アメリカイヌホオズキ 亜米利加犬酸漿

Flora of Mikawa
ナス科 Solanaceae ナス属
英 名 | eastern nightshade , eastern black nightshade , West Indian nightshade |
学 名 | Solanum emulans Raf. synonym Solanum adventitium Polg. synonym Solanum dillenianum Polgar synonym Solanum heterogonum Dunal synonym Solanum nigrum var. virginicum L. synonym Solanum americanum auct. non Mill. |














花 期 | 6~11月 |
高 さ | 5~100(30~60)㎝ |
生活型 | 1年草 |
生育場所 | 湿った開けた森林、川岸、野原、道端、乱れた地域 |
分 布 | 帰化種 北アメリカ原産 |
撮 影 | 幡豆町 11.11.2 |
アメリカイヌホオズキはナス科ナス属の雑草。学名がSolanum ptycanthumとされていたが、Solanum emulans Raf.に変更された。Solanum ptycanthumはSolanum americanumのsynonymとされた。アメリカイヌホオズキはカナダ南部、USA原産であり、西部沿岸地域を除き広く分布し、ブラックナイトシェードグループで最も一般的な種である。英名はEastern nightshadeである。イギリス、スウェーデンなどに帰化し、日本にも帰化している。
特徴は分岐しない散形花序で、花数が少ない。花はやや大きい。葯は短く、花糸がやや長く、花柱がやや長い。果実は光沢が少なく、萼片はほぼ密着する。果実内の球状顆粒は6~9個程度と多い。種子は北米ではやや大きく、長さ1.6~1.8mm、果実の種子数も20~50(~60)個されるが、日本では長さ1~1.3mmと小さく、数が60~120個とされている。果実は毒があるともいわれ、deadly nightshade と呼ばれるが、これは違うものを指している。嗜好性についての多くの情報が得られるまで実を食べない方が賢明である。(全草にソラニンを含んでいるが、よく熟した果実には毒がないともいわれている。)
草本または低木、一年生または多年生、直立し、無柄、高さ1mまで、無毛またはまばらにまたはまれに密に毛が生え、毛は分岐せず、長さ1mmまで、腺がない。葉は葉柄があり、葉柄は長さ1~5cm、葉身は単葉、卵形~楕円形、長さ4.5~10.5cm×幅2~6cm、縁は全縁~波状の歯があり、基部は漸尖形~円形。花序は腋外生(extra-axillary:葉腋でなく、茎の側面から突き出す)、分岐せず、散形花序状、花が(2~)3~6個つき、長さ1~2.5cm。小花柄は花時には真っ直ぐで広がり、果時には反曲~後屈し、長さ0.5~1cm。花は放射相称。萼は増大せず、無棘、長さ2~3mm、無毛~まばらに毛があり、萼片は果時に密着し、三角形。花冠は白色、ときに中央に黄色い星形があり、まれに紫色を帯び、星形で、直径0.5~1cm、花弁間組織はない。雄しべは等長。葯は楕円形、長さ1~1.5mm、先端の孔が裂けて縦方向に裂開する。子房は無毛。果実は鈍いまたはわずかに光沢のある紫黒色、球形、長さ0.5~1cm、無毛、果実1個につき6~9個の球状顆粒(sclerotic granules:硬粒)がある。種子は帯黄色、扁平、長さ1.5~2mm×幅1~1.5mm、細かい網目模様がある。2n=24。花期は5~10月。[Flora of North America]
【Sandra Knapp etc.(2019)の解説】=【GBIF: Database of Vascular Plants of Canada (VASCAN)の解説】
高さ1.0mまでの一年生草本~亜木質の多年生低木、基部で分枝する。茎は円柱形~うねがあり、緑色、軟毛があり、毛は単純で伏した単列の腺のない1~5細胞、長さは約0.2mm、新芽にはより密に軟毛がある。仮軸枝は2葉があり(difoliate)、葉は双生(geminate)ではない。葉は単純で、長さ4.5~10.5(~17.5)cm、幅2.0~6.3(~8.3)cm、卵形で薄い膜質、上下面がわずかに色が異なり、上面は緑色、下面は帯紫色、特に若い成長部ではその傾向が強く、上面は無毛~まばらに軟毛があり、茎の毛と同様の半透明で単純な単列の毛が伏せ、主に葉脈に沿って散在し、下面は無毛~まばらに毛があり、葉身と葉脈の両方に上面のものと同様の毛があり、主脈は4~6対。