ギシギシ 羊蹄

mark

Flora of Mikawa

タデ科 Polygonaceae ギシギシ属

中国名

羊蹄 yang ti

学 名 Rumex japonicus Houtt.
ギシギシの花序
ギシギシの未熟な花被
ギシギシの完熟した花被
ギシギシの完熟した花被の拡大
ギシギシ
ギシギシ葉
ギシギシ葉縁
ギシギシ果実
花 期 6~8月
高 さ 40~100㎝
生活型 多年草
生育場所 やや湿った場所
分 布 在来種 日本全土、朝鮮、中国、台湾、ロシア
撮 影 幸田町 09.5.15
タデ科ギシギシ属の多年草。
 多年草、高さ40~100㎝。茎は直立して、多数、上部で枝分かれし、溝があり、無毛。根生葉は葉柄が長さ6~15㎝。葉身は長円形~披針状長円形、長さ8~25㎝×幅3~8㎝、下面には脈に微細なパピラがあり、上面は無毛、基部は円形、心形又は広楔形、縁はわずかに大きく波打ち、先は鋭形又は鈍形。茎葉は葉柄が短く、狭長円形、小さく、上につくほど葉は小さくなり、無柄となって、上部では苞葉となる。葉鞘は早落性、白色、膜質。花序は円錐花序、多段に密に輪生する。雌雄同株、両性花と雌花がある。花柄は細く、関節は中間の下にあり、関節は明瞭。花は花被片(萼)6個、雄しべ6個、雌しべ1個からなる。内花被片3個は果時に大きくなり果実を包む。バルブ(果実の内花被)は広心形、長さ4~5㎜×幅5~6㎜、全てのバルブは狭卵形の粒体(tubercles)をもち、明瞭な網脈があり、基部は心形、縁は不規則な小歯状、先は鋭形、小歯は高さ0.3~0.5㎜。痩果は暗褐色、光沢があり、広卵形、鋭い3稜形、長さ約2.5㎜、基部は狭く、先は鋭形。花期は5~6(日本では6~8)月。果期は6~7月。2n=60。
 よく似た帰化種のナガバギシギシは葉縁が細かく波打ち、果実の内花被が広卵形、全縁。
 アレチギシギシは果実の内花被が長卵形で小さく、全縁。
 エゾノギシギシコギシギシは果実の内花被の縁に長い突起がある。

ギシギシ属

  family Polygonaceae - genus Rumex

 多年草又は多くはないが1年草、まれに低木。根は普通、丈夫(直根)、ときに根茎がある。茎は直立、まれに、斜上~平伏し、分枝し、中空ではなく、溝がある。葉は単葉、しばしば、二形、早落性又は宿存性、根生葉と茎葉、互生し、縁は全縁又は波打つ。葉鞘は筒状、膜質、全縁。花序は普通、頂生、ときに頂生及び腋生、総状花序又は円錐花序。花柄は関節がある(機能的な花柄であり、真の花柄と外側の花被片の基部と統合して狭くなった偽花柄(pseudopedicel)とが下部で繋がる)。花は両性又は単性(雌雄異株では単性、まれに雌雄混株の同株で単性)。花被は宿存、花被片は6個、果時にしばしば、大きくなり、硬くなる。バルブ(valve:果時の内花被片)は全縁、微細不整歯、細鋸歯、又は様々な歯状、中脈はしばしば、瘤体(りゅうたい)または粒体(tuberculate callosities 小瘤状カロシティ:こぶ状突起)になる。雄しべは6個。花柱は3個、長い。柱頭はほうき状。痩果は3稜形の楕円形~卵形。
 世界に約200種があり、北半球及ぼ南半球の温帯に広く分布する。
 日本では18種が確認され、10種が自生、8種が帰化種である。13種のハイブリッドも確認されている(Yonekura 2006)。

ギシギシ属の主な種と園芸品種

1 Rumex acetosa L. スイバ 酸葉
  synonym Acetosa pratensis Miller
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾、モンゴル、ロシア、ユーラシア、北アフリカ(モロッコ)原産。中国名は酸模 suan mo。英名はsorrel , sorrel dock , sour dock , garden sorrel, common sorrel。別名はスカンポ。北アメリカ、南アメリカなどに帰化。標高400~4100mの山の斜面、森林の縁、湿った谷、低地の草地、畔に生える。食べられるが、茎や葉にシュウ酸の酸味があり、すっぱいので酸い葉と呼ばれる。
 多年生、雌雄異株、短くて比較的細い水平またはわずかに斜めの根茎を持ち、通常は基質の奥深くまで到達しない、かなり密集した二次根を持つ。茎は直立し、高さは40~100㎝、溝があり、無毛、通常は単純。根生葉は卵状披針形~披針形、基部は矢じり形、長さ3~12㎝×幅2~4㎝、縁は全縁、先は鋭形、基部の裂片は先が鋭形。茎葉は小さく、葉柄は短いか、ほとんど無く、葉の基部は茎を抱く。托葉鞘ははかなく(fugacious)、白色、膜質。花序は頂生の円錐花序、緩い。枝は赤みがかった緑色で、細く、単純であるか、またはいくつかの二次枝がある。花は多数つき、小さく単性。小花柄は細く、中間に関節がある。雄花は花被片が6個、雄しべも6個、外花被片3個が直立し、小さく、内花被片3個は楕円形、長さ約3㎜。雌花は外花被片が小さく、楕円形で、果時に反り返り、内花被片は果時に大きくなり、バルブ(valves)はうちわのようにほぼ円形(~広卵形)、直径3.5~4㎜、バルブの基部に小さな反り返った瘤体(tubercles)があり、網状の脈があり、基部は心形、縁は全縁、先は鈍形。柱頭が赤く目だつ。痩果は黒褐色、光沢があり、楕円形、三角形、長さ約2mm。花期は5~7月。果期は6~8月。2n=14, 15, 22。

2 Rumex acetosella L. ヒメスイバ 姫酸葉
  synonym Rumex angiocarpus auct. non Murb.
 朝鮮、中国、台湾、ロシア、インド、カザフスタン、西アジア、ヨーロッパ、アルジェリア、モロッコ原産。英名はfield sorrel , sheep sorrel , sorrel , red sorrel。中国名は小酸模 xiao suan mo。海抜2700m以下の道端、耕作地、荒地、荒地、芝生、牧草地、線路の砂利、砂浜、泥岸に生える。通常は酸性土壌。
 多年草、垂直の根茎および/または匍匐性の根茎を持ち、無毛。茎は直立または斜上し、基部から数本出て、上部1/2(花序)で分枝し、高さ10~40(~45)cm、シュートは様々。托葉鞘は基部が帯褐色、上部1/2が銀色を帯び、引き裂かれる。葉身は通常、倒卵状長円形、卵状披針形、披針状楕円形、または披針形、たまに線状披針形~ほぼ線形、長さ2~6㎝×幅0.3~2㎝、基部は矢じり形(裂片は広がり、全縁またはときに多裂し)、たまに明瞭な裂片を持たず、基部は広楔形、縁は全縁、平坦またはほぼ平坦、先は鋭形または鈍形。花序は頂生し、通常、茎の上部の1/2~1/3を占め、通常は緩く、上部まで途切れ、広または狭の円錐花序になる。小花柄は長さ1~3㎜。花は(3~)5~8(~10)個、輪生する。内花被片は大きくならないか、またはわずかに大きくなり、通常 長さ1.2~1.7(~2)㎜×幅0.5~1.3㎜(翼がないか、またはかろうじて見え)、基部が楔形、先は鈍形またはほぼ鋭形。痩果は褐色または暗褐色、長さ0.9~1.5㎜×幅0.6~0.9㎜。2n=14, 28, 42。花期は春~夏(FNA)。
 亜種がいくつかあり、日本に帰化しているのはsubsp. pyrenaicusである。
2-1 Rumex acetosella L. subsp. acetosella ヒナスイバ 雛酸葉
 ユーラシアに広く分布。英名はsheep sorrel , sorrel。アジア大陸では普通の型だが、日本では宮城県で最近採集された1 枚の標本以外には知られていない。
 6倍体(2n=42)。雌花の果時の内花被片の性質が異なることによって区別される。果実が裸実(gymnocarpous:果実の表面が花被に覆われず、裸出する)。根生葉の側裂片が多裂しない(nonmultifid)。
2-2 Rumex acetosella subsp. acetoselloides (Balansa) den Nijs
 ヨーロッパ(アルバニア、ブルガリア、東エーゲ海諸島、ギリシャ、クレタ島、ロシア(北コーカサス)、ルーマニア、トランスコーカサス(アゼルバイジャン、アルメニア、ジョージア)、トルコ、ユーゴスラビア(ボスニア ヘルツェゴビナ、クロアチア、北マケドニア、モンテネグロ、セルビア))に分布。  果実が裸実(gymnocarpous)。根生葉の側裂片が多裂する(multifid)。 2-3 Rumex acetosella L. subsp. angiocarpus (Murbeck) Murbeck
  synonym Rumex angiocarpus Murbeck
  synonym Acetosella angiocarpa (Murbeck) Á. Löve
 ヨーロッパ(イタリア、サルデーニャ島、ポルトガル、スペイン、ユーゴスラビア)、アフリカ(南アフリカ、スワジランド、レソト、モロッコ、アルジェリア、カナリア諸島、マデイラ島)、アジア(カムチャッカ、サハリン、千島列島)に分布。  2倍体(2n=14)。果実が被実(angiocarpous:果実は成長した内花被片から簡単に分離できない)。
2-4 Rumex acetosella subsp. arenicola Y.Mäkinen ex Elven
 ロシア、フィンランド、グリーンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンに分布。
 葉は通常基部に裂片がなく(R. graminifolius のように)、外巻きの縁を持つ。花序はまばらに分岐する。花被片と小花柄は赤いパピラで密に覆われる(R. graminifolius と同様)。R. graminifolius および関連分類群(R. beringensis および R. krausei)とは、より狭い内花被片(R. acetosella の他の亜種のものとサイズが類似)によって区別できる。
2-5 Rumex acetosella subsp. multifidus (L.) Schübl. & G.Martens
  synonym Rumex multifidus Linnaeus
  synonym tenuifolius (Wallroth) Á. Löve
  synonym Acetosella multifida (Linnaeus) Á. Löve
 アルバニア、ブルガリア、チェコスロバキア、ギリシャ、イタリア、ユーゴスラビア(ボスニア ヘルツェゴビナ、クロアチア、北マケドニア、モンテネグロ、セルビア)に分布。
 3倍体(2n=21)。

