トウバナ 塔花

mark

Flora of Mikawa

シソ科 Lamiaceae トウバナ属

中国名 细风轮踩 xi feng lun cai
学 名 Clinopodium gracile (Benth.) O. Kuntze.
トウバナの花序
トウバナの花
トウバナの花の上唇
トウバナ班紋のある花
トウバナ班紋のある花
トウバナの種子
トウバナの茎
トウバナ
トウバナ葉
トウバナ萼
花 期 5~9月
高 さ 10~30㎝
生活型 多年草
生育場所 道端、空地、田の畔
分 布 在来種  本州、四国、九州、沖縄、中国、台湾、インド、タイ、ラオス、マレーシア、ミュアンマー、ベトナム、インドネシア
撮 影 幡豆町  13.5.6
和名の由来は花穂が塔のようになっていることから。
 茎は細く、基部は匍匐枝を出して這い、茎を束生し、斜上する。茎には下向きの短毛がある。葉は対生し、葉柄は長さ3~18㎜。基部の葉の葉身は長さ約10㎜、幅8~9㎜の卵形~広卵形~円状卵形、無毛、基部は円形、先は鈍形、少数の低い円鋸歯がある。中部以下の茎葉の葉身は卵形、長さ1.2~3.4㎝、幅1~2.4㎝、紙質、ほぼ無毛、葉裏の脈上にわずかに剛毛があり、基部は円形~楔形、先は鈍形、縁は少数の鋸歯~円鋸歯。上部の茎葉は卵状披針形、縁は鋸歯状、先は鋭形。葉の裏に腺点はない。輪散花序は数個、茎頂の総状花序に疎~密に唇形花をつける。花序の中の葉は卵状披針形、鋸歯縁、鋭頭。苞は針状、小花柄よりかなり短い。小花柄は長さ1~3㎜。萼は筒形、基部は丸く、花時長さ約3㎜、果時に下向きになり、約5㎜、微軟毛があるかほぼ無毛、脈上にわずかに剛毛があり、のど部に細かい長毛がわずかにある。萼歯は縁毛があり、下部の2個は錐状、上側の3個は三角形、果時には後屈する。花冠は白色~紅紫色、まれに紅紫色の班紋があり、長さ約4.5㎜、微軟毛がある。上唇は浅く2裂、下唇は3裂し、上唇の長さが下唇より短い。果実は分離果、4分果。分果は卵形、平滑。
 イヌトウバナ Clinopodium micranthum は山地の木陰に生え、全体にやや大きく、花が白色で、淡紅紫色の班紋があり、萼に長い白色軟毛が多い。また、葉がやや長く、葉裏に腺点がある。
 ヤマトウバナClinopodium multicaule は短い花序が茎頂に1個だけつき、花が白色、葉裏の腺点がまばら。萼は毛が短く、萼の内側が無毛、苞と同長、花冠と同長、小花柄の3倍の長さ。

トウバナ属

  family Lamiaceae - genus Clinopodium

 多年草。葉は縁に歯があり、茎上部では小さく、苞状になる。輪散花序は±頭状、円錐花序につく。花序柄がときにある、苞は線形~針状、長さは萼の長さまで。萼は筒形、13脈があり、ときに中間でくびれ、基部が片側で膨れ、真っすぐ又はわずかに曲がり、のど部にまばらに毛がある。拡大部は2唇形。咢の上唇は3歯があり、歯に縁毛があり、先は微突形。咢の下唇は長く、2歯がある。花冠は紫赤色、帯赤色、又は白色、2唇形。花冠筒部は突き出し、上部でのど部まで広がり、2列の毛があり、微軟毛がある。上唇は真っすぐ、先は凹形。下唇は3裂し、側裂片は全縁。中裂片は大きく、凹形又は全縁。雄しべは4本、前側の2本は後ろ側の2本より長く、花冠の上唇に届き、突き出さず又はわずかに突き出る。後ろ側の雄しべはときに未発達。葯室は2個、開出し、広がった葯隔の上に±斜めにつく。花柱の先は不等長に2裂し、前側の裂片は披針形、後ろ側の裂片は不明瞭。子房は無毛。小堅果は卵形又は類球形、直径1㎜未満、無毛、へそ(areolae)は小さく、基部にある。
 世界に約20種あり、アジア、ヨーロッパに分布する。

トウバナ属の主な種

1 Clinopodium brownei (Sw.) Kuntze クリノポディウム・ブロウネイ
 北アメリカ、中央アメリカ、南アメリカ、西インド諸島原産。英名はBrowne's savory, St. John's Mint, Creeping Charlie, Lornatee。湿った牧草地に生える。
 匍匐性の草本、マットを形成し、または先が斜上し、根茎があり、高さ6~45㎝。茎は無毛、または通常節に長さ0.05~0.5㎜の毛状突起があり、またはときに長さ1㎜までの隔壁のある毛状突起があり、節間が1~4㎝の散在する側茎を持つ。葉は長さ0.37~1.5㎝×幅0.27~1.6㎝、広卵形~ほぼ円形、上面は無毛または長さ0.2~0.5㎜の隔壁のある毛が散在し、ときに中脈に沿って微細な微軟毛があり、下面は無毛または長さ0.5㎜までの隔壁のある毛が散在し、基部は切形またはほぼ心形、そして最後に楔形になり、縁が深波状~円鋸歯状、平らになり、先は円形~鈍形。葉柄は長さ0.5~3㎜、無毛または上面の溝は微細な微軟毛があり(頻度は低いが、隔壁おある毛状突起が散在する)、基部で沿下せず、柱状瘢痕が残らない。花は葉腋に単生し、花序柄と小苞はない。小花柄は長さ5~15㎜。萼は萼筒が長さ2~3㎜×口部で幅1.2~1.5㎜、筒形~まばらに広がり、外側は無毛または長さ0.5㎜までの毛状突起が散在し、内側には口部に長い毛状突起の輪があり、わずかに裂片の2唇があり、下側の裂片は長さ0.75~1.5㎜、萼筒の長さの1/3~2/3、披針形で鋭形~尖鋭形、開出し、内部は無毛、縁は無毛~縁毛があり、上側の裂片は長さ0.5~0.8㎜、下側の裂片の長さの1/2~2/3の長さ、卵状で鋭形~鈍形、開出する。花冠はピンク色、青色、白色、淡赤紫色または白色、ラベンダー色、花冠筒部は直径4~6㎜、外側は無毛~有毛、真っ直ぐで基部から徐々に広がり、口部で幅2~3㎜になり、内側は無毛または口部に毛がある。拡大部はは顕著な2唇形。下唇は長さ2~4.25㎜、花冠筒部の長さの1/3~2/3の長さ、3裂し、中裂片は先が凹形。上唇は長さ1~2.25㎜、下唇の長さの1/3~2/3の長さ、先は凹形。雄しべは花冠筒の長さの1/2~4/5に取り付けられ、最長の雄しべは花冠筒部から1~1.5㎜突き出し、最も短い雄しべの長さの1.3~ほぼ2倍あり、長さ0.9~1.3㎜×幅0.5~0.75㎜、広楕円形、無毛。花期は1~4月、6~11月(Flora Mesoamericana)。

