ウメ 梅

mark

Flora of Mikawa

バラ科 Rosaceae サクラ属 スモモ亜属

英 名 Chinese plum, Japanese apricot
中国名

梅 mei

学 名 Prunus mume (Siebold) Siebold & Zucc.
 synonym Armeniaca mume (Siebold et Zucc.) de Vriese
ウメの花
ウメの花の裏
ウメの花横
ウメの淡紅色の花
ウメの果実
ウメの葉裏の毛
ウメの幹
ウメの地衣類のついた幹
ウメ
ウメ蕾
ウメ枝
ウメ葉
ウメ葉の鋸歯
花 期 2~3月
高 さ 5~6m
生活型 落葉小高木~高木
生育場所 果樹園、公園、庭
分 布 帰化種 中国中南部、ラオス原産
撮 影 西尾市  12.3.7
全国で果樹として栽培されている。花を観賞するため、庭や公園にもよく植えられ、有名な梅園も多い。梅の木は庭や畑などに多く、植物の観察会でも目にすることが多い。ウメは以前はアンズ属(Armeniaca)とされたが、現在はサクラ属(スモモ属ともいう)のスモモ亜属(subgen. Prunus)、アンズ節(sect. Armeniaca)に分類されている。ウメの栽培の歴史は古く、多数の園芸品種がある。園芸品種についてはウメ(園芸品種)を参照。
 幹は暗灰色で、割れ目が入る。老木は樹幹に地衣類のウメノキゴケがついていることが多く、ヨウラクランクモランが見られることもある。新枝は緑色。葉は互生し、長さ4~9㎝の倒卵形~楕円形、葉先が尖り、縁には細かい鋸歯がある。葉の両面に毛が多く、脈の白毛が目立つ。葉柄は長さ1~2㎝、蜜腺が葉身の基部又は葉柄にある。葉の展開前に開花する。花は普通、白色の5弁花、紅色や淡紅色もある。花弁の先は円形。雌しべ1個。雄しべ多数。萼筒が短く、萼片は反り返らない。花柄はほとんどない。果実は直径2~3㎝の核果。核は扁平な惰円形、表面にしわがあり、小さな穴が多数ある。2n=16 , 24
 アンズ(apricot)Prunus armeniaca L.は、幹が赤褐色、新枝は紫褐色。葉は鈍鋸歯縁。花は淡紅色。萼片が反り返る。花柄はごく短い。
 スモモ(prune, plum)Prunus salicina Lindl.はスモモ節に属し、幹が紫褐色。花が白色。萼片は反り返らず、平開する。花柄は長さ約1.5㎝。
 モモ Prunus persica (L.) Batsch はモモ節に属し、幹が暗紫褐色、サクラのような横長の皮目がある。花は淡紅色、白色や紅色もある。萼片は反り返らない。花柄はほとんどない。
 ヤマザクラなどのサクラ亜属は花弁の先が凹み、花柄が長く、萼片が反り返らない。核の表面に溝がない。
 カラミザクラ もサクラ亜属である。別名シナノミザクラといい、暖地桜桃ともよばれ、1本の木で結実する。花が3月に咲き、果実がやや大きい。
 日本のサクランボはサクラ亜属のセイヨウミザクラ Prunus avium (L.) L.であり、西アジア原産。日本には明治時代に渡来したといわれている。花弁の先は凹まず、萼片が反り返り、花柄が長い。

ウメの歴史

 梅(うめ)は栽培起源がわからないほど、古くから親しまれてきた花木である。日本の文献では飛鳥時代の慶雲2年(705)没の葛野王の「懐風藻」所収の誌文に初出する。日本では弥生時代前期の古墳から梅の遺物が発見されている。弥生時代前期は紀元前11世紀~4世紀(約2300(約2900~紀元前200年頃という説もある)といわれている。この時代に稲は中国から日本に渡来したとされている。それ以前の遺跡から梅は発見されていないため、この時代に梅が日本へ渡来したとするのが通説である。ただし、台湾、大分県、宮城県の一部の山間に野性の梅がみられ、これを自生とする説もある。Flora of Chinaでは中国で広く栽培されている栽培種を Armeniaca mume var. mume とし、中国ではこの野生種は確認されていないが、日本、朝鮮、台湾には野生種があると解説している。中国の自生種は別の3変種である。
 中国では殷(縄文時代晩期) の遺跡から梅の核が発見され、梅の栽培は3000年以上の歴史があると推定されている。ウメの原産地ははっきりしないが、Kewscienceでは中国中南部、ラオスとしている。

