の様子や果実はダグラスイヌホオズキに似ているが、果実中の球状顆粒が小さいものと大きいものが同一花序でも混じり、1~7個ある。種子数が50~100個程度であり、種子は大きさが1.1~1.5㎜である。近くに、ダグラスイヌホオズキやオオイヌホオズキもあり、花がなく、果実だけがついていた2株である。現在はダグラスイヌホオズキではないかと推定し、ダグラスイヌホオズキの球状顆粒の欄に()書きした。(ダグラスイヌホオズキ詳細参照)
3 アメリカイヌホオズキとテリミノイヌホオズキの中間型が出てきてしまった。果実はテリミノホオズキのように早く熟さないが、大きくて光沢が強い。花はアメリカイヌホオズキに似て淡紫色を帯び、全体の外観はアメリカイヌホオズキに近い。果実の種子数と球状顆粒数が両者の中間である。種子は色がアメリカイヌホオズキに似るが、大きさがテリミノホオズキに近い。これがムラサキイヌホオズキと呼ばれているものと推測される。
4 アメリカイヌホオズキの球状顆粒は最大が6個であり、やや少なかった。過去に8個のものがあり、同じ場所を探したが、アメリカイヌホオズキは見当たらなかった。アメリカイヌホオズキは少なく、草刈りに会う場所にあるものが多く、データを得にくい。花序の花数は5個が混じるものが見られた。ontarioweedsのデータは球状顆粒数も葯の長さもよく一致している。
5 テリミノイヌホオズキのカンザシイヌホオズキ型はほとんど球状顆粒がなく、稀に1~2個の球状顆粒をもつものが混じる。種子は白色のものがほとんどである。しかし、花序はカンザシイヌホオズキ型であるが、果実の光沢が少なく、種子が淡褐色のものが1株だけあった(集計には入れていない)。また、種子が白色で、小果柄が一部、垂れ下がる株が多数あり、カンザシイヌホオズキ型に含めている。テリミノイヌホオズキの垂れ実型は全て球状顆粒がなく、種子が白色と淡褐色2種類のものがある。種子が白色のものは葯が褐色を帯び、果実の光沢が強い。淡褐色のものは、果実の光沢が少ないものが混じる。(テリミノイヌホオズキ参照)
日本ではイヌホオズキ、アメリカイヌホオズキ、オオイヌホオズキ、テリミノイヌホオズキの主な4種があり、このうちテリミノイヌホオズキは垂れ実型とカンザシイヌホオズキ型が確認報告されている。学名も変遷があり、過去に訂正されていることが多い。これらの公表データも種々あり、神奈川県植物誌のデータ等が次表である。
表1 神奈川県植物誌に示されたデータ
イヌホオズキ Solanum nigrum |
オオイヌホオズキ Solanum nigrescens |
アメリカイヌホオズキ Solanum ptycanthum |
テリミノイヌホオズキ Solanum americanum |
|
---|---|---|---|---|
葉の長さ | [4~7] | [2~15] | ||
花序の花 個 | 5~12[4~8] | 5~8 | 1~4 【2~5】 |
5~12[4~10] |
花径 ㎜ | 8~12(約10) [主に4~12] |
8~12 | 4~6 【9~15】 |
4~6(3~6) [主に4~12] |
花柱 ㎜ | 4~6(3~5) | 4~6 | 2~3 | 2~3(2.5~4) |
葯 ㎜ | 2~3(約2) [1.8~2.5] |
2~3 | 1~1.5 【1.3~2】 |
1~1.5(1.4~2.2) [1~1.8] |
花粉粒 μm | [25~28] | [17~23] | ||
果実光沢 | なし | やや鈍い | やや鈍い | 強い |
果径 ㎜ | 7~10(6~8) [主に5~8] |
7~10 | 7~10 【5~9】 |
4~7(5~8) [主に5~8] |
種子数 個 | 30~60 [15~60] |
60~120 | 60~120 | 30~50 [50~100] |
種子長 ㎜ | 約2(約2) [1.9~2.5] |
1~1.3 | 1~1.3 | 約1.5(1~1.5) [1~1.8] |
種子の色 | [黄~ほぼ白] | [黄~ほぼ白] | ||
