ハリイ 針藺
Flora of Mikawa
カヤツリグサ科 Cyperaceae ハリイ属
中国名 | 稻田荸荠 dao tian bi qi |
学 名 |
Eleocharis congesta D.Don var. japonica (Miq.) T.Koyama synonym Eleocharis japonica Miq. synonym Eleocharis pellucida var. japonica (Miquel) Tang & F. T. Wang [Flora of China] synonym Scirpus japonicus (Miq.) Franch. & Sav.synonym Eleocharis congesta D.Don var. nipponica (Makino) Ohwi |
果 期 | 6~11月 |
高 さ | 6~20㎝ |
生活型 | 1年草 |
生育場所 | 低地~山地の水田、休耕田、浅い水辺、湿地 |
分 布 | 在来種 日本(北海道の渡島半島、本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、四川省、雲南省、浙江省)、タイ原産 |
撮 影 | 渥美半島 07.9.1 |
Eleocharis congesta D.Don(広義のハリイといわれる)を変種に分けると次のとおりである。現在ではヤリハリイ(var. subvivipara)はオオハリイ(var. congesta)に含められた。オオハリイ(var. congesta)は全体にやや大きく、稈も太く、直径約0.8(~1.2)㎜、小穂、鱗片もハリイより大きく、刺針状花被片もハリイより長い。日本のハリイは刺針状花被片が痩果より長く、中国のハリイは痩果より短い。
Eleocharis congesta D.Don ハリイ 針藺 広義
日本(本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国、インド、ネパール、ヒマラヤ、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、ベトナム、フィリピン、ジャワ島、ボルネオ島、スマトラ島、スラウェシ島、カロリン諸島原産(Kew science)。中国名は密花荸荠 mi hua bi qi 。英名はspikerush。森林の縁、池の縁、川の縁、湿地、水田などに生える。YListなどでは広義のハリイとしている。
1年草または多年草。 根茎は傾伏する。稈は房状(株立)で、高さ10~40 cm、太さ1~1.5(~2.5) mm、やや硬く、ほぼ円柱形、数本の縦方向の細い肋がある。葉鞘は2個。茎葉の鞘は血赤色、後に先端は淡い血赤色なり、長さ3~8㎝、口部は切形で、先端は微突形~芒状になる。小穂は長円形~狭長円状卵形、長さ8~11㎜×幅3~4㎜、多数の花が密につき、ときに小穂の基部に腋芽(無性芽)がつき(proliferous)、先は鈍形~鋭形。 最下の鱗片は大きく空で、小穂の基部の全部が抱茎。稔性の鱗片は血赤色だが、中間は緑色で、きつく覆瓦状になり、長円形、約・長さ2.2㎜×幅0.9㎜、縁は非常に狭く透明で、先は円形。刺針状花被片は6本、小堅果より長く(小堅果の1.5~2倍)、わずかに密に短い後ろ向きの小刺がある。柱頭は3岐。小堅果は帯黄色~オリーブ色、倒卵形~楕円形、約・長さ1㎜×幅0.7㎜、3面があり、側面が凸形、角(かど)に狭い肋がある。宿存する柱基は白色、半長円形、長さは小堅果の1/4~1/3、幅は小堅果の約1/2、初めは海綿状だが、乾燥すると硬くなり、基部はキャップ状で、頂点は丸いが、乾燥するとピラミッド状で鋭くなる。花期と果期は5~8月(Flora of China)。
(1) Eleocharis congesta D.Don var. congesta オオハリイ 大針藺
synonym Eleocharis pellucida f. elata H.Hara
synonym Eleocharis congesta f. dolichochaeta T.Koyama
synonym Eleocharis congesta var. subvivipara (Boeckeler) T.Koyama ヤリハリイ
synonym Eleocharis congesta D.Don subsp. subvivipara (Boeck.) T.Koyama
synonym Eleocharis japonica Boeckeler日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国、インド、スマトラ、ネパール、ブータン、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア原産。池の周辺や湿地、水田に生える。
1年草ときに多年草。匐枝は出さず叢生し、茎は直立~斜上し、高さ8~25(~40)cm×直径約0.8(~1.2)㎜、やや外側に軽く反り、鮮緑色、基部の鞘は濃赤紫色を帯びる。鞘状葉はハリイより長い。小穂は卵形~卵状楕円形(狭卵形)、長さ6~8(~まれに10)㎜、幅2.5~2.8㎜、先は鋭形。小穂の基部に腋芽(無性芽)をよく付ける。鱗片は卵形、長さ2~2.5㎜で、中肋付近は緑色、縁近くが血赤褐色になり、縁は非常に狭く透明、先は鈍形~円形。痩果は長さ約1(~1.2強)㎜、稜が少し隆起する3稜形、面は淡黄緑色。刺針状花被片は6個つき、痩果より明らかに長く、痩果の長さの1.5~2倍長、淡褐色を帯び、逆刺がやや密につく。柱基は三角錐形、高さは痩果の1/4~1/3、幅は痩果の約1/2、高さは幅の1~1.5倍。雄しべは1~2本。果期は6~9(11)月。
ヤリハリイ(var. subvivipara)はオオハリイ(var. congesta)に含められた。ヤリハリイは小穂が線状披針形~線状円筒形、長さ0.6~1㎝×幅1.5~2mm。果実の稔性が低く、クローン株をよく作る。
(2) Eleocharis congesta var. japonica (Miq.) T.Koyama ハリイ 針藺
synonym Eleocharis japonica Miq.
synonym Eleocharis pellucida var. japonica (Miquel) Tang & F. T. Wang [Flora of China]
synonym Scirpus japonicus (Miq.) Franch. & Sav.synonym Eleocharis congesta D.Don var. nipponica (Makino) Ohwi
日本(北海道の渡島半島、本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、四川省、雲南省、浙江省)、タイ原産。中国名は稻田荸荠 dao tian bi qi。標高200~1700mの低地~山地の水田、休耕田、浅い水辺、湿地に生える。よく見られる水田雑草。
1年草。沈水状態でも生育する。沈水状態のものは、茎が細く、20cmを超え、長く伸び、小穂基部から盛んにクローン株を生じ、小穂基部から発根して茎を叢生する。根茎はごく短く、叢生し、匐枝はない。稈は細く、直立~斜上し、高さ6~20cm×直径0.2~0.4㎜、鮮緑色。小穂は頂生し、ときに基部に腋芽(不定芽)をつけ、卵形~狭卵形、密に花がつき、長さ4~6㎜×幅1.5~2㎜。鱗片は卵形、長さ1~1.5mm、中肋は幅広の緑色、一部、さび色になり、先は鈍形(やや尖りぎみ)。痩果はやや扁平な倒卵形、長さ0.7~1mm、黄緑色、横断面は鈍い3稜形。刺針状花被片は6本つき、長さは痩果の1.2~1.5倍あり、下向きの小刺(小逆刺)がある。柱基は長三角状三角錐形、幅は痩果の約1/3、長さは幅の約1.5倍である。柱頭は3岐。雄しべは1~2本。2n=20。花期は6~11月。
【Flora of Chinaの解説】中国のものは刺針状花被片が短い。
稈は通常、非常に短く、毛状。刺針状花被片は小堅果より短く、緩く後向きの小刺がある。小堅果は長さ0.8~0.9㎜。宿存する柱基は通常±細長い。花期と果期は3~10月(Flora of China)。
(3) Eleocharis congesta D.Don var. thermalis (Hulten) T.Koyama エゾハリイ 蝦夷針藺
synonym Eleocharis japonica Miq. var. thermalis (Hulten) H.Harasynonym Eleocharis congesta D.Don var. thermalis (Hulten) T.Koyama f. soranumensis Koji Ito
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ロシアに分布。溜池畔、湿地に生える。1年草又は多年草。抽水~沈水状態でも生育する。匍匐枝はない。ハリイより小型で不定芽(クローン株)も生じにくい。 稈は叢生し、細く、直立~斜上し、高さ5~10㎝、基部は帯淡褐色~帯淡赤褐色。小穂は披針形~狭卵形、長さ3~5㎜、花はややまばらにつく。鱗片は卵形、長さ1.8~2㎜、鈍頭、濃赤褐色~紫褐色。小堅果は倒卵形、長さ1~1.2㎜、横断面は鈍3稜形、濃いオリーブ色。刺針状花被片は6本、小堅果と同長か又はやや長く、後ろ向きの小刺がある(下向きにザラつく)。 柱基は扁三角錐形、幅は小堅果の幅の2/3~3/4、長さは幅より少し短い。柱頭は3岐。雄しべは1~2個。2n=20。花期は9~10月。
ハリイ属
family Cyperaceae - genus Eleocharis多年草又は1年草。根茎は短いか又は無く、匍匐枝は普通無い。稈は叢生又は1本。葉は葉身がなく、鞘は微突頭又はまれに、先に薄膜質の付属体をもつ。花序は縮小~1個の頂生の小穂になり、直立、まれに基部にむかごがあり(小植物をつけ)、少数~多数の両性花をもつ。鱗片(苞穎)は放射状に覆瓦状又はまれに2列につき、長円形~長円状卵形~披針形~類円形、硬く又は膜質、無毛、普通、不明瞭だが側脈のある中脈があり、縁は普通、透明。基部の1~2個の鱗片(苞穎)は普通、空。刺針状花被片(perianth bristles:花被の剛毛)は(3~)6(~12)本、まれに欠き、後ろ向きの 小刺がある。雄しべは1~3本。花柱は細い。柱頭は2又は3個。小堅果は倒卵形、広倒卵形又は球状倒卵形、3面があり~両凸面形~平凸面形、平滑~網目状~海綿状~まれに穴があり、宿存する花柱の基部(柱基 style base=tubercle)は広がり、三角形~円錐形~様々な形になり、ときにスポンジ状に厚くなる。
世界に約250種があり、全世界に分布する。
ハリイ属の主な種
1 Eleocharis acicularis (L.) Roem. et Schult. チシママツバイ 千島松葉藺synonym Eleocharis acicularis var. acicularis
台湾、ロシア、カザフスタン、ベトナム、インドネシア、フィリピン、太平洋諸島、アジア西部、ヨーロッパ、アフリカ(モロッコ)、北アメリカ、南アメリカ原産。英名はdwarf hair-grass , needle spike-rush , least spikerush。日本の東北地方、徳島県などで見つかっている。
多年草、根茎は幅0.2~0.5㎜、節間は長さ5~15㎜、鱗片は早落、まれに明瞭、半透明、長さ約2㎜。稈はときに弓なりになり、平滑又は3~12うねがあり、円柱形~ときにはっきり扁平になり、長さ1~60㎝×幅0.2~0.5(~0.7)㎜、柔弱~堅い。上部の葉の鞘は宿存又は早落、下部の鞘はわら色~赤色、上部の鞘は無色~わら色~帯白色、密に被覆~顕著に膨らみ、しばしば内側が裂け、先は円形(~鋭形)。小穂は卵形~披針形~類円筒形、長さ2~8㎜×幅1~2㎜、先は鋭形。花の鱗片は4~25個、小軸の㎜につき4~6個、明るい赤褐色~紫褐色~わら色、中脈はしばしば緑色、卵形、長さ1.5~2.5(~3.5)㎜×幅1~1.5㎜、中肋は明瞭~不明瞭、先は鈍形~鋭形。花被の剛毛はほとんど無く、まれに2~4本、帯白色~帯淡褐色、細く、不明瞭な後ろ向きの開出した小刺があり、長さは痩果より短~同長。雄しべは3本。葯は黄色~褐色、長さ0.7~1.5㎜。痩果(小堅果)は角(かど)+縦のうね約8~12本をもち、不明瞭~明瞭、狭~広倒卵形~倒ナシ形、長さは幅の2倍~かなり短く、長さ0.7~1.1㎜×幅0.35~0.6㎜、短横うね(trabeculae:cross-walls=short horizontal ridges)は30~60個、明瞭又は混雑して不明瞭、隔壁の間はときに半透明。柱基(tubercle)は帯灰色~帯褐色、ピラミッド形~かなり窪み、長さ(0.05~)0.1~0.2㎜×幅0.15~0.25㎜。2n=20。(Flora of North America)
※マツバイ( E. yokoscensis)とチシママツバイ( E. acicularis)は小堅果と花被の剛毛が異なり、別種に分類される。マツバイの小堅果は表面に少数の横の短横うね(trabeculae:cross-walls)をもち、柱基は±長くて狭く、花被の剛毛は小堅果の長さの約2倍である。これに対し、チシママツバイの小堅果は表面に多数の横の短横うね(trabeculae)をもち、柱基は±短くて幅が広く、花被の剛毛は小堅果の長さより短いか又は同長、まれに小堅果をわずかに超える(Flora of China)。
2 Eleocharis acutangula (Roxb.) Schult. ミスミイ 三角藺
synonym Eleocharis fistulosa Link ex Roem. et Schult.
