ヤマノイモ 山の芋

Flora of Mikawa
ヤマノイモ科 Dioscoreaceae ヤマノイモ属
別 名 | ジネンジョ、ヤマイモ |
英 名 | glutinous yam,Japanese yam |
中国名 |
日本薯蓣 ri ben shu yu |
学 名 | Dioscorea japonica Thunb. |









花 期 | 7~8月 |
高 さ | つる性 |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 山地 |
分 布 | 在来種 本州、四国、九州、沖縄、朝鮮、台湾、中国 |
撮 影 | 三ヶ根山 01.8.12 |
蔓は緑色。葉は対生し、長さ3~11㎝、幅2~5㎝の三角状披針形、先は尖り、基部は心形。葉柄は長さ2~4(6)㎝、雌雄異株。雄花序は2~5個、集まって上向きにつく。雄花は白色、花被片6個。外花被片3個,、内花被片3個、花被片は開きが少なく、花がほぼ球形。雄しべ6個。雌花序は垂れ下がり、緑色の子房がついた花被の小さな花がつく。蒴果は長さ約15㎜、幅22~28㎜、半円形に近い翼のような3室があり、ごく薄い種子が1室に1~2個入り、熟すと裂開する。種子が1室に2個重なって入る場合は種子の位置が上下にずれて入る。熟しても蒴果は上向きにならない。種子は翼を含めて長さ10~15㎜、全周に広い薄膜の翼がある。葉の基部に珠芽(むかご)が多数つくのが特徴。葉が黄色くなる秋には珠芽も黒くなる。
ヤマノイモ属
family Dioscoreaceae - genus Dioscoreaつる性草本、絡み付く。塊茎(rootstock rhizomatous)又は塊根(tuberous)、茎と根の中間的な性質をもつ担根体(rhizophore)と呼ばれる芋(いも)をもち、色や形や化学成分や地下の深さは様々である。珠芽(むかご bulblet)は腋生又は無い。葉は互生又は対生し、葉柄がある。葉身は単葉又は掌状複葉、基部の葉脈は3~9本。花は単性(雌雄異株、まれに雌雄同株)、葉腋に螺旋状につき、普通、長い穂状花序又は総状花序、又は±穂状花序状の密錘花序の中の小さい小集散花序につく。これらはしばしば数個一緒に、ときに頂部に密集し、又は葉に抱かれる腋生の円錐花序につく。雄花は雄しべが6本、3本はときに減り、仮雄しべになるか又は無くなる。蒴果は3翼があり、熟すと先から裂開する。種子は膜質の翼をもつ。
世界に600種以上があり、熱帯、温帯地域に広く分布する。
ヤマノイモ属の主な種と園芸品種
1 Dioscorea alata L. ダイジョ 大薯東南アジア原産。現在は汎熱帯性栽培。中国名は参薯 shen shu 。英名はgreater yam , Guyana arrowroot , ten-months yam , water yam , white yam , winged yam , yam , ube , purple yam , violet yam。別名はシンショ 参薯 、デンショ 田薯 、コウシャイモ 拳薯 、オキナワヤマイモ 沖縄山芋 、タイワンヤマイモ 台湾山芋など。ヤムイモの中で最も生産が多く、鮮やかな紫色のいもはベニヤマイモ 紅山芋、ベニイモ 紅芋 とも呼ばれる。
塊茎は変化に富み、通常球形または円錐形(コルクは褐色または紫黒色で横断面が紫白色の場合)、または扁平(oblate)または円筒形、よく分枝する(コルクが褐色または灰黄色で横断面が白色の場合)。茎は右に巻きつき、無毛で、うねがあり、4つの狭い膜質の翼があり、基部に棘がある。珠芽(bulblet)があり、形は様々。葉は茎の基部に互生し、上部で対生し、単葉。葉柄は緑色または紫赤色、長さ4~15cm。葉身は緑色または紫赤色、卵形、長さ6~15(~20)cm×幅4~13cm、紙質、無毛、基部は矢じり形~深い心形、先は短い尖鋭形または尾状。雄穂状花序は単生または数個集まり、長さ1.5~4cm、ときに円錐花序を形成する。雄花:外花被片は広卵形、長さ1.5~2mm。雄しべは6本。雌穂状花序は単生または2~3本集まる。雌花:仮雄しべは6本。蒴果は反り返らず、扁平、ときに倒心形、長さ1.5~2.5cm。翼は幅が1.2~2.2cm。種子は蒴果の中央付近に着生し、全周に翼がある。花期は11月~1月。果期は12月~1月。
2 Dioscorea asclepiadea Prain et Burkill ツクシタチドコロ 筑紫立野老
日本固有種(九州南部)。九州南部や奄美大島に分布し、林縁に生える。タチドコロに近いが、雄花の雄しべは3本、仮雄しべが全くないことが特徴。
多年草、つる性。地下茎は横に這う。茎は下部で直立し、上部はつる状になる。葉は互生し、葉身は長さ8~17cm、幅4~7cm、三角状披針形、薄くて硬く、基部は心形、先は長く尖る。花被片は黄緑色、雄花には短い柄がある。雄しべは3本、仮雄しべは無い。
3 Dioscorea benthamii Prain et Burkill タイセイイモ 大青芋
中国(福建省西部、広東省、広西チワン族自治区)、台湾原産。中国名は大青薯 da qing shu。標高300~900mの低木林、山腹、谷、河川沿い、道端に生える。
塊茎(rootstock)は不明。茎は右に巻きつき、細く、無毛。葉は通常対生し、単葉。葉柄は長さ0.5~2cm。葉身は下面が帯白色、倒卵状長円形または長円形~倒卵状披針形で、若葉では幅が広く、長さ2~7(~9)cm×幅0.7~4cm、紙質、無毛、基部の脈は3~5(または7)本、基部は円形、縁は全縁、先は鋭形~尖鋭形、通常やや枯れる。雄花は単生または2~3個が束生し、長さ2~3cm、または短い腋生の円錐花序。花序軸は明らかにジグザグ状。雄花は無柄。苞は紫褐色の斑点があり、三角状倒卵形で、先は長い尖鋭形。花被片は紫褐色の斑点があり、外花被片は円形または広卵形。雄しべは6本。雌穂状花序は普通単生または双生、長さ3~10cm。雌花は苞が卵形、先は尖鋭形。外花被片は広卵形。仮雄しべは6本。蒴果は反り返らず、扁平、長さ約1.5cm、無毛、翼は幅1.2~1.5cm。種子は蒴果の中央付近に生じ、全周に翼がある。花期は5~6月。果期は7~9月。
