タチバナ 橘

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Flora of Mikawa

ミカン科 Rutaceae ミカン属

別 名 ヤマトタチバナ、ニッポンタチバナ
学 名 Citrus × tachibana (Makino) Tanaka
タチバナ花
タチバナの果実
タチバナの果実
タチバナ葉先
タチバナ葉表の油点
タチバナ葉裏の油点
タチバナの幹
タチバナ
タチバナ花
タチバナ刺と葉
タチバナ葉
タチバナ葉裏
花 期 5~6月
高 さ 2~6m
生活型 常緑小高木
生育場所 沿海地の山地
分 布 在来種(日本固有種) 本州(伊豆半島以西)、四国、九州
撮 影 霊山寺 13.12.11(果実) 14.5.20(花) 
タチバナはミカン科ミカン属の柑橘類。田原市保美町霊山寺の本堂前には約500年前に烏丸大納言がお手植えしたといわれるヤマトタチバナの木の2代目、3代目がある。3代目の木で樹齢80年ほど。よく果実がなり、自然に増えたもの。花は5月中旬に満開になり、果実も残る。本州(和歌山県、三重県、山口県)、四国、九州の海岸近くの山地に稀に自生する日本固有の柑橘類である。静岡県沼津市戸田地区に北限地があり、戸田饗の里公園で見ることができる。
 常緑小高木、高さ2~6m。若い幹や枝に棘があり、枝は緑色。葉は互生し、長さ3~10㎝、幅1.5~4㎝の狭卵形、先は鈍頭、やや凹み、質は硬く、濃い緑色で光沢がある。枝先、葉腋に花を1~2個、下向きにつける。花は白色、直径約2㎝。花弁は5個。雄しべ約20個、数個ずつ花糸が合着して筒状になる。果実は平滑、直径2~3㎝の扁球形、種子が多く、12~1月に橙黄色~橙色に熟す。ミカンに似た外観で香りが良いが、種が多く、酸味が強く生食用には向かない。ジャムや酒に加工されている。花期は5~6月。果期は12~1月。
 学名は多説あるが、POWOではヒラミレモン(Citrus × depressa Hayata)のsynonymとされ、シークヮーサー、コージ、コウライタチバナ、ポンキツ、サンキと同類である。最近の遺伝子研究により琉球諸島とその周辺の島々に自生するタニブター(Citrus ryukyuensis)とアジア大陸の異なるマンダリン品種(C. reticulata)との自然交雑種であると推定されている。今のところ、タニブターはPOWOではunplaced namesとされている。
1 Citrus × depressa Hayata ヒラミレモン 平実檸檬
  synonym Citrus × tachibana subf. depressa (Hayata) M.Hiroe
  synonym Citrus × himekitsu Yu.Tanaka
  synonym Citrus × koozi (Siebold ex Tanaka) Tanaka コージ
  synonym Citrus × nippokoreana Yu.Tanaka コウライタチバナ

  synonym Citrus × ponki (Hayata) Tanaka[台湾 ポンキツ 中国名は椪橘]

  synonym Citrus × sunki (Hayata) Tanaka サンキ
  synonym Citrus × tachibana (Makino) Tanaka タチバナ
 日本(沖縄)、朝鮮、台湾原産。英名はshiikuwasha , shequasar , Taiwan tangerine , flat lemon , hirami lemon , thin-skinned flat lemon。中国名は酸桔仔 sng-kiat-á。別名はシークヮーサー、シイクワシャー、シークワーサー、クガニー類。沖縄、台湾で栽培され、元は自生種と考えられている。Flora of Chinaではマンダリン(Citrus reticulata)系統の栽培種としている。最新の遺伝子解析により、琉球諸島とその周辺の島々に自生するタニブター(琉球マンダリン:C. ryukyuensis)とアジア大陸の異なるマンダリン品種(C. reticulata)との自然交雑種であるとされている。
 高さ約5m以下。枝に刺がある。葉は楕円形。花は直径約3㎝、白色。果実は7月頃から結果し、 果皮は薄い。果実は重さ25~60g程度で、未熟果は酸味が強く、普通、果皮が緑色の未熟期に収穫する。完熟するとオレンジ色になり、甘くなる。花期は4月。果期は11~12月。多数の品種がある。
品種) 宜味クガニー , 勝山クガニ一 , カーアチー , 伊豆味クガニー
(1) Citrus × koozi (Siebold ex Tanaka) Tanaka コージ 高治
 沖縄や九州地方で古くから栽培されてきた在来品種。別名はクージー、クージ、コージミカン。コウジ(Citrus × leiocarpa Tanaka)と同一ともされるが、POWOではコウジ(Citrus × leiocarpa Tanaka)はCitrus × aurantium f. aurantiumのsynonymとされている。コミカン(桜島ミカン)はキシュウミカン系統であり、よく似ていて、ウンシュウミカンに近い。
 果実は扁球形、温州みかんより小さく、皮が薄くてむきやすく、果肉は鮮やかな橙色。果肉は酸味が強いが、独特の風味と甘みがあり、そのまま食べるほか、沖縄ではシークヮーサーのように料理の香料に利用される。
品種) 高治(たかじ)、土高治(つちこうじ)、丸高治(まるこうじ)
(2) Citrus nippokoreana Tanaka コウライタチバナ 高麗橘
 日本(山口県)、韓国の済州島原産。英名はKorai tachibana mandarin。
 タチバナより果実は大きく、直径6㎝に達し、子室は9~12室、果皮は表面が凸凹で、厚い。葉もタチバナより大きい。
(3) Citrus × sunki (Hayata) Tanaka サンキ
 中国、台湾で栽培。英名はsour mandarin , sunki mandarin。