2 Clinopodium carolinianum Mill. クリノポディウム・カロリアヌム
 北アメリカ(USA)東南部原産。英名はGeorgia calamint , Georgia Wild Basil; Georgia Calamint; Georgia Basil。乾燥した松林、砂丘、大河沿いの砂の尾根、岩の多い森林に生える。花壇やロックガーデンに植栽され、乾燥した葉からハーブ ティーが作られる。
 木質の常緑亜低木、高さ30~45㎝。主茎は地面近くで複数の茎に分岐し、直立する。茎は4角形で、樹皮は褐色、茎の下部で長めの板状に剥がれる。葉は対生し、丸みがあり、葉柄があり、葉身は卵形~楕円形、縁は全縁または円鋸歯~鋸歯がある。主茎の葉腋に小さい葉が束生した短い枝がつく。植物全体に芳香がある。晩夏から冬にかけて、葉脇に淡いラベンダー色またはピンクがかった花が咲く。花は集散花序に3~9個の花がつく。萼片は筒形、緑色または紫色で、5歯があり、下側の2歯は上側の3歯よりかなり長い。花は2唇形、上唇は2裂し、下唇は3裂し、下唇の中裂片には紫色の斑点がある。果実は萼片内に付いて残る分果である。。
品種) 'Cleburne'

3 Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze オキナワクルマバナ(クルマバナ) 広義

  synonym Calamintha chinensis Benth.
  synonym Calamintha clinopodium var. chinensis (Benth.) Miq.
  synonym Satureja chinensis (Benth.) Briq.
 日本、朝鮮、中国、台湾、ロシア、サハリン、ベトナム原産。

3-1 Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze subsp. chinense オキナワクルマバナ 沖縄車花

  synonym Clinopodium chinense f. setilobum H.Hara ニッコウクルマバナ

  synonym Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze [Flora of china 风轮菜]

 日本(九州、沖縄)、中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、山東省、雲南省、浙江省)、台湾、ベトナム原産。中国名は风轮菜 feng lun cai。標高0~1000mの丘陵、川辺、草地、茂み、森林に生える。
 茎は高さ1mまで、基部は這い、細かい条線があり、密に毛があり、腺毛がある。葉柄は長さ3~8㎜。葉身は卵形で、先は苞状、長さ2~4㎝×幅1.3~2.6㎝、紙質、上面に密に伏した微細な剛毛があり、下面に細柔毛(pilose)があり、基部は円形~広楔形、縁は円鋸歯鋸歯があり、先は鋭形~鈍形。輪散花序は花が多数あり、半球形、直径3㎝まで、上部の輪散花序は直径約1.5㎝、間隔が広い。苞は多数あり、針状で、長さ3~6㎜。萼片は狭い筒形、紫赤色を帯び、長さ約6㎜、細柔毛があり、腺微軟毛があり、歯の内側に細柔毛があり、果時には基部の片側がわずかに膨らむ。上側の歯は±反り返り、狭三角形、先端は尖鋭形。下側の歯は真っ直ぐで芒がある。花冠は紫赤色、長さ約9㎜、微軟毛がある。喉には2列の毛があり、幅約2㎜、上唇は先が凹形。小堅果は黄褐色、倒卵形、約・長さ1.2㎜×幅 0.9㎜。花期は5~8月。果期は8~10月。

3-2 Clinopodium chinense subsp. grandiflorum (Maxim.) H.Hara クルマバナ 車花

  synonym Calamintha chinensis var. grandiflora Maxim.
  synonym Clinopodium chinense var. grandiflorum (Maxim.) H.Hara
  synonym Clinopodium chinense var. urticifolium (Hance) Koidz.

  synonym Clinopodium coreanum H.Hara in J. Jap. Bot. 12: 40 (1936), pro syn.

  synonym Clinopodium urticifolium (Hance) C.Y.Wu & S.J.Hsuan ex H.W.Li [Flora of china 麻叶风轮菜]

  synonym Clinopodium coreanum (H.Lev.) H.Hara subsp. coreanum [YList]

  synonym Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze subsp. grandiflorum (Maxim.) H.Hara var. parviflorum (Kudô) H.Hara