4 Dioscorea bulbifera L. ニガカシュウ 苦荷首烏
synonym Dioscorea bulbifera f. domestica (Makino) Makino & Nemoto カシュウイモ
synonym Dioscorea bulbifera L. f. spontanea (Makino) Makino et Nemoto
日本(本州の関東地方以西、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西省、貴州省、海南省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、台湾、インド、ブータン、カンボジア、ミャンマー、タイ、ベトナム、オセアニア、アフリカ原産。中国名は黄独 huang du。英名はaerial yam , air-potato , bitter yam , cheeky yam , potato yam。海抜2300m付近の混交林の縁、川岸、谷間に生える。塊茎は普通単生で、毎年更新し、卵形または洋ナシ形で、太さ4~10cm。コルク質は黒色。根は繊維状。茎は左に巻きつき、無毛で平滑。小鱗茎(bulblets)は紫褐色、円形の斑点があり、球形または卵形で、大きさは様々で、重さは300gまで。葉は互生し、単葉。葉柄は長さ2.5~5.5cm。葉身は広心形で、長さ8~15(~26)cm、幅2~14(~26)cm、無毛、縁は全縁またはわずかに波打ち、先は尾状尖鋭形。雄穂状花序は普通、葉腋または葉のない腋生シュートに密集し、垂れ下がり、ときに分岐する。雄花は単生で、花序軸に沿って±連続する。苞と小苞は卵形。花被は紫色で、花被片は披針形。雄しべ6本は花被の基部に着生し、花糸は葯とほぼ同長。雌花はしばしば2本以上集まり、雄花に似ており、長さ20~30cm。雌花:仮雄しべが6本、花被片の長さの約1/4。蒴果は反り返るか垂れ下がり、麦わら色で、密に帯紫色の斑点があり、長円形、長さ1.5~3cm、無毛、基部と先は丸みを帯び、翼は幅0.25~0.7cm。種子は蒴果の先端近くに着生し、暗褐色、翼は蒴果の基部に向き、長円形、長さ1.2~1.6cm×幅約0.5cm。花期は7~10月。果期は8~11月。
5 Dioscorea caucasica Lipsky ディオスコレア・コーカシア
ジョージア原産。英名はCaucasian yam , Caucasus Yam Root , Caucasian Yam Vine。コーカサス山脈と黒海の間の地域に固有の種あり、標高1600mまでの高地で生育する。
D. caucasicaは、D. balcanicaに最も近い近縁種である。D. balcanicaとD. caucasicaは形態的に非常によく似ていて、どちらも右巻き(right-twining)のつる植物で、草質の茎を持ち、高さは最大2mに達する。どちらも雌雄異株で、雌株は雄株よりも大きくなる。2種の最も顕著な違いは葉の大きさと形状である。D. caucasicaではすべての葉が同じ大きさで、長さが幅よりも長いのに対し、D. balcanicaでは下部の葉は大きく、長さと幅がほぼ同じであるが、一方、上部の葉は小さく、より細長く尖っている(Košanin 1929)。両種とも、寒い冬を生き延びる根茎を持つため、多年生である。生育期間は比較的短く、4~6月に開花し、9月に結実する。
品種) 'Zojugre'
6 Dioscorea cayennensis Lam. キイロギニアヤム
西アフリカ原産。英名はattoto yam , Lagos yam , twelve-months yam , yellow Guinea yam , yellow yam。別名はギニア山芋、黄色山芋。
茎は右巻きで円筒形。葉はときに対生またはほぼ対生するが、通常、互生し、長さ6~10cm×幅4~6cm、卵形、基部はしばしば円形~わずかに心形、7または9本の脈があり、無毛だが、下面に腺点があり、棘状の湾曲した托葉がある。雄花序は長さ約12cm、総状花序または穂状花序となり、花序軸は無毛。雄花は単生、無柄または小花柄が長さ1mm未満、クリーム色~黄色、または緑色~帯赤色。花被片は分かれる。雄しべは6本、分離し、長さは不明、円環(torus)に付く。葯室は密着する。仮雄しべはない。雌しべは1個で円錐形。雌花には6個の仮雄しべがある。花柱は2裂する。果実は幅約4cmまで、扁平形(丸みを帯びているが、長さより幅が広い)。種子の縁には翼がある。[Manual de Plantas de Costa Rica]
6-1 Dioscorea cayennensis subsp. rotundata (Poir.) J.Miege シロギニアヤム
synonym Dioscorea rotundata Poir.英名はwhite yam, West African yam , Guinea yam , white name。
7 Dioscorea cirrhosa Lour. ソメモノイモ 染物芋
synonym Dioscorea matsudae Hayata
synonym Dioscorea cirrhosa var. cylindrica C.T.Ting & M.C.Chang
