キク 菊

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Flora of Mikawa

キク科 Asteraceae  キク属

別 名 イエギク(家菊)
中国名 菊花 ju hua
英 名 florist's chrysanthemum , mum , florist's daisy
学 名 Chrysanthemum × morifolium Ramat.
 synonym Chrysanthemum × grandiflorum Kitam
キク花
キク総苞
キク雌しべ
キク雄しべ
キク花ースプーン咲き
キク葉裏の毛と腺点
キク茎
キク茎2
キク
ノキク舌状花、筒状花
キク葉表
キク葉裏
キク花2
キク花3
花 期 (5~)10~11(12)月
高 さ 20~100㎝
生活型 多年草
生育場所 栽培種
分 布 帰化種  中国原産
撮 影 幸田町  09.10.22
日本に自生するキク属は多く、ノジギク、リュウノウギク、キクタニギク、シマカンギクなどがある。また、ノコンギクなどシオン属のものもノギクなどと呼ばれている。一方、栽培されるキクはイエギクとともいわれ、奈良時代頃に中国から日本に渡来し、観賞用に日本で広く栽培され、江戸時代に多くの品種が作り出された。菊は原種が不明の中国原産の非常に多くのハイブリッドの複合体であり、多世紀を超えて発展したものであり、中国では1630年に500種以上の栽培種が確認され、日本では1700年代の初めに500種近くの品種があった。今日では世界で約2万種の栽培品種があるといわれている。初期の親種はシマカンギク Chrysanthemum indicumであるが、他の血統は、今ではあいまいである。最近の丈夫な系統はチョウセンノギク(Korean chrysanthemums)のC. zawadskiiを含む系統である。この複合体は C. grandiflorum とされたが、有効とはされず、最も一般的な学名はC. morifolium Ramatuelleである。しかし、これは不正確であり、確立されたものではなく、この複合体の最も満足出来る学名を確立するために、さらに研究が必要であるとされている。いずれにしろ、重要な園芸植物であるため、多数のsynonymがある。
 キク属の特徴は①総苞片が乾膜質、②花柱の先が切形、③冠毛が無い、などである。茎にも白毛が多い。葉の裏には丁字状毛(両端が尖り、中間に着点がある伏毛)又は毛(普通の底着毛)が密生し、腺点が多い。葉表にも腺点がある。筒状花の花冠に腺点がある。
 シマカンギク Chrysanthemum indicum は本州(近畿地方以南)、九州、朝鮮、中国、台湾、ロシア、インド、ブータンに分布する。中国では野菊、台湾では油菊といわれる。多年草、高さ0.25~1m、根茎は長く又は短く、平伏する。茎は直立又は広がり、分枝し、まばらに軟毛がある。下部の葉は花時に枯れる。中間の茎葉は葉柄が長さ1~2㎝。葉身は卵形~長い卵形~楕円状卵形、長さ3~7(~10)㎝×幅2~4(~7)㎝、両面とも淡緑色又はオリーブ色、まばらに毛があり又は下面はより少なく、羽状中裂~羽状浅裂~不明瞭に分裂し、基部は切形~やや心形~広楔形。複合花序は緩い、頂生の、頭部が平らな集散花序。頭花は多数又は少数。総苞片は5列、縁が広く薄膜質、白色又は褐色、先は鈍形又は円形、外総苞片は卵形又は卵状三角形、長さ2.5~3㎜。中間の総苞片は卵形、長さ6~8㎜。内総苞片は楕円形、長さ約1.1㎝。周辺小花の花弁は黄色、長さ1~1.3㎝、咲きは全縁又は3歯。痩果は長さ1.5~1.8㎝。花期および果期は6~11月。2n=18, 35-38, 36, 40, 54。

キク属

  family: Asteraceae - genus Chrysanthemum

 亜低木又は多年草。毛は無いか又は底着毛又は丁字毛(中着毛)。葉は互生、羽状又は掌状分裂、鋸歯縁又はまれに全縁。合成花序は緩い不規則な頂生する集散花序、しばしば1個の頭状花序になる。頭状花序は異性花をもち、放射状、緩い散房花序又は単生。総苞は杯形、まれに鐘形。総苞片は4又は5列、 薄膜状の縁は白色~褐色~暗褐色、外総苞片と中間の総苞片は草質、羽状浅裂又は 羽状中裂。花托は凸状~円錐形、パレアが無い。周辺小花は雌性、1列又は多列(栽培種)。小舌は黄色、白色、又は赤色。中心小花は多数、両性、稔性、花冠は黄色、筒形、5裂。葯は基部が鈍形、先の付属体は披針状卵形又は狭楕円形。痩果は類円柱形又は倒卵形、かすかに5~8うねがある。冠毛は無い。
 世界に37種があり、ほとんどがアジアの温帯域に分布する。

キク属 の主な種と園芸品種

1 Chrysanthemum arcticum L. アキノコハマギク 秋の小浜菊 広義

  synonym Arctanthemum arcticum (Linnaeus) Tzvelev  [Flora of North America]

  Fllora of ChinaではChrysanthemumとしているが、Arctanthemum属ともされる。
 日本、中国、ロシア、北アメリカ原産。中国名は北极菊 bei ji ju。石や砂地、砂利床、海岸沿いの草地に生える。
 多年草、高さ10~30㎝、太く、多肉質、忍び寄る根茎。 茎は直立またはほぼ直立、単生または少数、単生または少数の側枝があり、無毛またはクモ形の毛があり、無毛。 基部と下部の茎には多くの葉があります。 葉柄が長く、太い。 葉身は長楕円形~準球形、長さ9~12㎝×幅3~4㎝、両面無毛~亜無毛、掌状~羽状3~7裂、通常半分以下に分かれ、基部は広く楔形、縁は全体に粗い鋸歯。 先端の茎葉は線形合成花序は頭花が1~5個つく。花序柄は長い。総苞は長さ1.2~2.2㎝×幅0.4~0.7㎝。総苞片は外面が無毛またはまばらに基部にくも毛があり、薄膜市津の縁は広く、黒褐色または帯褐色。周辺小花は小舌が白色、長さ10~22㎜×幅3~5㎜。中心小花は長さ2.3~3mm。痩果は長さ1.8~2.6㎜×幅約0.5㎜(Flora of China)。

1-1 Chrysanthemum arcticum L. subsp. arcticum アキノコハマギク 秋の小浜菊 狭義

  synonym Arctanthemum arcticum (Linnaeus) Tzvelev subsp. arcticum
  synonym Chrysanthemum sibiricum Turcz. ex Skofitz in Oesterr. Bot. Z. 9: 239 (1859)
  synonym Chrysanthemum sibiricum (DC.) Fisch. ex Kom.
  synonym Leucanthemum sibiricum DC. in Prodr. 6: 46 (1838)
  synonym Leucanthemum sibiricum var. acutilobum DC.
 日本、ロシア、アラスカ原産。英名はarctic daisy。粘土、砂、砂利または岩の上の開けた、沿岸の湿った汽水生息地、干潟、汽水沿岸の牧草地、沿岸の草地またはヒースのツンドラ、湿地帯、沿岸の岩、氾濫原、および小川の河口に生える。
 高さ10~40㎝ (果時にはそれ以上)。茎はときに枝分かれする。葉は根生葉と茎葉 (茎葉は中間を越え、規則的に分布)。根生葉および下部の茎葉は葉柄が長さ15~95㎜、葉身は扇形~楔形またはへら形、長さ15~50mm×幅4~35mm、3~5(~7)裂する。茎葉は葉柄が長さ0~55mm、葉身は長さ6~35㎜×幅4~28 mm。頭花は1~2(~3)個つき、直径19~29mm、(平らになった、周辺小花を除く)。花序柄につく苞は長さ9~19㎜×幅1~2㎜。周辺小花の小舌は長さ(15~)17~25(~31)㎜×幅(3.2~)3.4~5.5(~8.2)㎜、脈は(5~)8~10(~12)本。花期は夏(Flora of North America)。

1-2 Chrysanthemum arcticum subsp. maekawanum Kitam. コハマギク 小浜菊

  synonym Chrysanthemum yezoense Maek.
 北海道・本州(関東地方北部以北の太平洋側、青森県)、北半球(寒帯)原産。 海岸に生える。
 多年草、高さ10~50㎝。長い地下茎が這う。茎は上部が紫色を帯び、軟毛がある。葉は5裂し、やや肉質でほぼ無毛、腺点がある。頭花は枝先に単生、頂生し、直径約5cm。周辺小花は白色の舌状花、日がたつにつれ、紅紫色になる。2n=90。
 コハマギクはチシマコハマギクに類似であるが、総苞外片が線形で、内片が広楕円形である。チシマコハマギクは総苞外片は、より広く、狭長楕円形、内片は楕円形である。コハマギクの下葉は掌状に5中裂し、あまり変異はないが、チシマコハマギクの下葉は多くは3中裂するが、裂れ方に変異が多い。コハマギクは9~10月に開花するが、チシマコハマギクは7~9月に開花する(参考9)。
品種) 'Roseum'
1-3 Chrysanthemum arcticum subsp. polare Hulten

  synonym Arctanthemum arcticum (Linnaeus) Tzvelev subsp. polare (Hulten) Tzvelev

 カナダ、北極ロシア、アラスカ原産。英名はPolar daisy。粘土、砂、砂利または岩の上の開けた、沿岸の湿った汽水生息地、干潟、汽水沿岸の牧草地、沿岸の草地またはヒースのツンドラ、湿地帯、沿岸の岩、氾濫原、および小川の河口に生える。
 高さ(2.5~)5~20(~26) cm (果時にはそれ以上)。茎は枝分かれしない。葉はほとんどが根生する(茎葉は中間で最大)。根生葉と下部の葉は葉柄が長さ4~50㎜、葉身は楔形~へら形、長さ6~30㎜×幅4~16㎜、ほとんどが0~3裂する。茎葉は葉柄が無または長さ10~25㎜、葉身は長さ4~23㎜×幅1~8㎜。頭花は1(~2)個、直径13~20㎜。(平らになり、周辺小花を除く)。花序柄の苞は長さ6~12㎜×幅1㎜。周辺小花は小舌が長さ(7~)9~18(~21)㎜×幅(1.5~)1.8~4.3㎜、脈は4~5(~12)本。2n=18。花期は夏。

1-4 Chrysanthemum arcticum L. subsp. yezoense (Maek.) H.Ohashi et Yonek. チシマコハマギク 千島小浜菊

  synonym Chrysanthemum arcticum L. var. yezoense Maek.
 北海道(根室半島、知床半島)、千島列島に分布。海岸の崖地に生える。コハマギクに似るが明瞭に異なる。
 多年草、高さ10~30㎝。芳香が無い(コハマギグには強い香気がある)。花茎の太さや茎基部の葉に違いが見られ、チシマコハマギクの花茎は明らかにコハマギクより太い。また、チシマコハマギクでは茎基部の幼葉や茎先端の若い小さな葉に密に毛が見られるが、コハマギクではいずれも全く見られない。茎葉は3~5中裂するが、3中裂するものが多い(コハマギクでは3浅裂~3中裂または5浅裂~5中裂まで変異するが、一般に5中裂するものが多い。)。葉色は灰緑色を示す(コハマギクは濃緑色)。総苞外片は狭長楕円形であり、内片もチシマコハマギクがコハマギクより幅広い傾向がある(コハマギクの総苞外片は線形)。花期がコハマギクより1ヶ月以上早く、7~9月(千島列島)。根室半島ではチシマコハマギクの開花は8月中旬~9月上旬、コハマギク(9月中旬~10月上旬)より明らかに早い。2n=18。(参考10)