ウメの分類

 ウメの分類は現在では属を広義のサクラ属(ウワミズザクラ亜属、サクラ亜属、スモモ亜属)とし、その中のスモモ亜属中のアンズ節とする説である。過去にはアンズとウメを含むアンズ属 Armeniaca とする説があった。

サクラ亜属を含む広義のサクラ属 genus Prunus

 被子植物(Angiosperm)-真正双子葉類(Eudicots)-コア真正双子葉類(Core eudicots)-バラ上群(Superrosids)-バラ類(Rosid)-窒素固定クレード(nitrogen-fixing clade)-バラ目(Rosales)-バラ科(Rosaceae)-サクラ亜科 A(Amygdaloideae =スモモ亜科Prunoideae)-サクラ連 Amy(tribe Amygdaleae)-サクラ属(genus Prunus)
 低木または高木、ときにクローン性の茂みを形成し、直径0.1~4mになり、無毛または毛がある。茎は1~20+本。樹皮は帯赤色、赤褐色、灰褐色、または暗灰色。普通、長いシュートと短いシュートが存在し、刺は有または無。葉は落葉性または宿存性、茎葉。托葉は早落性、線形~披針形、縁は鋸歯状から裂片状、普通、腺がある。葉柄は有または無、普通、葉身近くに腺体がある。葉身は楕円形、長円形、ほぼ円形、卵形、披針形、線形、倒卵形、倒披針形、へら形、扇形または菱形、中肋に沿って折り畳まれることはめったになく、長さ0.5~18㎝、膜質~革質、縁は平ら、普通、全縁または歯があり、ときに波打ち、歯は普通、腺があり、ときに腺が無い。花序は短いシュートの上または前年の葉に腋生し、花が1~64(~90)[~100]個つき、総状花序、散房花序、散形状に束生し、花は2個束生または単生。苞はときに有り、小苞がある。小花柄は普通あるが、ときに欠く。花は普通、両性、ときに単性(その後、普通、雌雄異株、ときに雌雄混株(andropolygamous)、花は葉の展開前または展開と同時に咲き、直径4~40mm。花托筒は長さ1.5~8㎜、外面は無毛または有毛。萼片は5個、直立~後屈し、普通は三角形、半円形、卵形、または長円形、まれに卵状楕円形、披針形、または倒卵形。花弁は5個(観賞用の重弁花では~50+個)、通常は白色~ピンク色または暗ピンク色、ときに帯黄色、普通、ほぼ円形~楕円形または倒卵形、ときに長円形、まれに卵形、倒披針形、または菱形、基部には普通、爪部がある。雄しべは10~3本、普通は花弁と同長またはそれより短く、ときに長くなる。核果は1個、緑黄色~帯黄色、またはオレンジ色~明るい赤色~暗赤色、赤褐色、または暗紫色~黒色、球形~卵形~卵状長円形~楕円形、または倒卵形、長さ5~30(~80)㎜。花托筒は脱落性、まれに果時に宿存する。萼片は花托筒と一緒にで落ちる。中果皮は普通、肉質、ときに革質~乾燥し、まれに縫合糸に沿って裂け、核(石)が現れる。内果皮は球形~卵形または楕円形~紡錘形の核(石)を形成し、ときに側部が平らになる。種子は1個。x=8。(FNA)
 世界に約340種あり、汎存種(cosmopolitan)。

広義のサクラ属 genus Prunusの下位分類 [Shi etc.(2013)]

 ウワミズザクラ亜属(subgen. Padus)、サクラ亜属(subgen. Cerasus)、スモモ亜属(subgen. Prunus)の3亜属に分類される。

Prunus subgen. Padus(ウワミズザクラ亜属)