日本(本州の栃木県・千葉県以西、四国、九州、沖縄)、中国、香港、台湾、インド、ネパール、スリランカ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ニューギニア、オーストラリア、アフリカ、南アメリカ、メキシコ、マダガスカル原産。中国名は锐棱荸荠 rui leng bi qi 。浸水フィールド、湿った場所、溜池、水田、休耕田などに生える。多年草、匍匐枝は細い。稈は直立、淡緑色、叢生し、高さ30~75㎝×太さ (1~)3~4㎜、鋭い3稜があり、平滑、無毛、横の隔壁は無い。葉鞘は2~3個、最も基部の鞘は褐色、苞穎状。茎葉の鞘は筒形、長さ5~15㎝、基部は暗赤色~暗紫色、口部は斜めの切形、先は鋭形。小穂は淡緑色、円筒形、長さ1.5~4㎝×幅3~5㎜、花が多数つき、先は尖鋭形。最も基部の苞穎は空、広卵形、小穂の基部全体を抱く。稔性の苞穎は緩く覆瓦状につき、広卵形、約長さ4.5㎜×幅3.5㎜、紫赤色の細点があり、中央が灰黄色、類革質、目立つ中脈を含めて数本の脈をもち、縁は膜質、先は円形。花被の剛毛は6本、最も長いものは小堅果の長さの約1.5倍、後ろ向きの小刺がある。柱頭は3個。小堅果は淡黄色、広倒卵形~倒卵形、約長さ2㎜×幅1.5㎜、両凸面形、浅い穴があり、横に配置した長円形~線形の表皮細胞の13~15本の縦の列をもち、先はわずかにくびれ、目立つ厚い環をもつ。宿存する柱基は類デルタ形、スポンジ状でなく、基部は幅が小堅果の幅の約3/5。.花期と果期は6~9月。
3 Eleocharis atropurpurea (Retz.) J. et C.Presl クロミノハリイ 黒実の針藺
全世界に広く分布。中国名は紫果蔺 zi guo lin 。水田、水田の縁、湿った場所に生える。
1年草。根茎と匍匐枝は無い。稈は帯緑色、叢生し、高さ2~15㎝、毛のように細く、直立し、円柱形、不明瞭な縦のうねがある。葉鞘は1~2個、基部は紫赤色、先は帯緑色、筒状、長さ0.5~1.5㎝、口部は斜めの切形、先は鈍形~鋭形。小穂は卵形、球形、または長円状卵形、長さ2~5.5㎜×幅1.5~2.5㎜、花が多数あり、先は鈍形。基部の2鱗片(苞穎)は空。もっとも基部の鱗片(苞穎)は小穂の基部の1/2以上を抱く。稔性の鱗片(苞穎)は中間が緑色で両側が血赤色、緩く覆瓦状につき、長円形~楕円形、約・長さ1㎜×幅0.5㎜、膜質、中脈は不明瞭、縁は狭く透明、先は鈍形~類円形。刺針状花被片は4(~6)本、無色~白色、小堅果の長さよりわずかに短~長、まばらに後ろ向きの小刺(小逆刺)がある。柱頭は2個。小堅果は初め赤紫色, その後、暗紫色になり、倒卵形~広倒卵形、長さ0.3~0.6㎜×幅約 0.4㎜、両凸面形、平滑で光沢がある。宿存する柱基は皿形(patelliform) 、中間にいぼがあり、基部は後屈せず、小堅果の長さの約1/6、幅は小堅果の約1/4。花期と果期は6~10月。 2n = 20。
3-1 Eleocharis atropurpurea var. atropurpurea エレオカリス・アトロプルプレア
中国、台湾、インド、ネパール、ブータン、バングラディシュ、パキスタン、アフガニスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、イラン、トルコ、ベトナム、フィリピン、インドネシア、パプアニューギニア、オーストラリア、アフリカ、マダガスカル、北アメリカ、中央アメリカ、南アメリカ原産。中国名は紫果蔺 zi guo lin。3-2 Eleocharis atropurpurea (Retz.) J. et C.Presl var. hashimotoi Ohwi クロミノハリイ 黒実の針藺 狭義
日本固有。本州(滋賀県、岡山県)、四国(徳島県)、九州 (宮崎県))に分布。池の周辺や湿地に生える。1年草、根茎と匍匐枝は無い。稈は細く、高さ5~15㎝、緑色、縦に溝がある。小穂は長さ2~4㎜。鱗片は長さ1~1.5㎜、先は鈍形、中間が緑色で両側がさび色、縁は狭く透明、膜質、熟すると斜上開出する。刺針状花被片は6本、小堅果(痩果)の約2倍の長さで、小逆刺がある。小堅果(痩果)は黒色で光沢があり長さ約0.6 mm、横断面は両凸面形、黒色。柱基は小さな皿形(patelliform) 。柱頭は2岐。
4 Eleocharis attenuata (Franch. et Sav.) Palla セイタカハリイ 背高針藺
synonym Eleocharis attenuata (Franch. et Sav.) Palla var. major (H.Hara) Masam.
日本(本州、四国、九州、沖縄)、韓国、中国、ロシア、ベトナム、パプアニューギニア原産。中国名は渐尖穗荸荠 jian jian sui bi qi 。愛知県の絶滅危惧Ⅱ類。谷戸田の畔、河川堤防の湿った場所などに生える。1 年草又は多年草。明らかな匍匐枝はない。茎は束生して株をつくり、細い円柱形、高さ30~50㎝×直径約0.7㎜。葉は茎の基部について葉鞘のみに退化し、赤褐色。花期は7~10月。小穂は茎の先端に1個つき、幅広、長卵形~卵形、長さ7~10㎜×直径3~4㎜、淡褐色。鱗片は広卵形、長さ約2.5㎜、鈍頭、全体に薄質で淡色である。果実は倒卵形、3稜があり、淡茶色に熟す。刺針状花被片は6個、果実よりわずかに長く、逆向きの小刺がある。(レッドデータブック愛知)
4-1 Eleocharis attenuata (Franch. et Sav.) Palla f. laeviseta (Nakai) H.Hara チョウセンハリイ
synonym Eleocharis attenuata (Franch. et Sav.) Palla var. laeviseta (Nakai) H.Hara
4-2 Eleocharis attenuata var. erhizomatosa Tang & F. T. Wang
中国に分布。中国名は无根状茎荸荠 wu gen zhuang jing bi qi5 Eleocharis baldwinii (Torrey) Chapman エレオカリス・バルドウィニー
USA南東部原産。英名はBaldwin's spike-rush, slender spikerush。標高0~60mの淡水~湿った陸上、松の原生林、ラクウショウの池、湖岸に生える。水草として栽培されるエレオカリス・ビビパラ(Eleocharis vivipara)とよく似ている。
1年草、水生または陸生、しばしばマットを形成し、匍匐性であることが多く、完全に栄養繁殖植物であることもある。根茎は無い。稈はしばしばアーチ状になり、赤褐色の斑点や条線があり、4稜形または断面が広楕円形、溝は有または無く、長さ0.5~25(~30)㎝×幅0.1~0.4㎜、柔らかい。葉:上部の葉鞘は宿存性または崩壊性、わら色~緑色~赤褐色、または、斑点または条線があり赤褐色、膜質、半透明、先は鈍形または鋭形。小穂:基部の小穂は通常存在し、雌性、しばしば、むかごがあり(proliferous)、卵形~楕円形または線形、はっきり側部が扁平で、長さ2.3~6.9㎜×幅0.5~2㎜、先は鋭形。下部の鱗片は空で、抱茎、花の鱗片に似る(ときに中肋がより目立ち、ときに葉身からわずかに突き出る)。下部近くの鱗片は花がつく。花の鱗片は明瞭な2列生で3~9個つき、小軸1㎜当たり3~4個、帯黄色、淡褐色または赤褐色、斑点、条線、またはまだらの赤褐色、狭卵形~長円形、長さ(1.5~)2~5㎜×幅0.4~0.6(~1.2)㎜、膜質、先は円形、鈍形またはまれに鋭形で、中肋は竜骨状になる。刺針状花被片は3~7本、湾曲しており、無色、白色または赤褐色で、痩果より短いか同長、小刺はまばらで、後ろ向き、鋭く尖る。雄しべは3本。 葯は長さ1.4~2.2㎜。花柱は3裂。痩果は帯白色または帯緑色、斑点のある暗緑色、倒卵形、3稜形、角(かど)が明瞭、長さ0.6~0.9㎜×幅0.4~0.6㎜、先は柱基の近くでくびれ、10~20倍で観察すると平滑~細かい格子状(cancellate)。柱基は淡褐色~赤褐色、ピラミッド形、3稜形、長さ0.2~0.3(~0.4)㎜×幅0.2~0.5㎜。果期は早春~冬。
6 Eleocharis brittonii Svenson ex Small エレオカリス・ブリットニー
synonym Eleocharis microcarpa var. brittonii (Svenson ex Small) Svenson
USA中部~南東部原産。英名はBritton's spikerush。標高0~100mの淡水、湿った陸地、泥炭の池、沼地に生える。水草として栽培されるエレオカリス・ビビパラ(Eleocharis vivipara)とよく似ている。通常1年草、水生または陸生、房状(株立)になり、しばしば匍匐性である。根茎は無い。稈は斜上、断面は四角形、溝があり(Eleocharis sp. aff. brittonii では溝状ではない)、長さ7~37㎝×幅0.2~0.6㎜、柔らかい~硬い。 葉:上部の葉鞘は宿存性または早落性、淡褐色または緑色、ときに赤褐色の条線があり、膜質~半透明、先は鋭形~尖鋭形。小穂:基部の小穂は無く、しばしば無性芽(不定芽)があり(proliferous)、楕円形~卵形、円柱形、長さ2~10.5㎜×幅1~2.8㎜、先は鋭形。下部の鱗片は空で、宿存し、抱茎、花の鱗片とは異なり、わずかに長く、しばしば苞(総苞)に似ており、楕円形または披針形、長さ1.4~2.7㎜×幅0.8~1.2㎜、先は円形、中肋は著しく厚く幅広です。下部に近い鱗片は花がある。花の鱗片は螺旋状に13~76個つき、小軸1mm当たり9~13個あり、無色または淡褐色、条線があるかまたはまだらになり淡褐色~赤褐色、中肋は緑色、卵形、楕円形または倒卵形、長さ0.8~2.2㎜×幅0.5~1㎜、紙質または膜質、中肋は明瞭または目立ち、先は円形。刺針状花被片は5~6本、または無く、痩果に圧着し、白色、退化~痩果より短く、長さ0.3㎜まで、45倍の観察で小刺は明瞭ではない。雄しべは2~3本。葯は長さ0.2~0.45mm。花柱は3裂。痩果は帯灰色~淡オリーブ色または帯黄色、しばしば微細な褐色の斑点があり、倒卵形、3稜形、角(かど)が明瞭、長さ0.45~0.8㎜×幅0.3~0.55㎜、先は柱基の近くでくびれ、平滑または30倍で見て細かい窪みがある。柱基は灰色、緑色、または帯黄色、僧帽形(birettaform)、3稜形、長さ0.05~0.1㎜×幅0.15~0.3㎜。2n=10。果期は春~冬。
7 Eleocharis congesta D.Don ハリイ 針藺 広義