2 Chrysanthemum arisanense Hayata アリサンアブラギク 阿里山油菊
  synonym Dendranthema arisanense (Hayata) Y. Ling & C. Shih.
 中国(江蘇省)、台湾原産。中国名は阿里山菊 a li shan ju 。
 多年草、高さ約40㎝、根茎は這う。茎は斜上、中間で短く散房状に分枝し、密に毛があり、すぐに無毛になる。下部の茎葉は花時に落ちる。中部の茎葉は葉柄が長さ1~2㎝、葉身は卵形、長さ3~5㎝×幅2~3㎝、2回羽状全裂し、1次の裂片は1~2対、最終裂片は斜めの三角形、下面は灰白色、密に厚く毛があり、上面は緑色、まばらに毛がある。上部の茎葉は次第に小さくなり、中部の茎葉に似ている。合成花序は頂生の類散形状円錐花序である。頭花は多数、直径約1.2㎝。総苞は杯形、直径約7㎜。総苞片は4列、薄膜質の縁は広く、白色または褐色、外総苞片は卵形または狭卵形、長さ3~4㎜。中総苞片は楕円形または狭楕円形、長さ4~4.5㎜。内側の総苞片は狭楕円形または広線形、長さ約3mm。周辺小花の小舌は黄色、長さ約5㎜。花期は夏。2n=18。

3 Chrysanthemum chanetii H.Lév. マンシュウイワギク 満州岩菊

  synonym Chrysanthemum zawadskii Herbich subsp. latilobum (Maxim.) Kitag. [YList]

  synonym Chrysanthemum erubescens Stapf
  synonym Chrysanthemum maximoviczianum Y. Ling

  synonym Chrysanthemum maximoviczianum var. aristatomucronatum Y. Ling

  synonym Dendranthema chanetii (H. Léveillé) C. Shih
  synonym Dendranthema erubescens (Stapf) Tzvelev.

  synonym Chrysanthemum zawadskii Herbich subsp. erubescens (Stapf) Kitag.

  synonym Chrysanthemum sibiricum Fisch. ex Turcz. var. latilobum (Maxim.) Kom.

  synonym Leucanthemum sibiricum var. latilobum Maxim.
 韓国、中国(河北省、黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、寧夏回族自治区、陝西省、山東省、山西省)、台湾、モンゴル、ロシア原産。中国名は小红菊 xiao hong ju。別名はヒロハチョウセンノギク。標高300~2700mの草地、山の斜面の林縁、氾濫地、溝のそばに生える。
 多年草、高さ15~60㎝、根茎は平伏する。茎は直立し、基部または中部から分枝するが、通常、先で散房状に分枝し、特に頭花の下部にまばらに毛があり、まに無毛になる。下部および中部の茎葉は葉柄が長さ3~5㎝、葉身は腎形、ほぼ円形、または広卵形、長さ2~5㎝、幅はほぼ長さと同じで、両面とも緑色、まばらに直軟毛があるかまたは無毛、基部はわずかに心形または切形、掌状または掌状羽状に3~5浅裂まれに深裂し、裂片の縁は鈍い歯があり、側裂片は小さく、頂裂片は大きい。上部の茎葉は、楕円形または狭楕円形、合成花序の近くは狭楕円形または広線形。合成花序は頭が平らな集散花序。頭花は3~12個。総苞は杯形、直径5~15㎜。総苞片は4列または5列、外側の総苞片はは広線形、長さ5~9㎜、外面にまばらに絨毛があり、縁は不規則に裂け、先は丸く、広く薄膜質になる。中および内側の総苞片は長さ6~10㎜、倒披針形または三角状卵形~狭線状楕円形、長さ6~10㎜、縁は白色または褐色。周辺小花は小舌が白色、ピンク色または紫色、長さ1.2~2.2㎝、先には2~3個の歯がある。痩果は長さ約2㎜。花期および果期は7~10月。2n=36。
※Chrysanthemum zawadskii Herbich subsp. latilobum (Maxim.) Kitag.はYListではマンシュウイワギクとしているが、Kewscienceではチョウセンノギク(Chrysanthemum naktongense Nakai)のsynonymとしている。品種はチョウセンノギクと重複。

3-1 Chrysanthemum zawadskii Herbich subsp. latilobum (Maxim.) Kitag. f. campanulatum (Makino) Kitag. オグラギク

  synonym Chrysanthemum zawadskii Herbich var. campanulatum (Makino) Kitam.

3-2 Chrysanthemum zawadskii Herbich subsp. latilobum (Maxim.) Kitag. f. molle(Uyeki) Kitag. シラゲチョウセンノギク


4 Chrysanthemum crassum (Kitam.) Kitam. オオシマノジギク 大島野路菊
  synonym Chrysanthemum japonense (Makino) Nakai var. crassum Kitam.
  synonym Chrysanthemum ornatum Hemsl. var. crassum (Kitam.) Kitam.
 日本(屋久島、奄美諸島)原産。海岸に生える。
 多年草、高さ30~40㎝。根茎は這う。茎は斜上して叢生し、上部で太く、短毛が密にある。葉は大きく、長さ約4㎝の長柄がある。葉身は質が厚く、広卵形、長さ3~5.5㎝、3中裂し、裂片には波状鈍鋸歯があり、基部はやや心形または切形、上面は緑色、下面には密に毛があり、灰白色。頭花は単生、枝先に頂生し、直径3~4.5㎝。総苞は長さ9~10 mm幅1.3~1.8 mm,総苞片は3列、覆瓦状、外片は内片より少し短く、披針形、鈍頭。舌状花は白色。中心小花は黄色。痩果は長さ約2㎜。2n=90(10倍体)。花期は11~2月。

5 Chrysanthemum horaimontanum Masam. ホウライギク 鳳来菊
  synonym Dendranthema horaimontanum (Masam.) S.S.Ying
 台湾原産。中国名は蓬莱油菊 peng lai you ju。標高1200~1400mの岩の斜面に生える。
 多年草。茎は基部で叢生し、直立し、密に銀色の絹毛がある。葉は外形が倒卵形、長さ1~3㎝×幅0.5~2㎝、亜革質、上面にはまばらに毛があり、下面は密に銀色の絹毛があり、羽状中裂または深裂し、裂片は2対、縁は円鋸歯または歯があり、基部は楔状沿下する。 上部の葉と根生葉は小さい。頭花は幅約2㎝、単生、長い花序柄がある。総苞はほぼ球形、長さ約5㎜×幅10~13㎜。 総苞外片は長さ3~6㎜×幅1~3㎜。総苞内片は長さ4~6㎜×幅2~3㎜。周辺小花は1列、拡大部(舌部)は約・長さ6㎜×幅2.5㎜、先は鈍形、白色、筒部は長さ約2㎜。中心小花は黄緑色、長さ約2mm。2n=18。

6 Chrysanthemum indicum L. シマカンギク 島寒菊

  synonym Chrysanthemum boreale (Makino) Makino var. okiense (Kitam.) Okuyama

  synonym Chrysanthemum okiense Kitam.
 日本、朝鮮、中国、台湾、ロシア、インド、ブータン、ネパール、ウズベキスタン原産。中国名は野菊 ye ju 。別名は小菊。
 多年草、高さ0.25~1m、根茎は長く又は短く、平伏する。茎は直立又は広がり、分枝し、まばらに軟毛がある。下部の葉は花時に枯れる。中間の茎葉は葉柄が長さ1~2㎝。葉身は卵形~長い卵形~楕円状卵形、長さ3~7(~10)㎝×幅2~4(~7)㎝、両面とも淡緑色又はオリーブ色、まばらに毛があり又は下面はより少なく、羽状中裂~羽状浅裂~不明瞭に分裂し、基部は切形~やや心形~広楔形。複合花序は緩い、頂生の、頭部が平らな集散花序。頭花は多数又は少数。総苞片は5列、縁が広く薄膜質、白色又は褐色、先は鈍形又は円形、外総苞片は卵形又は卵状三角形、長さ2.5~3㎜。中間の総苞片は卵形、長さ6~8㎜。内総苞片は楕円形、長さ約1.1㎝。周辺小花の花弁は黄色、長さ1~1.3㎝、咲きは全縁又は3歯。痩果は長さ1.5~1.8㎝。花期と果期は6~11月。2n=18, 35-38, 36, 40, 54。
品種) 'Louis Germ White' , Picnic = 'Zanmupicnic' , 'Zanmupicnic'
6-1 Chrysanthemum indicum L. 'Hibernum' カンギク 寒菊
 シマカンギクの園芸品種。別名はフユギク、カンコギク。冬咲き、舌状花は黄色が多いが、白色や赤色なども品種ある。筒状花は黄色。

6-2 Chrysanthemum indicum L. f. lactiflorum Hiyama シロシロシマカンギク 白島寒菊

 シマカンギクの白花品種。

6-3 Chrysanthemum indicum L. var. acutum Uyeki ハイシマカンギク 這島寒菊

  synonym Chrysanthemum indicum L. var. procumbens sensu Nakai, excl. basion.

 ハイシマカンギクは、 中国中部原産の地を這うキクで、キクの多くの園芸種は、 このハイシマカンギクと、 中国北部原産のチョウセンノギクとの交配によって作り出されたと言われている黄色い小菊。KewscienceではChrysanthemum indicum var. indicumのsynonym。

6-4 Chrysanthemum indicum L. var. iyoense Kitam. イヨアブラギク 伊予油菊

 四国(愛媛県)、九州(大分県)に分布。山地の向陽地。
 茎の上部に密に開出する軟毛がある。 葉の裏面に丁字毛が密にある。

6-5 Chrysanthemum indicum L. var. iyoense Kitam. f. album T.Yamanaka シロイヨアブラギク 白伊予油菊

 イヨアブラギクの白花。

6-6 Chrysanthemum indicum L. var. maruyamanum Kitam. オッタチカンギク おっ立ち寒菊

 出雲、簸川郡乙立村立久恵で、1938年に採集された。他の産地は不明。シマカンギクに似る。
 茎は中央から出て、開花時に直立する。葉は小さく、長さ35~45㎜、葉柄長さ9~12㎜、葉身は卵形、基部は楔形または円形、しばしば3中裂し、裂片は長楕円形、鈍頭 、下面にかなり密に丁字状毛がある。頭花は散房状に互に相接近してつき、直径約18㎜。花序柄は細く、短かく長さ7~22mm。総苞片は覆瓦状につき、総苞外片は線形、長さ約3mm、中片は卵状長楕円形、縁は褐色。花冠は黄色。