中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、湖南省、江西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、台湾、タイ、ベトナム原産。中国名は薯莨 shu liang。海抜1500m付近の混交林、広葉樹林、低木林、山地斜面、渓谷、河川沿い、道路脇に生える。塊茎はタンニン含有量が非常に高く、布地の染色や防腐に用いられる。塊茎は球形、卵形、ひょうたん形(gourd-shaped)、長円形、または円筒形、コルク質は暗褐色、横断面は明褐色または赤色で、乾くと黒紫色になる。茎は右に巻きつき(twining to right)、分岐し、緑色、長さ20mまで、無毛、基部に棘がある。葉は茎の基部で互生し、上部で対生し、単葉。葉柄は長さ2~6cm。葉身は上面は暗緑色、下面は帯白色、卵形~線形、長さ5~20cm、幅0.6~14cm、革質またはほぼ革質、無毛、基部の脈は3本または5本、網状脈が顕著、基部は円形で、ときに三角形に裂け、縁は全縁、先は鋭形または尖鋭形。雄穂状花序は長さ2~10cm、円錐花序は腋生、長さ2~14cmまたはそれ以上になり、花序軸は真っすぐ。雄花:外花被片は卵形または広卵形、長さ約2mm。内花被片は倒卵形。雄しべは6本、花被片よりわずかに短い。雌穂状花序は1個、長さ約12cmまで。蒴果は反り返らず、扁平で、長さ1.8~3.5cm、基部は凹形、小花柄に向かって漸尖し、長さ約7mm、先は凹形、翼は幅1.2~2.7cm。種子は蒴果の中央付近に生じ、直径1.8~2.4cm(翼を除く長さ約0.6cm)、全周に翼がある。花期は4~6月。果期は7~1月。
8 Dioscorea collettii Hook.f. フッケンドコロ 福建野老
日本、中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム原産。中国名は叉蕊薯蓣 cha rui shu yu。標高200~3200mの混交林、コナラ二次林、低木林、山地斜面に生える。
根茎は水平でショウガ形、長さは様々、太さ約2cm。横断面は黄色。根は細く、繊維状。茎は左に絡み、無毛、時に密に短い黄色の毛が生える。葉は互生し、単葉。葉柄は長さ4~7cm。葉身は乾燥すると黒っぽくなり、三角形~卵形または卵状披針形、長さ5~19(~22)cm×幅3~13(~16)cm、通常は膜質、下面は時に特に葉脈に沿って髭があり、基部は心形~ほぼ切形、縁はほぼ全縁またはわずかに波打ち、ときに透明になり、先は尖鋭形。雄穂状花序は単生または2~3個が一緒につく。雄花は単生または2~3個の小集散花序(cymules)で、無柄。苞は卵状披針形。小苞は卵形。花被片は黄色、通常は乾くと黒色になり、皿形。雄しべは3本、花被筒に挿入される。花糸は短く、葯は卵形、葯隔は開花時に伸長し、フォーク状。仮雄しべは糸状。雌花は単生で、長さ5cm。雌花:仮雄しべあり、子房は円柱形。蒴果は反り返り、褐色で光沢があり、広卵形または楕円形、通常はやや角張り、長さ1.6~2.1cm、先は切形、翼は幅0.8~1.1cm。種子は蒴果の中央付近に挿入され、全周に翼がある。花期は5~8月。果期は6~10月。
8-1 Dioscorea collettii var. collettii
synonym Dioscorea kelungensis Hayata
synonym Dioscorea tashiroi Hayata
中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江西省、四川省、浙江省)、台湾、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム原産。中国名は叉蕊薯蓣 cha rui shu yu。標高1500~3200mのコナラ属二次林、低木林に生える。 葉身は三角状心形または卵状披針形、縁は透明ではない。葯隔は、しばしば開花時に葯の幅の1~2倍になる。蒴果は広倒卵形、先は切形または円形。花期は5~8月。果期は6~10月。
8-2 Dioscorea collettii var. hypoglauca (Palib.) S.J.Pei & C.T.Ting
synonym Dioscorea hypoglauca Palib.中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区部、河南省、湖北省、湖南省、江西省、浙江省)、台湾原産。中国名は粉背薯蓣 fen bei shu yu。標高200~1300mの混交林、山地斜面に生える。
葉身は三角形または卵形、縁は通常透明。葯隔は短く、開花時の葯の幅の約半分。蒴果は広楕円形で、先端は丸みを帯びる。花期は5~8月。果期は6~10月。
8-3 Dioscorea collettii var. izuensis (Akahori) Hiroshi Noda & M.N.Tamura イズドコロ 伊豆野老
synonym Dioscorea izuensis Akahori日本(伊豆諸島)。林下に生える。
多年草、蔓性。根茎は肥厚し、直径1~1.5cm、地を這い、分枝し、長いひげ根を持つ。茎は長さ約1.5m、下部にだけ白色の軟毛がある。葉は互生し、葉柄は長さ3~5cm。葉身は長さ6~12cm、幅3~9cm、三角状卵形~披針形、やや厚い革質、先は長く尖り、両側は耳状に張り出し、上面は無毛で光沢があり、下面は粉白色を帯び、乾くと帯黒色になる。雌雄異株。穂状花序は垂れ下がる。雄花は2~6個が集まってつき、無柄で。花被片は6個。雄しべは3本。仮雄しべは3本。雄花序は長さ約20cm、途中で分枝する。雌花序は長さ5~7cm、花は無柄、花被片は6個、黄緑色、平開する。雌花は雌しべが1個、柱頭は3裂し、仮雄しべが6本つく。蒴果は幅15~18mm、扁平な扁円形、3稜がある。種子は全周に翼がある。 花期は7~8月。
9 Dioscorea cumingii Prain et Burkill ヤツデドコロ 八手野老
synonym Dioscorea cumingii Prain et Burkill var. ramosii Burkill