日本(本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国、インド、ネパール、ヒマラヤ、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、ベトナム、フィリピン、ジャワ島、ボルネオ島、スマトラ島、スラウェシ島、カロリン諸島原産(Kew science)。中国名は密花荸荠 mi hua bi qi 。英名はspikerush。森林の縁、池の縁、川の縁、湿地、水田などに生える。YListなどで広義のハリイとしている。1年草または多年草。 根茎は傾伏する。稈は房状(株立)で、高さ10~40 cm、太さ1~1.5(~2.5) mm、やや硬く、ほぼ円柱形、数本の縦方向の細い肋がある。葉鞘は2個。茎葉の鞘は血赤色、後に先端は淡い血赤色なり、長さ3~8㎝、口部は切形で、先端は微突形~芒状になる。小穂は長円形~狭長円状卵形、長さ8~11㎜×幅3~4㎜、多数の花が密につき、ときに小穂の基部に腋芽(無性芽)がつき(proliferous)、先は鈍形~鋭形。 最下の鱗片は大きく空で、小穂の基部の全部が抱茎。稔性の鱗片は血赤色だが、中間は緑色で、きつく覆瓦状になり、長円形、約・長さ2.2㎜×幅0.9㎜、縁は非常に狭く透明で、先は円形。刺針状花被片は6本、小堅果より長く(小堅果の1.5~2倍)、わずかに密に短い後ろ向きの小刺がある。柱頭は3岐。小堅果は帯黄色~オリーブ色、倒卵形~楕円形、約・長さ1㎜×幅0.7㎜、3面があり、側面が凸形、角(かど)に狭い肋がある。宿存する柱基は白色、半長円形、長さは小堅果の1/4~1/3、幅は小堅果の約1/2、初めは海綿状だが、乾燥すると硬くなり、基部はキャップ状で、頂点は丸いが、乾燥するとピラミッド状で鋭くなる。花期と果期は5~8月(Flora of China)。 7-1 Eleocharis congesta D.Don var. congesta オオハリイ 大針藺
synonym Eleocharis pellucida f. elata H.Hara
synonym Eleocharis congesta f. dolichochaeta T.Koyama
synonym Eleocharis congesta var. subvivipara (Boeckeler) T.Koyama ヤリハリイ
synonym Eleocharis congesta D.Don subsp. subvivipara (Boeck.) T.Koyama
synonym Eleocharis japonica Boeckeler日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国、インド、ススリランカ、ネパール、ブータン、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア原産。池の周辺や湿地、水田に生える。
1年草ときに多年草。中国名は密花荸荠 mi hua bi qi。英名はspikerush。匐枝は出さず叢生し、茎は直立~斜上し、高さ8~25(~40)cm×直径約0.8(~1.2)㎜、やや外側に軽く反り、鮮緑色、基部の鞘は濃赤紫色を帯びる。鞘状葉はハリイより長い。小穂は卵形~卵状楕円形(狭卵形)、長さ6~8(~まれに10)㎜、幅2.5~2.8㎜、先は鋭形。小穂の基部に腋芽(無性芽)をよく付ける。鱗片は卵形、長さ2~2.5㎜で、中肋付近は緑色、縁近くが血赤褐色になり、縁は非常に狭く透明、先は鈍形~円形。痩果は長さ約1(~1.2強)㎜、稜が少し隆起する3稜形、面は淡黄緑色。刺針状花被片は6個つき、痩果より明らかに長く、痩果の長さの1.5~2倍長、淡褐色を帯び、逆刺がやや密につく。柱基は三角錐形、高さは痩果の1/4~1/3、幅は痩果の約1/2、高さは幅の1~1.5倍。雄しべは1~2本。果期は6~9(11)月。
ヤリハリイ(var. subvivipara)はオオハリイ(var. congesta)に含められた。ヤリハリイは小穂が線状披針形~線状円筒形、長さ0.6~1㎝×幅1.5~2mm。果実の稔性が低く、クローン株をよく作る。
7-2 Eleocharis congesta var. japonica (Miq.) T.Koyama ハリイ 針藺
synonym Eleocharis japonica Miq.
synonym Eleocharis pellucida var. japonica (Miquel) Tang & F. T. Wang [Flora of China]
synonym Scirpus japonicus (Miq.) Franch. & Sav.synonym Eleocharis congesta D.Don var. nipponica (Makino) Ohwi
日本(北海道の渡島半島、本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、四川省、雲南省、浙江省)、タイ原産。中国名は稻田荸荠 dao tian bi qi。標高200~1700mの低地~山地の水田、休耕田、浅い水辺、湿地に生える。よく見られる水田雑草。
1年草。沈水状態でも生育する。沈水状態のものは、茎が細く、20cmを超え、長く伸び、小穂基部から盛んにクローン株を生じ、小穂基部から発根して茎を叢生する。根茎はごく短く、叢生し、匐枝はない。稈は細く、直立~斜上し、高さ6~20cm×直径0.2~0.4㎜、鮮緑色。小穂は頂生し、ときに基部に腋芽(不定芽)をつけ、卵形~狭卵形、密に花がつき、長さ4~6㎜×幅1.5~2㎜。鱗片は卵形、長さ1~1.5mm、中肋は幅広の緑色、一部、さび色になり、先は鈍形(やや尖りぎみ)。痩果はやや扁平な倒卵形、長さ0.7~1mm、黄緑色、横断面は鈍い3稜形。刺針状花被片は6本つき、長さは痩果の1.2~1.5倍あり、下向きの小刺(小逆刺)がある。柱基は長三角状三角錐形、幅は痩果の約1/3、長さは幅の約1.5倍である。柱頭は3岐。雄しべは1~2本。2n=20。花期は6~11月。
【Flora of Chinaの解説】中国のものは刺針状花被片が短い。
稈は通常、非常に短く、毛状。刺針状花被片は小堅果より短く、緩く後向きの小刺がある。小堅果は長さ0.8~0.9㎜。宿存する柱基は通常±細長い。花期と果期は3~10月(Flora of China)。
7-3 Eleocharis congesta D.Don var. thermalis (Hulten) T.Koyama エゾハリイ 蝦夷針藺
synonym Eleocharis japonica Miq. var. thermalis (Hulten) H.Harasynonym Eleocharis congesta D.Don var. thermalis (Hulten) T.Koyama f. soranumensis Koji Ito
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ロシアに分布。溜池畔、湿地に生える。1年草又は多年草。抽水~沈水状態でも生育する。匍匐枝はない。ハリイより小型で不定芽(クローン株)も生じにくい。 稈は叢生し、細く、直立~斜上し、高さ5~10㎝、基部は帯淡褐色~帯淡赤褐色。小穂は披針形~狭卵形、長さ3~5㎜、花はややまばらにつく。鱗片は卵形、長さ1.8~2㎜、鈍頭、濃赤褐色~紫褐色。小堅果は倒卵形、長さ1~1.2㎜、横断面は鈍3稜形、濃いオリーブ色。刺針状花被片は6本、小堅果と同長か又はやや長く、後ろ向きの小刺がある(下向きにザラつく)。 柱基は扁三角錐形、幅は小堅果の幅の2/3~3/4、長さは幅より少し短い。柱頭は3岐。雄しべは1~2個。2n=20。花期は9~10月。
8 Eleocharis dulcis (Burm.f.) Trin. ex Hensch. イヌクログワイ 犬黒慈姑
synonym Eleocharis dulcis (Burm.f.) Trin. ex Hensch. var. tuberosa (Roem. et Schult.) T.Koyama シナクログワイ
日本、朝鮮、中国、台湾、インド、ネパール、スリランカ、パキスタン、ミャンマー、タイ、べトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、パプアニューギニア、オーストラリア北部、太平洋諸島、熱帯アフリカ、マダガスカル、インド洋諸島原産。中国名は荸荠 bi qi 。英名は Chinese water-chestnut , ground-chestnut , waternut。塊茎が食べられる(water chestnut)ため栽培される。野原の縁などに生える。多年草。匍匐枝は細く、しばしば先が塊茎で終わる。稈は直立、灰緑色、叢生し、高さ15~60㎝×太さ1.5~3㎜、円筒形、平滑、無毛、表面は横の隔壁をもち、節は乾くと明瞭。葉鞘は2~3個、灰黄色~紫赤色~褐色、長さ2~20㎝、口部は斜めの切形、先は鋭形。小穂は淡緑色、円筒形、長さ1.5~4㎝×幅6~7㎜、花が多数つく。基部の2苞穎は空、小穂の基部全体を抱く。稔性の苞穎は灰緑色、緩く覆瓦状につき、広長円形~卵状長円形、長さ 3~5㎜×幅2.5~3.5(~4) ㎜、類革質、淡褐色の細点と細かい条線があり、縁は淡黄色で膜質、先は鈍形。花被剛毛は7本、小堅果の長さの約1.5倍、後ろ向きの小刺がある。柱頭は3個。小堅果は熟すと褐色、広倒卵形、約長さ2.5㎜×幅1.8㎜、両凸面形、本質的に平滑だが、かすかに細かい多孔質で六角形~長円形の表皮細胞をもち、先はくびれないが、厚い環をもつ。宿存する柱基は三角状漸尖形、扁平、スポンジ状でなく、基部は小堅果の幅の約1/2。花期と果期は5~10月。2n=38, 約108。
9 Eleocharis engelmannii Steud. エンゲルマンハリイ
synonym Eleocharis engelmannii Steud. f. detonsa (A.Gray) Svenson シバヤマハリイ
synonym Eleocharis engelmannii Steud. var. detonsa A.Gray北アメリカ原産。英名はEngelmann's spike-rush。標高30~2400mの海岸、湿地、荒れた場所に生える。
稈は長さ2~40 cm ×幅0.5~1.5(~2) mm。 葉:遠位葉鞘の先端は鈍形から鋭形で、鋸歯は0.3mmまで。 小穂は槍形~亜円筒形または卵形、長さ5~10(~20)×幅2~3(~4)mm、先端は鋭角(~丸い)。 近位スケールは空で、およそ 1 つを取り囲んでいます。 稈の2/3。 花の鱗片は25~100(~200)個、小軸1mmあたり8~12個、橙褐色~わら色、長さ2(~2.5)㎜×幅1~1.3㎜、中肋はほとんどが竜骨状になり、卵形、先は狭い円形~ほぼ鋭形。刺針状花被片は有またはしばしば無く(var. detonsa)、5~8本つき、褐色で丈夫、未発達~柱基をわずかに超える。雄しべは(2~)3本。葯は褐色~黄色、長さ0.3~0.7(~1)㎜。花柱は2~3裂。痩果は長さ0.9~1.1(~1.5)㎜×幅0.7~1.1㎜。柱基(tubercle)は凹み、ほぼ三角形、長さ0.1~0.3(~0.4)㎜×幅0.6~0.9(~1)㎜、高さは幅の1/10~2/5、高さは痩果の1/4以下、幅は痩果の9/10、ごくまれに、痩果の2/5の高さになる(E. engelmannii var. robsta において)。2n=10。果期は春~秋。