6-7 Chrysanthemum indicum L. var. tsurugisanense Kitam. ツルギカンギク 剣寒菊

 阿波剣山の山頂に分布する。大石灰岩の下に生える 。
 茎は高さ25~60㎝。葉はシマカンキクに比し2回羽状中裂し、裂片は長楕円状披針形、先が尖鋭形、下面は毛が多くない。頭花は密な散房状につき、小さく、幅11~13㎜。舌状小花は黄色。総苞は幅8~9mm。総苞片は3列、覆瓦状、外片は内片より短かく卵形、縁は黒褐色の膜質、ほぼ無毛。葉の形や小さい頭花からキクタニギクCh.borealeMAKINoに似るが、総苞はキクタニギク( Chrysanthemum seticuspe)と異なる。

7 Chrysanthemum japonense (Makino) Nakai ノジギク 野路菊

  synonym Chrysanthemum morifolium Ramat. var. spontaneum (Makino) Makino

  synonym Chrysanthemum ornatum Hemsl. var. spontaneum (Makino) Kitam. f. debile (Kitam.) Kitam.

  synonym Chrysanthemum ornatum Hemsl. var. spontaneum (Makino) Kitam.

  synonym Chrysanthemum morifolium Ramat. f. japonense Makino
  synonym Chrysanthemum japonense (Makino) Nakai var. debile Kitam.
7-1 Onychium japonicum var. japonicum
 日本固有種、本州(兵庫県以西)、四国、九州に分布する。海岸沿いの傾斜地に生える。
 多年生、高さ60~90㎝。茎は基部が倒れて、斜上し、中部で普通、3分枝し、上部で多数分枝する。葉は互生し、葉柄は長さほぼ2㎝以下。葉身は長さ3~5㎝、幅2.5~4㎝の広卵形、3~5中裂し、裂片に少数の鋸歯があり、基部は心形~切形。葉質は厚く又はやや薄く、葉表は毛が散生し、葉裏は白色の毛が密生し、ややまばらであり、灰白色(緑白色)。白毛は伏毛、両端が尖り、中間に着点があり、丁字状毛といわれる(キク属の特徴)。キク属の花序は合成花序(synflorescence)であるが、頂部の総状花序は単一の頭花に縮小し、側花序とあわせてまばらな散房状に頭花がつく。頭花は直径3~5㎝。舌状花は白色~まれに黄色、しぼむときに淡紅色を帯びることもある。舌状花の数や幅は個体差がある。筒状花は黄色、裂片は小さい広三角形。総苞は半球形、総苞片は3列。総苞内片は長さ約8㎜、縁が膜質で幅が広い。総苞外片は総苞内片より短く、幅が狭く、先が円形、白色の毛がある。痩果は長さ約1.8㎜、円柱状、5肋があり、冠毛はない。2n=54。花期は10~12月。

7-2 Chrysanthemum japonense (Makino) Nakai var. ashizuriense Kitam. アシズリノジギク 足摺野路菊

  synonym Chrysanthemum ornatum Hemsl. var. ashizuriense (Kitam.) Kitam.
   四国(高知県足摺岬~愛媛県佐多岬)に自生。
 四国の高知県(足摺岬)~愛媛県(佐多岬)に分布する。
 ノジギクに比べ、葉が小さくて厚く、3中裂し、葉表の縁が白色になり、裏面に白毛が多い。頭花は直径3~4㎝。舌状花は白色、小舌の幅がやや広い。総苞片の外片に白毛が密生する。

8 Chrysanthemum lavandulifolium (Fisch. ex Trautv.) Makino ホソバアブラギク 細葉油菊

 日本、朝鮮、中国、モンゴル、インド原産。中国名は甘菊 gan ju 。山の斜面、岩、川の谷、川岸、荒れ地、丘陵地に生える。
 多年草。 茎は高さ30~150㎝、直立し、中部または上部のみで散房状に分枝し、直軟毛があり、特に上部と合成花序の枝に多い。根名葉と下部の茎葉は花時にまでに枯れる。中部の茎葉は葉柄が長さ0.5~1㎝、葉身は卵形、広卵形、楕円卵形、狭楕円形、または卵状披針形、長さ2~7㎝×幅1.5~4.5㎝、表面は同色またはほぼ同色、2回羽状全裂、2回羽状深裂、または不明瞭な2回羽状深裂し、一次側裂片は2~3(または4)対。最終裂片は楕円形。上部の茎葉は小さく、3深裂または全縁。合成花序は緩いまたは密な集散花序。頭花は直径1~1.5㎝。総苞は杯形、直径5~7㎜。総苞片は5列、縁は白色または淡褐色の薄膜質、総苞外片は線形または線状長円形、長さ約2.5㎜、外面はまばらに毛がある。中片と内片は卵形、狭楕円形又は倒披針形、長さ約4.5㎜。周辺小花は黄色、小舌は長さ1~7.5㎜。痩果は長さ1.2~1.5㎜。花期および果期は5月~11月。2n=18, 36。

8-1 Chrysanthemum lavandulifolium (Fisch. ex Trautv.) Makino var. tomentellum Hand.-Mazz. シンチクアブラギク

 中国(江蘇省、雲南省、浙江省)、台湾原産。毛叶甘菊 mao ye gan ju。標高2000~2500mの山の斜面に生える。
 葉裏には密に絨毛がある。頭花は大きく、直径1~1.5㎝。周辺小花は小舌が長さ5~7.5㎜。

8-2 Chrysanthemum lavandulifolium var. discoideum Handel-Mazzetti

 中国(四川省)原産。中国名は隐舌甘菊 yin she gan ju。標高約2700mの山の斜面に生える。
 葉身は下面にまばらに毛があり、上面は似ているか無毛。頭花は小さい。周辺小花は小さく、小舌は長さ約1㎜。

9 Chrysanthemum lucidum Nakai テリハギク

  synonym Chrysanthemum zawadskii Herbich subsp. lucidum (Nakai) Y.N.Lee

  synonym Chrysanthemum zawadskii Herbich var. lucidum (Nakai) T.B.Lee
 韓国(鬱陵島)固有種。KewscienceではChrysanthemum zawadzkii subsp. zawadzkiiのsynonym。

10 Chrysanthemum makinoi Matsum. et Nakai リュウノウギク 竜脳菊
  synonym Chrysanthemum japonicola Makino
 日本固有種。本州、四国、九州に分布する。日当たりの良い山地、丘陵に生える。
 多年草、高さ40~80㎝。茎、葉に竜脳のような香りの揮発油が含まれ、葉を手でもむと良い香りがする。キクほど臭いは強くない。茎は細く、斜上し、斜面から垂れ下がることが多い。葉は3裂し、裂片がさらに浅く不規則に裂け、長さ4~8㎝、両面に毛が生え、やや白っぽく見え、特に裏面の毛は多い。頭花は直径2.5~5㎝。舌状花は白く、数が多い。柱頭は2分岐し、先端が切形。総苞は半球形、総苞片は縁が乾膜質、3列に重なる。総苞外片は披針形で、毛があり、内片はやや幅が広い。果実は長さ約1.8㎜、冠毛は無い。2n=18。花期は10~11月。

11 Chrysanthemum maximoviczii Kom. モウコイワギク 蒙古岩菊
  synonym Dendranthema maximowiczii (Komarov) Tzvelev.
  synonym Chrysanthemum coreanum subsp. maximowiczii (Kom.) Vorosch.
 中国(内モンゴル自治区)、ロシア原産。中国名は细叶菊 xi ye ju。標高1200~1300mの山地の斜面、湖の近く、砂丘に生える。Flora of Chinaでは韓国を分布域に含める。
 2年草。茎は高さ8~30㎝、直立、単生し、中部で分枝し、下部にはまばらに毛がある。下部と中央の茎葉は短い葉柄がある。葉身は卵形または広卵形、長さ2~2.5㎝×幅2.5~3㎝、2回羽状全裂、一次側裂片は2対。最終裂片は線形または狭線形で、先は長い尖鋭形。上部の茎葉と、合成花序の下の葉は羽状全裂する。合成花序は緩い頭が平な集散花序。頭花は2~4個。総苞は浅い杯形、直径1~1.5㎝。総苞片は4列、縁は白色または褐色、外側の総苞片は線形、5~6㎜、下面はまばらに毛があり、中と内側の総苞片は楕円形~倒披針形、長さ7~8㎜、中間の総苞片は下面にまばらに毛があるかまたは無毛、内側の総苞片は下面が無毛。周辺小花の小舌は白色またはピンク色、長さ1~1.5㎝、先には細かい3歯がある。花期は7~9月。

