オトギリソウ 弟切草
Flora of Mikawa
オトギリソウ科 Clusiaceae オトギリソウ属
中国名 | 小连翘 xiao lian qiao . |
学 名 | Hypericum erectum Thunb. var. erectum |
花 期 | 7~9月 |
高 さ | 30~70㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 日当たりのよい山野 |
分 布 | 在来種 日本全土、朝鮮、中国、台湾、ロシア |
撮 影 | 田原市 06.9.9 |
茎はほとんど分枝せず、直立する。葉、萼片、花弁に腺体があるのが特徴。この腺体は色素を持ち、黒く見えるため、黒点(線状になると黒線)と呼ばれている。葉は対生し、長さ1.5~5㎝、幅0.8~1.3㎝の狭い三角状卵形~狭長楕円形、先は鈍形、基部は円形、やや茎を抱く。葉裏に黒点と明点がある。花は直径約2㎝の黄色い5弁花。暗くなると花を閉じる。花弁に黒線と黒点がある。萼片は長さ約2.5(~7)㎜、幅約1(~3)㎜、黒点と黒線がある。雄しべは25~30(40)個、基部で3束に合着する。雌しべ1個、花柱3個。果実は長さ5~11㎜、赤色に熟し、乾くと次第に褐色になり、先端が3裂し、春まで残る。種子は長さ0.7~0.8㎜の円筒形、茶褐色、表面に網目がある。2n=16。
類似種の小形のコケオトギリやヒメオトギリには黒点はない。
1 Hypericum erectum Thunb. オトギリソウ 弟切草
日本全土、朝鮮、中国、台湾、千島列島、サハリン原産。標高450~2250m(中国)、100~2100m(日本)の草地斜面、乾燥した森林や藪に生える。
多年草、高さ(10)30~80(~100)㎝、直立または斜上し、分岐して根を張り、基部は木質。茎は単生または少数(2~3)またはときに叢生し、花序の下では分岐せず、上部でときに棒状に(virgately)分岐する。若い茎はわずかに2線があり(2-lined)、すぐに円柱形になり、腺はなく、節間は長さ14~55㎜で、葉より短いかまたは長い。葉は無柄、葉身は長さ(12~)15~50(~60)㎜×幅(5~)7~15(~30)㎜、狭三角形状卵形~狭楕円形で、下面は淡色で、紙質、先は鋭形または漸尖形~円形、わずか凹形、縁は平らまたは反り返り、基部は心形で抱茎、葉脈: 主な側脈は中脈の下部1/3~1/2に3~4(~5)対あり、三次の網状脈はかなり密、葉身の腺(laminar glands)は黒色の点状、±密で小さく、まれに淡色で小さく、点状(punctiform)~短い条線状(striiform)であり、縁内腺(intramarginal glands)は黒色で密、まれに淡色で、微細である。花序は多数の花が付き、1~3節から成り、しばしば下部の6節まで分岐し、全体が散房花序形~円筒形である。小花柄は長さ1.5~3㎜。苞と小苞は縮小した葉状で、全縁。花は直径約15㎜、ほぼ星形。蕾は狭楕円形、先は鋭形。萼片は5個、ほぼ等長~不等長、約・長さ3.5~7㎜×幅1~3㎜、卵状披針形~長円状楕円形、先は鈍形(まれに円形)~鋭形、全縁またはまれに不規則な目立つ腺をもち、5脈があり、外側の脈はしばしば分岐し、萼片の面の腺(laminar glands)は黒色またはまれに淡色もあり、線形~点状、縁内腺(intramarginal glands)は黒色、やや密~まばら、または無い。花弁は5個、明るい黄色、蕾は赤みがからず、長さ6~10㎜×幅2~2.5㎜、萼片の長さの2.5~3倍、倒卵形~長円形、全縁または散在する目立つ腺があり、花弁の面の腺(laminar glands)は黒色、条線状~点状、上部にあり、縁の腺(marginal glands)は黒色、辺縁内(intramarginal glands)にもあり、目立ち(prominent)、不規則。雄しべは約25~40本、3束になり、最長は5~7㎜、花弁の長さの約0.7倍。葯腺は黒色。子房は長さ2.5~3.5㎜×幅1㎜、卵形。花柱は3本、離生、広く散開し、長さ(3~)3.6~4(~4.5)㎜、子房の長さの1~1.2(~1.5)倍。柱頭は狭い頭状。蒴果は長さ5~11㎜×幅3.5~6㎜、萼片の長さの1.2~2.5倍、狭卵形~広卵形。種子は褐色、長さ(0.67~)0.8~1㎜、種皮は階段形=はしご形(scalariform)。2n=16。
3変種と7品種に分類されている。品種はホソバオトギリ(f. angustifolium)、コエダウチオトギリ(f. debile)、オキナワオトギリ(f. lutchuense)、ヒロハオトギリ(f. papillosum)、メイテンオトギリ(f. perforatum)、ヨサオトギリ(f. tateutianum)、トガリバオトギリ(f. vaniotii)。YListでは品種を基本変種に含めている。
1-1 Hypericum erectum var. caespitosum Makino フジオトギリ 富士弟切
synonym Hypericum fujisanense Makino
日本の富士山周辺に分布。全体に小型で高さ10~15㎝、茎は1本またはまれに2本から3本ではなく比、較的短い茎が多数叢生する。花は直径1.5~2㎝。花期は7~9月。
1-2Hypericum erectum var. deviatum Y.Kimura ニセオトギリ 偽弟切
日本(本州)に分布。オトギリソウとアゼオトギリ等の明腺をもつ種との雑種の可能性が示唆されている。
茎は高さ55cm、直立し、単独で、または緩く(2~3本)房状で、単純または先で枝分かれし、かなり硬くて幅が広い。葉は長さ2~3㎝×幅1~1.5㎝、広卵状長円形、黒色の点があり、しばしば非常に細かくわずかに透明な点状、縁には黒色の点と非常に微細な透明な点がある。萼片は約・長さ6㎜×幅2㎜、黒色の点と条線があり、しばしば透明な条線があり、縁に黒点がある。花弁は小さく、長さ7㎜、黒色の点と条線と少数の半透明の条線または細点があり、縁に黒色のパピラがある。子房は長さ3㎜、花柱は同じ長さ。雄しべは約40本。
1-3 Hypericum erectum var. erectum オトギリソウ 弟切草 狭義
synonym Hypericum erectum Thunb. var. erectum f. erectum
synonym Hypericum erectum Thunb. (H.Lev.) Y.Kimura
synonym Hypericum penthorodes Koidz.
日本全土、朝鮮、中国、台湾、ロシア原産。中国名は小连翘 xiao lian qiao。日当たりのよい山野に生える。YListではf. angustifolium, f. debile, f. lutchuense, f. papillosum, f. vaniotiiをこの基本変種のsynonymとしている。
多年草。中型で高さ30~70㎝。茎はほとんど分枝せず、直立する。葉、花弁と萼片に腺体があるのが特徴。この腺体は色素を持ち、黒く見えるため、黒点(線状になると黒線)と呼ばれている。葉は対生し、長さ1.5~5㎝、幅0.8~1.3㎝の狭い三角状卵形~狭長楕円形、先は鈍形、基部は円形、やや茎を抱く。葉裏に黒点と明点がある。花は直径約2㎝の黄色い5弁花。暗くなると花を閉じる。花弁に黒線と黒点がある。萼片は長さ約2.5(~7)㎜、幅約1(~3)㎜、黒点と黒線がある。雄しべは25~30(40)本、基部で3束に合着する。雌しべ1個、花柱3個。果実は長さ5~11㎜、赤色に熟し、乾くと次第に褐色になり、先端が3裂し、春まで残る。種子は長さ0.7~0.8㎜の円筒形、茶褐色、表面に網目がある。2n=16。花期は7~9月。
オトギリソウ(ヒパリカムまたはハイペリクム)属
family Clusiaceae - genus Hypericum高木(高さ約12mまで)、低木、または多年草から1年草、ときに根茎があり、無毛または単純な単毛があり、腺管(glandular canals)または小窩(lacunae)または点(dots)があり、樹脂またはワックス(琥珀色)、精油(透明または淡色)、多くの場合ヒペリシン[hypericin:オトギリソウに含まれる暗赤色のアントラキノン系天然色素]と擬似ヒペリシン[pseudohypericin:セイヨウオトギリソウに最もよく見られる天然色素](赤色から黒っぽいまたは濃色)を含む。茎は緑色~黄褐色~赤色で、若いときは各節間に2~4(~6)本の隆起した線があり、それらの線は上部の葉の中央脈から派生したもので、通常最も顕著で(狭い翼を形成するために広がることもある)、最終的には通常は円柱形になるが、一部の草本では完全に円柱形になる。無毛または被毛がある。腺がないまたは淡色の腺から濃色の腺(± 顕著なこともある)がある、または小腺があり(glandiferous)、単純なまたはまれに分岐する。樹皮は平滑で、赤褐色~紫褐色または銀色、薄いかまれにコルク質、シート状、パッチまたは不規則な帯状に剥がれ、樹脂を含んだ樹液(sap)またはラテックス(latex)は染み出さない。葉は対生し、十字対生するか、ときに3~4枚が交互に輪生し、落葉し、無柄または短い葉柄が次第にあり、ときに基部に関節があり、離生または±融合し、関節部または関節より上部で落葉するか、または宿存する。葉身は全縁またはときに腺のある縁飾りの耳があり、または、基部にまれに全体に、腺のある小歯または腺のある房状へりがあり、脈は平行2分岐脈~羽状脈または1脈が、開くかまたは閉じ、3次脈は欠くかまたは密に網状である。腺は線形~点状(punctiform)、淡色および/または暗色で、縁(marginal)~葉面(laminar)にある。被毛は欠くか、または有る。花序は頂生、集散花序、1~多数の花がつき、頭花では二分花/一分花(dichasium/monochasium)または擬似二分花または両形態の混合(「混合花序」)によりアクロトニック的(acrotonally:樹液を植物の上部近くの芽に送ることを好み頂芽に主導されて)に精巧に作り上げられ、基本的に(basitonally)、腋生花または花枝により形成され、ときに頂芽の抑制により密錘花序または総状花序になる。葉から萼片への移行は突然または次第に起こる。苞および小苞がしばしばあり、通常萼片に類似し、葉と同じくらい長く宿存するか、またはたまに、早落性になる。花は両性、放射相称、星形~鐘形、まれに偽筒形、同形花柱(homostylous)またはまれに2形性異花柱(dimorphically heterostylous)。萼片は4~5個(異常では6個または3個)、5点形(quincuncial)または対生で十字対生(まれにほぼ開き)、等長またはほぼ不等長、ときに葉状、離生または長さの0.7まで合着し、宿存性またはときに脱落性、縁は全縁または腺のある小歯~腺のある房状へりまたは腺のない房状へりがあり、脈は1~11本で平行または2分岐~羽状分岐し、腺は縁腺(marginal glands)~片面腺(laminar glands)、線形~点状(punctiform)、淡色および/または暗色、被毛はないかまたは背面のみにある。花弁はレモン色~黄金色~橙色、まれにクリーム色~白色、しばしば蕾では背側や脈が帯赤色になり、ごくまれに全体が紅色になり、4~5個(まれに6個、3個)、捻じれ(contorted)、等長、離生、宿存性または落葉性、非対称(縮小形を除く)、全縁、または無柄の縁腺または腺のある縁毛があり、通常、蕾の縁の先端に±明らかな突起(小突起 apiculus)をもち、まれに全縁で僧帽形(cucullate)または3裂して平らな舌形になり、脈は多数または少数、ときに2分割(dichotomising)または輪(loops)を形り、縁に達し、または達せず、腺は片面腺(laminar glands)としばしば縁腺(marginal glands)、点状~線形、淡色および/または暗色; 被毛はない。雄しべは(3)4~5束になり、 花弁の前にあり(antipetalous)、離生または様々に統合し(2+1 + 1 + 1,2 + 2+ 1、(5), (4))、次に萼片に互生する(antisepalous)2束があり、無毛、宿存または脱落し、雄しべはそれぞれに1~約60本ある。花糸は黄色~橙色、まれにクリーム色、白色または深紅色、細く、基部のみが統合または離生に見え、または少数の3束の種では中間の上まで統合している。葯は黄色~橙色または帯赤色、長円形~楕円形、ほぼ等径(isodiametric)、2半葯、葯隔の上に琥珀色~赤色~帯黒色の腺があり、葯は背着(dorsifixed)、まれに明らかに底着(basifixed)し、縦方向のスリットによって内向き(introrsely)に裂開する。花粉は3溝孔型(tricolporate)、球形=球状体 (spheroidal)~長球形(prolate)で、外皮は微細網目型(microreticulate)~網目型(reticulate)または外表層微穿孔型(tectum perforatum)を持つ。仮雄しべ束はないか稀に3束で、1 + 2 + 2の雄しべ束と互生し、鱗片状で全縁または2裂し、イネ科の鱗被(lodicules)のように機能する。子房は2~5数性で無毛、胎座は不完全から完全な中軸(axile)または±側膜(parietal)。花柱は2~5本で細く、離生または部分的または完全に統合し、柱頭は明瞭で、微小~頭状。胚珠は各胎座に2~多数個あり、直立または水平または垂れ下がる。果実は蒴果、2~5バルブがあり、先端から 胞間裂開し、バルブはやや木質または革質~紙質で、宿存またはまれに脱落し、まれに遅く裂開または非裂開で、バルブが±肉質で赤色~黒色を帯び、バルブは1~多数の種子を持ち、しばしば油管=縞(vittae)が突き出し目立ち、線形または点状(vesicles:小胞)、琥珀色またはまれに黒色を帯びる。花柱は完全にまたは部分的に宿存する。種子は小さく、長さ0~3㎜、狭円筒形~卵状円筒形または楕円形、わずかに湾曲するか通常は真っ直ぐで、突き出した出した片側の竜骨(carina)または薄い紙質の翼がないかまたはあり、先端の膨張部(基部の膨張部も時々ある)がないかまたはあり、翼状または厚く、まれに先端に帯白色のカルンクル(種沈)がある。種皮は黄褐色~赤褐色または紫褐色(帯黒色)で、彫紋があり、±顕著に網目または線状網目~小窩状またははしご形(scalariform)またはパピラがある。胚乳はない。胚は細長く、真っ直ぐ。子葉は等形、離生、平凸形、胚軸より短い。
世界に約460種があり、極地や砂漠や低地の熱帯を除き、ほとんど全世界に分布する。x=12, 9~7, 6(2倍体)。日本ではヒペリカム。
オトギリソウ属の主な種と園芸品種
1 Hypericum addingtonii N.Robson ヒペリカム・アディングトニーsynonym Hypericum ptarmicifolium Spach
中国(雲南省)原産。中国名は碟花金丝桃 die hua jin si tao。標高1800~3400mの竹林、草地斜面の茂み、ツガ林の縁に生える。
低木、高さ1.5~2m、幅2.5mまで広がる。枝は弓状から広がる。茎は若いうちは4角形だが2稜ではなく、すぐに円柱形になり、節間は1~5㎝で、葉より短い。葉は葉柄が長さ1~2.5㎜、葉身は楕円状長円形~卵状披針形または長円状披針形、長さ(2~)2.5~8.5㎝×幅1~3.5㎝、厚い紙質、下面はより淡色だが粉白色ではなく、葉身腺(laminar glands)は点(dots)および短い条線、上面に腺はないかまれにまばらにあり、主側脈は3~4対(または5対)で、三次若の網目構造は見られなず、基部は楔形、先は小突起形または鈍形~円形。花序は花が1~3(~5)花で、頂端節から生じ、平らな頂部を持つ。苞葉は披針形で、持続性がある。花柄は2~10 mm。花径は(3~)5~6.5 cmで、浅くカップ状になる。蕾は卵形で、先は鈍形。萼片は直立し、ほぼ等分、卵形から長楕円形または長楕円へら形、長さ7~10 × 4.5~6.2 mm。腺葉線は葉身に付き、ときに断続する。縁は全縁または微細鋸歯状で、ときに狭く無色縁を持ち、先は鋭形または尖端から鈍形。花弁は黄金色で、広倒卵形から亜円形、長さ(2~)2.5~3.2㎝×幅(1.2~)1.5~3.2㎝、萼片の長さの3~4倍、腺がなく、縁は全縁または侵食された小歯状、雄しべの束はそれぞれ40~45本の雄しべを持ち、最長は1.2~1.5cm、花弁の長さの約2/5倍。子房は卵形、長さ5~7㎜×幅3~5㎜。花柱は長さ4.5~5(~7)㎜、子房の長さの0.7~0.8(~1)倍、離生、直立し、先端近くで外側に曲がる。蒴果は卵形~円筒状卵形、長さ約2㎝×幅1~1.2㎝。種子は暗赤褐色、長さ1~1.2㎜、竜骨はないかほとんどない。種皮は線状窩状(linear-foveolate.)。花期は4~7月。果期は10月。
2 Hypericum androsaemum L. コボウズオトギリ 小坊主弟切
ロシア、アルメニア、ジョージア、アゼルバイジャン、トルクメニスタン、イラン、トルコ、ヨーロッパ、北アフリカ原産。英名はtutsan , Shrubby St.John's Wort , sweet-amber。標高1800mまでの低地の湿ったまたは日陰の場所に生える。世界中で広く栽培され、多数の園芸品種がある。
半常緑小低木、高さ30~70㎝。基部から多数の茎が分岐するが根を張らず、枝は直立して茂る。若い茎は2線があり、やがて円柱形になり、節間は長さ3~9mm、葉より短いか長い。樹皮は亀裂があるかまたは鱗片状になる。葉は対生し、無柄、ときに抱茎、傷つけてもヤギのような臭い(カプロン酸の臭い)はしない。葉身は長さ(25~)40~120(~150)㎜×幅20~80㎜、長楕円形または三角状卵形~広卵形、先は円形またはまれに鈍形、縁は平ら、基部は切形~心形、下面はより淡色、粉白色ではなく、紙質、脈は、両側に±顕著な三次の細い網状を伴い、4~5対の斜上する主側脈があり、葉身腺(laminar glands)は小さく、縁内腺(intramarginal glands)は密である。花序は花が1~11個、1~2節につき、±節間は短く、散房花序~偽散形花序で±狭く斜上する枝があり、付属花はなく、ときに下部の節に1~3花の枝がある。小花柄は長さ8~14㎜、苞は縮小し、線状披針形~錐形。花は直径15~25㎜。蕾は球形で丸みを帯びる。萼片は5(まれに4)個、長さ6~12(~15)㎜×幅3~7㎜、重なり合い、著しく不等長、広がり~後屈し、花後に大きくなり、果時に後屈して宿存し、長円形~広卵形、先は円形、基部に7~9(~11)本の脈があり±密に網目状になり、萼片面の腺(laminar glands)は点状、またはときに条線状、縁内腺(intramarginal glands)はかなり密。花弁は5(まれに4)個、赤みがからない黄金色、内曲し、長さ6~10(~12)㎜×幅3~7㎜、萼片と同長かわずかに短く、倒卵形、先端に小突起はない。雄しべは5束になり、束ごとに20~25(~30)本の長い雄しべがあり、最長7~11㎜で、花弁の長さ約0.9~1.1倍。子房は長さ4~5㎜×幅3.5~4.5(~5)㎜、楕円状亜球形、先は円形~切形。花柱は長さ2~2.5㎜で、子房の長さの約0.5倍、直立し、上半分は鋭く外側に曲がる。柱頭はほぼ頭状。蒴果は長さ7~12㎜×幅6~8㎜、広円筒状卵形または円筒状楕円形~球形、先は円形~小凹形、壁が薄く肉質で、成熟すると帯赤色~暗赤褐色または紫黒色、光沢があり裂開しない(ただし、ときに乾燥時に横に圧縮すると3つに裂ける)。種子は赤褐色、長さ約1mm、部分的にまたはまれに完全に片側に翼があり、先端に翼のある付属他体はない。2n=40。花期は5~7月。
品種) 'Albury Purple' , 'Aureum' , 'Autumn Blaze' , Bordeaux Flare = 'Bosabord' (PBR) , 'Bosaama' , 'Bosabord' (PBR) , 'Bosabrill' , 'Bosacand' (PBR) , 'Bosacara' (PBR) , 'Bosadra' , 'Bosaenv' (PBR) , 'Bosafir' (PBR) , 'Bosafores' (PBR) , 'Bosaja' , 'Bosajol' , 'Bosalemo' (PBR) , 'Bosalime' (PBR) , 'Bosamega' (PBR) , 'Bosaphan' (PBR) , 'Bosaspi' , 'Bosasuga' (PBR) , 'Bosatoma' (PBR) , 'Bosavor' (PBR) , 'Bosawasa' , 'Caro' (PBR) , Celine Classic = 'Vercelicla' (PBR) , Cornflakes = 'Vippzalm' , 'Dart's Golden Penny' , 'Doro' (PBR) , 'Esm Cho' (PBR) , 'Esm Chocola' (PBR) , 'Esm Espanola' (PBR) , 'Esm Greli' (PBR) , 'Esm Jack' (PBR) , 'Esm Kalua' (PBR) , 'Esm Mun' , 'Esm Ora' (PBR) , 'Esm Pin' (PBR) , 'Esm Re' (PBR) , 'Esm Wet' (PBR) , 'Excellent Flair' , 'Mrs Gladis Brabazon' (v) , 'Fdv Olivia' (PBR) , 'Fdv Paula' (PBR) , Fire Classic = 'Verficla' (PBR) , Fire Flair , 'Glacier' , 'Gladys Brabazon' , 'Glob Dr205' (PBR) , 'Glob Lp208' , 'Globdp327' (PBR) , 'Globdr345' (PBR) , 'Globgg124' (PBR) , 'Globgg367' (PBR) , 'Globgg499' (PBR) , 'Globgg649' (PBR) , 'Globpe391' (PBR) , 'Globpr713' (PBR) , 'Globrr287' (PBR) , 'Globrr3246' (PBR) , 'Globrr412' (PBR) , 'Globwh753' (PBR) , 'Globyg1359' (PBR) , 'Golden Flair' , 'Golden Tutsan' , Ignite™ Red , Ignite™ Scarlet Red , 'Opale' (PBR) , 'Orange Flair' , 'Red Fite' (PBR) , 'Red Glory' , 'Rita' (PBR) , 'Rosemary' , 'Seibig' (PBR) , 'Seiblon' (PBR) , 'Seiclear' (PBR) , 'Seifire' (PBR) , 'Seigre' (PBR) , 'Seikuf' , 'Seimul' , 'Seion' (PBR) , 'Sunrise' (PBR) , Tomato Flair = 'Bosatoma' (PBR) , 'Verbeachpop' (PBR) , 'Verbita' , 'Verbrota' , 'Vercelicla' (PBR) , 'Vercreta' , 'Verelaicla' (PBR) , 'Verficla' (PBR) , 'Vergrecla' (PBR) , 'Vericecla' (PBR) , 'Verivocla' (PBR) , 'Verlolpop' (PBR) , 'Vermelcla' (PBR) , 'Verneta' , 'Verocla' (PBR) , 'Verparkpop' (PBR) , 'Verpeacla' , 'Verpincla' (PBR) , 'Verredcla' (PBR) , 'Verroscla' , 'Versalcla' (PBR) , 'Vertrendpop' (PBR) , 'Verwhitcla' (PBR)
3 Hypericum asahinae Makino ダイセンオトギリ 大山弟切
synonym Hypericum asahinae f. lucidum Y.Kimura
synonym Hypericum asahinae f. nigrum Y.Kimura
synonym Hypericum asahinae var. siroumense Y.Kimura
日本固有種(本州の北陸地方~中国地方)。別名はメイテンダイセンオトギリ。尾根筋の露岩地の乾燥地に生える。
多年草。高さ20~60㎝。葉は十字対生、やや密につき、卵状長円形、長さ2~5㎝×幅約5㎜、先は鈍形、基部は茎を抱き、黒点と明点があるが、縁には黒点のみがつく。枝先の集散花序に少数の花を上向きにつける。花は直径約2㎝。蕚片は幅が狭く、先は尖る。花弁は5枚、黄色、黒点や黒線がある。花柱は長さが子房の長さの約2倍。花期は夏。
4 Hypericum ascyron L. トモエソウ 巴草 広義
日本、韓国、中国(西蔵省と青海省を除く全省)、台湾、モンゴル、ロシア(アルタイからカムチャッカ半島、千島列島、サハリン)、カザフスタン、ベトナム、北アメリカ(カナダ、USA)原産。中国名は黄海棠 huang hai tang。標高0~2800(~3600)mの湿地から乾燥地、草地または岩の多い斜面、時には森林または低木林、川岸、川岸に生える。
多年草、高さ50~130(~200)㎝、直立またはときに、短く匍匐する木質の基部から斜上し、茎は1本または少数で、叢生し、分枝しないか、上部またはほぼ全体で分枝する。若い茎は4角(かど)があり、下部で4線またはたまに節間で2線になり。節間は2~12㎜、葉よりも長いか、短い。葉は無柄、葉身は長さ(30~)40~97(~120)㎜×幅(4~)7~35(~40)㎜、卵状披針形または±狭披針形または狭長円形または狭楕円形~長円形または倒披針形、下面はやや淡色で、粉白色ではなく、平らで、紙質、先は鋭形~ほぼ小突起形または鈍形(または最下部はまれに円形)、縁は全縁、基部は楔形~心形抱く茎、中脈の下半分に4~7対の主側脈があり、副中脈(subsidiary midrib)の枝と密集した三次脈の網状組織は目立たず、しばしば不明瞭である。葉身腺(laminar glands)は淡色で密集し、不均等な点または短い条線がある。縁内腺(intramarginal glands)は淡色で小さく、密集する。花序は1~5節から1~35花がつき、全体がほぼ散房花序形~狭ピラミッド形で、4節下までの花枝があることもある。果時には小花柄は長さ5~30㎜。苞と小苞は葉状だがより小さく、しばしばより幅広くなり、まれに線状披針形で落葉する。花は直径30~70(~80)㎜、星形、花弁は広がる~後屈する。蕾は広卵形~狭卵形、先は丸みを帯びる~ほぼ鋭形。萼片は長さ(3~)5~15㎜×幅(1.5~)2~7(~10)㎜、離生、覆瓦状、ほぼ等長~不等長、外側の萼片はときに葉状になり、蕾と果実では直立し、長円形~楕円形または卵形~卵状披針形または倒卵形、先は円形~鈍形、まれにほぼ尖鋭形~鋭形、全縁、脈は約11~17本、分岐して上部で融合し、中脈はほとんど分化せず、萼片の腺(laminar glands)は線形、上部で断続または条線状になり、縁腺(marginal glands)は間隔が離れ、小さい。花弁は明るい黄色(から金色?)、ときに蕾では赤みがかり、長さ14~41㎜×幅5~20㎜、萼片の長さの2~3倍、または萼片が葉状であるときは比較的短く、倒卵形または長倒卵形~倒披針形、しばしばややへら形~ほぼ爪形、強く湾曲~ほぼ直線状、先は円形または鈍形~まれに鋭形または尖鋭形、先端の小突起は短く、円形または欠き、縁は全縁、花弁の腺(laminar glands)は淡色、線形~上部は条線状または欠き、縁腺(marginal glands)は無い。雄しべは5(4?)束になり、上部は赤色、各束に約30本の雄しべがあり、最長9~25mm、花弁の長さの約0.4~0.67倍。葯は帯赤色、腺は琥珀色。子房は5(4)室、長さ4~7(~9)㎜×幅3~5㎜、広卵形~狭卵状ピラミッド形または楕円形。花柱は5(4)本、長さ2.5~15㎜、子房の長さの約0.5~2倍、離生または長さの0.8以下が連結または合着する。柱頭は広い頭状から漏斗状。蒴果は長さ9~22(~30)㎜×幅5~13㎜、広卵形~狭卵形または卵状ピラミッド形、まれに狭円筒形、萼片の長さの2~3倍、鈍形~円形で、多数の狭い縦の油管がある。種子は暗赤褐色、長さ1~1.5㎜、円筒形、湾曲していないかわずかに湾曲し、深く竜骨があるかまたは狭い翼があり、先端がわずかに広がる。種皮は密に浅い線状網目がある。2n=約22~20, 18 (n=9, 16)。
3亜種がある。
4-1 Hypericum ascyron L. subsp. ascyron var. ascyron トモエソウ 巴草
synonym Hypericum ascyron var. longistylum Maxim. オオトモエソウ日本(北海道、本州、四国、九州)、韓国、中国、台湾、モンゴル、ロシア、ベトナム原産。中国名は黄海棠 huang hai tang 。山地、丘陵の向陽地に生える。
多年草。高さ50~130㎝。オトギリソウの仲間のうち最大。全体に無毛。茎は4稜形。葉は対生し、長さ4~12㎝、幅(0.5)0.7~4㎝の披針形、基部はやや茎を抱く。葉には明点があり、黒点は無い。茎頂で分枝し、直径4.5~8㎝の花を多数つける。花弁5個がねじれ、上から見るとスクリューのような巴形になり、これが和名の由来である。萼片は5個、幅6~10㎜、大きさが不揃い、脈間に明線がある。雄しべは5束に分かれ、多数。花柱の先は5裂する。果実は長さ0.9~2.2(3)㎝、幅5~13㎜、卵形~卵状ピラミッド形、まれに円筒形、萼片の長さの2~3倍。種子は暗赤褐色~黄褐色、長さ1~1.5㎜、竜骨状~狭翼状、種皮は網状。2n=16,18,20,22(普通18)。花期は7~8月。
4-2 Hypericum ascyron L. subsp. gebleri (Ledeb.) N.Robson ヒメトモエソウ 姫巴草
synonym Hypericum gebleri Ledeb.synonym Hypericum ascyron L. var. brevistylum Maxim.
朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は短柱黄海棠 duan zhu huang hai tang
高さ50~100㎝。葉は長さ3~6㎝×幅0.4~1.5㎝、基部は楔形。花は直径4.5~5㎝。萼片は狭長円形~長円状披針形、幅1.5~7㎜、先は円形~鈍形~鋭形。花柱は長さ2.5~3.5㎜、子房の長さの約半分、離生。蒴果は円筒状楕円形。
4-3 Hypericum ascyron subsp. pyramidatum (Aiton) N.Robson
synonym Hypericum pyramidatum Aiton
カナダ、USA原産。標高0~1500mの川岸、道端の溝、湿地、湿った草地に生える。
多年草、直立し、基部から分枝し、しばしば狭い斜上する枝をもち、高さ50~200㎝。茎は節間は初め4線があり、次いで4稜になる。葉は広がり、無柄、抱茎。葉身は主茎では卵状披針形~披針形または長円形、長さ40~85㎜×幅18~37㎜、上部と枝ではより小さく、基部は円形~心形、縁は平ら、先は通常鋭形~小突起形、ときに鈍形、中脈は4~7対の枝脈があり、三次脈は縁で密な網状になる。花序は円筒形~狭ピラミッド形、花が1~35個つく。萼片は卵形~披針形または長円状楕円形、ほぼ均等~均等、長さ8~13㎜×幅4~8㎜、先は鋭形~尖鋭形。花弁は黄金色で、ときに赤みがかり、狭倒卵形~倒披針状鎌形、長さ25~40㎜。花柱は(4~)5本、長さ3~7㎜。蒴果は卵形、長さ12~20(~30)㎜×幅10~13㎜。種子は長さ1.5㎜、狭い翼があり、種皮は浅く線状の網がある。花期は夏(6~8月)。
(1) Hypericum ascyron L. var. longistylum Maxim. オオトモエソウ 大巴草
九州、朝鮮、中国東北部に分布。
花が大きく、花柱が長い。POWO、Flora of Chinaでは認めていない。
5 Hypericum attenuatum Fisch. ex Choisy シナオトギリ 志那弟切
synonym Hypericum perforatum var. confertiflorum Debeaux。
朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、貴州省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、陝西省、山西省、四川省、浙江省。広東省、広西省)、モンゴル、ロシア原産。中国名は赶山鞭 gan shan bian。海抜0~2000m、野原、牧草地、ステップ、草地および乾燥した石の多い斜面、小石の多い海岸、森林の縁、開拓地に生える。
多年草、高さ10~45(~70)㎝、台木から直立するか、または匍匐性の根茎をもつ。茎は多数から少数で、叢生し、よく分枝する。茎は2線があり、線上に黒色の腺点と条線(streaks)があり、他の部分にはしばしばまばらに(帯赤色または黒色で)ある。葉は無柄。葉身は楕円形~長円形または倒披針形、まれに卵形、長さ(0.8~)1.5~3.1(~3.8)㎝×幅(3~)5~12(~15)㎜、厚い紙質、下面はより淡色、葉身の腺点は小さく、淡色で黒色で、少数または散在し、主に上部にあり、縁の腺は黒色で、間隔をあけてつき、主な側脈は2対、三次脈は網目で密だが、しばしばかなり不明瞭で、明らかに緩く、基部はほぼ心形~楔形、縁は全縁、平ら、先は鈍形~円形。花序は1~4節に1個または少数~多数の花が付き、ときに4節の下まで花枝が付き、全体は円筒形~ピラミッド形。苞と小苞は長円形で、縁は全縁。花は直径1.3~2(~2.5)㎝、星形。蕾は卵形、先は亜鋭形~鋭形。萼片は離生、直立し、三角状卵形~披針形、不等長~ほぼ等長、長さ(3.5~)5~10㎜×幅1~4㎜。表面の腺(laminar glands)は淡色で、条線(streaks)~点(dots)および黒点が散在し、ややまばらまたはまれに欠き、縁内(intramarginal)と縁(marginal)の腺は黒色で、点がまばらで、上部に生じ、縁は全縁、先は鋭形~亜尖鋭形、5~7脈がある。花弁は黄金色で、蕾の時は赤みがかる、長円状倒卵形、長さ0.8~1.2cm×幅4~7㎜、萼片の2.4~3倍の長さで非対称、表面の腺は黒色で、斑点~条線(streaks)が散在し、縁の腺は黒色で上部に密にあり、縁は全縁。雄しべは約90本、明瞭に3束になり、長さ8~10㎜以下、花弁の長さの0.7~0.8倍の長さ。子房は狭卵形。花柱は3本、離生、長さ4~4.5㎜で子房の1.3~1.6倍の長さ、広く広がる。蒴果は広卵形または長円状卵形~狭円錐形、長さ(4~)6~10㎜×幅2~6㎜、萼片の2~3倍の長さ、たまにバルブには少数の黒色の縦の腺条線(glandular streaks)=油管が入る。種子は中程度の褐色で、長さ0.7~1.1㎜。種皮は細く線状小窩状(linear-foveolate.)。花期は6~8月。果期は7~9月。2n=16。
5-1 Hypericum attenuatum Choisy f. confertissimum (Nakai) T.B.Lee ex W.T.Lee オオオトギリ
6 Hypericum calycinum L. セイヨウキンシバイ 西洋金糸梅
ブルガリア、トルコ原産。英名はAaron's beard , great St-John's wort , creeping St. John's wort , Jerusalem star , rose-of-sharon 。別名はヒメキンシバイ(姫金糸梅)。世界で広く栽培され、ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどに帰化している。
落葉小低木。高さ20~60㎝。樹高が低く、地下茎を伸ばして広がり、グランドカバーに適している。葉は対生し、長さ4.5~10㎝の惰円形~卵形、幅がやや狭い。花は直径5~10㎝。萼片は5個、長さ10~20㎜。花弁は5個、長さ25~40㎜。広角に開く。雄しべは束ごとに90~120個、花弁より長く、目立つ。葯は赤色を帯びる。花柱は長さ12~20㎜。蒴果は長さ10~20㎜、卵形。種子は赤褐色、長さ1.5~2㎜、表面が最後に網状になる。花期は6~7月。
品種) 'Brigadoon' , Carnival (PBR) , 'Crowthyp' (PBR) , Fiesta = 'Crowthyp' (PBR) (v) , Golden Rule = 'Nchc1' , 'Nchc1' , 'Rising Sun' , 'Senior' , 'Yellow Wave' (PBR)
7 Hypericum cerastioides (Spach) N. Robson ヒペリカム・ケラスティオイデス
ブルガリア、ギリシャ、トルコ、ユーゴスラビア原産。英名はtrailing St. John's wort , horned St.John's wort。別名はハイペリクム・ケラスティオイデス。標高50~2100mの草地、石や岩の多い場所、およびマツ、ブナまたは混合林の珪質土壌に生える。Hypericum cerastoides はミススペル。亜低木または多年草、高さ0.6~0.22(~0.25)m、直立または傾伏、まれに平伏し、直根があり、茎は少数~多数、叢生し、直立~広り、根を出し、分枝しないかまたは通常、花序の下で分枝し、しばしば全体に分枝する。茎には短い白色の毛があり、節間は長さ5~35mmで、葉より短い~長い。葉は広がる~直立し、粉白色ではなく、葉身は長さ(5~)8~30㎜×幅2~12㎜、広楕円形~狭楕円形、まれに卵状披針形~狭長円形、表裏同色で紙質、短い白色の毛があり、中脈の下部に長い毛があり、先は鈍形~円形、縁は平ら、基部は円形抱茎~楔形、葉脈は中脈の下3分の1に2対の側脈があり、ときに分岐する。大きい葉は不明瞭な三次の網状脈があり、葉身の腺は淡色で密、縁内腺は淡色でときに黒色になり、ほぼ規則的な間隔につく。花序は花が1~5個で、1(2~3)節から成り、ときに下位の節から茎の中央またはそれ以上に花枝があり、全体がほぼ散房花序形からまれにほぼピラミッド形。小花柄は長さ7~15㎜で細い。苞と小苞は披針形、黒色の腺はない。花は直径20~50㎜。蕾は球形で、うなだれる。萼片は±不等長、離生、広く覆瓦状、葉より色が淡く、長さ5~10㎜×幅1.5~8㎜、果時に大きくなり、狭楕円形~広楕円形または卵状披針形、鈍形(まれに鋭形)~円形、基部は楔形、全縁、7~9脈があり、分岐して吻合し、面の腺は色が淡く、線形~縞状(striiform)、縁の腺は無い。花弁は黄金色で、赤みがからず、長さ9~21㎜×幅5~13㎜、萼片の長さの約2倍、倒披針形~倒卵形、円形、小突起は無く、面の腺は色が淡く、線形~縞状、縁の腺は黒色、非常に密集し、縁は丸く、ときに縁内に少数存在する。雄しべは約60~100本、束は通常すべて基部で合着し、長さ5~10㎜以下、花弁の長さの約0.5倍。子房は長さ3~6㎜×幅2~4㎜、広卵形~卵状楕円形。花柱は長さ2.5~4.5㎜、分岐し、子房の長さの約0.8倍。蒴果は長さ5~12㎜×幅4~10㎜、広卵形~球形。種子は暗褐色、長さ1.5~2㎜、種皮は小窩状~はしご状(foveolate-scalariform)。2n=16。
品種) 'Silvana'
8 Hypericum densiflorum Pursh ヒペリカム・デンシフロルム
USA原産。英名はbushy St.Johnswort , dense St.John's Wort。低地~標高約1000mの湿地または湿潤な生息地 (牧草地、湖の縁、開いた川岸、松林、沼地、溝)、乾燥した道路の土手や岩の多い丘陵斜面に生える。
低木で、高さ0.6~3m、直立し、枝は直立し、やや堅く、数が多く、やや細い灌木を形成するが、根から不定芽が出て、ときに広い茂みを形成する。茎は緑色~帯赤色、若いときは4線で2稜(ancipitous)だが、すぐに2線で丸くなり、2シーズン目には赤褐色で円柱形になる。外皮は帯状に剥がれる。樹皮は平滑で薄い。葉は無柄で、未熟な葉がときに葉腋に束生する。葉身は長さ20~40.5㎜×幅2~7㎜、ごく狭い楕円状長円形または倒披針形~線形、縁は反曲~外巻きし、下面はより淡く、しばしば粉白色で、紙質、基部の関節部で落葉し、先は短突起があるまたは短突起があり鈍形~ほぼ鋭形、基部は狭い楔形~漸尖形、下面の脈はときに不明瞭、主な側脈は約14~17対あり、従属脈(subsidiaries)と三次の網状脈がときに見えるが、中脈のみが顕著、面の腺は密。花序は花が約5~25個で、副花(accessory flowers)はなく、1~2節下から花が(2~)5~15個の2出集散花序があり、さらに下位の節から花枝がときに出る。全体は広ピラミッド形~広円筒形または倒ピラミッド形。小花柄は長さ0.5~5㎜。苞は縮小し、倒披針形へら形~線形。花は直径10~17(~20?)㎜。蕾は広卵状楕円形。萼片は5枚、長さ(4~)4.5~6㎜x幅1~1.5㎜、不等長またはほぼ等長、果時に大きくならず、散開~後屈し、狭長円状披針形または狭長円形~倒披針状へら形、先はほぼ鋭形または小突起形~鋭形、縁は反り返り、基部の脈は1~3本、側脈はときに分岐する。花弁は5個、濃い黄金色、(内側に湾曲して)後屈し、長さ6~9㎜x幅2.5~3.5㎜、倒卵状倒披針形、側小突起をもち、鋭形。雄しべは約100~150本、最長4.5~7㎜、花弁の約0.8倍。子房は3(~5)数性、長さ3~3.5㎜x幅1~1.3㎜、狭ピラミッド状卵形、鋭形。胎座は不完全な中軸胎座。花柱は3~4(5)本、長さ2~3㎜、子房の0.7~0.85倍で、直立して残り、果実が成熟するにつれて分かれる。蒴果は長さ5~6(~7)㎜x 幅2~3㎜、狭卵状円錐形または狭卵形~円筒状卵形、鋭形、裂片はほとんどないかほとんどなく、萼片を越え、薄い革質。種子は赤褐色、長さ0.8~1.3㎜、竜骨はない。種皮は線状の網状。2n=18 (n=9)、2n=27 (n=11~14) 。
品種) 'Goldball'
9 Hypericum empetrifolium Willd. ヒペリカム・エムペトリフォリウム
ヨーロッパ(ギリシャ、アルバニア)、西アジア(トルコ、Cyprus)、北アフリカ(リビア)原産。標高0~2000mのマツ林、乾燥した石灰質(石灰岩、蛇紋岩)の岩場斜面に生える。
亜低木または矮性低木、高さ0.1~0.6m、茎はやや太い~細い、直立または平伏し、基部で分枝して根を張り、枝は茎に沿って斜上または強直し(strict)、中央および上部の節から短い腋生枝が出る。茎は3線があり、腺がなく、節間は2~20㎜、葉より短い~長い。葉は3輪生、広がり、無柄またはごく短い葉柄があり、下面は灰白色、長さ(2~)4~12㎜×幅0.5~2㎜、狭線形、先は円形、縁は外巻きし、基部は円形、1脈があり、面の腺は淡色で散在し、縁内の腺は見られない。花序は花が1~40個つき、1~4節から成り、緩く、円筒形、長さ10~100㎜、下部にほぼ従属する枝は無い。苞と小苞は縮小した葉で、全縁。花は直径8~20㎜、蕾は球形。萼片は等長で、基部で合着し、覆瓦状でなく、長さ1~2.5㎜×幅0.5~1㎜、長円形~倒披針形、先は鈍形~円形。3脈で目立たず、縁には規則的または不規則な無柄の球状の黒色腺があり、面の腺は淡色で、線状~条線状。花弁は明るい黄色で、赤みがかっておらず、脱落性で長さ5~10㎜×幅2~3㎜。萼片は5枚、狭倒披針形。縁の腺はなく、面の腺は淡色で、数が少なく、短い条線状または欠く。雄しべは25~60本、長さ5~8㎜以下、花弁の長さの0.8~1倍、脱落性。子房は長さ1.5~2㎜×幅1~1.2㎜、卵形。花柱は長さ3~4.5㎜、子房の長さの約2倍。蒴果は長さ4~6㎜×幅3~4㎜、卵形。殻は狭い背バルブと斜めに膨らんだ断続的な側バルブを持つ。種子は赤褐色、長さ約1.5㎜、円筒形から楕円形で乳頭状。2n=18(n=9)。
品種) 'Prostratum'
10 Hypericum erectum Thunb. オトギリソウ 弟切草
日本、朝鮮、中国、台湾、千島列島、サハリン原産。標高450~2250m(中国)、100~2100m(日本)の草地斜面、乾燥した森林や藪に生える。
多年草、高さ(10)30~80(~100)㎝、直立または斜上し、分岐して根を張り、基部は木質。茎は単生または少数(2~3)またはときに叢生し、花序の下では分岐せず、上部でときに棒状に(virgately)分岐する。若い茎はわずかに2線があり(2-lined)、すぐに円柱形になり、腺はなく、節間は長さ14~55㎜で、葉より短いかまたは長い。葉は無柄、葉身は長さ(12~)15~50(~60)㎜×幅(5~)7~15(~30)㎜、狭三角形状卵形~狭楕円形で、下面は淡色で、紙質、先は鋭形または漸尖形~円形、わずか凹形、縁は平らまたは反り返り、基部は心形で抱茎、葉脈: 主な側脈は中脈の下部1/3~1/2に3~4(~5)対あり、三次の網状脈はかなり密、葉身の腺(laminar glands)は黒色の点状、±密で小さく、まれに淡色で小さく、点状(punctiform)~短い条線状(striiform)であり、縁内腺(intramarginal glands)は黒色で密、まれに淡色で、微細である。花序は多数の花が付き、1~3節から成り、しばしば下部の6節まで分岐し、全体が散房花序形~円筒形である。小花柄は長さ1.5~3㎜。苞と小苞は縮小した葉状で、全縁。花は直径約15㎜、ほぼ星形。蕾は狭楕円形、先は鋭形。萼片は5個、ほぼ等長~不等長、約・長さ3.5~7㎜×幅1~3㎜、卵状披針形~長円状楕円形、先は鈍形(まれに円形)~鋭形、全縁またはまれに不規則な目立つ腺をもち、5脈があり、外側の脈はしばしば分岐し、萼片の面の腺(laminar glands)は黒色またはまれに淡色もあり、線形~点状、縁内腺(intramarginal glands)は黒色、やや密~まばら、または無い。花弁は5個、明るい黄色、蕾は赤みがからず、長さ6~10㎜×幅2~2.5㎜、萼片の長さの2.5~3倍、倒卵形~長円形、全縁または散在する目立つ腺があり、花弁の面の腺(laminar glands)は黒色、条線状~点状、上部にあり、縁の腺(marginal glands)は黒色、辺縁内(intramarginal glands)にもあり、目立ち(prominent)、不規則。雄しべは約25~40本、3束になり、最長は5~7㎜、花弁の長さの約0.7倍。葯腺は黒色。子房は長さ2.5~3.5㎜×幅1㎜、卵形。花柱は3本、離生、広く散開し、長さ(3~)3.6~4(~4.5)㎜、子房の長さの1~1.2(~1.5)倍。柱頭は狭い頭状。蒴果は長さ5~11㎜×幅3.5~6㎜、萼片の長さの1.2~2.5倍、狭卵形~広卵形。種子は褐色、長さ(0.67~)0.8~1㎜、種皮は階段形=はしご形(scalariform)。2n=16。
10-1 Hypericum erectum f. angustifolium (Y.Kimura) Y.Kimura ホソバオトギリ 細葉弟切
日本(本州)に分布。小型で葉が狭い。10-2 Hypericum erectum var. caespitosum Makino フジオトギリ 富士弟切
synonym Hypericum fujisanense Makino
日本の富士山周辺に分布。全体に小型で高さ10~15㎝、茎は1本またはまれに2本から3本ではなく比、較的短い茎が多数叢生する。花は直径1.5~2㎝。花期は7~9月。
10-3Hypericum erectum f. debile R.Keller コエダウチオトギリ
synonym Hypericum amabile Koidz.
日本、千島列島に分布。別名はセイヒクオトギリ。
10-4Hypericum erectum var. deviatum Y.Kimura ニセオトギリ 偽弟切
日本(本州)に分布。オトギリソウとアゼオトギリ等の明腺をもつ種との雑種の可能性が示唆されている。
茎は高さ55cm、直立し、単独で、または緩く(2~3本)房状で、単純または先で枝分かれし、かなり硬くて幅が広い。葉は長さ2~3㎝×幅1~1.5㎝、広卵状長円形、黒色の点があり、しばしば非常に細かくわずかに透明な点状、縁には黒色の点と非常に微細な透明な点がある。萼片は約・長さ6㎜×幅2㎜、黒色の点と条線があり、しばしば透明な条線があり、縁に黒点がある。花弁は小さく、長さ7㎜、黒色の点と条線と少数の半透明の条線または細点があり、縁に黒色のパピラがある。子房は長さ3㎜、花柱は同じ長さ。雄しべは約40本。
10-5 Hypericum erectum var. erectum オトギリソウ 弟切草 狭義
synonym Hypericum erectum Thunb. var. erectum f. erectum
synonym Hypericum erectum Thunb. (H.Lev.) Y.Kimura
synonym Hypericum penthorodes Koidz.
日本全土、朝鮮、中国、台湾、ロシア原産。中国名は小连翘 xiao lian qiao。日当たりのよい山野に生える。YListでは品種のf. angustifolium, f. debile, f. lutchuense, f. papillosum, f. vaniotiiをこの基本変種のsynonymとしている。
多年草。中型で高さ30~70㎝。茎はほとんど分枝せず、直立する。葉、花弁と萼片に腺体があるのが特徴。この腺体は色素を持ち、黒く見えるため、黒点(線状になると黒線)と呼ばれている。葉は対生し、長さ1.5~5㎝、幅0.8~1.3㎝の狭い三角状卵形~狭長楕円形、先は鈍形、基部は円形、やや茎を抱く。葉裏に黒点と明点がある。花は直径約2㎝の黄色い5弁花。暗くなると花を閉じる。花弁に黒線と黒点がある。萼片は長さ約2.5(~7)㎜、幅約1(~3)㎜、黒点と黒線がある。雄しべは25~30(40)本、基部で3束に合着する。雌しべ1個、花柱3個。果実は長さ5~11㎜、赤色に熟し、乾くと次第に褐色になり、先端が3裂し、春まで残る。種子は長さ0.7~0.8㎜の円筒形、茶褐色、表面に網目がある。2n=16。花期は7~9月。
10-6 Hypericum erectum f. lutchuense (Koidz.) Y.Kimura オキナワオトギリ 沖縄切草
synonym Hypericum erectum var. lutchuense (Koidz.) Y.Kimurasynonym Hypericum lutchuense Koidz.