中国(雲南省)、台湾、インドネシア、フィリピン原産。中国名は吕宋薯蓣 lu song shu yu 。塊茎(rootstock)は不明。茎は左側に巻きつき(twining to left)、微細な黄色の微軟毛があり、棘がある。葉は互生し、掌状に(3または)5または7(または9)小葉になる。葉柄は長さ7~9cm。中央の小葉は披針形、長さ8~12.5(~18)cm×幅3~4.2cm、±草質、軟毛があり、脈に沿って以外は無毛、羽状脈があり、基部は不明瞭な葉柄に向かって細くなり、縁は全縁、先は尾状尖鋭形。側小葉は斜めの楕円形、長さ6.5~9cm×幅2.3~3.2cm、基部付近から通常±2本の脈がある。雄穂状花序は長さ1.5cmまで、腋生の円錐花序は長さ50cmまで、2レベルで分岐し、大部分は灰色の綿毛が密生する。雄花は単生。小花柄は長さ0.6mm以下。苞と小苞は花被を囲んで総苞を形成する。苞は心形、長さ約1.5mm、花被より長い。小苞は卵形で花被と同長、綿毛があり、先は尾状。花被は乾くと暗色で無毛、外花被片は長円形、長さ2mm以下、内花被片は外花被片よりわずかに小さい。雄しべは3本。仮雄しべは雄しべより長い。雌穂状花序は単生、長さ16~30cm。蒴果は長円形、長さ4~5cm、若い時に微軟毛があり、無毛になり、基部は楔形、先は丸く、翼は幅0.9~1.3cm。種子は蒴果の頂点近くに付けられ、翼は蒴果基部に向かい、約・長さ0.9cm×幅0.5cm。花期は4月。果期は8~2月。
10 Dioscorea esculenta (Lour.) Burkill トゲイモ 棘芋
synonym Dioscorea esculenta (Lour.) Burkill var. esculenta タマゴイモ
synonym Dioscorea esculenta var. spinosa (Prain) R.Knuth トゲイモ
中国(広西チワン族自治区、海南省)、台湾、インド、タイ、マレーシア、パプアニューギニア原産。中国名は甘薯 gan shu 。英名はAsiatic yam , Chinese yam , lesser yam。熱帯アジアでは古くから栽培されている。塊茎は通常4~10個で、根茎の頂枝から生じる。コルクは淡黄色で平滑。刺のある根は有または無。茎は左に巻きつき(twining to left)、T字形の軟毛があり、下部に棘があり、上部は節にのみ棘がある。葉は互生し、単葉。葉柄は長さ5~8cm。葉身は広心形、長さ15cm×幅17cm・以下、特に下面にT字形の毛があり、基部の脈は9~13本で、基部は心形、先は鋭形。雄穂状花序は単生、密、長さ約15cm。雄花は通常単生だが、まれに2~4個の小集散花序(cymules)につき、無柄またはほぼ無柄。苞は卵形。花被片は浅いカップ形、軟毛があり、外花被片は広披針形、長さ約1.8mm、内花被片は外花被片よりわずかに短い。雄しべは6本、花被筒に挿入され、花被片よりわずかに短い。雌穂状花序は単生、垂れ下がり、長さ40cmまで。蒴果は稀に成熟し、長さ約3cm、基部は切形、先端はわずかに凹形、翼は幅約1.2cm。種子は蒴果の中央付近に挿入され、全周に翼がある。花期は初夏。
中国南部では少なくとも1700年前から栽培されていたことが知られている。棘のない種(タマゴイモ)は、おそらく元の棘のある種からの選抜によるものと思われる。
11 Dioscorea gracillima Miq. タチドコロ 立野老
日本(本州、四国、九州)、中国原産。中国名は纤细薯蓣 xian xi shu yu。多年草。つる性。根茎は水平に不規則に伸びる。茎は左巻き。葉は互生し、ときに基部では3~4輪生し、葉柄は長さ7~12㎝。葉身は長さ5~10㎝、幅3~7㎝の三角状卵形~三角状楕円形、先が長く尖り、基部は心形。葉縁はほぼ全縁、しばしば細かい波状の鋸歯縁となる。雌雄異株。雄花序は不規則に分枝し、まれに集散花序状になり、花軸が細く、垂れ下がり、直立することもある。雄花は単生又は稀に、花序の基部に2~3個つき、無柄。苞は卵形、膜質。小苞は苞より短い。花被は黄緑色~黄色~淡橙色。皿形、花被片は6個、卵状円形、長さ1.5~2㎜。雄しべは3個、仮雄しべ3個。雌花序は分枝せず、長さ7㎝以下、疎に数個の雌花を疎につける。雌花は花被が黄緑色~黄色~淡橙色、花被片6個、子房下位で太い柄のように見える。花柱は3裂し、仮雄しべ6個。蒴果は長さ18~22㎜、幅18~20㎜、薄い翼状の3室があり、種子は室の中央に1~2個入り、種子の翼が上側を除き、果実の縁まであり、熟すと上側が裂開する。種子は楕円形、全周に翼があるか又は1辺に翼がほとんどないことも多い。まれに2種子が1つの翼に包まれることもある。2n=20, 40。花期は5~7月。
12 Dioscorea hamiltonii Hook.f. ディオスコレア・ハミルトニー
synonym Dioscorea persimilis Prain et Burkill [Flora of China]
synonym Dioscorea hamiltonii Hook. f [GRIN]synonym Dioscorea raishaensis Hayata ライシャイモ
synonym Dioscorea persimilis var. pubescens C.T.Ting & M.C.Chang
中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、湖南省、雲南省)、ベトナム原産。中国名は褐苞薯蓣 he bao shu yu。標高100~2000mの混交林、低木林、山腹、谷、道路脇に生える。
塊茎は垂直に伸び、円筒形、コルクは黄褐色、横断面は白色。茎は右巻き(twining to right)、乾くと赤褐色、太さ0.1~0.6cm、細く、硬く、無毛、しばしば4~8稜がある。珠芽(むかご bulblet)がある。葉は茎の基部で互生し、上部で対生し、単葉。葉身は乾くと赤褐色、円形、卵形、または三角形から狭楕円卵形、長さ4~15cm×幅2~13cm、紙質、無毛、基部の脈は7本または9本、網状脈が顕著、基部は矢じり形また矛形、または深いまたは広い心形で、縁は全縁、先は鋭形、尖鋭形、または尾状。雄穂状花序は2~4個集まり、長さ1~4cm、通常、細く、腋生の長さ40cmまでの円錐花序につく。花序軸は明らかにジグザグ状。雄花:苞は紫褐色の斑点があり、卵形、花被の長さの約1/2、先は尖鋭形。外花被片は褐色の斑点があり、広卵形、約・長さ1.2mm×幅0.7mm、先は円形。雄しべは6本。雌穂状花序は単生または双生。雌花:外花被片は卵形、仮雄しべは小さい。蒴果は反り返らず、扁球形(oblate)、長さ1.5~2.5cm、翼の幅1.2~2cm。種子は蒴果の中央付近に生じ、全周に翼がある。花期は7~12月。果期は9~1月。