 花序は総状花序。単系統群では無い(参考10)。 Prunus mahalebとPrunus maackii(ウラボシザクラ)はsubgen. Cerasusに移動された。
(1) Laurocerasus(旧バクチノキ亜属)英名はcherry laurels:タイプ種はセイヨウバクチノキ(Prunus laurocerasus)
 ほとんどが常緑(他の亜属は落葉)
 腋芽は単生。花期は早春。小花柄は短い。花は総状花序につき、葉のある新芽にはつかない。核果に溝がない。核は平滑。
 Prunus amplifolia - Prunus brittoniana - Prunus caroliniana - Prunus ilicifolia(holyleaf cherry) - Prunus integrifolia - Prunus javanica - Prunus laurocerasus(セイヨウバクチノキ:cherry laurels) - Prunus lusitanica - Prunus myrtifolia - Prunus oblonga - Prunus occidentalis - Prunus oleifolia - Prunus phaeosticta(クロボシザクラ) - Prunus reflexa - Prunus spinulosa(リンボク) - Prunus tucumanensis - Prunus undulata - Prunus zippeliana(バクチノキ)
(2) Maddenia(旧マッデニア属)
 冬芽は大きい長円形~卵形、数個の鱗片がある。花期は春~晩春。花序は総状花序。小花柄は短い。核果は長円形、平滑。核は骨質、卵形、3角(かど)があり、先は鋭形。
 Prunus fujianensis - Prunus himalayana (Himalayan false bird cherry) – Prunus hypoleuca (false bird cherry) - Prunus hypoxantha(Sichuan false bird cherry) - Prunus incisoserrata)
(3) Padus(旧ウワミズザクラ亜属)英名はbird cherries:タイプ種はエゾノウワミズザクラ(Prunus padus)
 腋芽は単生。花期は晩春。小花柄は短い。花は総状花序につき、葉の多い新芽につく。核果に溝がない。核は平滑。
 Prunus brachypoda – Prunus brunnescens – Prunus buergeriana(イヌザクラ) – Prunus cornuta(Himalayan bird cherry) ‐ Prunus grayana(ウワミズザクラ) – Prunus gyirongensis(entire-leaved bird cherry) - prunus maackii(ウラボシザクラ amur chokecherry) - Prunus napaulensis(Nepalese bird cherry) - Padus nakatakei(モロツカウワミズザクラ) - Prunus obtusata(シマウワミズザクラ) - Prunus padus(エゾノウワミズザクラ bird cherries) – Prunus perulata – Prunus serotina(black cherry) – Prunus ssiori(シウリザクラ) – Prunus stellipila – Prunus velutina – Prunus virginiana(chokecherry) – Prunus wilsonii(Wilson's bird cherry) (4) Pygeum(旧ピジウム亜属)
 常緑。花序は総状花序。
 Prunus africana(African cherry) - Prunus arborea - Prunus ceylanica - Prunus costata - Prunus crassifolia - Prunus dolichobotrys - Prunus gazelle-peninsulae - Prunus grisea - Prunus lancilimba - Prunus malayana - Prunus marsupialis - Prunus oligantha - Prunus oocarpa - Prunus polystachya - Prunus pullei - Prunus schlechteri - Prunus turneriana - Prunus wallaceana

Prunus subgen. Cerasus(サクラ亜属)