屋久島と沖縄島に分布する。別名はオキナワオトギリソウ。
茎は高さ約70㎝まで、広くて硬いく、基部は幅約5㎜、単生、単純または少し分枝する。葉は卵状長円形または卵状披針形、先は鈍形、基部はほぼ心形、長さ2~3.5~4㎝×幅8~13~14㎜、節間は長く、先端では短くなり、黒色の点があり、少数または多数、縁に黒点があり、非常に微細または透明ではない点がある。花序は密に花がつく。萼片は長円形、長さ4.5~5.5㎜、黒点の条線があり、縁に多数または控えめに黒点があり、非常に微細で、透明な点がある。花弁は長さ8.5~9㎜、黒点と条線があり、縁に黒点がある。子房は長さ2.5~3㎜。花柱は長さ3.2~3.5㎜。
10-7 Hypericum erectum f. papillosum (Y.Kimura) Y.Kimura ヒロハオトギリ
10-8 Hypericum erectum f. perforatum Y.Kimura メイテンオトギリ 明点弟切
黒点の代わりに明点があるもの。
10-9 Hypericum erectum f. tateutianum (Koidz.) Y.Kimura ヨサオトギリ
台湾に分布する。f. lutchuenseの縮小版。強健な習性で、ときに葉縁と萼片の小さな縁腺が黒色である。
10-10 Hypericum erectum f. vaniotii (H.Lév.) Y.Kimura トガリバオトギリ
葉が大型で幅広。別名はキタグニオトギリ
11 Hypericum formosanum Maxim. タイワンキンシバイ 台湾金糸梅
台湾原産。中国名は台湾金丝桃 tai wan jin si tao。海抜500mまでの水はけのよい土手や石の多い場所に生える。
低木、高さ約22㎝。枝は広がり弓状になる。茎は若いうちは4線があり2稜(ancipitous)だが、すぐに2線~円柱形になり、節間は長さ1.5~6㎝で、通常葉より短い。葉は無柄または長さ1㎜までの葉柄がある。葉身は卵形または楕円形~長円形、長さ2~6㎝×幅1.1~2.9㎝、ほぼ革質で、下面はより淡いが粉白色ではなく、葉身の腺は点在し、目立ち、下面は腺がなく、主側脈は1対または2対で、上部は辺縁内脈を形成し、三次の網状脈は非常にかすかかまたは見えず、基部は楔形~円形、先はほぼ鋭形~円形。花序は1~3個、頂生、7(~10)節下までの従属(subsidiary)枝に1~2個の花がつく、全体は円筒形。苞は葉状、小苞は狭楕円形、ほぼ宿存性。小花柄は5~10㎜。花は直径2.5~3.5㎝、星形~非常に浅いカップ形。蕾は±広卵形で、先はほぼ鋭形~鈍形。萼片はごくわずかに合着し、蕾では直立、果実では斜上し、ほぼ等長~不等長、披針形または狭楕円形~倒披針形または楕円状卵形、長さ7~10㎜×幅1.5~6㎜、面の腺は線状および点状、縁は全縁、先は鋭形~ほぼ鋭形。花弁は黄金色、倒卵形、長さ(1~)1.3~1.7(~2)㎝×幅0.8~1.2㎝、萼片の長さの約2倍、腺はなく、縁は全縁、小突起はごく短く、丸い。雄しべは各束に25~40本の雄しべがあり、最長0.8~1.2㎝、花弁の長さの約0.7倍。子房は卵形~ほぼ球形、長さ3~4.5㎜×幅3~3.5㎜。花柱は長さ(6.5~)7~8(~8.5)㎜、子房の長さの1.5~2.5倍。柱頭はほぼ球形。蒴果は広卵形、長さ8~9㎜×幅約6㎜。種子は長さ1~2㎜、先が膨らむ。種皮は線状網状。花期は4~8月。果期は5~9月。
12 Hypericum forrestii (Chitt.) N. Robson ヒペリカム・フォレスティー
中国(四川省、雲南省)、ミャンマー原産。中国名は川滇金丝桃 chuan dian jin si tao 。英名はForrest's tutsan。標高1500~3000(~4000)mのマツ林の縁の丘陵斜面、時には小川のそばの開けた石の多い場所に生える。
低木、高さ0.3~1.5m、灌木状。枝は直立またはやや広がる。茎は若いうちは4角形でわずかに先鋭で、まもなく円錐形になる。節間は1~4.5(~6)㎝、通常葉より短い。葉柄は長さ0.5~2㎜でやや幅広い。葉身は披針形または三角形状卵形~±広卵形、長さ2.5~3(~6)㎝×幅0.9~3.2(~3.5)㎝、厚く紙のような質感で、下面はより淡いが粉白色ではなく、面の腺(laminar glands:縁ではなく葉面などにある腺)は短い条線と点であり、下面の腺は特に中脈近くに密集し、主な側脈は4~5対で、三次網状脈は不明瞭または見えず、基部は広楔形~円形、先は鈍形~円形またはわずかに凹形。花序は花が1~約20個、1(または2)節につき、ほぼ平らな頂部を持つ。苞は披針形またはほぼ葉状で、宿存する。小花柄は長さ4~10㎜。花は直径(2.5~)3.5~6㎝、ほぼ深い杯形。蕾は広卵形で、先は鈍形から丸い。萼片は直立し、ほぼ等長から等長、卵形または±広楕円形~ほぼ円形、長さ6~9㎜×幅3~8㎜、面の腺の線があり、±上部で途切れ、縁は全縁または先端に細かく裂けた小歯があり、縁はしばしば透明で、先は円形またはまれにほぼ小突起形になる。花弁は黄金色、広倒卵形、長さ1.8~3㎝×幅1.1~2.5㎝、萼片の長さの3~3.5倍の長さ、縁は全縁または間隔を開けた腺のある小歯があり、小突起は丸い。雄しべの束はそれぞれ40~65本の雄しべを持ち、最長は1~1.5cm、花弁の長さの0.4~0.6倍の長さ。子房は広卵形、長さ(4.5~)6~8㎜×幅4~4.5㎜。花柱は長さ4~7㎜、子房の長さの0.7~0.9(~1)倍で、離生、直立し、先端近くで外側に曲がる。蒴果は±広卵形、長さ1.2~1.8㎝×幅0.8~1.4㎝。種子は暗赤褐色、長さ1.2~1.7㎜、先にはわずかに竜骨または翼がある。種皮ははしご形網状(scalariform-reticulate)。花期は5~9月。果期は8~10月。2n=36, 38。
品種) Hird 54
13 Hypericum fragile Herdr. et Sart. ex Boiss. トモエオトギリ 巴切草
ギリシャ原産。標高(105~)500~760mの石灰岩の割れ目に生える。
多年草、高さまたは長さ4~11(~16)㎝、無毛、茎はほぼ直立または木質の枝分かれした基部からばらばらに広がる。茎は2線があり、粉白色で脆く(節に関節があり)、節間は2.5~9㎜、葉より短い~長い。葉は長さ0.5~1㎜の葉柄があり、基部に関節があり、2縦列(bifarious)、むしろ肉質で粉白色、長さ2~7㎜×幅2~4㎜、ほぼ円形~卵状披針形または狭長円形、先は円形、縁は平ら、基部は切形~楔形、中脈はときに分岐し、葉身腺(laminar glands)は淡色、点状、密にあり、小型でときに大型のものもあり、散在または上部にあり、ときに暗色に見える。縁腺(marginal glands)は全て淡色、または1~2個が暗色で密集し、先端に黒色腺はない。花序は1~8花で、1~3節から成り、ほぼ散房花序形、密集し、分枝は1枝(monochasial)。苞と小苞は楕円形~長楕円形で、黒色の腺のある縁毛がある。花は直径約10~17㎜、花後に花弁が直立する。蕾は球形。萼片は等長で離生、重なり合わず、長さ3~4㎜×幅0.5~1.5㎜、狭長円形~狭楕円形、先は鋭形、脈は3本、分枝せず、辺縁腺(marginal glands)は黒色で、繊毛上にあり、縁は全縁で丸い。葉身腺は淡色で線状。花弁は明るい黄色で、ときに赤色の脈があり、(6~)8~10 × 2~3 mm、約2.5枚の萼片で、狭倒披針形。辺縁腺(marginal glands)は先端が丸く、黒色で小さく、縁毛上にあり、面の腺(laminar glands)は淡色で線形~条線状。雄しべは約40本、最長は約6mm、花弁の長さの0.6~0.8倍。花糸と葯は黄色。子房は長さ1㎜×幅1㎜、広卵形。花柱は長さ4㎜、子房の長さの約4倍。蒴果は約・長さ5㎜×幅4㎜、卵形。種子は見られない。
14 Hypericum frondosum Michx. アメリカオトギリ 亜米利加弟切
USA原産。英名はgolden St. John's-wort。標高180~506mの石灰岩および石灰質頁岩の上の乾燥した杉林および荒地に生える。
低木、高さ(0.6~)1~3m、直立し、基部より上で多数分枝し、側枝は直立~広がり、丸い灌木または小さな高木状になる。茎は緑色で、若いときは4線で2稜(ancipitious)があり、成長が早く、すぐに4線で丸くなり、2年目または3年目には赤褐色で2線から円柱形になる。外皮は帯状または(多くの場合大きな)板状に剥がれる。樹皮は淡灰色、平滑で薄い。葉は無柄、斜上または広がり、葉身は長さ25~65㎜x幅8~22 mm、長円形~披針状長円形、またはときに狭楕円形~倒披針形、平らまたは縁がほぼ反曲し、下面は淡色またはやや粉白色または完全に粉白色、紙質、基部の関節部から落葉し、先は小突起状鈍形~円形、基部は広楔形で漸尖形~狭楔形、脈はときに不明瞭、約10~16対の主側脈があり、亜従属脈と密な3次の網状脈をもち、中脈が目立ち、葉身腺(laminar glands )が密。花序は1~3(~7)花で、ときに下部の節に対になった単花または3組(花)(triads)または1~3花の枝がつき、非常にまれに第3節に単花がつく('H. splendens')。小花柄は長さ1.5(先端)~10㎜。苞は葉状または縮小し、長円状楕円形。花は直径25~45㎜、蕾は球形。萼片は5(4)個、長さ6~14(~20)㎜x幅4~10㎜、果時に大きくなり、覆瓦状、非常に不均等、卵形または長円形~楕円形または楕円状へら形またはときに葉状、円形または小突起状鈍形、平らまたは縁が反り返り、基部の脈は(3)5~7(9)本、分岐し、上部で密に網状になる。花弁は5(4)個、黄金色~橙黄色、基部はすぐに帯褐色になり、内曲して後屈し、長さ12~25㎜x幅6~14㎜、萼片の長さの1.25~2倍、倒卵形~倒披針形、小突起が側部にあり(花弁はときに2裂)、円形。雄しべは約250~650本、最長9~12㎜、花弁の長さの0.45~0.75倍。子房は3数性、長さ6~8㎜x幅3~4(~5)㎜、狭ピラミッド状卵形~広楕円形、先は鋭形~小突起状鈍形、胎座は不完全な中軸胎座。花柱は3本、長さ4~6㎜、子房の長さの0.65~0.75 倍、直立したまま残る。蒴果は長さ12~15㎜x幅6~8㎜、狭卵状円錐形~広卵状嘴形、丸みを帯びた三角形、萼片より長いかまたは短く、しばしば最初は萼片に囲まれ、厚い革質。種子は黒褐色、長さ約1.5㎜、竜骨があり、種皮は浅く線状網目がある。2n=18, 36。花期は夏。
品種) 'Sunburst'
15 Hypericum furusei N.Robson シラトリオトギリ 白鳥弟切
synonym Hypericum nakaii H.Koidz. subsp. tatewakii (S.Watan.) N.Robson
synonym Hypericum tatewakii S.Watan. [YList]synonym Hypericum nakaii H.Koidz. subsp. tatewakii (S.Watan.) N.Robson
日本固有種(北海道北東部)。北海道の石狩白鳥山に分布し、標高約200mに生える。多年草、高さ約30~50㎝、分枝して木質の基部から直立し、根を張り、茎は単生または少数で、叢生し、ときにほとんどの節から分枝する。茎は初めわずかに2(4)線があり、すぐに円柱形になり、腺がなく、節間は25~35㎜、大部分は葉より短い。葉は無柄、葉身は長さ25~42㎜×幅17~27㎜、広楕円形(下部で)~三角形状披針形(上部で)、下面は淡色、紙質、先は円形、縁は平らで、基部は浅い心形で抱茎、中脈の基部~下2/5に3~4対の主側脈があり、三次の網状脈は密で、上面ではほとんど見えず、葉身腺(laminar glands)は黒色、やや密~疎で、ときに淡色、少数、すべて点状、縁内腺(intramarginal glands)は黒色で密集している。花序は3節に約20花が密集し、2節下から分枝し、全体が狭ピラミッド形で分岐角度が狭い(約40°)。小花柄は長さ2~3.5㎜。苞と小苞は縮小した葉状。花は直径約17㎜、星形、反り返る。蕾は卵形~ほぼ球形、先は鈍形~円形。萼片は5個、等長、長さ3~5㎜×幅1~1.2㎜、長円形~披針形、先は円形~鈍形、全縁、脈は5本、分岐し網状、面の腺(laminar glands)は淡色で線形、上部に少数あり、点状、まれに黒色で点状または長い。縁腺(marginal glands)はないか、ときに少数あり、黒色で不規則。花弁は5枚、黄金色?、赤みがからず、長さ6~9㎜×幅3~4㎜、萼片の長さの約2倍、楕円形で丸みがあり、全縁、面の腺(laminar glands)は淡色で線形、縁腺(marginal glands)は黒色、1~2個または無い。雄しべは40~45本、3束になり、最長6~8㎜、花弁の長さの0.9~1倍。葯腺は黒色。子房は長さ2~2.5㎜×幅1.5~2㎜、卵形。花柱は3本、離生、広がり、長さ4~6㎜、子房の長さの2~2.2倍。柱頭は狭い。蒴果(未熟)は卵形。種子は見られない。
16 Hypericum geminiflorum Hemsl ヒペリカム・ゲミニフロルム
台湾、フィリピン原産。中国名は双花金丝桃 shuang hua jin si tao。標高300~1800mの開けた石の多い場所、山の斜面、道端に生える。
低木、高さ0.5~1.5m。枝は広がって垂れ下がることが多い。茎は若いうちは4線があり先が尖っているが、やがて2線~円柱形になり、節間は0.9~3.5㎝で葉より短い。葉はほぼ無柄。葉身は長円形または長円状披針形~楕円形または卵形、長さ1.8~4.5㎝×幅0.6~2.2㎝、厚い紙質、下面は色が淡いが粉白色ではなく、葉身腺点(laminar glands dots)があり、上面でときに目立ち、下面に腺はなく、主側脈は1対または2対あり、上部はときに明瞭な縁内脈(intramarginal vein)を形成し、3次の網状脈はかすかかまたは見えず、基部は広楔形~狭楔形、縁は肥厚し(incrassate)、先は鋭形~鈍形または円形で小突起形。花序は花が1(~3)個つき、頂生、14節までの節に単生または対の短い従属枝につき、全体は狭円筒形。苞は葉状、小苞は落葉し、縮小する。小花柄は長さ3~4㎜。花は直径2~3㎝、星形。蕾は卵形で、先は鋭形~鈍形。萼片は離生またはわずかに合着し、直立し、同形からほぼ同形、広卵形または三角状卵形またはほぼ円形~長円状披針形、長さ(1~)1.5~3㎜×幅1~2.5㎜、面にある腺(laminar glands)はほとんどが線形、縁は全縁、先はほぼ鋭形~円形。花弁は明るい黄色[まれに白色]で、倒卵形、長さ0.9~1.5㎝×幅5~7㎜、萼片の長さの3~6倍、縁は全縁、腺はなく、先端の小突起は廃れるかまたは無い。雄しべは5~11束になり、最長は6~10㎜、花弁の長さの約0.65 倍。子房は±狭楕円形、長さ2.5~3.5㎜×幅1.5~2.5㎜。花柱は長さ4~6(~7)㎜、子房の長さの1~2倍。柱頭は頭状~楕円形または円筒形。蒴果は狭円筒形~円筒状円錐形、長さ5~11㎜×幅3~5.5㎜。種子は暗赤褐色、長さ0.6~1.5㎜、狭い竜骨があり、先端が膨らんでいるか、± 深く翼があり、種皮は線状網目がある。花期は5~8月。果期は8~12月。
2亜種がある。
16-1 Hypericum geminiflorum Hemsl. var. geminiflorum ニリンオトギリ 二輪弟切
台湾、フィリピン(ルソン島)原産。中国名は双花金丝桃 shuang hua jin si tao。標高300~1200mの開けた石の多い地面に生える。低木、高さ0.5~1.5m。枝は広がるか垂れ下がることが多い。萼片は広卵形または三角状卵形またはほぼ円形~長円形、長さ1~2.5㎜。子房は長さ2.5~3.5㎜。花柱は長さ4~6(~7)㎜、子房の長さの1.3~2倍。蒴果は狭円筒形~狭円筒状円錐形。
16-2 Hypericum geminiflorum Hemsl. var. simplicistylum (Hayata) N.Robson ノウコウキンシバイ
synonym Hypericum geminiflorum Hemsl. subsp. simplicistylum (Hayata) N.Robson
台湾原産。中国名は小双花金丝桃 xiao shuang hua jin si tao。標高1500~1800mの露出した石地、山の斜面、道端に生える。低木、高さ0.3~0.4m。枝は直立または斜上する。萼片は広卵形~長楕円形、長さ2.5~3㎜。子房は長さ4~4.3㎜。花柱は長さ3.5~5㎜、長さは子房の長さの1~1.3(~1.5)倍。蒴果は円筒形~円筒状楕円形。
17 Hypericum gracillimum Koidz. オクヤマオトギリ 奥山弟切
synonym Hypericum erectum Thunb. var. subalpinum (Y.Kimura) Y.Kimura
synonym Hypericum pseudopetiolatum R.Keller var. muraianum (Makino) Y.Kimura
synonym Hypericum erectum Thunb. var. longistylum (Y.Kimura) Y.Kimurasynonym Hypericum kinashianum Koidz. var. longistylum (Y.Kimura) Y.Kimura
日本固有種(本州中部地方以北)。別名はニッコウヤマオトギリ 。山地に生える。多年草。茎は叢生し、高さ15~40㎝。葉は狭長楕円形、長さ約3㎝、先は鋭形、明点は無く、黒点が少数ある。花は茎頂の花序に数個つく。花は黄色。花弁は歪んだ倒卵形、長さ8~9㎜。萼片は小さく、長さ3~4㎜、縁の黒点がわずかにある。花期は7~8月。
18 Hypericum gramineum G.Forst. ホソバヒメオトギリ 細葉姫弟切
中国(海南省、雲南省)、台湾、インド、ブータン、ベトナム、パプアニューギニア、オーストラリア、ニュジーランド、太平洋諸島原産。中国名は细叶金丝桃 xi ye jin si tao 。英名はsmall St. John's-wort。標高(1200~)1900~2700mの湿潤だが水はけのよい場所に生える。多年草または1年草、高さ5~30cm、直立~傾伏するが根は出さない。茎は単生または±叢生し、花序の下では分枝しないか、または様々に分枝する。茎は4線があり、腺がない。葉は無柄。葉身は披針形またはまれに卵状披針形~線形、長さ0.6~1.3[~2.5]㎝×幅1~5[~8]㎜、厚い紙質、下面はより淡色、ときに粉白色になり、葉身の腺点(laminar gland dots)は上部で密、下部ではまばら、縁内腺(intramarginal glands)は密、基部に1対の主側脈がある場合とない場合があり、下面では脈が顕著で、三次脈の網目構造は見えず、基部は心形~円形、ときに楔形、通常はやや沿下して「V」字型を形成し、縁は平面または反り返り、先は鈍傾~円形。花序は1~21花があり、頂生、ときに3節下までに副枝(subsidiary branches)を持ち、三角状披針形~線形。苞と小苞は三角状披針形~線形。花は直径5~8㎜、星形。蕾は楕円形、先はほぼ鋭形。萼片は離生、直立し、披針形~狭楕円形、ほぼ等長~不等長、長さ2.8~5[~9]㎜×幅[0.8~]1.5~2㎜、萼片の腺(laminar glands)は線形、上部に点在し、縁腺はなく、先は鋭形~ほぼ鋭形、脈は3~5本。花弁は淡黄色~鮮黄色またはオレンジ色、倒卵形~倒披針形、長さ5~10㎜×幅2~5㎜、萼片の長さの約1.3倍。花弁の腺(laminar glands)は少数、条線、またはなく、縁は全縁、縁腺はない。雄しべは30~40本、不規則、最長2.5~4㎜、花弁の長さの0.4~0.6倍。子房は狭楕円状円錐形。花柱は3本、長さ0.7~1.8㎜、子房の長さの約0.9倍、±広がる。蒴果は卵状円錐形、長さ2.5~8㎜×幅1~3.5㎜、萼片の長さの約2倍。種子は褐色、長さ約0.5㎜、種皮は細かい、うね状はしご形(ribbed-scalariform)。花期は5~10月、果期は7~10月。2n=16, 14。
19 Hypericum hachijyoense Nakai ハチジョウオトギリ 八丈弟切
synonym Hypericum hakonense Franch. et Sav. var. hachijyoense (Nakai) Ohwi et Okuyama
日本固有種(伊豆諸島)多年草。高さ5~30㎝。茎は直立し、ほとんど分枝しない。葉は対生し、無柄、線状長楕円形~狭長楕円形、長さ0.7~2㎝、明点があり、縁には黒点がある。花は茎頂の花序に少数、上向きにつく。花は直径1.3~1.6㎝。花弁は黄色、明線があり、ときに黒点が混じり、縁には少数の黒点がある。花期は7~8月。
20 Hypericum hakonense Franch. et Sav. コオトギリ 小弟切
日本固有種(本州の富士、箱根周辺)。別名はハコネオトギリ。湿った崖や岩上に生える。
多年草。高さ15~30㎝。茎は叢生し、細く、節間が短く、多数、分枝する。葉は線状倒披針形~広披針形、長さ1.2~5.5㎝×幅約1㎝、面には明点と黒点又は明点のみがあり、縁に黒点がある。花は頂生の集散花序に少数つき、直径1.5~1.8㎝。萼片は披針形、黒点と黒線がある。花弁は黄色、少数の黒点と黒線がある。雄しべは多数が3束につく。雌しべは1本。花柱は子房よりやや長い。蒴果は細長い狭卵状円錐形。
20-1 Hypericum hakonense Franch. et Sav. f. imperforatum Y.Kimura クロテンコオトギリ 黒点小弟切
21 Hypericum hircinum L. ヒペリカム・ヒルキヌム
キプロス島、東エーゲ海諸島、フランス、ギリシャ、イタリア、コルシカ島、クレタ島、サルデーニャ島、シチリア島、スペイン、バレアレス諸島、南西アジア(レバノン・シリア、パレスチナ、サウジアラビア、トルコ)、北アフリカ(モロッコ)原産。標高(30~)300~1200(~2100)mの湿ったまたは日陰の場所、しばしば、小川のそばに生える。
低木、高さ(20~)50~180(~300)㎝、灌木状で基部から多数の茎が分枝するが根付かず、枝は直立から広がるか垂れ下がる。茎は若いうちは4線で2稜があり、やがて2線または円柱形になり、節間は長さ2~9㎜で、葉より短いか長い。樹皮は灰褐色、亀裂がある。葉は無柄またはほぼ無柄で、ときに抱茎、潰すと通常ヤギの臭い(カプロン酸)がする。葉身は長さ20~65(~75)㎜x幅(8~)12~27(~35)㎜、広卵形~三角状披針形、先は鋭形~円形、縁は平らまたはパリパリの(crisped)波状、基部は心形または円形~楔形または短い尖形(angustate)、下面はやや淡色、ごくまれに粉白色、紙質~パピルス紙状、2~4(~5)対の斜上する主側脈があり、両面に±顕著な三次脈の細い網状脈がある。葉身腺(laminar glands)は小さく、縁内腺(intramarginal glands)は密である。花序は(l~)3~約20花、1~2節から生じ、節間は凝縮せず、広ピラミッド形、下部の節から3花の枝を出し、しばしばさらにその下の最大4節までに花枝がつくことがあり、その後、全体が狭いピラミッド形~ほぼ円筒形になる。小花柄は長さ4~10㎜。苞はまれに葉状になり、通常は縮小し、披針形~錐形。花は直径(20~)25~40㎜。蕾は±球形で丸い。萼片は長さ(2~)4~8㎜x幅1~3㎜、覆瓦状または開き、やや不等長、下方に曲がり、ときに花後にわずかに大きくなり、果実が熟す前に脱落し、披針形~狭卵形、先は鋭形~短い尖鋭形、基部から5~7本の脈があり、脈は±分岐し網状になり、薄片の腺(laminar glands)は線形~条線状、縁内腺(intramarginal glands)は±密。花弁は黄金色で、赤みがからず、広がり、長さ11~21㎜x幅 4~9㎜、萼片の長さの3~4倍、倒披針形または長円状倒披針形~狭倒卵形、先端の小突起はほぼ頂生で廃れているか無い。雄しべは束ごとに約20本の雄しべがあり、最長で長さ12~22㎜、花弁の長さの1~1.2倍。子房は長さ3~5㎜x幅2~3.5㎜、楕円形、先は鋭形。花柱は長さ10~24㎜、子房の長さの3~5倍、 直立し、上部1/3~1/4が狭く散開する。柱頭は狭い頭状。蒴果は長さ5~14㎜x幅4~7㎜、楕円形または卵状楕円形~ほぼ円筒形、革質、成熟すると緑色から褐色になり、鈍色、不完全に裂開する。種子は橙褐色~赤褐色、長さ約1.2~1.5㎜、完全に片側に翼があり、先端に翼のある付属体がある。2n=40。
22 Hypericum hookerianum Wight & Arn. ヒペリカム・フーケリアヌム
中国(西蔵)、インド、ミャンマー、ネパール、ブータン、バングラデシュ、タイ、ベトナム原産。中国名は短柱金丝桃 duan zhu jin si tao。標高1900~3400mの斜面、森林の縁の茂みに生える。
低木、高さ1.75mまで、灌木状で、先端が丸く、枝は直立~広がる。茎は4線があり、若いうちは2稜(ancipitous)または常に円柱形、節間は1.2~6㎝、葉より短い~長い。葉柄は長さ1~4㎜。葉身は狭披針形~長円状披針形または広卵形、長さ(1.7~)2.5~7.8㎝×幅(0.7~)1~3.2㎝、下面は淡色または±粉白色、葉身腺(laminar glands)は短い条線~点状、下面の腺は密~疎または無く、主側脈は(2または)3または4対で、三次の網目構造は見られず、基部は狭楔形~ほぼ心形、先は鋭形~円形。花序は1~5花で、頂節から生じ、先端はほぼ円形。苞は落葉性、披針形または狭長楕円形~倒卵状へら形。小花柄は長さ3~16㎜。花は直径 3~6㎝、± 深い杯形。蕾は広卵形~ほぼ球形、先は広鈍形~円形。萼片は広がり内曲し、倒卵形または倒卵状へら形~ほぼ円形または楕円形または長円状楕円形、ほぼ等長、長さ5~10㎜×幅4~8㎜、面の腺(laminar glands)は線であり、ときに葉身近くで途切れ、しばしば陥入し(萼片は明瞭なうねがあり)、縁は全縁または稀に非常に細かく侵食された小歯があり、先は円形または稀に円形で小突起形~鈍形。花弁は濃い金色~淡黄色、広倒卵形~ほぼ円形、長さ1.5~3㎝×幅1.5~2.5㎝、萼片の長さの約3倍、縁は全縁、腺は無く、小突起は鈍形~円形または欠く。雄しべは束ごとに60~80本の雄しべがあり、最長は5~9㎜、花弁の長さの0.25~0.35倍。子房は広卵形、長さ5~7(~8)㎜×幅4~5(~6)㎜。花柱は長さ2~4(~7)㎜、子房の長さの0.35~0.7(~0.9)倍、離生、先端に向かって徐々に外側に湾曲する。蒴果は卵形~卵状円錐形、長さ0.9~1.7㎝×幅7~12㎜。種子は暗赤褐色、長さ0.7~1㎜、竜骨は無いかほとんどない。種皮は線状網目がある。花期は4~7月。果期は9~10月。2n=20。
品種) 'Rodgersii'