基部は漸尖形~鋭形、縁は波状の歯があり、まれに全縁、先は鋭形~尖鋭形。葉柄は長さ1.0~5.0cm、茎のものと同様の単純な単列の毛がある。花序は長さ1.0~2.5cm、側生し、節間につき、分岐せず、まれに2股に分岐し、先端近くに花が(2)3~6個、密につき(ほぼ散形)、まばらに毛があり、茎の毛と同様に単純な単列の毛が密にある。花序柄は長さ1.0~1.7cm、真っすぐ。小花柄は長さ8~10mm、基部の直径0.4~0.5mm、先端の直径0.5~0.6mm、真っ直ぐ広がり、基部に関節がある。小花柄の傷跡は約0~0.5mm間隔で存在する。蕾はほぼ球形、花冠は萼から、長さの1/3まで突出する。花は5数性、すべて完全花である。萼筒は長さ0.7~0.9mm、萼片は長さ0.8~2.2mm、幅0.7~1.3mm、卵形~細長く、先は鈍形であり、まばらに軟毛があり、茎に似た伏毛があるが、茎の毛より短い。花冠は直径8~10mm、星形、白色で基部近くの中央部は黄緑色、基部の1/3までで裂け、裂片は長さ3.0~4.0mm、幅1.0~1.2mm、花時に強く反り返り、後に広がり、縁と先端に沿って外面に密に毛があり、茎や葉のものと似た単列の単純な毛状突起があるが、より短い。雄しべは等長、花糸の筒部は小さく、毛があり、外面に開出する単列の単純な毛状突起がある。花糸の自由部分は長さ0.6~1.0mmで、筒と同様に毛がある。葯は長さ(1~)1.5~1.7mm、幅0.4~0.5mm、楕円形、黄色、先端には孔があり、孔は老化とともにスリット状に長くなる。子房は球形、無毛。花柱は長さ3.5~4.5mm、葯を超えず、密に毛があり、基部から1/3~1/2に、2~3細胞の単列の単純な毛状突起がある。柱頭は頭状、微細なパピラがあり、生きた植物では緑色である。果実は球形の液果、直径6~8mm、成熟すると鈍い紫黒色で不透明、果皮の表面は艶消しからわずかに光沢がある。果時の小花柄は長さ8~10mm、基部の直径は0.4~0.6mm、先端の直径は0.7~1.0mmで、反曲~後屈し、小花柄の間隔は0.5~2.5mmで、果実が成熟すると落ちる。果時に萼はやや増大し、萼筒は長さ1mm未満、萼片は長さ1.0~2.2mm、果実の表面に密着するか、成熟した果実ではわずかに広がる。種子は1果に20~50(~60)個、長さ1.6~1.8mm、幅1.0~1.2mmで、扁平、涙滴形、頂端近くにへそを持ち、褐色、表面に微細な穴があいており、種皮細胞は輪郭が五角形。球状顆粒(stone cells)は1果に6~9(10)個、直径約0.3mm。2n=2×=24 (Stebbins and Paddock 1949、S. americanum として; Mulligan 1961、S. americanum として; Soria and Heiser 1961、S. americanum として; Heiser et al. 1965、S. americanum として; Edmonds 1983、S. americanum として; Crompton and Bassett 1976、S. americanum として)。
Solanum emulans は、長さ1.0~1.5mmの小さな葯、S. americanum に比べて比較的長い0.6~1.0mmの花糸、S. americanum よりも長い萼片が S. americanum のように強く反り返るのではなく果実に密着していること、果実の先端で小花柄が太くなること(S. americanum と異なる)、成熟した果実とともに小花柄が落ちること(S. americanum では花序に花柄が残る)により、北米の他のモレロイド植物(Morelloid cladeの植物:black nightshades または Maurella(Morella))と区別できる。Solanum emulans の果実には常に4~9(10)個の球状顆粒(stone cells:石細胞)があるが、S. americanum には石細胞がないか、最大でも4個である。 Solanum emulans は、葯が短いこと、萼片が通常より短いこと、花序が通常分岐しないことで、S. interius および S. nigrescens と区別できる。ときに移入される S. nigrum と同所的である場合、葯の長さと果実内の球状顆粒の数に基づいて S. emulans を簡単に区別できるが、S. emulans の葉は一般に薄く、裏面は紫がかっていることが多い。グレートプレーンズ(Great Plains:北米の Rocky 山脈東方から Mississippi 川に至る大平原地帯)では、形態的に類似する S. interius の方が S. emulans よりも一般的である一方、アメリカ合衆国の南東部およびメキシコ湾岸では S. americanum の方が一般的である。