ハンノキ 榛の木

mark

Flora of Mikawa

カバノキ科 Betulaceae ハンノキ属

別 名 ハリノキ
中国名 日本桤木 ri ben qi mu
英 名 Japanese alder
学 名 Alnus japonica (Thunb.) Steud.
ハンノキの芽
ハンノキ開花前の雄花芽
ハンノキ開花
ハンノキ雌花序
ハンノキ果穂
ハンノキの幹
ハンノキ
ハンノキの葉表
ハンノキの葉裏
ハンノキ果実
花 期 3~4月
果 期 10月
高 さ 10~20m
生活型 落葉高木
生育場所 低湿地、湿った林内、林縁
分 布 在来種 日本全国、朝鮮、台湾、中国、ロシア
撮 影 幸田町  10.1.15
乾いた場所に生える同属のオオバヤシャブシに対し、これは低湿地や湿原などに生える。三ヶ根山付近では山林内の湿った場所などに点在する。
 幹は紫褐色~灰褐色、不規則に裂けて剥がれる。葉は互生し、葉柄が長いのが特徴で、葉身は卵状長楕円形、鋭尖頭、細鋸歯。葉の基部は広いくさび形。葉脈がはっきり見え、主脈は裏面に隆起する。側脈は9~11対。雌雄同株。冬芽の雄花序は紫褐色を帯び、長さ4~7㎝と長く、枝先に2~5個、垂れ下がる。開花すると黄色の葯が見え、黄色っぽくなる。雌花序は長さ3~4㎜と小さく、雄花序より下部につく。果穂は長さ1.5~2㎝の卵状惰円形。果実は長さ3~3.5㎜の堅果で不明瞭な翼がある。
 サクラバハンノキは葉身が長く、網状脈が深く、樹皮がなめらか。

ハンノキ属

  family Betulaceae - genus Alnus

 高木又は低木、落葉。冬芽は柄があり、芽鱗は2(又は3個)、又は無柄で芽鱗が重なる。葉は普通、鋸歯縁又は歯状縁、まれに、切れ込むか又は全縁。雄花序は長くなり、垂れ下がり、円筒形、多数の重なった苞をもち、各苞は(3~)4(~5)個の小苞と花が3個、従属する。萼は4裂する。雄しべは(1~)4本。葯は2室、半葯は合着し、先は無毛。雌花序は、総状花序又は円錐花序に1又は2個~多数つき、卵形~楕円形、円錐形。苞は多数、重なり、木質になり宿存し、先は5裂し、各苞は2個の花を従属する。雌花序は小堅果の集合した果穂になる。小堅果は各苞腋に2個つき、扁平で、膜質又は紙質の翼をもつ。花期は主に春、Alnus formosana や A. nepalensis は秋。3又はそれ以上の亜属に分けられ、しばしば属として扱われる。
 世界に約40種があり、バングラデシュ、ブータン、中国、インド、日本、朝鮮、ネパール、ヨーロッパ、南北アメリカなどに分布する。

ハンノキ属の主な種と園芸品種

1 Alnus alnobetula (Ehrh.) K.Koch
  synonym Alnus ovata (Schrank) Loddiges

  synonym Alnus viridis (Chaix) de Candolle

 北半球の温帯~極地に広く分布。
 低木、広がり~小型、高さ10mまで。樹皮は平滑、皮目が散在し、明瞭~不明瞭、小さく、ほとんど広張らない。冬芽はほぼ無柄、卵形、先は尖鋭形。柄は通常1㎜を超えない。芽鱗は4~6個、不等長、覆瓦状。葉身は広~狭卵形または楕円形、長さ3~11㎝×幅3~8㎝、基部は円形、鈍形、または楔形、ときにほぼ心形、縁は小鋸歯~粗い重鋸歯があり、先は鋭形~円形、下面は無毛~綿毛があり、薄く~厚く樹脂でコーティングされる。花序:雄の尾状花序が1個または2~4個束生する。開花前の成長期の後半に形成され、冬の間に露出する。雌の尾状花序は1個または2~10個が束生し、開花前の季節に形成され、冬の間は蕾に囲まれ、春には新しい芽が露出する。春に新たな成長とともに開花する。果序は卵形~楕円形、またはほぼ円筒形。花序柄は比較的長くて細い。翼果は楕円形~倒卵形、翼は果体より幅が広く、膜質。
1-1 Alnus alnobetula subsp. sinuata (Regel) Raus

 カナダ、アラスカ、USAの北西部に分布。英名はSitka alder , mountain alder。標高0~2500mの砂利や岩の多い川岸、湖岸、海岸沿い、湿った岩の斜面、露頭、開けた針葉樹林内に生える。
 低木、広がり、高さ5(~10)mまで。樹皮は明るい灰色~赤褐色、皮目は目立たない。葉身は薄緑色または黄緑色、狭卵形~広卵形、長さ4~10㎝×幅3~8㎝、薄い紙質、基部は円形~心形、縁は平らで、鋭くて粗い重鋸歯があり、先は尖鋭形、下面は無毛~まばらに毛があり、軽くから中程度に樹脂で覆われる。花序: 雄の尾状花序は長さ2.5~13㎝。果序は長さ1.5~2.5㎝×幅0.8~1.3㎝。花序柄は長さ1~3cm。2n=28。花期は春。