 朝鮮、中国(河北省、黒龍江省、河南省、江蘇省、吉林省、遼寧省、陝西省、山東省、山西省、四川省)、ロシア、サハリン原産。中国名は麻叶风轮菜 ma ye feng lun cai。別名はマンシュウクルマバナ。標高300~2200の丘陵草原、森林に生える。POWOでは日本を分布域に含めていない。YListでは日本を分布域に含め、Clinopodium coreanum (H.Lev.) H.Hara subsp. coreanumのsynonymとしている。Flora of Chinaでは日本を分布域に含めClinopodium urticifoliumのsynonymとしている。基本亜種のオキナワクルマバナは毛がきわめて多く、萼や小苞に長剛毛と腺毛がある。
 多年生草本。根茎は木質。茎は直立し、長さ25~80㎝、細かい条線があり、堅い。基部は半木質で、赤紫色、まばらに後屈し、微細な剛毛がある。葉柄は下部の茎葉で長さ1~1.2㎝、上部の茎葉で長さ2~5㎜。葉身は卵形~卵形長楕円形で、長さ3~5.5㎝×幅1.2~3㎝、紙状で、上面にはまばらに微細な剛毛があり、下面にはまばらに細柔毛があり、基部はほぼ切形~円形、縁は鋸歯状、先は鈍形~鋭形。輪散花序には多数の花が付き、半球形で、下部では直径3㎝以下、上部では直径約2㎝で、間隔が広い。花序柄は長さ3~5㎜で、多数分岐する。下部の花葉は輪散花序より長く、上部の花葉は輪散花序と同長で、苞状。苞は線形、赤紫色を帯び、顕著にうねがあり、萼片の長さの2/3~3/4で、白色の縁毛がある。小花柄は長さ1.5~2.5㎜。萼は狭い筒形、長さ約8㎜、赤紫色を帯び、腺毛があり、脈には白色の縁毛があり、歯は内側にまばらに細柔毛があり、果時に基部は片側がわずかに膨らむ。上側の歯は反り返り、狭三角形で短い芒がある。下側の歯は真っすぐで芒がある。花冠は赤紫色で、長さ約1.2㎝、微軟毛があり、喉部に2列の毛があり、花冠筒部は基部で幅約1㎜、基部から1/3を超えて徐々に拡張し、喉部で幅約3㎜になる。前側の雄しべはほとんど花冠に含まれるか、またはわずかに突き出る。小堅果は倒卵形、約・長さ1㎜×幅0.8㎜。 花期は6~8月。果期は8~10月。Clinopodium chinense var. chinenseと明確に区別できるものではなく、しばしばClinopodium chinense var. chinense の同義語として扱われる。[Flora of China]。
 subsp. grandiflorumはオキナワクルマバナは毛がきわめて多く、萼や小苞に長剛毛と腺毛があり、日本のクルマバナには普通、腺毛がない。
【日本のクルマバナ】
 和名の由来は花が数段の仮輪に輪生することから。葉脈の深さ、仮輪の大きさや毛の量など変化が多い。Flora of China(Clinopodium urticifolium)の解説では萼に腺毛があるが、日本のクルマバナには普通、腺毛がない。日本のクルマバナは丘陵地や山地に生え、花期が遅く8~9月。花や萼もやや小さい。ただし、オオクルマバナと呼ばれる花や萼が大きく、腺毛のあるものも日本でみられる。

(1) Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze subsp. grandiflorum (Maxim.) H.Hara f. albiflorum H.Hara シロバナクルマバナ 白花車花

(2) Clinopodium chinense f. setilobum H.Hara オオクルマバナ 大車花

  synonym Clinopodium coreanum (H.Lev.) H.Hara subsp. stoloniferum Yonek.

  synonym Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze subsp. grandiflorum (Maxim.) H.Hara var. parviflorum (Kudô) H.Hara f. setilobum H.Hara, pro parte excl. typo ニッコウクルマバナ

 日本(青森~福井の日本海)に分布する。別名はニッコウクルマバナ。
 茎は分枝しない。萼は長さ6.5~8㎜。萼片の先が長く鋭く尖り、針状になり、萼筒には腺毛が混じる。花冠は大きく長さ10~14㎜。花期は6~8月。Flora of Chinaのクルマバナ(Clinopodium urticifolium)に近い。

3-3 Clinopodium chinense var. parviflorum (Kudô) H.Hara クルマバナ 車花 狭義

  synonym Satureja chinensis var. parviflora Kudô , J. Coll. Sci. Imp. Univ. Tokyo 43(8): 38 (1921)

  synonym Clinopodium chinense f. albiflorum H.Hara

  synonym Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze subsp. grandiflorum (Maxim.) H.Hara var. parviflorum (Kudô) H.Hara [YListのsynonym]

 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮原産。英名はsmall-flower asian calamint。別名はオククルマバナ。POWOではvar. parviflorumは日本、朝鮮を分布域とし、subsp. grandiflorumの分布域から日本を除外している。YListではvar. parviflorumもsubsp. grandiflorumもクルマバナ(Clinopodium coreanum (H.Lév.) H.Hara subsp. coreanum)のsynonymとしている。
 初め、クルマバナ Satureia chinensis α. parviflora とオククルマバナ Satureia chinense Benth. ß. megalamtha に分けられ、中国も分布域に含められていた。α. parvifloraは花が小さく、萼とほぼ同長または花冠が半分出る程度で長さ7㎜、オククルマバナは花冠が長さ11㎜[ J. Coll. Sci. Imp. Univ. Tokyo 43(8): 38 (1921)]。
【クルマバナの原記載】
 茎は枝分かれするか、単純。輪散花序はほぼ無柄。苞は萼とやや間隔が開き、開出する硬い粗毛がある。花は長さ7~11㎜、萼から突き出る。萼は粗毛があり、毛は硬く、開出し、わずかに微軟毛があり、まれに腺毛があり、通常は紫色[J. Jap. Bot. 12: 41 (1936)]。
原文:Caules lamosi vel simplices. Verticillastri subsessiles. Bractea calyce suba quilonga,patenter et rigicle hirsuta. Flores 7-11 mm. longi calycem superantes. Calyces hirsuti,pilis patentibus rigidulis,et inferne minute pubescentes raro glancduloso-pilosi,sape purpurascentes.
【日本のクルマバナの解説】
 多年草。高さ20~80㎝。茎の断面は四角形、下向きの毛がある。茎や葉に毛があるが、毛の量には変化があり、毛のほとんど無いものもあり、腺毛はない。葉は対生し、短い柄があり、長さ2~4㎝の長卵形、鋸歯があり、基部は円形。葉表に光沢があることもあり、葉脈が深く、両面に白毛があり、葉裏の腺点はまばらで目立たない。小苞は線形、開出する長剛毛が多く、小花柄より長い。花序は茎の中部以上の葉腋ごとに、半球形の数段の輪散花序(仮輪)になり、密集して多数、花がつく。花は唇形、長さ8~10[7~11]㎜。上唇は小さく、浅い切れ込みが入り、下唇は大きく3裂する。萼は長さ6~8㎜、腺毛はなく[まれに腺毛があり]、開出する長剛毛があり、紅紫色を帯びることが多い。萼歯は5個、下側の2個は細く尖る。果実は4分果。2n=38。花期は8~9月。