Solanum emulans はカリブ海では知られていない。S. emulans は18世紀からヨーロッパの植物園で栽培されていたようだが、最初に移入された場所を超えて逃げ出して帰化はしていない。ヨーロッパの標本は石油工場や衣料工場の近くの地域で見つかったものが少なく、どうやら存続していないようである(Polgar 1926)。Constantine Rafinesque は、新しい分類群に関する多数の記述の中で特定の標本を挙げておらず、彼が北米に保管していた植物標本は彼の死後広く散逸し、破壊されたと考えられている(Pennell 1944; Warren 2004)。ウィーン植物標本館(W acc. # 0009388)の標本は S. emulans の記述に該当し、「Solanum Virginicum / Amer. Bor. Rafinesque」というラベルと1828年の日付が記されており、この名前の元となった資料である可能性がある。ここではこれを新基準標本として選択した。これは、この標本(または他の標本)が Rafinesque によって S. emulans の記述に使用されたという証拠が序文にないためである。S. ptychanthum いう名前は北米でこの種に使われてきたが(例えば、Schilling 1981、Voss et al. 1993、Jones 2005)、その名前のタイプはS. americanumの植物に対応している(S. americanum の説明を参照)。Solanum emulans は長い間無視されてきたが、序文でRafinesqueは明らかに「ニューイングランドとケンタッキー」の分類群を指しており、人々はこれを「S. virginicum」と呼んでいた。おそらくリンネの S. nigrum var. virginicum であり、S. virginicum L. (インド産のとげのあるナス科植物 S. virginianum L. の非合法な名前で綴り方が違うもの、Jarvis 2007 を参照) はない。そして彼の説明は、北米東部に広く分布するこの小花のモレロイド植物と一致している。序文には「北東州産で、通常 S. Virg. [virginianum] と間違われるが、表面は平滑でより小さく、花は白く小さく、液果は豆状」とある。この分類群に対応する標本は、オックスフォード大学の Dillenian 植物標本室に多名式(Solanum nigrum vulgari simile、caulibus exasperatis Dill. elth. 368、t. 275、f. 256) で収蔵されており、Solanum nigrum var. virginicum (Linnaeus 1753) について引用された唯一の要素である図版に対応している。D'Arcy (1974 a) は Solanum adventitium のタイプとして「ハンガリー、Polgar s. n. (MPU)」を挙げているが、産地や番号は明記していない。これは、単一の明確な標本を引用するほど具体的ではないと考えており、原典と矛盾する可能性が高いため、ここでは S. adventitium を選別標本とする。S. adventitium の原典で、Polgar (1926) は、1915年から1919年の間に「Meller'schen Oelfabrik」と「Gueterbahnhof」(どちらもハンガリー、ジェーエル) で収集した自身のコレクションをいくつか引用しているが、数も植物標本集も引用していない。彼は、植物が 1919年10月までに両方の産地から姿を消したと述べているが、やはり植物標本集は引用していない。彼の植物標本はBPに保管されており、私たちは、1916年から1919 年の間にジェールの貨物倉庫で収集された植物標本の中の S. adventitium とラベル付けされた彼の多数のコレクションの1つを、レクトタイプ(BP-352743)として選定した。[GBIF: Database of Vascular Plants of Canada (VASCAN)]
【SEInet;Solanum ptychanthum Dunal】
Eastern Black Nightshade, nightshade, West Indian nightshade, West Indian nightshade。米国北東部および隣接するカナダの維管束植物