11 Chrysanthemum × morifolium Ramat. キク 菊
  synonym Anthemis grandiflora Ramat.
  synonym Anthemis stipulacea Moench
  synonym Chrysanthemum sinense Sabine
  synonym Chrysanthemum stipulaceum (Moench) W. Wight
  synonym Chrysanthemum ×grandiflorum hort.
  synonym Dendranthema ×grandiflorum (Ramat.) Kitam.
  synonym Dendranthema ×morifolium (Ramat.) Tzvelev
  synonym Matricaria morifolia Ramat.
 栽培種。英名はchrysanthemum , florist's chrysanthemum , mum , florist's daisy。中国名は杭菊 、花菊。
 多年草、高さ30~90(~100)㎝。茎は直立又は斜上、ときに平伏、まばらに分枝する。葉は細かい毛で覆われ、オリーブ緑色。葉柄は長さ1~2㎝。葉身は卵形~長楕円形、長さ4~10㎝×幅3~5㎝、深く分裂する。葉の基部は切形~類心形。花は単生(ときに疎な散房花序につき)、クリーム黄色。
 菊[florists’ chrysanthemum, 菊花 (ju hua)]は中国原産の非常に多くのハイブリッド複合体であり、多世紀を超えて発展したものであり(中国で1630年に500種以上の栽培種がリストアップされた)、今日では多数の観賞用の栽培種がある。初期の親種はChrysanthemum indicumであるが、他の血統は、今ではあいまいである。最近の丈夫な Korean chrysanthemums は系統にC. zawadskiiを含む。この複合体は最も広範囲に C. grandiflorum(Broussonet, Elench. Horti Bot. Monspel. 15. 1805、おそらく、Anthemis grandiflora Ramatuelle, J. Hist. Nat. 2: 233. 1792に基づいている)として知られている。しかし、 Broussonetの名は裸名(nomen nudum)であり、Ramatuelleの名に言及せず、もし、それが有効に公表されたなら、C. grandiflorum (Desfontaines) Dumont de Courset (Bot. Cult. 2: 467. 1802)の同音異義語になっていただろう。最も一般的な代替え名はC. morifolium Ramatuelle (loc. cit.: 240)であるが、これは不確かな状況と同一性である。それゆえ、複合体の最も満足出来る学名を確立するためのさらに研究が必要である。重要な園芸植物であるため、次のような多数の同義語がある。 A. apiifolia R. Brown , A. artemisiifolia Willdenow, A. stipulacea Moench , C. hortorum L. H. Bailey , C. morifolium var. gracile Hemsley , C. sinense Sabine , C. sinense var. hortense Makino ex Matsumura , C. stipulaceum(Moench) W. Wight , Dendranthema grandiflorum (Ramatuelle) Kitamura , D. morifolium (Ramatuelle) Tzvelev , D. sinense (Sabine) Des Moulins , Matricaria morifolia Ramatuelle.
品種) 'Alberta' , 'Ashley' , 'Autumn Glory' , Avalon Orange , Babette Yellow , 'Barbara' , 'Batik' , 'Bedazzled Bronze' , Bertha White , Bethany , 'Blazing Orange' , Brandi™ , Brav , Bravo , Brittany Yellow , 'Butter N' Cream' , 'Buttercup Yellow' , 'Carpino' , Casper , Chelsey™ Coral , Chelsey™ Pink , Chelsey™ White , Chelsey™ Yellow , Cheryl™ Regal Purple , 'Chidori' , China Doll , 'Corinna' , Currant Mistique , Danielle™ Purple , Danielle™ Red , 'Dark Pink Daisy' , Dark Triumph , 'Daymark' , 'Dazzling Stacy' , 'Donna' , 'Donna Yellow' , Echo Bronze , Edith White , 'Edo 16' , 'Elena' , Emelda Purple , 'Emma' , Emporia Orange , Flamingo Pink , 'Flashy Gretchen , Fleurettes Adelle™ , 'Fukayama' , Gansu Yellow , 'Garnet King' , Genevieve™ Purple Bicolor , 'Gethsemane Moonlight' , Gigi™ Dark Pink , Gigi™ Orange , Ginger , 'Gold Riot' , Golden Marilyn™ , Golden Pueblo , 'Golden Splendor' , 'Golden Spotlight' , 'Grandeur' , 'Grandeur' , Grandeur Yellow , Grandview™ Light Pink , Grenadine , Gretchen , 'Gwendolyn' , Hailey Orange , 'Harvest Emily' , Hilo Fuchsia , 'Honey Emily' , 'Hot Salsa' , 'Jacqueline' , Jacqueline™ Pink Improved , Jacqueline™ Yellow Improved , Janice™ Gold , 'Jeftail' , Kathleen™ Dark Red , 'Kenbu' , 'Key Lime' , LaPorte Improved , Lemon Springs , 'Lemonsota' , 'Lemonsota' , Limerick Lime , Linda , Makayla Yellow , Makenna™ Orange , Makenzie White , Mammoth™ Daisy Dark Bronze , Mammoth™ Dark Pink Daisy , Mammoth™ Lavender Daisy , Mammoth™ Red Daisy , Mammoth™ Twilight Pink Daisy , Mammoth™ White , Mammoth™ Yellow Quill , Marilyn , Marjean Coral , 'Meridian White' , Mildred Yellow , 'Mindy' , Mistique , 'Moonbeam' , Newport Bronze , 'Old Purple' , Olga Yellow , 'Orange Zest' , Outrageous Red , Patty Purple , Petaluma White , 'Pink Gigi' , Pittsburgh Purple , 'Plumberry Purple' , 'Ppp Sor06' , Pueblo Yellow , Purple Springs , Raquel , Red Springs , Regal Irvine , Regina , Rimna , Sabine Bronze , Sand Point™ Purple Bicolor , 'Shamrock' , Shanghai Red , Sharon™ Dark Pink , Shasta Improved , 'Showers' , 'Snowsota' , 'Sonali' , Sparkle White , Spicy Cheryl , 'St. Tropez' , Starling Pink , Sundoro , 'Sunny Gretchen' , Sunny Mistique , 'Sunset Orange' , Susan Coral Pink , Sweet Stacy™ , Sylvie White Improved , TigertailR , 'Tsukomo' , 'Tsuribito' , Vancouver White , Vicki , 'Wanda Lavender' , Wanda Purple , Wanda Red , 'White Gigi' , White Mistique , 'Zinfandel'

12 Chrysanthemum morii Hayata モリギク 森菊
 台湾原産。中国名は森氏菊 sen shi ju 。石灰岩の崖に生え、稀。
 多年草、這う根茎を持つ。茎は斜上し、枝分かれは少なく、密に銀色の絹毛があり、無毛になる。葉柄は長さ7~17㎜。葉身は広卵形~倒卵形、長さ2.5~4㎝×幅1.5~2.5㎝、下面は密に銀色の絹毛があり、上面は緑色、伏した軟毛があり、無毛になり、掌状に羽状中裂又は3裂し、裂片には歯があり、基部は楔形になり葉柄があり、縁は歯状、先は鋭形~ 鈍形。頭花は直径2.5~3㎝、単生、長い花序柄がある。総苞は類半球形、長さ約15㎜×幅7~8㎜。総苞片は縁が褐色、外総苞片は卵形~長円形、中部と内側の総苞片は広卵形。周辺小花は白色、小舌は約・長さ15㎜×幅4㎜。中心小花は緑黄色、長さ約3.5㎜、5歯がある。痩果は長さ約2㎜、5溝がある。

13 Chrysanthemum naktongense Nakai チョウセンノギク 朝鮮野菊
  synonym Chrysanthemum zawadzkii subsp. naktongense (Nakai) Y.N.Lee 
  synonym Dendranthema naktongense (Nakai) Tzvelev
  synonym Dendranthema zawadzkii var. naktongense (Nakai) M.Kim

  synonym Chrysanthemum zawadskii Herbich var. latilobum sensu Kitam.

  synonym Dendranthema zawadzkii var. latiloba (Maxim.) Kitam.[Heterotypic Synonyms] [Kewscience]

  synonym Chrysanthemum sibiricum auct. non Fisch. ex Turcz.

  synonym Chrysanthemum sibiricum Fisch. ex Turcz. var. koreanum Nakai

  synonym Chrysanthemum zawadskii var. latilobum (Maximowicz) Kitamura

  synonym Chrysanthemum zawadskii subsp. naktongense (Nakai) Y. N. Lee [YList]

  synonym Dendranthema zawadskii (Herbich) Tzvelev var. latilobum (Maximowicz) Kitamura

  synonym Leucanthemum sibiricum Candolle var. latilobum Maximowicz.
 韓国、中国(甘粛省、河北省、黒竜江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、山東省、山西省)、モンゴル、ロシア原産。中国名は楔叶菊 xie ye ju。標高1400~1700mの草原に生える。日本の日本では壱岐、対馬や九州の長崎県(対馬、平戸島)、鹿児島県(薩摩半島)で見られるが、Kewscienceでは日本を分布域に含めていない。YListでは日本を分布域に含め、イワギク(Chrysanthemum zawadzkii)の亜種としている。
 多年草、傾伏する根茎がある。茎は直立し、高さ10~50㎝、中間より上で分枝するか、または先で短く分枝し、またはほとんど分枝せず、まばらに毛があり、特に上部と花序近くは無毛になるかまたは無毛。中部の茎葉は長い葉柄があり、葉身は楕円形~狭楕円形または卵形、長さ1~3㎝×幅1~2㎝、両面とも無毛またはすぐに無毛になり、掌状羽状に3~7浅裂または深裂し、基部は楔形または広楔形。上部の茎葉は倒卵形、倒披針形、または狭倒披針形、3~5裂または全縁。合成花序は緩い頂生の頭の平らな集散花序。頭花は2~9個、直径3.5~5㎝。総苞は杯形、直径1~1.5㎝。総苞片は5列、外面にはまばらに絨毛があるかまたは無毛。外側の総苞片は線形または線状披針形、長さ4~6㎜、先は円形、広く薄膜質になる。中および内側の総苞片は楕円形または狭楕円形、長さ4.5~6㎜、縁と先は白色または褐色の薄膜質。周辺小花の個舌は白色、ピンク色、または淡紫色、長さ1~1.5㎝、先は全縁または2歯がある。痩果は長さ約2㎜。花期および果期は7~8月。2n=36。

日本のチョウセンノギク


 長崎県(対馬、平戸島)、鹿児島県(薩摩半島)、朝鮮半島、中国に分布する。
 海岸近くの山地の岩場に生育する多年草。高さ10~50㎝。茎は直立し、上部で分枝する。根出葉は長い葉柄があり、広卵形、3~5深裂し、裂片の幅は広い。茎葉は互生し、卵形、掌状に浅く裂け、葉裏にはまばらに毛がある。頭花は少なく、枝先に単生し、白色、直径3~8㎝。中心小花は筒状、黄色。総苞片は3列でほぼ同長。総苞外片は線形、先は膜質。花期は10~11月。
※チョウセンノギクはどちらかと云えば、マンシュウイワギクよりシベリヤノギクに近く、後者が低地に下り分化したー亜種であると見てよい。茎はかなり高くなり枝を打つが、その枝はシベリヤノギクと同様一般に長く伸び、余り拡がらぬ傾向がある。葉は開出し毛が少く、広くて浅裂するものから細かく狭長な裂片に切れ込むものまで、色々な段階が見られる。葉は楔脚~切脚で心脚にならない。頭花は大きく、最大のものでは直径7~8㎝あり、紅紫色か白色を呈する。枝が長く伸び、葉が楔脚をなし、頭花が大である等の点はシベリヤノギクとの共通形質である。本亜種はその後満洲の東北部にも分布していることが判った(参考14)。
Chrysanthemum zawadskii Herbich subsp. latilobum (Maxim.) Kitag.はYListではマンシュウイワギクとしているが、Kewscienceや参考14ではチョウセンノギク(Chrysanthemum naktongense Nakai)のsynonymとしている。このため以下は異分類。

13-1 Chrysanthemum zawadskii Herbich subsp. naktongense (Nakai) Y.N.Lee var. dissectum (Y.Ling) Kitag. イワギク 岩菊 狭義

  synonym Chrysanthemum coreanum (H.Lev. et Vaniot) Nakai subsp. maximowiczii (Kom.) Vorosch.

  synonym Chrysanthemum zawadskii Herbich var. tenuisectum Nakai ex Kitag.

  synonym Chrysanthemum zawadskii Herbich subsp. latilobum (Maxim.) Kitag. var. dissectum (Y.Ling) Kitag. f. tenuisectum (Nakai ex Kitag.) Kitag.

  synonym Chrysanthemum zawadskii Herbich subsp. acutilobum sensu Kitag.

  synonym Chrysanthemum sibiricum auct. non Fisch. ex Turcz.
  synonym Chrysanthemum maximowiczii Kom.
 東ヨーロッパ~アラスカ南部に分布。日本では岩手県、愛媛県に隔離分布する。朝鮮または中国からの外来と思われるものが法面工事場所で確認されている。 外来のものは高さ50㎝に達する。現在ではイワギクは広義にChrysanthemum zawadskiiとされ、チョウセンノギクとは別種とされている。

13-2 Chrysanthemum zawadskii Herbich subsp. latilobum (Maxim.) Kitag. f. campanulatum (Makino) Kitag. オグラギク 小倉菊

  synonym Chrysanthemum zawadskii Herbich var. campanulatum (Makino) Kitam.

  synonym Chrysanthemum sibiricum var. campanulatum Makino in Journ. Jap. Bot. 7 (1): 27 cum fig.(1930).

 朝鮮、中国、満州、モンゴル、ロシアに分布。別名はオグラチョウセンノギク。
 チョウセンノギクの奇形花。猪口咲となったー変種。(Journ. Jap. Bot. 7 (1): p26 図 (1930).)