10 Eleocharis equisetiformis (Meinsh.) B.Fedtsch. スジヌマハリイ
synonym Eleocharis valleculosa Ohwi
synonym Eleocharis valleculosa Ohwi var. valleculosa 日本産
synonym Eleocharis valleculosa Ohwi f. setosa (Ohwi) Kitag. synonym Eleocharis valleculosa Ohwi var. setosa Ohwi 中国産
日本(本州の神奈川県以北、九州)、朝鮮、中国原産。湖沼やため池の縁などの浅い水中、湿地などに生える。
多年草、根茎と匍匐枝をもつ。稈は1本又は叢生し、高さ6~50㎝×太さ1~3[日本30~60㎝×幅1.5~2]㎜、円柱形、数本の鋭いうねをもつ。葉鞘は1~2個、基部は紫赤色、筒形、長さ3~10㎝、口部は切形。小穂は長円状卵形~狭長円状卵形、まれに楕円形~長円形、長さ0.7~2[1~2.5]㎝×幅2.5~3.5㎜、花が多数つく。基部の2個の苞穎は空、小穂の基部の1/2~1/3で茎を抱き、稔性の苞穎は帯緑色~淡色、両側に狭い淡血赤色の帯をもち、卵形~長円状卵形、約長さ3㎜×幅1.7㎜、縁は広く透明、先は鈍形。花被の剛毛は4本(日本、韓国産は無)、小堅果よりはっきり長く、わずかに曲がり、広がらず、密に後ろ向きの小刺がある。柱頭は2個。小堅果は帯黄色、球状倒卵形、約長さ1㎜×幅1㎜、両凸面形、平滑、宿存する柱基は広卵形、小堅果の長さの約1/3、幅は約1/2、スポンジ状。花期と果期は6~8月[7~9]。
11 Eleocharis erythropoda Steud. オウギシマヒメハリイ
北アメリカ(アラスカ、カナダ、USA)原産。英名はbald spikerush。標高0~2300mの非石灰質または石灰質の淡水または汽水の海岸、湿原、牧草地、沼地、荒れた場所に生える。神奈川県で帰化が確認されている。
多年草、マットを形成する。根茎は明瞭で、長く、太さ0.5~1.5㎜、柔らか~堅く、皮質はしばしば緩み、節間は長さ5~30㎜、鱗片はしばしばはかなく(fugaceous)、長さ4~8㎜、膜質で繊維状ではない。稈は円柱形、乾くと8~12本の鈍い隆起があり、長さ8~80㎝×幅0.3~1.4㎜、硬め~柔らかく、内部は海綿状。葉: 上部の葉鞘は宿存し、裂けず、下部は赤色(~わら色)、上部は緑色~わら色、通常は膨らみ、しばしばカロース(callose:硬くなり)があり、膜質~紙質、先はしばしば赤褐色になり、広鈍形~ほぼ鋭形、ときに歯があり、長さ0.1㎜以下。小穂は卵形~披針形、またはほぼ円筒形、長さ3~18㎜×幅2~3(~4)㎜、先はは鋭形(~鈍形)。下部の鱗片は茎を抱き、全縁、はぼ下部の鱗片は花をもつ。花をもつ鱗片は果時に開出し15~50個つき、小軸の1㎜当たり4~5個、褐色~ときに赤褐色、中肋部分はほとんどわら色~緑色、小穂の下部は卵形、先端は丸く、上部は披針形、先は全縁、鋭形、長さ2~3.5㎜×幅1.5~1.7㎜、ほとんどに竜骨がある(carinate)。花:刺針状花被片は4本または無く、薄褐色~わら色、丈夫で、通常は等長、痩果の長さと同長から柱基(tubercle)をわずかに超える。雄しべは3本。 葯は暗黄色~わら色、長さ1~1.8㎜、短突起がある。花柱は2裂。痩果は宿存せず、暗黄色~わら色、または暗褐色、倒卵形~倒梨形、両凸形、角(かど)が不明瞭、長さ0.9~1.6㎜×幅0.7~1.2㎜、先は丸く、首(neck:痩果と柱基の間のくびれ)は無いかまたは長い、30倍で観察して平滑、または10~30倍で観察してときに細かい格子があり、水平のうねが20本以上ある。柱基は褐色~帯白色、ピラミッド形、幅よりはるかに高く~低く、長さ0.35~0.65㎜×幅0.2~0.6㎜。2n=16, 18, 19, 20。果期は夏。
12 Eleocharis geniculata (L.) Roem. et Schult. タマハリイ
synonym Eleocharis capitata R.Br., excl. basion.
synonym Eleocharis caribaea (Rottb.) S.F.Blake
日本(沖縄)、中国、台湾、インド、スリランカ、アフガニスタン、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、インドネシア、マレーシア、南西アジア、ヨーロッパ南部、アフリカ、オーストラリア、中央アメリカ、北アメリカ、南アメリカ、マダガスカル、太平洋諸島に分布。中国名は黑籽荸荠 hei zi bi qi。英名はspike-rush 。海抜近くの小道の縁の浅い水辺、砂地の海岸などに生える。
1年草。根茎と匍匐枝は無い。稈は叢生~密に双生、高さ3~45㎝×太さ約0.5㎜、柔らかく、少数の縦のうねと溝がある。葉鞘は2個、基部は帯赤色で先はわら色長さ1~1.5㎝、口部は斜めの切形、先は尖鋭形。小穂は球形~卵形、長さ3~5㎜×幅3~3.5㎜、密に多数の花がつく。基部の3~4個の苞穎は空。基部の2個の苞穎は対生し、小穂の基部約1/2を抱く。稔性の苞穎は淡さび色、±淡色になり、広楕円形、長さ1.6~2㎜×幅1~1.2㎜、中脈は不明瞭、縁は狭く透明、先は円形。花被の剛毛は6~8本、さび色、小堅果よりわずかに短く、疎に短い後ろ向きの小刺がある。花柱は2個。小堅果は暗紫色、広倒卵形~球状卵形、長さ0.7~1.1㎜×幅約0.6㎜、両凸面形、平滑で光沢があり。宿存する柱基は淡色、窪んだ円錐形、長さは小堅果の長さの1/5~1/4、幅は1/7~1/4、両側が基部でわずかに 後屈する。花期と果期は1~4月。2n=30。
13 Eleocharis kamtschatica (C.A.Mey.) Kom. ヒメハリイ 姫針藺 [広義]
日本(北海道、本州の東海地方以北)、朝鮮、中国、ロシア、北アメリカ原産。中国名は大基荸荠 da ji bi qi。海岸近くの湿地に生える。
多年草。根茎は長い。稈は高さ20~50㎝×太さ1.5~3㎜、円柱形、目立つ鈍いうねと縦の溝があり、乾くと、表面に横の隔壁がある。葉鞘は1~2個、帯褐色、筒形、長さ6~7㎝又はそれ以上。口部はわずかに斜めの切形、先は三角形の微突形。小穂は卵形~狭卵形、長さ8~20㎜×幅3~5㎜、多数の花があり、先は鈍形。最も基部の苞穎は空、小穂の基部の1/2以上を抱く。稔性の苞は淡血赤色~わら色で 淡血赤色の線を±もち、きつく覆瓦状につき、長円形~卵状長円形、約長さ4㎜×幅1㎜、中脈は不明瞭、縁は広く~狭く透明、先は鈍形。刺針状花被片は4~5本だが、ときに痕跡又は欠き(クロハリイ)O、小堅果の長さより短~同長、密に後ろ向きの小刺がある。柱頭は2個。小堅果は初め黄色、その後、黄褐色(tawny)になり、倒卵形~広倒卵形~類球形、長さ1~1.5㎜×幅約1㎜、両凸面形、平滑で光沢がある。宿存する柱基は卵形~僧帽形(mitriform)、大きく細胞質のスポンジ状、長さは小堅果の2/3又はそれ以上、幅は小堅果の幅とほぼ等しい。花期と果期は7~10月。2n=38-40, 44, 56。
Flora of Chinaでは分けていないが、品種としてヒメハリイとクロハリイに分けている。
クロハリイは刺針状花被片が痕跡又は欠く。
13-1 Eleocharis kamtschatica (C.A.Mey.) Kom. f. kamtschatica ヒメハリイ 姫針藺
刺針状花被片は4~5本13-2 Eleocharis kamtschatica (C.A.Mey.) Kom. f. reducta (Ohwi) Ohwi クロハリイ 黒針藺
刺針状花被片が痕跡又は欠く。14 Eleocharis kuroguwai Ohwi クログワイ 黒慈姑
日本(本州の関東地方以西、四国、九州)、朝鮮原産。
多年草、高さ40~70㎝。長い根茎をのばし、その先に直径6~10㎜の黒い塊根をつけ、クワイのように食べられ、これが和名の由来となっている。茎は株状になって直立し、内部は中空、多数の横の隔膜があり、断面は円形。小穂は長さ約3㎝の円柱形、茎頂に1個ずつつく。苞はない。花は両性花、雌性先熟。発芽様式などの違いにより、水田型とため池型2つの生態形が知られている。花期は7~10月。
15 Eleocharis mamillata H.Lindb. オオヌマハリイ 大沼針藺 [広義]
北アメリカ、ヨーロッパ原産。英名はMamillate Spike-rush , soft-stem spikerush。
15-1 Eleocharis mamillata H.Lindb. var. cyclocarpa Kitag. オオヌマハリイ
synonym Eleocharis mamillata H.Lindb. subsp. ussuriensis (Zinserl.) T.V.Egorova
synonym Eleocharis ussuriensis Zinserl.synonym Eleocharis mamillata H.Lindb. f. ussuriensis (Zinserl.) Y.L.Chang
16 Eleocharis margaritacea (Hulten) Miyabe et Kudo シロミノハリイ 白実針藺
synonym Scirpus margaritaceus Hulten日本(本州の岩手県以北、北海道)、ロシア原産。湿原に生える。
多年草、高さ25~50㎝。根茎は短い。茎は針のように細く、枝分かれせず、多数、叢生し、直立する。鞘はわら色。小穂は狭卵形~広披針形、光沢がある。果実は倒卵形、鈍い3稜形、白色。
17 Eleocharis maximowiczii Zinserl. エレオカリス・マキシモヴィッチ
synonym Eleocharis pellucida J. et C.Presl var. thermalis (Hulten) H.Hara
synonym Eleocharis pellucida J. et C.Presl var. maximowiczii (Zinserl.) Ohwi