4 Clinopodium coccineum (Nutt. ex Hook.) Kuntze クリノポディウム・コッキネウム

  synonym Calamintha coccinea (Nutt. ex Hook.) Benth.
 北アメリカ(USA)原産。英名はscarlet calamint , scarlet wild basil , red savory , red mint shrub , scarlet balm , southern calamint , red basil。砂丘、オークの雑木林、砂丘、砂地の道端などに生える。
 常緑、直根があり、高さ90~120㎝の小型の低木。直射日光が当たらない場所では地面に沿って広がる傾向がある。茎は細く、針金状、若い茎は緑色で、四角形、毛があり、古い茎は樹皮が灰色または褐色長く細い帯状に剥がれる。葉は対生し、無柄または短い葉柄があり、葉身は楕円形~卵形またはへら形、縁は全縁、濃緑色で、つぶすとわずかに芳香がある。花は茎の先端近くの腋生の集散花序につく。花は赤色または橙色で、黄色の園芸品種もあり、筒形、長さ約5㎝。花冠は2唇形、上唇は2裂して下唇より短く、下唇は3裂する。典型的なハチドリの花でハチドリはこれを好む。花期は夏と秋だが、年間を通じてときに花が咲く。果実は小果粒。
品種) 'Amber Blush'

5 Clinopodium fauriei (H.Lév. & Vaniot) H.Hara アラゲトウバナ 粗毛塔花
  synonym Calamintha fauriei H.Lév. & Vaniot

  synonym Clinopodium micranthum (Regel) H.Hara var. fauriei (H.Lév. et Vaniot) H.Hara [YList]

 朝鮮原産。アラゲトウバナは九州北部でも見られるようである。
 茎は盛んに枝分かれし、柔らかい毛がある。葉は卵形~狭卵形で、上面に毛があり、下面に毛があり、腺点がある。葉柄に密に毛がある。花序軸に密に後ろ向きの白色の毛がある。花期は8~10月。萼は長さ4~5㎜、萼筒には密に柔らかい白色の毛があり、非常に長い毛と短い毛が混在し、腺点がある。花冠は萼をわずかに超える。(J. Jap. Bot. 11: 106 (1935) )

6 Clinopodium gracile (Benth.) Kuntze トウバナ 塔花
  synonym Clinopodium confine (Hance) Kuntze
 日本(本州、四国、九州、沖縄)、中国、台湾、インド、タイ、ラオス、マレーシア、ミュアンマー、ベトナム、インドネシア原産。中国名は细风轮踩 xi feng lun cai
 多年草。高さ10~30㎝。茎は細く、基部は匍匐枝を出して這い、茎を束生し、斜上する。茎には下向きの短毛がある。葉は対生し、葉柄は長さ3~18㎜。基部の葉の葉身は長さ約10㎜、幅8~9㎜の卵形~広卵形~円状卵形、無毛、基部は円形、先は鈍形、少数の低い円鋸歯がある。中部以下の茎葉の葉身は卵形、長さ1.2~3.4㎝、幅1~2.4㎝、紙質、ほぼ無毛、葉裏の脈上にわずかに剛毛があり、基部は円形~楔形、先は鈍形、縁は少数の鋸歯~円鋸歯。上部の茎葉は卵状披針形、縁は鋸歯状、先は鋭形。葉の裏に腺点はない。輪散花序は数個、茎頂の総状花序に疎~密に唇形花をつける。花序の中の葉は卵状披針形、鋸歯縁、鋭頭。苞は針状、小花柄よりかなり短い。小花柄は長さ1~3㎜。萼は筒形、基部は丸く、花時長さ約3㎜、果時に下向きになり、約5㎜、微軟毛があるかほぼ無毛、脈上にわずかに剛毛があり、のど部に細かい長毛がわずかにある。萼歯は縁毛があり、下部の2個は錐状、上側の3個は三角形、果時には後屈する。花冠は白色~紅紫色、まれに紅紫色の班紋があり、長さ約4.5㎜、微軟毛がある。上唇は浅く2裂、下唇は3裂し、上唇の長さが下唇より短い。果実は分離果、4分果。分果は卵形、平滑。花期は5~9月。
品種) 'Crispatum'  ジャカゴトウバナ
  茎は直立して殆んど分枝せず、高さ3~5㎝。葉は長さ5~7㎜×幅5~6㎜、細かいしわ状(crisp)、茎全体 をしわ状の丸味のある葉が密に重なって包み、サギゴケの園芸品のジャカゴソウと同じ形である。

7 Clinopodium grandiflorum (L.) Kuntze クリノポディウム・グランディフロルム

  synonym Calamintha grandiflora (L.) Moench
 ヨーロッパ、西アジア、コーカサス原産。英名はgreater calamint , large-flower calamint , mint-savory , showy calamint , showy-savory。標高300~2450mの湿った日陰の場所、森林や低木林、多くの場合、石灰岩の上に生える。鑑賞用に栽培される。
 多年草、茎は高さ15~60㎝、斜上~直立し、腺毛があることが多く、疎~密に開出する細柔毛がある。葉は卵形~楕円形、長さ25~60(~70)㎝×幅16~40㎝、基部は楔形~ほぼ切形、疎~密に細柔毛があり、直行脈(craspedodromous)で、顕著に歯状~鋸歯状 (歯は片側に7~12個つく)。輪散花序は3~7個、±離れてつき、2~11個の花がつき、ほぼ散形花序状、花序柄が目立つ。小苞は楕円形~披針状錐形、長さ2.5~5㎜。萼は2唇形、11 脈があり、長さ9~14㎜、萼筒はわずかに湾曲し、非常にまばらに毛があり、喉の上部の毛はまばらで突出している。上側の萼歯は反り返り、長さ1.5~2.5㎜、下側の歯は長さ3~5.5㎜、長い縁毛がある。花冠は淡いピンク色または藤色がかったピンク色~赤色、大きく、長さ25~42㎜。花期は6~10月。
品種) 'Variegata'

8 Clinopodium latifolium (H.Hara) T.Yamaz. et Murata ヒロハヤマトウバナ 広葉山塔花

  synonym Clinopodium multicaule (Maxim.) Kuntze var. latifolium H.Hara

  synonym Clinopodium gracile (Benth.) Kuntze var. latifolium (H.Hara) Ohwi

 日本固有種。本州の福島県・中部地方南部・関東地方に分布する。山地の木陰などに生える。トウバナに似るが萼や花冠の長さがトウバナよりかなり長い。
 多年草、高さ20~60㎝。茎は直立し、単生または束生し、下向きの曲がった毛がある。葉は互生し、葉柄は長さ6~15㎜、葉身は卵形~長卵形、茎の中部以上の葉はほぼ同大 質はやや薄く、縁には粗い鋸歯があり、脈上に毛が多く、葉全体に疎らに毛があり、下面にまばらに腺点があり、目立たないが、腺点の量には変異がある。花序は頂生または上から2段目までの葉腋につき、総状花序、長さ3~5㎝、輪散花序の仮輪は数段ある。萼は長さ5~6㎜、しばしば同一花序の中でも不揃いになり、萼筒には短毛が密にあり、脈上に白色の長軟毛が多く、腺点は目立たない。花冠は白色~淡紅白色、通常長さ7~8(~9)㎜。果実は4分果。花期は7~9月。