23 Hypericum iwatelittorale H.Koidz. シオカゼオトギリ 潮風弟切
日本固有種(岩手県)。海岸の岩壁の割れ目や岩礫の堆積した場所に生える。
多年草、高さ25~32㎝、直立し、茎は単生または少数で叢生し、上部で分枝する。茎は2本の隆起線があり、線上に黒色の点状の腺があり、節間は葉と同長~葉を超える。葉は無柄(主茎)~長さ約0.5㎜の葉柄があり(側葉)、葉身は長さ(8~)12~14㎜×幅5~8㎜m、卵形~楕円状長円形(主茎)または楕円形~倒披針形(側葉)、下面は淡色、紙質、先は円形~円状鈍形、縁は全縁、基部は楔形~円形抱茎(上部の葉)、中脈の下部1/4~1/5に側脈が3~(4)対つき、葉身腺(laminar glands)は淡色(明点)、点状、密集し、縁内腺(intramarginal glands)はすべて黒色または一部が帯赤色、密または離れる。花序は花が(1)3~約30個、最大3節につき、最大4節下から花枝が伸び、散房花序形~円筒形になり、その後密になる。小花柄は長さ0.8~1㎜。苞は小さく、披針形、全縁。花は直径9~10㎜、星形。蕾は楕円形、先はほぼ鋭形。萼片は5個、等長、長さ3~4㎜×幅1~2㎜、卵状長円形~披針形、先は鋭形~ほぼ尖鋭形、全縁、脈は5本、外側の対は分岐し、萼片の腺(laminar glands)は淡色、線条~点状、縁内腺(intramarginal glands)は黒色で、少数または無い。花弁は5個、明るい黄色で、蕾では赤みがからず、長さ6~9㎜×幅2~3㎜、倒卵状長円形、上部がほぼ円鋸歯状、花弁の腺(laminar glands)は淡色、線形~点状、ときに先端に黒色の腺が1~2個あり、条線状~点状、縁腺(marginal glands)は黒色で、ごく少数または無い。雄しべは約50本、3束になり、最長約7㎜、花弁の長さの約0.8倍。葯腺は黒色。子房は3室。花柱は3本、離生、長さ3.5~4㎜、広がり外側に曲がる。柱頭は狭い。蒴果は長さ5~8㎜×幅4~5㎜、萼片の長さの約2倍、卵状円錐形~卵形。バルブは縦の縞がある。種子は暗褐色、長さ約1.2㎜、円筒形。種皮は線状窩状(linear-foveolate)。
24 Hypericum japonicum Thunb. ヒメオトギリ 姫弟切
日本(千葉県以西)、韓国、中国、台湾、カンボジア、インド、ネパール、ブータン、スリランカ、ミャンマー、ラオス、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア(スマトラからイリアンジャヤ)、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋諸島原産。中国名は地耳草 di er cao 。英名はmatted St. John's-wort。標高0~3400mの溝、湿地、川岸、水田、また日陰のない短い草地や道端に生える。
1年草、高さ20~30(~50)㎝、直立~傾伏または平伏し、基部または茎に沿って根を張り、分枝しないか、基部から分枝し、ときには上部でも分枝し、(傾伏~平伏する場合は)他の場所にも根を張る。茎は緑色、4角(かど)があり、上部には2稜があり(ancipitous)、平滑な線をもち、節間は長さ2~52㎜で、通常葉より長くなる。葉は無柄、対生し、広がるが、4枚ではなく、残存する。葉身は長さ2~18㎜x幅1~10㎜、広卵状三角形または卵形~長円形または長円状披針形または楕円形またはほぼ円形、まれに倒披針形または倒卵状へら形、平らで、僧帽形(cucullate)ではなく、下面の中脈はわずかに突出し、平滑、下面はより淡色またはときに粉白色で、膜質、先は鈍形~円形、縁は平ら、基部は心形抱茎または稀に漸尖形、鞘を持たず、離生、基部の脈は1~7本で、ときに不明瞭な斜上枝があり、三次脈の網目構造は明らかに欠如し、葉身腺(laminar glands)は密な半透明の点状(明点)、目立たず、黒点はない。花序は花が1~約30個つき、頂生し、最初は規則的に2分枝(dichasial)/1分枝(monochasial)またはまれに偽2分枝(pseudo-dichotomous)で分岐し、ときに最大3節下に花枝が付き、または花が明らかに側方に出る仮軸性(sympodial)で、全体が拡散する。小花柄は長さ(l.4~)2~14㎜。苞は披針状錐形~葉状。花は直径4~8㎜、星形。萼片は長さ2~5.5㎜x幅0.5~2㎜、等長~不等長、覆瓦状になり、狭長楕形または稀に披針形~楕円形または倒卵形、先は鋭形または鈍形~円形、縁は全縁。脈は3~5本、分岐せず、しばしば中脈が突出し、腺は線形、上部では点状。花弁は淡黄色~鮮黄色またはオレンジ色、外側には赤色の脈はなく、長さ1.7~5㎜x 幅0.8~1.8㎜、萼片の長さの0.8~1.3倍、倒卵形~長楕円形または楕円形、先端の小突起は退化しているか欠落し、腺は欠落している。雄しべは5~30本、不規則または少数の場合は5個の不明瞭な集団になり、最長1.5~2.8㎜、花弁の長さの0.4~0.8倍。子房は長さ1~1.5(~1.8)㎜x幅0.5~1㎜、広卵形~ほぼ球形。花柱は(2)3本、長さ0.4~0.8(~1)㎜、子房の長さの0.4~0.6倍。柱頭はやや広い頭状。蒴果は長さ(2~)2.5~6㎜x幅1.3~2.8㎜、円筒形~球形、萼片よりわずかに短いか、まれに萼片と等しいかそれを超える。種子は多数、長さ約0.5 ㎜。種皮は細かい線状はしご形(linear- scalariform)。2n=16。花期は7~8月。
25 Hypericum kalmianum L. ハイペリクム・カルミアヌム
北アメリカ(カナダ、USA)原産。英名はKalm's St.Johns wort , Kalm's St.Johnswort。標高10~400mの砂質または石灰質の砂丘の湿地や窪地、岩の多い海岸、平原、低地草原、小川沿い、ミズゴケやスゲの生える沼地に生える。
低木、直立、細い~丸くまたは頂部の平らな茂み、高さ(14~)20~60(~100)㎝。茎は、節間が初め4線、その後円柱形になる。葉身は狭長円形~倒披針形または線形、長さ(15~)20~45㎜×幅3~7(~10)㎜、基部は関節があり、狭い楔形~ほぼ漸尖形、縁はほぼ反曲~外巻きし、先は円形~鈍形、中脈に9~14対の枝がある。花序は通常、先の節に (1~)3~7(+)個の花がつき、稀に1~2個の基部の節に花がつく。花は直径20~35㎜。萼片は落葉性で、蒴果を包まず、(4~)5個、楕円形または長円形~倒卵形、等長、長さ4~9㎜×幅1.5~5㎜。花弁は (4~)5 個、黄金色、倒卵形~長円形、長さ8~15㎜。雄しべは脱落性で、150~200本。子房は (3~)5(~6)数性。蒴果は狭卵状円錐形、長さ7~11㎜×幅4~7㎜。種子は狭い竜骨があり、長さ0.7~1.1㎜。種皮はほぼはしご形(subscalariform)。2n=18。花期は夏(7~8月)。
品種) 'Ames' , Blue Velvet™ , Blues FestivalR = 'Smhkbf' , 'Deppe' (PBR) , First EditionsR Cobalt-n-Gold™ , 'Gemo' , NordicR Gemo , 'Smhkbf' , Sunny Boulevard = 'Deppe' (PBR)
26 Hypericum kamtschaticum Ledeb. ハイオトギリ 這弟切
synonym Hypericum kamtschaticum Ledeb. var. paramushirense (Kudo) Y.Kimura
日本(北海道、本州の中部地方以北)、ロシア(ウスリー諸島、サハリン、カムチャッカ半島南部、千島列島)原産。標高0~1700mの乾燥または湿潤な草地およびシラカバ林またはヤナギ林に生える。高さ10~35(~50)㎝、多年草、匍匐し、基部から根を張り、分枝し、直立または斜上し、茎は多数(± 密に叢生)、ときに上部で分枝する。茎は不明瞭に2線(またはごく稀に部分的に4線)があり~円柱形、腺がなく、ごく稀に小さな帯赤色の腺が散在し、節間は10~30(~40)㎜、葉より短い~長い。葉は無柄。葉身は長さ(10~)20~30(~40)㎜×幅(7~)10~27㎜、楕円形または長円形~卵形、下面は帯白色(glaucescent)、紙質、先は鈍形~円形または小凹形、縁は全縁、基部は円形~心形抱茎(最上部)、葉脈は3~4対の主側脈が中脈の下部の1/3~1/4にあり、またはほぼ基部~基部にあり、三次脈の網目は密で、両面で見え、葉身腺(laminar glands)は黒色で点状、まばらまたは稀に欠き、より稀に小さな淡色の点が点在し(見えず)、稀に完全に淡色である。縁内腺(intramarginal glands)は黒色で、より稀に小さな淡色の点が点在する。花序は1~2節に1~5(~7)花が付き、やや緩く~密で、下部では分岐しない。小花柄は長さ(2~)3~4.5㎜(果時には稀に7㎜になる)、 苞および小苞は縮小した葉状~線状披針形。花は直径約15~25(~30)㎜、星形。蕾は楕円形、先は鈍形~ほぼ鋭形。萼片は5個、不等長、長さ(5~)6~8.5㎜×幅1.2~3.4㎜、長円状卵形または長円形~広楕円形または披針形、先は円形~ほぼ鋭形、全縁、脈は3~5(7)本、分岐して網状になり、萼片の腺(laminar glands)は黒色、点状(少数から多数)、ときに線形、 縁腺(marginal glands)は黒色から大部分が淡色、±密~疎または極めて稀に欠く。花弁は(4)5(6~9)個、黄金色?、赤みがからず、長さ8~15㎜×幅4~7㎜、萼片の長さの約2倍、長円形または倒披針形~楕円形、先は円形、全縁、花弁の腺(laminar glands)は黒色、条線状~点状、黒色または稀に淡色、縁腺(marginal glands)は欠く。雄しべは約30~60本、3束になり、最長は大部分が8~13㎜、花弁の長さの約0.8~1倍。葯腺は黒色。子房は長さ2.8~6㎜×幅2~3㎜、楕円形または広卵形(円筒形?)。花柱は3(4)本、離生、分岐し、長さ(2.5~)3~6㎜、子房の長さの1.1~1.3(–1.7)倍。柱頭は狭い。蒴果は長さ5~9㎜×幅2.5~5㎜、萼片の長さの(0.9~)1.1~1.3(~1.7)倍、広卵状円錐形~楕円状円筒形。種子は暗褐色、長さ1~1.1㎜、種皮ははしご状網目(scalariform-reticulate)がある。2n=16。花期は7~8月。
品種) Yk 0454
27 Hypericum kawaranum N.Robson カワラオトギリ 川原弟切
synonym Hypericum yamamotoi Miyabe et Y.Kimura var. riparium Y.Kimura
日本固有種。北海道の石狩豊平川に分布する。多年草、高さ約50㎝、匍匐して直立し、基部から根を張り(そして分枝?)、茎は少なく、叢生し?、花序の下で分枝しない。茎はわずかに2線があり、円柱形にはならず、腺がなく、節間は30~70㎜、葉よりわずかに短い~長い。葉は無柄。葉身は長さ35~40㎜×幅20~25mm、卵形~長円状卵形、下側は淡色?で、紙質、先はほぼ小突起形~円形、縁は平ら、基部は浅く心形で抱茎、中脈の下側4分の1から3対の主側脈がある。第3次の網状脈は密だが、上面ではほとんど見えない。葉身腺(laminar glands)は黒色で、ときに淡色で、点状でまばら。縁内腺(intramarginal glands)は黒色で密。花序は約20花が3節につき、緩く、1対の下部枝があり、全体が広円筒形。小花柄は長さ約3mm。苞は卵形、小苞は卵形~線状披針形。花は直径20~22(~25?)㎜、星形。蕾は広卵形、先が鈍形。萼片は5個、不等長、長さ4~6㎜×幅1.5~3㎜、長円形~卵形、先は円形~鈍形、全縁、脈は5本、分岐し網状、面の腺(laminar glands)は淡色、少数、条線状~点状または欠く。縁内腺(intramarginal glands)は黒色、密~不規則。花弁は5個、金黄色、赤みがからず、長さ9.5~12㎜×幅4~6.5㎜、萼片の長さの2~2.5倍、卵状長円形~楕円形、丸みがあり、全縁で先端の小突起はなく、面の腺(laminar glands)は淡色で線形~条線状、縁腺(marginal glands)は黒色で、少数、ほぼ先端または欠く。雄しべは約35~40本、3束になり、最長約7~9㎜、花弁の長さの約0.75~0.倍。葯腺は黒色。子房は長さ約2.5~3㎜×幅約2㎜、卵形。花柱は3本、離生、広がり、長さ4.2~6.5㎜、子房の長さの約1.5~2倍。柱頭は狭頭状。蒴果は見られない。
28 Hypericum kimurae N.Robson ミネオトギリ 峰弟切
synonym Hypericum yamamotoi Miyabe et Y.Kimura var. montanum Y.Kimura
日本固有種。北海道に分布し、増毛山地、大平山などの亜高山帯~高山帯の草地に生える高さ20~30㎝の多年草、分枝した木質の基部から直立または斜上し、茎は普通叢生し、花序の下では分枝しない。茎は初め狭く2~4線があり、すぐに2線から円柱状になり、腺がなく、節間は15~25㎜、葉より短い(または基部の葉が葉を超える)。葉は無柄。葉身は20~35㎜×幅10~20㎜、長円状卵形または長円形~楕円形、下面はわずかに淡色、紙質、先はほぼ鋭形~円形、縁は平らで、基部は浅い心形~円形または広楔形、中脈の下部1/4~2/5に3(4)対の主側脈があり、三次脈の網目は密で、下面の方がよく見え、葉身の腺(laminar glands)は黒色で疎~やや密、淡色でまばら、全て点状、縁内腺(intramarginal glands)は黒色で密。花序は1~3節に1~7(~11)花が緩く付き、ときに1節下から分枝し、全体がほぼ散房花序状。小花柄は長さ2.5~3.5㎜。苞は縮小した葉状、小苞は線形。花は直径15~20㎜、星形。蕾は楕円形で丸みを帯びる。萼片は5個、等長、長さ3~4.5㎜×幅0.8~1.3㎜、狭長円形~線状披針形、先は円形または通常鈍形~鋭形、全縁、脈は3~5本、分岐せず、萼片の腺(laminar glands)は淡色で線形~点状、ときに黒色になり、線状(基部)または条線状~点状、縁腺(marginal glands)は黒色で、数が少なく、不規則または無い。花弁は5個、明るい黄色、赤みがからず、長さ11~14㎜×幅5~6㎜、萼片の長さの3~4倍、楕円形~長円形、先は円形、全縁、花弁の腺(laminar glands)は淡色および/またはたまに黒色、線形~条線状で先は点状、縁腺(marginal glands)は無い。雄しべは約40本、3束になり、最長10~11㎜、花弁の長さの0.75~0.9倍。葯腺は黒色。子房は長さ3~4㎜×幅約2.5㎜、楕円形。花柱は3本、離生、基部が内側に曲がり、長さ6~7㎜、子房の長さの1.8~2倍。柱頭は狭い。蒴果は長さ約5㎜×幅3~3.5㎜、萼片(未熟)の長さの約1.2倍、円筒状楕円形。種子は見られない。花期は7~8月。
29 Hypericum kinashianum Koidz. ミヤコオトギリ 都弟切
synonym Hypericum kinashianum Koidz. var. yuhudakense Y.Kimura
synonym Hypericum kinashianum Koidz. var. umbrosum (Y.Kimura) Y.Kimura
日本固有種。本州の関東以西、四国、九州に分布する。山地のやや湿った林縁や渓流の近くに生える。高さ15~40㎝の多年草、直立または斜上し、根を張り、基部から茎を伸ばす。茎は単生~少数または稀に多数で散在し、花序の下で稀に分岐する。茎は円柱形で腺毛がなく、節間は5~35㎜で、葉より短い~わずかに長い。葉は無柄、葉身は長さ(10~)20~60㎜×幅3~10㎜、狭長円形または披針状長円形~線形、下部の葉はときに倒披針形になり、下面は淡色~粉白色、紙質、先は円形~稀に鈍形、縁は平ら、基部はほぼ心形~広楔形、中脈の下部1/3に3対の主側脈があり、3次脈の網目が密で、両面で見え、葉身腺(laminar glands)は黒色で点状、小型で密、縁腺(marginal glands)は黒色で密。花序は(1)1~2(~3)節に3~10(~16)花が付き、普通、下位の節からは分枝せず、全体がほぼ散房花序形~ピラミッド形。小花柄は長さ2~5㎜(果時には頂部で長さ8㎜まで)。苞と小苞は縮小した葉状~線形、披針形。花は直径約9~12㎜、星形。蕾は楕円形、先は鈍形。萼片は5個、わずかに不等長、長さ3~4.5㎜×幅1~1.5㎜、長円状披針形~狭長円形、円形~鋭形、全縁、脈は3本、外側はときに分枝し、網状になり、面の腺(laminar glands)は黒色、線形または条線状~点状、密~やや疎、縁腺(marginal glands)は黒色、完全に規則的~上部につく。花弁は5個、黄色、赤みがからず?、長さ5~7(~9)㎜×幅2.5~4.5㎜、萼片の長さの1.6~2倍、長円状披針形~倒卵形、先は円形、全縁または顕著な縁腺を持ち、葉状腺(laminar glands)は黒色、条線状~点状、密またはやや疎、縁腺(marginal glands)は黒色、上部はほぼ規則的、顕著または非顕著。雄しべは10~18(~30)本、3束になり、最長4~7㎜、花弁の長さの0.8~1倍。葯腺は黒色。子房は長さ1.8~2.3㎜×幅約1.2㎜、円筒状楕円形。花柱は3本、離生、分岐し、長さ2.2~3㎜、子房の長さの1.1~1.3倍。柱頭は狭い。蒴果は長さ5~9㎜×幅約3.5㎜(長さ : 幅 = 1.5~2)、萼片の長さの約1.倍、広卵形または楕円形。種子は暗褐色、長さ0.6㎜。2n=16。花期は7~9月。
30 Hypericum kitamense (Y.Kimura) N.Robson キタミオトギリ 北見弟切
synonym Hypericum yamamotoi Miyabe et Y.Kimura var. kitamense Y.Kimura
日本固有種。北海道北西部~宗谷、網走に分布し、標高約800mの山地に生える。多年草、高さ26~40㎝、木質の基部から直立し、茎は単生または少数で、ときに花序の下で分岐する。茎は狭く2線があり、円柱形にはならず、腺がなく、節間は20~30㎜、葉より短いか長い。葉は無柄。葉身は長さ25~40㎜×幅11~23㎜、楕円形~長円状披針形、下面は淡色で、薄い紙質、先は円形~小凹形、縁は平ら、基部は浅い心形抱茎~円形、基部から中脈の下1/4にかけて3対の主側脈がある。第3次網状脈は密で、両面に見える。葉身腺(laminar glands)は黒色で点状、疎~やや密。縁内腺(intramarginal glands)は黒色で密。花序は約10~40花、2~4節につき、±密、ときに1~2節下から分枝し、全体が円筒形~広ピラミッド形。小花柄は長さ2~3㎜。苞は縮小した葉状~披針形。小苞は線状披針形。花は直径約15㎜、星形。蕾は円筒状楕円形、丸みを帯びる。萼片は5個、ほとんどが同長、長さ3~5㎜×幅0.9~1.2mm、狭長円形~披針形、鈍形~鋭形、全縁、脈は5本、たまに分岐して吻合する、面の腺(laminar glands)はすべて淡色~すべて黒色、条線状~点状、縁腺(marginal glands)は黒色で、ほぼ規則的~ごく少数または欠く。花弁は5個、明るい黄色で赤みがかっておらず、長さ8~10㎜×幅約3mm、萼片の長さの2~2.5倍、長円形、先は円形、全縁。面の腺(laminar glands)は淡色、ときに黒色、線形~点状。縁腺(marginal glands)は黒色で、少数、ほぼ先につく。雄しべは30~35本、3束になり、最長7~8mm、花弁の長さの0.8~0.85倍。葯腺は黒色。子房は長さ2~2.5mm、卵形?。花柱は3本、離生、散開し、長さ4~5㎜、子房の長さの約2倍。柱頭は狭い。蒴果は長さ8~10㎜×幅約4㎜、萼片の長さの2~2.5倍、卵形。種子は見られない。
31 Hypericum kiusianum Koidz. ナガサキオトギリ 長崎弟切 [広義]
日本(本州南西部、四国、九州、琉球諸島~屋久島)。山地の乾燥した日当たりの良い場所に生える。
高さ10~50㎝の多年草、傾伏する基部から根を出し、直立または斜上し、または匍匐して根を出し、基部に匍匐茎をもつ。茎は少数(3~4)で、すべての上部の節で分枝し、ときにほとんど基部近くまで分枝する。茎は上部に不明瞭な2線があり、すぐに円柱形になり、腺毛はなく、節間は13~22㎜で、葉と同長かまたは通常、葉より長い。葉は無柄または長さ0.5(~1.3)㎜の葉柄がある。葉身は長さ3~45㎜×幅1~17㎜、長円形または狭楕円形~倒披針形、下面は粉白色、薄紙質~膜質、先は円形~鈍形、縁は平ら、基部は楔形~尖形(angustate)、主側脈は中脈の下部1/3に2~3対あり、三次網静脈は緩く不明瞭、葉身腺(laminar glands)は淡色、点状、密、縁内腺(intramarginal glands)は全て黒色または少数が淡色、±密または不規則。花序は1~2(~3)節に1~7(~15)個の花が付き、ときに6(またはそれ以上?)節下まで分岐し、全体が散房花序形~円筒形。小花柄は長さ1~3.5㎜。苞と小苞は縮小した葉状。花は直径6~15㎜、凹面。蕾は楕円形、丸みを帯びている。萼片は5個、不等長、長さ2.5~6㎜×幅1~2.5㎜、楕円形~狭長円形、先は鈍形、全縁、脈は3~5本、外側の対は短く分岐し、萼片の面の腺(laminar glands)はすべて淡色、ときに淡色と黒色、まれに黒色のみで、線形~点状、縁腺(marginal glands)は黒色で、少数、縁内またはまれに縁毛上にあり(ある場合、植物の全萼片の1/3以下)。花弁は5個、黄色、赤みがからず、長さ4.5~7㎜×幅2~4㎜、萼片の長さの1.5~2倍、長円状披針形~倒卵形、先は円形、通常顕著な腺を持ち、面の腺(laminar glands)は通常淡色のみで、まれに淡色と黒色があり、または黒色のみで、断続的線形~条線状、縁腺(marginal glands)は黒色で、無柄および/または縁毛の上につく。雄しべは約15~35本、3束になり、最長4~6㎜、花弁の長さの0.85~0.9倍。葯腺は黒色。子房は長さ2.5~3㎜×幅1~1.5㎜、狭卵状円錐形。花柱は3本、離生、分岐し、長さ1.3~2.8㎜、子房の長さの0.5~0.7倍。柱頭は狭い?。蒴果は長さ3.5~7.5㎜×幅2.5~4.5㎜(l : b = 1.3~2.1)、萼片の長さの1.25~1.5倍、卵状円錐形~円筒形。種子は黄褐色(未熟?)、長さ0.6㎜。種皮は線状はしご形(linear-scalariform)。2n=32。
Hypericum kiusianum は H. kinashianum と近縁で、蒴果が小さく、葉の基部が楔形~尖形であること、通常は葉と萼片と花弁の面に完全に淡色の腺があることで異なる。
2変種がある。
31-1 Hypericum kiusianum Koidz. var. kiusianum ナガサキオトギリ 長崎弟切
synonym Hypericum pseudopetiolatum R.Keller f. parvifolium (Y.Kimura) Y.Kimura
synonym Hypericum pseudopetiolatum R.Keller var. kiusianum (Y.Kimura) Y.Kimura
本州(富士、箱根、伊豆、紀伊半島)、四国、九州に分布。ソハヤキ型であり、太平洋側の箱根を北限とする。茎は直立または斜上し、葉と花は比較的大きい。葉が長さ15~20㎜の倒卵形、幅がやや狭い。萼片は長さ約2㎜、黒い萼片腺(laminar glands)だけがあることはなく、縁腺(marginal glands)があり、縁の黒点腺が有柄であることはない。
31-2 Hypericum kiusianum Koidz. var. yakusimense (Koidz.) T.Kato ヤクシマコオトギリ屋久島小弟切
synonym Hypericum yakusimense Koidz.synonym Hypericum pseudopetiolatum R.Keller var. yakusimense (Koidz.) Y.Kimura f. lucidum Y.Kimura
synonym Hypericum pseudopetiolatum R.Keller var. yakusimense (Koidz.) Y.Kimura
屋久島(琉球諸島)に分布する。茎は匍匐し、葉と花は比較的小さく、萼片には黒い萼片腺(laminar glands)だけで縁腺(marginal glands)がないこともある。
32 Hypericum kurodakeanum N.Robson エゾヤマオトギリ 蝦夷山弟切
synonym Hypericum erectum Thunb. var. parviflorum (Y.Kimura) Y.Kimura
日本固有種。北海道の大雪山に生える。
多年草、高さ15~30㎝、傾伏し、基部が草質。茎は叢生し、細く、花序の下では分枝しない。茎は上部にわずかに2~4本の線があり、下部は円柱形、腺はなk、う、節間は15~35㎜で、葉より長い。葉は無柄~長さ0.8㎜の葉柄がある。葉身は長さ(11~)15~22㎜×幅10~18㎜、±広楕円形、下面はより淡色、薄い紙質または膜質、先は円形、縁は平ら、基部は広~狭楔形、中脈の下部1/5~2/5に3対の主側脈がある。三次網状脈はかなり緩く、葉身腺(laminar glands)は黒色で、ときに淡色、点状、±中脈付近を除いて密(まばらまたは無し)、小さい。縁内腺(intramarginal glands)は黒色と淡色、密~不規則。花序は花が1~3個、1つの節につく。小花柄は長さ1~1.5㎜。苞は縮小した小葉状。小苞(ある場合)は線状。花は直径約10㎜、星形。蕾は見られない。萼片は5個、同長、長さ2.6~4.5(~5)㎜×幅1~1.5㎜、狭楕円形~狭長円形、先は円形、全縁、脈は3本、外側で分岐し、萼片の腺(laminar glands)は黒色、点状~(基部では)条線状、やや密、縁腺(marginal glands)は黒色、上部につき、少数または欠く。花弁は5個、黄色、長さ5.8~6.2(~8.2)㎜。雄しべは約27~30本、3束になり、最長約4.8~5.5㎜、花弁の長さの約0.85倍。葯腺は黒色。子房は長さ2.1~2.2(~2.5)㎜。花柱は3本、離生、分岐し、長さ1.8~2(~2.5)㎜、子房の長さの0.85~1倍。柱頭は狭い。蒴果(未熟)は約・長さ5.5㎜×幅2㎜、萼片の長さの約2倍、狭卵形。種子は見られない。花期は7月。
33 Hypericum laxum (Blume) Koidz. コケオトギリ 苔弟切
synonym Hypericum laxum (Blume) Koidz. var. hananoegoense Masam.
synonym Hypericum japonicum Thunb. f. tenuius Miq.
