スズメノヒエ 雀の稗

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Flora of Mikawa

イネ科 Poaceae スズメノヒエ属

中国名 雀稗 que bai
英 名 Japanese paspalum
学 名 Paspalum thunbergii Kunth ex Steud.
スズメノヒエの穂の葯と柱頭
スズメノヒエの穂の基部
スズメノヒエの葉鞘
スズメノヒエの小花
スズメノヒエの果実
スズメノヒエ
スズメノヒエ小穂
スズメノヒエ葉
花 期 8~10月
高 さ 40~90㎝
生活型 多年草
生育場所 日当たりのよい草地、道端、荒地
分 布 本州、四国、九州、沖縄、朝鮮、中国、台湾、インド、ブータン
撮 影 蒲郡市形原町  06.7.22
スズメノヒエ属の在来種で、外来種のシマスズメノヒエタチスズメノヒエが増え、これらに比べあまり見られなくなっている。
 地下茎は無い。葉鞘や葉の両面に毛があり、葉舌は膜状。花序の総(花序の枝)は3~6個、総の基部に長毛が生えることが多く、無いこともある。小穂は2列(まれに3~4列もある。)につき、長さ約3㎜の楕円状円形、縁に微毛が生える程度でほとんど無毛。葯は黄色、柱頭は黒紫色。小花は2個。第1小花は退化して護頴(第3頴)だけになっている。第1苞頴は無いかあっても小さい。第2小花の表面は革質で、半球形状の護頴(第4頴)の縁が、内頴の縁を包み込むように覆い、熟すと淡黄褐色になる。
 類似のスズメノコビエは総が2~10個と幅があり、同じように小穂が楕円状円形だが、長さ約2.2㎜と小さく、小花が熟すと褐色になる。葉鞘も無毛。2n= 20, 40
 最も多く、普通に見られるシマスズメノヒエの小穂の先はとがり、葯と柱頭ともに濃紫色で、黒っぽく見えることでスズメノヒエと区別できる。タチスズメノヒエは草丈がススキのように高い。アメリカスズメノヒエキシュウスズメノヒエは総が少なく2~3個である。チクゴスズメノヒエは、第1苞頴が湾曲した披針形で大きい。

スズメノヒエ属

  family Poaceae - genus Paspalum

 一年草または多年草。叢生し(房状)、根茎または匍匐茎がある。稈は長さ3~400㎝、直立し、広がり、または平伏し、ときに地面を200cm以上這う。葉鞘は開き、葉耳がときにある。葉舌は膜質。花序は頂生、ときに腋生、1~多数の穂状花序の枝がある円錐花序、これらの枝は花軸の上に掌状(digitate)または総状花序になり、広がりまたは直立し、いくつかの種では、1個またはそれ以上の枝が鞘に完全にまたは部分的に隠される。枝軸は平らになり、普通、狭い~広い翼があり、普通、小穂で終わり、ときに上部の小穂を超えて伸びるが、明確な剛毛は無い。苞穎の下で関節離断する。小穂は、ほぼ無柄~短柄があり、平凸形、先は丸みを帯びるか尖鋭形になり、背側が扁平、剛毛が基部につかず、輪状のカルスもなく、単生または対につき(一部の種では対の1つの小穂が無くなる)、枝の片側に沿って2(~4)列になり、2個の小花をもち、最初の小軸穂部分は膨れない。上側の苞穎(第2苞穎)と上側の護穎は枝軸に隣接する。下側の小花は不稔。上側の小花は無柄または有柄、両性、先は鋭形または円形。下側の苞穎(第1苞穎)は無いか、各枝の一部の小穂にだけあり、脈はないかまたは1脈があり、芒はない。上側の苞穎(第2苞穎)と下側の護穎はほぼ等しく、膜質、先は円形、芒は無い。下側の内穎は無いか、未発達。上側の護穎は凸面状で、硬化し、平滑~わずかにしわがあり、わら色~暗褐色、縁は薄膜質、内巻きで、内穎を抱く。上側の内穎は硬化し、平滑~わずかにしわがあり、わら色~暗褐色。穎果は円形~楕円形、平凸形または平らで、白色、黄色、または褐色。x=10, 12。
 世界に約330種あり、特に新世界の熱帯および温帯地域に分布する。