枝分かれする1年生、15~60cm、無毛またはやや剛毛または特に上部に内曲した微軟毛がある。葉は葉柄があり、葉身は卵形~三角形、不規則に鈍い歯があるか、またはほぼ全縁、長さ2~8cm×幅1~5.5cm。花序柄は多数あり、斜上し、長さ3cmまで。小花柄は密に束生し(散形花序を形成し)、少なくとも果時に大部分が後屈し、成熟すると萼は長さ2~3mm、萼片はしばしば不等長であり、ときに後屈する。花冠は白色またはわずかに青みがかり、幅5~10mm。果実は球形で黒色、直径8mm、少なくとも若いうちは有毒。種子は多数、しばしば種子の半分の長さのほぼ球形の球状顆粒(concretions)が1~10個ある。倍数体系列は x=12 に基づく。生息地が乱れた世界各地に生息する雑草で、非常に多様化しているが、多くの試みにもかかわらず、まだ満足のいくほど個別の分類群に分けられていない。ここで説明されている北米原産の植物は、これまでのところすべて二倍体である。種レベルでのこれらの最も古い名前は、S. ptychanthum Dunal (S. americanum Mill.、おそらく誤用) である可能性がある。変種レベルでは、名前は S. nigrum var. virginicum L となる。典型的なヨーロッパの S. nigrum は、主に大西洋岸の港湾周辺でのみ見られる。これは六倍体で、より毛が多く、(毛は短く、±広がり、やや粘性がある)で、より総状花序状(それでもコンパクト)に近い花序がある。
【ontarioweeds.com および Go Botany:S. ptychanthumの解説】
北アメリカ原産。英名はeastern black nightshade , West Indian nightshade。帰化し、荒地、草地に生える。
1年草、高さ5~100(30~60)㎝。茎は直立し、普通、上部で多数、分枝し、ほとんど毛がない。(広く分枝するともいわれる。)葉は互生し、卵形又は菱形(diamond-shaped)、薄い緑色で、柔らかく、厚さが薄く半透明に近い。小さな花が小さな散形花序(小花柄は1点につく)に普通、1~4(2~5)個集まってつく。花柄は短く、葉腋でなく、茎の側面から突き出す。5裂し、萼片が5個ある萼は果実が大きくなっても大きくならない。花冠は白色又は淡紫色。5個の細い裂片がトマトの花のような星形をなし、直径おおよそ9~15㎜。葯は短く長さ1.3~2㎜。花の中心部は黄色の円柱状になる。果実は漿果(berry)、初め緑色から暗褐色~黒色に変わる。成果の直径5~9㎜。いくつかの扁平な種子と4~8個の小さな石のようなかけら(球状顆粒)を含む。種子は長さ1.4~1.8㎜。花期は6~11月。
※種子数は果径7㎜以上の数値を示した。
アメリカイヌホオズキと思われる実測値は神奈川県植物誌のデータにほぼ一致している。
写真は草丈が30㎝程度と低く、よく分枝し横に広がった株である。葉にはまばらに毛があった。平開した花冠の直径は6~12㎜であり、平均は9㎜でやや小さめ。花冠の裂片は通常、細いが、裂片の幅がやや広い花も稀に混じる。花冠の色はほとんど淡紫色で白色の花はわずか。果実はフケ状班紋(白色の斑点)が不明瞭で、直径5~8.5㎜。果実の萼片の基部が果実に付着し、反り返りは弱い。果径が7㎜以上だと種子数も60個以上ある。球状顆粒は小さい果実でも4個以上必ずあるが、6個までであった。過去には8個のものも確認している。種子はやや大きい。
他のイヌホオズキ類との比較はイヌホオズキ類の比較表にまとめた。
ムラサキイヌホオズキは花が淡紫色を帯び、全体の外観もアメリカイヌホオズキによく似ている。茎など全体に紫色を帯び、果実はフケ状班紋がやや多く、大きくて光沢が強く、種子もやや大きい(上記の比較表)。
オオイヌホオズキは果実がよく似ていて間違いやすい。花が大きく、花柱が長く、花序の花数が5~8個と多く、種子が小さい。花が小さいものしかなく迷うときの判別には花柱や葯の長さの測定により確定できる。
イヌホオズキは花冠の切れ込みが浅くて裂片の幅が広い。また、果実に光沢がなく、球状顆粒を含まず、種子が長さ約2㎜と大きい。種子の大きさで確定できる。
テリミノイヌホオズキは花序の花数が多く、果実が早くから黒紫色になり、光沢が強い。花もよく淡紫色になり、よく似ているため、花序の花数が少ないものは果実がないと判別が難しい。緑の果実のフケ状班紋が明瞭で、横幅の広い楕円状になりやすい。果実の球状顆粒はほとんどなく、あっても1~2個が多い。ただし、4~5個の場合もあるとの報告がある。萼片が基部から強く後方へ曲がるのも特徴である。葉は上部のものが小さく、全縁に近くなることが多いが、同様の波状鋸歯になることもある。2型確認報告されており、テリミノイヌホオズキ(垂れ実型)とカンザシイヌホオズキ型がある。カンザシイヌホオズキ型は小果柄が上向きに立つので判別は簡単である。