synonym Eleocharis congesta D.Don var. maximowiczii (Zinserl.) T.B.Lee
synonym Eleocharis thermalis (Hulten) T.V.Egorova中国、ロシア原産。中国名は细秆荸荠 xi gan bi qi 。エゾハリイ(Eleocharis congesta var. thermalis)をEleocharis maximowiczii に含める見解もある(YList)が、KewscienceはFlora of Chinaでは含めていない。沼地、湿った草地、湿った小道の縁、水田に生える。
多年草。稈は斜上又は直立、淡緑色、密に叢生し、高さ8~25㎝、細く、4角(かど)があり、溝がある。葉鞘は赤紫色。小穂は卵形~卵状円筒形、長さ2.5~6㎜、少数の花をもち、ときに、最も下の苞穎に2次の不稔の小穂をつけ、先は鋭形~まれに鈍形。最下の苞穎は空、小穂の基部の1/2以上を抱く。稔性の苞穎は広い中央の帯びが緑色で両側が暗褐色、緩く覆瓦状につき、卵形~楕円形、長さ約2㎜、縁は広く透明、先は鈍形。花被剛毛は6本、小堅果よりわずかに短く、密に後ろ向きの小刺がある。柱頭は3個。小堅果はオリーブ色、倒卵形、長さ0.9~1㎜×幅約0.5㎜、鈍い3面があり、平滑。宿存する柱基はデルタ形~短い円錐形、長さ1~2㎜×幅約3㎜。花期と果期は6~7月。
18 Eleocharis microcarpa Torr. エレオカリス・ミクロカルパ
USA、キューバ、ジャマイカ、ベネズエラ原産。英名はsmall-fruited spikesedge。水草として栽培されるエレオカリス・ビビパラ(Eleocharis vivipara)とよく似ている。
通常1年草、房状で、ときにには増殖してアーチ状の花序(匍匐性)になってマットを形成し、ときに完全に栄養増殖である。根茎は無い。稈はしばしば斜上またはアーチ状、断面は四角形または広楕円形、長さ2~40㎝×幅0.1~0.4(~0.6)㎜、柔らかい。 葉:上部の葉鞘は宿存性または崩壊性、淡褐色、緑色または赤褐色、条線があるかまたはまだらで、赤褐色または紫色、半透明、膜質、先は狭い鋭形。小穂:基部の小穂は無い。しばしば、むかごがあり(proliferous)、卵形~楕円形~披針形、円柱形形、長さ2~10.7㎜×幅1~2㎜、先は鋭形。下部の鱗片は空で、宿存し、抱茎、花の鱗片とは異なり、しばしば長く、しばしば苞(総苞)に似ており、卵形~披針形、中肋は著しく太く幅広で、しばしば鱗片の先端を超えて伸びる。下部近くの鱗片は花をもつ。花の鱗片は螺旋状につき、無色、帯白色または淡褐色、条線またはまだらになり、赤褐色または紫色、中肋は緑色と赤褐色、または緑色と紫色、卵形~楕円形、長さ0.8~1.5㎜×幅0.4~0.8㎜、膜質、中肋は不明瞭~目立つ。刺針状花被片は有るか、またはときに明らかに無い。雄しべは3本。葯は長さ0.15~0.35㎜。 花柱は3裂。痩果は帯白色~オリーブ色または淡褐色、ときに斑点のあるオリーブ色または赤褐色、倒卵形、3稜形(またはほぼ円柱形)、角が明瞭、長さ0.55~0.8㎜×幅0.3~0.5㎜、先は柱基の近くでくびれ、平滑。柱基は緑色または淡褐色~赤褐色で、3稜形。
18-1 Eleocharis microcarpa var. microcarpa Jeremy J. Bruhl, S. Galen Smith
USA、キューバ、ジャマイカ、ベネズエラ原産。標高0~600mの淡水から湿った陸地、湿った平原、松林、池の縁、溝、泥炭質および砂質の土壌に生える。下部の鱗片は長さ0.9~2㎜×幅0.4~0.5㎜。刺針状花被片は5~6本、帯白色~淡色、または稀に赤褐色、長さ0.2~0.4㎜、痩果より短く、小刺は45倍では見えない。痩果は幅0.3~0.45㎜。柱基は外形が半円形、または短いピラミッド形、長さ0.5~0.1㎜×幅0.15~0.2㎜。果期は春~秋。
18-2 Eleocharis microcarpa var. filiculmis Torr.
USAに分布。標高0~600mの無塩の松林の開拓地の湿った場所、cypress-black gum林の窪地、湖岸に生える。下部の鱗片は長さ1.2~2㎜×幅0.8~1㎜。刺針状花被片は6本、無色、白色、またはまれに淡いまたは赤褐色、長さ0.6~1㎜、同等の痩果よりも短い。 小刺は後ろ向き、微細、45倍で観察してかろうじて見える。痩果は幅0.35~0.5㎜。柱基はピラミッド形または僧帽形(birettaform)、長さ0.1~0.2㎜×幅0.1~0.3㎜。2n=10。果期は春~秋。
19 Eleocharis ochrostachys Steud. トクサイ 砥草藺
日本(沖縄)、中国、台湾、インド、スリランカ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、太平洋諸島原産。中国名は假马蹄 jia ma ti 。水田、池の縁、湿った場所に生える。
多年草。匍匐枝は細い。稈はわら色、叢生し、高さ35~75㎝×太さ2~3㎜、太く、円柱形だが、ときに先部に不明瞭な3角(かど))があり、横の隔壁は無く、乾くと表面に縦の溝がある。葉鞘は2~3個、紫赤色、筒形、長さ6~18㎝、口部は斜めの切形、先は鋭形。小穂は淡色、円筒形、長さ2~4㎝×幅約4㎜、少数の花をもち、先は円形~鈍形。最下の苞穎は空、広卵形、小穂の基部全体を抱く。稔性の苞穎はわら色~淡褐色、緩く覆瓦状につき、広長円形、約長さ5㎜×幅3㎜、類革質、紫色の細点があり、多数の脈があり、中脈は不明瞭、縁は透明、先は円形~鈍形。刺針状花被片は6~7本、小堅果の長さの約2倍、後ろ向きの小刺がある。柱頭は(2~)3個。小堅果は淡黄色、熟すと褐色に変わり、広倒卵形、約長さ2㎜×幅1.5㎜、扁平な両凸面形、縦の条線があり、横向きの線状長円形の表皮細胞の25~32列をもち、先はくびれず、厚い環をもつ。宿存する柱基は狭くて長いピラミッド形、基部は小堅果の幅の約1/2。花期と果期は9~10月。
20 Eleocharis ovata (Roth) Roem. et Schult. マルホハリイ 丸穂針藺
synonym Eleocharis soloniensis (Dubois) H.Hara
日本(北海道、本州の中部地方以北)、中国、ロシア、カザフスタン、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は卵穗荸荠 luan sui bi qi。英名はovoid spikerush。湿地に生える。
1年草。根茎と匍匐枝は無い。稈は密に叢生し、高さ4~50㎝、細く、円柱形、平滑、少数の縦のうねがある。葉鞘は1~3個、基部はわずかに赤色、先は帯緑色~わら色、筒形、長さ0.5~3㎝、口部は斜めの切形、先は鋭形~微突形。小穂は卵形~広卵形、長さ4~8㎜×幅3~4㎜、多数の花をもち、先は鋭形。基部の2苞穎は空。最も基部の苞穎は小穂の基部の3/4近く~全体を抱く。稔性の苞穎は中央が帯緑色で両側が血赤色、緩く覆瓦状につき、卵形~長円状卵形~広卵形、約長さ1.5㎜×幅0.5㎜、膜質、縁は狭く透明、先は鋭形~鈍形。花被剛毛は6本、小堅果の長さの約1.5倍(柱基を含み)、後ろ向きの小刺がある。柱頭は2個。小堅果は最初白色、、熟すと帯褐色に変わり、倒卵形、約長さ0.8㎜×幅0.5㎜、背面の凸面が目立ち、腹面はわずかに凸面、平滑。宿存する柱基はデルタ形、長さは小堅果の約1/3、幅は約1/2、背腹側が扁平、スポンジ状でなく、表面にパピラ(mammillate)は無く、先は尖鋭形。花期と果期は8~12月。
21 Eleocharis palustris (L.) Roem. et Schult. クロヌマハリイ 黒沼針藺 [広義]
synonym Eleocharis smallii Britton日本(北海道、東北地方)、中国、モンゴル、ネパール、ロシア、カザフスタン、アフガニスタン、南西アジア、ヨーロッパ、北アフリカ、大西洋諸島、北アメリカ原産。中国名は沼泽荸荠 zhao ze bi qi 。英名はcommon spike-rush , creeping spike-rush , marsh spike-rush。標高0~3000mの淡水(~わずかに汽水)、湿地、牧草地、海岸、池に生える。
多年草、マットを形成する。根茎は明瞭、長く、太さ1.5~4.5㎜、堅く~硬く(または軟らかく)、外皮は宿存性、節間は長さ10~35㎜、鱗片は通常宿存し、長さ6~20㎜、膜質、ときにわずかに繊維状になる。稈は円柱形またはわずかに扁平で、乾くと8~30本の鈍い隆起があり、長さ30~115㎝×幅0.5~5㎜、硬めから柔らかく、内部は海綿状。葉:上部の葉鞘は宿存性またはときに崩壊し、しばしば内側が裂け、下部は赤色または帯黒色、上部は緑色または赤色、膨れず、カロースはなく、膜質~紙質、先は広鈍形~鋭形、歯はない。小穂は卵形~披針形、長さ5~25㎜×幅3~7㎜、先は鋭形~鈍形。下部の鱗片は稈の長さの2/3を抱き、ときに3/4を抱き、全縁。下部付近の鱗片は1~2個が空。花の鱗片はしばしば果時に開出し、30~100個あり、小軸1㎜あたり4~8個つき、褐色、中肋部分はほとんどがわら色~緑色、卵形~披針形、長さ3~5㎜×幅1.5~2.5㎜、先は全縁、鋭形~ほぼ鋭形、しばしば小穂の上部に竜骨がある(carinate)。刺針状花被片は4(~5)本、ときに欠け、褐色~わら色、細い~丈夫で、痩果よりはるかに短い~柱基と同等、稀に痩果の2倍までの長さになる。雄しべは3本。葯は暗黄色~わら色、長さ1.5~2.2㎜。花柱は2分岐、ごくまれに3分岐もある。痩果は宿存性ではなく、わら色または暗褐色、両凸形、角(かど)が不明瞭、倒卵形~倒梨形、長さ1.1~2㎜×幅1~1.5㎜、先は丸く、首(痩果と柱基の間のくびれ)がないかほとんど短く(~長く)、30倍で見て平滑、ときに0倍で見える細かいしわ状になり、20倍で観察すると、縦列に20本以上のうねがある。柱基は褐色~帯白色、ピラミッド形~乳頭状の突起があり、高さは幅と同じ程度~幅の2倍まで、長さ0.3~0.7㎜×幅0.35~0.7㎜。2n=16, 17, 36。果期は夏(Flora of North America)。
21-1 Eleocharis palustris subsp. palustris クロヌマハリイ 黒沼針藺 狭義
synonym Eleocharis palustris (L.) Roem. et Schult. var. major Sonder
synonym Eleocharis palustris subsp. intersita (Zinserl.) Tzvelevsynonym Eleocharis palustris (L.) Roem. et Schult. var. kurilensis A.E.Kozhevn.