スズメノヒエ属の主な種と園芸品種

1 Paspalum conjugatum Bergius オガサワラスズメノヒエ 小笠原雀の稗
 世界中の熱帯と亜熱帯に分布。中国名は两耳草 liang er cao。英名はwest indian sour grass。別名はスズメノナガビエ。林内の空き地、林縁、主に湿った土壌に生え、ときに芝状になる。
 多年草、長い匍匐茎を持つ。稈は匍匐茎に沿って小さな房状になり、扁平、ほぼ中実、高さ30~60㎝。 葉鞘は竜骨があり、無毛または上側の縁と口部に沿っ直軟毛があり、葉身との接合部の外面に毛が1列がある。葉身は披針状線形、質が薄く、長さ5~20㎝×幅0.5~1㎝、無毛または縁に沿ってパピラのある直軟毛があり、先は鋭形。花序は掌状、総状花序(総)が2個つき、散開し、非常に細く、長さ6~12㎝。小穂は1個が2列につき、花序軸は幅0.5~1㎜。小穂は淡黄色、卵形~ほぼ円形、長さ1.5~1.8㎜、急に鋭形。第2苞穎は透明、2脈が縁にあり、縁に沿って縁毛があり、長い絹毛をもつ。下側の護穎は似ているが縁毛が無い。上側の護穎は成熟時に淡色、卵形、小穂の長さと同長、甲殻質、不明瞭な条線がある。花期および果期は5~9月。2n=40, 80。

2 Paspalum dilatatum Poir. シマスズメノヒエ 島雀の稗
 南アメリカ原産。中国名は毛花雀稗 mao hua que bai。英名はdallis grass , caterpillar grass , silt grass。別名はダリスグラス。日当たりのよい道端、草地に生える。日本には戦後に入ってきたもので、太平洋岸側の暖地に多く広がっている。三河では同属の中で最も多く見られるようになっている。
 多年草。高さ50~100㎝。葉は幅0.5~1.2㎝。稈上部の葉鞘は無毛。総(花序の枝)は3~5個、開いてほぼ直角につき、総の基部に長毛が生える。総に小穂が2個ずつ対になり、総計で4列につく。葯と柱頭ともに濃紫色で、花期には黒っぽく見える。小穂は2小花からなり、長さ約3㎜の卵形で先がやや尖り、第1苞頴はなく、第2苞頴は縁に長毛がある。第1小花は不完全で護頴(第3頴)は扁平。果実(頴果)ができる第2小花は長さ約2.5㎜、護頴(第4頴)と内頴ともに淡黄色で、硬い。果実は長さ約1.8㎜の広卵形、乳褐色。2n = 40, 50~63。花期は7~10月。