1-2 Alnus alnobetula subsp. crispa (Aiton) Raus キョクホクミヤマハンノキ

 USA東部、カナダ北部、アラスカ、グリーンランド南部に分布。英名はGreen alder , mountain alder , aulne vert , aulne crispé。標高0~2000mの小川、湖畔、海岸沿い、沼地や湿原地帯(muskeg)の縁辺、または砂地や砂利の斜面や平地に沿った場所に単独でまたは茂みの中に生える。
 低木、広がりまたはかなり小型で、高さ3(~4)mまで。 樹皮は灰褐色、皮目は淡色。葉身は暗緑色、広~狭い卵形または楕円形、長さ3.5~6(~10)×幅3~5(~7)cm、革質、基部は丸い、鈍形、または楔形、ときにほぼ心形、縁は小鋸歯または細かい鋸歯があり、先は鈍形~鋭形、下面は無毛~ビロード状、またはときに綿毛があり、中程度~厚く樹脂で覆われる。花序:雄の尾状花序長さ2.5~9㎝。果序は長さ1.2~2㎝×幅0.5~1.2㎝。花序柄は長さ1~5㎝。2n=28。花期は春。

1-3 Alnus alnobetula subsp. fruticosa (Ruprecht) Raus

 北アメリカ沿岸、隣接する亜寒帯アジアに分布。英名はSiberian alder。標高0~500mの岩や砂の海岸、川岸、湖畔、湿った開けた場所に生える。
 低木、広がり、高さ3(~6)mまで。樹皮は灰褐色、皮目は淡色。葉身は暗緑色、広卵形、長さ5~8(~10) ×幅3~6(~7) cm、基部は円形~ほぼ切形またはほぼ心形、縁は平らで鋭く密な重鋸歯があり、先は鋭形~短い尖鋭形。下面は無毛~まばらに毛があり、特に脈上にあり、中程度~厚く樹脂で覆われる。雄の尾状花序は長さ3.5~6 cm。果序は長さ1.2~2 ×幅0.5~1.2 cm。花序柄は長さ1~3cm。2n=28。花期は春。

2 Alnus cordata (Loisel.) Duby アルナス・コルダータ
 イタリア、アルバニア、フランス(コルシカ島)原産。英名はItalian alder。
 広葉樹、落葉高木、高さ9~15(20)m、樹冠は卵状円錐形、茎は角(かど)Iがあり、すぐに無毛になり、粘着性があり赤くなる。樹皮は光沢のある褐色。葉は互生し、単葉、広楕円形~円形、長さ5~12㎝、基部は心形~切形~くさび形、先がわずかに尖り、縁には不均一な鋭鋸歯(規則的に切れ込みと鋸歯)があり、上面は光沢のある緑色、下面はより淡色、葉柄は長さ2~3㎝。雄性の尾状花序は茎の先端に小さく、束生し、受粉時には長さ約5~8㎝。雌性の尾状花序は長さ2~3㎝、直立し、1個つく。成熟した種子の尾状花序(果穂)は木質、(円錐形)、卵形、長さ2.5~3cm×幅12~15㎜。
品種) 'Catkins'

3 Alnus fauriei H.Lev. et Vaniot ミヤマカワラハンノキ 深山河原榛の木

  synonym Alnus cylindrostachya (H.J.P.Winkl.) Makino
 日本固有種(本州の岩手県~岐阜県)。別名はオバルハンノキ。多雪地帯の山地のやや湿った場所に生える。
 落葉低木、高さ2~5m。幹は基部で曲がって直立し、直径8㎝以下と細く、叢生(株立ち)し、ときに十数本が株立ちする。樹皮は暗紫褐色で平滑、皮目が目立つ。当年枝は緑色、2年枝は暗紫色になり、無毛、小さな円い皮目が点在する。雄花序の冬芽は直立する。葉は互生し、葉柄は長さ0.6~2㎝。葉身は、単葉、長さ5~15㎝×幅4~13㎝、円形~広倒卵形、基部は広くさび形、先は切形~やや凹み、ごくまれに鋭形、縁は鋸歯があり、やや質が薄く上面は濃緑色で無毛、下面は淡緑色で、粘り、側脈は6~7対あって葉縁に達し、上面は凹み、下面に著しく隆起し、脈腋にはしばしば褐色の毛叢がある。雌雄同株。葉の展開前に開花する。雄花序は黄褐色、長さ1~1.8㎝の円柱形で、枝先に4~5個が次第に垂れ下がり長くなる。雌花序は赤色、雄花序の下に4~5個が小さく直立してつく。果穂は直立し、長楕円形、長さ2~3㎝×幅0.6~0.8㎝。花期は4~5月。

4 Alnus firma Siebold et Zucc. ヤシャブシ 夜叉五倍子
 日本固有種。本州(福島県~紀伊半島)、四国、九州に分布。英名はJapanese green alder。山林、丘陵に生え、尾根沿いに多い。
 落葉小高木、高さ2~7m。幹は灰褐色、横長の皮目があり、太くなると大きな割れ目がつく。葉は互生し、長さ4~10㎝、幅2~4.5㎝の狭卵形。葉脈がはっきりし、側脈は13~17対あり、縁は鋭い重鋸歯。先は尖り、基部は円形。葉裏の脈上に毛がある。葉柄は長さ7~12㎜。雌雄同株。葉の展開前に開花する。冬には枝先に細長い雄花序の冬芽がつき、その下に雌花序の冬芽や葉芽がつく。雄花序は無柄、1~5個つき、蕾のときは直立し、展開すると、長さ4~6㎝になり、やや曲がって垂れ下がる。雄花は苞に3個ずつつく。雌花序は小花柄があり、花柄が枝分かれして2個ずつつき、直立する。雌花序が1個のときも多く、まれに枝先に3~5個、固まってつくこともある。果穂(球果)は長さ1.5~2㎝の卵状広惰円形。果穂は花時にも黒褐色~暗褐色になって残り、果鱗の間に翼果が残っているものもある。果鱗は黒褐色、長さ5.5~6.5㎜、幅約5㎜の扇形。翼果(堅果)は長さ3.5~4㎜の楕円形、翼の幅は約1㎜、果実とほぼ同じ幅。花期は3~4月。果期は10~11月。

4-1 Alnus firma Siebold et Zucc. f. hirtella (Franch. et Sav.) H.Ohba ミヤマヤシャブシ 深山夜叉五倍子

  synonym Alnus firma Siebold et Zucc. var. hirtella Franch. et Sav.