13-3 Chrysanthemum zawadskii Herbich subsp. latilobum (Maxim.) Kitag. f. molle(Uyeki) Kitag. シラゲチョウセンノギク 白毛朝鮮野菊

  synonym Chrysanthemum sibiricum var. latilobum f. molle Uyeki

  synonym Chrysanthemum zawadskii subsp. latilobum f. molle (Uyeki) Kitagawa

 朝鮮、満州に分布。

14 Chrysanthemum oreastrum Hance タンナイワギク 耽羅岩菊
  synonym Chrysanthemum coreanum (H.Lév. & Vaniot) Nakai ex T.Mori
  synonym Dendranthema oreastrum (Hance) Y.Ling
  synonym Chrysanthemum coreanum (H.Lév. & Vaniot) Nakai ex T.Mori

  synonym Chrysanthemum sibiricum (Candolle) Fischer ex Komarov var. alpinum Nakai

  synonym Chrysanthemum zawadzkii subsp. coreanum (Nakai) Y.N.Lee

  synonym Chrysanthemum zawadskii Herbich subsp. coreanum (H.Lev. et Vaniot) Y.N.Lee チョウセンイワギク

  synonym Chrysanthemum zawadskii Herbich var. alpinum (Nakai) Kitamura

 韓国、中国(河北省、吉林省、雲南省)、ロシア原産。中国名は小山菊 xiao shan ju。英名はKorean chrysanthemun。標高1800~3000mの牧草地に生える。
 多年草、高さ3~45㎝、根茎は 平伏する。茎は直立、単生、分枝しないか、またはまれに短く1または2分枝し、密に絨毛または軟毛があり、下部は無毛になるかまたは無毛。根生葉と下部の茎葉は葉柄が長さ1~5㎝。 葉身は菱形、扇形、卵形、または広卵形、長さ0.5~2.5㎝×幅0.5~3㎝、下面は密に絨毛があり、二羽状羽状。 究極のセグメントは線形または大まかに線形です。 上部の茎の葉は似ていますが小さいです。 最上部の線形、全体。 頭頂は単生、まれに2~3本、直径2~4㎝。総苞は杯形。総苞片は4列、薄膜質の縁は濃褐色または暗褐色。外側の総苞片は線形、狭楕円形または卵形、長さ5~9㎜、外面はまばらに絨毛がある。中間と内側の総苞片は長い卵形または倒披針形、長さ6~8mm、中間の総苞片は外面にまばらに絨毛があり、内側の総苞片は外面が無毛。周辺小花の小舌は白色またはピンク色、先には3歯がある。痩果は長さ約2mm。花期および果期は6~8月。2n= 54。

15 Chrysanthemum ornatum Hemsl. サツマノギク 薩摩野菊
  synonym Dendranthema ornatum (Hemsl.) Kitam.
 日本(熊本県、鹿児島県、屋久島)固有種。
 地下茎は這い、茎は叢生し、花茎は上向し、高さ25~50cm、密に毛があり、銀白色。葉は葉身が広卵形、上面は緑色、縁は白色、下面は丁字状毛を密生して銀白色。頭花は白色。花期は11月上旬。2n=72(8倍体)。
15-1 Chrysanthemum ornatum Hemsl. var. tokarense (M.Hotta et Y.Hirai) H.Ohashi et Yonek. トカラノギク 吐喝喇野菊
 屋久島~トカラ列島に分布。海岸沿いの畑地、荒地に生える。
 多年草、高さ30~50㎝。花茎は叢生し、細く、毛の量は変異がある。葉は互生し、長い葉柄があり、葉身は広卵形、長さ4~5㎝×幅4~5㎝、3~5中裂し、裂片は少数の粗い鈍鋸歯があり、上面は緑色、下面は銀白色、毛が薄~濃まで変異があり、下面の毛が濃い場合は上面の縁が白色になる。頭花は直径4~5㎝。花に芳香がある。舌状小花は白色。中心小花は黄色。花期は11~2月。2n=72。

16 Chrysanthemum pacificum Nakai イソギク 磯菊
  synonym Chrysanthemum marginatum Matsum., excl. syn.
 日本固有種。本州(千葉県~愛知県)の太平洋沿岸。海岸の崖地に生える。広く栽培され、普通に見られる。英名はpacific chrysanthemum , gold-and-silver chrysanthemum。
 多年草、高さ20~50(90~120)㎝、平坦地では地下茎により広がる。葉は茎の先に密に互生し、葉柄は長さ3~12㎜。葉身は長さ3.5~5㎝、幅2~2.5㎝楕円形~倒卵形、基部は楔形、先は鈍頭、先半部に丸みのある浅い少数の切れ込み(鋸歯)がある。葉の質は厚く、葉表は緑色、腺点があり、葉裏は白色の丁字状毛が密生し、銀白色。頭花は茎頂に散房状に集まってつく。頭花は直径5~6㎜、舌状花が無く、筒状花だけからなる。総苞は半球形。総苞片は3列、外片は卵形、白毛がある。花冠は黄色、先が5裂し、裂片が三角形、開出して、やや反り返る。花柱は先が2裂して、開き、先端が切形(キク属)。2n=90(x=9)。花期は10月末~11月。
 イソギクは日本の大平洋岸、下総の犬吠崎から上総・安房・相模・伊豆・伊豆七島・駿河・遠江の御前崎に分布する。時に野生化することは丹後の網野に早くから知られている。また羽前飽海郡遊佐(ユザ)町十里塚海岸砂丘に野生化しているのを1955年11月8日結域嘉美氏が採集された。これは東大標本室にある。永海秋三氏もこの分布を調査された(1953イソギクの分布の生態遺伝学的研究)。伊豆の八丈島・相模の長者崎・遠江の御前崎で海岸の岩場に生えている野生のものを観察した。また、1966年広江美之助氏採集の安房鋸山・館山,相模横須賀・逗子などの生品を得て観察した。花は10~12月に咲く。頭花は密散房状につき,頭花の直径は生で5mm内外、標本での幅は5~7mmとなる。葉はへら形で上半に鈍鋸歯があり,質厚く,裏面は密毛があって白い。染色体数は2n=90である。頭花の大きい方では、シオギクに類縁があり、頭花の小さい方では少し遠いがオオイワインチソに類縁がある。オナイワイソチソやイワイソチンとの共通の祖先から一方は高山に、他方は海岸の岩場に分化残存したものであろう(参考9)。

17 Chrysanthemum pallasianum (Fisch. ex Besser) Kom. オオイワインチン 大岩茵陳

  synonym Chrysanthemum togakushiense Kitag. et Nagami
 日本(富山県、長野県、群馬県)、朝鮮、ロシア原産。
 高さ20~60㎝。頭花は直径5~6㎜。総苞外片は長楕円形~線状長楕円形で、内片より短かい。葉はより大きく、羽状中裂~深裂し、裂片の幅も、イワインチンより広く、幅1.5~3㎜。大きな葉では、裂片の幅3㎜を越え、鋸歯がでる。2n=54。

18 Chrysanthemum rupestre Matsum. et Koidz. イワインチン 岩茵陳

  synonym Chrysanthemum pallasianum (Fisch. ex Besser) Kom. var. japonicum (Franch. et Sav.) Matsum.

  synonym Dendranthema rupestre (Matsum. et Koidz.) Kitam.
 日本(東北地方南部~北・南アルプス)固有種。別名はインチンヨモギ。亜高山、高山の草地に生える。
 多年草、高さ10~25(30)㎝。茎は直立し、叢生する。葉は互生し、長さ2~3㎝、羽状に深裂し、裂片は3~5片つき、線形、幅1~1.5㎜、鋭頭。葉裏には綿毛が密生する。頭花は散房状に密集してつき、直径3~4㎜、黄色、舌状花はない。総苞は長さ2~4㎜の広鐘形、総苞片は3列。総苞外片は卵形または長楕円形、内片より短かい。痩果は短毛がある。2n=18。

19 Chrysanthemum seticuspe (Maxim.) Hand.-Mazz. キクタニギク 菊谷菊 広義

  synonym  Dendranthema lavandulifolium var. seticuspe (Maxim.) C.Shih

 本州(東北南部、関東地方、長野県、近畿地方)、四国、九州、朝鮮、中国に分布する。別名はアワコガネギク、キタグニギク。道路法面工事場所で外来のキクタニギクが確認されている。
  在来種と中国、韓国からの外来種が日本に分布する。現在では Dendranthema lavandulifoliumの変種とされる。和名は京都府菊谷の地名にちなむ。
 葉は切れ込みが深く、葉質が薄く、両面に細毛がある。小さな黄色の頭花が密集してつき、別名アワコガネギクともいう。頭花は直径1~1.5㎝。舌状花は多数。小舌は長さ5~7.5㎜。総苞は直径5~7㎜。総苞外片は幅が狭い。最近、各地の道路の法面工事跡などで外来種が見られる。2n=18。

19-1 Chrysanthemum seticuspe (Maxim.) Hand.-Mazz. f. boreale (Makino) H.Ohashi et Yonek. キクタニギク 狭義

  synonym Chrysanthemum seticuspe (Maxim.) Hand.-Mazz. var. boreale (Makino) Hand.-Mazz.

  synonym Chrysanthemum boreale (Makino) Makino
  synonym Dendranthema lavandulifolium var. seticuspe (Maxim.) C.Shih

19-2 Chrysanthemum seticuspe (Maxim.) Hand.-Mazz. f. seticuspe カモメギク 鴎菊

 園芸植物で,江戸で栽培されていたものをMaximowicz(1872) がPyrethrum seticuspe Maxim. として新種記載した。カモメギクは明治時代に絶滅したと考えられていたが(北村,1967),1986年に皇居に現存していることが明らかになり、当時のキク属に採用されていたDendranthemaの下でD. seticuspe (Maxim.)Kitam.と組み替えられ、キクタニギクはその品種f. boreale (Makino) Kitam.とされた(北村,1987)(参考10)。
 キクタニギクの葉の裂片が極端に狭くなった一変異型。2n=18。

20 Chrysanthemum shiwogiku Kitam. シオギク 潮菊
  synonym Chrysanthemum decaisneanum Matsum., excl. syn.
 日本(四国)原産。別名はシオカゼギク。イソギクによく似る。イソギクとは分布区域が遠く離れ、染色体数も違う。海岸に生える。
 高さ25~40㎝。葉は質が厚く、イソギクより幅が広く、卵形~長楕円形、基部はくさび形で細長い葉柄に続き、縁は羽状中裂し、イソギクより深く切れ込むが、ときに羽状残裂のものもある。葉の上面は緑色、縁は白色、下面には丁字状毛が密生し銀白色になる。シオギクはイソギクに比し、頭花がイソギクほど密な散房状に集らない。それぞれの花序柄が少し長い。頭花は少し大きく、直径8~10㎜、標本ではおされて幅12㎜位となる。2n=72。花期は11~12月。

20-1 Ajania shiwogiku var. kinokuniensis (Shimot. & Kitam.) Govaerts キノクニシオギク 紀国潮菊

  synonym Chrysanthemum kinokuniense (Shimot. et Kitam.) H.Ohashi et Yonek.