3 Paspalum distichum L. キシュウスズメノヒエ 紀州雀の稗 広義
 熱帯アジア・アメリカ原産。中国名は双穗雀稗 shuang sui que bai。英名はknot grass, knotgrass。別名はカリマタスズメノヒエ。畑、道端、溝、その他の乱れた場所、主に湿った肥沃な土壌に生える。
 多年草。根茎と匍匐茎を持つ。稈は高さは20~50㎝、節は普通、毛がある。葉鞘は竜骨があり、無毛、縁に縁毛がある。葉身は線形、長さ5~10㎝×幅0.3~0.7㎝、無毛、先は鋭形。葉舌は長さ2~3㎜。花序は2(~3)個の総状花序(総)が束生するか、または短い花序軸で離れる。総状花序は長さ3~7㎝、小穂は1個ずつ、2列につき、花序軸はひも状、幅1.5~2㎜。小穂は淡色、倒卵状長円形、平凸形、長さ3~3.5㎜、先は鋭形。第1苞穎は痕跡または狭三角形で小穂の長さの1/2以下またはそれ以上。第2苞穎は紙質、3~5脈があり、明瞭な中脈があり、緩く伏毛がある。下側の護穎は3~5脈があり、普通、無毛。上側の護穎は淡緑色、小穂の長さとほぼ同長、軟骨質、先は短突起があり、細かい毛がある。花期および果期は5~9月。2n=20,30,40,48,60。
 ※6倍体の基準変種キシュウスズメノヒエと4倍体のチクゴスズメノヒエを変種に分類していたが、最近では分類しない。6倍体のキシュウスズメノヒエは全体に小型で葉鞘口部を除く葉身や葉鞘には毛が無い。
3-1 Paspalum distichum L. var. distichum キシュウスズメノヒエ 紀州雀の稗 狭義
  synonym Paspalum paspalodes (Michx.) Scribn.
 熱帯アジア・アメリカ原産。中国名は双穗雀稗 shuang sui que bai。英名はknot grass, knotgrass。別名はカリマタスズメノヒエ。湿地、川の水辺、草地に生える。
 多年草。高さ20~40㎝。和名の由来は和歌山県で最初に発見されたことによる。全体に小型で、湿地など半抽水状態でもよく生育する。葉は線形、先が尖り、縁に細かい鋸歯がある。葉舌は薄膜質、長さ2mm。葉鞘は無毛、上部の縁だけに長毛がある。花序は2股(まれに3、4個)に分かれ、長さ3~6㎝。小穂は総(総状花序状の枝)に2列に並ぶ。小穂は倒卵状楕円形、長さ約3㎜、淡緑色、2小花からなる。第1小花は不完全で護頴(第3頴)だけとなる。第1苞頴はなく、あっても小さい三角形。葯、柱頭は暗紫色。第2小花の護頴(第4頴)と内頴はやや革質、光沢がある。2n=40,48,60。花期は7~9月。
3-2 Paspalum distichum L. var. indutum Shinners チクゴスズメノヒエ 筑後雀の稗
 最近では変種に分類しない。
 多年草。ため池の岸、水路、水田などに生育し、長く匍匐茎を伸ばして水辺に密集した群落を作る。匍匐茎の断片は容易に発根し、耕すほど群落が拡大する害草。国の重点対策外来種に選定されている。
 稈は束生し、直立し、高さ15~50cm、節は無毛。匍匐枝を長く伸ばし、節から発根し、節は有毛だ。葉は線形、長さ6~14cm、節や葉身に白色の毛を密生する。花序は2~3本の総からなり、総は長さ3~6cm、2列に小穂をつける。花期は6~10月。4倍体(2n=40)

4 Paspalum fimbriatum Kunth ハネスズメノヒエ 
 中南米、西インド諸島原産。中国名は裂颖雀稗 lie ying que bai。英名はfimbriate paspalum , Panama paspalum , Columbia grass。フロリダ州、ハワイ、台湾、日本(南西諸島)などに帰化している。
 1年草。稈は房状になり、直立し、高さ30~100cm。 葉鞘は薄く、剛毛がある。葉身は線状披針形、長さ10~30㎝×幅0.3~1㎝、両面は特に基部に粗く伏した剛毛があり、縁は櫛状の縁毛があり、先は尖鋭形。葉舌は長さ約2mm。花序軸は長さ6~10㎝、総状花序(総)は3~5個つき、長さ3~7 cm、緩く斜上し、腋に長く硬い毛がある。小穂は普通、対になるが、対の1つはしばしば無くなる。花序軸は平ら、幅1.2~1.5㎜、縁には鋸歯がある。小穂はしばしば帯紫色、外形が円形、長さ2.5~3.5 mm、先は鋭形。第2苞穎は卵形、3脈があり、縁の翼は硬く、幅約1mm、翼は引き裂かれ、縁に縁毛があり、毛は短く丈夫。下側の護穎は第2苞穎に似るが、翼はあまり発達しない。上側の護穎は卵状楕円形、小穂よりわずかに短く、平滑、輝やく。花期および果期は夏~秋。2n=40。

5 Paspalum floridanum Michx. ナルコスズメノヒエ 鳴子雀の稗
  synonym Paspalum difforme Leconte
 USA原産。英名はFlorida paspalum。
 多年草。根茎がある。稈は高さ80~210cm、直立し、節は無毛または毛がある。葉鞘は無毛または毛がある。葉舌は長さ1.2~3.3㎜。葉身は長さ52cm以下×幅3~18mm、平ら、無毛または毛がある。葉舌は普通、後ろに密に毛がある。円錐花序は頂生、1~6個の総状花序状の枝がつく。枝は長さ3~17.9㎝、散開して直立し、先は小穂で終わる。枝軸は幅0.3~1.8㎜、無毛、縁はザラつく。小穂は長さ2.9~4.1㎜×幅1.9~3.1㎜、対になり、枝軸に圧着し、楕円形~ほぼ円形~円形、無毛、わら色。第1苞穎は無い。第2苞穎は無毛、5脈があり、縁は全縁。下側の護穎は無毛、脈に肋はなく、3脈があり、縁は全縁。上側の小花は金褐色。 穎果は長さ約2.8㎜、琥珀色。2n=120, 140, 約160~170。