 関東地方、中部地方に多い。葉や葉柄に毛の多い品種。

5 Alnus glutinosa (L.) Gaertn. ヨーロッパハンノキ
 ロシア、カザフスタン、ヨーロッパ、西アジア、コーカサス、北アフルカ原産。英名はalder , black alder , European alder。標高0~200mの川岸、湿った氾濫原、湿った窪地、湿地の境界に生える。北アメリカ、南アメリカに帰化。
 高木、高さ20mまで。幹はしばしば複数あり、樹冠は狭い。樹皮は暗褐色で平滑、年数が経つと色が濃くなり、浅い亀裂が入り、皮目は淡色、水平につく。 冬芽は柄があり、楕円形~倒卵形、長さ6~10㎜、先は鈍形、柄は長さ2~5㎜。目鱗は2~3個、外側の2個は等しく敷石状、通常は厚く樹脂でコーティングされている。葉身は倒卵形~ほぼ円形、長さ3~9㎝×幅3~8㎝、革質、基部は鈍形~広楔形、縁は平らで粗く、しばしば不規則な重鋸歯~歯状に近く、主歯は鋭形~鈍形または円形、先はしばしば微凹形(retuse)または心形、またはときに円形、下面は無毛~まばらに毛があり、しばしばより脈が多く、両面が樹脂で厚くコーティングされる。花序は開花期の前の季節に形成され、冬の間に露出される。雄の尾状花序(catkin)は1個または2~5個束生し、長さ4~13㎝。雌性の尾状花序は1個または2~5個の束生。花は春の新芽が成長する前に開花する。果序は卵形~ほぼ球形、長さ1.2~2.5㎝×幅1~1.5㎝。花序柄は長さ1~10(20)mm。翼果(samara)は倒卵形、翼は無く~狭くなり、厚いうねがある。2n=28。花期は早春。
品種) 'Aurea' , 'Folly Bottom Sunshine' , 'Greenwood' , 'Imperialis' , 'Laciniata' , 'Pyramidalis' , 'Razzmatazz' (v)

6 Alnus hirsuta (Spach) Turcz. ex Rupr. ケヤマハンノキ 毛山榛の木

  synonym Alnus hirsuta (Spach) Turcz. ex Rupr. f. sibirica (Spach) H.Ohba

  synonym Alnus tinctoria Sarg.
  synonym Alnus sibirica (Spach) Fisch. ex Kom.

  synonym Alnus hirsuta (Spach) Turcz. ex Rupr. var. tinctoria (Sarg.) Kudo ex Murai

  synonym Alnus hirsuta (Spach) Turcz ex Rupr. var. microphylla (Nakai) Tatew. f. glabrescens Tatew.

 日本()、朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、山東省)、ロシア原産。中国名は辽东桤木 liao dong qi mu 。英名はManchurian alder , Siberian alder。標高700~1500mの川岸沿いの温帯林に生える。
 高木、高さ20mまで。樹皮は灰褐色で平滑。小枝は暗灰色で角(かど)があり、若いときは密に灰色の毛があり、無毛になる。冬芽は柄があり、2個の鱗片があり、まばらに毛がある。葉柄は長さ1.5~5.5㎝、密に毛がある。葉身はほぼ円形、稀に広卵形、長さ4~9㎝×幅2.5~9㎝、下面は薄緑色または粉白になり、密または疎に褐色の小剛毛があり(hispidulous)、まれに無毛、ときに側脈の腋にひげが生え、上面は暗緑色、絨毛がまばらにあり、基部は円形または広楔形、稀に楔形またはほぼ心形、縁は波状鋸歯があり、先は円形、稀に鋭形、側脈は中脈の両側に5~10本ある。雌花序は総状花序に2~8個つき、ほぼ球形または長円形、長さ1~2㎝。花序柄は長さ2~3mm。苞は長さ3~4mm、木質、基部は楔形、先は円形、5裂する。小堅果は広卵形、長さ約3mm、紙質の翼がつき、幅は小堅果の約1/4。花期は5~7月。果期は7~8月。
 YListでは次の2変種に分類しているが、Kewscience、Flora of chinaでは変種を認めていない。
品種)  Prairie HorizonR

6-1 Alnus hirsuta (Spach) Turcz. ex Rupr. var. hirsuta ケヤマハンノキ 毛山榛の木

  synonym Alnus incana Willd. subsp. hirsuta (Spach) A. et D.Love

  synonym Alnus sibirica (Spach) Fisch. ex Kom. var. hirsuta (Spach) Koidz.

  synonym Alnus hirsuta (Spach) Turcz. ex Rupr. var. sibirica (Spach) C.K.Schneid.