 日本(紀伊半島)原産。別名はキイシオギク 紀伊潮菊。
 最近の研究ではシオギク(2n=72)とイソギク (2n=90)の雑種を起源とすると推定されている。両者の中間の形質を持つ。2n=72,90
 葉がへら形でイソギクに似ており、頭花はイソギクより少し大きく、直径約8㎜、標本はおして幅10mmになる。花柄が長く、イソギクほど密集しない。染色体数は紀伊の瀬戸鉛山産のものや日の御崎のものではシオギクと同じで2n=72である(参考9)。

21 Chrysanthemum wakasaense Shimot. ex Kitam. ワカサハマギク 若狭浜菊

  synonym Chrysanthemum makinoi Matsum. et Nakai var. wakasaense (Shimot. ex Kitam.) Kitam.

 日本(鳥取県~福井県の日本海沿岸地域)固有種。リュウノウギクの変種ともされる。2n=36。Kewscienceではリュウノウギクのsynonymとしている。
 リュウノウギクに比し、茎は丈夫で、葉は大きい。頭花も大きく、直径2.5~5㎝。染色体数2n=36。リュウノウギクが海岸に適応し、染色体数が2倍となったものと考えられる。藤原悠紀雄博士の調査によれば、因幡岩戸から但馬・丹後・若狭をへて越前蓑まである。(植物分類地理17巻129,1958)。尚清水建美博士は近江伊吹山と霊仙山からリュウノウギクの2n=36のものを報告した(植物研究雑誌37巻16−20,1962)。これは姿ではリュウノウギクと違わない(参考13抜粋)。

22 Chrysanthemum yoshinaganthum Makino ex Kitam. ナカガワノギク 那賀川菊

 日本(徳島県那賀川流域)固有種。那賀州に浴って宮浜村から延野をへて加茂谷まで分布する。川岸崖に生える。
 シオギクに似て、葉がくさび形、下面は密に毛があり、灰白色。頭花と総苞片、葉の切れ込み方はリュウノウギクに近い。形態と分布から、ナカガワノギクはリュウノウギクとシオギクとに類縁と考えられる。2n=36の4倍体(参考9)。

23 Chrysanthemum zawadzkii Herbich イワギク 岩菊 広義
  synonym Chrysanthemum gmelinii Ledebour
  synonym Chrysanthemum hwangshanense Y. Ling
  synonym Chrysanthemum maximoviczianum Y. Ling var. dissectum Y. Ling

  synonym Chrysanthemum naktongense Nakai var. dissectum (Y. Ling) Handel-Mazzetti

  synonym Chrysanthemum sibiricum (Candolle) Fischer ex Komarov
  synonym Chrysanthemum sibiricum var. acutilobum (Candolle) Komarov
  synonym Chrysanthemum sibiricum var. gmelinii (Ledebour) Nakai
  synonym Chrysanthemum zawadskii subsp. acutilobum (Candolle) Kitagawa

  synonym Dendranthema zawadskii (Herbich) Tzvelev

  synonym Leucanthemum sibiricum Candolle
  synonym Leucanthemum sibiricum var. acutilobum Candolle
  synonym Pyrethrum zawadskii (Herbich) Nyman.
 日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア、ヨーロッパ原産。中国名は紫花野菊 zi hua ye ju。山の斜面、川辺、林内の下層、草地、林の開けた場所に生える。 綴りに誤りがありzawadskiiとzawadzkiiが使われている。Flora of China,YListなどzawadskiiであるが、Kewscienceはzawadzkiiとし、Leucanthemum zawadskii の場合などはsとなっている。
 多年草、高さ15~60㎝。茎は直立し、上部には少数の散房状の枝があり、まれに不分枝、下部と中央部は赤紫色で、まばらに毛があり、上部と合成花序の下にはかなり密に毛がある。下部および中央の茎葉は葉柄が長さ1~4㎜、葉身は卵形、広卵形、広三角形、または亜菱形、長さ1.4~4㎝×長さ1~3.5㎝、2回羽状全裂、両面は同色、まばらに毛があり、または無毛。一次の側裂片は2または3対。最終裂片は三角形または斜めの三角形で、頂点は鋭形。上部の茎葉は楕円形または広線形、次第に小さくなり、羽状深裂または全縁になる。合成花序は頭が平らな緩い集散花序。頭花は2~5個、直径1.5~4.5㎝。総苞は杯形。総苞片は4列、外面は無毛または外側の総苞片のみまばらに毛があり、薄膜質の縁は白色または褐色で、外側の総苞片は線形~線状披針形、長さ3.5~8㎜、中および内側の総苞片は楕円形~狭楕円形、長さ3~7㎜。周辺小花の小舌は白色または紫赤色、長さ1~2㎝、先は全縁または小さな凹形。痩果は長さ約1.8㎜。花期および果期は7~9月。2n=54, 72。
品種) 'Pink Bomb'

23-1 Chrysanthemum zawadzkii Herbich subsp. zawadzkii シベリアノギク 

  synonym Chrysanthemum sibiricum Turcz. ex DC. nom. inval.
  synonym Dendranthema zawadskii (Herbich) Tzvelev
  synonym Dendranthema zawadskii var. zawadskii

  synonym Chrysanthemum sibiricum Fisch. ex Turcz. var. koreanomontanum Nakai

  synonym Chrysanthemum weyrichii (Maxim.) Miyabe et T.Miyake ピレオギク 幌渓菊[Kewscience]

  synonym Chrysanthemum weyrichii (Maxim.) Miyabe et T.Miyake var. littorale(Maek.) Kudo

  synonym Chrysanthemum littorale Maek.

  synonym Chrysanthemum lucidum Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 32: 110 (1918) テリハギク[Kewscience]

 北海道(日本海側)、サハリン原産。別名は エゾノソナレギク(蝦夷の磯馴菊)、チシマソナレギク(千島磯馴菊)。
 多年草、高さ5~30(50)㎝。根出葉は長い葉柄がある。葉は互生し、質が厚く、広卵形、長さ1~4㎝、羽状深裂し、裂片はさらに切れ込み、粗い鋸歯または歯牙があり、上面に光沢がある。頭花は枝先に単生、頂生し、直径3~6㎝。総苞片は3列、総苞外片は線形。周辺小花は舌状、淡紅色~白色。中心小花は黄色、筒状。花期は8~9月。2n=71
品種) 'Apricot' , 'Pink Bomb' , 'White Bomb'
 シベリアノギクの特徴は茎が通常単一で、時折少数の枝を分ける程度である。その枝は細長く上へ伸び、開出することがない。又、茎上部の葉も開出せずに上向し、その開度は10度内外である。この点は他の亜種に見られぬよい特色である。茎や葉には多少とも柔毛が生え、葉は軟質で細く分裂し、楔脚をなし、葉柄には全体に翼があり、頭花は大きく直径6㎝位になる。この類は岩際にはあまり生えず、高草原や高山帯に見られる。従ってイワギクを直接この群に結合したり、同一視するととは全く不合理である(参考14)。和名のイワギクが適していないが、現在では広義のイワギクの種名には欧州カルパチヤ山脈 (CarpathiansMts.)原産のものにつけられたChrysanthemum zawadskiiが採用されている。

23-2 Chrysanthemum zawadzkii subsp. peleiolepis (Trautv.) Zuev 蒙菊

  synonym Chrysanthemum mongolicum Y.Ling [Flora of China]
  synonym Dendranthema mongolicum (Ling) Tzvelev
  synonym Dendranthema zawadzkii subsp. peleiolepis (Trautv.) Boldyreva
 中国(内モンゴル自治区)、モンゴル、ロシア原産。中国名は蒙菊 meng ju。岩の多い山の斜面に生える。
 多年草、高さ20~30㎝。茎は束生し、中部または基部から分枝し、下部は紫赤色、まばらに毛がある。下部および中央の茎葉は葉柄が長さ1.5~2㎝、葉身は広卵形、亜菱形または楕円形、長さ1~2㎝×幅1.5~1.8㎝、2回羽状全裂または不明瞭な2回掌状羽状全裂、両面とも無毛またはまばらに毛があり、一次側裂片は1~2対、最終裂片は三角形、先は芒状の鋭形。上部の茎葉は狭楕円形、羽状中裂、側裂片は2~4(~8)対。合成花序は、頭が平らな集散花序である。頭花は(1~) 2~7個つき、直径 3~4.5㎝。総苞は杯形、直径1~2㎝。総苞片は5列、外面は無毛、薄膜質の縁は白色。外総苞外片は葉状、狭楕円形、長さ1~1.3㎝、羽状浅裂または羽状中裂、中間および内側の総苞外片は狭楕円形、長さ約8mm。周辺小花は小舌がピンク色または白色、長さ15~20㎜。痩果は長さ約2㎜。花期および果期は8~9月。2n=36, 54, 72。

24 ハイブリッド
(1) Chrysanthemum indicum L. x C. ornatum Hemsl. サツマシマカンギク

(2) Chrysanthemum x aphrodite Kitam. サンインギク 山陰菊
  synonym Chrysanthemum indicum L. var. aphrodite (Kitam.) Kitam.
  synonym Chrysanthemum indicum L. var. albescens Makino 
  synonym Chrysanthemum indicum L. subsp. aphrodite (Kitam.) Kitam.
 島根県に分布する。海岸に広く生える。
 シマカンギク(Chrysanthemum indicum)とキク(Chrysanthemum × morifolium)の自然交雑種。別名はシロバナハマカンギク。
 舌状花は白色と黄色のものがあり、シマカンギクより頭花が大きい。2n=54。

(3) Chrysanthemum x cuneifolium Kitam. ワジキギク
 那賀川に沿った鷲敷町で最初に発見された。那賀川に沿って日野谷村や加茂谷村にもある。シマカンギク(C. indicum)とナカガワノギク(C. yoshinaganthum)の自然交雑種。染色体数は2n=36。
(4) Chrysanthemum x konoanum Makino トガクシギク
 リュウノウギク(C. makinoi)とイワインチン(C. rupestre)の交雑種

(5) Chrysanthemum x leucanthum (Makino) Makino シロバナアブラギク
  synonym Chrysanthemum lavandulaefolium var. beta. leucanthum Makinoin B. M. T.
 リュウノウギク(C. makinoi)とキクタニギク(C. seticuspe)の交雑種

(6) Chrysanthemum x marginatum (Miq.) Matsum. ハナイソギク
  synonym Chrysanthemum x decaisneanum (Maxim.) Matsum.
  synonym Chrysanthemum shiwogiku Kitam. var. ugoense H.Hara et K.Mori
  synonym Pyrethrum marginatum Miq.
 キク(C. × morifolium)とイソギク(C. pacificum) の交雑種

(7) Chrysanthemum x miyatojimense Kitam. ミヤトジマギク
 キク(C. × morifolium) と コハマギク (C. yezoense)の交雑種

(8) Chrysanthemum x ogawae Kitam. ヒノミサキギク
 シマカンギク(C. indicum)×キノクニシオギク(C. kinokuniense)

(9) Chrysanthemum × rubellum Sealy
 英名はHardy Chrysanthemum
品種) 'Autumn Bronze' , 'Cambodian Queen' , 'Clara Curtis' , 'Duchess of Edinburgh' , 'Emperor of China' , 'Mary Stoker' , 'Mattock's Double' , 'Mrs Jessie Cooper'