特徴は分岐しない散形花序で、花数が少ない。花はやや大きい。葯は短く、花糸がやや長く、花柱がやや長い。果実は光沢が少なく、萼片はほぼ密着する。果実内の球状顆粒は6~9個程度と多い。種子は北米ではやや大きく、長さ1.6~1.8mm、果実の種子数も20~50(~60)個されるが、日本では長さ1~1.3mmと小さく、数が60~120個とされている。果実は毒があるともいわれ、deadly nightshade と呼ばれるが、これは違うものを指している。嗜好性についての多くの情報が得られるまで実を食べない方が賢明である。(全草にソラニンを含んでいるが、よく熟した果実には毒がないともいわれている。)
草本または低木、一年生または多年生、直立し、無柄、高さ1mまで、無毛またはまばらにまたはまれに密に毛が生え、毛は分岐せず、長さ1mmまで、腺がない。葉は葉柄があり、葉柄は長さ1~5cm、葉身は単葉、卵形~楕円形、長さ4.5~10.5cm×幅2~6cm、縁は全縁~波状の歯があり、基部は漸尖形~円形。花序は腋外生(extra-axillary:葉腋でなく、茎の側面から突き出す)、分岐せず、散形花序状、花が(2~)3~6個つき、長さ1~2.5cm。小花柄は花時には真っ直ぐで広がり、果時には反曲~後屈し、長さ0.5~1cm。花は放射相称。萼は増大せず、無棘、長さ2~3mm、無毛~まばらに毛があり、萼片は果時に密着し、三角形。花冠は白色、ときに中央に黄色い星形があり、まれに紫色を帯び、星形で、直径0.5~1cm、花弁間組織はない。雄しべは等長。葯は楕円形、長さ1~1.5mm、先端の孔が裂けて縦方向に裂開する。子房は無毛。果実は鈍いまたはわずかに光沢のある紫黒色、球形、長さ0.5~1cm、無毛、果実1個につき6~9個の球状顆粒(sclerotic granules:硬粒)がある。種子は帯黄色、扁平、長さ1.5~2mm×幅1~1.5mm、細かい網目模様がある。2n=24。花期は5~10月。[Flora of North America]
【Sandra Knapp etc.(2019)の解説】=【GBIF: Database of Vascular Plants of Canada (VASCAN)の解説】
高さ1.0mまでの一年生草本~亜木質の多年生低木、基部で分枝する。茎は円柱形~うねがあり、緑色、軟毛があり、毛は単純で伏した単列の腺のない1~5細胞、長さは約0.2mm、新芽にはより密に軟毛がある。仮軸枝は2葉があり(difoliate)、葉は双生(geminate)ではない。葉は単純で、長さ4.5~10.5(~17.5)cm、幅2.0~6.3(~8.3)cm、卵形で薄い膜質、上下面がわずかに色が異なり、上面は緑色、下面は帯紫色、特に若い成長部ではその傾向が強く、上面は無毛~まばらに軟毛があり、茎の毛と同様の半透明で単純な単列の毛が伏せ、主に葉脈に沿って散在し、下面は無毛~まばらに毛があり、葉身と葉脈の両方に上面のものと同様の毛があり、主脈は4~6対。基部は漸尖形~鋭形、縁は波状の歯があり、まれに全縁、先は鋭形~尖鋭形。葉柄は長さ1.0~5.0cm、茎のものと同様の単純な単列の毛がある。花序は長さ1.0~2.5cm、側生し、節間につき、分岐せず、まれに2股に分岐し、先端近くに花が(2)3~6個、密につき(ほぼ散形)、まばらに毛があり、茎の毛と同様に単純な単列の毛が密にある。花序柄は長さ1.0~1.7cm、真っすぐ。小花柄は長さ8~10mm、基部の直径0.4~0.5mm、先端の直径0.5~0.6mm、真っ直ぐ広がり、基部に関節がある。小花柄の傷跡は約0~0.5mm間隔で存在する。蕾はほぼ球形、花冠は萼から、長さの1/3まで突出する。花は5数性、すべて完全花である。萼筒は長さ0.7~0.9mm、萼片は長さ0.8~2.2mm、幅0.7~1.3mm、卵形~細長く、先は鈍形であり、まばらに軟毛があり、茎に似た伏毛があるが、茎の毛より短い。花冠は直径8~10mm、星形、白色で基部近くの中央部は黄緑色、基部の1/3までで裂け、裂片は長さ3.0~4.0mm、幅1.0~1.2mm、花時に強く反り返り、後に広がり、縁と先端に沿って外面に密に毛があり、茎や葉のものと似た単列の単純な毛状突起があるが、より短い。雄しべは等長、花糸の筒部は小さく、毛があり、外面に開出する単列の単純な毛状突起がある。花糸の自由部分は長さ0.6~1.0mmで、筒と同様に毛がある。葯は長さ(1~)1.5~1.7mm、幅0.4~0.5mm、楕円形、黄色、先端には孔があり、孔は老化とともにスリット状に長くなる。子房は球形、無毛。