13 Dioscorea hispida Dennst. ミツバドコロ 三つ葉野老
中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、西蔵、雲南省)、インンド、ブータン、シッキム、タイ、インドネシア原産。中国名は白薯莨 bai shu liang。英名はAsiatic bitter yam , intoxicating yam。海抜0~1500m付近の低木林、林縁に生える。
塊茎は褐色で卵形または不規則な形、大きさは様々、有毒、横断面は白色。茎は左に巻きつき、長さ30cmまで、円柱形で丈夫、若いときは毛があり、無毛になり、棘がある。葉は互生し、掌状に3小葉。葉柄は長さ30cmまで、毛がある。中央の小葉は±卵形~楕円形、長さ6~12(~17.5)cm、幅4~12cm、上面にまばらに剛毛(hispid)があり、無毛、下面に剛毛があり、掌状脈があり、先は尖鋭形、側小葉は卵状楕円形またはほぼ広長円形、斜め、中小葉より小さく、縁は全縁。雄穂状花序は腋生の円錐花序ににつき、長さ50cm まで、2レベルで分岐し、大部分に密に綿毛がある。雄花は密に束生する。花被片は長さ約1mm、外花被片は内花被片より小さく細い。雄しべは6本。雌穂状花序は単生、長さ40cm以下。蒴果は長円形で、長さ3.5~7cm、革質、密に毛が生え、翼は幅1.2~1.5cm。種子は蒴果の頂点付近に着生し、翼は蒴果の基部を向く。花期は4~5月。果期は7~9月。
14 Dioscorea japonica Thunb. ヤマノイモ 山の芋
日本(本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、四川省、浙江省)、台湾、アッサム原産。中国名は日本薯蓣 ri ben shu yu 。別名はジネンジョ、ヤマイモ。英名はglutinous yam, Japanese yam。標高100~1200mの混交林とその周辺、低木林、草地、山の斜面、谷、河川沿い、道路沿いに生える。別名のヤマイモとかジネンジョといわれるのが普通である。イモは食べられるようになるまでに4~5年かかり、栽培されているナガイモに比べると粘り気が強い。最近では売られているジネンジョはほとんど栽培品である。
塊茎は垂直に伸び、長い円筒形、直径3cmまで、コルクは黄褐色。横断面は白色または黄白色。茎は右巻き(twining to right)、緑色、ときに淡紫赤色。珠芽(bulblet)がしばしばある。葉は茎の基部で互生し、上部で対生し、単葉。葉柄は長さ1.5~4(~6)cm。葉身は乾燥すると黄緑色~淡褐色になり、茎の基部では広卵形、上部では普通、三角状披針形~線形、長さ3~12(~19)cm×長さ1~6(~18)cm、膜質または紙質、無毛、基部の脈は5~9本、基部は矢じり形(sagittate)または矛形(hastate)~心形または±切形、縁は全縁、先は鋭形~長い尖鋭形。雄穂状花序は3~5個集まってつき、まれに単生、±直立または斜上し、長さ2~8cm。花序軸は真っすぐ、たまに先がわずかにジグザグになる。雄花:花被は緑白色または淡黄色、花被片は紫色の斑点があり、卵形または卵状楕円形、長さ2mm×幅1.5mm・以下、内花被片は外花被片より小さい。雄しべは6本。雌花は単生または2個もしくは3個集まり、長さ6~20cm。雌花:仮雄しべ6本。蒴果は反り返らず、淡褐色、暗色で、線形のそばかすがあり、扁球形(oblate)、長さ1.5~2(~2.5)cm、基部は切形、先は凹形、翼は幅0.7~1.5(~2)cm、縁は黒色。種子は蒴果の中央近くにつき、D字形、長さ約1.9cm(翼を除き長さ約0.7cm)、全周に翼がある。花期は5~10月。果期は7~11月。
品種) 'Variegata' (v)
14-1 Dioscorea japonica var. japonica
日本(本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、四川省、浙江省)、台湾原産。中国名は日本薯蓣 ri ben shu yu。英名はAsiatic bitter yam , intoxicating yam。標高100~1200mの混交林、草地、山地斜面、谷、渓流沿い、道路脇に生える。多年草。全体に無毛。蔓は緑色。葉は基部で互生し、上部で対生し、葉柄は長さ2~4(6)㎝。葉身は長さ3~11(~19)㎝、幅(1~)2~5(~18)㎝の三角状披針形、膜質、基部の脈は5~9本。基部は矢じり形または短枝から心形、先は尖鋭形。雌雄異株。雄花序は2~5個、集まって上向きにつく。雄花は白色、花被片6個。外花被片3個、内花被片3個、花被片は開きが少なく、花がほぼ球形。雄しべ6個。雌花序は垂れ下がり、緑色の子房がついた花被の小さな花がつく。蒴果は長さ約15㎜、幅22~28㎜、半円形に近い翼のような3室があり、ごく薄い種子が1室に1~2個入り、熟すと裂開する。種子が1室に2個重なって入る場合は種子の位置が上下にずれて入る。熟しても蒴果は上向きにならない。種子は翼を含めて長さ10~15㎜、全周に広い薄膜の翼がある。葉の基部に珠芽(むかご)が多数つくのが特徴。葉が黄色くなる秋には珠芽も黒くなる。花期は7~8月。
14-2 Dioscorea japonica var. nagarum Prain & Burkill
synonym Dioscorea belophylla (Prain) Voigt ex Hainesインド(アッサム)原産。インドのナガランド州のナガ丘陵に生息する。
小枝の節に葉が1枚つき、腋生の短く硬い2本の穂状花序が直立し、それぞれの花序に16~18個の無柄の雄花がつく。
14-3 Dioscorea japonica var. oldhamii R.Knuth
synonym Dioscorea japonica Thunb. var. oldhamii Uline ex R.Knuth