 英名はtrue cherries;タイプ種はスミミザクラ(Prunus cerasus)
 腋芽は単生。花期は早春。小花柄は長い。花は散房花序につき、葉のある新芽にはつかない。核果は溝がない。核は平滑。
 Cerasus 亜属は真のサクランボ(true cherries)のみで構成されている。Microcerasus ユスラウメ節(dwarf cherries) はこの亜属に属さない。真のサクランボは、各葉腋に芽を1個だけ付けるが、Microcerasus(dwarf cherries) は、各葉腋に3個の芽を付ける (モモとアーモンドで観察される特性状態)。北アメリカのdwarf cherriesは、真のサクランボよりもプラムに似ていることが知られていた (Catling et al. 1999)。dwarf cherriesをプラム、アプリコット、さらにはモモと交配させる方が、真のサクランボと交配するよりも簡単である (Garley 1980; Kataoka et al. 1988)。dwarf cherriesは、果物の種類がプラムに似ています。dwarf cherriesを真のサクランボと一緒に系統配置することを支持する確固たる証拠はこれまでのところ見つかっていない。分子解析データは、P. mahaleb L. と P. maackii Rupr がCerasus 亜属の構成員であることをサポートしている。これらの2種は、散房花序が長いため、Padus 亜属のメンバーとして扱われた。 Prunus mahaleb は真のサクランボに似ていると報告されており (Krüssmann 1986)、亜属 Cerasus のほとんどの種と同様に2倍体であり (González Zapatero et al. 1988)、一方、調査された亜属 Padus の種はすべて4倍体である (Goldblatt and Johnson)。 1979–2012)。 P. maackii とサクランボの類似性は形態学によって裏付けられており (Li and Jiang 1998)、この種は Cerasus 亜属の種である Prunus maximo wiczii Rupr. と自然交雑種を形成できることが報告されている。亜属 Cerasus における種の相違は、重要ではないように思われる。これは、跳躍的種分化(quantum speciation)またはマーカーの低解像度が原因である可能性がある。種間交雑 (Ohta et al. 2007) は、この亜属の分類を複雑にしている。亜属はこの研究では十分に示されていなかったため、近い将来、亜属内の系統関係を解決するために、より広範な種のサンプリングとより多くの様々な遺伝子が使用されると期待される(参考11)。

Prunus subgen. Prunus(スモモ亜属) [Shi etc.(2013).]