日本全土、朝鮮、中国原産。中国名は小地耳草 xiao di er cao 。別名はマルバヒメオトギリ。休耕田や湿った場所でよく見かけられる。POWOではヒメオトギリ(Hypericum japonicum Thunb.)のsynonymとされている。
多年草。高さ3~10㎝。全体に小型。茎は稜が透明な4稜形、上部で分枝する。葉は柄がなく、長さ0.5~1㎝の円形に近い広卵形、葉縁に狭い透明部分がある。葉には明点があるが黒点はない。花は直径5~7㎜。苞は葉とほぼ同形で幅が萼片より広い。萼片5個の先端や苞の先端に赤色の突起があることが多い。雄しべは5~10個。花柱3個。蒴果は長さ2~3㎜、熟すと赤くなり、腺点はない。種子は長さ約0.5㎜。2n=16。花期は7~9月。
34 Hypericum majus (A.Gray) Britton オオカナダオトギリ
北アメリカ原産。英名はLarge St. John’s wort , millepertuis majeur , greater Canadian St. John's wort。標高0~1200mの湿地、沼地、溝、湖や川の縁、その他の湿った場所に生える。北海道に帰化している。
多年草、直立し、基部と花序で分枝し、分枝数は比較的少なく、長さ5~70㎝。茎は節間は4角形。葉は広がり、無柄または上部でほぼ抱茎。葉身は披針形~狭長円状楕円形または(下部で)倒披針形、長さ10~45㎜×幅(2~)6~12㎜、紙質から膜質、縁は平ら、先は鋭形~円形、基部またはほぼ基部に(3~)5~7本の脈があり、中脈は4対の枝脈がある。花序は散房花序形~円筒形、花が3~30個つき、通常はコンパクトで、分枝はほとんどが2出(dichasial)。花は直径6~7㎜。萼片は披針形~狭楕円形、等長、長さ3.5~6.5㎜×幅0.8~1.5㎜、縁はときに縁毛があり、剛毛状縁毛ではなく、先は鋭形。花弁は黄金色で、ときに赤い脈があり、倒披針形、長さ3.5~6㎜。雄しべは12~21本、不明瞭に5束になる。花柱は長さ0.6~1㎜。柱頭は広い頭状。蒴果は狭円錐状楕円形、長さ4~8㎜×幅2.5~3.5㎜、中央付近が最も広い。種子は長さ0.5~0.7㎜。種皮は細い線状はしご形(linear-scalariform)。2n=16。花期は夏(6~9 月)。
35 Hypericum momoseanum Makino セイタカオトギリ 背高弟切
synonym Hypericum yezoense Maxim. var. momoseanum (Makino) Makino ex Ohwi
synonym Hypericum momoseanum Makino var. atumense Y.Kimura日本固有種(本州の長野県鉢伏山・浅間山、愛知県渥美半島)
多年草、高さ25~65㎝、木質の基部から斜上し、茎は1本、不分枝又は全体に短い不稔の枝をもつ。茎は2本の線があり、線の上や近くに黒点(black punctinform glands)をもち、節間は15~30㎜、葉と等しい。葉は無柄、抱茎、葉身は長さ15~30㎜×幅5~11㎜、長円形~楕円形~倒披針形、下面は淡色、厚い紙質chartaceous,、先は円形~鈍形、縁は平ら、基部は円形、基部と中脈の1/4から主な側脈が3~4対出て、3次の網状脈は疎、葉身の腺点は淡色(小さい)と黒色、沈み、上部にあり、縁の腺点は黒色、密。花序は花が7~11個、2~3節につき、下部の4節以下に花枝をもち、全体は類散房花序状~密な円筒形状になる。花柄は長さ0.7~3㎜(先端は5㎜以下)。苞と小苞は線形、全縁。花は直径15~20㎜、星形。蕾は楕円形、先は鈍形。咢片は5個、ほぼ等長、長さ3~5㎜×幅0.7~2㎜、長円状卵形~披針形~狭楕円形、先は鋭形~次第に尖鋭形、全縁、5脈があり、たまに分枝し、面の腺は淡色、線形~線状、ときに少数の明点もあり、たまに上部に黒点がある。辺縁内とほぼ縁の腺は黒色、間隔が開く。花弁は5個、黄色、長さ8.5~12㎜×幅2.5~3.5㎜、咢片の長さの2.5~3倍、倒卵形~倒披針形、ほぼ対称、先は円鋸歯でななく又はわずかに円鋸歯、面の腺は淡色、線形~点状、ときに、上部に少数の黒点がある。雄しべは約40本、3束生し、最も長いものは長さ7~8㎜、花弁の長さの0.7~0.85倍。葯は黒色の腺がある。子房は3室、葯・長さ3.5㎜×幅2㎜。花柱は3本、分離、長さ3~4㎜、子房の長さの1.2~1.4倍、直立状開出。柱頭は狭い頭状、蒴果と種子は見られない。
36 Hypericum monogynum L. ビヨウヤナギ 未央柳、美容柳
synonym Hypericum chinense L. var. salicifolium (Siebold et Zucc.) Choisy
synonym Hypericum chinense L.中国原産。中国名は金丝桃 jin si tao。 江戸時代に渡来したといわれ、公園や庭によく植えられている。
半落葉小低木。高さ0.3~1.3m。幹は緩く枝分かれする。若枝は2(まれに4)稜があるが、すぐに円柱形になる。葉柄は長さ1.5~2㎜。葉は対生(十字対生)し、長さ2.5~5㎝、幅1.2~2.3㎝の楕円形~披針形、厚い紙質。腹面は淡緑色、白粉をかぶらない。背面に小さな腺点(油点)があり、腹面にはない。花序は1~15(30)個の花がつく。花柄は長さ0.8~2.8(5)㎝。花は直径3~6.5㎝。萼片は長さ4.5~13㎜、幅1.5~6㎜。花弁は黄金色~レモン色、長さ2~3.4㎝、幅1~2㎝、萼片の長さの2.5~4.5倍、全縁、腺点はない。雄しべは5個の束になり。それぞれ25~35個の雄しべがある。雄しべは花弁より長く、長い雄しべは長さ1.8~3.2㎝。子房は長さ2.5~5㎜、幅2.5~3㎜。花柱は長さ1.2~2㎝、子房の長さの3.5~5倍。蒴果は長さ6~10㎜、幅4~7㎜。種子は暗赤褐色、長さ約2㎜。2n=42。花期は5~7月。
37 Hypericum mutilum L. トミサトオトギリ 富里弟切
北アメリカ東部原産。低地(アメリカ)からメキシコの標高1400m、エクアドルの2300mまでの溝、沼地、湖の縁、乾燥した一時的な水溜まり、そしてまれに湿った森や放棄された畑に生える。日本で帰化が確認された。水田に生え、千葉県富里市で 初めて帰化が報告された場所に因んで名づけられた。畔や放棄水田などにコケオトギリと混じって生える。
日本で確認さらたものは茎が直立し、高さ30~60㎝、上部で広い角度で長い枝を多く分つ.。茎葉は卵形~長卵形、やや蒼白色を帯びた緑色。透明点が密にある.花序は集散花序となり、花序上端の葉は楕円形。.花はコケオトギリに似て直径約3.5㎜。花弁はレモン黄色、コケオトギリより赤味が薄い。雄しべは6~8本、離生。萼片は不等長。果実は楕円状、長さ2.5~3㎜、隔壁がなく1室。種子は長さ約0.4㎜、表面に網斑があり、コケオトギリに見られるような縦稜は目立たない。
多年草または1年草、高さ(5~)15~60(~80)㎝、直立またはときに傾伏し、茎は単独または基部から分枝し、通常は中間より上から10対以下の枝が広がり、まれにないこともある。茎は緑色で、4角(かど)があり、ときに上部が2稜になり(ancipitous)、平滑な線があり、節間は長さ10~40㎜、最上部を除いて葉より長く(しばしば短いか欠く)。葉は無柄、広がり、4列(tetrastichous)ではなく、宿存性し(ときに最下部を除く)、葉身は長さ(3~)5~27(~40)㎜×幅1~15㎜、下部の葉は卵形または楕円形または楕円状長円形~倒卵形またはヘラ形(落葉性)、上部の葉は卵形またはほぼ円形または卵状三角形~楕円形または披針状三角形、平ら、僧帽形(cucullate)ではなく、中肋は下面にわずかに突き出し、平滑、下面はより淡色またはそうでなく、膜質、先は鈍形~円形、縁は平ら、基部は円形、まれに広楔形~心形で抱茎、鞘はなく、離生、基部からの脈は3~5本、あまり目立たない斜上脈を持ち、三次の網状脈はかなり緩く、不明瞭、葉身腺(laminar glands)は密、点状で、目立たない、花序は花が5~約60個つき、頂生し、規則的に2花序/単花序に分枝し、通常はその下部の最大10節から開花枝があり、花序全体は円筒形になる。小花柄は長さ(0.5~)1.3(~7)㎜、最上部の葉は葉状で、苞は錐形~葉状。花は直径3~5㎜、星形。萼片は長さ2~4(~4.5)㎜x幅(0.6~)1~1.5㎜(果時には大きくなり)、等長または不等長、まれに重なり、披針形~線状披針形または狭楕円形、またはまれに楕円状長円形~倒披針形、先は鋭形~小突起形または、まれに鈍形~円形、縁は全縁、脈は(3~)5本、分岐がなく、目立たないか、ほとんど目立たず、腺は線形、上部はで点状。花弁びらは金黄色、外側に赤色の線はなく、長さ1.75~2.5(~3.5)㎜×幅0.8~1.5㎜、萼片より短く、長円形(わずかに非対称)、小突起と腺は無い。雄しべは5~16本、ほとんど束にならず、最長は約1.8~3㎜、花弁の長さの0.8倍。子房は約・長さ1㎜x幅0.6㎜、狭卵形~楕円形。花柱は3本、長さ約0.5㎜、子房の長さの約0.5(~1)倍。柱頭はかなり広い頭状。蒴果は長さ2~4(~5)㎜×幅1.6~2.4㎜、狭卵形~円筒状楕円形、萼片を超える。種子は長さ0.4~0.7㎜、種皮は細かい線状はしご形(linear-scalariform)。2n=16, 18。
38 Hypericum nagasawae Hayata ニイタカオトギリ 新高弟切
台湾原産。中国名は玉山金丝桃 yu shan jin si tao。標高2300~4000mの中央山地に分布し、岩石の多い斜面、道端、針葉樹林に生える。
多年草、高さ5~35㎝、ほぼ直立~斜上し、匍匐する枝から根を張る。茎は単生または±叢生、分岐しないか上部で±分岐する。茎は2線があり、腺がない。葉は無柄またはほぼ無柄。葉身は卵形または長円形~楕円形または倒披針形または線形、長さ(0.3~)0.8~2.5㎝×幅3~12㎜、厚い紙質~ほぼ革質、下面は粉白色またはときに微細なパピラがあり、葉身の腺(laminar glands)は淡色で点状、ややまばら、上部で目立ち、縁内腺(intramarginal glands)は黒色で密または不規則、主な側脈は3対または4対、ときに±顕著な亜葉縁脈を形成し、三次の網状脈は緩くまたは不明瞭、基部は楔形~狭められ(angustate)、縁は全縁で反り返り、先は鋭形~円形。花序は1~2節に1~11花つき、ときに1~2節の下から花枝を出し、全体がほぼ平ら。苞と小苞は披針形~線形、縁は全縁。花は直径1.5~2.7㎝、±星形。蕾は卵形~楕円形、先は鈍形。萼片は離生、蕾では斜上し、果時には広がり、卵状披針形~±狭楕円形、長さが等長、長さ3~7.5㎜×幅0.8~2.5㎜、面の腺(laminar glands)は淡色またはまれに黒色、条線またはまれに線~点状、縁腺(marginal glands)は黒色でときに淡色、規則的または不規則、埋没またはまれに縁毛の上にあり、または欠き、縁は全縁または稀に1~2本の腺のある縁毛があり、先は鈍形~鋭形、脈は5本。花弁は明るい黄色で、蕾では赤みがかっており、倒卵形または長倒卵形~倒披針形、長さ0.8~1.5cm×幅4~7mm、萼片の長さの2~2.5倍。面の腺(laminar glands)は淡色で稀に黒色、線状~点状、稀に欠き、縁腺(marginal glands)は黒色で無柄または稀に縁毛の上にあり、上部またはほぼ先にあり、縁は通常全縁。雄しべは40~80本で、束生しないか不明瞭に束生し、最長4.5~8㎜、花弁の長さの0.6~0.8倍。子房は狭卵形~楕円状卵形、長さ2~2.5㎜×幅1~1.5㎜。花柱は3本、長さ3.5~7㎜、子房の長さの1.3~3倍、基部付近から±広がる。蒴果は狭卵形~広卵形、長さ(5~)6~7㎜×幅3.5~5㎜、萼片の長さの1~1.5倍。種子は暗褐色、長さ約1㎜、ほとんど竜骨はない。種皮は細かいはしご状網目がある。花期は7~8月。果期は8~10月。2n=36。
39 Hypericum nakaii H.Koidz. サマニオトギリ
日本固有種(北海道)。北海道南部および東部の標高0~1500mに生える。
多年草、高さ(10~)20~40㎝、匍匐して、分枝、根を張り、直立または斜上する。茎は単生または少数(まれに密に叢生し)、花序の上で分枝し、花序の下で分枝しない。茎(通常部分的に不明瞭)は2線がありまたは円柱形、腺はなく、節間は5~40㎜、葉より短いか長い。葉は無柄または長さ0.5㎜以下の葉柄があり、広がる。葉身は長さ(15~)20~35(~40)㎜×幅(4~)10~23㎜、楕円形または長円状楕円形まれに長円形~卵形、下面はやや淡色で、紙質、先は円形またはわずかに小凹形~鈍形、縁は全縁、基部は円形~ほぼ心形、中脈の下部1/3~1/4またはほぼ基部までに、(2)3(4)対の主側脈があり、三次脈の網状組織は密で、両面で見え、葉身腺(laminar glands)は黒色で点状、ほとんどないかかなり密、縁内腺(intramarginal glands)は黒色で密。花序は2(3)節に5~16個の花が緩く付き、節の下部に1対の枝を持つこともあり、全体がほぼ散房花序状。小花柄は長さ3~5(先端では10まで)㎜。苞と小苞は縮小した葉状。花は直径12~25㎜、星形。蕾は ±広楕円形、先は丸く~ほぼ鋭形。萼片は5枚、ひどく~わずかに不等長、長さ(2~)5~10㎜×幅2.5~5㎜、狭長円形~±広楕円形または卵状長円形~狭披針形、先は円形~鈍形またはまれに鋭形、全縁またはごくまれに目立つ縁腺をもち、脈は5本、分岐して網状になり、萼片の腺(laminar glands)は線形~条線状、ときに点状、淡色および/または黒色、 縁腺または縁内腺(marginal or intramarginal glands)は黒色、密~不規則またはまれに欠く。花弁は5個、黄金色で赤みがからず、長さ(8~)10~16㎜×幅3.6~6㎜、萼片の長さの1.6~2倍、倒披針形、先は円形、全縁または上部がほぼ円鋸歯状、わずかな先端の小突起が有または無、花弁の腺(laminar glands)は線形または(上部が)条線状~点状、全て黒色~全て淡色、縁腺(marginal glands)は黒色で、少数(約7)~密、先~ほぼ先にあるか、または無い。雄しべは40~90本、3束になり、最長6~12 mm、花弁の長さの約0.6~0.75倍。葯腺は黒色。子房は長さ(2.2~)3.5~4.2㎜×幅1.5~2.5㎜、狭卵状楕円形。花柱は3本、離生、狭く散開し、長さ4~7㎜、子房の長さの1.6~2.3倍。柱頭は狭い。蒴果は5.5~8㎜×幅4~6.4㎜、萼片の長さの約1.5倍、卵状円筒形~円筒状円錐形。種子は黄褐色?、長さ約0.8~0.95㎜。種皮ははしご状網目がある(scalariform-reticulate)?。2n=16, 24。花期は7~8月。
Hypericum nakaii は H. pibairense と近縁で、より細く、2線または円柱状の茎、小さな葉、特に長い花柱によって本質的に異なる。
39-1 Hypericum nakaii H.Koidz. subsp. nakaii サマニオトギリ
synonym Hypericum samaniense Miyabe et Y.Kimura
synonym Hypericum samaniense Miyabe et Y.Kimura var. elatum Y.Kimura
北海道南部に分布。39-2 Hypericum nakaii H.Koidz. subsp. miyabei (Y.Kimura) N.Robson トウゲオトギリ 峠弟切
synonym Hypericum miyabei Y.Kimura釧路に分布。
茎にわずかに隆起線がある。花柱は子房の長さの約3倍。
40 Hypericum nakamurae (Masam.) N.Robson セイスイキンシバイ 清水金糸梅
synonym Hypericum formosanum var. nakamurae (Masam.) S.S.Yingsynonym Takasagoya nakamurae Masam.
台湾原産。中国名は清水金丝桃 qing shui jin si tao。台湾東部の標高1400~2400mの石灰岩の割れ目に生える。 低木で、高さ0.5メートル以上。枝は±広がる。茎は若いうちは4線で2稜(ancipitous)、すぐに円柱形になり、節間は0.6~3.5㎝、葉より短いから長い。葉は無柄またはほぼ無柄。葉身は長円形~楕円形または倒卵形、長さ1~2.7(~3)㎝×幅0.5~1(~1.3)㎝、ほぼ革質、下面は淡色だが粉白色ではなく、葉身腺点(laminar glands dots)があり、目立ち、下面に腺は欠き、主側脈は1対、上部の側脈は明瞭な縁内脈(intramarginal vein)を形成し、三次脈の網目はほとんど見えず、基部は楔形~尖形(angustate)、先は鋭形。花序は1~3花があり、頂生し、ときに3節下まで1花の短い副枝(subsidiary branches)がつき、全体は短い円筒形。苞は葉状、小苞は狭楕円形または楕円状披針形、宿存性。小花柄は長さ約1㎝。花は直径4~6cm、星形、蕾は狭卵状ピラミッド形、先は鋭形。萼片はごくわずかに合着し、花では広がり、果時には反り返り、線状披針形~線形、長さ3.5~5(~8)㎜×幅0.7~1.2(~2)㎜、萼片の腺(laminar glands)は条線と点であり、縁は全縁、先はほぼ鋭形~円形。花弁は明るい黄色、倒卵形、長さ2~2.8㎝×幅1~2㎝、萼片の長さの3.5~6倍、縁は全縁、腺はなく、先端の小突起は短い。雄しべは束ごとに約15本、最長1.2~1.6cm、長さ約1.5~2.5㎝、花弁の長さとほぼ同長。子房は狭卵形~楕円形、長さ2.5~3(~5)㎜×幅約1.5㎜。花柱は長さ1.05~1.2(~1.5)㎝、子房の長さとほぼ同長。柱頭は頭状。蒴果は狭卵形~円筒形、長さ7~9㎜×幅3~4㎜。種子は暗黄褐色、長さ1.2~1.4㎜、部分的または全体的に狭い翼がある。種皮は線状網目がある。花期は6~7月。果期は8~9月。
41 Hypericum nikkoense Makino ニッコウオトギリ 日光弟切
synonym Hypericum hakonense Franch. et Sav. var. rubropunctatum (Makino) Y.Kimura
synonym Hypericum hakonense Franch. et Sav. var. nikkoense (Makino) Y.Kimura
日本固有種。本州の栃木県、群馬県、長野県に分布し、標高約1200mに生える。全体にやや大きく、葉に赤点がある。高さ15~35(~50)㎝の多年草、傾伏して根を張り、木質の基部から直立し、茎は多数、叢生し、ときに中間から分枝し、やや丈夫、落葉低木(suffruticose)、茎は上部に2線があり、下部が円柱形で、ときに帯赤色および/または黒色の小さな腺点が散在し、節間は10~20㎜、葉より短い。葉は無柄から長さ0.5㎜の葉柄がある。葉身は長さ(12~)15~27(~30)㎜×幅3~7(~12)㎜、最上部は三角形状披針形で、浅い心形で抱茎、その他は披針形~狭楕円形または倒披針形、下面はほぼ粉白色、紙質、先は円形、縁は平らから反り返り、基部は円形~楔形、主側脈は中脈の下部1/4に3~4対あり、三次脈の網目は下面でより顕著、葉身腺(laminar glands)は淡色から帯赤色、大きく、点状または短く細長く、密集し?、ときにごく少数の黒色の点状腺があり、縁腺(marginal glands)は黒色で、密集しているかやや不規則。花序は1~3節に1~7花が付き、しばしば下部の6節まで分岐し、全体が散房花序形~狭円筒形。小花柄は長さ1~2.5㎜。 苞は縮小した葉状、小苞は線形。花は直径(10~)12~16㎜、星形。蕾は楕円形で鈍形。萼片は5個、不等長、長さ3.5~5㎜×幅0.8~1.2㎜、脈は5(3)本、分岐し、ときに網状。萼片の腺(laminar glands)は黒色でときに淡色、線形~点状。縁腺(marginal glands)は黒色またはときに淡色、間隔が空いており、± 不規則。花弁は5枚、黄色、しばしば帯赤色、約・長さ8~9㎜×幅4~4.8㎜、萼片の長さの約2倍、長円状披針形~卵状披針形、先は円形、全縁、花弁の腺(laminar glands)は黒色でときに淡色、線形~点状、散在し、縁腺(marginal glands)は黒色で不規則、先端部にある。雄しべは20本以上、3束になり、最長約6㎜m、花弁の長さの約0.75倍。葯腺は黒色。子房は長さ2.5~3㎜×幅1.5~2㎜、± 狭卵形円錐形。花柱は3(4)本、離生、分岐し、長さ(2.5~)3~5㎜、子房の長さの1~1.4倍。柱頭は狭い頭状。蒴果は長さ(6.5~)7~9(~10)㎜×幅 3~4(~5)㎜、萼片の長さの約2倍、卵形ピラミッド形~円筒状楕円形。種子は褐色、長さ約0.5㎜、種皮は線状はしご形(linear-scalariform)。
42 Hypericum nokoense Ohwi ノウコウオトギリ 能高弟切
synonym Hypericum nagasawae var. nokoense (Ohwi) S.S.Ying
台湾原産。中国名は能高金丝桃 neng gao jin si tao。標高1800~1900mの山の斜面に生える。
多年草、高さ5~10㎝(時に長く散らばる)、匍匐し、分枝し、基部から根を出し、ほぼ直立~斜上する。茎は±叢生し、時にマット状になり、分枝しないか上部で±分枝する。茎は2~4線があり、ときにほぼ円柱形、腺はない。葉は無柄または長さ1㎜までの葉柄を有する。葉身は卵形(花序の下)~楕円形または狭長円形または倒卵形、長さ4~12㎜×幅1.5~6㎜、ほぼ革質、下面は著しく粉白色、ときに微細なパピラがあり、葉身腺(laminar glands)は淡色、ときに黒色、点状、密~疎、縁内腺(intramarginal glands)は黒色で密、主側脈は2対または3対あり、三次脈の網目構造は不明瞭、基部は狭い楔形(cuneate-angustate)、縁は全縁、先は円形。花序は花が1~5(~7)個、末端の節から生じ、下部の分枝はなく、ほぼ平ら。苞と小苞は全縁または顕著な縁腺を持つ。花は直径1.2~1.8㎝、±星形。蕾は卵形~楕円形、先は鋭形。萼片は離生、直立し、披針形~狭長円形、等長、長さ3~5㎜×幅0.8~1.2㎜。萼片の腺(laminar glands)は淡色で黒色、線~条線状、縁腺~縁内腺(marginal to intramarginal glands)は黒色で不規則、縁は全縁、先は鋭形~ほぼ尖鋭形、脈は3~5本。花弁は明るい黄色、倒卵形または長円状披針形~披針形、長さ7~11㎜×幅2~3(~4.5)㎜、萼片の長さの約3倍。花弁の腺(laminar glands)は淡色で通常は黒色、線形~点、縁腺はなく、縁は全縁。雄しべは約43本、不明瞭だが明らかに3束になり、最長5~8㎜、花弁の長さの約0.7倍。子房は卵形。花柱は3本、長さ4~6㎜、子房の長さの2~3倍、基部から広がる。蒴果は狭卵形、長さ6~7㎜×幅約4㎜、萼片の長さの1.5~2倍。種子は見られない。花期は7~8月。果期は8~9月。
43 Hypericum oliganthum Franch. et Sav. アゼオトギリ 畦弟切
日本(本州の関東以西、四国、九州)、朝鮮原産。河川の氾濫原や田の畔などの湿った場所に生える。
多年草。高さ10~40㎝。茎は数本叢生し、よく分枝し、地面を這うように伸びることも多く、長いものは長さ60㎝になる。葉は対生し、無柄。葉身は倒卵形~長楕円形、長さ13~25㎜、基部は楔形、多少抱茎、先は鈍形、葉面には均等に密に明点があり、葉縁には密に黒点(暗点)が等間隔に並ぶ。葉の下面は帯白色。花序は茎頂や枝先に頂生、少数の花を(普通、1~3個)つける。苞は小さく、葉状。花柄は短い。萼片は5個、大小あり、小咢片は線状披針形、大咢片は長楕円形、鈍頭、緑色、明腺があり、縁に黒点がある。花は直径10~13㎜。花弁は5個、黄色、長楕円形、長さ7~8㎜、黒点と明点があり、縁に少数の柄のない黒色腺球がつく。雄しべは多数、花弁より短い。子房は卵形、普通、3室。花柱は3本、長さ1.44~1.6㎜、子房よりかなり短い。蒴果は卵球形、約・長さ6.5㎜×幅5.5㎜、普通、3本の縦溝があり、宿存する萼よりわずかに長い。花期は8~10月。果期は11月。
44 Hypericum olympicum L. フデオトギリ 筆弟切
ギリシャ、トルコ、アルバニア、ブルガリア、ユーゴスラビア原産。英名はMount Olympus St. John's wort。標高0~2000mの砂地、石の多い場所地、ときに草地、または開けた地面の岩の間、またはマツ林に生える。
低木または亜低木、高さ10~55㎝、直立または傾伏、まれに平伏し、茎は少数~多数、叢生し、たまに根を出し、花序の下では分枝しないか、または中間の枝をもつ。茎の節間は長さ5~15㎜、葉より長いか短い。葉は耳がなくまたは抱茎でなく、広がる~直立し、±粉白色、長さ5~31(~38)㎜、幅2~12㎜、楕円形またはまれに披針形楕円形~狭長楕円形または線形、ときに倒卵形、表裏同色、薄い革質、 先は鋭形~ほぼ鋭形または(狭い場合)円状鈍形、縁は平ら、基部は円形(最上部)~通常は楔形、中脈の下3分の1から0~3対の不明瞭な側脈があり、脈分岐しないか、少なくとも目に見える三次網状脈がなく、葉身の腺(laminar glands)は淡色、密で、目立たず、縁内腺(intramarginal glands)は黒色、小さく、不規則であるか、少数である。花序は1~3節に花が1~5(~9)個付き、まれに1個の下位節から分岐し、全体がほぼ散房花序形~ほぼ円筒形である。小花柄は長さ2~4㎜で、かなり丈夫である。苞は縮小した葉状で、披針形~卵状披針形、黒色腺はない。小苞は類似しているがより小さい。花は直径30~65㎜。蕾は卵状ピラミッド形、丸みを帯びる。萼片は不等長またはほぼ等長、広く覆瓦状、葉より色が淡く、長さ6~16㎜×幅3~12㎜、広卵形または広楕円形~披針形、先は尖鋭形~鋭形またはまれに小突起形、基部は円形、ときに短い爪形(unguiculate)から広楔形、全縁、 脈は9~15本、分岐して吻合し、面の腺(laminar glands)は色が淡く、線形~上部は条線状(striiform)、ときに少数(まれに多数 – 'var. coronense')、黒色、点状(punctiform)、縁の腺(marginal glands)はないかまれに1(~2)個、黒色で、先にある。花弁は金色またはたまに淡黄色、ときに赤みがかったり線が入り、長さ15~30㎜×幅8~12㎜、萼片の長さの2~2.5倍、長円状披針形、先は円形、小突起は短く、鋭形~鈍形、面の腺(laminar glands)は色が淡く、線形、縁の腺(marginal glands)はないかまたは黒色、上部に1~7個つく。雄しべは約65~125本、最長14~25㎜、花弁の長さの約0.9倍。子房は約・長さ3㎜×幅2.5㎜、広卵形。花柱は長さ18~23㎜、子房の長さの約6~8倍。蒴果は長さ5~10㎜×幅4~8㎜、萼片より短く、±広卵形~球形。種子は暗褐色、長さ約1.8㎜、種皮は浅く小窩状はしご形(foveolate-scalariform)。2n=18(n=9)。
品種) 'Calypso' , 'Eden Star' , 'Edith' , 'Gracile' , 'Grandiflorum' , 'Minor' , 'Moonlight' , 'Sulphureum'
44-1 Hypericum olympicum var. minus Heldr. ex Degen
ギリシャ、ブルガリアに分布。
品種) 'Schwefelperle' , 'Sulphureum' , 'Variegatum' (v)(クリーム白色の斑入り)
44-2 Hypericum olympicum var. olympicum
ギリシャ、トルコ、アルバニア、ブルガリア、ユーゴスラビアに分布。
44-3 Hypericum olympicum f. tenuifolium (D.Jord. & Kozuharov) N.Robson
ギリシャ、ブルガリア、ユーゴスラビアに分布。44-4 Hypericum olympicum f. uniflorum D.Jord. & Kozuharov
ギリシャ、ブルガリアに分布。
品種) 'Citrinum'
45 Hypericum orientale L. ヒペリカム・オリエンタレ
Hypericum ptarmicifolium Spach ロシア、ジョージア、トルコ原産。英名はPtarmic-leafed St. John's wort , Eastern St. John's wort。 標高 0~2300 mの火成岩の岩石斜面と森林地帯に生える。
多年草、高さ7~45㎝、直立~傾伏、ときに基部で根を張り、茎は多数、直根から広がって分枝し、花序の下でまれに分枝する。茎は狭い2線があり、無腺または少数の帯赤色またはまれに黒色の腺が線状になりまたは通常散在し、節間は3~20㎜で、葉より短い。葉は無柄で斜上~直立する。葉身は長さ10~40㎜×幅2~5(~10)㎜(耳を除く)、狭長円形または狭楕円状長円形~線形または倒披針形、表裏同色で紙質、先は円形、縁は非常に浅く腺のある小歯があり、基部は狭い楔形で耳があり、一対の腺のフリンジが耳につき、中脈の下1/4から3本の主脈があり、目に見える枝はなく、葉身腺(laminar glands)は淡色で点状、密生し、縁腺(marginal glands)は淡色、平らで、小歯上につく。花序は3~約21花で、1~3(4)節から成り、1~3(4)節下からしばしば花枝を生じ、全体が倒ピラミッド形~広ピラミッド形または円筒形である。苞と小苞は楕円形または長円形~線形、耳があり、腺のつくフリンジ縁がある。花は約・直径20~40㎜。蕾は楕円形で丸みを帯びる。萼片は不等長、覆瓦状、ほぼ離生し、長さ4~7㎜×幅(1.5~)2~4.5㎜、狭~広長円形または楕円形~倒卵状へら形または倒卵形、先は鈍形~円形、面の腺(laminar glands)は淡色、線形~点状、縁腺(marginal glands)は淡色、小歯の上につく。花弁は明るい黄色、赤みがかったり脈が入ったりせず、長さ10~18㎜×幅2.2~4.5㎜、萼片の長さの約2.5倍、倒披針形、先は円形、全縁、面の腺(laminar glands)は淡色で線形(下部)~点状(上部)、縁腺(marginal glands)は淡色、側部および先にあり、埋没する。雄しべは30~45本、3束になり、最長7~13㎜、花弁の長さの約0.07倍。葯腺は琥珀色。子房は約・長さ2~4㎜× 幅1.5~2㎜、狭卵形。花柱は3本、長さ5~8㎜、子房の長さの約2~2.5倍、広がる~斜上する。蒴果は長さ8~11㎜×幅3.5~4.5㎜、狭卵形~卵状ピラミッド形、萼片の長さの1.5~2倍、多数の縦の油管(vittae)がときにわずかに膨らむ。種子は褐色、長さ1~1.5 mm、種皮は小窩状はしご形(foveolate-scalariform)。2n=16、n=8。
品種) 'Ptarmicifolium'
46 Hypericum ovalifolium Koidz. オオシナノオトギリ 広義
日本固有種。長野県の2つの山、白馬岳と戸隠岳の岩の割れ目に生息し、亜種として区別するのに十分なほど個体差がある。
多年草、高さ15~40(~60)㎝、匍匐性~斜上して直立し、基部は木質で分枝し、茎は数本、叢生し、上部で分枝し、枝は細く広がるか、花序の下では分枝しない。茎は花序では狭く2線があり、下部は円柱形または完全に円柱形、腺はなく、節間は14~32㎜、葉よりわずかに短いかまたは長い。葉は無柄または長さ1㎜以下の葉柄があり、広がる。葉身は長さ20~30㎜×幅(10~)13~19㎜、卵形または長円形~楕円形、下面はやや淡色、紙質、先は円形、縁は平らで、基部は浅い心形~円形、上部の葉はほぼ抱茎、主側脈は中脈の下1/5~2/5に3~4(5)対あり、下面では三次の網状脈が密に見え、葉身腺(laminar glands)は黒色で点状、小型、疎~やや密。縁内腺(intramarginal glands)は黒色、やや密から間隔を空けてあり、その下に小さな亜縁の腺が琥珀色または黒色で挟まれる。花序は約3~25花で、1~5節から成り、緩くまたは±密集し、下部に1~2個の枝ができ、全体は広円筒形~ほぼピラミッド形。小花柄は長さ2.5~4(先端は6)㎜。苞と小苞は縮小した葉状~線形。花は直径18~25㎜の星形。蕾は広卵形~楕円形で丸みを帯びる。萼片は5個、等長、楕円形~広楕円形、まれに倒卵形、先は円形~切断状(premorse)、全縁または先端が侵食された小歯があり、脈は5本、分岐して網状、萼片の腺(laminar glands)は線形~条線状、ときに点状、黒色、 縁または亜縁腺(marginal or submarginal glands)は黒色、少数かつ上部にあるかまたは無い。花弁は5個、黄色、赤色を帯び、長さ9~125㎜×幅5~6.5㎜、萼片の長さの約3.3~4倍、長円形~長円状楕円形または倒卵状長円形、先は円形または短い小突起があり、花弁の腺(laminar glands)は黒色、線形または条線状から点状、縁腺(marginal glands)は黒色、1~2個、上部にあるかまたは無い。雄しべは約60~70本、3束になり、最長8~13㎜、花弁の長さの約0.9倍。葯腺は黒色。子房は長さ3~4㎜×幅2~2.5㎜、広卵形。花柱は3本、離生、散開斜上し、長さ4~6㎜、子房の長さの1~1.7倍。柱頭は狭い。蒴果は狭卵状円錐形。種子は見られない。
46-1 Hypericum ovalifolium Koidz. subsp. ovalifolium オオシナノオトギリ 大信濃弟切
本州(白馬岳)に分布する。46-2 Hypericum ovalifolium Koidz. subsp. hisauchii (Y.Kimura) N.Robson トガクシオトギリ 戸隠弟切
synonym Hypericum ovalifolium Koidz. var. hisauchii Y.Kimura本州(戸隠岳)に分布する。
47 Hypericum patulum Thunb. キンシバイ 金糸梅
中国原産。中国名は金丝梅 jin si mei。
半落葉小低木。高さ0.3~1.5(3)m。若木は茎に4稜又は4線があるが、すぐに2線になる。葉柄は長さ0.5~2㎜。葉は長さ1.5~6㎝、幅0.5~3㎝。葉の腺点は密にある。花序に花は1~15個つく。花柄は長さ2~4(7)㎜。花は直径2.5~4㎝、深いカップ形。萼片は長さ5~10㎜。花弁は長さ1.2~1.8㎝、幅1~1.4㎝、萼片の長さの1.5~2倍。雄しべは50~70個が束になり、長いものは7~12㎜、花弁の0.4~0.5倍の長さ。子房は長さ5~6㎜、幅3.5~4㎜。花柱は長さ4~5.5㎜、子房の長さの0.75~0.95倍の長さ。蒴果は長さ0.9~1.1㎝、幅8~10㎜。 種子は長さ1~1.2㎜、暗褐色。2n=20。花期は5~7月。
品種) 'Hidcote'大輪金糸梅(Hypericum × hidcoteense 'Hidcote'に改められている) , 'Stardust' , 'Sungold' , 'Variegatum'
48 Hypericum perforatum L. セイヨウオトギリ 西洋弟切 広義
synonym Hypericum officinale Gaterau
synonym Hypericum officinarum Crantz
synonym Hypericum perforatum var. vulgare Spenn.