(10) Chrysanthemum x shimotomaii Makino ニジガハマギク
 サンインギク(C. × aphrodite) x ノジギク(C. japonense)の交雑種。

(11) Chrysanthemum x todaiense H.Ohashi et Yonek. リュウノウイワインチイン
 リュウノウギク(C. makinoi)とイワインチン(C. rupestre )の交雑種

(12) その他ハイブリッド園芸品種
 非常に多くの品種があり、2万種以上あるといわれている
AGM品種) 'Action Yellow' (22) , 'Allouise' (25b) , 'Angelic' (21b) , 'Aunt Millicent' (21d) , 'Beacon' (5a) , 'Brietner' (24b) , 'Bronze Elegance' (21b) , 'Bronze Enbee Wedding' (29d) , 'Bronze Margaret' (29c) , 'Bronze Mayford Perfection' (5a) , 'Bronze Talbot Parade' (29c) , 'Brown Eyes' (21b) , 'Carmine Blush' (21d) , 'Cassandra' (5b) , 'Dee Gem' (29c) , 'Dulwich Pink' (21d) , 'Enbee Wedding' (29d) , 'Foxtrot' (PBR) , 'Gold Enbee Wedding' (29d) , 'Gold Mundial' (6b) , 'Golden Mayford Perfection' (5a) , 'Goodlife Sombrero' (29a) , 'Grandchild' (21c) , 'Hesketh Knight' (5b) , Holly = 'Yoholly' (22b) , 'Imp' (21e) , Linda = 'Lindayo' (22c) , 'Little Dorrit' (21f) , Lynn = 'Yolynn' (22c) , 'Margaret'(29c) , 'Mauve Gem' (21f) , 'Max Riley' (23b) , 'Max Riley' (23b) , 'May Shoesmith' (5a) , 'Mayford Perfection' (5a) , 'Mei-kyo' (28b) , 'Moulin Rouge' (PBR) (22b) , 'Myss Carol' (29c) , 'Myss Saffron' (29c) , 'Nantyderry Sunshine' (28b) , Nicole = 'Yonicole' (22c) , 'Peach Enbee Wedding' (29d) , 'Pennine Flute' (29f) , 'Pennine Marie' (29a) , 'Pennine Oriel' (29a) , 'Pennine Sweetheart' (29c) , 'Perry's Peach' (21d) , 'Pink Margaret' (29c) , 'Primrose Allouise' (24b) , 'Primrose Enbee Wedding' (29d) , 'Red Wendy' (29c) , 'Robeam'(9c) , 'Ruby Enbee Wedding' (29d) , 'Ruby Mound' (21c) , 'Ruby Raynor' (21c) , 'Salmon Enbee Wedding' (29d) , 'Salmon Talbot Parade' (29c) , 'Sea Urchin' (21f) , 'Starlet' (21f) , 'Syllabub' (21f) , 'Talbot Parade' (29c) , 'Topsy'(21d) , 'White Allouise' (25b) , 'White Margaret' (29c) , 'Yellow American Beauty' (5b) , 'Yellow Heide' (29c) , 'Yellow Starlet' (21f)

キクの栽培

 日本には法で定めた国花は無いが、菊が皇室の紋として使われ、パスポートの表紙や紙幣などにも菊花紋章をデザイン化したものが使われ、一般的には菊が日本を表徴する花として用いられている。また、桜は国民に最も愛好され、日本を代表する花の一つであり、日本の国家は菊と桜といわれている。
 菊は中国原産であり、中国で薬用やお茶用に古くから栽培され、現在では自生種の不明な栽培種Chrysanthemum × morifoliumとされている。日本へは栽培品種が奈良時代頃に薬用として渡来したと推定されている。その後、貴族の観賞用として栽培されるようになり、菊を詠んだ句が多く登場している。安土桃山時代から江戸時代にかけては武家や上流階級の間で栽培が盛んになり、菊栽培がブームになったのは江戸時代(1600年~1868年)であり、武家や商家だけでなく、庶民にも菊の花の観賞や菊栽培が広がり、多くの品種が生み出された。最初の江戸のキクのブームは正徳年間(1711~1716年)であり、この頃には500種近い品種に増えていたようである。文化文政期(1804~1830 年)には江戸菊会も開催されるようになり、現在、江戸菊と呼ばれる花弁が変化する狂い咲きと呼ばれる中輪が流行した。菊を使って、人物、動物、富士山などを造形する菊細工は1811~1812年(文化8~9年)頃に始まり、文化13年には一旦廃れるが、弘化元年(1844)から再び、盛んになる。菊細工を基に発展した菊人形は嘉永年間以降に造られるようになった。江戸時代末期(1860)には日本から品種改良された菊がイギリスへと渡り、アメリカと西ヨーロッパでも菊の花が流行し、スプレー菊などとして独自の発展を遂げている。日本の品種を「和菊」、欧米の品種を「洋菊」といいい、大別している。
 食用菊は料理菊ともいわれ、サシミのつまとされる小菊と花を食べられるものがあり、いずれも日本で江戸時代に発展したものである。品種は約80種。中国では薬用、菊花茶として栽培されるものが多く、3000品種以上あるといわれている。
 現在では菊の品種は世界に2万種以上あるのではないかといわれている。

 【江戸時代の菊に関する図書】

1639年(中国 崇禎12)『菊詩百篇』(中国明時代、徳善斉著)中国のキクの栽培書

1664年(寛文4)水野勝元著日本最初の花の園芸書『花壇綱目』 浜菊、野菊の栽培法、菊銘80種

1686年(貞享3)『菊譜百 詠図』『菊詩百篇』を改題したもの。
キク100品種の図と七言絶句調の解説文、並びに栽培手引と用具図

1691年(元禄4)『画菊』 潤甫原画 1519年 (永正16) に描かれた100品種の図と花銘に詩を添えたもの

1695年(元禄8)江戸第一の植木屋伊藤伊兵衛『花壇地錦抄』 菊250品種が記載。

1713年(正徳3)の『当世後の花』霽月堂丈竹著 現在の花形がほとんど全部載せられている。
この頃菊栽培が盛んになる。正徳(1711~1716年)が最初の江戸のキクのブーム。

1713年(正徳3)菊花形品定 田辺彦兵衛

1714年(正徳4)志水閑事の『花壇養菊集』
当時に人気のあった菊の花形を紹介
一年を通じた菊の栽培、移植方法、栽培具などが詳細に記されている。

1715年(正徳5)菊花檀養種(きくかだんやしないぐさ) 志水閑事 

1717年(享保2)花壇菊花大全 養樹軒雲峰 
菊栽培の方法、花形、花色などについて
『丸山菊大会』享保2年、丸山也阿弥で143人が参加し、合計380種の菊を展示した

1719年(享保4)『京新菊名花惣苗割帳』板元谷口七左衛門 菊の品種475種のカタログ
最も高価な品種は大花 '蔑方界'、金7両

1723年(享保8)大坂の樹木屋治兵衛 『新菊苗割代附帳』
全114種の菊が紹介され、「北極山」という品種が3両2分の値をつけた

1845年(弘化3) 『菊の寿道しるべ』英橘画
1846年(弘化3)菊花壇養種 菅井菊叟
1846年(弘化3)『菊之番附道順独案内』

【和菊の主な種類】
 古典菊 江戸時代に作り出された品種
江戸菊(正菊) 中輪、狂い咲き、花弁が変化
嵯峨菊 細い花弁が直立
伊勢菊 中輪、細い花弁が縮れる
松坂菊 大輪、細い花弁が縮れる
美濃菊 八重咲き大輪広い舟底弁の3~4重の半八重
肥後菊 大輪、一重咲き、花弁の間に隙間が見える

【仕立て方】

1 輪菊(りんぎく)(スタンダードタイプ):蕾を摘み一本の茎に一輪の花を咲かせる。脇芽をかいて仕立てるため英語ではgrown as a disbudという。
品種) 白馬(ホワイト系) ・富士(ホワイト系) ・秋風(イエロー系)  ・瞬き(イエロー系) ・紅風(レッド系)  ・友禅(レッド系) など

1-1 一本仕立て:一鉢に1本の茎を伸ばし一花だけを咲かせ

1-2 三本仕立て:盆養とも言い、大菊の最も基本的な仕立て方。
1本の苗を摘芯して3本の枝を伸ばし、後の1輪を花の2/3位高く、前の2輪は同じ高さにする。
三つの花を同時に、 同じ大きさに揃えて咲かせる。

1-3 七本仕立て:1本の苗を2回摘芯して七本の枝を伸ばし仕立てる。

1-4 千輪作り:1本の苗を摘芯を何度もくり返して枝数をふやし、半球形になるように仕立てる。
300輪程度が普通で、2年がかりで2000輪以上咲かせる技術も確立されている。

1-5 だるま作り:草丈を60㎝以内とした小型の三本仕立て
1-6 福助作り:草丈を40㎝以内とした小型の一本仕立て

2 花壇菊:花壇に菊を寄せて植える
12鉢花壇:三本仕立ての赤白黄各4鉢、12種類の鉢を同色が斜めに並ぶように配置展示

3 菊細工:集めた菊で人物、動物、富士山などを造形する菊の作り物
4 菊人形:菊細工の一種で菊の花や葉を細工して人形の衣装としたもの
5 懸崖作り:崖から垂れ下がった形に仕立てるもの
5-1 前垂れ型懸崖:小菊をハート型に仕立てる

5-2 静岡型懸崖:静岡県の菊の愛好家によって考案され、伊豆半島に見立てて仕立てる


【花壇展】
新宿御苑で毎年、伝統的な菊花壇展が開催される。
 江戸菊花壇、一文字菊・管物菊花壇、肥後菊花壇、大菊花壇(手綱植え)、懸崖作り花壇、
伊勢菊・丁子菊・嵯峨菊花壇、大作花壇

【花の大きさ、花形による分類】
1 大輪菊:大菊  直径18~20㎝以上

1-1 厚物(あつもの):花びらの先端が中心に向かって高さ15㎝以上盛り上がっているもの
舌状花が四方から中心をかかえるように組み合い満開時には半球状に盛り上がる

 (1) 大掴み(おおつかみ)=掴(つかみ)咲:花の上部分が両手を掴んだような形をしている。
外側の花弁は垂れ下がる走り弁(skirt)をもつ。
奥州地方で発達したことから、「奥州菊」とも呼ばれる。
品種) 愛国殿(あいこくでん)

 (2) 抱(かかえ)咲
 (3) 厚走り(あつばしり)=走り付き :厚物に走り弁がある品種

1-2 管物(くだもの)糸菊:管状の花びらが花火のように放射線状に広がっているもの。
管の大きさによって次のように分ける。

 (1)太管
 (2)間管(まくだ)
 (3)細管

1-3 広物(ひろもの):舌状花が扁平幅広のもの
(1) 一文字:一重咲き、皇室の紋にもなっていることから「御紋章菊」とも呼ばれる
(2) 美濃菊:3重~4重の八重咲