(1) sect. Prunus(スモモ節)[旧スモモ亜属]: Old World plums:タイプ種はセイヨウスモモ( P. domestica)
 腋芽は単生。花期は早春。小花柄がある。花は葉のある新芽(シュート)にはつかない。核果は片側に溝がある。核は粗い。
約40種。
 P. blireiana – P. bokhariensis – P. cerasifera(ベニバスモモ=ミロバランスモモ) – P. cocomilia – P. consociiflora – P. domestica(セイヨウスモモ) – P. fruticans – P. ramburii – P. salicina(スモモ) – P. simonii(サイモンスモモ) – P. spinosa(スピノサスモモ) – P. ursina – P. ussuriensis(マンシュウスモモ) – P. vachuschtii
(2) sect. Prunocerasus(アメリカンプラム節)[旧スモモ亜属]: New World plums
 旧スモモ亜属の北アメリカ産種。
  P. alleghaniensis – P. americana(アメリカスモモ) – P. angustifolia – P. geniculata – P. gracilis – P. hortulana – P. maritima – P. mexicana – P. munsoniana – P. murrayana – P. nigra – P. orthosepala – P. rivularis – P. subcordata – P. umbellata
(3) sect. Armeniaca(アンズ節)[旧スモモ亜属]英名はapricots:タイプ種はアンズ(P. armeniaca)11種
 腋生の冬芽は単生。頂生の冬芽はない。小花柄は無いかまたは極短く、まれに長い。花は1~3個、葉のある新芽(シュート)にはつかない。核果は片側に溝がある。核は平滑、ザラつき、網目があり、または稀に穴がある。
 P. armeniaca(アンズ apricot) – P. brigantina(Alpine apricot) – P. × dasycarpa(紫杏 zi xing) - P. mandshurica(マンシュウアンズ) – P. mume(ウメ) – P. sibirica(モウコアンズ)
(4) sect. Microcerasus(ユスラウメ節)旧オウトウ亜属: bush cherries 22種
 サクラ亜属から移動された。
 P. alaica – P. albicaulis – P. bifrons – P. brachypetala – P. chorossanica - P. dictyoneura – P. erythrocarpa – P. erzincanica – P. glandulosa(ニワザクラ) – P. griffithii – P. griffithii var. tianshanica - P. hippophaeoides – P. humilis(コニワザクラ) – P. incana – P. jacquemontii – P. japonica(ニワウメ) – P. microcarpa – P. pogonostyla(タカサゴニワウメ) – P. pojarkovii(unplaced name, イラン、トルクメニスタン原産) – P. prostrata – P. pseudoprostrata – P. susquehanae – P. tomentosa(ユスラウメ) – P. verrucosa – P. yazdiana
(5) sect. Amygdalus(アーモンド節): almonds 26種
 P. amygdalus(ヘントウ=アーモンド) – P. arabica(Arabian wild almond) – P. argentea – P. brahuica – P. bucharica – P. carduchorum – P. cercocarpifolia – P. eburnea – P. elaeagrifolia – P. eremophila – P. erioclada – P. fenzliana – P. haussknechtii – P. kansuensis – P. korshinskyi – P. kotschyi – P. kuramica – P. lycioides – P. minutiflora – P. mongolica – P. sibirica – P. scoparia – P. spinosissima – P. trichamygdalus – P. turcomanica – P. webbii(syn. Amygdalus delipavlovii)
(6) sect. Persica(モモ節): peaches 6種
 P. davidiana(サントウ=ノモモ) – P. kansuensis – P. mira – P. mongolica – P. persica(モモ) – P. tangutica
 ※Sect. AmygdalusとP. sect. PersicaはときにPrunus subg. Amygdalus (モモ亜属)とされ、境界が明確でなく、P. spinosissima (とげのあるアーモンド) ,P. kansuensisや P. × hybrida(syn. P. persicoides=P. amygdalus × P. persica.) は両節に属す。このためsect. Amygdalus & sect. Persicaとすることもある。
(5&6) sect. Amygdalus(アーモンド節) & sect. Persica(モモ節)[旧モモ亜属 genus Amygdalus];タイプ種はアーモンド(P. amygdalus)
 腋芽は3個(中央に栄養芽、側部に 2個の花芽)。花期は早春。小花柄は無またはほぼ無。花は葉のある新芽にはつかない。核果は片側に溝がある。核は深い溝がある。
 P. amygdalus(アーモンド)、P. persica(モモ)、P. persica var. nectarina(ネクタリン)など
(7) sect. Emplectocladus(エムプレクトクラドゥス節): desert almonds
 アメリカ大陸に分布し、6種が含まれる。sect. Amygdalusに密接に関係する。
 P. cercocarpifolia – P. fasciculata(desert almond) – P. eremophila(Mojave Desert almond) – P. havardii(Havard's wild almond) – P. microphylla ( Mexican wild almond)– P. minutiflora(Texas wild almond)
 以下はまだ、不確定の節。
(8) sect. Chamaeamygdalus(シャマエアマイグダルス節)
 Prunus sect. Chamaeamygdalus Spach は、以前は Amygdalus-Persica クレードに含まれていたが、分子系統学的研究により、 Amygdalus-Persica クレードから除外されるべきであることが示された。この節における種の系統学的位置はまだ不明である。
 P. tenella(Russian almond) – P. petunnikowii
(9) sect. Louiseania(ルイゼアニア節)
 Prunus sect. Louiseania (Carrière) Yazbekにはアジアの2~3種が含まれる。flowering almondと呼ばれるが、アンズ節やユスラウメ節とより密接に関係する。
 P. pedunculata - P. triloba(オヒョウモモ) - Prunus ulmifolia(本種がこの節に属するかどうか、分子研究では未確認)
(10) sect. Penarmeniaca(ペナルメニアカ節)[旧バクチノキ亜属の一部]:タイプ種: Prunus pumila (sand cherry)
 北アメリカに分布する。ペナルメニアカ節はアメリカ大陸のプラムであり、P. texana(アメリカンプラム節) および旧世界種である P. tenella(sect. Chamaeamygdalus) の姉妹グループである。
 腋芽は3個。花期は早春。小花柄は長い。花は散房花序につき、葉のある新芽にはつかない。核果に溝がない。核は平滑。
 P. andersonii(desert peach) – P. fremontii(desert apricot) – P. pumila(dwarf cherry ,sand cherry)

スモモ亜属 Prunus subgenus Prunus

 現在のスモモ亜属は旧の狭義のスモモ亜属(現在のスモモ節およびアメリカンプラム節)を広げ、スモモ節(sect. Prunus)、アメリカンプラム節(sect. Prunocerasus)、アンズ節(sect. Armeniaca)、ユスラウメ節(sect. Microcerasus)、アーモンド節(sect. Amygdalus)、モモ節(sect. Persica)、エムプレクトクラドゥス節(sect. Emplectocladus)の7節、および、まだ、不確定の3節、シャマエアマイグダルス節(sect. Chamaeamygdalus)、ルイゼアニア節(sect. Louiseania)、ペナルメニアカ節(sect. Penarmeniaca)を含むものである。

