アゼトウガラシ 畔唐辛子

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Flora of Mikawa

アゼナ科 Linderniaceae アゼトウガラシ属

中国名 狭叶母草 xia ye mu cao
学 名 Vandellia micrantha (D.Don) Eb.Fisch., Schaferh. et Kai Mull.
Lindernia micrantha D.Don
Lindernia angustifolia (Benth.)Wettst.
アゼトウガラシの花
アゼトウガラシの花2
アゼトウガラシの葉
アゼトウガラシ
花 期 8~10月
高 さ 10~20㎝
生活型 1年草
生育場所 やや湿った場所
分 布 在来種  本州、四国、九州、沖縄、朝鮮、中国、インド、ネパール、スリランカ、インドネシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム
撮 影 幡豆町 04.10.10
ゴマノハグサ科からオオバコ科に移されたが、APG III(2009年版)ではアゼナ科として分離された。分子系統解析によるFischer et al. (2013) の再解析によって アゼナ属が分割され、アゼトウガラシ属に変更された。
 茎は無毛、直立し、分枝する。葉は無柄、対生し、長さ10~30㎜、幅3~6㎜の線形~線状披針形、縁に2~4個の浅鋸歯があり、先が尖る。上部の葉腋に長さ6~10㎜の唇形花をつける。花冠の基部は淡紅紫色、先端は白色で、下唇の中央に黄色の斑紋があるのが特徴である。萼は5裂する。雄しべは4個つき、うち、上側の2個が短く、長い下側の2個の葯には棒状の突起(付属体)がある。果実は長さ1.4㎝以下、唐辛子のように細長い。
 アゼナ類(アゼナアメリカアゼナなど)も花冠に黄色の班紋がない。シソクサも花冠が白色で少し似ているが、葉の幅が広く腺点があり、シソに似た香りがする。

アゼトウガラシ属

  family Linderniaceae - genus Vandellia

 草本、無毛又は有毛。茎は4稜形。葉は対生、卵形で羽状脈、又は線形~披針形で中脈だけがしばしば見え、普通、歯がある。花は腋生、対生又は束生、上部では普通、総状花序につく。咢は筒形又は鐘形、5歯又は5咢片はほぼ等長。花冠は筒部が突き出し、2唇形、5裂し、上唇が短い。雄しべは4本、2強雄しべ、2本が長く、他の2本が短い。花糸は全縁、下側の2本は下唇の基部につく。花糸は長く、弓なりになり、基部に歯状又は糸状の付属体がつく。葯は対が密着し、2室、葯室は散開し、先が密着する。花柱は1本、柱頭は平らになり、2薄板または1個。蒴果は球形、長円形、又は線形、普通、咢の長さを明瞭に超え、2バルブ。バルブは全縁、膜質、縁は平ら。
 世界に約52種があり、アフリカ、アジア、オーストラリアに分布する。

アゼトウガラシ属の主な種

1 Vandellia anagallis (Burm.f.) T.Yamaz.  シマウリクサ 島瓜草 
  synonym Vandellia cordifolia (Colsm.) G.Don 
  synonym Lindernia anagallis (N. L. Burman) Pennell,
 日本(沖縄)、中国、台湾、ブータン、インド、シッキム、ラオス、カンボジア、ミャンマー、タイ、ベトナム、マレーシア、フィリピン、 オーストラリア原産。中国名は长蒴母草 chang shuo mu cao 。
 1年草、高さ10~40㎝。根はひげ根。茎は這い、しばしば分枝し、条線があり、無毛、節から根を出す。葉は葉柄が短いかほぼ無柄。葉身は三角状卵形、卵形、又は長円形、長さ0.4~2㎝×幅0.7~1.2㎝、無毛、基部は切形~類心形、縁は浅い円鋸歯があり、先は円形~鋭形、側脈は3~4対、45度の角度で広がる。花は腋生、単生。花柄は長さ6~10㎜、果時に2㎝以下になり、無毛。咢は長さ約5㎜、基部が合着する。咢片は狭披針形、無毛。花冠は白色又は薄紫色、長さ0.8~1.2㎝。下唇は上唇よりわずかに長く、平らに広がり、3裂し、裂片はほぼ等長。上唇は卵形、2裂する。前側の雄しべの花糸は基部がこん棒形に広がる。花柱は2裂する。蒴果は線状卵形、宿存する咢の長さの約2倍。種子は卵形、いぼ状。花期は4~6月。果期は6~11月。