2 中輪菊:中菊  直径9~18㎝
  舌状花の形で分類
 (1)平弁
 (2)管弁
 (3)さじ弁(管弁の先が平弁になる)

2-1 肥後菊  一重で平弁または管弁が車状に平開するもの

2-2 嵯峨(さが)菊 平弁が中心を囲み立つものを

2-3 伊勢菊 多数の平弁が中心を囲み乱れ咲き,周囲の弁がたれるもの


3 小輪菊:小菊  直径9㎝以下 小菊(スプレータイプ)

 一重~八重
 (1)平弁
 (2)管弁
 (3)さじ弁(管弁の先が平弁になる) 
 魚子(ななこ)菊:西洋菊のポンポン咲きに似た花形を魚鱗に見立てたもの

4 奇花菊(きかぎく)

 鑼弁菊(かがりべんぎく):花弁の先が氷の結晶を思わせるザギザになる。
愛知県農業総合試験場と国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の共同開発


【開花時期】
 花期により夏系、夏秋系、秋系、晩咲、寒菊、二度咲き(6、10月に咲く)などに分けられる。

【洋菊】
1 マム(スタンダードタイプ)=輪菊 grown as a disbud
 1輪咲き、クラシックマムともよばれるオランダ産の品種が多い。花は中輪、大輪。
品種) 秋色シャムロック(大輪、アナスタシアグリーン(ライトグリーン色) , ピンク色-黄色) , アリス(橙色) , エドホワイト(白色) , エポック(アプリコット-黄色) , カンナ(大輪、赤色) , グリーンシャムロック(大輪、黄緑色) , グリーンボール(緑色) , グロリア(大輪、ピンク色) , ココア(大輪、薄茶色) , このか(濃ピンク色) , ゴールデンピンポン(イエロー系) , シャイニーレッド(赤色) , シャムロック(緑色) , シューフリル(紫色) , ジュピター(大輪、淡アプリコット色) , シルキーガール(アプリコットピンク色) , スーパーピンポン(白色) , セイザック(赤色) , ゼンブラサニー(黄色) , ゼンブラライム(白色-緑色) , トムピアーズ(大輪、朱色-茶色) , パープルピンポン(紫色) , ハーベスト(橙茶色) , ハリケーン(大輪、橙茶色) , パンテオン(暗赤色) , ピアニッシモ(赤色) , ビーナスオレンジ(茶橙色) , ビターチョコ色(赤茶色) , ピーチフロマージュ(ピンク色) , ピンクベル(ピンク色) , ファイヤ(橙色) , ファーストピンク(ピンク系) , ブラックナイト(大輪、赤色) , プリティリオ(赤紫色) , ヘリテージ(ピンク色) , ボンビーニ(白地にピンク色) , マーブル(大輪、赤茶色) , 雅(アズキ色) , レオン(大輪、ピンク色) , ロマンチックガール(ピンク色)、

2 スプレーマム spray mum , Spray Chrysanthemum (スプレー菊)=小菊
 ヨーロッパで発展し、1974年(昭和49年)にオランダから日本に伝えられた菊。一本の茎を多数分枝し、多数の花をつける。デージー花(スタンダードタイプ)、ポンポン咲き(ピンポンタイプ)、アネモネ咲き、スパイダー咲き、プリティータイプ、丁字咲きなどに分類される。花期により夏系、夏秋系、寒菊などに分類される。花色は白色、赤色、ピンク色、紫色、青色、黄色、橙色、緑色、黄緑色、複色など。

3 ポットマム(ポット菊)=鉢植え
 1950年代にアメリカで矮性種として育成された鉢植えのキク(マム)を指す。開期により夏菊、夏秋菊、秋菊、寒菊に分けられ、ポットマムは秋菊です

【洋菊の花形による13分類 National Chrysanthemum Society】
Class 1  Irregular Incurve  不規則な内巻き咲き =厚走り(あつばしり)
 小花(花弁)が緩く内巻き、中心は完全に閉じる。下部の小舌は不規則で、スカートのように垂れ下がる。Bola de Oro (1992) 。頭花は大輪 直径15~20㎝。輪菊、高さはそこそこ低い。
Class 2  Reflex レフレックス咲き
 小花(花弁)は下向きに曲がり、重なる。鳥の羽毛に似る。花の頂部は全部覆われるが、やや平らになる。Doreen Statham (1995) 花直径10~15㎝。輪菊、植物の高さは中間サイズ。 Heather James (1972)。頭 花は直径10~15㎝。
Class 3  Regular Incurve 規則的な内巻き咲き
 頭花は真球、幅と高さが等しい。小花は平滑に内巻き、ボール形になる。輪菊、植物はほどほどに低い。
Class 4   Decorative デコラティブ咲き
 頭花は平ら、花弁が短い。ディスクは1~3小花でほとんど見えない。上部の小花(花弁)は内側に曲がる傾向があるが、下部の小花(花弁)は一般的に反り返る。Chime (1994) 。頭花は直径12.5㎝以上。ポットマム又は輪菊、高さは低い。
Class 5  Intermediate Incurve 中間内巻き咲き12.5㎝より大きい。
 頭花は irregular incurveより小さく、小花(花弁)は短く、部分的に内巻き、中心まで全体にあるが、やや開き気味。内巻きタイプの多くがこの中間内巻き咲きである。Bob Dear (1986)。頭花は直径15㎝又はそれ以上。輪菊、高さは中型。
Class 6   Pompon ポンポン咲き Pom-Pom type , Button type
 頭花は小さな球形、若いときにやや扁平になるが、成熟すると球形になる。大きさは小さなボタンタイプから、輪菊として約直径10㎝まで。小花(花弁)は内巻き又は反り返り、きちんと中央まで全体を覆ってつく八重。 Lakeside (1972)。頭花は直径2.5~10㎝。スプレーマム、高さは高い。
Class 7  Single and Semi-Double 一重、半八重咲き Daisy type
 デイジーに似た頭花で、中央にディスクがあり、周辺小花は1列又はそれ以上。 Crimson Glory (1978)。頭花は直径10㎝以上。輪菊又はスプレーマム、高さは中間。
Class 8   Anemone アネモネ咲き Cushion type
 頭花がSemi-Doubleに似るが、中央がクッションのように盛り上がる。 Dorothy Mechen (1987) 。頭花は直径10㎝以上。輪菊、高さは中型。
Class 9  Spoon スプーン咲き
 基本的にはsemi-doubleに似るが、周辺小花の先がスプーンに似ている。中央のディスクは丸く、見える。Kimie (1956)。頭花は直径10㎝又はそれ以上。輪菊又はスプレーマム、高さは高い。
Class 10 Quill クイル咲き
 小花(花弁)は真っすぐな管状、先は開出する。頭花は八重、中心は開かない。Seatons Toffee (1996)。頭花は直径15㎝又はそれ以上。輪菊、高さは中型。
Class 11   Spider スパイダー咲き Spider type
 小花(花弁)は長い管状、先がコイル状又は鉤状になり、太さは非常に細かい~粗い。Chesapeake (1997) 。頭花は直径15㎝又はそれ以上。輪菊、高さは中型。
Class 12   Brush or Thistle ブラシ又はアザミ咲き
 小花(花弁)は細かい管状、茎に平行に成長し、画家の絵筆に似るか又はアザミに似て、平らになり、捻じれて垂れ下がる。. Cindy (1987) 。頭花は直径15㎝又はそれ以上。輪菊、高さは中型。
Class 13  Unclassified or Exotic その他、外来
 花が他のクラスに入らないもの。2以上のクラスに属すもの。しばしば、外来で小花(花弁)は捻じれる。Lone Star (1986) 。頭花は直径15㎝又はそれ以上。輪菊、高さは中型。

食用菊 culinary uses

 食用菊は料理菊ともいわれる。花弁を食用とする大輪種のと、刺身のつまとする小輪種がある。
 日本で江戸時代に発展したものであり、品種は約80種。
1 大輪種 苦みが少なく甘みがある

 1-1 赤紫色:明るい赤紫色の中輪種。八重咲き。
 延命楽、もってのほか(山形県)、もって菊(山形県)、かきのもと(新潟県)

 1-2 黄色 :越天楽(山形県)、いわかぜ(ともに山形県)、南部菊(青森県)、阿坊宮(青森県)、金からまつ(新潟県)、湯沢菊(秋田県)

2 小輪種(つま菊)
 小菊 刺身のつまなどに生産量の9割を占め、愛知県が生産量1位。
 代表品種:秋月、金綿、こまり、とよおんちぎり、豊の秋
  食べられる品種:星のかけら、星の桜

 中国では中華料理の蛇羹(ヘビのスープ)などに調味料(芳香剤)として使われる菊がある。

【菊花茶】
 中国では菊花茶(Chrysanthemum tea)の原料として、栽培され。杭白菊、贡菊、野菊花に大別され、3000品種以上あるとされている。

参考

1) GRIN
 Chrysanthemum
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=2563
2) Flora of China
 Chrysanthemum
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=106957
3) イノチオ精興館
 菊の品種 (6000種以上の品種があり、半数がイノチオ精興館が作り出した品種
https://www.seikoen-kiku.co.jp/type_cat/s_summer-autumn/page/2
4) Chrysanthemum Lucidum 鬱陵菊花
http://e-ulleung.grandculture.net/Contents?local=e-ulleung&dataType=01&contents_id=EC01500043
5) Chrysanthemum seticuspe - / Invasive Species of Japan
 Chrysanthemum seticuspe
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/80500e.html
6) [PDF]日本における菊栽培の伝統と菊細工
 日本における菊栽培の伝統と菊細工
7)ニッポンのキク作り
 和の歴史を彩り 世界の花に育て上げた ニッポンのキク作り
https://shop.takii.co.jp/flower/bn/pdf/20080505.pdf
8) National Chrysanthemum Society, USA
 Chrysanthemum Classifications
https://www.mums.org/chrysanthemum-classes/
9) Acta Phytotax .Geobot.(J.J. Botany)Vol.79 No.3 109-136(1967)
 北村四郎:日本の野生菊の分布に関する報告
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunruichiri/22/4-6/22_KJ00001077996/_pdf
10) 植物研究雑誌 第64巻 第 3号 77-84(1989)
 西川恒彦・小林秀雄: チシマコハマギクの染色体数と地理的分布
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_064_77_84.pdf
11) 国立科博専報,(49), pp. 5–10 , 2014
 皇居にのみ現存する園芸植物カモメギクの細胞学的観察
https://www.kahaku.go.jp/research/publication/memoir/download/49/4902.pdf
12) Flora of Taiwan
 Chrysanthemum horaimontanum Masam.
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=100&taxon_id=242412893
13) 植物分類,地理 1941年 10巻3号 p.172-192
 北村四郎:東亜産新植物記相6
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunruichiri/10/3/10_KJ00002593894/_pdf/-char/ja
13) 植物分類,地理分類研究 Jphytogeogr & Taxon. 1995年 43巻1-2号 p.124-126
 最近道路法面に発見されるキクタニギクとイワギクについて
AN00307805-43-1to2-124-126%20(3).pdf
14) 植物研究雑誌 第41巻第6号 188-192(1966)
 北川政夫:イワギク類の再検討
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_041_188-192.pdf