2-6 Rumex acetosella L. subsp. pyrenaicus (Pourr. ex Lapeyr.) Akeroyd ヒメスイバ 姫酸葉 狭義

  synonym Rumex pyrenaicus Pourret ex Lapeyrouse

  synonym Acetosella vulgaris subsp. pyrenaica (Pourret ex Lapeyrouse) Á. Löve

 ヨーロッパ南部(イギリス、アイルランド、ベルギー、イタリア、フランス、ポルトガル、スペイン)に分布。日本、千島列島、ニューヨーク、コスタリカ、チェコスロバキア、フォークランド諸島、グアテマラなどに帰化し、最も世界に広く広がっている亜種である。日本に帰化している型はほとんど全てがこのsubsp.pyrenaicus (Pourr. ex Lapeyr.) Akeroydであり、南サハリンや千島からも報告されている。
 6倍体(2n=42)。果実が被実(angiocarpous:果実は成長した内花被片から簡単に分離できない)。

3 Rumex amurensis F.Schmidt アムールギシギシ
 中国(安徽省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、江蘇省、吉林省、遼寧省、山東省)、ロシア原産。中国名は黑龙酸模 hei long suan mo。海抜300mまでの川辺、溝、湿った場所に生える。
 1年草。 茎は直立し、高さ10~30㎝、基部から分枝し、無毛。下部の葉は葉柄が長さ1~2.5㎝、細い。葉身は倒披針形または狭い長楕円形、長さ2~7㎝×幅0.3~1.2㎝、両面とも無毛、中脈が目立ち、基部は狭い楔形、縁はわずかにカリカリに縮れ(crisped)、先は鈍形または鋭形。茎葉は長さ2~5㎜の短い葉柄を持ち、葉身は線状披針形。托葉鞘ははかなく(fugacious)、膜質。花序は総状花序、数個の総状花序が集合して円錐花序状になり、葉がつく。花は両性。小花柄は基部に関節がある。外花被片は楕円形で小さい。内花被片は果時にが大きくなる。バルブは三角状卵形、瘤体があり、バルブの1個だけに2対の狭い歯があり、歯は長さ3.5~4㎜、先は真っ直ぐかわずかに湾曲しており、他のバルブは短い鋸歯がある。痩果は帯褐色、光沢があり、楕円形、鋭い三角形、長さ約1.5㎜、基部は狭く、先は鋭形。花期は5~6月。果期は6~7月。

4 Rumex aquaticus L. ヌマダイオウ 沼大黄
 日本、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、北アメリカ原産。中国名は水生酸模 shui sheng suan mo 。渓谷の水際、川の土手に生える。
 果期の内花被片に瘤体も刺もない種は、日本ではヌマダイオウRumex aquaticus L., ノダイオウR. longifolius DC.,マダイオウR. madaio Makino およびカラフトノダイオウR. gmelinii Turcz. ex Ledeb. の4種が知られているが、その区別点は微妙で特に未熟な標本では区別が困難である。誤同定の可能性もあり、日本における生育は疑わしいともいわれる。
 多年草。茎は直立、高さ30~120㎝、普通、上部(花序で)で分枝し、無毛、溝がある。根生葉は葉柄が長さ9~28㎝、無毛又は微細なパピラがある。葉身は長円状卵形~卵状披針形、長さ10~30㎝×幅4~13㎝、両面とも無毛又は下面の脈に微細なパピラがあり、基部は楔形~切形に近く、縁は波打ち、先は鋭形~鈍形に近い。茎葉は葉柄が短く、長円形又は広披針形、小さい。葉鞘は早落性、白膜質。花序は頂生、円錐花序、狭く、枝はほぼ直立。花は両性。花柄は糸状、関節は不明瞭、果時に関節が膨れない。内花被片は果時に大きくなる。バルブは卵形、長さ5~8㎜×幅4~6㎜、全て瘤体(いぼ状突起)は無く、基部は類切形、縁は全縁に近く、先は鋭形。痩果は褐色、光沢があり、楕円形、3稜形、長さ3~4.5㎜、基部は狭く、先は鋭形。花期は5~6月。果期は6~7月。2n=140。

5 Rumex brownii Campd. カギミギシギシ 鈎実羊蹄
  synonym Rumex alcockii Rech.f.
 オーストラリア原産。太平洋諸島、日本、イギリス、ニュージーランドなどに帰化している。英名はhooked dock , Browne's dock , swamp dock。
 多年草、高さ50~80㎝。茎は細く、直立、少数の長く、葉の無い枝をつける。根生葉は形や大きさが変化し、長円形~披針形、普通、バイオリン形(fiddle-shaped)、長さ12㎝×幅4㎝以下、先は鋭形~類鈍形、基部は心形~切形。葉柄は葉身の長さの半分~同長。茎葉は少なく、小さく、茎の1/3以下に限られる。花は輪に5~8個、離れてつき、基部に抱く葉は無い。果時のバルブは長さ2.5~4㎜×幅約2㎜、各側に鈎状の歯が3~5個つき、鈎状の先端をもつ。果時の花柄は細く、バルブの長さとほぼ同長、下部の1/3に関節がある。

6 Rumex conglomeratus Murray  アレチギシギシ 荒地羊蹄
 ユーラシア大陸原産の帰化種。英名はcluster dock, clustered green dock。
 多年草、高さ30~80(150)㎝。茎は直立し、細く、他のギシギシより外観は弱々しい。根生葉は花期にはない。茎葉は長さ(5)10~30㎝、幅2.5~6㎝、やや薄く、長楕円状披針形、長い柄があり、縁は波打ち、鋭頭(鈍頭)、基部は浅い心形。葉の中央脈に平行して数本の脈状の隆起線が目立つことが多い。上部の葉ほど小さくなり、苞葉となる。花期はナガバギシギシよりやや遅い。花茎は枝別れして節間が長く、節ごとに密生して花を輪生する。小花柄は長さ1~4(5)㎜。花は小さく、内花被は長さ2~3㎜、1~1.6(2)㎜。果実(痩果)はギシギシの中で最も小さく、果実を包む3個の内花被は長卵形、全縁、中央の瘤体(いぼ状突起)も、赤色を帯びることが多い。果実は長さ1.5~2㎜、幅1~1.6(2)㎜、暗褐色。2n=20。花期は 6~7月。

7 Rumex crispus L. ナガバギシギシ 長葉羊蹄

  synonym Rumex crispus L. subsp. fauriei (Rech.f.) Mosyakin et W.L.Wagner

 ヨーロッパ、西アジア原産の帰化種。英名はcurly dock。中国名は皱叶酸模 zhou ye suan mo 。
 多年草、高さ40~150㎝。茎は直立して、多数、枝分かれする。下部の葉は長楕円形で、長い柄があり、縁は細かく波打つ。上につくほど葉は小さくなり、柄が短く、上部では苞葉となる。葉先は丸く、基部は楔形。花は長い総状花序につき、多段に密に輪生する。雌雄同株、両性花と雌花がある。花は外花被3個、内花被3個、雄しべ6個、雌しべ1個からなる。雌しべは3個の花柱があり、柱頭は細かく裂ける。果実(痩果)は3個の内花被が大きくなり果実を包む。果実の内花被は広卵形、全縁で、先が丸く、中央に瘤体(いぼ状突起)がある。粒体の大きさはバラつく。ここに果実が入っているのではなく、内花被3個に包まれて1個だけ果実が入る。内花被の内側はやや凹む程度で、ほぼ平らである。果実は3稜形、茶褐色。2n=60。花期は5~7月。