9 Clinopodium laxiflorum (Hayata) K.Mori ニイタカトウバナ 新高塔花

  synonym Clinopodium laxiflorum (Hayata) K.Mori var. parvifolium T.Shimizu

  synonym Calamintha laxiflora Hayata

  synonym Clinopodium laxiflorum (Hayata) K.Mori var. taiwanianum T.H.Hsieh et T.C.Huang ツギタカトウバナ

 台湾原産。中国名は疏花风轮菜 shu hua feng lun cai。丘陵地に生える。
 根茎は±木質で細い。茎は多数、斜上し、長さ約20㎝、細く、捻じれ、密に後屈する白色の毛がある。葉柄は長さ1~2㎜。葉身は卵形、長さ7~12㎜×幅5~8㎜、紙質、ほぼ無毛、下面はときに赤紫色、基部は円形、縁は浅い鋸歯があり、先は鈍形~鋭形。輪散葉序は花が2~6個つき、半球形、直径1.2~1.5㎝。花序柄は長さ約1㎜。花葉は全縁、先は苞状。苞は針状、長さ約3㎜、うねがあり、赤紫色で、白色の縁毛がある。小花柄は長さ約2㎜。萼は筒形、長さ約6㎜、赤紫色がかっており、腺毛があり、脈と歯は微細な剛毛がある。上側の歯は3個、ほぼ三角形、短い芒がある。下側の歯は2個、錐形、芒がある。花冠筒部は長さ約1.1㎝、わずかに外側に湾曲し、喉部で幅3㎜。上唇は長さ約2.5㎜、2裂する。下唇は広がり、長さ約5㎜、中裂片は広円形、長さ約3㎜。小堅果は卵形、約・長さ0.7㎜×幅0.6㎜。

10 Clinopodium macranthum (Makino) H.Hara ミヤマクルマバナ 深山車花
  synonym Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze var. macranthum Makino
 日本固有種(本州の中部地方以北の日本海側)。低山~亜高山の砂礫地や草地に生える。
 多年草。高さ10~40㎝。茎は直立~斜上し、4稜形、稜と節に下向きの毛がある。葉は対生し、長さ3~5㎝×幅2~3.5㎝の卵状円形~卵形、基部は円形~わずかに心形、縁には鋭い鋸歯があり、縁毛が目立ち、先は鋭形~鈍形、両面にまばらに軟毛があり、下面の腺点は目立たず、側脈が葉縁に沿って曲がり、中軸に対して鋭角になり、深くて目立つのが特徴。輪散花序の仮輪は数段につき、仮輪の間が離れる。萼は2唇形、赤色を帯び、萼歯は5個、上側の萼歯の先も尖鋭形、開出毛が密生し腺毛が混じる。花は色が鮮やかで、クルマバナより唇形の花冠が大きく、長さ15~20㎜。花冠の筒部の内面に濃色の斑点がある。小堅果(分果)はやや扁平なほぼ球形、長さ約1㎜。花期は8~9月。

11 Clinopodium menthifolium (Host) Stace クリノポディウム・メンティフォリウム

 アルバニア、オーストリア、アゾレス諸島、バレアレス諸島、バルト諸国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、ブルガリア、カナリア諸島、コルシカ島、チェコスロバキア、東エーゲ海諸島、フランス、イギリス、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、マデイラ諸島、オランダ、ポーランド、ルーマニア、シチリア、スペイン、スイス、トルコ、ウクライナ、ユーゴスラビア、アジア(レバノン・シリア、トルコ)、アフリカ(アルジェリア、モロッコ)原産。英名はwood calamint , woodland calamint。明るい落葉樹林や林縁に生える。
 多年草、高さ(30)40~60(80)㎝、匍匐茎がある。茎は直立し、枝分かれし、四角形、毛が密にある。葉は卵形、長さ25~70mm×幅18~45㎜、縁には粗い鋸歯があり、内側にかなり深く突き出た約6~10個の歯がある鋸歯があり、側脈は葉の縁より前で縁から離れるように曲がり、縁には達しない。花は葉腋にあり、花葉は通常の葉と形がよく似ている。集散花序の仮輪は半円形、1~9個の花がつく。花序がかなり長いため、散形花序状になる。花序は長さ0.5~1.5(~2)㎝。小花柄は長さ5~10㎜。散形花序の各枝には細長い苞がある。萼は合弁萼、筒形、長さ約6~11㎜、たるみやへこみなく、先に5個の歯があり、そのうち3個は小さく、長さ1.5~2㎜、下側の2個はやや長く、長さ3~4㎜。花冠は2唇形、ピンク色、長さ15~22㎜、萼を越えて突き出る。上部の4つに分かれた子房は、2つの異なる柱頭裂片を有する花柱を持ち、受精後、4つに裂けた果実に成長する。萼歯は果期にも前方に突き出し続ける。