中国(広東省、広西チワン族自治区)、台湾原産。中国名は细叶日本薯蓣 xi ye ri ben shu yu。低木林、山地、河川沿い、道路沿いに生える。植物体は全体に無毛。鱗茎は未形成と思われる。葉柄は1.5~3cm。葉身は披針形~線形、長さ6~12cm、幅0.7~1.5(~3)cm、膜質、基部の脈は7本、基部は短形~心形またはほぼ切形、先は鋭形。花期は6月。果期は9月。
14-4 Dioscorea japonica var. pilifera C.T.Ting & M.C.Chang
中国(安徽省、福建省、広西チワン族自治区、貴州省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、浙江省)原産。中国名は毛藤日本薯蓣 mao teng ri ben shu yu。標高300~1100mの低木林、混交林の縁、山腹、谷、渓流沿い、道路脇に生える。若いうちは、茎、葉柄、葉身の下面の葉脈、雌花柄の基部にはわずかに軟毛がある。花期は8~9月
15 Dioscorea kaoi T.S.Liu et T.C.Huang ディオスコレア・カオイ
synonym Dioscorea collettii var. hypoglauca (Palibin) C. T. Ting et al. [Flora of China]
中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、河南省、湖北省、湖南省、江西省、浙江省)、台湾原産。中国名は粉背薯蓣 fen bei shu yu。標高200~1300mの混交林、山地斜面に生える。葉身は三角形または卵形、縁は一般に透明。葯隔は短く、開花時の葯の幅の約半分。蒴果は広楕円形、先は丸みを帯びる。花期は5~8月。果期は6~10月。
16 Dioscorea luzonensis Schauer ルゾンヤマノイモ
日本(南西諸島)、フィリピン原産。低および中標高の藪に生育する。食用の塊茎は野生から採取され、地元で利用される。br> 常緑の蔓性多年草。地中に長さ20cmになる塊茎がある。塊茎から1年茎を伸ばし、地面を這いまたは他の植物に絡みつき、棘はない。葉は対生し、葉身は卵形、長さ6~15cm、先は短く尖り、膜質、緑色、乾いても緑色または緑褐色。葉腋に球芽(むかご)がつく。雌雄異株。花序は腋生、多数の花がつく。蒴果は長さ22mm、翼がある。花期は9月またはそれ以前。
17 Dioscorea nipponica Makino ウチワドコロ 団扇野老
日本、朝鮮、中国(安徽省、甘粛省、貴州省、河北省、黒龍江省、河南省、湖北省、江西省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、寧夏回族自治区、青海省、陝西省、山東省、山西省、四川省、浙江省)、ロシア原産。中国名は穿龙薯蓣 chuan long shu yu。標高100~1800mの混交林、低木林、温帯気候の移行地帯に生える。根茎は医薬品産業にとって重要なステロイド原料である。
根茎は水平に伸び、多数枝分かれし、円筒形、太さ1.5cm以上。コルク層は残存するか、容易に分離する。茎は左巻き(twining to left)、乾燥すると緑色または赤褐色、長さ5mまで、無毛になる。葉は互生し、単葉。葉柄は長さ10~20cm。葉身は光沢があり、乾くと黄緑色、広心形~掌状に不等に3~7裂し、形は非常に多様で、長さ7~15cm、幅4~13cm、無毛またはまばらに微剛毛があり(setose)、特に脈に沿ってあり、基部の脈は7本または9本で、最も外側の脈はしばしば二股に分かれ、基部は心形、縁は波打つか顕著に鈍い歯または裂片があり、先は尖鋭形。雄穂状花序は単生、長さ17cmまで。まれに、たまに、側枝を形成するために広がる小集散花序をもつ。雄花は通常は2~4(~7)個の小集散花序または小散形花序につき、花序の先に単生し、無柄または短い小花柄がある。苞は披針形、花被片よりわずかに短い。小苞はほぼ退化している。花被片は皿形、裂片の先は鈍形。雄しべは6本、花被片の中央に挿入され、葯は内側に向く。雌花は 仮雄しべが糸状、柱頭は3裂する。蒴果は成熟すると反り返り、淡褐色で帯紫色の斑点があり、楕円状倒披針形、長さ1.5~2cm、基部は丸く、先端は浅く凹形、翼は幅0.7~0.8cm。種子は蒴果の基部近くに挿入され、稔性は1個だけの場合もあり、全周に翼があるが、蒴果の先端に向かって翼はかなり広くなる。 花期は6~8月。果期は8~10月。
17-1 Dioscorea nipponica subsp. nipponica ウチワドコロ 団扇野老 狭義
synonym Dioscorea acerifolia Uline ex Prain & Burkillsynonym Dioscorea giraldii R.Knuth
synonym Dioscorea nipponica Makino f. jamesii (Prain et Burkill) Kitag. ケナシウチワドコロ
synonym Dioscorea nipponica var. pubescens Nakai日本、朝鮮、中国(安徽省、甘粛省、貴州省、河北省、黒龍江省、河南省、江西省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、寧夏回族自治区、青海省、陝西省、山東省、山西省、四川省、浙江省)、ロシア原産。中国名は穿龙薯蓣 chuan long shu yu。標高100~1700mの混交林、低木林に生える。
根茎はコルク層が容易に剥がれ落ちる。茎は細く、雄花は無柄である。
17-2 Dioscorea nipponica subsp. rosthornii (Diels) C.T.Ting
synonym Dioscorea acerifolia var. rosthornii Dielssynonym Dioscorea nipponica var. rosthornii (Diels) Prain & Burkill