8 Rumex dentatus L. コギシギシ 小羊蹄 広義
 日本、千島列島、韓国、中国(安徽省、福建省、甘粛省、貴州省、河北省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、内モンゴル、寧夏、青海省、陝西省、山東省、山西省、四川省、新疆、雲南省、浙江省)、台湾、インド、パキスタン、アフガニスタン、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、アッサム州、西ヒマラヤ、ヒマラヤ東、ネパール、ミャンマー、バングラデシュ、ラオス、ベトナム、アジア西部(イラン、イラク、レバノン・シリア、パレスチナ、イエメン、サウジアラビア、湾岸諸国、オマーン、トルコ、キプロス、シナイ半島)、ヨーロッパ(アルバニア、ブルガリア、ギリシャ、ルーマニア、ウクライナ、南欧ロシア、北コーカサス、トランスコーカサス)、アフリカ(エジプト、リビア、チュニジア)原産。中国名は齿果酸模 chi guo suan mo。英名はtoothed dock , dentate dock , Indian dock。海抜0~300mの荒地、斜面、耕作地に生える。
 1年草、まれに2年草、無毛または不明瞭なパピラがあり、特に葉身の下面の脈上にあり、紡錘形の垂直の根茎を持つ。茎は直立し、花序はしばしば屈曲し、上部~中間で、ときにほぼ基部から分枝し、高さ20~70(~80)㎝。托葉鞘は落葉性、または成熟しても部分的に宿存し、葉身は長楕形~楕円状披針形、または卵状楕円形、長さ3~8(~12)㎝×幅2~5㎝、長さは通常幅の4倍未満、革質ではなく、基部は通常切形またはほぼ心形~弱く心形、縁は全縁、平ら~弱く波打ち、たまにわずかにカリカリに縮れ、先は鈍形またはほぼ鋭形。花序は頂生、茎の上部1/2を占め、通常緩くて途切れ、広く円錐花序、枝は通常上向きで真っ直ぐ。小花柄は下部1/3に関節があり、糸状、長さ2~5㎜、関節は明らかに膨れる。花は10~20個、かなり密で離れた花輪につく。内花被片は卵状三角形または三角形、長さ3~5.5(~6)㎜×幅2~3㎜(歯を除く)、長さは幅の約1.5倍の長さ、基部は切形、ほとんどの場合、縁ははっきりとした歯状、まれにほぼ全縁、先は鋭形~ほぼ鋭形、真っ直ぐ、歯は2~4(~5)個、通常は縁の両側にあり、狭三角形、真っ直ぐ、長さ1~3(~5)㎜、内花被片の幅と同じかそれより短い。瘤体は(1~)3個、同じ大きさまたはほぼ同じ。痩果は暗赤褐色、長さ2~2.8㎜×幅1.4~1.8㎜。2n=40。花期は晩春~夏。(Flora of North America)。
【Flora of Chinaの解説】
 1年草、まれに2年草。茎は直立し、高さ30~70㎝、基部から枝分かれし、溝がある。枝は上向きにほぼ2又分枝し、無毛。下部の葉は葉柄が長さ3~5cm、葉身は長円形~狭楕円形、長さ4~12㎝×幅1.5~3㎝、両面とも無毛、または下面の葉脈に沿ってパピラがあり、基部は円形、切形、またはほぼ心形、縁はわずかに波打ち、先は鈍形または鋭形。茎葉は小さい。托葉鞘は早落性、膜質。花序は総状花序で、数個の総状花序が集合して円錐花序状になる。花は両性。小花柄は中央より下(下部1/3)に関節がある。外花被片は楕円形、長さ約2mm。果時に内花被片が大きくなる。バルブは三角状卵形、長さ4~5㎜×幅2.5~3㎜、すべてのバルブに瘤体(いぼ状突起)があり、長さ1.5~2㎜(R. dentatus の一部の種下分類群では瘤体のあるバルブは1個または2個だけ)、目立つ網状脈があり、基部は円形、各縁には2~4個の歯があり、先は鋭形~ほぼ鋭形、歯は長さ1.5~2㎜。痩果は黄褐色、光沢があり、卵形、鋭い三角形、長さ2~2.5㎜、基部は狭く、先端は鋭形。花期は5~6月。果期は6~7月。2n=40(Flora of China)。
8-1 Rumex dentatus subsp. dentatus
  synonym Rumex callosissimus Meisn.
 千島列島、西ヒマラヤ(インド北部、パキスタン)、東ヒマラヤ(インド北東部、ブータン、チベット自治区、中国の雲南省、ミャンマー)、インド、パキスタン、アフガニスタン、ラオス、バングラデシュ、ベトナム、アジア西部(イラン、湾岸諸国、オマーン、パレスチナ、サウジアラビア、イエメン)、アフリカ(エジプト、チュニジア)に分布。中国名は齿果酸模 chi guo suan mo。海抜2500mまでの湿った谷、山の斜面に生える。
 1年草、平均高さ80cm以上。茎は直立し、無毛で、基部から枝分かれし、緑がかった赤褐色で、角(かど)がある。葉は単葉、宿存性、無毛、対称、矢じり形。葉身は長さ1~8cm×幅2cm以上、縁は波打ち、平坦、先は鈍形。托葉鞘は2裂し、縁に不規則で細かく切り込みが入り、長さ2.5㎝以上で、透明。葉柄は長さ1㎝以上。花序の腋生、束生。花は両性、小花柄がある。花被片は6個、白色。花被筒は無い。バルブは長さ3~4㎜×幅約2㎜、鋭形で、すべてのバルブがバルブをほぼ覆う瘤体(tubercles)を持ち、歯はバルブの幅より短い。雄しべ6本。花柱と柱頭は3個。小堅果は帯褐色、三角形、光沢があり、表面は平滑、翼は無い。
8-2 Rumex dentatus subsp. halacsyi (Rech.) Rech.f.
  synonym Rumex halacsyi Rech.
 アフガニスタン、アルバニア、ブルガリア、ギリシャ、イラン、カザフスタン、キルギス、北コーカサス、パレスチナ、ルーマニア、タジキスタン、ザコーカサス、トルコ、トルクメニスタン、ウズベキスタンに分布。
 バルブ(内花被片)が幅の広い三角形で丸くなく、歯が長く、長さ3㎜まで。

8-3 Rumex dentatus L. subsp. klotzschianus (Meisn.) Rech.f. コギシギシ 狭義

  synonym Rumex dentatus L. subsp. nipponicus (Franch. et Sav.) Rech.f.

  synonym Rumex nipponicus Franch. et Sav.
 日本(本州の関東以西、四国、九州、沖縄)、朝鮮、台湾、中国、インド、パキスタン、アフガニスタン、イラン、ネパール、ブータン原産。ロシアに帰化。川原、海岸、田の畔、低湿地に生える。国のレッドデーターブック絶滅危惧II 類(VU)、愛知県は準絶滅危惧種。
 多年草。通常高さ30~50㎝。茎は紅色を帯び、直立し、分枝が少ない。帰化系統の疑いがあるものは茎が緑色で基部からよく分枝し、ミドリコギシギシと呼ばれるが、中間的な形態のものも見られる。下部の茎葉は長い葉柄があり、葉身は長円状披針形~披針形、長さ5~10cm×幅1.5~3.5cm、先は鈍形、基部は広楔形~浅い心形、縁はやや波打ち縮れず、両面とも無毛。上部の葉は互生し、次第に小さくなる。バルブは卵形、長さ3.5~4.5(~5)㎜、縁の刺状突起を除き幅2~2.5㎜、縁の拡大部が目立ち、長さ1~2.5㎜の刺状突起が(2~)3~4個あり、、中肋の瘤体(tubercle;こぶ状突起)は狭長卵形、長さ1.7~2.4㎜、長さはバルブの約2/3で、平滑または弱いしわがあり、赤色を帯びることはない。果実は長さ約2㎜、茶褐色。2n=40。花期は4~5月(レッドデータブック愛知)。
8-4 Rumex dentatus subsp. mesopotamicus Rech.f.
  synonym Rumex strictus Link
 キプロス、エジプト、シナイ半島、イラン、イラク、レバノン・シリア、リビア、パレスチナ、チュニジアに分布。
 1年草、平均高さ20~80㎝。 茎は直立し、無毛で、基部から枝分かれし、緑がかった赤褐色で、角(かど)がある。葉は単葉、宿存性、無毛、対称、矢じり形。 葉身は長さ1~8㎝×幅2㎝以上、縁は波打ち、平坦、先は鈍形。托葉鞘は2裂し、縁に不規則で細かく切り込みが入り、長さ2.5㎝以上、透明。葉柄は長さ1㎝以上。花序は腋生、束生。花は両性、小花柄がある。花被片は6個節、白色。 花被筒は無い。雄しべ6本。花柱と柱頭は3個。小堅果は帯褐色、三角形、光沢があり、表面は顆粒状、翼は無い。花期は5~7月。
8-5 Rumex dentatus L. subsp. nigricans (Hook.f.) Rech.f. ハマコギシギシ