11-1 Clinopodium menthifolium subsp. ascendens (Jord.) Govaerts コモンカラミント

  synonym Calamintha ascendens Jord.
 アルバニア、オーストリア、アゾレス諸島、バレアレス諸島、バルト諸国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、ブルガリア、カナリア諸島、チェコスロバキア、東エーゲ海諸島、フランス、イギリス、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、オランダ、ポーランド、ルーマニア、シチリア島、スペイン、マデイラ諸島、スイス、トルコ、ウクライナ、アフリカ(アルジェリア、モロッコ)原産。英名はAscending Wood Calamint, common calamint , ascending wild basil , wood calamint。
 亜低木、高さ30~80㎝、通常毛がある。茎は基部から強く分枝し、直立し、ミントの香りがする。葉柄は長く、葉は広卵形、長さ1~3㎝、多少、毛があり、縁に規則的な浅い円鋸歯がある。花序は(2)3~7(12)個の花を半輪生の輪散花序につけ、花が2個以上ある場合は花序柄が長さ2~16㎜ある集散花序につく。小花柄は長さ2~12㎜、通常5㎜以下、腺毛がある。萼は長さ(5)6~8㎜、球状の腺があり、下側の2個の萼歯は長さ2~4㎜、上側の3個の萼歯よりかなり長い。花冠は長さ10~17㎜、薄紫色~ピンク色。小堅果は直径約1.2㎜、ほぼ球形、暗褐色。花期は7~10月。
11-2 Clinopodium menthifolium subsp. hirtum (Briq.) Govaerts
  synonym Calamintha hirta (Briq.) Hayek
 ギリシャ原産。英名はhairy wood calamint, calamintha hirta。高山、森林地帯、低木林に生える。  高さ30~40㎝。花序軸と茎には毛が密生する。下部の葉の葉身は楕円形、先が鈍形、長さ2.5~3cm、両面に毛があり、不規則な歯がある。花は長さ6~8㎜、ピンク色または紫色で、萼ははっきりと2裂し、赤みを帯びる。下側の2個の萼歯は上側の3個の萼歯よりもかなり長い。
11-3 Clinopodium menthifolium subsp. menthifolium
  synonym Calamintha sylvatica Bromf.
 アルバニア、ブルガリア、コルシカ、フランス、イギリス、ギリシャ、イタリア、シチリア、スペイン、ヨーロッパのトルコ、ユーゴスラビア、アジア(レバノン・シリア、トルコ)原産。英名はwood calamint , calamintha sylvatica。
 多年草、高さ30~80㎝。茎は直立し、分枝は少なく、毛があり、ミントの香りがする。葉は対生し、長い葉柄があり、暗緑色、下部の葉身は長さ3~6㎝、広卵形、浅い鈍鋸歯があり、葉脈が下面で目立ち、脈上と縁に毛がある。C. menthifolium subsp. ascendens より葉が大きい。輪散花序(偽集散花序)に緩く1~9個の花が半輪生し、小集散花序柄は上部の苞より長く、長さ0.5~2㎝。花は大きく、ピンク色、長さ14~19㎜。花冠裂片は毛のある萼片の少なくとも2倍の長さがある。花冠の唇弁も大きくて色が濃い。

12 Clinopodium mexicanum (Benth.) Govaerts クリノポディウム・メキシカヌム

 メキシコ原産。英名は orange-flowered Mexican savory
 低木。茎は毛で覆われる。葉は対生し、葉柄があり、葉身は卵形、縁は鋸歯状、長さ1㎝まで、無毛。花序は上部の葉腋に単生の花がつく。萼は長さ6㎜まで、13本の明らかな脈があり、内側に毛の輪があり、先に小さな5裂片がある。花冠は赤色、まれに帯黄色、長さ2.2~3.4㎝、筒形、先で広がり、2唇形、上唇は直立し、下唇は3裂片に分かれる。雄しべは4本、そのうち2本は長い。花柱は先でやや不均等に2枝に分かれる。果実は乾燥して熟すと4つの部分に分かれる。
品種) Pink Sensation

13 Clinopodium micranthum (Regel) H.Hara イヌトウバナ 犬塔花 [広義]
 日本、朝鮮、千島列島、サハリン原産。

13-1 Clinopodium micranthum (Regel) H.Hara var. micranthum イヌトウバナ 犬塔花

  synonym Clinopodium micranthum f. albiflorum Honda in Bot. Mag. (Tokyo) 54: 224 (1940) シロバナイヌトウバナ

 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮原産。
 多年草。高さ20~60㎝。茎は下部は這い、上部は直立あるいは斜上し、中部以上でよく分枝する。葉は長さ2~3㎝、長柄があり、先はほとんど尖らず、葉裏の腺点が密なことが多い。葉柄は長さ0.5~2㎝。上部の枝の葉は小さい。花序は長く、枝先にもつく。萼は長さ4~5㎜、脈上に長い白色軟毛が生え、腺点が多い。咢歯は2唇形、上側が3歯、歯先が鋭形~鈍形、下側が2歯、歯先が長く尖鋭形。花冠は長さ5~7㎜で、上唇は小さく2裂し、下唇は大きく、3裂し、淡紅紫色の班紋がある。果実は4分果。2n=18。花期は8~10月。

13-2 Clinopodium micranthum (Regel) H.Hara var. sachalinense (F.Schmidt) T.Yamaz. et Murata ミヤマトウバナ 深山塔花

  synonym Clinopodium gracile (Benth.) Kuntze var. sachalinense (F.Schmidt) Ohwi

  synonym Clinopodium sachalinense (F.Schmidt) Koidz. 

  synonym Clinopodium multicaule (Maxim.) Kuntze var. sachalinense (F.Schmidt) Ohwi

 北海道、本州の鳥取県以北、千島列島、サハリン原産。
 葉の下面の腺点が目立たない。

14 Clinopodium multicaule (Maxim.) Kuntze ヤマトウバナ 山塔花

  synonym Clinopodium multicaule (Maxim.) Kuntze var. taquetii (H.Lev. et Vaniot) H.Hara

  synonym Clinopodium gracile (Benth.) Kuntze var. multicaule (Maxim.) Ohwi

 日本(本州の中部地方以西、四国、九州、沖縄)、朝鮮、サハリン原産。
 多年草。高さ10~25㎝。茎は単生又は束生する。葉は対生し、長さ2~5㎝の卵形~長卵形、先はやや尖り、縁に粗い鋸歯がある。葉柄の長さは6~15㎜。葉の裏面の腺点はまばら。茎頂部に1~2㎝の短い花序1個だけをつける。花は白い唇花で、花冠は長さ7~9㎜。花柄は長さ2~3㎜。萼は長さ5~6㎜、脈上に短毛があり、長毛はあってもわずかで、腺点がほとんどなく(まばらにある)、萼歯の内側に毛がある。花期は6~10月(沖縄1月)。

14-1 Clinopodium multicaule var. multicaule ヤマトウバナ 山塔花 狭義
 日本(本州の中部地方以西、四国、九州、沖縄)、朝鮮、サハリン原産。

14-2 Clinopodium multicaule var. shibetchense (H.Lév.) Melnikov ヤマクルマバナ 山車花

  synonym Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze subsp. glabrescens (Nakai) H.Hara

  synonym Clinopodium umbrosum (M.Bieb.) K.Koch var. shibetchense (H.Lev.) McKean

  synonym Clinopodium kunashirense Probat.
  synonym Clinopodium japonicum Makino 

  synonym Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze var. shibetchense (H.Lev.) Koidz.