中国(甘粛省、貴州省、湖北省、陝西省)原産。中国名は柴黄姜 chai huang jiang。標高100~1700mの混交林、低木林に生える。根茎はコルク層が宿存する。茎は強健。雄花は小花柄を有する。
18 Dioscorea pentaphylla L. アケビドコロ 木通野老
synonym Dioscorea codonopsidifolia Kamikoti
日本(沖縄)、中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、湖南省、江西省、西蔵、雲南省)、台湾、インド、アッサム、スリランカ、モルディブ、ネパール、ブータン、ミャンマー、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、マレーシア、フィリピン、インドネシア(ボルネオ、ジャワ島、小スンダ列島、スラウェシ島、スマトラ島、マルク諸島)、ニューギニア、オーストラリア(クイーンズランド州)、太平洋諸島(カロリン諸島)、アフリカ原産。中国名は五叶薯蓣 wu ye shu yu。英名はfiveleaf yam。別名はゴヨウドコロ。標高500~1500mの低木林、林縁に生える。
塊茎は不規則で、通常長い卵形。横断面は新鮮なうちは白色で、褐色になる。根は繊維状。茎は左に巻きつき、まばらに毛があり、無毛で、とげがある。球根がある。葉は互生し、掌状に3~7小葉。葉柄は長さ5~11cm、赤褐色の毛が密生する。小葉は卵形~披針形で、長さ6.5~24cm、幅1.5~9cm、表側には無毛、裏側には密着して毛があり、ときに無毛となる。羽状脈があり、基部は±綿毛のある葉柄に減衰し、縁は全縁、先は鋭形。雄花は腋生の円錐花序に最大50cmまでつき、長い側枝を伴うことが多い。軸は褐色の毛がある。雄花は無柄または半無柄。苞葉と小苞節は腎形で、花被を囲む総苞を形成し、まばらに毛があり、先端は尖頭状。雄しべは3本。雌花は単穂または分岐し、褐色で軟毛がある。雌花は苞葉、花被、子房に毛がある。蒴果は成熟すると黒色で、長楕円形、長さ2~2.5cm、薄い革質でまばらに毛がある。翼幅は0.5~0.6cm。種子は蒴果の頂点付近に着生し、翼は蒴果の基部を向く。花期は8~10月。果期は11~2月。
19 Dioscorea polystachya Turcz. ナガイモ 長芋
synonym Dioscorea opposita Thunb., nom. illeg.synonym Dioscorea batatas Decne.
synonym Dioscorea doryphora Hance タカサゴドコロ
日本、朝鮮、中国原産。中国名は薯蓣 shu yu 。英名はChinese yam , Chinese-potato , cinnamon-vine。古い時代に中国から渡来したとも考えられている。
多年草。つる性。根茎は太い円柱状。茎や柄は紫色を帯びることが多い。葉は茎の基部では互生し、上部では対生し、長さ3~7(16) ㎝、幅 2~7(14)㎝、ヒメドコロに似て基部が張り出す。葉柄は2~3㎝。雌雄異株。雄花序は(2)3~5(8)個が集まって直立し、長さ2~5(8)㎝。雄花は外花被片3個に包まれ、ほぼ球形。外花被片は長さ1.3~2㎜、幅0.8~1.2㎜、緑黄色。内花被片はやや小さい。雄しべは6個。花の基部に長さ約1㎜の苞がある。雌花序は1個又は2~3個が集まり垂れ下がり、長さ5㎝以下。果実は幅(1.2)1.7~2㎝、翼の幅は0.7~1.5㎝。ヤマノイモと同じような珠芽(むかご)をつける。花期は7~8月。
品種) 'Rudolph Rhoers' , 'Variegata'
20 Dioscorea pseudojaponica Hayata キールンヤマノイモ
synonym Dioscorea japonica Thunb. var. kelungensis Prain et Burkill
synonym Dioscorea japonica Thunb. var. pseudojaponica (Hayata) Yamam.
synonym Dioscorea japonica Thunb. [GRIN]日本(南西諸島)、台湾、中国原産。中国名は基隆山藥 ji long shan yao , 基隆野山藥 ji long ye shan yao。
葉が対生で葉腋に珠芽を生ずる点はヤマノイモと同じだが、葉の基部の湾入が浅く、側方の耳垂れが開出する点、果実が大きい点等でヤマノイモと区別出来る。
21 Dioscorea quinquelobata Thunb. カエデドコロ 楓野老
synonym Dioscorea quinqueloba Thunb.
日本(中部地方以西、四国、九州、沖縄)、朝鮮原産。山地の林縁に生える。
多年草。つる性。葉は互生し、長さ6~12㎝の卵心形、掌状に5~7分裂し、先は尖り、裂片は丸い。形の変異が多く、分裂しないものも、多数分裂するものもある。葉柄の基部は太くなり、1対の刺(小突起)がつく。雌雄異株。雄花は長い垂れ下がった総状花序に多数つき、花冠は黄色、6裂し、裂片は長さ約1.4㎜、雄しべ6個。雌花は垂れ下がった細い花序にまばらにつき、花が小さく、惰円形の子房がある。果実は垂れ下がった果穂に上向きになり、長さ12~16㎜の楕円形、3枚の翼がある。種子は全周に翼があり、翼の幅は種子の幅程度以下、翼を含めて長さ4.5~5.5㎜、暗褐色~赤褐色。種子の翼が果実の縁までなく、半分程度しかない。2n=20。花期は7~10月。
22 Dioscorea septemloba Thunb. キクバドコロ 菊葉野老
日本(本州、四国、九州)原産。中国名は绵萆 mian bei。別名はモミジドコロ。
多年草。つる性。根茎は太く肥大し、横に這う。茎は無毛、長く伸び、絡み付き、冬に枯れる。葉は互生し、葉柄は長さ約10㎝、基部に突起はない。葉身は長さ12~19㎝、心形、7~9中裂し、頂裂片が大きく、側裂片が不揃いになり、裂片の先は尖鋭形、先端が尖り、上面は無毛、下面の脈上に小突起があるかまたは無毛、乾くと黒褐色になる。雌雄異株。雄花序は複数の穂状。雄花は無柄、花被片は披針形、先は鋭形または鈍形、平開する。雄しべは6本。雌花序は穂状。花被片は長楕円形、長さ約1.5㎜。蒴果は長さ20~22㎜×幅19~27㎜。種子は翼を含めて楕円形~広楕円形、長さ約15㎜、種子体は中央につき、楕円形、長さ約5㎜。 種子は全周に翼があり、類円形。花期は6~7月。