 インドとバングラデシュのガンジス川下流域に分布。台湾、八重山諸島(一時的)に帰化。
 バルブは縁の刺状突起を除き、長さ3~3.6㎜×幅1.6~1.9㎜、縁の拡大部はしばしば目立たず、長さ1㎜までの刺状突起が1~2本あるか、またはまれに全縁になる。瘤体は長さ2.5~2.8㎜、顕著にしわがある。
8-6 Rumex dentatus subsp. reticulatus (Besser) Rech.f.
  synonym Rumex reticulatus Besser
 イラン、イラク、南欧ロシア、トランスコーカサス、ウクライナに分布。
 多年草。

9 Rumex gmelinii Turcz. ex Ledeb. カラフトノダイオウ 樺太大黄
 日本(北海道、長野県)、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は毛脉酸模 mao mai suan mo 。標高400~2000mの湿った渓谷、流れの土手に生える。
  多年草。茎は高さ40~100㎝、丈夫、無毛溝がある。根生葉は葉柄が長さ30㎝以下。葉身は三角状卵形、長さ8~25㎝×幅5~20㎝、下面には脈に密にパピラがあり、上面は無毛、基部は深い心形、縁は全縁又はわずかに波打ち、先は鈍形。茎葉は葉柄が短く、長円状卵形、小さく、基部は心形、先は鈍形。葉鞘は早落性、膜質。花序は円錐花序。花は両性。花柄は細く、基部に関節がある。外花被片は長さ約2㎜。内花被片は果時に大きくなる。バルブは楕円形、長さ5~6㎜、全てに瘤体(いぼ状突起)があり、網状脈があり、基部は丸く、先は鈍形。痩果は暗褐色、光沢があり、卵形、3稜形、長さ2.5~35㎜。花期は5~6月。果期は6~7月。

10 Rumex hastatulus Baldwin ハネミヒメスイバ
 北アメリカ原産。英名はheartwing sorrel , wild sorrel。標高0~500mの乾燥~湿った沖積地および荒れ地、川の谷、砂地、牧草地、荒地に生える。
 ヒメスイバに似ているが、内花被片が果期に大型となるだけでなく根茎を欠く点で大きく異なり、 むしろスイバR. acetosa L. に近い。
 1年草または短命の多年草、無毛で、垂直の根茎を持つ。茎は基部から1本または数本出て、直立または斜上し、上部2/3(花序内)で分枝し、長さ10~40(~45)㎝。葉身は倒卵状長円形、卵状披針形、長円状披針形、または披針形、長さ2~6(~10)㎝×幅0.5~2㎝、基部は矛形(裂片が広がる)、耳状、またはたまに明らかな裂片がなく、縁は全縁、平坦、先は鈍形またはほぼ鋭形。花序は頂生、茎の上部1/3を占め、通常は緩く、途切れ、狭い円錐花序。小花柄は下部に関節があり、糸状、長さ1.5~2.5(~3)㎜、関節は不明瞭か、またはわずかに腫れる。花は3~6(~8)個輪生する。内花被片は円形または広卵形、長さ2.5~3.2㎜×幅2.7~3.2㎜、基部は広心形または円形、先は鈍形またはほぼ鋭形。瘤体(tubercles)がないか、いくつかの内花被片は、中脈がわずかに膨らむ。痩果は褐色または暗褐色、長さ0.9~1.2㎜×幅0.6~0.8㎜。2n= 8(雌性), 9(雄性), 10(雌性、雄性)。花期は春~夏。

11 Rumex hydrolapathum Huds. ミゾダイオウ 溝大黄
 ヨーロッパ、西アジア原産。英名はgreat water dock , water dock , giant water dock。野原や茂みなどに生える。日本へは牧草の種子に混入して侵入し、北海道で帰化している。
 高さ2mまで、途中で枝分かれする。大きな根茎をもつ。下部の葉は長さ30~80㎝、披針形、長さは幅の4~8倍の長さ、平らで、縁は波状または平滑、葉柄に向かって徐々に狭くなる。花序全体は非常に大きく、強く分枝する。外花被片は内花被片に隣接し、長さ5~7㎜の三角形で、縁は全縁または細かい歯があり、それぞれにカルス(瘤体)がある。花期は7~8月。

12 Rumex hypogaeus T.M.Schust. et Reveal ヒメイヌスイバ 姫犬酸葉
  synonym Emex australis Steinh.
 アフリカ南部原産。英名はCape-spinach , doublegee , southern three-corner-jack , spiny emex , three-corner-jack。
 平伏または傾伏し、やや肉質の草本で、茎が広がり、長さ80㎝まで、高さ40㎝まで、基部のロゼットから出る。葉は卵形~広楕円形、長さ2~9㎝×幅1~7㎝、先は鈍形~広鋭形、基部は切形~浅い心形、縁はしばしば波打ちまたは細かい円鋸歯がある。葉柄は通常葉身より長く、長さ2~10㎝。雄花序は長さ2~7㎝。雄花の花被片は長さ1.5~2㎜×幅約0.5㎜。 雌花はほぼ無柄、花被は果時に長さ7~11㎜、最も広い部分(刺のすぐ下)で幅4~6㎜、側面には広いうねがあり、くぼみがあり、基部に凹み(concavity)があり、刺は細く、直径約10㎜まで広がる。内花被片は3個、直立し、広三角形~広卵形、筒部の先で幅約3㎜、丸く、先端に短い微突があり、網状になる。堅果は卵形、下部は広三角形、鋭形の先に向かって三稜形になり、長さ4~5㎜、褐色、平滑、果時に木質の花被の中に保持される。果時の花被は硬く、基部の楔形の上部は側部が平行、頂部の刺を含んで幅9~13㎜。花期は一年のほとんど、主に4 ~11月。

13 Rumex japonicus Houtt. ギシギシ 羊蹄
  synonym Rumex japonicus Houtt. var. yezoensis (H.Hara) Ohwi
  synonym Rumex yezoensis H.Hara 
  synonym Rumex regelii F.Schmidt

  synonym Rumex japonicus Houtt. var. sachalinensis (Regel) H.Hara

  synonym Rumex crispus L. var. japonicus Makino
  synonym Rumex crispus L. subsp. japonicus (Houtt.) Kitam.
  synonym Rumex cardiocarpus Pampanini
 日本(全土)、朝鮮、中国、台湾、ロシア原産。中国名羊蹄 yang ti。別名はシノネ、ウシグサ。
 多年草、高さ40~100㎝。茎は直立して、多数、上部で枝分かれし、溝があり、無毛。根生葉は葉柄が長さ6~15㎝。葉身は長円形~披針状長円形、長さ8~25㎝×幅3~8㎝、下面には脈に微細なパピラがあり、上面は無毛、基部は円形、心形又は広楔形、縁はわずかに大きく波打ち、先は鋭形又は鈍形。茎葉は葉柄が短く、狭長円形、小さく、上につくほど葉は小さくなり、無柄となって、上部では苞葉となる。葉鞘は早落性、白色、膜質。花序は円錐花序、多段に密に輪生する。雌雄同株、両性花と雌花がある。花柄は細く、関節は中間の下にあり、関節は明瞭。花は花被片6個、雄しべ6個、雌しべ1個からなる。内花被片3個は果時に大きくなり果実を包む。バルブ(果実の内花被)は広心形、長さ4~5㎜×幅5~6㎜、全てのバルブは狭卵形の瘤体(tubercles:いぼ状突起)をもち、明瞭な網脈があり、基部は心形、縁は不規則な小歯状、先は鋭形、小歯は高さ0.3~0.5㎜。痩果は暗褐色、光沢があり、広卵形、鋭い3稜形、長さ約2.5㎜、基部は狭く、先は鋭形。花期は5~6(日本では6~8)月。果期は6~7月。2n=60。