球状顆粒 個 | 0 | 4~10 | 4~10【4~8】 | 0~2[0~5] |
[]内はCDFAデータシートのデータ
【】内はオンタリオ州発信のontarioweeds.comのデータ
アメリカイヌホオズキの花は花冠の裂片が反り返っていることが多いが、よく調べてみると、平開した花も多く、平開した花の直径を測ってみたところ、かなり大きいことが解った。これをきっかけにイヌホオズキ類を調べた。この中で、オオイヌホオズキに花が似て、大きいのにかかわらず、球状顆粒が0~4個のものが見つかった。これがSolanum douglasiiであると思われる。アメリカイヌホオズキに似て、花が淡紫色になり、果実がややテリミノイヌホオズキに似るものは果実に球状顆粒数が多いものと少ないものが混じる。これがムラサキイヌホオズキと呼ばれるものと推測される。テリミノイヌホオズキは垂れ実型とカンザシイヌホオズキ型が確認でき、カンザシイヌホオズキ型に球状顆粒が1~2個あるものが稀にあるだけで、垂れ実型は球状顆粒が全くないものだけであった。結果が次の表である。
表2 調査結果
イヌホオズキ | オオイヌホオズキ | ダグラスイヌホオズキ※ Solanum douglasii |
アメリカイヌホオズキ | ムラサキイヌホオズキ | テリミノイヌホオズキ | |||||
カンザシイヌホオズキ型 | 垂れ実型(種子白色) | 垂れ実型(種子淡褐色) | ||||||||
花 | 花序の花 個 | 4~11 | 3~ 8 | 2~9 | 1~ 5 | 2~6 | 3~11 | 3~ 7 | 3~9 | |
花 径 |
範囲 ㎜ | 9~14 | 7~15.5 | 7~17 | 6~12 | 6~12 | 4.5~12 | 7~10 | 6~13 | |
平均 ㎜ | 11 | 11 | 13 | 9 | 8 | 7.5 | 8 | 10 | ||
花 柱 |
範囲 ㎜ | 3.3~4.0 | 3.3~4.7 | 3.6~4.7 | 2.1~2.8 | 2.0~2.5 | 1.6~2.9 | 1.9~2.5 | 2.2~3.7 | |
平均 ㎜ | 3.7 | 4.0 | 4.0 | 2.4 | 2.2 | 2.1 | 2.3 | 3.2 | ||
葯 | 範囲 ㎜ | 1.8~2.6 | 2.2~2.8 | 2.3~2.9 | 1.4~1.6 | 1.2~1.8 | 1.1~1.6 | 1.3~1.5 | 1.4~1.9 | |
平均 ㎜ | 2.2 | 2.5 | 2.6 | 1.5 | 1.4 | 1.3 | 1.4 | 1.7 | ||
花 粉 |
範囲μm | 35~41 | 25~33 | 25~28 | 27~33 | 25~31 | 26~33 | 29~33 | 25~28 | |
平均μm | 38 | 29 | 27 | 30 | 28 | 29 | 31 | 27 | ||
果 実 |
楕円性 | 縦長 | 微横長 | 微横長 | 微横長 | 横長 | 横長 | 横長 | 横長 | |
光沢 | 無 | 有 | 有 | 有 | 強/有 | 強 | 強 | 強/弱 | ||
フケ班紋 | 少 | 少 | 少 | 少 | 多 | 多 | 多 | 多 | ||
果 径 |
範囲 ㎜ | 5~9 | 5~10 | 5~9 | 5~8.5 | 6~9 | 3~8.5 | 6~9 | 4.5~10 | |
平均 ㎜ | 7.6 | 8 | 7 | 7 | 8 | 6.5 | 8 | 7 | ||
種 子 数 |
範囲 個 | (5)22~53 | (9)69~110 | (20)63~125 | (12)69~118 | (13)32~87 | (2)30~67 | (17)26~59 | (7)27~88 | |
平均 個 | 34 | 78 | 89 | 83 | 53 | 38 | 42 | 44 | ||
顆 粒 数 |
範囲 個 | 0 | 5~12 | 0~4 (0~7) |
4~6 | 2~6 | 0~2 | 0 | 0 | |