22-1 Dioscorea septemloba Thunb. var. septemloba キクバドコロ
2n=20。22-2 Dioscorea septemloba Thunb. var. platyphylla M.Mizush. ex T.Shimizu コシジドコロ 越路野老
コシジドコロは葉の質が薄く、裂片の数がやや少なく5個で、裂片の切れ込みが浅く、裂片の先端が太め。キクバドコロは葉が7~9中裂する。22-3 Dioscorea septemloba Thunb. var. sititoana (Honda et Jotani) Ohwi シマウチワドコロ 島団扇野老
synonym Dioscorea sititoana Honda et Jotaniキクバドコロによく似ているが、葉が多形で、全体に無毛。果実が大きく、果柄が長い。
塊根は硬く塊状で分岐する。全体に無毛。葉は互生、葉柄は長さ5~18㎝、無毛。葉身は5~7裂、掌状脈9本、長さ7~147㎝×幅5~16㎝、頂裂片は尾状に長くなるが、側裂片と脚部は変化に富む。雄花序は葉腋の総状花序を多数つける。花は直径4㎜。雄花は軸に単生して多数、並び、花被は淡黄色、開出し、花糸は短く太い。雌花序は葉腋に単出し、花は上部のものはほぼ無柄、下部のものは花柄がある。蒴果は倒卵円状楕円形、長さ18~28㎜×幅12~22㎜、わずかに凹頭。種子は翼を含めて長さ15㎜×幅9㎜、種子体は直径約5㎜。花期は6~7月。2n=40。
23 Dioscorea tabatae Hatus. ex Yamashita et M.N.Tamura ユワンオニドコロ 湯湾鬼野老
日本固有種(南西諸島)。鹿児島県、奄美大島、湯湾岳高地に生える。草本植物。茎は右に絡み、無毛。葉は対生し、単葉で無毛。葉柄は長さ2~6.5cm。葉身は長さ4~11cm、幅2~9.5cm、上面は暗緑色、縁は全縁、葉脈は掌状、細脈は網状。小さい葉身は三角状卵形、基部は切形または円形、先は漸尖形、葉脈は7本。大きい葉身は広卵形、基部に裂け目があり、裂片は円形、下方に突出し、基部は広い心形、葉柄の近くで切形、先は尾状、葉脈は9~13本。花(reproductive organs)は不明。
24 Dioscorea tenuipes Franch. et Sav. ヒメドコロ 姫野老
日本(本州の関東地方以西、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国原産。中国名は细柄薯蓣 xi bing shu yu。別名はエドドコロ多年草。つる性。根茎は水平になり、太さ0.6~1.5㎝、節が明瞭で、食べられる。茎は左巻き、無毛、平滑。葉は互生し、葉柄は長さ 3~5㎝、基部に1対の小突起がある。葉身は長さ5~10(13)㎝、幅2.5~7㎝の三角状披針形、先が長く~尾状に尖り、基部は深い心形。雌雄異株。雄花序、雌花序ともに細く、垂れ下がる。雄花序は単一まれに1対、長さ7~18㎝。雄花は単生又は対につき、小花柄は長さ1.5~8㎜。花被は淡黄色、皿形~わずかに反曲し、花被片6個、類倒披針形、先は鈍形~円形。雄しべ6個。葯は外向き。雌花序は長さ8㎝以下、数個の雌花をつける。雌花は糸状の仮雄しべが6個、花被片は6個、平開し、やや反り返る。蒴果は淡黄褐色、光沢があり、長さ2~2.5㎝、幅1.2~1.5㎝の3個の翼がある。種子は楕円形、周囲に翼がある。2n=20, 30, 40。花期は7~8月。
25 Dioscorea tokoro Makino オニドコロ 鬼野老
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国原産。中国名は山萆薢 shan bei xie 。別名はトコロ。
ヤマノイモ属の中で最も多く、里山で普通に見られる。ヤマノイモと違い、根は苦味が強く、アルカロイドを含み食べられない。昔は灰汁で煮て水に晒し、食用としたこともあるという。
多年草。つる性。葉は互生し、長さ5~14㎝、幅も同長からやや狭い程度の円心形~三角状心形で、先が尖る。葉柄は長さ5~12㎝。雌雄異株。花は淡緑色で、垂れ下がった花序に淡緑色の花が多数つく。雄花は直径3.5~4㎜、花被片6個で、雄しべも6個。雌花は咲き始めから大きな子房に翼のような室がある。果実は長さ1.8~2.2㎝、ごく薄い翼のような3室があり、1室に薄い種子が2個ずつ重なって入る。熟すと果実が上下反転し、上部が3裂して種子が風に舞う。種子は薄膜の翼を含めて長さ約10㎜、幅4~5㎜、楕円形、翼は片側だけにつく。2n=20。花期は7~8月。
26 Dioscorea zentaroana Koidz. アマミタチドコロ 奄美立野老
日本固有種(奄美諸島)。奄美大島
ツクシタチドコロDioscorea asclepiadea と同一ともいわれた(参考4)。POWOでは認められている。
多年草、つる性。地下茎は横に這う。茎は円柱形、下部で直立し、上部が蔓状になり、高さ約1mになる、全体に無毛。葉は互生し、長い葉柄があり、葉身は三角状披針形、薄くて硬く、基部は心形、先は漸尖して尖り、長さ8~17cm、幅4~7cm、縁は多少波打つ。。雌雄異株。雄花序は分枝し、多数の花をつける。花被片は6個、黄緑色。雄花は短い柄があり、雄しべは3本、仮雄しべは無い。花期は4~5月。
参考
1) Flora of ChinaDaphniphyllum
Daphniphyllum
Daphniphyllum
伊豆諸島産ヤマノイモ属の一新種
4)植物研究雑誌36(8): 268-270(1961)
琉球列島産ヤマノイモ属数種について
5)Acta Phytotax.Geobot. 59 (1)/ 51-53 (200
A New Species of Dioscorea(Dioscoreaceae) from Japan