14 Rumex lapponicus (Hiitonen) Czernov タカネスイバ 高嶺酸葉 [YList]

  synonym Rumex alpestris Jacq. subsp. lapponicus (Hiitonen) Jalas [YList]

  synonym Rumex acetosa L. subsp. lapponicus Hiitonen
  synonym Rumex montanus auct. non Desf. 
  synonym Rumex arifolius auct. non All.
  synonym Rumex alpestris auct. non Jacq.
 日本(北海道と本州北部~中部の亜高山帯)、千島列島、カムチャツカ半島、ロシア極北部、ユーラシア北部、グリーンランド、アラスカ、カナダ原産。ツンドラ、山地、亜高山帯の草地、岩の露頭、川や流れの沖積地など、標高0~2500mに生える。英名はlapland sorrel , lapland mountain sorrel。
 多年草、無毛又はほぼ無毛、比較的細く、水平又はわずかに斜めの塊根をもち(普通、基質に深く達しない)、2次根が密集する(たまに、短い匍匐する根茎をもつ)。茎は直立、まれに斜上し、基部から数本又はしばしば1本、花序の上部の1/2で分枝し、長さ(10~)20~60(~100)㎝。少なくとも、中間と上部の葉の葉鞘は全縁、,房飾りは無く、ときに不規則に切れ込むが、上部だけである。葉身は広卵形、まれにほぼ円形、長円状卵形、まれに長円状披針形、長さ3~10(~14)㎝×幅1~4(~5)㎝、長さは通常、幅の2.5倍以下、基部は矢じり形(下向き、葉柄に平行、又はわずかに内向きの、鋭形又はほぼ鋭形の裂片をもつ)、全縁、通常、平ら、先は類鋭形又は鈍形。花序は頂生、茎の上部1/3を占め、普通、緩く、下部で特に中断し、狭い円錐花序又はたまに1本の円筒形(単純な1次枝をもつか又は少数の2次枝をもつ)。花柄は中間近くに、関節があり、糸状、長さ2~5㎜、関節は明瞭。花は(2~)4~8個の輪になり、内側の花被片は円形、たまに広卵形、長さ3.5~4.5㎜×幅3.5~4.5㎜、基部は円形又は心形、先は鈍形、瘤体(tubercles:いぼ状突起)は小さいか又はたまに欠く。痩果は褐色~暗褐色~褐黄色、長さ1.7~2.5㎜×幅0.9~1.3㎜、光沢は無い。2n=14 (雌株), 15 (雄株)。花期は晩春~夏(Flora of North America)。

15 Rumex longifolius DC. ノダイオウ 野大黄
  synonym Rumex domesticus C. Hartman.
 日本(北海道、本州の島根県が西限)、中国、ロシア原産。北半球の冷温帯域に広域分布する。中国名は长叶酸模 chang ye suan mo 。英名はdooryard dock , longleaf dock , northern dock , long-leaved dock 。湿った谷、林縁、山地の斜面に生え、低層湿原、河川氾濫原、小河川沿いなどの過湿な陽光湿地環境に生育することが多い。
 多年草。茎は直立、高さ60~120㎝、丈夫、無毛、溝があり、中間の上で分枝する。根生葉は葉柄が長さ5~15㎝。葉身は長円状披針形~広披針形、長さ20~35㎝×幅5~10㎝、下面は脈に微細なパピラがあり、上面は無毛、やや光沢があり、基部は楔形又は円形、縁はわずかに波打ち~弱く縮れ、先は鋭形~ほぼ鋭形(鈍形)。茎葉は葉柄が短く、披針形、小さく、基部は狭い楔形、先は鋭形。葉鞘は早落性、白色、膜質。花序は円錐花序、側花序は直立して主花序に密着し、全体として棒状~長楕円状になる。花は両性。花柄は細く、関節が中間の下にあり、果時に関節が膨れる。果実は密につき、果実の輪生する節間は短く、節間の花序軸は見えない。内花被片は果実を包む。バルブは広円状腎形~円状心形、長さ5~6㎜×幅6~7㎜、全縁(~微鋸歯縁)、全て瘤体(tubercles)は無く、ときに1バルブは小さな不明瞭な瘤体をもち、網状の脈があり、基部は心形、全縁、先は鈍形。痩果は褐色、光沢があり、狭卵形、3稜形、長さ2~3.5㎜。花期は6~7月。果期は7~8月。2n=60。

16 Rumex madaio Makino マダイオウ 真大黄
  synonym Rumex daiwoo Makino 
 日本固有種(本州、四国、九州)。山間の小河川や谷筋の水湿地あるいは湧水地の流れ沿い又は過湿な半日陰の林縁に生える。開花株が10個体程度の小規模群落が多い。
 春~夏にある根出葉は長楕円形~卵円形、先端は鈍形~円形、上面は有毛、下面の脈上は多毛。花序は側花序がまばらで斜開し、主花序から大きく離れ、主花序と側花序のそれぞれが穂状を呈する。果実は密に輪生し、果序の節間は長く、節間の花序軸がよく見え、果序はダンギクの花序のようになる。内花被片は刺状の鋸歯~明瞭な鋸歯縁、瘤体(tubercles)はなく、長さよりも幅の広い傾向がある。

17 Rumex maritimus L. コガネギシギシ 黄金羊蹄
  synonym Rumex longisetus A. Baranov & B. Skvortzov
  synonym Rumex ochotskicus Rech.f.

  synonym Rumex maritimus var. ochotskius (Rech.f.) Kitag. ハマギシギシ

  synonym Rumex maritimus L. subsp. ochotskicus (Rech.f.) Vorosch.

 中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン、ミャンマー、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ原産。中国名は刺酸模 ci suan mo 。英名はgolden dock , maritime dock , maritime dock。
 1年草、まれに2年草、特に南部では。茎は直立、高さ15~60㎝、中間の下で分枝し、溝があり、無毛又は弱く、短いパピラがある。下部の葉は葉柄が長さ1~2.5㎝。葉身は披針形~披針状長円形、長さ4~15(~20)㎝×幅1~3(~4)㎝、両面とも無毛又は下面に短いパピラがあり、基部は狭い楔形、縁は全縁で平滑、又はたまにわずかに波打ち、先は鋭形。茎葉は短い葉柄があり、又は無柄に近く、根生葉より小さい。葉鞘は早落性、膜質。花序は円錐花序。花は両性。花柄は糸状、基部又は基部のわずか上に関節があり、関節は膨らみが不明瞭。外花被片は楕円形、長さ約2㎜。内花被片は果時に大きくなる。バルブは狭三角状卵形、長さ2.5~3.5㎜×幅0.8~1.5㎜、全てのバルブは瘤体(tubercles)をもち、基部は切形、各縁に2~3(~4)個の歯があり、先は鋭形。歯は長さ2.5~3㎜、狭く、瘤体は長円形、長さ約1.5㎜。痩果は黄褐色、光沢があり、楕円形、鋭い3稜形、長さ1.5~2㎜。花期は5~6月。果期は6~7月。2n=40。

18 Rumex nepalensis Spreng. ルメックス・ネパレンシス 広義
 日本、中国、インド、ブータン、ネパール、シッキム、ミャンマー、ベトナム、パキスタン、アフガニスタン、タジキスタン、インドネシア、南西アジア原産。中国名は尼泊尔酸模 ni bo er suan mo。
 多年草、根は大きい。茎は直立、高さ50~100㎝、上部で分枝し、無毛、溝がある。根生葉は葉柄が長さ4~10㎝。葉身は広卵形、長さ10~15㎝×幅4~8㎝、両面とも無毛又は下面には脈に微細なパピラがあり、基部は心形、全縁、先は鋭形。茎葉は歯柄が短く、卵状披針形。葉鞘は早落性、膜質。花序は円錐花序、花は両性。花柄は中間の下に関節がある。外花被片は楕円形、長さ約1.5㎜。内花被片は果時に大きくなる。バルブは広卵形、長さ5~6㎜、バルブの全て又は1~2個に瘤体があり、基部は切形、各縁には7~8個の歯があり、先は鋭形、歯は長さ1.5~3㎜、歯の先端には鈎があるか又は真っすぐ。痩果は褐色、光沢があり、卵形、鋭い3稜形、長さ約3㎜、基部は切形、先は鋭形。花期は4~5月。果期は6~7月。
18-1 Rumex nepalensis var. nepalensis
 中国(甘粛省、広西チワン族自治区、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、青海省、陝西省、四川省、西蔵、雲南省)、インド、ブータン、ネパール、シッキム、ミャンマー、ベトナム、パキスタン、アフガニスタン、タジキスタン、インドネシア、南西アジア原産。日本は導入されたもの。標高1000~4300mの草が茂った斜面、湿った谷に生える。
 バルブは長さ2.5~3㎜の長い歯があり、先が鉤状になる。