synonym Hypericum perforatum subsp. vulgare (Spenn.) A.Fröhl.
synonym Hypericum vulgare Lam.
ユーラシア、モロッコ原産。温帯に広く帰化。英名はgoatweed , Klamathweed , perforate St. John's-wort , racecourseweed , common St. John's-wort , Tiptonweed。別名はセントジョーンズワート、セイヨウオトギリソウ。標高3150m以下の開けた森林、牧草地、草地、ステップ、川岸、石や草の多い斜面、道端、乾燥したまたは水はけの良い場所に生える。世界中で広く栽培され、日本、朝鮮、南北アメリカなどに帰化している。
多年草、高さ20~60(~120)㎝、匍匐して根を張る基部から直立またはまれに傾伏~平伏し、晩期に根から出芽し、茎は多数~少数で、特に上部でよく分枝する。茎は2線があり、線上に少数の黒色の腺があり、節間は5~25㎜、葉より短い。葉は対生し、無柄~長さ1㎜の葉柄があり、葉身は長さ(5~)10~25(~30)㎜×幅3~10(16)㎜、長円形または楕円形~線形またはまれに円形、下面はより淡色、紙質、先は鈍形または小突起形~まれに鋭形、縁は平らまたは±反曲~外巻きし、基部はほぼ心形(またはまれに心形)~抱茎~やや狭い楔形、主側枝は中脈の下部1/4~1/8に約2対あり、三次の網静脈は緩くまたはほとんど見えず、葉身腺(laminar glands)は淡色(明点)で散在し、ときに少数が黒色で点状であり、縁内腺(intramarginal glands)は黒色で、間隔をあけてつき、小さな密集した淡色の腺が点在する。花序は花が3個~多数が付き、1~3節から成り、花枝は下方の最大15節または時にはそれ以上の節に曲がって斜上し、全体は円筒形~広ピラミッド形またはほぼ散房花序である。小花柄は長さ約0.5~2㎜。苞および小苞は長さ4~7㎜で、狭披針形~線形、全縁。花は直径15~25(~35)㎜、星形。蕾は狭卵形で鋭形。萼片は5個、等長、長さ3~7㎜×幅0.7~1.5㎜、狭長円形または披針形~線形、先は鋭形~細かい尖鋭形で、小突起はときに腺があり、全縁、蕾では直立し、果時にでは反り返り、脈は3(5)本、分岐せず、萼片の腺(laminar glands)は淡色でしばしば少数が黒色になり、2(4)列につき、条線状(基部)~点状、縁内腺(intramarginal glands)は少数で、黒色または欠く。花弁は5個、黄金色、蕾では赤みがからず、長さ(8~)12~15㎜×幅5~6㎜、萼片の長さのは3~4倍、長円形~長円状楕円形、非対称、上部は±円鋸歯があり、花弁の腺(laminar glands)は全て淡色~大部分が黒色、線形または部分的に条線状~点状、縁内腺(intramarginal glands)は黒色、上部につき、存在する場合は切れ込みにつく。雄しべは40~60本、3束になり、最長6~8㎜、花弁の長さの約0.5~0.7倍。葯腺は黒色。子房は3室、長さ3~5㎜×幅1.3~1.8㎜、狭卵形~卵状楕円形。花柱は3本、離生、長さ4~6㎜、子房の長さの約1.5~2倍、幅広く広がる~やや狭く広がる。柱頭は狭い。蒴果は長さ3~10㎜×幅3~6㎜、萼片の長さの0.7~1.5倍、狭卵形~広卵形または狭卵状円錐形、暗褐色。バルブは背と側部に油管(vittae)をもち、または帯黄色の条線状~点状の小胞(vesicles)を持つ。種子は暗褐色、長さ約1㎜、円筒形、竜骨や付属体はない。種皮は微細な線状小窩形(linear-foveolate)。2n=32(異質4倍体),48。花期は6~8月。
品種) 'Crusader'(v) , 'Elixir' , 'Topaz'
48-1 Hypericum perforatum L. subsp. chinense N.Robson コゴメバオトギリ 小米葉弟切
synonym Hypericum perforatum var. microphyllum H.Lév.synonym Hypericum perforatum L. var. angustifolium auct. non DC.
中国(甘粛省、貴州省、河北省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、山東省、山西省、四川省、雲南省)原産。中国名は中国金丝 zhong guo jin si tao。標高400~2200mに生える。日本に導入され、帰化している。葉と花は小さくなり、葉はすべて葉柄がある。花は細長い枝の先端に小さな(頂端および側枝)花序および/または部分花序が密集する。枝は比較的長く、湾曲して斜上する。花弁の腺(laminar glands)はすべて黒色または存在しない。
48-2 Hypericum perforatum L. subsp. perforatum セイヨウオトギリ 西洋弟切
synonym Hypericum lineolatum Jord.ユーラシア、モロッコ原産。標高0~1600mの乾燥~湿潤した、開放から半日陰の場所に生え、通常はかき乱された土壌に生える。
多年草、直立し、基部で根を張り、匍匐せず、叢生し、高さ20~120㎝。茎は節間に2線があり、黒色の腺が通常線状になる。葉は広がり、無柄または葉柄あり(長さ1㎜まで)。葉身は長円形または楕円形~披針状楕円形または線形、長さ7~30㎜×幅2~16㎜、基部は楔形~円形、縁は平らまたは反曲~外巻きし、先は鈍形または小突起形~円形、中脈から2~3対の側脈が分岐、し、三次脈は密に網状ではなく緩く、葉身腺(laminar glands)は通常、上部につき、淡色でかなり密集する。縁内腺(intramarginal glands)は間隔をあけてつき、黒色。花序はほぼ散房花序~広ピラミッド形または円筒形、1~15個の花がつく。花は直径12~30㎜。萼片は重なり合わず、果時に広がり、披針形または狭長円形~線形、不等長~ほぼ等長、長さ2.5~7㎜×幅0.6~2(~3)㎜、先は鋭形~芒状。花弁は黄金色、狭倒卵形~倒披針形、長さ7~13㎜、黒色の縁腺を持つ。雄しべは40~90本。葯腺は黒色。花柱は長さ4~6㎜。蒴果はほとんどの場合狭く、卵形~狭卵状ピラミッド形、長さ6~10㎜×幅3.5~5㎜、縦の油管(vittae )と短い斜めの油管または小胞(vesicles)がある。種子はわずかに竜骨があり、長さ0.8~1.2㎜。種皮は網状小窩形(reticulate-foveolate)。2n=32, 48。花期は晩夏(7~9月)[Flora of North America]。
48-3 Hypericum perforatum subsp. songaricum (Ledeb. ex Rchb.) N.Robson
synonym Hypericum songaricum Ledebour ex Reichenbach中国(新疆ウイグル自治区)、ロシア、カザフスタン、キルギス原産。中国名は准噶尔金丝桃 zhun ga er jin si tao。標高約1100mに生える。
葉(少なくとも主茎の葉)は無柄で、長円形~長円状卵形、基部は±浅く心形で抱茎。萼片は細かく尖鋭形。花弁の葉状腺は通常すべて淡色。蒴果のバルブは側油管(lateral vittae)が線形またはわずかに膨らみ、途切れていない。
49 Hypericum pibairense (Miyabe & Y.Kimura) N. Robson オオバオトギリ 大葉弟切
synonym Hypericum kamtschaticum f. pibairense (Miyabe & Y.Kimura) Y.Kimura
synonym Hypericum kamtschaticum var. pibairense Miyabe & Y.Kimurasynonym Hypericum pipairense (Miyabe et Y.Kimura) N.Robson pipairenseはpibairenseの誤り?
synonym Hypericum kamtschaticum Ledeb. f. pipairense (Miyabe et Y.Kimura) Y.Kimura
synonym Hypericum kamtschaticum Ledeb. var. pipairense Miyabe et Y.Kimura日本固有種(北海道の利尻山、札幌山、ヒバイロ岳)。POWOではHypericum pibairenseとされ、pipairenseはpibairenseの誤り?。種名の由来はピパイロ岳産であり、pipairenseが正しいか。
多年草、高さ20~30(~50)㎝、茎は匍匐し、基部から根を出し、直立し、茎は少なく、叢生し、花序の下では分岐しない。茎は4線(稜)があり、従属対は弱く、通常不完全であり、節間は(15~)40~50㎜、葉より短いかまたは長い。葉は無柄、葉身は長さ30~55㎜×幅18~34㎜、長円形~広楕円形、下面は淡色で、紙質、先は円形~鈍形またはわずかに小凹形、縁は全縁、基部は浅い心形~抱茎、脈は、中脈の下3分の1~4分の1に3~4対の主側脈があり、第3次の網状脈は密にあり、両面で見え、葉身腺(laminar glands)は黒色、点状でまばら、縁内腺(intramarginal glands)は黒色、±密である。花序は1~7花、1~3節から成り、ときに下部に1対の花枝があり、やや緩い。小花柄は長さ3~4.5㎜。苞と小苞は葉状から披針形。花は直径20~30㎜、星状。蕾は広卵形、鈍形。萼片は5個、非常に不等長、長さ6~8㎜×幅2~3㎜、長円形~披針形、先は円形、全縁、脈は3~5本、分岐し網状になり、面の腺(laminar glands)は黒色、±点状、疎~やや密、縁腺(marginal glands)は密~不規則。花弁は5枚、黄金色?、赤みがからない、長さ13.5~15(~17)㎜×幅6~8.5㎜、萼片の長さの約2倍、面の腺(laminar glands)は黒色で、点状から条線状、縁腺(marginal glands)はない。雄しべは約50~65本、3束になり、最長12~13㎜、花弁の長さの約0.9倍。葯腺は黒色。子房は長さ4.5~5.5㎜×幅2.5~3㎜、卵形。花柱は3本、離生、外側に湾曲し、長さ5~6㎜、子房の長さの1.1~1.2倍。柱頭は狭い頭状。蒴果は長さ8~10㎜×幅5~6㎜、萼片の長さの1.2~1.3倍、卵状円錐形。種子は見られない。
50 Hypericum polyphyllum Boiss. et Balansa ハナオトギリ 花弟切
トルコ、レバノン・シリア原産。海抜1800mまでの砂地や石の多い場所に生える。通常は石灰質の基質上。低木または亜低木、高さ10~43㎝、直根があり、茎は直立~傾伏、まれに平伏し(var. prostratum)、茎から根を出さず、茎は少数~多数、叢生し、花序の下では分枝せず、茎の節間は長さ8~17㎜、葉と同長か葉より短い。葉は斜上~直立し、通常は粉白色。葉身は長さ4~20㎜×幅1~10㎜、広楕円形または長円状楕円形~線状長円形、下面はわずかに淡色(緑色の場合)または上面と同色で、紙質~革質、先は円状鈍形~円状鋭形、縁は平ら~反り返り、基部は広~狭楔形、中脈の下側3分の1に0~3対の側脈があり、分岐せず、側脈および三次の網状脈は通常見えず、葉状腺(laminar glands)は淡色、やや密~目立たないかほとんどなく、縁内腺(intramarginal glands)は黒色、通常大きく、不規則な間隔で並ぶ。花序は1~7(~17)花で、1~3(~5)節から成り、±密で、下部の枝を持たず、全体がほぼ散房花序形である。小花柄は長さ約2㎜、やや丈夫。苞は縮小した葉状、披針形~卵状披針形、通常1~2個の黒色腺を持つ。小苞も同様である。花は直径20~40㎜、星形。蕾は狭卵状ピラミッド形で丸みを帯びる。萼片は不等長またはほぼ等長、基部で合着し、葉より色が淡く、長さ3.5~15㎜×幅2~6.5㎜、卵形または卵状披針形~広楕円形、先は鋭形または短い尖鋭形~円形で小突起形、基部は円形~広楔形、全縁または稀に亜波状、脈は7~9本、分岐して縁で吻合し、面の腺(laminar glands)は色が淡色、線状~上部は条線状、ときに1~3個が黒色で点状または条線状、縁腺(marginal glands)はないか、ときに黒色の縁内腺(intramarginal glands)が1~3個ある。花弁は明るい黄色、赤みがからず、長さ18~25㎜×幅3.5~9㎜、萼片の長さの1.5~5倍、長円状披針形、先は円形で小突起は側部にあり、非常に短いか不明瞭、面の腺(laminar glands)は淡色、線形、 縁腺は黒色、上部につき、一部が密。雄しべは約60~90本、3束になり、最長15~22㎜、花弁の長さの約0.9~1倍。子房は約・長さ3㎜×幅2㎜、卵状ピラミッド形。花柱は長さ17~20㎜、子房の長さの約5~7倍。蒴果は長さ4~9㎜×幅2.5~6㎜、萼片より短く、広卵形。種子は浅く線状窩状(linear-foveolate)。2n=18。
品種) 'Citrinum' , 'Grandiflorum' , 'Sulphureum' , 'Variegatum'
51 Hypericum pseudoerectum N.Robson タニマノオトギリ 谷間の弟切
synonym Hypericum yamamotoi Miyabe et Y.Kimura var. matsumurae (Y.Kimura) Y.Kimura
日本固有種。北海道の定山渓など石狩、上川地方に分布する。多年草、高さ33~38㎝、木質の基部から直立し、茎[単生?]は花序の下で分枝せず、茎は初め狭く2(4)線があり、すぐに円柱形になり、腺がなく、節間は18~35㎜、葉より短い。葉は無柄。葉身は長さ25~37㎜×幅7~14㎜、披針形~狭長円形、下面は淡色、紙質、先は円形~小突起状鈍形、縁は平ら、基部は心形抱茎、中脈の下部1/4~1/2に3対の主側脈がある。三次網状脈は密だが、上面ではほとんど見えない。葉身腺(laminar glands)は淡色~(大部分が)帯赤色、点状で密、縁内腺(intramarginal glands)は黒色、やや密。花序は花が6~約30個、2~3節にほぼ密に付き、しばしば下の1節から分枝し、全体がピラミッド形~ほぼ散房花序になる。小花柄は長さ2~3㎜。苞は縮小した葉状、小苞葉は線状披針形~線形。花は直径約15㎜、星形。蕾は円筒形~楕円形で丸みを帯びる。萼片は5個、不等長~ほぼ等長、長さ4.2~4.5㎜×幅約 1.2㎜、狭長円形~披針形、先は円形~ほぼ鋭形、全縁、脈は5本、外側が分岐し、ときに吻合する。萼片の腺(laminar glands)は淡色、短い条線状、縁腺(marginal glands)は黒色、間隔が空く~不規則、上部にあり、数は少ない(1~2個)。花弁は5枚、黄色、赤色を帯びず?、長さ7~10㎜×幅約 2.3㎜、萼片の長さの1.7~2.3倍、広倒披針形、先は円形、全縁、花弁の腺(laminar glands)は淡色で線形~条線状、縁腺(marginal glands)は黒色、少数(2~7個)、ほぼ先につく。雄しべは約40本、3束になり、最長約6㎜、花弁の長さの0.8~0.9倍。葯腺は黒色。子房は約・長さ2~3㎜×幅1~1.5㎜、楕円形。花柱は3本、離生、分岐し、長さ2.2~2.5㎜、子房の長さとほぼ等しい。柱頭は狭い。蒴果(未熟?)は約・長さ7㎜×幅3.5㎜、楕円形。種子は見られない。
52 Hypericum pseudopetiolatum R.Keller サワオトギリ 沢弟切
synonym Hypericum penthorodes Koidz. タコアシオトギリ日本固有種(北海道、本州、四国、九州、主に日本海側)。山地の水辺、湿地に生える。
多年草。高さ10~40㎝。茎はやや曲がりながら、直立し、上部で分枝する。葉は対生し、長さ2~4㎝、幅6~12㎜の倒卵形~長楕円形、全縁、先は円頭、基部は広い楔形、縁には黒点があり、内部に明点が多数あり黒点はない。花の直径は約1㎝。花弁は4~6(普通5)個、長さ4~6㎜、明線があり、縁に黒点がある。雄しべは5~7個が束になり3束ある。雌しべ1個、花柱3個、長さ1.3~2㎜。萼片は花弁と同数、長さ3.5~5.5㎜、大きさが不揃い、明点が多数あり、縁の黒点に有柄のものがある。蒴果は長さ5~8㎜の広卵形、熟すと先が3裂し、種子を落とす。種子は07~0.8㎜の長楕円形。花期は7~8月。
53 Hypericum repens L. ハリガネオトギリ 針金弟切
キプロス原産。(イスラエルでは絶滅)。標高0~1440mの乾燥した石の多い場所、牧草地、および石灰岩の上の開けたヒノキ林に生える。
多年草。長さ1~20㎝、平伏~斜上し、基部で根を張り、茎は最大約10本、広がり、基部で分枝し、とために花序の下で分枝する。茎は狭く2線があり、腺がなく、節間は2~10㎜、葉よりも短い~同長。葉は無柄~ほぼ無柄、葉身は長さ2~9㎜×幅1~4㎜、倒披針状へら形または(下部)±楕円形、下面は同色または粉白色、紙質、表皮(epidermis)は波状または細かいパピラがあり、先は円形~小突起形、縁は反曲~外巻きし、基部は狭い楔形、脈は中脈の下側1/4から1~2対の主な側脈があり、ときに脈が分岐して網状になり、葉身の腺(laminar glands)は淡色で点状、主に上部にあり、しばしば黒色で、1~2個(~約8個)、点状、ほぼ頂端で亜縁にあり、縁腺(marginal glands)は黒色で、密、ほぼ規則的で、通常、外巻きした縁の下に隠れる。花序は1~8個で、通常凝縮し、頂部の節から生じ、ときに下部の節から短い花枝を生じる。小花柄は長さ約0.5㎜。苞と小苞は狭長円形、全縁。花は直径10~13㎜。蕾は卵状楕円形、先は鈍形。萼片は5個、ほぼ等長、離生、長さ3~5㎜×幅1~2㎜、長円形~線形または線状へら形、鋭形~鈍形、全縁~ほぼ全縁、脈は5本、分岐しないか外側で分岐し、面の腺(laminar glands)は淡色で、基部は線形、上部は点状で、ときに2個が黒色で、ほぼ頂部にあり、縁腺(marginal glands)は黒色で密にあり、はば先部には無い。花弁は黄色で赤みがかり、脈があり、長さ6~10㎜×幅3~5㎜、倒卵状楕円形~倒披針形、先は円形、面の腺(laminar glands)は淡色で線状~点状、ときに 1(2)が黒色で点状、縁腺(marginal glands)は黒色、上部に密にある。雄しべは約40本、最長4~7㎜、花弁の長さの約0.7倍。子房は長さ2~2.5㎜×幅1~1.7㎜、卵形~楕円形。花柱は(3)5本、長さ2.5~3.5㎜、子房の長さの約1.25倍。蒴果は長さ3~4㎜×幅2~3㎜、広卵形。バルブは2~4本以上の縦の油管(vittae)を持ち、ときに膨らんだり途切れる。種子はほぼ暗褐色(subfuscous)、長さ約1.2㎜、種皮は規則的な小窩状。
54 Hypericum sampsonii Hance ツキヌキオトギリ 突抜弟切
日本(九州)、中国(安徽、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、ミャンマー、ベトナム原産。中国名は元宝草 yuan bao cao。標高100~1700mの茂み、川辺、草地、道端、耕作地の縁に生える。
多年草、高さ20~80㎝、傾伏~直立し、基部から根を出す。茎は1本または少数、上部またはほぼ全体から分枝する。枝は湾曲して斜上する。茎は円柱形で腺がない。葉はつき抜きの対となり、葉身は広披針形または狭披針形~長円形または倒披針形、長さ(2~)2.5~7(~8)㎝×幅(0.7~)1~3.5㎝、厚い紙質、下面はより淡色で粉白色ではない。葉身腺点(laminar gland dots)はすべて淡色~大部分が黒色で密集し、縁内腺(intramarginal glands)は黒色で密集し、主側脈は4~5対で、三次脈の網状組織はかなり緩く、通常、基部はやや広がり、円形、先は鈍形~円形。花序は2つの節から20~40花がつき、頂部は平ら、花枝は6節下まで枝分かれし、花序全体は平らな頂部~ほぼピラミッド形または円筒形。最上部の苞の対と小苞は落葉性、線状披針形~線形、他の苞は宿存性で、葉状、縁は全縁。花は直径6~10(~15)㎜、ほぼ星形で基部は杯形。蕾は卵形、先は鈍形。萼片は離生し、直立し、不等長、長円形~長円状へら形または線状長円形、長さ3~7(~10)㎜×幅1~3㎜、萼片の腺(laminar gland)は±多数、淡色でまれに黒色、条線~点、縁内腺(intramarginal glands)は黒色で不規則、まれに欠落し、縁は全縁、先は円形、脈は(3本または)5本。花弁は明るい黄色、長円形、長さ4~8(~13)㎜×幅1.5~4(~7)㎜、花弁の腺(laminar gland))は淡色(ごく稀に数個が黒色)で、短い条線~点、縁腺(marginal glands)は黒色で、無柄またはほぼ無柄、縁は全縁またはほぼ全縁。雄しべは30~42本、明らかに3束になり、最長(2~)3~4(~6)㎜、花弁の長さの約1/2の長さ。子房は卵形~狭@ピラミッド形。花柱は3本、長さ約2㎜、子房の長さの約0.65倍の長さ、外側に反り返る。蒴果は広卵形~広または狭卵状ピラミッド形で、長さ6~9㎜×幅4~5㎜、萼片を超える。バルブには散在する卵形から±細長い琥珀色の小胞状の腺(vesicular glands)がある。種子は橙褐色、長さ約1㎜。種皮は細かいうねのあるはしご形(ribbed-scalariform)。花期は5~7月。果期は6~10月。
55 Hypericum senanense Maxim. シナノオトギリ 信濃弟切 広義
synonym Hypericum kamtschaticum Ledeb. var. senanense (Maxim.) Kimura
日本固有種(本州)。本州中部の高山に生える。多年草、高さ10~40㎝、匍匐し、根を出し、分枝する基部から直立または斜上し、茎は少数~±多数、分枝しないか、花序の下で1~2対の分枝をする。茎はわずかに2~4線があるかまたは円柱形で腺がなく、節間は15~45㎜で、葉より短いかまたは長い。葉は無柄、葉身は長さ15~35(~40)㎜×幅7~20(~26)㎜、広楕円形~卵状披針形 (最上部) または卵状長円形~狭長円形またはまれに披針形、下面は±より淡色で、紙質、先は円形、縁は全縁、基部は円形または浅い心形で抱茎~広楔形、葉脈は2~4対の主な側脈が中脈の下側1/4から半分まで、またはときにほぼ基部から基部までにあり、三次の網状脈は密で、両面で見られる。葉身腺(laminar glands)はすべて淡色~黒色、点状で、疎~かなり密である。縁腺(marginal glands)は黒色、ときに淡色で密。花序は1~2(3)節から1~17個の花が付き、ときに1~2節下から花枝をもち、全体がほぼ散房花序状である。小花柄は長さ1.5~9㎜。苞と小苞は葉状~線状披針形。花は直径15~30㎜、星形。蕾は楕円形または狭卵形~円筒形で丸みを帯びる。萼片は5個、等長または不等長、長さ(2.5~)3~7㎜×幅1~3㎜、長円形~楕円形または披針形、先は円形~ほぼ鋭形、全縁、脈は3~5(6)本、外側の脈または全てが分岐し、時に網状になり、面の腺(laminar glands)は黒色および/または時に淡色、線状~点状、基部にあり、やや少なく、 縁腺(marginal glands)は黒色、密またはまばらで不規則、時に淡色、または通常は無い。花弁は5個、明るい黄色、赤みがからず、長さ8~14㎜×幅3~7㎜。萼片は2~3個、楕円形~卵状長円形または倒卵形、先は円形、全縁、面の腺(laminar glands)は黒色および/またはときに淡色、線状(基部)~点状またはほとんど無く、縁腺(marginal glands)は黒色、少数または無い。雄しべは約30~60本、3束になり、最長5~11㎜、花弁の長さの0.55~0.85倍。葯腺は黒色。子房は長さ2.5~4㎜×幅2~3㎜m、卵形。花柱は3本、離生、分岐し、長さ3~6㎜、子房の長さの1.25~1.5倍。柱頭は狭い。蒴果は長さ7~10㎜×幅3.5~5㎜、萼片の長さの1.5~2倍、卵形~卵状円筒形または楕円形。種子は暗褐色、長さ0.6~0.8㎜、種皮ははしご形網目がある(scalariform-reticulate)。2n=16。
55-1 Hypericum senanense Maxim. subsp. senanense シナノオトギリ 信濃弟切
synonym Hypericum kamtschaticum Ledeb. var. decorum Y.Kimurasynonym Hypericum kamtschaticum Ledeb. var. senanense (Maxim.) Y.Kimura