日本(北海道、東北地方)、中国、モンゴル、ネパール、ロシア、カザフスタン、アフガニスタン、南西アジア、ヨーロッパ、北アフリカ、大西洋諸島、北アメリカ、グリーンランド、アイスランドに分布。中国名は沼泽荸荠 zhao ze bi qi 。英名はcommon spike-rush , creeping spike-rush , marsh spike-rush。渓谷に浅い水際、湿った草地、運河の水中に生える。多年草。根茎は這う。稈は少数、叢生し、高さ10~100㎝×太さ2~3㎜、少数のうねと縦の溝があり、いぼがある。葉鞘は1~2個、基部は血赤紫色、筒形、長さ3~7㎝、口部はわずかに斜めの切形。小穂は長円形~狭長円形~楕円形、長さ0.6~2.5㎝×幅3~5㎜、多数の花があり、先は鈍円形。基部の2苞穎は空。最も基部の苞穎は小穂の基部の1/2又はそれ以上を抱く。稔性の苞穎は中間に狭い緑色の帯と両側に暗血赤色をもち、卵形~卵状披針形、長さ3~4㎜×幅1~1.5㎜、膜質、縁は広く透明、先は鈍形。花被の剛毛(花被片)は4~6本、小堅果の長さより短~わずかに長、わずかに曲がり、外側に広がり、密に後ろ向きの小刺がある。柱頭は2個。小堅果は初め帯黄色、その後、帯褐色になり、倒卵形~広倒卵形~球状卵形、長さ1.2~1.4㎜×幅0.8~1㎜、不等の両凸面形、平滑又はまれにわずかに著しい網目がある。宿存する柱基(style base)は卵状長円形~長円状円錐形、長さが幅よりかなり長く、小堅果の長さの1/2~3/5倍、幅は約1/2、スポンジ状、先は鈍形~円形。花期と果期は6~7月。2n=15, 16(Flora of China)。
Flora of North Americaではアメリカに分布するものを4 Variantに分類している。Variant aはEleocharis smalliiに相当するもの。Variant bはVariant aに類似し稈が細いもの。Variant cはEleocharis palustris var. vigensであり、Variant d はその他の大部分を構成し、そのほとんどはEleocharis palustris subsp. palustrisである。 Variant d は、上部の葉鞘がしばしば裂けたり崩壊し、先の縁は赤みを帯びず、先は通常広い鈍形。 北米ではVariant d はほとんどが亜寒帯および寒帯に分布し、ニューファンドランドおよびラブラドールからアラスカ、南はニューヨーク、ウィスコンシン、ミネソタ、アイオワ、ニューメキシコ、カリフォルニアまで知られている。Variant dのいくつかは柱基が顕著に狭く、幅よりはるかに高く(2倍まで)、幅の狭い痩果はたった幅0.9~1.1㎜であり、分類学的に認識される価値がある。それらは西はマニトバ州からブリティッシュコロンビア州、アラスカ州まで、南はコロラド州、ユタ州、カリフォルニア州まで知られている。アラスカおよびユーコン準州の南からカリフォルニアにかけて西部産地に散在するVariant d の標本は、花鱗片が長さ4~5㎜で、痩果が長さ1.6~1.9㎜で、Variant c と非常によく似る。
21-2 Eleocharis palustris subsp. iranica Kukkonen
インド、パキスタン、アフガニスタン、エジプト、イラン、イラク、パレスチナ、トルコに分布。
21-3 Eleocharis palustris var. vigens L.H.Bailey
北アメリカ(アラスカ、カナダ、USA)、グリーンランドに分布。Variant cとされていたもの。水深1mまでの水域に生える。
痩果は長さ1.6~2㎜。稈の気孔は直径52~65μm。花の鱗片は大部分が長さ3.5~4.5㎜。大きな痩果と気孔があるため、2n=36の四倍体であると推定されている(S.-O. Strandhede 1967; L. J. Harms 1968)。
21-4 Eleocharis palustris subsp. waltersii Bureš & Danihelka
synonym Eleocharis palustris subsp. vulgaris Waltersヨーロッパに広く分布。2n=38
22 Eleocharis parvinux Ohwi コツブヌマハリイ 小粒沼針藺
synonym Eleocharis palustris (L.) Roem. et Schult. var. parvinux (Ohwi) T.Koyama
synonym Eleocharis palustris (L.) Roem. et Schult. subsp. parvinux (Ohwi) T.Koyama
日本固有種(関東地方)。低地の池沼畔、湿った草地に生える。多年草。匍匐枝がある。稈は円柱形。稈頂に小穂を1 個つける。小穂は長楕円形~広披針形。痩果は倒卵形、両凸面形。柱基は三角形、果実の幅の1/以下。刺針状花被片は4本、逆向きのザラつきがあり、長さは痩果の2~3倍。雄しべは3個。柱頭は2岐。花期は5~7月頃。
23 Eleocharis parvula (Roem. et Schult.) Link ex Bluff, Nees et Schauer チャボイ 矮鶏藺
日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国(海南島)、ロシア、カザフスタン、ウズベキスタン、インドネシア、ベトナム、ヨーロッパ、南北アメリカ、中央アメリカ、キューバ原産。中国名は矮秆荸荠 ai gan bi qi 。英名はdwarf hair-grass, dwarf spike-rush, little-head spike-rush, small spike-rush。塩性湿地に群生する。
1年草、高さ3~7㎝。茎は円筒形、隔壁がなく、束生する。匐枝の先に長さ2~3㎜の披針形~鉤形の塊茎を秋につける。葉は茎と同長かやや短く、円筒形で先が次第に細くなり、先端が尖る。小穂は茎頂に1個つける。小穂は長さ2~3㎜の惰円形~長卵形、茎より幅が明らかに太く、小花3個をもつ。鱗片は長さ約1.8㎜、膜質、中肋は緑色、先端に達しない。柱基は特に膨らまず、痩果との間は漸次移行し、膨らまない。刺針状花被片は4個、痩果とほぼ同長、小逆刺がある。痩果は3稜形、長さ約1㎜、藁色。葯は長さ約1㎜、黄色。2n=8,10。花期は6~10月。
24 Eleocharis pellucida J. Presl et C. Presl エレオカリス・ペルルキダ
中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、遼寧省、陝西省、山西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、インド、ブータン、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマー、フィリピン、マレーシア、インドネシア原産(Kew science)。中国名は透明鳞荸荠 tou ming lin bi qi。標高200~1700mの池縁、浅い池、水田、浅い水縁、湖岸、湿地に生える。Kewscienceでは日本、朝鮮を分布域に含めていない。YListでは学名はオオハリイ Eleocharis congesta D.Don var. congestaのsynonymとしている。1年草または短命の多年草。根茎は存在しない。稈は株立~密に株立になり、高さ5~30㎝またはそれ以上、太さ0.5~1㎜、柔らかく、縦に溝がある。葉鞘は2個つき、基部は±紫色(薄赤紫色)、先は緑色、筒状、長さ1.5~4㎝、口部は切形、先には三角状の歯がある。花茎の先に1個だけの小穂をつけ、時に小穂の基部に不定芽をつける。小穂は狭卵形、長円状卵形、円筒形、またはまれに球状卵形、長さ(3~)5~10㎜×幅1.5~3㎜、数個~多数の花をつける。最下の苞穎(鱗片)は空で抱茎状、小穂の基部全体を抱く。稔性の苞穎(鱗片)は淡さび色、±緩く螺旋状に覆瓦状につき、長円形~ほぼ長円形、約・長さ2㎜×幅1㎜、中脈は帯緑色、縁は透明、先は鈍形~円形。刺針状花被片は6本、さび色(白緑色で、茶色にならず、)、長さは不揃いで、小堅果の長さの1.5倍、またはわずかに短く、密または緩く(まばらに)後ろ向きの小刺(逆刺)がある。柱頭は3岐。小堅果は帯黄色~オリーブ色、卵形~倒卵形、長さ0.8~1.2㎜×幅0.5~0.7(1)㎜、3稜形、側面は凸形、角(かど)に狭い肋がある。宿存する柱基はピラミッド形~円錐形、長さは小堅果の1/4~1/2、幅は小堅果の約1/2で、ときに海綿状に厚くなり(横から見ると三角形の高さの方が幅より少し高い程度)、先は尖鋭形。雄しべ1、2個。柱頭は3岐。花期と果期は3~11月。
24-1 Eleocharis pellucida var. pellucida
synonym Eleocharis pellucida f. elata H.Hara
synonym Eleocharis japonica Boeckeler
中国( 安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、遼寧省、陝西省、山西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、インド、スリランカ、ブータン、バングラデシュ、ミャンマー、フィリピン、マレーシア、インドネシアに分布。中国名は透明鳞荸荠 tou ming lin bi qi。標高300~1000mの水田、池の縁、湖畔に生える。日本、朝鮮、ロシアは分布域から除かれた。
稈は高さ5~30㎝、太さ0.5~1㎜。 小穂は狭い卵形、長楕円形、またはまれに球形、長さ(3~)5~8㎜。刺針状花被片は小堅果の長さの約1.5倍、後向きの小刺が密にある。柱頭は3岐。小堅果は倒卵形、約・長さ1.2㎜×幅0.7㎜、宿存する柱基はピラミッド形、長さは小堅果の約1/4、海綿状に厚くならず、先は漸尖する。花期と果期は4~11月。
24-2 Eleocharis pellucida var. sanguinolenta Tang & F.T.Wang