18-2 Rumex nepalensis Spreng. subsp. andreaeanus (Makino) Yonek. キブネダイオウ 貴船大黄

  synonym Rumex nepalensis Spreng. var. andreaeanus (Makino) Kitam.

  synonym Rumex daiwoo Makino var. andreaeanus (Makino) Makino

  synonym Rumex andreaeanus Makino
 日本固有亜種。京都、岡山県、広島県で確認されている。外来とされたこともあるが、在来の亜種として分類され、絶滅危惧種に指定されている。エゾノギシギシと自然交雑を起こし、絶滅が危惧される。
 高さ1.5m以下、茎の上部で分枝し、斜上する。根生葉は卵状心形。花序は円錐花序、花輪が相互に離れてつく。痩果の内花被片は広卵形又は四角状卵形、周縁には先端が鈎状の長い刺針が多数あり、かつ、中肋基部には瘤状の粒体が無い。
18-3 Rumex nepalensis var. remotiflorus (Sam.) A.J.Li
 中国(雲南省)に分布。中国名は疏花酸模 shu hua suan mo。標高2700~2800mの溝沿いに生える。
 バルブは長さ1.5~2㎜の短い歯があり、先は真っ直ぐで、ときに鉤状になる。

19 Rumex obtusifolius L. エゾノギシギシ 蝦夷の羊蹄
 ヨーロッパ原産。英名はbroadleaf dock。中国名は钝叶酸模 dun ye suan mo 。別名はヒロハギシギシ。
 多年草、高さ40~120㎝。茎や葉柄、葉の中脈がしばしば赤味を帯びる。葉の幅は広く、幅8~12㎝、長さ15~30㎝、下部の葉は基部が浅い心形となり、葉縁に細かい縮れがある。葉裏の脈上は突起状毛が密生して白い。花は長い総状花序につき、段の間隔を開けて、多段に輪生する。雌雄同株、両性花と雌花がある。花は花被片(萼)6個、雄しべ6個、雌しべ1個からなる。果実(痩果)は3個の内花被が大きくなり果実を包む。果実の内花被は卵円形、先がやや長く尖り、縁に長く突き出た突起があり、中央に瘤体(tubercles)がある。縁の突起は少ないことも多く、瘤体は赤色になることが多い。果実は長さ2~2.7㎜、幅1.2~1.7㎜、3稜形、褐色~赤褐色。2n=40。花期は6~8月。

20 Rumex patientia L. マンシュウギシギシ 満州羊蹄 広義
  synonym Rumex patientia var. callosus F.Schmidt ex Maxim.
  synonym Rumex patientia subsp. eupatientia Rech.f.
  synonym Rumex patentia L. 綴りの誤り
 朝鮮、中国、モンゴル、ロシア、西ヒマラヤ(インド、パキスタン)、インド(アッサム州)、ネパール、パキスタン、アフガニスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、イラン、レバノン シリア、キプロス、トルコ、ヨーロッパ(アルバニア、南欧ロシア、オーストリア、ブルガリア、ルーマニア、チェコスロバキア、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、トルコ、ウクライナ、北コーカサス、トランスコーカサス、ユーゴスラビア)に分布。中国名は巴天酸模 ba tian suan mo 。英名はpatience dock , spinach dock。標高0~2300mの荒地、道端、古い畑、庭園、荒れた牧草地に生える。たまに沖積生地にも生える。
 多年草、無毛、または非常に不明瞭なパピラがあり、通常は葉身の下面の葉脈のにのみあり、紡錘形の垂直の根茎を持つ。茎は直立し、中間より上から分枝し、高さ80~150(~200)㎝。托葉鞘は落葉性、または成熟しても部分的に宿存する。葉身は卵状披針形または長円状披針形、通常、長さ30~45(~50)㎝×幅10~15㎝、基部は切形、広楔状、または弱心臓状、縁は全体、平坦または弱い波状、先端は鋭形または亜鋭形。 花序は頂生、茎の上部1/2を占め、通常は密で、狭~広円錐形、枝は通常真っ直ぐまたは弓形で、まれに不明瞭に曲がる。小花柄は下部1/3に関節があり、ときにほぼ基部近くに関節があり、糸状、長さ5~13(~17)㎜、関節は通常明らかに膨れる。花は10~20(~25)個輪生する。内花被片は広卵形、ほぼ円形、または円形、長さ(5~)5.5~8(~10)㎜×幅5~9(~10)㎜、基部は通常明瞭な心形、縁は全縁またはほぼ全縁~非常に弱くギザギザになり(erose)、先は鈍形またはたまにほぼ鋭形。瘤体は通常、1個、幅は1㎜以上、通常は内花被片の幅の2倍未満、たまに3個で、2個はかなり小さい。痩果は褐色、長さ3~3.5㎜×幅1.5~2.5㎜。2n=60。花期は春の終わり~夏(Flora of North America)。
【Flora of Chinaの解説】
 中国(甘粛省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、寧夏、青海省、陝西省、山東省、山西省、四川省、新疆、西蔵)、モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ヨーロッパ原産。中国名は巴天酸模 ba tian suan mo 。海抜4000mまでの溝沿い、水辺、湿った谷沿いに生える。
 多年草。根は垂直に伸び、大きく、直径3㎝までになる。茎は直立し、高さ80~150(~200)㎝、丈夫で、上部で分枝し、溝がある。根生葉は葉柄が長さ5~15㎝、丈夫、葉身は長円形または長円状披針形、長さ15~30㎝×幅5~10㎝、基部は円形、広楔形または心形、縁は波状で、先は鋭形~ほぼ鋭形。茎葉は短い葉柄があり、またはほぼ無柄、披針形で小さい。托葉鞘ははかなく、長さ2~4㎝、膜質。花序は円錐花序で大きい。花は両性。小花柄は細く、中央より下部に関節があり、関節は膨らみ、果時にわずかに屈曲する。外花被片は長楕円形、長さ約1.5㎜。果時に内花被片が大きくなる。内花被片は広心形、長さ6~7㎜、すべてまたは1個または2個の花被片に狭い卵形の瘤体(tubercles)がある(R.patiia s.str.では通常、1個の花被片には大きな瘤体があり、他の2個の花被片には小さな瘤体がある)、網状の脈があり、基部は深い心形、縁は全縁または不明瞭にギザギザになり(erose)、先は鈍形。痩果は褐色、光沢があり、卵形、三角形、長さ2.5~3㎜、先は尖鋭形。花期は5~6月。果期は6~7月。2n=40。(Flora of China)

20-1 Rumex patientia subsp. orientalis (Bernh. ex Schult. & Schult.f.) Danser

  synonym Rumex orientalis Bernh. ex Schult. & Schult.f.
 朝鮮、中国、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、パキスタン、カザフスタン、トルクメニスタン、西アジア、ヨーロッパ南部に分布。
 内花被片はより大きく、長さ6~10㎜×幅8~10㎜。長さ4~8㎜×幅4~8mmではない。

20-2 Rumex patientia subsp. pamiricus (Rech.f.) Rech.f.

  synonym Rumex pamiricus Rech.f.
  synonym Rumex rechingerianus Losinsk.
 西ヒマラヤ(インド、パキスタン)、ネパール、パキスタン、イラン、アフガニスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンに分布。標高2700~4500mに生える。
 バルブはsubsp. patientiaやsubsp. orientalisより小さい。バルブは長さが幅とほぼ同じで、基部がはっきり凹形、先は円形(Flora of Pakistan)。
20-3 Rumex patientia subsp. patientia
  synonym Rumex callosus (F.Schmidt) Rech.f.
  synonym Rumex patientia var. callosus F.Schmidt
 ブルガリア、チェコスロバキア、ギリシャ、ハンガリー、ルーマニア、ユーゴスラビアに分布。世界中に広く帰化。
 瘤体が3個ある。
20-4 Rumex patientia subsp. recurvatus (Rech.) Rech.f.
  synonym Rumex recurvatus Rech.
 ブルガリア、チェコスロバキア、ルーマニアに分布。
20-5 Rumex patientia subsp. tibeticus (Rech.f.) Rech.f.
  synonym Rumex tibeticus Rech.f.
 アフガニスタン、西ヒマラヤ(インド、パキスタン)、アッサム州、イラン、チベット(西蔵)に分布。標高2500~4000mに生える。
 バルブはsubsp. patientiaやsubsp. orientalisより小さい。バルブは幅よりも長く、基部はほとんど凹形にならず、先は鋭形(Flora of Pakistan)。