アンズ節 sect. Armeniaca(旧アンズ属)

 family Rosaceae - subfamily Amygdaloideae - tribe Amygdaleae - genus Prunus(サクラ属) - subgen. Prunus(スモモ亜属) - sect. Armeniaca(アンズ節)

 高木まれに低木、落葉。枝は刺がなくまれに刺がある。冬芽は腋生、単生、頂部に冬芽はできない。托葉は無。葉は単葉、互生、若いときに巻き込む。葉柄に普通、2個の蜜腺がある。葉縁は単鋸歯又は重鋸歯。花序は明瞭な腋生、花が1~3個つく。花は両性、正常、単性又は3個束生、葉の展開前に又はまれに葉と一緒に開花する。花柄はほとんど無いか非常に短く、まれに長いものもある。花床筒は果時には早落する。萼片は5個、覆瓦状。花弁5個、花床筒の口部につき、覆瓦状。雄しべは15~45個、子房周位。花糸は離生、糸状。心皮は1(又は2)個。子房は上位、有毛、1室。胚珠は2個、並列、下垂。花糸は頂生、長い。果実は核果、側面が圧縮、有毛まれに無毛、縦に明瞭な溝がある。中果皮は多肉質又は肉質、熟しても割れず、まれに乾き、熟すと割れる。内果皮は堅く、2バルブ、両側から圧縮され、表面は平滑、凸凹、網状、まれに小穴があり、中果皮から離れ又はつく。種子は苦い又は甘い。
 アジア東部~南西に約11種分布する。