平均 個 | 0 | 9 | 2(3) | 5 | 5 | 0.1 | 0 | 0 | ||
種 子 |
色 | 淡褐 | 淡褐 | 淡褐 | 淡黄褐 | 淡黄褐 | 白 | 白 | 淡褐 | |
長 さ |
範囲 ㎜ | 1.7~2.2 | 1.1~1.5 | 1.1~1.5 | 1.2~1.5 | 1.3~1.8 | 1.2~1.6 | 1.3~1.7 | 1.2~1.8 | |
平均 ㎜ | 1.9 | 1.3 | 1.3 | 1.4 | 1.6 | 1.5 | 1.5 | 1.6 |
※ 表1の範囲から全く外れるデータは赤色、範囲外に及ぶデータは青色とした。
※ ダグラスイヌホオズキはSolanum douglasiiと思われるものの仮称。
※ ダグラスイヌホオズキの球状顆粒数の()は花の未確認のものを含めたとき。
※ テリミノイヌホオズキにはこの表にあてはまらないものがある。
※ 調査データ数は表7参照
1 The Jepson Manualのデータ、CDFA(CALIFORNIA DEPARTMENT OF FOOD AND AGRICULTURE) のデータ、カナダのオンタリオ州のデータを考慮すると大きな違いはないと思われる。カリフォルニアにはアメリカイヌホオズキはないため、オンタリオ州のデータも参考にした。
1 オオイヌホオズキと思って採取したものの中に球状顆粒が少ないものが見つかった。球状顆粒はあっても4個以下であり、無いものもある。データ数が少ないときは花柱が短い種と考えたが、データ数を増やしたところ、オオイヌホオズキにも花柱の短いものがあり、球状顆粒以外のデータはほとんど一致してしまった。アメリカのサイトを検索したところSolanum douglasii にデータがほぼ一致することがわかった。Douglas' nightshadeと呼ばれているため、ひとまず、ダグラスイヌホオズキと呼ぶことにする。
この表にあてはまらないものが新たに見つかった(2011/12/10)。全体の様子や果実はダグラスイヌホオズキに似ているが、果実中の球状顆粒が小さいものと大きいものが同一花序でも混じり、1~7個ある。種子数が50~100個程度であり、種子は大きさが1.1~1.5㎜である。近くに、ダグラスイヌホオズキやオオイヌホオズキもあり、花がなく、果実だけがついていた2株である。現在はダグラスイヌホオズキではないかと推定し、ダグラスイヌホオズキの球状顆粒の欄に()書きした。(ダグラスイヌホオズキ詳細参照)
3 アメリカイヌホオズキとテリミノイヌホオズキの中間型が出てきてしまった。果実はテリミノホオズキのように早く熟さないが、大きくて光沢が強い。花はアメリカイヌホオズキに似て淡紫色を帯び、全体の外観はアメリカイヌホオズキに近い。果実の種子数と球状顆粒数が両者の中間である。種子は色がアメリカイヌホオズキに似るが、大きさがテリミノホオズキに近い。これがムラサキイヌホオズキと呼ばれているものと推測される。
4 アメリカイヌホオズキの球状顆粒は最大が6個であり、やや少なかった。過去に8個のものがあり、同じ場所を探したが、アメリカイヌホオズキは見当たらなかった。アメリカイヌホオズキは少なく、草刈りに会う場所にあるものが多く、データを得にくい。花序の花数は5個が混じるものが見られた。ontarioweedsのデータは球状顆粒数も葯の長さもよく一致している。
5 テリミノイヌホオズキのカンザシイヌホオズキ型はほとんど球状顆粒がなく、稀に1~2個の球状顆粒をもつものが混じる。種子は白色のものがほとんどである。しかし、花序はカンザシイヌホオズキ型であるが、果実の光沢が少なく、種子が淡褐色のものが1株だけあった(集計には入れていない)。また、種子が白色で、小果柄が一部、垂れ下がる株が多数あり、カンザシイヌホオズキ型に含めている。テリミノイヌホオズキの垂れ実型は全て球状顆粒がなく、種子が白色と淡褐色2種類のものがある。種子が白色のものは葯が褐色を帯び、果実の光沢が強い。淡褐色のものは、果実の光沢が少ないものが混じる。(テリミノイヌホオズキ参照)