21 Rumex pulcher L. ヒョウタンギシギシ 瓢箪羊蹄
 ヨーロッパ、アジア西部、北アフリカ原産。英名はfiddle dock 。北アメリカに帰化。日本でも確認されている。荒地、草地、湿った場所や乾いた場所に生える。
 多年草、無毛、パピラは有又は無。直根は垂直、紡錘形。茎は直立~先で弓なり、長さ20~60(~70)㎝、分枝し、細い。葉身は長さ4~10(~15)㎝×幅 (2~)3~5㎝、披針状長円形~卵状長円形、中間より下又はそれ以外でで狭くなり、基部はほぼ心形、円形、又は普通切形、縁は全縁、平ら又は波打ち、先は鈍形~鋭形。花序は頂生、開き、間隔が開き、枝は広がり、花が10~20個、輪生する。花柄は長さ 2~5(6) ㎜、太く、関節は膨れる。内花被片は歯を除いて長さ3~6㎜×幅2~3㎜、卵状三角形~長円状デルタ形、基部は切形、縁は普通、歯があり(+-全縁)、歯は2~5(9)個、長さ0.3~2.5㎜、普通、両側にあり、先は鈍形~ +-鋭形、瘤体(tubercles)は(1)3個つき、等形又は不等形、普通、いぼがある(verrucose)。痩果は長さ2~2.8㎜×幅1.3~2㎜、暗赤褐色~+- 黒色。2n=20。花期は5~9月。

22 Rumex pseudonatronatus (Borbas) Borbas ex Murb. ルメックス・プセウドナトロナツス

  synonym Rumex domesticus C. Hartman var. pseudonatronatus Borbas

 中国(甘粛省、河北省、黒竜江省、吉林省、青海省、陝西省、新疆)、モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、ヨーロッパ原産。中国名は披针叶酸模 pi zhen ye suan mo。標高300~3200mの山の斜面の森林縁、湿った谷に生える。北アメリカに帰化。
 Rumex pseudonatronatus はしばしば、R. longifolius や R. crispus と混同される。
 多年草。 根は垂直に伸び、大きく、直径1~2㎝。茎は直立し、高さ80~120㎝、単純または上部で分枝し、溝があり、無毛。根生葉は披針形または狭披針形、ときに披針状線形、長さ15~30㎝×幅1.5~4㎝、下面の葉脈に沿って背軸に微細なパピラがあり、上面は無毛、基部は楔形~狭楔形、縁はカリカリに縮れまたは波状、先は鋭形。茎葉は短い葉柄があり、狭披針形で小さい。托葉鞘(ocrea)ははかなく、白色、薄い膜質。花序は円錐形で、上部が密で、基部でときに途切れ、長さ20~40㎝、幅が狭い。花は両性。小花柄は細く、中間より下に関節があり、果時に関節が膨らむ。内花被片は果時に大きくなる。内花被片はほぼ円形または円状心形、長さ3.5~4.5㎜、すべて瘤体(tubercles)を持たず、ときに1花被片は長さ1~1.3㎜未満の不明瞭な瘤体(tubercles)を1個もち、目立つ網状の脈があり、基部はわずかに心形で、縁は全縁または弱くギザギザになり(erose)、先は鈍形。痩果は褐色、光沢がある、狭卵形、三角形、長さ2~2.5㎜。花期は6~7月。果期は7~8月。2n=40。

23 Rumex sanguineus L. ニセアレチギシギシ 偽荒地羊蹄
 ヨーロッパ、西アジア(イラン)原産。英名はbloodwort dock , redvein dock , wood dock。標高0~500mの湿った沖積地および河畔の生息地、荒れ地、バラスト地に生える。北アメリカ、南アメリカに帰化し、日本にも帰化している。
 多年生で、通常は無毛で、まれに葉身の下面の脈上に非常に不明瞭なパピラがあり、紡錘形の垂直の根茎を持つ。茎は直立し、上部の1/3で分枝し、ときにほとんど基部から分枝し、根茎から出る少数の花茎をもつこともあり、長さ30~70(~90)㎝。托葉鞘は脱落性、または成熟しても部分的に宿存する。葉身長円状披針形、倒卵状披針形、または披針形、通常、長さ(5~)10~30㎝×幅2.5~6㎝、基部は円形、切形、またはほぼ心形、まれに楔形、縁は全縁から不明瞭に広がり、平坦からわずかに波打ち、先は鋭形またはほぼ鋭形、たまに漸尖する。花序は頂生し、茎の上部の2/3を占め、緩く、途切れ、広円錐形、枝は単純またはそれに近い。円錐花序には葉がないか、基部近くのみに葉がある。小花柄は下部の1/3に、またはまれに中央付近に関節があり、糸状、長さ(2~)4~6(~8)㎜、通常は内花被片より明らかに長く、関節は明らかに膨れる。花は10~20個、緩く、離れた輪状につく。内花被片は長円状披針形、長円形、または舌形、長さ2~3㎜×幅0.8~1.3(~1.8)㎜、長さは幅の約2倍、基部は楔形またはほぼ切形、縁は全縁、先は鈍形。瘤体(tubercles)は1個(たまに3個、その後は1個になり、はるかに大きくなり、内花被片とほぼ同じ幅になる)。 痩果は通常、暗赤褐色~ほぼ黒色、長さ1.25~1.5(~1.8)㎜×幅1~1.3㎜。2n=20。花期は夏。

24 Rumex scutatus L. テガタスイバ
  synonym Rumex scutatus subsp. glaucus (Jacq.) E.V.Vulf
 ヨーロッパ、西アジア原産。英名はFrench sorrel , buckler sorrel , shield-leaf sorrel。岩の瓦礫、ガレ場、ブドウ畑などに生える。
 高さは20~50㎝。茎は斜上し、しばしば下部で分枝し、幅60㎝までに広がる。葉は長い葉柄があり、葉身は卵形~矢じり形、しばしば中間でくびれ、長さ5㎝まで、長さは幅の2倍以下、青緑色~草緑色。 花序全体に多数の直立した枝が出る。 外花被は内花被に隣接し、円形、全縁、瘤体(カルス)がなく、赤みがかった半透明で、熟した果実よりもはるかに大きい。花期は6~7月。
品種) 'Silver Leaf'
24-1 Rumex scutatus subsp. scutatus
  synonym Rumex alpestris Jacq.
 アジア(ロシア、カザフスタン、トルコ、レバノン・シリア、イラン、イラク、)、ヨーロッパ(ロシア、ウクライナ、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、チェコスロバキア、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ポーランド、ルーマニア、サルデーニャ、シチリア、スペイン、スイス、トランスコーカサス、 ウクライナ、ユーゴスラビア)原産。北アメリカ、朝鮮や中国には無い。

24-2 Rumex scutatus subsp. hastifolius (M.Bieb.) Borodina

 クリミア半島、トランスコーカサス、北コーカサス原産。

25 Rumex spinosus L. イヌスイバ 犬酸葉
  synonym Emex spinosa (L.) Campd.  [Flora of Victoria]
 ヨーロッパ(フランス、ポルトガル、スペイン、イタリア、ギリシャ)、アジア西部、北アフリカ原産。英名はdevil's-thorn , erect emex , lesser-jack , little-jack , spiny emex , spiny three-corner-jack。オーストラリアに帰化している。Flora of Victoriaではイヌスイバ属(Emex)としている。
 通常直立し、高さ約60㎝まで、葉はしばしば長さ12㎝×幅8㎝まで大きくなる。花被は果時に長さ5~7 mm、下部の幅3~4㎜、各側面には中央に肋があり、両側に2~4個の穴があり、基部のすぐ上の最も広い点に水平なうねがあり、刺は太く、開出し(またはわずかに反曲し)、直径約6㎜まで。内側の花被片は筒部の先で幅約1㎜、多少、長円形で、縦方向の、ときにこぶのあるうねがあり、先は鋭形で、網状ではない。堅果はE. australis と同様。花期は9月。

26 Rumex stenophyllus Ledeb. ホソバギシギシ 細葉羊蹄
  synonym Rumex odontocarpus Sandor ex Borbas

  synonym Rumex stenophyllus Ledeb. var. ussuriensis (Losinsk.) Kitag.

  synonym Rumex ussuriensis Losinskaja.
 中国(黒竜江省、吉林省、内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区)、モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギスタン原産。中国名は狭叶酸模 xia ye suan mo。標高200~1200mの水辺、畑の縁、湿った谷に生える。
 多年草。 根は垂直に伸び、直径1㎝ほどになる。茎は直立し、高さ40~80(~120)㎝、通常上部で分枝し、無毛で溝がある。 根生葉は短い葉柄があり、披針形または狭披針形、長さ10~18㎝×幅1.5~4㎝、無毛または下面の葉脈に沿って不明瞭なパピラがあり、基部は楔形、縁はカラカリに縮れ、ときにほぼ平らで全縁、先は鋭形。茎葉は短い葉柄があるか、またはほぼ無柄で、狭い披針形、小さい。托葉鞘は早落性、膜質。花序は円錐形で狭い。花は両性で、密につく。小花柄は細く、中央より下(下部3分の1)に関節がある。果時に内花被片が大きくなる。バルブは三角形、長さ3~4(~5)㎜×幅約3.5㎜、すべてのバルブは狭い卵形の瘤体を持ち、基部は切形~不明瞭な心形、縁には歯があり、先は鋭形、小歯は長さ0.5~1.5㎜、両側に4~10個つく。痩果は褐色、光沢があり、楕円形、長さ2.5~3㎜、鋭角な三角形、基部は狭く、先は鋭形。花期は5~6月。果期は6~8月。2n=20, 22, 60。

27 Rumex thyrsiflorus Fingerh. モウコスイバ 蒙古酸葉

  synonym Rumex acetosa Linnaeus subsp. thyrsiflorus (Fingerhuth) Celakovsky

  synonym Rumex haplorhizus Czernjaev ex Turczaninow

  synonym Rumex thyrsiflorus var. mandshuricus A. Baranov & B. Skvortsov.