花柱は長さ3.5~4.5mm、葯を超えず、密に毛があり、基部から1/3~1/2に、2~3細胞の単列の単純な毛状突起がある。柱頭は頭状、微細なパピラがあり、生きた植物では緑色である。果実は球形の液果、直径6~8mm、成熟すると鈍い紫黒色で不透明、果皮の表面は艶消しからわずかに光沢がある。果時の小花柄は長さ8~10mm、基部の直径は0.4~0.6mm、先端の直径は0.7~1.0mmで、反曲~後屈し、小花柄の間隔は0.5~2.5mmで、果実が成熟すると落ちる。果時に萼はやや増大し、萼筒は長さ1mm未満、萼片は長さ1.0~2.2mm、果実の表面に密着するか、成熟した果実ではわずかに広がる。種子は1果に20~50(~60)個、長さ1.6~1.8mm、幅1.0~1.2mmで、扁平、涙滴形、頂端近くにへそを持ち、褐色、表面に微細な穴があいており、種皮細胞は輪郭が五角形。球状顆粒(stone cells)は1果に6~9(10)個、直径約0.3mm。2n=2×=24 (Stebbins and Paddock 1949、S. americanum として; Mulligan 1961、S. americanum として; Soria and Heiser 1961、S. americanum として; Heiser et al. 1965、S. americanum として; Edmonds 1983、S. americanum として; Crompton and Bassett 1976、S. americanum として)。
特徴と標本
Solanum emulans は、長さ1.0~1.5mmの小さな葯、S. americanum に比べて比較的長い0.6~1.0mmの花糸、S. americanum よりも長い萼片が S. americanum のように強く反り返るのではなく果実に密着していること、果実の先端で小花柄が太くなること(S. americanum と異なる)、成熟した果実とともに小花柄が落ちること(S. americanum では花序に花柄が残る)により、北米の他のモレロイド植物(Morelloid cladeの植物:black nightshades または Maurella(Morella))と区別できる。Solanum emulans の果実には常に4~9(10)個の球状顆粒(stone cells:石細胞)があるが、S. americanum には石細胞がないか、最大でも4個である。 Solanum emulans は、葯が短いこと、萼片が通常より短いこと、花序が通常分岐しないことで、S. interius および S. nigrescens と区別できる。ときに移入される S. nigrum と同所的である場合、葯の長さと果実内の球状顆粒の数に基づいて S. emulans を簡単に区別できるが、S. emulans の葉は一般に薄く、裏面は紫がかっていることが多い。グレートプレーンズ(Great Plains:北米の Rocky 山脈東方から Mississippi 川に至る大平原地帯)では、形態的に類似する S. interius の方が S. emulans よりも一般的である一方、アメリカ合衆国の南東部およびメキシコ湾岸では S. americanum の方が一般的である。Solanum emulans はカリブ海では知られていない。S. emulans は18世紀からヨーロッパの植物園で栽培されていたようだが、最初に移入された場所を超えて逃げ出して帰化はしていない。ヨーロッパの標本は石油工場や衣料工場の近くの地域で見つかったものが少なく、どうやら存続していないようである(Polgar 1926)。Constantine Rafinesque は、新しい分類群に関する多数の記述の中で特定の標本を挙げておらず、彼が北米に保管していた植物標本は彼の死後広く散逸し、破壊されたと考えられている(Pennell 1944; Warren 2004)。ウィーン植物標本館(W acc. # 0009388)の標本は S. emulans の記述に該当し、「Solanum Virginicum / Amer. Bor. Rafinesque」というラベルと1828年の日付が記されており、この名前の元となった資料である可能性がある。ここではこれを新基準標本として選択した。これは、この標本(または他の標本)が Rafinesque によって S. emulans の記述に使用されたという証拠が序文にないためである。S. ptychanthum いう名前は北米でこの種に使われてきたが(例えば、Schilling 1981、Voss et al. 1993、Jones 2005)、その名前のタイプはS. americanumの植物に対応している(S. americanum の説明を参照)。