6 Paspalum lepton Schult.
 アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ原産。英名はbrunswickgrass。
 多年草。根茎は長く伸びる。基部の鞘にはまばらに毛がある。稈は長さ20~70cm。葉鞘は条線状の脈がある。葉舌は縁毛が無く、膜質、長さ0.5~2.5mm。葉身は2つ折りになり、幅4~5㎜、表面は無毛または毛がある。花序は総状花序(総)からなり、総は2~5個、中心軸に沿ってつき、片側性(unilateral)、長さ1.5~6.5cm。花序軸は角(かど)があり、幅0.8㎜、小穂の対が2~4列に積み込まれる。稔性の小穂は小梗があり、小梗は長円形、長さ0.5~1㎜。小葉は1個の不稔の小花と1個の稔性の小花をもち、小個は伸長しない。小穂は楕円形、背側が扁平で、平凸形、長さ2.7~3.3㎜×幅1.6~1.8㎜、全体で一緒に落ちる。苞穎は1個、第1苞穎は無いか、不明瞭、小花の先に達し、稔性の護穎よりも薄い。上側の護穎は楕円形、小穂の長さと同長、膜質、竜骨はなく、5脈があり、表面は毛があり、先は鋭形。基部の不稔の小花は不毛、目立つ内穎はない。下部の不稔の小花の護穎は楕円形、小穂の長さと同長、膜質、5脈があり、しわがあり、先は鋭形。稔性の護穎は倒卵形、長さ2.5~3㎜×幅1.4~1.7㎜、硬化し、暗褐色、光沢があり、竜骨はなく、縁は内巻き、先は鈍形。内穎は内巻き、硬化する。葯は3個。穎果は果皮が付着性、倒卵形、長さ約1.8mm。へそは楕円形。
品種) 'Amcorae' , 'Doncorae'

7 Paspalum longifolium Roxb. ナガバスズメノヒエ 長葉雀の稗
 日本、中国、台湾、ブータン、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ネパール、スリランカ、タイ、ベトナム、北オーストラリア、太平洋諸島原産。中国名は长叶雀稗 chang ye que bai。別名はナンヨウスズメノヒエ。湿った場疎、湿地、山地の斜面、畑の縁に生える。  多年草。 稈は房状になり、かなり丈夫で、普通、直立し、高さは80~130㎝、多数の節があり、無毛。 葉鞘は広く、紙質、重なって節を隠し、竜骨があり、縁にパピラのある直軟毛がある。葉身は線形、長さ10~20㎝×幅0.5~1㎝、無毛、先は尖鋭形。葉舌は長さ1~2㎜、普通、背に黄褐色の毛がある。花序の軸は長さ4~10㎝。総状花序(総)は5~20個つき、長さ4~8㎝、斜上する。小穂は普通、対になり、ときに単一であるが2番目の痕跡小穂があり、密に重なり合う。花序軸には広い翼があり、翼は幅(1.5~)2~4㎜、帯紫色、縁がザラつき、明瞭な歯が密につく。小梗はザラつく。小穂は紫色または淡緑色、広卵形、基部は狭くなり、軽く平凸形、長さ2~2.5㎜、短突起がある。第2苞穎と下側の護穎は膜質、3脈があり、縁の側脈には微細な縮れた毛がある。上側の護穎は淡色で、小穂の長さと同長、点状の条線があり、先はほぼ鋭形。花期および果期は7~10月。2n=40, 50。