(4) Citrus × tachibana (Makino) Tanaka タチバナ 橘

 日本固有種(本州伊豆半島以西、四国、九州)。別名はヤマトタチバナ、ニッポンタチバナ。POWOではヒラキレモン(Citrus × depressa Hayata)のsynonymとしている。最近の遺伝子研究により沖縄のシークヮーサーやタチバナなどの柑橘類は、新しく発見されたタニブターとアジア大陸の異なるマンダリン品種との交配種であることがわかり、大陸の親種はその子孫に無性生殖を可能にする突然変異を伝え、似たようなクローンのタチバナの品種群が生み出されたとされている。タチバナの系統は1種だけとされてきたが、系統解析により、ヒュウガナツ、ハナユ、オウゴンカンの親であることが明らかとされ、新姫も発見された。
 常緑小高木、高さ2~6m。若い幹や枝に棘があり、枝は緑色。葉は互生し、長さ3~10㎝、幅1.5~4㎝の狭卵形、先は鈍頭、やや凹み、質は硬く、濃い緑色で光沢がある。枝先、葉腋に花を1~2個、下向きにつける。花は白色、直径約2㎝。花弁は5個。雄しべ約20個、数個ずつ花糸が合着して筒状になる。果実は平滑、直径2~3㎝の扁球形、種子が多く、12~1月に橙黄色~橙色に熟す。ミカンに似た外観で香りが良いが、種が多く、酸味が強く生食用には向かない。ジャムや酒に加工されている。花期は5~6月。果期は12~1月。
【Flora of Japan 1953の解説】大きな無毛の低木。枝は3稜があり、長さ2~20mmの棘が散在する。葉は紙質、狭卵形、長さ3~8cm×幅1.5~3.5cm、先は鋭形で先端は凹形、基部は鈍形~広楔形、縁は全縁。葉柄は長さ5~12mm、狭い翼を持つ。花は単生または対につき、頂生および腋生。小花柄は長さ約5mm、萼は杯形、萼片は落ち込んだ3角形。花弁は5個、斜上し、白色、狭倒卵状長円形、長さ約12mm、先は鋭形。雄しべは約20本。果実は扁球形、熟すと黄色、直径2~2.5cm。花期は6月。本州(伊豆、紀伊、長門の各県)、四国、九州、朝鮮半島(済南)、琉球、台湾。
【Flora of Chinaの解説】中国の野生種は自生種とは認められていない。
 C. tachibana と称される樹木は、真の野生種である可能性があり、以下の特徴を有する。
 樹高は3mまで。小枝は多数あり、短い棘がある。葉柄は長さ8~10mm、極狭い翼状部がある。葉身は楕円形、長さ6~7cm×幅3.5~4cm、二次脈は目立たず、基部は広楔形、縁は小円鋸歯状、先は狭く鈍形で、目立つ凹形。花は単生、直径1.2~1.4cm。花芽はほぼ球形。小花柄は長さ約2mm。花弁は白色。雄しべは約20本。果実は黄色、扁球形、長さ2~2.5cm×幅2.5~3.4cm、平滑。果皮は厚さ1.5~2mm。果肉は7~9房、黄色で、非常に酸味と苦味があり、5~6個の種子がある。種子は広卵形、長さ約1cm、種皮は平滑、胚は多数。子葉は帯緑色。

(5) Citrus flaviculpus hort. ex Tanaka  オウゴンカン 黄金柑

 鹿児島県で古くから知られる来歴が不明の栽培種。別名はゴールデンオレンジ。温州みかんと柚子の自然交配で生まれたと言われていた。最近の系統解析により片親がタチバナであることが明らかとされた。別名はキミカン(黄蜜柑)、ゴールデンオレンジ。愛媛県産の「媛小春」の花粉親、神奈川県産の湘南ゴールド'Shonan Gold' の種子親に使われている。
 耐寒性はみかんと同程度。日向夏によく似るが、果実が小さく、果重70~100g前後でゴルフボール~テニスボールくらいの大きさ果肉は甘く、ジューシーで酸味の少ないグレープフルーツのような食味。果皮は黄色に熟し、厚さは2~3mm、表面は凹凸があり粗く、やや硬い。果期は2~4月。
(6) Citrus 'Niihime' ニイヒメ 新姫
 三重県熊野市で発見された新種。
 タチバナ(在来種、熊野市の天然記念物)と日本在来のマンダリン(タニブター)の交雑実生と推定されている。

2 Citrus ryukyuensis G.A.Wu & al. タニブター
  synonym Citrus × nobilis var. spontanea T.Itô
 琉球諸島とその周辺の島々に自生する。別名は琉球マンダリン。大陸のマンダリン C. reticulataに最も近縁である。最新の遺伝子解析により、約200万年前に琉球列島がアジア大陸から切り離された際に誕生した新種であることが発見された。沖縄のシークヮーサーや本州のタチバナなどの柑橘類は、タニブターとアジア大陸の異なる品種との交配種であると推定された。
 タニブターはシークヮーサーに似ているが、実が小さくて酸味があり、マンダリンとは異なり有性生殖を行い、純粋な野生種のマンダリンである。