  synonym Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze var. glabrescens (Nakai) Ohwi

  synonym Calamintha chinensis Benth.
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮原産。別名はエゾクルマバナ、アオクルマバナ、アオミヤマトウバナ、オオミヤマトウバナ。
 多年草。高さ20~80㎝。茎は倒れぎみに斜上し、全体に軟弱で毛が多い。葉は対生し、短い柄があり、長さ3~7㎝、幅1~3㎝の卵形~長卵形、鋸歯があり、基部は円形。葉の両面にまばらに白毛があり、葉裏の腺点は目立たない。数段の仮輪に密集して多数、花がつく。花は白色~淡紅紫色を帯び、唇形、長さ6~8㎜。上唇は小さく、浅い切れ込みが入り、下唇は大きく、3裂する。萼は緑色、開出する長剛毛があり、ときに腺毛がある。萼歯は5個、上側の3個は小さく、下側の2個は細く尖る。苞葉は線形、開出する長剛毛がある。果実は4分果。2n=38。6~8月。

14-3 Clinopodium multicaule (Maxim.) Kuntze var. yakusimense (Masam.) Yahara ヤクシマトウバナ 屋久島塔花

  synonym Clinopodium minimum H.Hara

  synonym Clinopodium micranthum (Regel) H.Hara var. yakusimense (Masam.) H.Hara

  synonym Clinopodium gracile (Benth.) Kuntze var. minimum (H.Hara) Ohwi

  synonym Clinopodium yakusimense (Masam.) H.Hara

  synonym Clinopodium multicaule Maxim.) Kuntze var. minimum (H.Hara) Ohwi

 屋久島に分布する。別名はコケトウバナ。山地の木陰に生育する。
 小型の多年草。高さ5cm程度。葉は対生し、卵形、長さ5~7㎜、先は鈍形、縁に粗い鋸歯がある。花は白色。花冠は2唇形、上唇は小さく、下唇は大きく、4裂する。

15 Clinopodium nepeta (L.) Kuntze カラミント
  synonym Clinopodium calamintha (L.) Kuntze
  synonym Clinopodium nepetoides (Jord.) Melnikov
  synonym Calamintha nepeta (L.) Savi
 ヨーロッパ、西アジア、コーカサス、北アフリカ原産。英名はlesser calamint , calamint。ミントに似た香りがし、ハーブとして使われる。丈夫で育てやすく、道端に逸出したものが見られる。
 多年草。高さ30~60㎝。茎は基部でよく分枝して直立し、4稜形、下向きの屈毛がある。葉は対生し、長さ1.8~3㎝の卵形、有毛、縁に鋸歯がある。葉裏には腺点が密にあり、もむと強い香りがする。花は多数つき、白色~淡紅色。花冠の下唇内面に紅紫色の斑点がある。萼は先が5裂し、下側の2裂片は細長くて鋭く、縁毛が目立つ。果実は4分果。花期は7~10月。
【参考9の解説】
 多年草、高さ20~40(~60) ㎝。茎は短い細柔毛(short pilose)~小剛毛があり、(Oaxacaでは花枝の先に短い腺毛~有頭の毛がある)。葉は葉柄が長さ5.2~11(~39)㎜、短い細柔毛がある(Oaxacaでは短い腺の頭がある)。葉身は卵形、三角形、卵状菱形、楕円状披針形~卵状楕円形、長さ1.4~3.2(~5.1)㎝ ×幅0.8~1.6(~ 3.7)㎝、芳香があり、先は鋭形、ときに円形、基部は楔形~漸尖形、縁は上半分又は基部からほとんど歯状~鋸歯状、歯は普通、不明瞭、両面とも無毛又はまばらに小剛毛があり、琥珀色の腺点で覆われる。花序は枝の上部に腋生する密散花序になり、各集散花序に花が4~6個つき、葉は花枝の先に向かって次第に小さくなる。花序柄は長さ(0.5~)1.3~1.9㎜(Oaxacaでは長さ1.2~1.9㎝)。花の苞(floral bracts)は線形、外側の苞は長さ(2.1~)3.2~5.6㎜。内側の苞は(0.5~)1.3~2.4㎜。花柄は長さ1.8~2(~4.2)㎜、果時に5.7㎜以下になり、短い直軟毛と琥珀色の腺点がある(Oaxacaでは腺が頭状)。は筒形、真っすぐ、2唇形、萼筒は長さ(4~)5~6㎜×幅1.9~2.1(~3)㎜、かすかに花後大きくなり、外側に短い直軟毛と琥珀色の腺点があり、歯のつく下が毛の輪で覆われる。上唇は長さ(2~)2.5~3.6㎜、その長さの半分又はそれ以上結合した3.個の三角形の歯からなる。下唇は長さ2.3~3.4(~4)㎜、2個の細い歯からなる。両唇は縁に縁毛があるが、下唇の毛が長い。花冠はライラック色~淡ピンク色、下唇ののど部に向かって暗色の不規則な斑点をもち、外側は直軟毛があり、内側は無毛、しかし、のど部にまばらに直軟毛がある。花冠筒部は基部の1/3又は1/2で狭く、のど部までで急に広くなり、長さ(7~)12.9~15.3㎜×幅(2.8~)4.8~7.8 ㎜ (幅はのど部の計測)、外側は短い直軟毛があり、内側は狭い部分に短い直軟毛がある。上唇は長さ(2.2~)4.8~5.6㎜、短い直軟毛がある。下唇は長さ(4~)5.9~8.2㎜×幅5~7㎜、3裂し、中裂片は割れ目があり、下部に短い直軟毛がある。雄しべはSan Luis Potosi,では2本、花糸は長さ9.8~11㎜、無毛。半葯は長さ0.8~1㎜。仮雄しべの対が有又は無、雄しべの後ろにつき、花糸は長さ0.8~1㎜。Oaxacaでは雄しべは4本、前側の雄しべの花糸は長さ1.4~3(~4.2)㎜。後ろ側の花糸は長さ (1.9~)4~4.5㎜、両方とも無毛。半葯は長さ0.3~0.5㎜。両者とも雄しべは突き出さず、半葯のセットは葯隔がわずかに大きくなることにより離れる。花柱は長さ17.7~18.6㎜(Oaxacaでは長さ9.7~10.6㎜)、無毛。柱頭の上部の枝は下側の枝より、短く、細い。分果は卵形、長さ0.9~1.1㎜×幅0.7~0.8㎜、淡褐色~金色、無毛で平滑(San Luis Potosiの集団では見られない)。
品種) 'Alba' , 'August Clouds' , 'Blue Cloud' , 'Gottlieb Friedkund' , 'Marvelette Blue' , 'Marvelette White' , 'Montrose White' , 'White Cloud'