6-2 Alnus hirsuta Turcz. var. sibirica (Spach) C.K.Schneid. ヤマハンノキ

 別名はマルバハンノキ,シベリアハンノキ

7 Alnus incana (L.) Moench セイヨウハンノキ 西洋榛の木
 ヨーロッパ、ロシア、コーカサス、トルコ、北アメリカ(カナダ、USA)原産。英名はgrey alder , speckled alder。
 高木および低木、高さ25mまで。樹冠が開く。樹皮は明るい灰色~暗灰色~帯赤色、または褐色で平滑、または古くなると不規則な板状に砕け、皮目が有または無か、目立つか、拡大するか拡大しない。 冬芽は無毛、楕円形、長さ4~7㎜、先は円形~ほぼ鋭形、柄は長さ1~3mm。芽鱗は2~3個、等長、敷石状、樹脂コーティングされる。葉身は狭卵形~楕円形、基部は楔形~狭円形、縁は重鋸歯があり、2次歯が明らかに大きく、先は鋭形~短い尖鋭形~鈍形。花序は開花前の季節に形成され、冬の間に露出する。春に新芽が生える前に開花する。果序は卵形~ほぼ円筒形。花序柄は比較的短く、丈夫。翼果は楕円形~倒卵形、翼は果体より狭く、形は不規則である。2亜種がある。
品種) 'Angustissima' , 'Aurea' , 'Laciniata' , 'Pendula' , 'Pinnatipartita' , 'Ramulis Coccineis'
7-1 Alnus incana subsp. incana
 ヨーロッパ原産。

7-2 Alnus incana subsp. kolaensis (N.I.Orlova) Á.Löve & D.Löve

 ヨーロッパ(フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、ロシア)原産。

7-3 Alnus incana subsp. rugosa (Du Roi) R.T.Clausen

 北アメリカ(カナダ、USA)原産。英名はSpeckled alder, tag alder, swamp alder。標高0~800mの川岸、湖岸、湿原、沼地、湿原の縁、湿地、道端などに生える。しばしば密集した藪を形成する。
 低木、開いて広がり、高さ9mまで。樹皮は暗灰色~赤褐色で平滑、皮目は帯白色、目立ち、水平につく。冬芽は小枝に平行になり、楕円形、長さ3~7㎝、先端は鋭形または鈍形、柄は長さ2~4㎝。 葉身は卵形~楕円形、長さ4~11㎝×幅3~8㎝、堅く、基部は楔形~狭く円形、縁は通常粗い重鋸歯が基部まであり、先は鋭形~短い尖鋭形~わずかに鈍形、下面はしばしば帯白色、無毛~まばらに毛があり、脈上はしばしばより密で、わずかにまたは目立たなく樹脂で覆われる。花序:雄の尾状花序は1個または2~4個束生し、長さ2~7㎝。雌の尾状花序は1個または2~6個が束生する。果序は卵形、長さ1~1.7㎝×幅0.8~1.2㎝。花序柄は長さ1~5㎝。2n=28。花期は春。

7-4 Alnus incana subsp. tenuifolia (Nutt.) Breitung

 北アメリカ(カナダ、USA)西部原産。英名はThinleaf alder, mountain alder。標高100~3000mの川岸、湖畔、湿原や牧草地の縁、沼地の縁、湿原地帯(muskegs)に生える。
 低木または高木、高さ12mまで。低木は斜上し、開き、広がる。高木は小さく、低木状。樹皮は明るい灰色~暗褐色、平滑、皮目は淡く、円形~楕円形。冬芽はほぼ散開し、楕円形、長さ4~7㎜、先は鈍形、柄は長さ1~3㎜。芽鱗は2個、等しく、敷石状。葉身は卵形~楕円形、長さ4~10㎝×幅2.5~8㎝、質が薄く、基部は広楔形~円形、縁は明瞭な重鋸歯~ほぼ円鋸歯状または小裂片状、歯は比較的鈍いかまたは丸く、先は鋭形~鈍形、下面は無毛~まばらに毛があり、わずかにまたは目立たなく樹脂でコーティングされている。花序: 雄の尾状花序は1個または3~5が束生し、長さ4~10㎝。雌の尾状花序は1個、または2~5個が束生する。果序は卵形、長さ1~2㎝×幅0.8~1.3㎝。花序柄は長さ1~5㎝。2n=28。花期は春。

8 Alnus inokumae Murai et Kusaka タニガワハンノキ 谷川榛の木

  synonym Alnus hirsuta (Spach) Fisch. form. inokumai (Murai et Kusaka) H. Ohba

  synonym Alnus tinctoria Sarg. var. microphylla Nakai

  synonym Alnus hirsuta (Spach) Turcz ex Rupr. var. microphylla (Nakai)Tatew.

  synonym Alnus hirsuta (Spach) Turcz ex Rupr. subsp. microphylla (Nakai) Sugim.