中国(貴州省)に分布。中国名は血红穗荸荠 xue hong sui bi qi。浅い水域に生える。小穂は血赤色、円筒形、長さ8~10mm。小堅果は幅約0.5㎜。宿存する柱基は円錐形、長さは小堅果の長さ約の1/2。
24-3 Eleocharis pellucida var. spongiosa Tang & F.T.Wang
中国(江西省平郷市)に分布。中国名は海绵基荸荠 hai mian ji bi qi。標高200~300mの浅い池に生える。小穂は球状卵形、長さ約3㎜。小堅果は約・長さ0.9㎜×幅0.7㎜。宿存する柱基はピラミッド形、長さは小堅果の約1/3、海綿状に厚くなる。花期と果期は9~11月。
24-4 Eleocharis pellucida var. japonica (Miquel) Tang & F. T. Wang ハリイ⇒Eleocharis congesta var. japonica
synonym Eleocharis japonica Miquelsynonym Scirpus japonicus (Miquel) Franchet & Savatier
日本、朝鮮、中国(安徽省、福建省、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、四川省、雲南省、浙江省)、タイに分布。中国名は稻田荸荠 dao tian bi qi。標高200~1700mの水田、浅い水辺に生える。KewscienceではEleocharis congesta var. japonicaに移された。
稈は通常、非常に短く、毛状。刺針状花被片は小堅果より短く、緩く後向きの小刺がある。小堅果は長さ0.8~0.9㎜。宿存する柱基は通常±細長い。花期と果期は3~10月(Flora of China)。
25 Eleocharis retroflexa (Poir.) Urb. カヤツリマツバイ 蚊帳釣松葉藺 広義
日本(沖縄)、中国、インド、ネパール、スリランカ、カンボジア、ミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、パプアニューギニア、太平洋諸島、オーストラリア、アフリカ、熱帯アメリカ原産。中国名は贝壳叶荸荠 bei ke ye bi qi 。野原の湿った場所に生える。1年草。根はひげ根。根茎と匍匐枝は無い。稈はしばしば反曲し、叢生し、高さ2~16㎝、まれにそれ以上、糸状、柔らかく、5又はまれに4角(かど)がある。葉鞘は1~2小、短赤色、筒形、長さ2~12㎜、最も基部の鞘は葉身が無い。茎葉の鞘は普通、先に苞穎に似た葉身をもつ。小穂は紫赤色、卵形、約長さ4㎜×幅2㎜、わずかに扁平、少数の花をもち、ときに増殖する。最も基部の苞穎は空、類楕円形、小穂の基部全体を抱く。稔性の苞穎は緑色、広卵形、長さ2.8~3㎜×幅1.8~2㎜、草質、中央に竜骨をもち、縁は膜質、縁は透明、先は鋭形~鈍形。花被の剛毛は6本、小堅果の長さにほぼ等しく、外側の列の剛毛は小堅果より短く、後ろ向きの小刺がある。柱頭は3個。小堅果は帯黄色、広倒卵形、約・長さ1.5×幅1㎜、3面があり、角(かど)は明瞭な肋骨があり、網目~深い穴の網目があり、等直径の表皮細胞をもち、先は広切形でくびれない。宿存する柱基はピラミッド状尖鋭形、基部は小堅果の幅と同じ~わずかに狭い。花期と果期は7~11月。
25-1 Eleocharis retroflexa (Poir.) Urb. subsp. chaetaria (Roem. et Schult.) T.Koyama カヤツリマツバイ
synonym Eleocharis chaetaria Roem. et Schult.石垣島に記録がある。ハリイによく似た熱帯性の稀種。穂はごく少数の花よりなる。柱基は短く果実にめり込む独特な形態であり、痩果には明瞭な隆起がある。
26 Eleocharis tenuis (Willd.) Schult. イトハリイ 糸針藺
北アメリカ(カナダ、USA)原産。英名はslender spikerush , dog's hair
多年草、マットを形成する。根茎は明瞭、太さ0.4~2㎜、柔らかいから硬い、皮質は持続、節間は長さ2~10㎜、鱗片は持続または繊維まで腐敗、長さ5~10 ㎜、紙質、細かい繊維から粗い繊維状。 稈は円柱形または通常 4~5(~6)の角(かど)を持ち、しばしば溝状になり、長さ5~90cm×0.2~0.5(~0.8)mm、硬い~柔らかい。葉:上部の葉鞘は宿存し、裂けず、下部は暗赤色(または黄褐色)、上部は緑色またはわら色または赤色、膜質、先はしばしば赤みを帯び、鈍形~鋭形、しばしば角質になり(callose)、しばしば長さ0.2(~0.9)㎜までの歯がある。小穂は卵形、長さ3~6㎜×幅1.5~2㎜、先は鈍形~鋭形。下部の鱗片は茎を抱き、先は全縁、下部に近い鱗片は花をもつ。花をもつ鱗片は果時に密着し、20~60個つき、小軸1㎜あたり5~6個あり、褐色~暗褐色、中肋部分はしばしばより淡色、卵形、長さ1.5~2.5㎜×幅1㎜、先は円形(~鋭形)、全縁、まれに浅いノッチがあり、小穂の上部に竜骨がある(carinate)。 花:刺針状花被片はないか、ときに1~3本あり、わら色~淡褐色、細長く、痩果と同長、不明瞭な後ろ向きの小刺がある。雄しべは3本。 葯は褐色、長さ0.8~1.8㎜。花柱は3裂。痩果は鱗片とともに落ち、またはその前に落ち、レモンイエロー~暗黄色~褐色または緑色、倒梨形、3稜形、角(かど)が明瞭、ときに目立ち、長さ0.6~0.9㎜×幅0.45~0.7㎜、細かい~粗いしわと10~20倍で観察して通常ハチの巣状(格子状 cancellate)であり、各縦列に6~10(~14)本の鋭い水平のうねがある。柱基は褐色、ピラミッド形、高さは幅と同じまで、大きく陥没した短突起があり、しばしば未発達で、長さ0.05~0.3㎜×幅0.25~0.4㎜。3変種がある。
26-1 Eleocharis tenuis (Willdenow) Schultes var. tenuis
北アメリカ(カナダ、USA)に分布。標高10~1100mの淡水の海岸、湿った森、沼地、溝に生える。根茎は太さ0.4~1㎜、柔らかい~硬く、節間は長さ(2~)5~10㎜、鱗片は繊維にまで腐ることはほとんどない。稈は幅0.35㎜まで。葉:上部の葉鞘は先端の歯が有または無、歯は長さ0.2㎜まで。花:刺針状花被片はときにある。痩果はレモンイエロー~わら色または黄緑色で、細かいしわがあり、通常は10~20倍で観察して細かい格子状になり(cancellate)、各垂直列に8~12個の(しばしば不明瞭な)窪みがある。柱基は高さと幅が同じか、ときに大きく窪む。2n=24。果期は夏。
26-2 Eleocharis tenuis var. pseudoptera (Weath. ex Svenson) Svenson
北アメリカ(カナダ、USA)に分布。標高10~300mの湿った、淡水のしばしば石灰質の牧草地、湿地、起伏のある場所、森、草原、蛇紋岩の不毛地帯、溝に生える。根茎は太さ1~2㎜、節間は長さ5~10㎜、鱗片はときに繊維状に腐敗する。稈は鋭い4~(5~6)角(かど)があり、しばしば深く溝状になり、そのため幅0.8㎜以下の翼がある。葉:上部の葉鞘は通常先に長さ0.4~0.6(~0.9)の丈夫な歯を持つ。痩果は通常、レモンイエロー~暗黄色、ほぼ正3稜形で、通常は10倍で観察するとほぼ格子状であり、各垂直列に10~14個の不明瞭~明瞭な窪みがある。柱基はほとんどが大きく凹んでおり、幅が広いよりもはるかに低くなる。2n=38, 39。果期は南部では春(3~4月)、北部では初夏(6~7月)。
26-3 Eleocharis tenuis var. verrucosa (Svenson) Svenson
USA中部~東部に分布。標高10~600mの淡水、しばしば石灰質の海岸、湿った森、溝に生える。
根茎は太さ(1~)1.5~2㎜、硬く、長い節間は長さ2㎜、鱗片は繊維状にまで腐敗する。稈は鈍角~平滑、深い溝状になることはほとんどなく、幅は0.5㎜以下。葉:上部の葉鞘には歯がないか、まれに長さ0.2㎜までの細い先端の歯がある。花:刺針状花被片は無い。痩果は褐色~暗緑色または黄色、10倍で観察すると粗い(~細かい)しわがあり、通常 10~20倍では粗い格子状に見え、各垂直列に6~10個の明瞭な窪みがある。柱基は大きく陥没し、まれにピラミッド状になる。2n=20。果期は夏。
27 Eleocharis tetraquetra Nees マシカクイ 真四角藺
日本(本州の中国地方、四国、九州、琉球)、中国、台湾、ロシア、インド、ブータン、ネパール、スリランカ、アフガニスタン、パキスタン、タイ、インドネシア、フィリピン、パプアニューギニア、オーストラリア北部原産。中国名は龙师草 long shi cao 。池や溝の縁、川岸に生える。
多年草。匍匐枝は短いか又は無い。稈は叢生、高さ25~90(~100)㎝×太さ約1㎜、鋭い4角(かど)があり、無毛。葉鞘は2~3個、筒形、長さ7~10㎝、基部は紫赤色、先部は灰緑色、口部は切形、先は短い三角形で微突形。小穂は褐緑色、長円状卵形、±狭卵形、又は長円形、長さ7~20㎝×幅3~5㎜、わずかに斜め、多数の花がつき、先は鈍形~鋭形。基部の3個の苞穎は空、最も基部の苞穎は小穂の基部全体を抱き、稔性の苞穎は中間が緑色、両側が淡さび色、きつく覆瓦状につき、長円形で舟形、長さ3~4㎜×幅1~1.5㎜、紙質、縁は狭く透明、先は鈍形。花被の剛毛は6本、帯赤色~帯褐色、小堅果の長さ(柱基を含め)と同長、疎~密に後ろ向きの小刺がある。柱頭は3個。小堅果は熟すと淡褐色、短く太い柄があり、倒卵形~広倒卵形、長さ約1.2㎜×幅1.5㎜、扁平な3面がある。宿存する柱基は側面が扁平、デルタ形小堅果の長さの1/2~2/3、幅約3/4、表面にはときにパピラがあり(mammillate)、先は尖鋭形。花期と果期は9~11月。
28 Eleocharis tsurumachii Ohwi カドハリイ 角針藺
synonym Eleocharis tetraquetra Nees var. tsurumachii (Ohwi) Ohwi
synonym Eleocharis tetraquetra Nees f. tsurumachii (Ohwi) T.Koyama