 中国語では梅(mei)、果実は梅子(meizi)という。梅の木は普通、寿命が長く、古木が中国中で見かけられる。黄梅県にある黄梅(Huangmei(Yellow Mei))は金朝時代からの樹齢1600年の古木で、今でも花が咲く。殷(紀元前14~12世紀)の遺跡からウメの核が発掘され、栽培の歴史は3000年以上前からと推定されている。Flora of China ではウメを Armeniaca mume (Siebold et Zucc.)とし中国で広く栽培されている栽培種をvar. mumeとしている。これが日本、朝鮮、台湾のものと同じであり、中国では野生種は確認されていない。現在では中国自生種のvar. pubicaulinaがvar. mumeのsynonymとされ、Prunus mume var. mumeが中国原産で、日本、朝鮮、中国で栽培されている梅の原種とされている。
1 Prunus mume (Siebold) Siebold & Zucc. ウメ 梅
  synonym Armeniaca mume (Siebold et Zucc.) de Vriese
 中国、ラオス原産。中国名は梅 mei。英名はJapanese apricot , Chinese plum。斜面の林、まばらな林内、小川の側、小道に沿った斜面、山地に生え、広く栽培されている。Flora of Chinaでは日本、朝鮮、中国、ラオス、ベトナム原産としている。
 高木まれに低木、高さ4~10 m。樹皮は灰白色~緑色を帯び、平滑[幹は暗灰色で、古くなると割れ目が入る。]。1年目の小枝は緑色、平滑、無毛または密に灰白軟毛がある(incanous)。冬芽は紫褐色、卵形、長さ3~6㎜、無毛、先は鋭形。葉は互生、葉柄は長さ1~2㎝、若いときには密に灰白軟毛または軟毛があり、しばしば蜜腺がある。葉身は卵形、卵状楕円形、楕円形、倒卵形、または倒卵状倒披針形、長さ4~8㎝×幅2.5~5㎝、灰色、若いときは両面とも軟毛があり、古くなると次第に無毛になるか、または下面の脈腋だけに軟毛があり、基部は広くさび形~円形、縁は普通、鋭鋸歯があり、先は尾状。花は単生または2個束生し、葉の展開前に開花し、直径2~2.5㎝、強い芳香がある。小花柄は長さ1~10㎜、無毛。花托筒(萼筒)は普通、赤褐色だが、一部の栽培品種では緑色~緑紫色であり、広鐘形、短く、長さ2.5~4㎜、外側は無毛またはときに有毛。萼片は卵形~ほぼ円形、長さ3~5mm、先は鈍形、反り返らない。花弁は普通、5弁、白色またはピンク色、紅色や淡紅色もあり、倒卵形、長さ0.9~1.4㎝×幅0.8~1.2㎝、先は円形。雌しべは1本。雄しべは多数、花弁より短いかまたは少し長い。子房には密に軟毛がある。花柱は雄しべより短いかまたは少し長い。核果は黄色~緑白色、ほぼ球形、直径2~3㎝、毛がある。中果皮は酸っぱく、内果皮に付着する。内果皮(核)は楕円形~ほぼ球形、両側部がわずかに扁平、腹側の縫合線はやや鈍く、腹側と背側に縦方向の溝が明瞭にあり、表面には窪み(小さな穴)があり、基部はくさび形~鈍形~円形、先は鈍形で急に微突形になる。花期は冬~春。果期は5~6月(中国北部では7月~8月)。[Flora of China]。ウメの園芸品種は多数ある。
 Flora of Chinaでは4変種に分類されているが、Kewscienceではvar. pubicaulinaはvar. mumeのsynonymとされている。
1-1 Prunus mume var. mume ウメ 梅
  synonym Armeniaca mume f. pendula (Siebold) H.Ohba & S.Akiyama,
  synonym Armeniaca mume var. pubicaulina C.Z.Qiao & H.M.Shen 毛茎梅 mao jing mei 中国自生種
  synonym Prunus makinoensis H.Lév
  synonym Prunus mume var. pendula Siebold,
 中国中南部原産。中国名は梅 mei。日本、朝鮮、中国、新疆ウイグル、満州、台湾、チベットに帰化。Flora of Chinaでは野生種が確認されず、日本、朝鮮の原産としていた。現在はvar. pubicaulinaが中国自生種であり、synonymとされている。
 葉身は卵形~披針形[倒卵形~楕円形]、薄い。花柄は長さ1~3㎜。内果皮(核)は楕円形、基部が楔形。2n=16。
※ 毛茎梅(mao jing mei) var. pubicaulinaは海抜約2500mの山中 W Yunnan (Yunlong Xian)に自生し、小枝や葉柄に灰白軟毛を密生する。
1-2 Prunus mume var. cernua Franch.
  synonym Armeniaca mume var. cernua (Franch.) T.T.Yu & L.T.Lu,
 中国中南部、ラオス、ベトナム原産。中国名は长梗梅 chang geng mei。雲南省の海抜1900~2600mの山道や川沿いの斜面、疎林に生える。  葉身は倒卵形~倒卵状倒披針形。花柄は1㎝以下(普通0.5㎝を越えない)。
1-3 Prunus mume var. pallescens Franch.
  synonym Armeniaca mume var. pallescens (Franch.) T.T.Yu & L.T.Lu,
 中国中南部原産。中国名は厚叶梅 hou ye me。四川省、雲南省の海抜1700~3100mの森林の斜面、河畔に生える。
 葉身は卵形~卵状楕円形、厚い、類革質。花柄は長さ5㎜を越えない。内果皮は類球形、基部は鈍形~円形。

参考

1) FNA - Flora of North America
  Prunus  
http://beta.floranorthamerica.org/Prunus
2) Flora of China
 Prunus  
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=126865
3) Plants of the World Online | Kew Science
  Prunus L.  
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30003057-2
4) World Flora Online
  Prunus  
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000031284
5)GRIN
 sect. Prunus  
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?type=section&id=20147
6)恵泉果物の文化史(8)
 小林 幹夫 ウメ  
https://www.bing.com/search?q=Prunus+mume+Sieb.et+Zucchttps%3A%2F%2Fkeisen.repo.nii.ac.jp&cvid=d128c68af0f5420e92800956259b55e2&aqs=edge..69i57.10921j0j4&FORM=ANAB01&PC=U531
7) Journal of Integrative Plant Biology 2013 55(11) 1069-1079
 Shou Shi etc. : Phylogeny and Classification of Prunus sensu lato (Rosaceae)
https://www.researchgate.net/publication/255954651_Phylogeny_and_Classification_of_Prunus_sensu_lato_Rosaceae