Solanum emulans は長い間無視されてきたが、序文でRafinesqueは明らかに「ニューイングランドとケンタッキー」の分類群を指しており、人々はこれを「S. virginicum」と呼んでいた。おそらくリンネの S. nigrum var. virginicum であり、S. virginicum L. (インド産のとげのあるナス科植物 S. virginianum L. の非合法な名前で綴り方が違うもの、Jarvis 2007 を参照) はない。そして彼の説明は、北米東部に広く分布するこの小花のモレロイド植物と一致している。序文には「北東州産で、通常 S. Virg. [virginianum] と間違われるが、表面は平滑でより小さく、花は白く小さく、液果は豆状」とある。この分類群に対応する標本は、オックスフォード大学の Dillenian 植物標本室に多名式(Solanum nigrum vulgari simile、caulibus exasperatis Dill. elth. 368、t. 275、f. 256) で収蔵されており、Solanum nigrum var. virginicum (Linnaeus 1753) について引用された唯一の要素である図版に対応している。D'Arcy (1974 a) は Solanum adventitium のタイプとして「ハンガリー、Polgar s. n. (MPU)」を挙げているが、産地や番号は明記していない。これは、単一の明確な標本を引用するほど具体的ではないと考えており、原典と矛盾する可能性が高いため、ここでは S. adventitium を選別標本とする。S. adventitium の原典で、Polgar (1926) は、1915年から1919年の間に「Meller'schen Oelfabrik」と「Gueterbahnhof」(どちらもハンガリー、ジェーエル) で収集した自身のコレクションをいくつか引用しているが、数も植物標本集も引用していない。彼は、植物が 1919年10月までに両方の産地から姿を消したと述べているが、やはり植物標本集は引用していない。彼の植物標本はBPに保管されており、私たちは、1916年から1919 年の間にジェールの貨物倉庫で収集された植物標本の中の S. adventitium とラベル付けされた彼の多数のコレクションの1つを、レクトタイプ(BP-352743)として選定した。[GBIF: Database of Vascular Plants of Canada (VASCAN)]
【SEInet;Solanum ptychanthum Dunal】
Eastern Black Nightshade, nightshade, West Indian nightshade, West Indian nightshade。米国北東部および隣接するカナダの維管束植物
枝分かれする1年生、15~60cm、無毛またはやや剛毛または特に上部に内曲した微軟毛がある。葉は葉柄があり、葉身は卵形~三角形、不規則に鈍い歯があるか、またはほぼ全縁、長さ2~8cm×幅1~5.5cm。花序柄は多数あり、斜上し、長さ3cmまで。小花柄は密に束生し(散形花序を形成し)、少なくとも果時に大部分が後屈し、成熟すると萼は長さ2~3mm、萼片はしばしば不等長であり、ときに後屈する。花冠は白色またはわずかに青みがかり、幅5~10mm。果実は球形で黒色、直径8mm、少なくとも若いうちは有毒。種子は多数、しばしば種子の半分の長さのほぼ球形の球状顆粒(concretions)が1~10個ある。倍数体系列は x=12 に基づく。生息地が乱れた世界各地に生息する雑草で、非常に多様化しているが、多くの試みにもかかわらず、まだ満足のいくほど個別の分類群に分けられていない。ここで説明されている北米原産の植物は、これまでのところすべて二倍体である。種レベルでのこれらの最も古い名前は、S. ptychanthum Dunal (S. americanum Mill.、おそらく誤用) である可能性がある。変種レベルでは、名前は S. nigrum var. virginicum L となる。典型的なヨーロッパの S. nigrum は、主に大西洋岸の港湾周辺でのみ見られる。これは六倍体で、より毛が多く、(毛は短く、±広がり、やや粘性がある)で、より総状花序状(それでもコンパクト)に近い花序がある。
【ontarioweeds.com および Go Botany:S. ptychanthumの解説】