本州の栃木県~石川県に分布。葉の縁に黒点がある。
55-2 Hypericum senanense Maxim. subsp. mutiloides (R.Keller) N.Robson イワオトギリ 岩弟切
synonym Hypericum kamtschaticum Ledeb. var. hondoense Y.Kimura本州の北部、中部に分布。葉全体に黒点が多い。
56 Hypericum senkakuinsulare Hatus. センカクオトギリ 尖閣弟切
尖閣諸島魚釣島固有種。標高約360mの山の岩山の頂上付近に生える。
低木、高さ約60㎝、枝は広がる。茎はすぐに円柱形になり、節間は長さ10~20㎜で、葉より短い。樹皮は赤褐色。葉は無柄。葉身は23~35㎜x幅10~18㎜、楕円形または長円形~倒卵形、先は円形、縁は平ら、基部は楔形~楔状尖形(cuneate-angustate)、粉白色ではなく、紙質、落葉性、1対の主側枝(縁内)と約5~6の中脈の羽状枝があり、3次の網状脈は見えず、葉身腺点(laminar gland dots)は多数あり、縁内腺(intramarginal glands)がある。花序は1花で、頂生し、副枝(subsidiary branches)は無い。小花柄は長さ約10㎜。苞は楕円形。花は直径約40㎜、杯形(cyathiform)。蕾は狭卵形、ほぼ鋭形。萼片は約・長さ3㎜x幅2㎜、ごくわずかに合着し?、ほとんど覆瓦状にならず、ほぼ等長、蕾では直立し、広長円形、先が鈍形、萼片の腺(laminar glands)は線形。花弁は明るい黄色、脈や赤みがなく、内曲し、約・長さ25㎜x幅18㎜、萼片の長さの約6倍、倒卵形、非常に短く、先は円形。雄しべは束状で、各束に約15本の雄しべがあり、最長は約15㎜、花弁の長さの約0.7倍。子房は花柱が長さ9㎜あり、細長い。蒴果は幅が狭く、長さ約10㎜、狭卵形。種子は記録されていない。
57 Hypericum sikokumontanum Makino タカネオトギリ 高嶺弟切
日本固有種。四国、九州に分布する。標高1400m以上の山地の草原に生える。
多年草、高さ10~30㎝、傾伏し、基部から根を出して、分枝し、直立し、茎は緩く叢生し、ときに花序の下で分枝する。茎は円柱形、腺がなく、節間は10~19m㎜で、葉より短いか、まれに葉と等しい。葉は無柄または葉柄があり、葉柄は長さ1㎜まで、葉身は長さ10~25㎜×幅2~5㎜、極狭い長円形または極狭い楕円形~線形、または下部の葉は倒披針形、下面は淡色、紙質、先は鈍形~円形で小突起があり、縁は平らまたはしばしばわずかに反り返り、基部は円形~狭楔形、脈は中脈の下部1/3に2~3本の主な側脈があり、三次脈の網状組織はかなり密で、両面で見え、葉身腺(laminar glands)は淡色、まれに黒色で、まばらまたは欠き、縁内腺(intramarginal glands)は黒色で、間隔が開く。花序は1~2節に(1~)3~5(~7)花が付き、10節下までの花のない枝を伴うこともあり、やや密集している。小花柄は長さ2~5㎜。苞と小苞は縮小した葉状。花は直径18~20㎜、で星形。蕾は卵形~楕円形、先が鈍形。萼片は5個、不等長、長さ5~7㎜×幅1~1.5㎜、披針形、咲きは鈍形、全縁、脈は5本で分岐しないかほとんど分岐せず、萼片の面の腺(laminar glands)は淡色および/または黒色、線形で下部では点状、縁腺(marginal glands)は黒色で、少数。花弁は5個、明るい黄色で、赤みがからず、長さ10~12㎜×幅3.5~4㎜、萼片の長さの1.7~2倍、長円形~倒披針形、先は円形、全縁、花弁の面の腺(laminar glands)は淡色、線形~条線状、少数は黒色、ほぼ縁につき、縁腺(marginal glands)は黒色で不規則。雄しべは50~70本、3束になり、最長8~9mm、花弁の長さの0.75~0.8倍。葯腺は黒色。子房は長さ3~4㎜×幅1.2~1.5㎜、狭卵形。花柱は3本、離生、散開し、長さ(3.5)4~6㎜、子房の長さの1.2~1.3倍。柱頭は狭い。蒴果は長さ6~7㎜×幅4~5㎜、萼片とほぼ等長、ピラミッド状卵形~楕円形。種子は長さ0.7~0.8㎜。種皮は微細な網目がある。2n=16。花期は7~8月。
H. sikokumontanum と H. pseudopetiolatum との雑種が記録されている。
58 Hypericum subalatum Hayata タイワンオトギリ 台湾弟切
synonym Hypericum kushakuense R. Keller
台湾原産。中国名は方茎金丝桃 fang jing jin si tao。標高400~900mの灰岩の開いた岩の割れ目に生える。
低木、高さ50㎝以上。枝は斜上する。茎は宿存する4角(かど)がありまたは狭い4翼があり、節間は1~2.5㎝、葉より短い。葉は無柄、葉身は狭楕円形~披針形または狭長楕円形、長さ1.9~7㎝×幅0.5~1.6㎝、厚い紙質、下面は淡色だが、粉白色ではなく、葉身腺点(laminar glands dots)があり、目立つ。下面に腺はなく、主側脈は2対または3対で、ときに縁内脈(intramarginal vein)を形成し、三次の網静脈はかすかまたはほとんど見えず、基部は楔形、先は鋭形~ほぼ鋭形または円形で小突起形。花序は1花で、頂生および約6節下までの短い支枝(subsidiary branches)につく。苞は葉状、小苞は葉状~錐形、全縁、落葉性。小花柄は長さ6~12㎜。花は直径約2.5㎝、ほぼ星形。蕾は卵形で先は鋭形。萼片は離生またはほぼ離生、直立し、等長~不等長、長円形~楕円形または倒披針形、長さ5~8㎜×幅1~2(~3)㎜、面の腺(laminar glands)はほとんどが線状、縁は全縁、先はほぼ鋭形~鋭形または短い尖鋭形。花弁は明るい黄色、赤みがかり、倒卵形、長さ1~2㎝×幅約6㎜、萼片の長さの1.5~2倍の長さ、縁は全縁、腺はなく、先端の小突起は廃れる。雄しべは束ごとに約25本の雄しべがあり、最長9~10㎜、花弁の長さの約0.8倍の長さ。子房はほぼ狭卵形、長さ2~4㎜×幅0.7~1.3㎜。花柱は長さ(3.3~)4~7㎜、子房の長さの2~2.5倍。柱頭は頭状。蒴果は狭卵形~円筒形、長さ7~9㎜×幅3~4㎜、萼片の長さの約2倍。種子は暗黄褐色。長さ0.9~1.1㎜、先端が長く膨らむ。種皮は線状網目がある。花期は3~7月。果期は8~1月。
59 Hypericum tetrapterum Fr. シカクオトギリ
ヨーロッパ、西アジア、コーカサス、北アフリカ(アルジェリア)原産。英名はsquare-stalk St. John's-wort , St. Peter's-wort。標高0~2000mの湿地、川岸、開いた溝、湿った草地、泉などの湿った場所に生える。
多年草、高さ(15~)20~70(~120)m、直立または±傾伏、または稀に斜上~平伏し、這って基部から根を出し、茎は多数~少数で、花序の下では初めは分枝しないが、後に長さの半分から大部分の上部で分枝する。茎は±広い4枚の翼があり、副次的な翼(subsidiary wings)はより狭いか、まれに翼が同程度に狭く、線上およびときに他の場所に黒色の腺があり、節間は7~50㎜、上部の葉より短い。葉は無柄またはまれに(特に下部に)長さ0.5㎜以下の葉柄がある。葉身は長さ(6~)9~40㎜×幅(4~)7~24㎜、卵形または楕円形または三角卵形から円形で、下側はやや淡色で、薄い褐色質である。先は円形から稀に尖頭鈍形、縁は平らまたは稀に±波状、基部は円形から心形複葉状; 脈: 中脈の基部から1-3対の主側脈がある; 三次網目は密だがやや不明瞭; 葉身腺は淡色で密で小さい; 縁内腺は黒色でやや密で均一。花序は花が(1~)10~35(~約70)個、1~2(~4)節から成り、花枝は最大10節から斜上し、全体が円筒形~散房花序形で密または部分的に花序が密になる。小花柄は長さ1~2㎜。 苞と小苞は長さ2~3㎜、披針形~線形、全縁、0~4個の黒色の腺がある。花は直径10~15㎜、星形。蕾は楕円形、ほぼ鋭形。萼片は5個、等長、長さ3~5㎜×幅1~1.5㎜、披針形~狭長楕円形、鋭形~尖鋭形、全縁、蕾と果実では直立し、脈は3本で外側の1対は分岐、または5本は分岐せず、面の腺(laminar glands)は条線状~点状、またはたまに基部が線形、すべて淡色または1~2個が黒色、縁腺(marginal glands)はないか、まれに7個まであり、黒色で、埋没する。花弁は5個、やや淡黄色、赤みがからず、長さ5~8㎜×幅2~3(~4)㎜、萼片の長さの約1.4倍、倒披針形、全縁または上部の片側が円鋸歯状、面の腺(laminar glands)はないかまれに少数、点状、黒色で淡色、縁腺(marginal glands)は1~4個または通常無い。雄しべは30~40(~60)本、3束になり、最長約4.5~7.5㎜、花弁の長さの約0.9倍。子房は3室、長さ2~2.5㎜×幅1~1.5㎜、狭卵形。花柱は3本、離生、長さ2~3.5㎜、子房の長さの0.8~1.4 倍、広く広がる。蒴果は長さ5~7(~8)㎜×幅2.4~4㎜、萼片の約2倍、狭円筒状楕円形~卵形、バルブは縦の線形の油管(vittae)を持つ。種子は暗褐色、長さ0.6~0.8(~1.1)㎜、円筒形、竜骨や付属体(appendiculate)はない。種皮は細かく小さな穴がある(foveolate)。2n=16(n=8)。
60 Hypericum tomentosum L. ビロードオトギリ
ヨーロッパ(イタリア、フランス、ポルトガル、スペイン)、北アフリカ(アルジェリア、モロッコ)原産。標高0~1450mの川岸、湿地または沼地の草地、常緑低木林に生える。
多年草、高さ約9~53㎝。直立または傾伏~平伏、ほとんど木質化しない直根があり、基部で根を出し、上部の枝はときに一部またはすべての腋から生じ、広がる~斜上し、全草は萼片の背側まで帯灰色の絨毛~綿毛または粗毛~パリパリとした軟毛(crisped-pubescent)がある。茎は緑色、円柱形、節間がほとんど葉より長い。葉は無柄、葉身は長さ5~26㎜×幅2~11㎜、楕円状長円形~長円形または倒披針形または卵形~三角状卵形、表裏同色、紙質、粉白色ではなく、平らで広がり、先は円形、縁は平らで全縁、基部は楔形~切形またはほぼ心形、3対の側脈は中脈の下側0.3~0.4から湾曲して上昇し、三次の網状脈は不明瞭、葉身腺(laminar glands)は淡色、密で、不均等、目立たず、縁内腺(intramarginal glands)は黒色で、むしろ密からまばらで、不規則になり、亜縁状(submarginal)になるか、または欠落する(その後、黒色腺は完全に欠落する)。花序は花が3~約70個、最大3つの節から生じ、湾曲した散房花序形~円筒形で、ほとんどの下位の節から花枝があり、その後全体が円筒形になる。小花柄は長さ0.5~2 mmで、果実では長さ5~8㎜に伸びる。苞は耳状ではなく、小苞は線形で、先端と縁は黒色の腺性繊毛虫である。花の直径は10~15(~20) mm。蕾は楕円形で、鈍形から丸みを帯びた鈍形。萼片は長さ3~5(~6?)㎜x幅1~2.5㎜、等長~不等長、披針形から卵形または広楕円形で、鋭形から通常は短く有棘、縁腺はほとんどが目立つ。脈は3~5本、分岐しない。面の腺(laminar glands)は淡色で、点状からわずかに細長く、ときに1~3本の黒色もあり、ほぼ縁(submarginal)に位置する。縁腺(marginal glands)は黒色で、各側に約8~16個、縁毛上または無柄だがほぼ常に目立ち、先には通常、より大きな腺を持つ。花弁は明るい黄色で、赤みがかったり脈が入ったりせず、長さ6~11㎜x幅2.5~3.5(~4?)㎜、萼片の長さの約2倍、倒披針形、先は円形、先端の小突起は側部にあり、短く鋭形~存在しない。面の腺(laminar glands)は淡色で、下部では線形、上部では条線状~点状である。縁から縁下腺(marginal to inframarginal glands)は黒色で、数が少なく、ほぼ上部にあり、目立たない。雄しべは約25~35本、明らかに3束になり、最長5~7㎜、花弁の長さの0.6~0.8倍。葯腺は黒色。子房は長さ1.5~2㎜x幅1~1.3㎜、狭卵状ピラミッド形。花柱は長さ3.5~5.5㎜、子房の長さの2.75~3.3倍、広く広がって内曲する。蒴果は長さ4~5㎜x幅3~3.5㎜、卵状亜球形で、萼片より短く、花弁が絡み合って包まれる。種子は灰褐色、長さ約0.8㎜。種皮は細かい網目状はしご形。2n=16(n=8)。
61 Hypericum tosaense Makino トサオトギリ 土佐弟切
synonym Hypericum tosaense Makino f. insulare Y.Kimura
日本固有種。本州の近畿地方西部~中国地方東部、四国の土佐地方、小豆島に分布。日当たりの良い乾燥した岩山や蛇紋岩地に生える。
茎に明瞭な2本の稜線があってその上に黒点を伴う。花弁の縁が波状で黒点がある。萼は卵形~広卵形で鋭尖頭~急鋭尖頭、縁に少数の黒点があるほかは明点のみをもつ。
多年草、高さ(15~)25~57(~75)㎝、匍匐して根を張り、茎は単生し、上部で分枝する。茎は明瞭な2稜線があり、線上と線近くに黒色の点状の腺があり、節間は10~20㎜、ほとんどが葉より上になる。葉は無柄で、葉身は長さ5~20㎜×幅2~8㎜、楕円形または卵状長円形~狭長円形または倒卵状長円形、下面は淡色、紙質、先は鈍形~円形、縁は全縁、基部は円形~広楔形、中脈の下部1/4に2(3)対の主側脈があり、葉身腺(laminar glands)は淡色で点状、密集する。縁内腺(intramarginal glands)は黒色、密集する。花序は花が3~約30個、最大3節につき、最大4節下から花枝が伸び、散房花序形~円筒形、その後密になる。小花柄は長さ2~3㎜。苞と小苞は小さく、線状披針形~線形、全縁。花は直径15~18㎜、星形。蕾は楕円形、先が鈍形。萼片は5個、不等長、長さ2.5~3㎜×幅1~1.5㎜、三角状卵形~披針形、次第に~急に尖鋭形、全縁、脈は5本、外側の対は分岐し、萼片の腺(laminar glands)は淡色、点状から線状条状、縁内腺(intramarginal glands)は黒色、点状、間隔をあけて並ぶ。花弁は5個、明るい黄色、蕾では赤い脈が入り、長さ9~15㎜×幅5~8㎜、萼片の長さの3.5~5倍、長円形、やや非対称、上部が±顕著に円鋸歯状、花弁の腺(laminar glands)は淡色、線形~点状、散在し、縁が波状、縁腺(marginal glands)は黒色、上部が密。雄しべは60~70本、3束になり、最長7~11㎜、花弁の長さの0.65~0.8倍。葯腺は黒色。子房は3室、長さ2.5~4.8㎜×幅約1.5㎜、卵形。花柱は3本、離生、長さ3.5~4.5(~5)㎜、子房の長さの1~1.6倍、広がり外側に曲がる。柱頭は狭い。蒴果は長さ7~9㎜×幅3.5~5㎜、萼片の長さの約3倍、卵状円錐形~卵形。バルブは縦の油管がある。種子は暗褐色、長さ約1㎜、円筒形。種皮は線状小窩状(linear-foveolate)。2n=16。
62 Hypericum uralum Buch.-Ham. ex D.Don ヒマラヤキンシバイ
中国(西蔵、雲南省)、インド、ブータン、ネパール、パキスタン、ミャンマー原産。中国名は匙萼金丝桃 chi e jin si tao。標高1500~3600mの乾燥した開けた場所、ときに茂みや小川のそばに生える。
低木、高さ0.3~2m。枝は弓状で、しばしば葉状。茎は4線または4角形で、若いときは強く先鋭(ancipitous)で、やがて2線または円柱形になり、節間は0.5~2㎝で、葉より短い。葉は長さ0.5~1㎜の平らな葉柄を持つ。葉身は披針形、成長するとときに卵形、長さ1~4㎝×幅0.4~2.4㎝、厚い紙質、外面は±密に粉白色、葉身腺(laminar glands)は条線(中脈に向かって)と点、下面の腺は通常±密であり、主側脈は3対で、三次の網状脈はほとんど見えず、基部は狭くまたはまれに広い楔形、先は鋭形~円形で小突起形。花序は1~3(~10)花、1または2節につき、ほぼ平らで、短い頂部の節間を持ち、しばしば茎の中間から1~3花の枝が出る。苞は落葉性、狭長円形。小花柄は長さ3~7㎜。花は直径1.5~3㎝、±深い杯形。蕾は広卵形~球形で、先は鈍形~円形。萼片は直立し、等長~不等長、長円形~長円状へら形、長さ3.5~6(~9)㎜×幅(1~)2~5(~6.5)㎜、面の腺(laminar glands)は線、縁は全縁で狭く縁が透明になり、先は円形または極めて稀に鈍形。花弁は金色~濃黄色、赤みがからず、広倒卵形~ほぼ円形、長さ0.9~1.8㎝×幅5~12㎜、萼片の長さの2.5~3倍、縁は全縁、腺はなく、先の小突起は丸くまたは退化する。雄しべは束ごとに40~60本の雄しべがあり、最長4~6(~8)㎜、花弁の長さの0.25~0.5倍。子房は広卵形~球形、長さ3~5㎜×幅2.5~3㎜。花柱は長さ2.5~4.5㎜、子房の長さの0.6~0.9(~1)倍、離生、直立し、先が散開するか広がるか、または完全に外側に湾曲する。蒴果はほぼ球形、まれに広卵形、長さ7~11(~13)㎜×幅7~11㎜。種子は暗褐色、長さ0.4~0.6㎜、ほとんど竜骨はない。種皮は線状小窩形(linear-foveolate)。花期は7~9月。果期は8~10月。2n=20。
63 Hypericum veronense Schrank ヒペリカム・ベロネンセ
synonym Hypericum perforatum var. veronense (Schrank) Ces.
synonym Hypericum perforatum subsp. veronense (Schrank) Ces.
ヨーロッパ、アジア(イラン、イラク、レバノン・シリア、サウジアラビア、パレスチナ、トルコ、インド、パキスタン、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)、アフリカ(モロッコ、スーダン、チュニジア)原産。英名はPerforate St. Johns wort。乾燥した森林、森林地帯、草地、乱れた場所、道端、小川沿いに生える。セイヨウオトギリ(Hypericum perforatum)の亜種や変種に分類されることもある。
標高0-1900 mの乾燥した低木や低木地の植生が広がる岩の多い斜面、草地、開けた森林に生える。さまざまな基質に生える。 多年草。高さ10~100(120)㎝、木質の根茎がある。茎は傾伏した根があるやや木質化した基部から直立し、2隆起線があり、しばしば若い茎は帯赤色になる。花のない腋芽(axillary shoots)がある。葉は対生し、通常無柄(少なくとも主茎では)、葉身は長さ(5~)8~30(~35)㎜×幅1~5(~12)㎜、通常は線形~狭三角状披針形または線状長円形、小さいときは広卵形~楕円形または倒卵形、卵形~線形、薄緑色、基部は楔形、下面は淡色、粉白色ではなく、網状脈があり、多数の大きな半透明の斑点(明点)がある。花序は広い円錐花序、花序の枝は斜上する。花は黄色(~橙色)、直径(10~)18~22(~30)㎜。萼片は重なり合わないか、またはわずかに重なり合い、披針形または長楕円形~線形、先は尖鋭形または芒状、通常は全縁、表面に黒点が少数あるか、またはない。花弁は面の腺(laminar glands)はすべて淡色、まれにほとんど黒色の黒点または条線になり、縁腺(marginal glands)は少数の黒点になる。花柱は3本。蒴果は熟すと赤褐色になり、若いときは粘着性があり、バルブは背側に油管(vittae)、または、斜めの油管(vittae)または小胞(vesicles)がある。花期は5~8月上旬。
64 Hypericum vulcanicum Koidz. オシマオトギリ 渡島弟切
日本固有種。北海道南部および東部、本州北部から新潟南部までに分布する。
多年草、高さ(10~)30~70㎝、木質の基部から直立または斜上または横向きになり、茎は単生または散房性で、花序の下で分枝することがあります。枝は細く斜上します。茎は非常に狭く2線があるかまたは円柱形で腺は無く、節間は (15~)25~50㎜、葉より短いか長い。葉は無柄またはほぼ抱茎で、広がり、葉身は長さ(25~)30~62㎜×幅10~23(~30)㎜、長円形~披針形または卵状披針形または狭(まれに広)楕円形、下面はやや淡色、薄い紙質、先は鈍形~円形、縁は平ら、基部は円形~浅い心形、三次の網状脈は密で、下面の方がよく見え、葉身腺は黒色、ときに淡色、微細、点状で、密であり、縁内腺は黒色で、やや密から不規則、ときにほぼ縁に腺があり、黒色または琥珀色で微細である。花序は1~12(~約23)花で、1~3節から成り、緩~密で、ときに下部の5節まで枝があり、全体がほぼ散房花序形~狭ピラミッド形である。小花柄は長さ2~4.5㎜で細い。苞は縮小した葉状、小苞は披針形~線状ピラミッド形、全縁。花は直径約長さ15~22㎜、星形。蕾は狭楕円形で鈍形。萼片は5個、等長、長さ(3~)3.5~5.5(~7)㎜×幅0.5~1.2㎜、線状披針形~線形、先は鋭形~ほぼ鋭形、全縁、脈は3本、外側で分岐し、面の腺(laminar glands)は黒色または稀に淡色、線状~通常±点状、密~疎、縁腺(marginal glands)は存在しない。花弁は5個、明るい黄色、赤みがからず、長さ7~11㎜×幅2.8~3㎜、萼片の長さの1.5~2倍、倒披針形~狭楕円形、先は円形、全縁または顕著な腺を伴う。面の腺(laminar glands )は淡色で線状~条線状、黒色で条線状~点状。縁腺(marginal glands)は黒色、上部に少数、不規則にあり、または存在しない。雄しべは約30~50本、3束になり、最長5~9㎜、花弁の長さの0.7~0.8倍。葯腺は黒色。子房は長さ2~3.5㎜×幅1~1.5㎜、卵状円筒形。花柱は3本、離生、狭く分岐し、長さ2.8~6㎜、子房の長さの約1.4~1.6倍。柱頭は狭い。蒴果は長さ7~10㎜×幅3~4㎜、萼片の長さの約2倍、非常に狭い卵状ピラミッド形。種子は褐色、長さ0.7~0.8㎜。種皮は見られない。花期は7~9月。
65 Hypericum watanabei N.Robson クロテンシラトリオトギリ 黒点白鳥弟切
synonym Hypericum tatewakii S.Watan. var. nigropunctatum S.Watan.
synonym Hypericum nuporoense N.Robson日本固有種。北海道西部~石狩に分布する。
多年草、高さ23~33㎝、木質の基部から分枝し、直立~斜上し、茎は通常単生で、ときに中間で分枝する。茎は狭く2線があり、通常すぐに円柱形になり、腺はなく、節間は20~25㎜、葉より長い。葉は無柄。葉身は長さ25~40㎜×幅7~18㎜、卵形または長円状披針形~楕円形、下面は淡色、紙質、先は円形~ほぼ鋭形、縁は平らで、基部は浅い心形~抱茎、基部と中脈の下側1/4~1/3に3対の主側脈があり、第3次脈は密で、上面で部分的に見え、葉身腺(laminar glands)は黒色、ときに淡色になり、点状でまばら、縁内腺(intramarginal glands)は黒色で密。花序は約2~3節に16~20花がつき、やや密集し、ときに1節下から分枝し、狭円筒形。小花柄は長さ2~3mm。苞は縮小した葉状、小苞は狭楕円形。花は直径約15~20㎜、星形。蕾は楕円形で丸みを帯びる。萼片は5個、不等長、長さ3.3~3.6㎜×幅1~1.5㎜、卵形または卵状三角形~長円状披針形、先はほぼ鋭形、全縁。脈は3~5本、ときに分岐し吻合し、面の腺(laminar glands)は淡色、下部では線形~条線状で黒色、上部では条線状~点状、縁腺(marginal glands)は黒色で、少数、上部または不規則。花弁は5枚、明るい黄色、赤みがからず、長さ11~12㎜×幅約4㎜。萼片は3~3.5個、狭楕円形、先はほぼ鋭形、全縁、面の腺(laminar glands)は淡色、線形。縁腺(marginal glands)は黒色、1~3個、上部または/および先端に1~3個。雄しべは約30本、3束になり、最長9~10㎜、花弁の長さの0.8~0.9倍。葯腺は黒色。子房は長さ2.5~3㎜×幅約2㎜、楕円形。花柱は3本、離生、基部で内側に湾曲し、長さ3~5㎜、子房の長さの約1.2~1.6倍。柱頭は狭い。蒴果と種子は見られない。花期は夏。
66 Hypericum xylosteifolium (Spach) N. Robson ヒペリカム・キシロステイフォリウム
synonym Hypericum inodorum Willd.