  synonym Alnus hirsuta (Spach) Turcz ex Rupr. f. microphylla (Nakai) H.Ohba

 北海道、本州中部地方以北に分布。別名はコバノヤマハンノキ。山地の河川敷、渓流沿いなどに生え、成長が早い。
 ケヤマハンノキに似るが、葉や果序が小さく、果鱗が小さく苞部の形が鋭形であり(参考4)、YListでは独立種としている。KwscienceやGBIFではケヤマハンノキ(Alnus hirsuta)のsynonymとしている。
 落葉高木。高さ15~20m。托葉がある。葉は互生、葉柄は長さ約19㎜、密に灰色の伏毛がある。葉身は小型、長さ68×幅63mm・以下、広卵形~卵状円形 、縁に欠刻および重鋸歯があり、歯先は鋭尖、基部は切形~円形、側脈は8~9対、先端の3~4対部は凹み、上面は暗緑色、側脈間に赤褐色の部位があり、無毛後有毛になり、しわが目立ち、下面は帯白色、絹毛状直軟毛があり、後に毛が密に綿毛状なる。雄花序は花が(1~)4(~5)個つき、長さ約7.8㎝×幅約8㎜。雌花序は2~3個束生し、長さ約6㎜×幅約3㎜、花は(1)2~4(5)個つく。果実が成熟期に達すると2個の種子を包んで、4個の小苞と1個の苞が合着して果鱗が形成され、小苞部は腹面に並んで先端だけが分離し、苞部は背面に合着して先端だけが分離する。タニガワハンノキは果実、果鱗が小さく、4裂した4小苞が鋭頭となるため、4小苞が鈍頭となるケヤマハンノキ、ヤマハンノキ、ヒロハハンノキ、ハンノキと区別できる。また苞部の先の三角形が他より明瞭に大きい。花期は3~4月、ケヤマハンノキより早い。

9 Alnus japonica (Thunb.) Steud. ハンノキ 榛の木
 日本全国、朝鮮、台湾、中国、ロシア原産。中国名は日本桤木 ri ben qi mu。英名はJapanese alder。別名はハリノキ。低湿地や湿原などに生える。
 落葉高木、高さ10~20m。幹は紫褐色~灰褐色、不規則に裂けて剥がれる。葉は互生し、葉柄が長いのが特徴で、葉身は卵状長楕円形、鋭尖頭、細鋸歯。葉の基部は広いくさび形。葉脈がはっきり見え、主脈は裏面に隆起する。側脈は9~11対。雌雄同株。冬芽の雄花序は紫褐色を帯び、長さ4~7㎝と長く、枝先に2~5個、垂れ下がる。開花すると黄色の葯が見え、黄色っぽくなる。雌花序は長さ3~4㎜と小さく、雄花序より下部につく。果穂は長さ1.5~2㎝の卵状惰円形。果実は長さ3~3.5㎜の堅果で不明瞭な翼がある。花期は3~4月。果期は10月。
【Flora of Chinaの解説】
 日本(琉球諸島を含む)、中国(安徽省、河北省、河南省、江蘇省、吉林省、遼寧省、山東省)、台湾、韓国、ロシア(極東)原産。標高800~1500mの温帯林、川岸、道端に生える。
 落葉高木、高さ20mまで。樹皮は灰褐色で平滑。枝は暗灰色または灰褐色、条線があり、無毛。小枝は褐色、無毛、または若いときは黄色の毛があり、ときに樹脂状の腺がある。冬芽は柄があり、2個の無毛の、うねのある鱗片ある。葉柄は長さ1~3㎝、まばらに樹脂腺と毛がある。葉身は矮性のシュートでは倒卵形または倒卵状楕円形、小枝では倒卵状披針形、長さ4~14㎝×幅2.5~4㎝、最初は下面にまばらに毛があり、無毛になり、ときに樹脂状の腺と側脈の腋にひげがあり、上面は無毛、基部は楔形であり、縁は離れた微細な鋸歯があり、先は微突形~鋭形または尖鋭形、側脈は中脈の両側に7~11本ある。雌花序は総状花序に2~5個つき、楕円形、長さ約2㎝×幅1~1.5㎝。花序柄は丈夫、長さ約1㎝。苞は長さ3~5㎜、木質、基部は楔形、先は円形、5裂する。小堅果は倒卵形、長さ2~3㎜、紙質の翼を持ち、幅は小堅果の幅の約1/4。花期は5~7月。果期は7~8月。
 以下の変種、品種はKewscienceでは認められていない。

9-1 Alnus japonica (Thunb.) Steud. f. arguta (Regel) H.Ohba エゾハンノキ 蝦夷榛の木

  synonym Alnus japonica (Thunb.) Steud. var. arguta (Regel) Callier
 北海道、本州(岩手県、長野県など)に分布。別名はヤチハンノキ。湿地に生える。
 葉がより大形で、長さ15cm×幅8cmになり、縁の鋸歯も目立つ。

9-2 Alnus japonica (Thunb.) Steud. f. koreana (Callier) H.Ohba ケハンノキ 毛榛の木

  synonym Alnus japonica Siebold et Zucc. var. rufa Nakai

  synonym Alnus japonica Siebold et Zucc. var. koreana Callier

9-3 Alnus japonica (Thunb.) Steud. var. formosana (Burkill) Callier タイワンハンノキ 台湾榛の木

  synonym Alnus formosana (Burkill) Makino
  synonym Alnus henryi C.K.Schneid.

10 Alnus mandshurica (Callier) Hand.-Mazz. マンシュウハンノキ 満州榛の木

  synonym Alnus alnobetula (Ehrh.) K.Koch subsp. mandshurica (Callier) Chery

  synonym Alnus fruticosa Ruprecht var. mandshurica Callier ex C. K. Schneider

 朝鮮、中国(黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル)、ロシア原産。中国名は东北桤木 dong bei qi mu。標高200~1900mの温帯林、川辺に生える。
 低木または高木、高さ10mまで。樹皮は暗灰色で平滑。小枝は灰褐色、無毛。冬芽は無柄、3~6個の芽鱗がある。葉柄は丈夫で、長さ0.5~2㎝、無毛またはまばらに毛があり、ときに樹脂状の腺がある。葉身は広卵形、卵形、楕円形、または広楕円形、長さ4~10㎝×幅 2.5~8㎝、下面の側脈腋のひげを除いて両面とも無毛、基部は円形またはほぼ心形、まれに広楔形または不均等、縁には密に細かい重鋸歯または 単鋸歯があり、先は鋭形、側脈は中脈の両側に7~13本ある。雌花序は総状花序に3~6個つき、長円形または球形、長さ1~2cm。花序柄は垂れ下がり、長さ0.5~2(~3)cm、細く、無毛またはまばらに毛がある。苞は長さ3~4 ㎜、木質、基部は楔形、先は円形、5裂する。小堅果は長さ約2㎜、膜質の翼を持ち、翼は小堅果の幅とほぼ同じ。花期は5~7月。果期は7~8月。