北アメリカ原産。英名はeastern black nightshade , West Indian nightshade。帰化し、荒地、草地に生える。
1年草、高さ5~100(30~60)㎝。茎は直立し、普通、上部で多数、分枝し、ほとんど毛がない。(広く分枝するともいわれる。)葉は互生し、卵形又は菱形(diamond-shaped)、薄い緑色で、柔らかく、厚さが薄く半透明に近い。小さな花が小さな散形花序(小花柄は1点につく)に普通、1~4(2~5)個集まってつく。花柄は短く、葉腋でなく、茎の側面から突き出す。5裂し、萼片が5個ある萼は果実が大きくなっても大きくならない。花冠は白色又は淡紫色。5個の細い裂片がトマトの花のような星形をなし、直径おおよそ9~15㎜。葯は短く長さ1.3~2㎜。花の中心部は黄色の円柱状になる。果実は漿果(berry)、初め緑色から暗褐色~黒色に変わる。成果の直径5~9㎜。いくつかの扁平な種子と4~8個の小さな石のようなかけら(球状顆粒)を含む。種子は長さ1.4~1.8㎜。花期は6~11月。
アメリカイヌホオズキの調査結果
葉の質が薄く、花が散形状につき少なく、果実の光沢が少なく、萼片が反り返りが少ないアメリカイヌホオズキを採取し、神奈川県植物誌、FNA(Flora of North America)、VASCANのデータと比較した。アメリカイヌホオズキ 神奈川県植物誌 |
Solanum emulans FNA |
Solanum emulans VASCAN |
実測値 | ||
アメリカイヌホオズキ | ムラサキイヌホオズキ | ||||
花序の花 個 | 1~4 | (2~)3~6 | (2~)3~6 | 1~5 | 2~6 |
花径 ㎜ | 4~6 | 5~10 | 8~10 | 6~12 | 6~12 |
花柱 ㎜ | 2~3 | - | 3.5~4.5 | 2.1~2.8 | 2.0~2.5 |
葯 ㎜ | 1~1.5 | 1~1.5 | (1~)1.5~1.7 | 1.4~1.6 | 1.2~1.8 |
果実光沢 | やや鈍 | 鈍~微光沢 | 無~微光沢 | やや鈍 | 強 |
果径 ㎜ | 7~10 | 5~9 | 6~8(~12) | 5~8.5 | 6~9 |
種子数 個 | 60~120 | 20~50(~60) | 20~50(~60) | 69~118 | 32~87 |
種子長 ㎜ | 1~1.3 | 1.6~1.8 | 1.6~1.8 | 1.2~1.5 | 1.3~1.8 |
球状顆粒 個 | 4~10 | (4)6~9(10) | 6~9(10) | 4~6 | 2~6 |
アメリカイヌホオズキと思われる実測値は神奈川県植物誌のデータにほぼ一致している。
写真は草丈が30㎝程度と低く、よく分枝し横に広がった株である。葉にはまばらに毛があった。平開した花冠の直径は6~12㎜であり、平均は9㎜でやや小さめ。花冠の裂片は通常、細いが、裂片の幅がやや広い花も稀に混じる。花冠の色はほとんど淡紫色で白色の花はわずか。果実はフケ状班紋(白色の斑点)が不明瞭で、直径5~8.5㎜。果実の萼片の基部が果実に付着し、反り返りは弱い。果径が7㎜以上だと種子数も60個以上ある。球状顆粒は小さい果実でも4個以上必ずあるが、6個までであった。過去には8個のものも確認している。種子はやや大きい。
他のイヌホオズキ類との比較はイヌホオズキ類の比較表にまとめた。
ムラサキイヌホオズキは花が淡紫色を帯び、全体の外観もアメリカイヌホオズキによく似ている。茎など全体に紫色を帯び、果実はフケ状班紋がやや多く、大きくて光沢が強く、種子もやや大きい(上記の比較表)。
オオイヌホオズキは果実がよく似ていて間違いやすい。花が大きく、花柱が長く、花序の花数が5~8個と多く、種子が小さい。花が小さいものしかなく迷うときの判別には花柱や葯の長さの測定により確定できる。
イヌホオズキは花冠の切れ込みが浅くて裂片の幅が広い。また、果実に光沢がなく、球状顆粒を含まず、種子が長さ約2㎜と大きい。種子の大きさで確定できる。
テリミノイヌホオズキは花序の花数が多く、果実が早くから黒紫色になり、光沢が強い。花もよく淡紫色になり、よく似ているため、花序の花数が少ないものは果実がないと判別が難しい。緑の果実のフケ状班紋が明瞭で、横幅の広い楕円状になりやすい。果実の球状顆粒はほとんどなく、あっても1~2個が多い。ただし、4~5個の場合もあるとの報告がある。萼片が基部から強く後方へ曲がるのも特徴である。葉は上部のものが小さく、全縁に近くなることが多いが、同様の波状鋸歯になることもある。2型確認報告されており、テリミノイヌホオズキ(垂れ実型)とカンザシイヌホオズキ型がある。カンザシイヌホオズキ型は小果柄が上向きに立つので判別は簡単である。