北コーカサス、トランスコーカサス、トルコ原産。標高0~670mの落葉樹林、日陰の土手や崖に生える。
低木、高さ1.5mまで、吸芽して茂みを作り、落葉性で、枝は直立から広がる。茎は緑色~ピンク色がかり、若いときは4線があり2稜(ancipitous)、すぐに2線になり、やがて円柱形になり、節間は長さ10~40㎜で、葉より短い。樹皮は裂け目がある。葉は葉柄があり、葉柄は長さ4~10㎜。葉身は長さ(15~)20~73㎜x幅8~26㎜、長円形または楕円形~披針形または長円形、円形または切形~小突形または鈍形、縁は平ら、基部は円形~広楔形、下面はより淡色で、粉白色ではなく、紙質、(3)4~6対の斜上する主側脈があり、必ずしも中脈の枝と区別がつかず、三次脈の網目構造が密で目立つ。葉身腺(laminar glands)は小さい。縁内腺(intramarginal glands)は密集している。花序は1~7(~約25)花がつき、頂生、広ピラミッド形~ほぼ散房花序、1~2(3)節から成り、ときに1~2対の副枝(subsidiary branches)をもつ。小花柄は長さ4~7(~10)㎜。苞は葉状または縮小または線形、ときに無柄の黄色がかった縁腺(marginal glands)をもち、落葉性。花は直径15~30㎜、星形。蕾は楕円形で丸みを帯びている。萼片は長さ4.5~12㎜x幅1.3~2.5㎜、開いており(重なり合っていない)、等長~不等長、極狭い長円形または狭楕円形~倒披針状へら形、鋭形、縁は全縁または無柄~短い柄のある帯黄色の頂部が平らな腺をもち、(3)5~7脈が網状に分岐し、中脈は明瞭、薄片の腺(laminar glands)は線形~点状。花弁は赤みがかっていない黄金色、広がり、長さ8~15㎜、萼片の長さの約1.3~2倍、狭倒披針形~狭倒卵形、小突起はなく、縁に間隔をあけて無柄の暗赤色腺がある。雄しべは束ごとに10~11本の雄しべがあり、最長(8~)12~15㎜で花弁とほぼ同じ長さ。葯は淡橙色。子房は長さ2.5~3.5㎜×幅約.3㎜、卵状円錐形~ほぼ球形。花柱は長さ7~9㎜、子房の長さの2.5~3倍、離生、直立~ほぼ直立、上部1/3が狭く散開する。蒴果は長さ5.7㎜×幅5.7㎜、ほぼ球形~球形。種子は淡褐色、長さ約0~7㎜、円筒形、竜骨はなく、浅く線状小窩がある。2n=40。
67 Hypericum x hyugamontanum Y.Kimura クモイオトギリ
synonym Hypericum sikokumonanum Makino var. hyugamontanum (Y.Kimura) Ohwi
日本固有種。九州の高地の高山地(祖母山、阿蘇山、市房山、霧島山など)に分布する。ナガサキオトギリとサワオトギリとの自然交雑種との見解がある。高さ20~30㎝。茎は細く、叢生し、分枝する。葉は密につき、倒披針形、長さ10~20㎜、大きな明点があり、縁に黒点があり、下面は帯白色。花弁は長さ約8㎜m。萼片と花弁に明線が入り、縁には無柄または有柄の黒色の腺がつく。花柱は長さ約3㎜、子房より少し長い。
68 Hypericum yamamotoanum H.Koidz. センゲンオトギリ 千軒弟切
synonym Hypericum yamamotoi Miyabe et Y.Kimura var. osimense Y.Kimura
日本固有種。北海道南西部の渡島大千軒岳に分布する。多年草、高さ35~40㎝、木質の基部から直立または斜上し、茎は叢生し、花序の下では分枝しないか、または上部の節で分枝する。茎は最初は狭く4線があり、下部は2線、腺はなう、節間は20~40㎜で、葉より短いか長い。葉は無柄。葉身は25~40㎜×幅13~25㎜、長円形~(下部で)広楕円形、下面は淡色、紙質、先は円形、縁は平ら、基部は円形~浅い心形で抱茎、中脈の下部4分の1~3分の1に3~4対の主側脈があり、3次の網状脈は密で、両面で見え、葉身腺(laminar glands)は黒色で点状、まばらまたは存在しない。縁内腺(intramarginal glands)は黒色で密。花序は(3~)10~15花で、1~3節から生じ、やや緩く個々の3花(triads)は密で、1節から生じる場合は下部の枝とともに全体がほぼ散房花序形となる。小花柄は長さ1.5~4㎜で細い。苞と小苞は縮小した葉状で卵形。花は直径約16~21㎜、星形。蕾は楕円形、丸みを帯びる。萼片は5個、非常に不等長、長さ4~7㎜×幅1.3~2.5㎜、卵形~長円形または披針形、先は円形~鈍形またはほぼ鋭形、全縁。脈は5本、分岐して吻合し、面の腺(laminar glands)は黒色および/または淡色で、点状で、やや少なく、縁腺(marginal glands)は黒色または淡色で、間隔が空いており、規則的または不規則。花弁は5個、明るい?黄色、赤みがからず、長さ10~12㎜×幅約3㎜、萼片の長さの2~3倍、長円形~長円状へら形、先は円形、全縁。面の腺(laminar glands)は淡色、下部では線形~条線状、ときに黒色、上部では条線状~点状、縁腺(marginal glands)は黒色、ごく少数(1~2個)または存在しない。雄しべは40~60本、3束、最長7~9㎜、花弁の長さの約0.6倍。葯は黒色。子房は長さ3~4㎜×幅1.5~2㎜、卵形~楕円形。花柱は3本、離生、分岐して内曲し、長さ3.5~5(~7)㎜、子房の長さの1~1.5倍。柱頭は狭い。蒴果と種子は見られない。
69 Hypericum yamamotoi Miyabe et Y.Kimura マシケオトギリ 増毛弟切
日本固有種(北海道)。北海道の増毛山系、天塩山系、渡島、桧山、後志だけに分布する。多年草、長さ約50(30~70)㎝、木質の基部からほぼ直立~斜上または傾伏し、茎は通常単生(または2~3本、叢生)、花序の下では分枝しない。茎は初め狭く2線があり、ときにすぐに円柱形になり、腺がなく、節間は15~55㎜で、葉の長さと同じかそれを超える。葉は無柄。葉身は長さ35~50㎜×幅15~20㎜、狭楕円形~披針形で、下面は淡色で、紙質。先は円形~ほぼ小突起状鈍形、縁は平ら、基部は円形~ほぼ心形で抱茎、脈は、中脈の下5分の2からときに基部まで、3~4対の主な側脈があり、3次網状脈は密、両面で見え、葉身の腺(laminar glands)は黒色で散在し、ときに淡色(明点)で、特に上部の葉に少なく、すべて細点状である。縁内腺(intramarginal glands)は黒色で密にある。花序は3節に花が5~15個、緩く付き、2節の下から分枝し、全体が広ピラミッド形である。小花柄は長さ2~3.5㎜、細い。苞は縮小した葉状、小苞は線状披針形。花は直径約20㎜、星形。蕾は楕円形、先は円形~ほぼ鈍形。萼片は5個、不等長、長さ3.5~5.5㎜×幅1~1.5㎜、線状長円形~線状披針形、先はほぼ鋭形~鋭形、全縁、5脈があり、ときに外側の脈は分岐し吻合し、萼片の腺(laminar glands)は淡色、条線状~細点状、縁腺(marginal glands)は黒色、少数(1~4個)または無い。花弁は5個、明るい黄色、赤みがからず、長さ10~12㎜×幅約2.8㎜、萼片の長さの2~3倍、狭倒披針形、先は円形、全縁、面の腺(laminar glands)は淡色、線形。縁腺はない。雄しべは約35本、3束(5束)になり、最長10~11㎜、花弁の長さの約0.9倍。葯は大きい。子房は長さ3.5~4㎜×幅1.5㎜、楕円形。花柱は3本、離生、広く内側に湾曲し、長さ6㎜、子房の長さの約1.5倍。柱頭は狭い。蒴果と種子は見られない。花期は夏。
70 Hypericum yezoense Maxim. エゾオトギリ 蝦夷弟切
synonym Hypericum attenuatum Choisy var. fruticulosa F.Schmidt
日本固有種。北海道、本州北部に分布する。石灰岩地帯の岩礫の割れ目や岩上に生える。多年草、高さまたは長さ10~30(~35)㎝、直立または斜上、またはまれに平伏して根を出し、茎は多数~少数、叢生またはまれに単生し、分枝は有または無、2線(稜)があり(細い場合はほぼ4角があり)で、線上にのみ黒色の細点状の腺があり、節間は(4~)12~28mmで、通常葉より長くなる。葉は無柄。葉身は長さ8~20(~25)×幅3~9mm、卵形(最上部)から楕円状披針形または±狭長楕円形から倒披針形で、下側はわずかに色が薄く、褐色質。先は鈍形から円形、縁は平らで、基部は広楔形~ほぼ抱茎、脈は中脈の下側4分の1に2~3対の主側脈があり。葉身の腺(laminar glands)は淡色で点状(punctiform)、密で黒色、縁腺は少数または無い。縁内腺(intramarginal glands)は黒色で密。花序は1~2節に花が3~9個付き、下の節から1対の花枝が付く場合と付かない場合があり、散房花序~ほぼピラミッド形。小花柄は花時に長さ0~1㎜、果時には長さ4㎜まで。苞は縮小した葉状、小苞は長さ4~5㎜、線状披針形、全縁。花は直径15~20㎜、星形。蕾は狭卵形、ほぼ鋭形。萼片は5個、不等長、長さ4~6㎜×幅1.2~2㎜、蕾と果時には直立し、披針形~長楕円状披針形、先は鋭形、全縁、3~5脈があり、脈は分岐せず、面の腺(laminar glands)は淡色で点状、ときに少数の黒点が上部にあり、縁内腺(intramarginal glands)は黒色で点状、ややまばらで、上部にある。花弁は5個、淡黄色で、蕾では赤みがからず?、長さ8~12㎜×幅3.5~5㎜、萼片の長さの2倍、倒卵形~長円形で非対称、ほぼ全縁、面の腺(laminar glands)は淡色(明点)、線状~点状で、散在し、縁腺(marginal glands)と縁内腺(intramarginal glands)は黒色で不規則、局所的に密集する。雄しべは約30~50本、3束になり、最長は約8~10㎜、花弁の長さの約0.9倍。葯は黒色。子房は3室性、長さ3~3.2㎜×幅1.5~2㎜。花柱は3本、離生。柱頭は狭い頭状。蒴果は長さ5~8㎜×幅3~4㎜、萼片の長さの約1.3倍、広卵形~狭卵形、バルブは縦の油管(vittate)がある。種子は暗褐色、長さ1~1.3㎜、円筒形、種皮は線状小窩形。花期は7~8月。
71 Hypericum yojiroanum Tatew. et Koji Ito ダイセツヒナオトギリ 大雪雛弟切
日本固有種(北海道)。大雪山の固有種。地熱のある湿地に生える。小型で叢生する。一見ヒメオトギリを想わせるが、葉は明点と暗点を有し、花弁は明腺を欠き、黒腺のみ。花柱は子房と同長又はやや短かい。
サワオトギリより、葉は一層小形で、花弁に明点を欠くことで区別できる。コオトギリとは比較的短かい花柱を有する点で区別される。
多年草、高さ2~12㎝、針金状の基部から斜上し、茎は叢生し、不分枝または基部から分枝し、細く、ときに根を張り、マット状になる。茎はわずかに(ときに不完全)2線があり、腺がなく、節間は2~20㎜、葉より短いかまたは長い。葉は無柄~長さ1㎜の葉柄がある。葉身は長さ(1~)5~17㎜×幅(1~)3~7㎜、倒卵形または倒披針形または長円形~楕円形または円形、表裏同色(concolorous)で、下面に目立つ脈があり、ときに全体が帯白色(glaucescent)、紙質、先は円形、縁は平ら、基部は円形~狭い楔形または漸尖形、葉脈は主な側脈が基部または下部1/4~1/2に3対あり、分岐は有または無、3次の網状脈はやや密。葉身の腺(laminar glands)は黒色で淡色、点状(punctiform)、密。縁内腺(intramarginal glands)は黒色、密から不規則。花序は花が1~5(~10)個、最大4節まであり、ときに4節の下から分岐することがあり、全体が散房花序形~短い円筒形。小花柄は長さ1~3 mm。苞と小苞は線形、全縁。花は直径約10~15㎜、星形、後屈する。蕾は楕円形~ほぼ球形、丸みを帯びる。萼片は5個、不等長、長さ2.5~4㎜×幅1~1.5(~2)㎜、長円形、先は鈍形~円形、全縁、3~5脈があり、脈が分岐する場合としない場合があり、面の腺(laminar glands)は黒色、細点状(punctiform)~条線状(striiform)、基部では短い線形。縁腺(marginal glands)は黒色、不規則または欠く。花弁は5枚、黄色、蕾では赤みがかっていない、長さ5~8㎜×幅2~3㎜、萼片の長さの1.75~2倍、倒披針形~長円形または倒卵状円形、全縁、面の腺は黒色、細点状~線状、縁腺は黒色、少数、不規則あるいは欠く。雄しべは約20~40本、3束になり、最長6~7㎜、花弁の長さの約0.9倍。葯腺は黒色。子房は長さ1.8~2.5㎜×幅1.5㎜、卵形。花柱は3本、離生、広がり、長さ1.5~2㎜、子房の長さの0.8~0.9倍。柱頭は狭い。蒴果は長さ5~7㎜×幅4~5㎜、萼片の長さの約2倍、卵状円筒形。種子は暗褐色、長さ0.8~0.9㎜、種皮は網状条線(reticulate-striate)がある。花期は6~8月。
72ハイブリッド
(1) Hypericum × cyathiflorum
ヒペリカム・アディングトニー(H. addingtonii) と ヒペリカム・フーケリアヌム(H. hookerianum)の交雑種。
品種) 'Gold Cup'
(2) Hypericum × dummeri 'Peter Dummer'
比較的最近誕生したハイブリッド栽培品種であり、タイリンキンシバイ(Hypericum 'Hidcote')とセイヨウキンシバイ( H. calycinum)との交雑種。2018 年ガーデンメリット賞(AGM)を受賞している。
'Peter Dummer' は落葉性半常緑低木、コンパクトな匍匐性であり、高さ30~50(75)cm。葉は楕円形、長さ3~5㎝、濃い青緑色緑、秋には葉が赤みがかる。花は黄色~濃い金黄色、大きな受け皿形、雄しべがはっきりと輪になる。果実は円錐形、赤褐色に熟す。花期は5~10月。果期は9~11月。
(3) Hypericum × hidcoteense Geerinck タイリンキンシバイ 大輪金糸梅
ヒペリカム・アディングトニー(H. addingtonii) 、セイヨウキンシバイ(H. calycinum) およびヒペリカム・フーケリアヌム(H. hookerianum) を親とする3種間雑種に起源するとされる園芸品種である。
葉は対生~十字対生状に節ごとに角度がややずれてつき、幅が狭く、長さ4~8㎝の狭長楕円形、全縁、両面無毛。花は直径約6~8㎝と大きく、花弁は広角に開き、ほぼ平開し、普通、先が浅く切れ込む。雄しべは多数つき、花弁の長さの1/2より短い。蒴果は長さ約1㎝。
かつてはキンシバイの園芸品種 Hypericum patulum 'Hidcote' として扱われたこともある。また、ヒペリカム・フォレスティー(H. forrestii) とセイヨウキンシバイ(H. calycinum)の雑種とされたこともあった。
品種) 'Hidcote' ヒペリカム・ヒドコート , 'Hidcote Silver Ghost' , 'Hidcote Variegated' (v)
(4) Hypericum × inodorum Mill. ヒペリカム・イノドルム
synonym Hypericum × elatum Aiton
フランス、イタリア、スペイン、コルシカ島原産。ヒペリカム・ヒルキヌム(H. hircinum) と コボウズオトギリ(H. androsaemum)の自然交雑種。英名はtall tutsan , St. John's Wort。
落葉性の半常緑低木、高さ90~150㎝。葉は長さ2~5㎝。花は直径約4㎝、鮮やかな黄色。果実は赤色、長さ12~15㎜。美しい葉、目立つ花、装飾的な果実で知られている。花は、花弁が萼片や花柱より著しく長い点で H. androsaemum と異なり、萼片が果期まで残る点で H. hircinum とは異なる。多数の園芸品種がある。
品種) 'Albury Purple' , 'Allcalyp' (PBR) , 'Alljambo' (PBR) , 'Allmontana' (PBR) , 'Allrico' (PBR) , 'Annebel' , 'Autumn Surprise' (PBR) , 'Bosapri' , 'Bosaro' , Brisk™ Jumbo Lime , Coco Grando® , Coco Rio® , 'Dhypbvanil' , 'Dream' , 'Dual Flair' , 'Elstead' , 'Elstead' , 'Excellent Flair' , First Editions® Glory , First Editions® Green , First EditionsR Magical White , First Editions® Mocca , First Editions® Pumpkin , First Editions® Red Star , FloralBerry™ Champagne , FloralBerry™ Chardonnay , FloralBerry™ Pinot , FloralBerry™ Rose , FloralBerry™ Sangria , Golden Beacon = 'Wilhyp' (PBR) , 'Goudelsje' , Harvest Festival™ Chocolate , Hypearl® Compact Red , Hypearl® Compact Star , Hypearl® Compact Yellow , 'Hysan' , Ivory Spices™ , 'Kolmades' (PBR) , 'Kolmagida' (PBR) , 'Kolmago' (PBR) , 'Kolmagrace' (PBR) , 'Kolmalimeli' (PBR) , 'Kolmamoc' (PBR) , 'Kolmapuki' (PBR) , 'Kolmaref' (PBR) , 'Kolmarom' (PBR) , 'Kolmasun' (PBR) , 'Kolmatri' (PBR) , 'Kolmavi' (PBR) , 'Kolmawhi' (PBR) , 'Kolmcharm' (PBR) , 'Kolmcherrip' (PBR) , 'Kolmcrea' (PBR) , 'Kolmdrip' (PBR) , 'Kolmgrefa' (PBR) , 'Kolmgreip' (PBR) , 'Kolmgrepo' (PBR) , 'Kolmindi' , 'Kolmiris' (PBR) , 'Kolmivo' (PBR) , 'Kolmkis' (PBR) , 'Kolmligh' (PBR) , 'Kolmpass' (PBR) , 'Kolmpifa' (PBR) , 'Kolmpigi' (PBR) , 'Kolmrefal' (PBR) , 'Kolmrock' (PBR) , 'Kolmsea' (PBR) , 'Kolmtrofa' , 'Kolmuni' (PBR) , 'Kolmwhifa' (PBR) , 'Limpsfield' , Magical Beauty = 'Kolmbeau' (PBR) (Magical Series) , Magical Cherry = 'Kolmcherrip' (PBR) , Magical Grace = 'Kolmagrace' (PBR) , Magical Indian Fall = 'Kolmindi' , Magical Innocence = 'Kolmaginno' (PBR) , Magical Lightning = 'Kolmligh' (PBR) , Magical Limelight = 'Kolmalimeli' (PBR) , Magical Pink Fall = 'Kolmpifa' (PBR) , Magical Pumpkin = 'Kolmapuki' (PBR) , Magical Red = 'Kolmred' (Magical Series) , Magical Series , Magical Sunshine = 'Kolmasun' (PBR) , Magical Triumph = 'Kolmatri' (PBR) , Magical Universe = 'Kolmuni' (PBR) , Magical White = 'Kolmawhi' (PBR) (Magical Series) , Magical White Fall = 'Kolmwhifa' (PBR) , Magical® Beauty , MagicalR Desire , Magical® Fire , Magical® Flame , Magical® Giant , Magical® Kiss , Magical® Midnight Glow , Magical® Orange , Magical® Passion , Magical® Pink , Magical® Red Fame , Magical® Sunshine , Magical® Sweetheart , Magical® Triumph , Magical® Universe , Magical® Universe'Kolmuni' , Magical® Victory , Miracle® Attraction , Miracle® Blossom , Miracle® Fantasy , Miracle® Grandeur , Miracle® Horizon , Miracle® Night , MiracleR Pearl , Miracle® Pistache , Miracle® Primo , Miracle® Spirit , Miracle® Summer , Miracle® Sunset , Miracle® Wonder , Pink Bernice = 'Schibernpin' (PBR) , Prince Flair = 'Bosapri' , 'Red Fame' , Red Jewel = 'Ruihye112a' , 'Rheingold' , Royal Flair = 'Bosaro' , 'Ruihyc003b' (PBR) , 'Ruihye112a' , 'Schibernpin' (PBR) , 'Summergold' (v) , 'Summer's End' , 'Wilhyp' (PBR) , 'Ysella'
(5) Hypericum × moserianum
セイヨウキンシバイ(H. calycinum) とキンシバイ(H patulum)の人工交配種
半常緑低木、高さ50㎝まで、茂みのように広がる。葉は緑色、全縁、卵形で、約・長さ5㎝×幅3㎝。茎は濃い赤色または橙色。花は黄色い花は椀形、直径5㎝まで、花弁は5枚。雄しべの葯は赤~橙色。蒴果は赤色、長さ2㎝まで。花期は夏~秋初旬。
品種) 'Dunnehyp' (PBR) , Little Misstery = 'Dunnehyp' (PBR) (v) , 'Tricolor' (v) , 'Variegatum'
(6) その他ハイブリッド
品種) 'Allavanti' (PBR) , 'Allbam' (PBR) , 'Allblizz' , 'Allblommos' (PBR) , 'Allblossom' (PBR) , 'Allboo' (PBR) , 'Allbrazil' (PBR) , 'Allcardinal' (PBR) , 'Alldiablo' (PBR) , 'Allelectric' (PBR) , 'Allfantasy' (PBR) , 'Allfiesta' (PBR) , 'Allflanel' (PBR) , 'Allgrandeur' (PBR) , 'Allgrando' (PBR) , 'Allhy1236' (PBR) , 'Allhy1291' (PBR) , 'Alljoy' (PBR) , 'Alllangano' (PBR) , 'Alllimo' (PBR) , 'Alllipst' (PBR) , 'Allloco' (PBR) , 'Allmadne' (PBR) , 'Allmagnifico' (PBR) , 'Allmarvel' (PBR) , 'Allparadiso' (PBR) , 'Allpista' (PBR) , 'Allriomara' (PBR) , 'Allsalsa' (PBR) , 'Allspirit' (PBR) , 'Allsummer' (PBR) , 'Allsunset' (PBR) , 'Alltango' (PBR) , 'Allwonder' (PBR) , 'Allyoko' (PBR) , 'Anthos' , 'Arcadia' (PBR) , 'Archibald' , 'Bosaapol' , 'Bosaclas' (PBR) , 'Bosafan' (PBR) , 'Bosafunk' , 'Bosaivy' (PBR) , 'Bosajum' , 'Bosakin' , 'Bosamag' , 'Bosamyst' (PBR) , 'Bosaney' (PBR) , 'Bosaome' , 'Bosapin' (PBR) , 'Bosarock' , 'Bosasca' , 'Bosaswe' , 'Bosavani' , 'Bright Blossom' (PBR) , Brisk™ Bloody Mary , 'Danhypanron' , 'Danhypqueron' , 'Danhyproyron' , 'Daybreak' , Early Fruit = 'Erfru' , 'Eastleigh Gold' , 'Elite Baby Green' , 'Elite Mayor' , 'Elite Sweet Lion' , 'Erfru' , 'Esm Coral' , 'Esm Fire' , 'Esm Grape' , 'Esm Gulli' (PBR) , 'Esm H047' (PBR) , 'Esm Mar' , 'Esm Mayor' , 'Esm Orange Wave' , 'Esm Tobago' (PBR) , 'Esmamber' , 'Esmfashion' , 'Esmopal' , 'Fancy Pants' , 'Gold Crown' , 'Gold Penny' , 'Goldstern' , HGTV™ Playful Pink™ , 'Hidcote' , 'Hidcote Gold' , 'Hidcote Variegated' , Hot Spices™ , 'Hymirfan' , 'Hymirsum' , 'Hymirwon' , Hypearl Compact Red = 'Ruihyi174a' (Hypearl Compac , Hypearl Compact Star = 'Ruihyg219a' (Hypearl Compa , Hypearl Compact Yellow = 'Ruihyh002a' (Hypearl Com , Hypearls Annelies (Hypearls Series) , Hypearls Ella (Hypearls Series) , Hypearls Jacqueline (Hypearls Series) , Hypearls Olivia (Hypearls Series) , Hypearls™ Madelon , HypearlsR Olivia , HyperBerries Maroon , 'Hyro' , 'Kolmagif' , 'Kolmaginno' (PBR) , 'Kolmarest' (PBR) , 'Kolmbeau' (PBR) , 'Kolmblac' (PBR) , 'Kolmdream' (PBR) , 'Kolmfa' (PBR) , 'Kolmfibal' (PBR) , 'Kolmfir' , 'Kolmgia' , 'Kolmgreviva' (PBR) , 'Kolmoran' , 'Kolmpin' , 'Kolmred' , 'Kolmsweet' , 'Kolsum' (PBR) , 'Locke' , 'Magic Berry Pink' , 'Magic Berry Red' , Magical Dream = 'Kolmdream' (PBR) , Magical Fall = 'Kolmfa' (PBR) , Magical Flame = 'Kolmagif' , Magical Giant = 'Kolmgia' , Magical Pink = 'Kolmpin' , Magical Red Flame = 'Kolmaref' (PBR) , Magical Red Star = 'Kolmarest' (PBR) , Magical Sweetheart = 'Kolmsweet' , 'Milkmaid' , Miracle Attraction = 'Alldiablo' (PBR) (Miracle Se , Miracle Blizz = 'Allblizz' (Miracle Series) , Miracle Blossom = 'Allblossom' (PBR) (Miracle Seri , Miracle Fantasy = 'Hymirfan' (Miracle Series) , Miracle Grandeur = 'Allgrandeur' (PBR) (Miracle Se , Miracle Horizon = 'Allblommos' (PBR) (Miracle Seri , Miracle Marvel = 'Allmarvel' (PBR) (Miracle Series , Miracle Night = 'Allmadne' (PBR) (Miracle Series) , Miracle Pistache = 'Allpista' (PBR) (Miracle Serie , Miracle Series , Miracle Summer = 'Hymirsum' (Miracle Series) , Miracle Wonder = 'Hymirwon' (Miracle Series) , 'Mr Bojangles' , 'Mrs Brabazon' , 'Mystic Orange' , 'Mystical Beauty' , Mystical Green™ , 'Mystical Red Star' , 'Norman Robson' , 'Pinky Flair' , 'Purple Fountain' , 'Purple Smoke' , 'Quality First' , 'Red Condor' , 'Red Headed Woman' , 'Rowallane' , 'Ruihyg219a' , 'Ruihyh002a' , 'Ruihyi174a' , Scarlet Flair = 'Bosasca' , 'Seiball' (PBR) , 'Seicol' (PBR) , 'Seideep' (PBR) , 'Smoulder' , 'Sonnenbrut' , 'Summer Sunshine' , 'Sungold' , 'Sweet Lion' , 'Taubertal' , 'Verhipgreen' (PBR) , 'Verhiplim' (PBR) , 'Verhippin' (PBR) , 'Verhipred' (PBR) , 'Verputa'
参考
1) Flora of ChinaHypericum
Hypericum
Hypericum
Hypericum
館脇操,伊藤浩司 : タイセツヒナオトギリ(新種)
6)植物研究雑誌75(5): 316-318(2000)
大場達之,木村陽子 : トミサトオトギリ(新称)Hypericum mutilum L. の帰化
7)新牧野日本植物図鑑(2008)
あぜおとぎり
8)Bulletin of the Natural History Museum p115
Hypericum sensu lato (part 2): subsection 1. Hypericum series 1. Hypericum
Hypericum cerastioides (Spach) N. Robson
Hypericorum Japonicarum Descriptio. Ⅱ