11 Alnus matsumurae Callier ヤハズハンノキ 矢筈榛の木
 日本固有種(本州中部地方~東北地方の日本海側)。山地帯上部~亜高山帯下部の崩壊地や沢沿いなどに生える。葉は倒心形、先が凹形で矢筈形。
 落葉高木。高さ 10~15 m、胸高直径 20~40㎝。樹皮は灰黒色で平滑、横長の皮目が多数ある。若枝は暗灰紫色、無毛、横長の皮目がある。葉は互生し、葉柄は長さ1~3㎝、無毛。葉身は先端が凹むんだ矢筈形、長さ5~10 ×幅3~9 cm、基部は広楔形、縁には不揃いの浅い重鋸歯があり、側脈は6~9対、上面で脈が凹み、下面に隆起し、上面は濃緑色、無毛または脈上にわずかに毛があり、下面は灰白色、脈上に軟毛がある。雌雄同株。葉の展開とほぼ同時に開花する。雄の尾状花序は枝先から垂れ下がる。雄花は花被をもち、苞の腋に3個ずつつき、雄しべは4個。雌花序は雄花序の下方に直立し、2~5個つく。雌花は苞の腋に2個ずつつき、風媒花、花被や雄しべを欠く。雌しべは2心皮があり、花柱は紅色で2裂する。果実は堅果、果錘(cone)=果穂は楕円形、長さ1.5~2㎝。果鱗は扇形、長さ4~5㎜。果実が熟しても果鱗は落ちない。1個の果錘に多数の小さな堅果がつく。堅果は扁平な広楕円形、長さ約 3 mm。頂部には花柱が残り、両側には幅0.5 mmほどの翼がつく。堅果は風散布される。花期は4~5月。

12 Alnus maximowiczii Callier ミヤマハンノキ 深山榛の木

  synonym Alnus viridis (Chaix) DC. subsp. maximowiczii (Callier) D. Love

  synonym Alnus alnobetula (Ehrh.) K.Koch subsp. maximowiczii (Callier) Chery

  synonym Alnus crispa (Aiton) Pursh subsp. maximowiczii (Callier) Hulten

  synonym Alnus crispa (Aiton) Pursh subsp. maximowiczii (Callier) Hulten f. grandifolia (Miyabe et Tatew.) Honda

  synonym Alnus vermicularis Nakai
  synonym Alnus hakkodensis Hayashi
 日本(北海道、本州の加賀白山以北、鳥取県の烏ヶ山)、朝鮮、ロシア原産。亜高山帯から高山帯に生える。
 落葉低木~小高木、高さ1~6m。痩せ地や厳しい環境では高さ1~1.5mの低木状になる。雪崩の多い斜面では弓なりに曲がった樹形になる。やや環境の良い場所では高さ5mを超える小高木となる。樹皮は暗灰色。葉は互生し、葉身は長さ5~10㎝、広卵形~卵円形、基部はやや浅い心形、先は尖り、縁には不揃いの細かな鋸歯があり、上面はほとんど無毛、下面は脈上と脈腋に毛があり、側脈は8~12対あり、下面に隆起する。雌雄同株。花は葉の展開と同時に開花する。雄花序は枝先に2~3個ずつ垂れ下がってつき、長さ4~5cm。雄花は濃褐紫色の苞に3個ずつつく。雌花序は小さく狭卵形、枝先の葉腋に数個ずつ、直立する。果穂は球果状、秋に熟すと隙間が開き、翼果が出て、風で散布される。翼果は小さく、周りに薄い翼がある。花期は5~7月。

12-1 Alnus maximowiczii Callier var. sachalinensis (Koidz.) Nemoto カラフトミヤマハンノキ 樺太深山榛の木

  synonym Alnus crispa (Aiton) Pursh subsp. maximowiczii (Callier) Hulten var. sachalinensis (Koidz.) H.Hara


13 Alnus nepalensis D.Don ネパールハンノキ
 中国(広西チワン族自治区、貴州省、四川省、西蔵省、雲南省)、インド、ブータン、ネパール、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、ベトナム原産。中国名は尼泊尔桤木 ni po er qi mu。標高200~2800mの川岸や村の周縁に生える。
 高木、高さ15mまで。樹皮は灰色または暗灰色、平滑。小枝は暗褐色、若いときはまばらに黄色の毛があり、無毛になる。冬芽は柄があり、無毛でうねのある鱗片が2個ある。葉柄は丈夫、長さ1~2.5㎝、無毛。 葉身は倒卵状披針形~倒卵状長円形~卵形または楕円形、長さ4~16㎝×幅2.5~10㎝、下面に密に樹脂腺があり、葉脈に沿って黄色の毛があり、側脈腋にひげがあり、上面は無毛、基部は楔形または広楔形、まれにほぼ円形、縁は全縁または離れた微細な鋸歯があり、先は急にまたは鋭形、まれに尖鋭形、側脈は中脈の両側に8~16本ある。雌花序は多数、円錐花序につき、楕円形、長さ2~2.2cm×幅7~8mm。花序柄は丈夫、長さ2~8 mm、無毛。 苞は長さ約4mm、木質、宿存し、基部は楔形、先は円形、5裂する。堅果は長円形、長さ約2㎜、膜質の翼を持ち、幅は堅果の幅の約1/2。花期は5~6月。果期は7~9月。2n=28, 56。