 中国(黒竜江省、吉林省、内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区)、モンゴル、ロシア、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスタン原産。中国名は直根酸模 zhi gen suan mo 。英名はnarrow-leaf sorrel , narrow-leaved garden sorel。標高500~2200mの山の斜面、湿った谷、水辺に生える。
 多年草、雌雄異株。主根は大きくて太く、離れた二次根がある。茎は直立し、高さ40~120㎝、無毛、溝がある。根生葉は長円状披針形~披針形、基部は矢じり形、長さ4~13㎝×幅1.5~4㎝、両面とも無毛または葉脈に微細なパピラがあり、縁は全縁、先は鋭形、基部の裂片は先が鋭形。茎葉は小さく、葉柄は短いか、またはほとんど無い。托葉鞘は早落性、白色、膜質。花序は頂生、円錐花序状、密で、多数、分枝する。花は単性。小花柄は細く、中間より下に関節がある。雄花は外花被片が直立し、小さい。内花被片は楕円形、長さ約2㎜。 雌花は果時に外花被片が後屈する。内花被片は果時に大きくなる。バルブは円形~広卵形、直径3~4㎜、バルブの基部に小さな反り返った瘤体(tubercles)があり、基部は切形~心形、縁はほぼ全縁、先は鈍形。痩果は褐色、光沢があり、楕円形、三角形、長さ約2㎜。花期は5~6月。果期は6~7月。2n=14, 15。

28 Rumex trisetifer Stokes ニセコガネギシギシ 偽黄金羊蹄
  synonym Rumex chinensis Campdera
  synonym Rumex maritimus auct. non L.
 中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、インド、ブータン、ラオス、タイ、ミャンマー、ベトナム原産。中国名は长刺酸模 chang ci suan mo。海抜1300mまでの畑の縁、湿った谷、水辺に生える。
 1年草。 根が大きい。茎は直立し、高さ30~80㎝、溝があり、無毛、枝が広がる。下部の葉は葉柄が長さ3~5㎝、葉身は長円形または披針状長円形、長さ8~20㎝×幅2~5㎝、両面とも無毛、基部は楔形、縁は波状、先は鋭形。茎葉は短い葉柄があり、狭披針形で、根生葉より小さい。托葉鞘は早落性、膜質。花序は頂生または腋生、総状花序、数個の総状花序が集合して大きな円錐花序状になる。花は両性。小花柄は細く、基部近くに関節がある。外花被片は披針形で小さい。果時に内花被片が大きくなる。バルブは狭三角状卵形、長さ3~4㎜×幅1.5~2㎜、すべてのバルブに瘤体(tubercles)があり、基部は切形、縁には1対の狭い歯があり、先は狭い鋭形、歯は長さ3~4㎜、真っすぐ。痩果は黄褐色、光沢があり、楕円形、鋭い三角形、長さ1.5~2㎜、基部は狭く、先は鋭形。花期は5~6月。果期は6~7月。

29 交雑種
(1) Rumex crispus L.× R. japonicus Houtt. アイノコギシギシ
 ギシギシ(R. japonicus)×ナガバギシギシ(R. crispus)
(2) Rumex × abortivus Ruhmer アレチエゾノギシギシ
 アレチギシギシ(R. conglomeratus)×エゾノギシギシ(R. obtusifolius)
(3) Rumex × oryzetorum Rech.f. アレチコギシギシ
 アレチギシギシ(R. conglomeratus)×コギシギシ(R. dentatus)
(4) Rumex × schulzei Hausskn. アレチナガバギシギシ
 アレチギシギシ(R. conglomeratus)×ナガバギシギシ(R. crispus)
(5) Rumex × ogulinensis V.Borbas オグリギシギシ
 エゾノギシギシ(R. obtusifolius)×ヒョウタンギシギシ(R. pulcher)
(6) Rumex japonicus Houtt. × R. obtusifolius L. ギシギシモドキ
  synonym Rumex chalepensis auct. non Mill.
 ギシギシ(R. japonicus)×エゾノギシギシ(R. obtusifolius)
(7) Rumex dentatus L. subsp. klotzschianus (Meisn.) Rech.f. × R. obtusifolius L.  コエゾノギシギシ 
 コギシギシ(R. dentatus)×エゾノギシギシ(R. obtusifolius)
(8) Rumex × hybridus Kindb. トガマダイオウ
  synonym Rumex × togaensis Toshiaki Kawahara 
 ノダイオウ(R. longifolius)×エゾノギシギシ(R. obtusifolius)
 ただし、多数の雑種個体を観察すると、ナガバギシギシとの交雑が類推されるものもある。
 春~夏の根出葉は長円形、先は鈍形~鋭形、上面は無毛~ときに有毛、光沢は弱いことが多く、下面は脈上が有毛~わずかに有毛(又はパピラを有する)。花序の側花序は斜上し、主花序からやや離れる。全体として楕円状の花序を形成する。果実はノダイオウに比べるとまばらなことが多い。果実の輪生する節間はやや長く、花序軸が見える(花序の基部で顕著)。内花被片は明瞭な鋸歯縁~低鋸歯縁。瘤体(瘤状突起)は明瞭~不明瞭まで、同一個体内で様々に変異する。形態形質は大きく変異するため、ノダイオウとの区別がしばしば困難となる。果実は稔性が低いものから高いものまで様々。
(9) Rumex × propinquus Aresch. ナガバノギシギシ
 ナガバギシギシ(R. crispus)×ノダイオウ(R. longifolius)
(10) Rumex × nankingensis Rech.f. ナンキンギシギシ
 ギシギシ(R. japonicus)×コギシギシ(R. dentatus)
(11) Rumex japonicus Houtt. × R. longifolius DC. ノギシギシ
 ギシギシ(R. japonicus)×ノダイオウ(R. longifolius)
(12) Rumex × pratensis Mert. et W.D.J.Koch ノハラダイオウ 
 エゾノギシギシ(R. obtusifolius)×ナガバギシギシ(R. crispus)
(13) Rumex × autranianus Freyn et Sint. ミヤコダイオウ
 キブネダイオウ( R. nepalensis)×エゾノギシギシ(R. obtusifolius)

参考

1) Flora of China
 Rumex
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=128864
2)GRIN
 Rumex
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=10584
3) Flora of North America
 Rumex lapponicus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=250060787
4) 植物研究雑誌 Vol 82: No1 (2007). p1-19
 米倉浩司;日本とその周辺のタデ科植物に関する新知見 (I)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/82/1/82_82_1_9945/_pdf/-char/ja
5)長野県植物研究会誌 50:31-35(2017)
 マダイオウと雑種ノダイオウの混乱
https://researchmap.jp/?action=cv_download_main&upload_id=181257
6)PlantNET - FloraOnline
 Rumex brownii Campd.
http://plantnet.rbgsyd.nsw.gov.au/cgi-bin/NSWfl.pl?page=nswfl&lvl=sp&name=Rumex~brownii
7) Jepson eFlora
 Rumex pulcher
http://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_display.php?tid=42419
8) Bunrui 15(1) 51-55 (2015)
 新産地報告 キブネダイオウの新産地  世羅徹哉、近藤芳子
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunrui/15/1/15_KJ00009868548/_article
9) Flora of Victoria
 Emex spinosa (L.) Campd.
https://vicflora.rbg.vic.gov.au/flora/taxon/6e77e5c2-6502-4415-8d6d-34edca68b0e7
10) JSTOR Global Plants
 Rumex dentatus subsp. dentatus [family POLYGONACEAE]
https://plants.jstor.org/stable/history/10.5555/al.ap.flora.ftea000469
11) TAECKHOLMIA 43 (2023): 68-87
 Computer-generated keys to the flora of Egypt.11. The Polygonaceae
https://taec.journals.ekb.eg/article_304862_f79d3fbf3a2f706e2d4c7490e0d4bf5b.pdf