2 Vandellia micrantha (D.Don) Eb.Fisch., Schaferh. et Kai Mull.  アゼトウガラシ 畔唐辛子
  synonym Vandellia angustifolia Benth.
  synonym Lindernia micrantha D. Don
 日本、韓国、中国、インド、ネパール、スリランカ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシア(Java)原産。中国名は狭叶母草 xia ye mu cao 。やや湿った場所に生える。
 1年草。高さ10~20㎝。茎は無毛、直立し、分枝する。葉は無柄、対生し、長さ10~30㎜、幅3~6㎜の線形~線状披針形、縁に2~4個の浅鋸歯があり、先が尖る。上部の葉腋に長さ6~10㎜の唇形花をつける。花冠の基部は淡紅紫色、先端は白色で、下唇の中央に黄色の斑紋があるのが特徴である。萼は5裂する。雄しべは4個つき、うち、上側の2個が短く、長い下側の2個の葯には棒状の突起(付属体)がある。果実は長さ1.4㎝以下、唐辛子のように細長い。花期は8~10月。
2-1 Vandellia micrantha (D.Don) Fb.Fisch., Schaferh. et Kai Mull. f. leucantha (Hiyama) H.Ohashi  シロバナアゼトウガラシ
  synonym Vandellia angustifolia Benth. f. leucantha Hiyama
 
3 Vandellia mollis Benth.  タイワントウガラシ 台湾唐辛子
  synonym Lindernia mollis (Bentham) Wettstein
 中国、インド、パキスタン、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、インドネシア、マレーシア原産。中国名は红骨母草 hong gu mu cao

4 Vandellia scutellariiformis (T.Yamaz.) T.Yamaz.  タイナントウガラシ
  synonym  Lindernia scutellariiformis T. Yamazaki
 台湾原産。中国名は黄岑母草 huang qin mu cao

5 Vandellia setulosa (Maxim.) T.Yamaz.  シソバウリクサ 紫蘇葉瓜草
  synonym  Lindernia setulosa (Maximowicz) Tuyama ex H. Hara
 日本(本州の紀伊半島、四国、九州の大分県、鹿児島県)、中国原産。中国名は刺毛母草 ci mao mu cao 。
 1年草。茎はほとんどが平伏し、まれに斜上~ほぼ直立し、ほぼ4稜形、うねに翼があり、条線があり、剛毛があるかほぼ無毛。葉柄は長さ3㎜以下。葉身は広卵形~デルタ状円形、長さ4~13㎜X幅3~12㎜、ときに幅が長さより広くなり、上面にまばらに伏毛があり、基部は広くさび形で、ほぼ等形、縁に4~6対の広三角形の歯があり、先は類鋭形。花は腋生、単生し、又はしばしば緩い総状花序につく。花柄は長さ2㎝以下。咢は果時に長さ5㎜以下、基部まで分裂し、裂片は線形、花時に平らに広がり、古くなると内側に曲がって蒴果を被い、縁に粗毛があり、中脈は隆起し、粗毛がある。花冠は白色又は薄紫色、長さ7㎜以下、咢よりわずかに長い。下唇は平らに広がる。上唇は卵形。雄しべは4本、全て稔性。蒴果は紡錘状卵形、宿存する咢より短い。あ節は楕円形。花期は5~8月。果期は7~11月。

6 Vandellia viscosa (Hornem.) Merr.  ケウリクサ 毛瓜草
  synonym  Lindernia viscosa (Hornemann) Boldingh, Zakfl
 中国、台湾、インド(ダージリン)、シッキム、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、ニューギニア原産。中国名は粘毛母草 nian mao mu cao

参考

1) Flora of China
 Lindernia
 http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=118628
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Vandellia
 http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:38096-1
3)GRIN
 Vandellia
 https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=19528
4) (PDF) The phylogeny of Linderniaceae The new genus ...
 Willdenowia 43(2): 209-238. Fischer E., Schaferhoff B. and Kai Muller K. 2013.
 The phylogeny of Linderniaceae The new genus Linderniella, and new combinations within Bonnaya, Craterostigma, Lindernia, Micranthemum, Torenia and Vandellia  
https://www.researchgate.net/publication/259762272_The_phylogeny_of_Linderniaceae_-_The_new_genus_Linderniella_and_new_combinations_within_Bonnaya_Craterostigma_Lindernia_Micranthemum_Torenia_and_Vandellia
5) 植物研究雑誌 Journ. Jap. Bot. Vol. 29 No.10 p299-306(1954)
 山崎敬:東亜産アゼナ属,ウリクサ属とその類縁1
6)植物研究雑誌J. Jap. Bot.30(6): 171-180.(1955)
 山崎敬特:東亜産アゼナ属,ウリクサ属,ハナウリクサ属とその類縁3
7) 植物研究雑誌30(12): 359-364(1955)
 山崎敬:東亜産アゼナ属,ウリクサ属,ハナウリクサ属とその類縁 (4)
8) 植物研究雑誌 55(11): 321-327.(1980)
 原 寛 1980. 東亜植物註解 (8). アゼトウガラシ
9)植物研究雑誌J. Jpn. Bot. 92(5): 307-308 (2017)
 大橋広好:シロバナアゼトウガラシ(アゼナ科)の新学名
10)A General History of the Dichlamydeous Plants, 第 4 巻
 Vandellia plant