14 Alnus orientalis Decne アルナス・オリエンタリス
 トルコ、シリア、レバノン、キプロス、パレスチナ、イラン原産。英名はOriental Alder。大きな河川地域など水辺の近くに生える。
 短命の落葉高木、高さ8~15(20)m、ときに高さ50mになる。樹冠は狭い。大気汚染に耐性があり、他の多くのアルダーのように、その根で大気中の窒素を固定することができる。樹皮は帯灰色、縦に裂目がある。葉は単葉、卵形または狭い卵形、長さ3~12㎝×幅1~6㎝、通常は縁に鋸歯がある。尾状花序は褐色。雌雄同株。花は単性。花期は1~3月。
品種) Turx 94

15 Alnus pendula Matsum. ヒメヤシャブシ 姫叉五倍子

  synonym Alnus multinervis (Regel) Callier
 日本(北海道、本州、四国)、朝鮮原産。別名はハゲシバリ。山林、丘陵に生える。
 落葉小高木、高さ2~7m。樹皮は黒褐色で、丸~横長の皮目が目立つ。葉は互生し、長さ5~10㎝、幅2~4㎝の狭卵形~披針形形。葉脈がはっきりし、側脈は20~26対あり、縁は鋭い重鋸歯。先は尖り、基部はやや円形。雌雄同株。冬には枝先に細長い雄花序の冬芽がつき、その下に雌花序の冬芽や葉芽がつく。雄花序は蕾のときは直立し、展開すると、長さ約4~6㎝になり、やや曲がって垂れ下がる。雌花序は枝分かれした花柄の先に3~6個ずつつき、垂れさがる。果穂(球果)は長さ1.5~2㎝の惰円形、果柄が長く、枝分かれして垂れ下がる。果鱗は長さ4~4.5㎜の扇形。翼果は長さ2~3㎜、翼の幅は果実とほぼ同じ。2n=14。花期は3~5月。果期は10~11月。

16 Alnus rubra Bong. レッドアルダー
 カナダ、USA原産。英名はOregon alder , red alder。標高0~300mの川岸、湿った氾濫原、湖畔、湿った斜面、砂浜の開けた海岸に生える。
 高木、高さ28mまで。幹はしばしば複数あり、樹冠は狭いかまたはピラミッド形。樹皮は灰色で平滑、年齢とともに黒ずみ、浅く長方形の板状に裂ける。皮目は目立たない。冬芽は無毛、楕円形、長さ6~10㎜、先は丸く、柄は長さ2~8㎜。芽鱗は2~3個、外側の2個は同等で敷石状、通常は厚く樹脂でコーティングされる。葉身は卵形~楕円形、長さ6~16㎝×幅3~11㎝、革質、基部は広楔形~円形、縁は強く外巻きし、深い重鋸歯状または円鋸歯があり、明瞭な大きな2次歯があり、先は鋭形~鈍形、下面は無毛~まばらに毛がある。花序は開花前の季節に形成され、冬の間は露出する。雄の尾状花序は1個または2~6個束生し、長さ3.5~14㎝。蒸留される(雌の)尾状花序は1個または3~8個が束生する。春に新しく成長する前に開花する。果序は卵形~ほぼ球形、長さ1~3.5㎝×幅0.6~1.5㎝。花序柄は長さ1~10㎜。翼果は卵形または楕円形、翼は果体よりもはるかに狭く、不規則な楕円形~倒卵形で、革質。2n=28。 品種) 'Pinnatifida'

17 Alnus serrulata (Aiton) Willd. ヘーゼルアルダー
 カナダ、USA原産。英名はcommon alder , hazel alder , smooth alder , tag alder。標高0~800mの川岸、溝、湿地帯の端、沼地や沼地、湖岸に生える。
 低木、開く~かなり密に斜上し、高さ10mまで。樹皮は明るい灰色で平滑、皮目は小さくて目立たない。 冬芽は柄があり、楕円形~倒卵形、長さ3~6㎜、先端はほぼ丸く、柄は長さ2~4mm。芽鱗は2個、等長、敷石状、中程度~重く樹脂コーティングされる。葉身は広楕円形~倒卵形、長さ5~14㎝×幅3.5~8㎝、革質、基部は広~狭の楔形、縁は平らで小鋸歯があり、顕著に大きな二次歯はなく、先は鈍形~円形、下面は無毛~中程度の絨毛があり、わずかから中程度に樹脂で覆われる。花序は開花前の季節に形成され、冬の間に露出する。雄の尾状花序は2~5個、長さ3~8.5㎝、雄しべは4個。雌の尾状花序は1個または3~5個が束生する。 春に新しく成長する前に開花する。果序は卵状楕円形、長さ1~2.2㎝×幅0.6~1.2cm。花序柄は長さ1~3(~5)㎜。翼果は倒卵形、翼は果体より狭く、不規則な楕円形または倒卵形で、革質。2n=28。花期は早春。
品種) 'Panbowl'

18 Alnus serrulatoides Callier カワラハンノキ 河原榛の木

  synonym Alnus obtusata (Franch. et Sav.) Makino

  synonym Alnus serrulatoides Callier f. katoana (Yanagita) H.Ohba

  synonym Alnus serrulatoides Callier var. katoana (Yanagita) Sugim.