日本固有種(霞ヶ浦周辺の旧玉造町、旧桜川村)稈は光沢があり柔らかい。鞘は上部近くまで赤色を呈する。鱗片は先端が円形。柱基は果体の半長。刺針状花被片の小刺は逆向き。越冬芽は10月上旬までに地下走出枝の節に1~5個が圧着~やや開出して形成される。越冬芽は卵形~長卵形、鋭尖頭、長さ3~7㎜×幅1.5~ 2.0㎜、越冬芽とほぼ同長の鱗片に包まれる。
マシカクイの越冬芽は地下走出枝の節に1個がほぼ圧着し、線形で鋭頭、長さ10~20㎜×幅0.3~1.0㎜、基部の鱗片は越冬芽の半長~3/4(小形の越冬芽では同長のことがある)。柱基の長さや越冬芽の違いによりシカクイとは別種とされる。
29 Eleocharis vivipara Link エレオカリス・ビビパラ
USA原産。英名はumbrella hairgrass, Viviparous spike-rush, sprouting spike-rush。別名はアンブレラプラント。標高0~80mの砂質および泥炭質の土壌、溝、池の縁、松平原および松ヤシの低木に隣接する浅瀬に生える。しばしば水生であり、E. microcarpa(small-fruited spikesedge) 、E. brittonii(Britton's spikerush)、E. baldwinii(slender spikerush)と混同される。水草として栽培されている。
多年草、水生または陸生、根茎が短く、密集した塊を形成し、しばしば、完全に無性生殖である。根茎はてい幹状、斜上し、節間と鱗片は密集した稈と鞘によって隠され、太さ0.5㎜。稈はしばしばアーチ状になり、しばしば匍匐茎になり、広楕円形、長さ(4~)7~38(~45)㎝×幅(0.1~)0.3~0.7㎜、柔らかい~硬い。 葉:丈夫の葉鞘は宿存性または崩壊性、帯黄色~淡褐色、ときにまだらまたは全体が赤褐色になり、膜質~紙質、先は鋭形~狭い鈍形。小穂は基部の小穂がなく、通常むかごをつけ(proliferous)、卵形~楕円形~線形または円柱形、長さ3.3~9.6㎜×幅1.2~2.3㎜、先は鋭形。下部の鱗片は空で、宿存し、抱茎状で、花の鱗片に似ている(通常はわずかに長く、中肋は広く緑色)。下部に近い鱗片は花をもつ。花をもつ鱗片は螺旋状に5~25個つき、小軸1㎜当たり4~8個あり、淡褐色、通常は斑点があり、縞模様またはまだらに赤褐色~紫色になり、中肋は緑色または緑色と赤褐色、楕円形~倒卵形、長さ1.8~2.7㎜×幅1~1.5㎜、膜質~紙質、中肋は明瞭~目立ち、先は円形~鈍形。刺針状花被片は5~6本、赤褐色 (近位は白であることが多い)、柱基より短~等しく、まれに長くなるり、長さ0.9~1.3(~2)㎜、小刺はまばらで、後ろ向き、鋭く尖る。雄しべは3本。葯は黄色、長さ0.8~1.8㎜。花柱は3裂。痩果は灰色または帯緑色、倒卵形または倒梨形、3稜形、角(かど)が非常に明瞭、長さ0.6~0.9㎜×幅0.55~0.8㎜、先は柱基の近くでくびれ、10~20倍で観察すると細かい蜂の巣状の網目があり、各面に20列以上の明瞭な大きな細胞がある。柱基は帯白色、灰色、褐色、または緑がかった黒色、ピラミッド形、3稜形、長さ0.2~0.5㎜×幅0.4~0.5㎜。果期は春~秋。
30 Eleocharis wichurae Boeck. シカクイ 四角藺
synonym Eleocharis tetraquetra Nees var. wichurae (Boeck.) Makino
日本全土、朝鮮、中国、シベリア原産。中国名は羽毛荸荠 yu mao bi qi 。低地の日当たりのよい湿地に生える。多年草、高さ30~60㎝。匍匐枝は短いか又は無。稈は密に叢生し、平滑、4角(かど)鋭い[4角の中の1角は稜の出っ張りが少ない]。葉鞘は1~2個、帯赤色~帯紫色、口部はごく斜めの切形。小穂は茎頂に1個だけつき、小穂は初め帯褐色で、淡緑色になり、卵形~狭卵形~長円形、長さ8~15㎜×幅3~5㎜[長さ1~2.5㎝の長楕円形]、わずかに斜め、多数の花があり、先は鋭形。基部の2個の苞穎は空、最も基部の苞穎は小穂の基部全体を抱き、稔性の苞穎は中間が淡緑色で、両側にさび色の条線があり、きつく螺旋状に覆瓦状につき、長円形~楕円形で舟形、長さ4~6㎜×幅2~2.5㎜、膜質、中脈は細く、不明瞭、縁は広く透明、先は鈍形~円形。花被の剛毛は6本、さび色、柱基を含めた果実の長さと同長、羽毛(plumose)は開出毛[下向きの小刺毛が密生する]。柱頭は3個。小堅果は淡オリーブ色、熟すと帯褐色に変わり、短い柄があり、倒卵形~広倒卵形、約長さ1.5㎜×幅2㎜[長さ1.5~2㎜]、鈍い3面があり、わずかに扁平、両面とも平滑、先はくびれない。宿存する花柱の基部(柱基)はよく膨れ、狭卵形、長さと幅が小堅果と同じ又はほぼ同じで、側部は扁平、密にパピラがあり(mammillate)、先は鋭形~鈍形。花期と果期は7~9月[7~10月]。[ ]内は日本の参考の数値
30-1 Eleocharis wichurae Boeck. f. petasata (Maxim.) H.Hara ミツカドシカクイ 三つ角四角藺
synonym Eleocharis petasata (Maxim.) Zinserl.北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、ロシアに分布。湿地に生える。
多年草、高さ30~60㎝。短い匍匐枝を出し、株は叢生する。茎は断面が鋭三角形。茎頂に1個の小穂をつけ、小穂は長さ8~17㎜。鱗片は長さ3~4㎜、先端が円頭。痩果は長さが1.2~1.5㎜。刺針状花被片は長さが果実の約1.5倍、下向きの小刺毛が密生する。花期は7~10月。
30-2 Eleocharis wichurae Boeck. f. teres (H.Hara) Ohwi イヌシカクイ 犬四角藺
本州、九州、沖縄に分布。日当たりのよい湿地、水田などに生える。シカクイに似るが、匍匐枝はほとんど生じない。茎は円柱形、明瞭な稜はない。鱗片は鈍頭~やや鋭頭、シカクイよりやや幅が広い。刺針状花被片はシカクイよりも短い。花期は7~9月。
30-3 Eleocharis wichurae Boeck. f. vivipara Y.Ueno コモチシカクイ 子持四角藺
茎の上で小穂中の種子の一部が発芽し、1~数個の新苗をつける(芽生する)もの。30-4 Eleocharis wichurae Boeck. var. liukiuensis (Makino) Ohwi オキナワイヌシカクイ 沖縄犬四角藺
別名はリュウキュウハリイ31 Eleocharis yokoscensis (Franch. et Sav.) Tang et F.T.Wang マツバイ 松葉藺
synonym Eleocharis acicularis (L.) Roem. et Schult. subsp. yokoscensis (Franch. et Sav.) T.V.Egorova
synonym Scirpus yokoscensis Franch. & Sav.
synonym Eleocharis acicularis (L.) Roem. et Schult. var. longiseta Svenson
synonym Eleocharis acicularis (L.) Roem. et Schult. f. longiseta (Svenson) T.Koyama
synonym Eleocharis svensonii Zinserl.日本全土、朝鮮、中国、台湾、モンゴル、ロシア(極東)、マレーシア、ベトナム、フィリピン、インドネシア原産。中国名は牛毛毡 niu mao zhan 。水田、湿地に生える。
1年草、高さ3~8㎝。細い根茎があり、叢生し、群生する。茎は細い糸状で、1個の小穂をつける。葉は退化し、鞘となり、長さ0.5~1.5㎝。小穂は長さ2~4㎜の狭卵形、3~4個程度の小花からなる。鱗片は円頭、中肋は緑色。痩果は長さ約1㎜、幅0.4~0.5㎜の長卵形、表面に格子状紋があり、縦縞がやや隆起する。柱基はややつぶれた三角錐状、柱頭は3分岐。刺針状花被片は2~4個つき、小逆刺があり、長さは痩果の1.5~2倍。花期は7~9月。
32 ハイブリッド
(1) Eleocharis x choseiensis Yashiro コシカクイ
シカクイ(E. wichurai)とオオハリイ(E. congesta f. dolichochaeta)の交雑種
(2) Eleocharis x myogiensis Yashiro ミョウギノハリイ
カドハリイ( Eleocharis tsurumachii) と ミツカドシカクイ(E. petasata f. petasata)の推定交雑種
(3) Eleocharis x naritaensis Yashiro コセイタカハリイ
セイタカハリイ(Eleocharidem attenuata)×ハリイ(E. congesta var. japonica) の交雑種
(4) Eleocharis x quaesita Kitag. キタヌマハリイ
synonym Eleocharis palustris (L.) Roem. et Schult. var. quaesita (Kitag.) T.Koyama
ヌマハリイとクロヌマハリイ の交雑種。(5) Eleocharis x subangulata T.Koyama オキナワハリイ
ハリイとマシカクイの交雑種
(6) Eleocharis x yezoensis H.Hara ヒメシカクイ
ハリイとシカクイの交雑種
(7) Eleocharis congesta D.Don var. japonica (Miq.) H.Hara x var. thermaris (Hulten) T.Koyama カズサハリイ
参考
1) Flora of ChinaEleocharis
Eleocharis
Eleocharis
Eleocharis
Two New Hybrids of Eleocharis (Cyperaceae) from Chiba Katsuhiro Yashiro
セイタカハリイ、コシカクイ
スジヌマハリイ
カドハリイの越冬芽の形態と分類学的ノート
シカクイの芽生品(上野雄規)
小山鐡夫:ハリイ-特にその変異と類縁について