8 Paspalum minus E.Fourn.  コアメリカスズメノヒエ 小亜米利加雀の稗
 熱帯アメリカ、亜熱帯アメリカに分布。英名はmatted paspalum。
 多年草。短い根茎がある。稈は高さ3~60㎝、直立、節は無毛。葉鞘は無毛または毛がある。葉舌は長さ0.2~0.7㎜。葉身は長さ8~18㎝×幅2~7.1㎜、平ら、無毛または毛がある。円錐花序は頂生、普通、指状の対の枝からなり、ときに、3番目の枝が末端の対の下に存在することがある。枝は長さ1.8~6.4cm、散開~直立する。枝軸は幅0.5~1.3㎜、狭い翼があり、無毛、縁はザラつき、頂部は小穂で終わる。小穂は長さ1.9~2.3㎜×幅1.2~2㎜、単生し、枝軸に圧着し、広楕円形~卵形~倒卵形、わら色、先は鈍形。第1苞穎は無い。第2苞穎は3脈があり、下側の護穎はかすかに3脈がある。上側の小花はわら色。穎果は長さ1.8~2.2㎜、白色。2n=20, 40, 50。

9 Paspalum notatum Flüggé  アメリカスズメノヒエ 亜米利加雀の稗
  synonym Paspalum notatum Flüggé var. saurae Parodi
 熱帯アメリカ原産。中国名は百喜草 bai xi cao。英名はbahiagrass , common bahiagrass 。別名はオニスズメノヒエ、バヒアグラス。牧草として使用され、世界に広く帰化している。日本では緑化に使用され、道端に見られる。湿ったところに生えるキシュウスズメノヒエに似ているが、全体に大きく、草地や道端に生える。
 多年草。高さ30~80㎝。全体にほぼ無毛。根茎は太く、横に這い、節間が短く、葉鞘に覆われる。茎は扁平、平滑。葉身は、厚くて光沢がある。葉鞘は口部に毛があるが無毛。花序は二股~三股の総を頂部につける。小穂は2列に密に並び、光沢があり、長さ約3㎜の卵状楕円形で、2小花からなる。第1小花は退化し、護頴(第3頴)だけとなり、第1包頴もない。第2小花を第2包頴と第2小花の護頴(第4頴)が包んでいる。第2小花は完全で、結実する。キシュウスズメノヒエと似て、葯、柱頭ともに黒紫色。2n=40,30。花期は6~10月。
品種) 'Argentine' , 'Paraguay' , 'Pensacola' , 'TifQuik' , 'Tifton 9' , 'UF-Riata' , 'Wilmington' ,

10 Paspalum paniculatum L. コゴメスズメノヒエ 小米雀の稗
 アフリカ、オーストラリア、ニューギニア、太平洋諸島(ポリネシア)、および南アメリカ原産。中国名は开穗雀稗 kai sui que bai。別名はコスズメノヒエ。道端の湿った場所に生える。
 多年草、粗い茂み(tussocks)を形成する。稈は直立または膝状に曲がって斜上し、高さ30~120cm、節には毛がある。葉鞘はしばしば剛毛がある。葉身は線状披針形、平ら、長さ9~50cm×幅0.6~2.5cm、ザラつきまたは剛毛があり、縁は普通、波打ち、先は尖鋭形。葉舌は長さ0.2~0.5mm。 花序の花序軸は長さ5~20 cm。総状花序は7~60個、束生し、長ささ4~12cm、斜上または広がる。小穂は対になり、花序軸は幅約0.5mm。小穂は成熟時に褐色になり、円形または卵形、長さ1~1.5mm。第2苞穎は膜質、小穂の長さとほぼ同長、3脈があり、毛がある。下側の護穎は第2苞穎に似ており、背の中央部分はほぼ無毛。上側の護穎は小穂の長さと同長、成熟時に淡色になる。