 日本固有種。本州(東海地方以西)、四国、九州(宮崎県)に分布。河原、河岸、湿地に生える。
 落葉低木または小高木、高さ5~7m。幹は暗褐色、皮目があり、下部からよく枝分かれする。葉は互生し、長さ5~10㎝、幅3~7㎝の広倒卵形、やや厚い洋紙質、先は円形、基部は広い楔形、縁に浅い波状の鋸歯がある。葉脈は裏面に隆起し、側脈は6~9対、脈腋に白色の毛がある。葉柄は長さ5~10㎜。雌雄同株。葉の展開前に開花する。雄花序は長さ6~8㎝、枝先に2~5個、垂れ下がってつき、花序の柄は長さ6~8㎝。雌花序は雄花序の下に1~5個ずつ、上向きにつく。果穂は長さ15~20㎜の広楕円形、垂れ下がる。果鱗は長さ4~5㎜の扇形。堅果は長さ約3㎜の広卵形、翼はほとんどない。花期は2~3月。

19 Alnus sieboldiana Matsum. オオバヤシャブシ 大葉叉五倍子

  synonym Alnus firma Siebold et Zucc. var. sieboldiana (Matsum.) H.J.P.Winkl.

 日本固有種。本州(福島県~和歌山県)太平洋岸、伊豆諸島原産。山林、丘陵に生える。根に根粒菌がつき、空中窒素を固定できるため、荒地でも育つ。火山の噴火後の荒地にはじめに生育したと報告されている。三河地域では非常に多く、また植えられることも多い。  落葉高木、高さ5~10m。樹皮は灰褐色で、若い枝には円形の皮目が点々とつき、太くなると大きな割れ目がつく。葉は互生し、長さ6~12㎝の三角状卵形。葉脈がはっきりし、縁に鋭い重鋸歯がある。基部はやや円形で、左右が不揃い。雌雄同株。枝先から、葉芽、雌花序、雄花序の順につくのが特徴。雄花序は蕾のときは短く直立し、展開すると、長さ約5㎝になり、やや曲がって垂れ下がる。花粉は長さ約35μm、黄色。果穂は長さ約2㎝の長楕円形で、1個ずつつき、果枝が枝分かれしない。果鱗は長さ7~8㎜の扇形、黒褐色。果実(堅果)は長さ3~4㎜の翼果、両側に果実よりやや狭い翼がある。花期は3~4月。果期は10~11月。

20 Alnus trabeculosa Hand.-Mazz. サクラバハンノキ 桜葉榛の木

  synonym Alnus nagurae Inokuma
 本州(岩手県、新潟県以南)、九州(宮崎県)、中国原産。中国名は江南桤木 jiang nan qi mu。国のレッドリストでは「準絶滅危惧種」、愛知県では生育地も個体数も多いため、リスト外。和名は湿地に生えるハンノキの仲間であって葉がサクラに似ていることに由来する。沢沿いの林の中や湿地周辺でまれに見られる。
 落葉小高木または高木、高さ10~20m。幹は灰褐色、滑らかで、樹皮に割れ目は入らない。長い葉柄があり、互生する。葉は長さ5~9㎝の卵状楕円形~長楕円形、不揃いの細鋸歯。葉の基部はハンノキより広い楔形~心形、先は鋭尖頭。葉脈が網状脈まではっきり見え、主脈は裏面に特に隆起する。側脈は9~12対。葉の表面は光沢があり、裏面はほぼ無毛、あっても脈状にわずかに毛がある程度。若葉では葉脈が赤紫色になることが多い。雌雄同株。樹皮はなめらか。雌雄同株。葉の展開前に開花する。雄花序は枝先に垂れ下がってつき、雌花序は雄花序の下方につく。果穂は長さ約2㎝の卵状惰円形。果鱗は長さ約3.5㎜の扇形。堅果は長さ3~4㎜、幅2~2.5㎜、堅果の1/4の幅の翼がある。花期は2~3月。

21 ハイブリッド
(1) Alnus x hanedae Sugim.  アイノコヤシャブシ
 ヤシャブシとオオバヤシャブシの交雑種
(2) Alnus x hosoii M.Mizush.  イワキハンノキ(イワキヤシャブシ)
 ミヤマハンノキとヒメヤシャブシの交雑種
(3) Alnus x mayrii Callier  ウスゲヒロハハンノキ
 ハンノキ(ヤチハンノキ)×とケヤマハンノキの交雑種
(4) Alnus x mayrii Callier nothovar. glabrescens Nakai ヒロハハンノキ
  synonym Alnus x borealis Koidz.
  synonym Alnus japonica (Thunb.) Steud. var. borealis (Koidz.) S.L.Tung 
 ハンノキとヤマハンノキの自然交雑種
(5) Alnus x moriokaensis Murai  モリオカハンノキ
 オオバヤシャブシとヤマハンノキの人工交雑種
(6) Alnus x peculiaris Hiyama  タルミヤシャブシ
 ヤシャブシとヒメヤシャブシの交雑種
(7) Alnus x suginoi Sugim.  ウラジロカワラハンノキ(ウラジロハンノキ)
 ヤマハンノキとカワラハンノキの交雑種

参考

1) Flora of China
 Alnus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=101157
2) Plant Finder - Missouri Botanical Garden
 Alnus serrulata
https://www.missouribotanicalgarden.org/PlantFinder/PlantFinderDetails.aspx?taxonid=277828&isprofile=0&
3) GRIN
 Alnus
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=437
4)村井三郎, 1963. 邦産ハンノキ属の植物分類地理学的研究(第Ⅰ報)
 タニガワハンノキ
https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/kanko/141-4.pdf