16 Clinopodium polycephalum (Vaniot) C.Y.Wu et Hsuan ex P.S.Hsu タイワンミヤマトウバナ 台湾深山塔花

  synonym Clinopodium chinense Kuntze subsp. grandiflorum H. Hara var. parviflorum (Kudo) H. Hara

  synonym Satureja chinensis Briquet var. parviflora Kudo.
  synonym Calamintha polycephala Vaniot
 中国(安徽省、福建省、甘粛省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、河南省、湖北省、湖南省、陝西省、山東省、山西省、江蘇省、江西省、四川省、雲南省、浙江省)原産。中国名は灯笼草 deng long cao。標高0~3400mの丘陵、森林、茂みに生える。
 茎は直立し、長さ50~100㎝、基部はときに這い、よく分枝し、開出する腺毛がある。葉柄は長さ1㎝まで。葉身は卵形、長さ2~5㎝×幅1.5~3.2㎝、伏剛毛があり、基部は広楔形~円形、縁は離れた円鋸歯状歯があり、先は鈍形~鋭形、上部の葉は苞状。輪散花序は多数花があり、球形、直径2㎝まで、頭状で、大きい円錐花序。苞は針状、長さ3~5㎜。小花柄は長さ2~5㎜。萼は約・長さ6㎜×幅1㎜、絨毛があり、脈に腺微軟毛があり、喉部にはまばらに剛毛がある。果時の萼は基部の片側が膨らみ、幅2㎜まで。上側の萼歯は三角形で尾状、下側の萼歯には芒がある。花冠は紫赤色で、長さ約8㎜、花冠筒部には軟毛がある。上唇は真っすぐで、先が凹形。雄しべは含まれ、後側の2本は小さな葯を持ち、前側の2本は突出し、葯は正常。小堅果は褐色、卵形、長さ約1㎜、平滑。花期は7~8月。果期は9月。

17 Clinopodium umbrosum (M.Bieb.) K.Koch クリノポディウム・ウムブロスム

  synonym Calamintha umbrosa (M. Bieb.) Fisch. & C.A. Mey.
  synonym Calamintha clinopodium var. umbrosa Dunn
  synonym Calamintha nepalensis Fisch. & C.A.Mey.
 中国、ロシア(北コーカサス)、トランスコーカサス、インド、ネパール、ブータン、アフガニスタン、パキスタン、バングラデシュ、ミャンマー、トルコ、イラン原産。英名はshady calamint , transvaal caldelabra tree。この種はClinopodium polycephalumと同種とする研究者もいる。Flora of Chinaには掲載されていない。
 多年草、細い根茎を持つ。茎は少数または数本、分岐する場合もしない場合もある、長さ20~40㎝、直立または斜上し、通常細く、細柔毛があり、腺のない白色の開出毛または後屈毛がある。葉は質が薄く、長さ10~30㎜×幅5~20㎜、広卵形~卵状長円形、ほぼ全縁、小円鋸歯~鋸歯があり、基部は円形、上部は鋭形、まばらに細柔毛があり、特に下面の葉脈上にあり、散在する無柄の油腺は有または無。葉柄は長さ約10㎜までだが、しばしばこれより短い。上部の葉の腋に輪散花序があり、花が10~20(~40)個つき、疎または多少疎。萼片は長さ5~6㎜で湾曲しており、長く開出する腺のない毛があり、散在する頭状腺毛は有または無。上唇の歯は長さ0.5~1㎜で三角形。下唇の歯は長さ約1.5㎜で錐形、縁毛がある。花冠はピンク色~紫色、長さ6~9㎜。花冠筒部は萼片の歯の内側に含まれるか、またはほとんど突き出ない。半葯は無毛、平行または散開する。小堅果は約・長さ0.8㎜×幅0.5㎜、平滑、ほぼ球形で、白い付着痕がある。花期は5~7月。(Flora of Pakistan)

18 その他ハイブリッド
品種) 'Amber Blush' , 'Fritz Kuhn'

参考

1) Flora of China
 Clinopodium
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=107356
2)Plants of the World Online | Kew Science
 Clinopodium
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30008690-2
3)GRIN
 Clinopodium
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=2702
4) 植物研究雑誌 1935年 11巻 2号 p.101-112
 原 寛:東亜植物考(其四)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/11/2/11_11_2_1481/_pdf/-char/ja
5)植物研究雑誌 Journal of Japanese Botany 1936 年 12巻 1号 p. 37-46
 東亜植物考(其九)原寛
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/12/1/12_12_1_1658/_pdf/-char/ja
6) 植物研究雑誌 第49巻 第9号 昭和49年9月 p264
 ジャカゴトウパナ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_049_264_264.pdf
7)植物研究雑誌 Journal of Japanese Botany Vol. 67 No.4 p24
 ヤマトウパナ琉球に分布(山崎敬)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_067_243_243.pdf
8) Clinopodium umbrosum - Shady Calamint - Flowers of India
 Shady Calamint
http://www.flowersofindia.net/catalog/slides/Shady%20Calamint.html
9)(PDF) Discovery of naturalized Clinopodium nepeta ...
Discovery of naturalized Clinopodium nepeta (Lamiaceae) in Oaxaca and San Luis Potosi, Mexico
https://www.researchgate.net/publication/318277736_Discovery_of_naturalized_Clinopodium_nepeta_Lamiaceae_in_Oaxaca_and_San_Luis_Potosi_Mexico
10) Flora van Nederland
 Bergsteentijm s.s. - Clinopodium menthifolium
https://www.floravannederland.nl/planten/bergsteentijm_s.s.
11)Der Schlüssel folgt der Flora Helvetica und der "Mountain Flora of Greece.
 Unterarten von Clinopodium menthifolium
https://www.mittelmeerflora.de/Zweikeim/Lamiaceae/clin_menthi.htm
12)Tokyo Repository 115 理学系研究科・理学部
 30 紀要・部局刊行物 The Journal of the College of Science,
 Imperial University of Tokyo, Japan = 東京帝国大学紀要 理科 43
The Journal of the College of Science, Imperial University of Tokyo, Japan 巻 43, p. 1-59, 発行日 1921-03-30
 Enumeratio Labiatarum specierum varietatum formarumque in Insulis Kurilensibus et Insula Yezoensi sponte nascentium
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/37691