11 Paspalum scrobiculatum L. スズメノコビエ 雀の小稗 広義
  synonym Paspalum orbiculare G.Forst.
 旧世界の熱帯および亜熱帯に広く分布。中国名は鸭毑草 ya jie cao。別名はコドミレット。道端、雑草の草地、しばしば湿った場所に生える。
 多年草または一年草。稈は房状になり、細くて丈夫で、直立または傾伏し、高さ30~90(~150)cm、下部の節から発根する。 葉鞘は圧縮され、竜骨があり、普通、無毛。 葉身は線形または線状披針形、長さ10~40cm×幅0.4~1.2cm、普通は無毛、基部はほぼ円形、縁はザラつき、先は尖鋭形。葉舌は長さ0.5~1㎜。花序は2~5(~8)個の総状花序からなり、ほぼ掌状または短い花序軸の上につく。総状花序は長さ3~10cm、斜上~広く広がる。小穂は普通、単一で、2列に重なり、ときに対になり、とくに総状花序の中間で対になる。花序軸はリボン状、幅1.5~3㎜、縁がザラつく。小穂は緑色、褐色になり、ほぼ円形、卵形または広楕円形、長さ2~3㎜、無毛、鈍形~短突起がある。第2苞穎は膜質、3~7脈がある。下側の護穎は膜質またはときに硬化し、3~5(~7)脈がある。上側の護穎は成熟時に褐色、小穂の長さとほぼ同長、革質、細かい条線があり、鈍形。花期および果期は5~11月。2n=20, 40または60。
11-1 Paspalum scrobiculatum L. var. scrobiculatum  マルミスズメノヒエ 
 旧世界の熱帯および亜熱帯に広く分布。中国名は鸭毑草 ya jie cao。別名はコドミレット。道端、雑草の多い場所、しばしば湿った土壌に生える。
 一年草または多年草。稈は直立または基部で傾伏し、高さは90(–150)cm以下。 葉身は長さ10~20cm×幅0.4~1.2cm、普通、無毛。小穂は単一で、通常はほぼ円形、長さ2.5~3㎜。第2苞穎は7~13脈があり、下側の護穎は7~9脈があり、脈はしばしば背と同色。上側の護穎は成熟時に暗褐色になる。花期および果期は5~9月。2n=40。
11-2 Paspalum scrobiculatum L. var. orbiculare (G.Forst.) Hack. スズメノコビエ 
 中国、台湾、東南アジア、オーストラリア、太平洋諸島(ポリネシア)原産。中国名は圆果雀稗 yuan guo que bai。丘の斜面、道端、畑に生える。
 多年草。 稈は房状になり、直立し、高さ30~90cmです。 葉身は長さ10~20cm×幅0.5~1cm、普通、無毛。 小穂は少なくとも総状花序の中間部ではしばしば対になり、広卵形、長さ2~2.2㎜。第2苞穎と下側の護穎は3~5脈があり、脈は緑色、背は淡色。上側の護穎は成熟時に黄褐色または褐色。花期および果期は6~11月。2n=20, 40, 54, 60。
11-3 Paspalum scrobiculatum L. var. velutinum Hack. ケマルミスズメノヒエ 
  synonym Paspalum scrobiculatum L. var. bispicatum Hack. [Flora of China]
  synonym Paspalum hirsutum Retz.
  synonym Paspalum formosanum Honda
  synonym Paspalum commersonii Lam.
 旧世界の熱帯および亜熱帯に広く分布。中国名は囡雀稗 nan que bai。英名はKodo millet。別名はハイスズメノヒエ。丘の斜面に生える。
 多年草。 稈は房状になり、高さ30~50cm。葉身は長さ5~15cm×幅0.2~0.6cm、直軟毛があり、まれに無毛。小穂は単一で、普通、ほぼ円形、長さ2~2.3mm。 第2苞穎と下側の護穎は5~7脈があり、脈はしばしば背と同色になる。上側の護穎は成熟時に暗褐色になる。花期および果期は7~10月。2n=20, 40, 60, 90。

12 Paspalum setaceum Michx. ヒゲスズメノヒエ 髭雀の稗
 北アメリカ、中央アメリカ、カリブ海諸島原産。英名はthin paspalum。日本では埠頭で基準変種が確認されている。葉の縁に基部の膨れた剛毛が散生する。
 多年草。叢生または短い根茎がある。稈は長さ25~110㎝、直立、広がり、または傾伏、節は無毛または毛がある。葉鞘は直軟毛または毛がある。葉舌は長さ0.2~0.5㎜。葉身は平らで、無毛または毛がある。円錐花序は頂生および腋生、1~6個の総状花序が枝に腋生し、部分的または完全に基部につく葉鞘に包まれる。枝は長さ2~12(17)㎝、斜上~広がり、しばしば弧状になり、小穂で終わる。枝軸の幅は0.2~1.2㎜、無毛で、ときにザラつく。小穂は長さ1.4~2.6㎜、対になり、枝軸に圧着し、楕円形~倒卵形~卵形~円形、わら色または褐色。第1苞穎は無い。第2苞穎と下側の護穎は無毛または短い腺毛があり、3脈があり、縁は全縁。 下側の護穎は脈に肋がない。上側の小花はわら色。穎果は楕円形~ほぼ円形、白色。 2n=20。9変種がある。
12-1 Paspalum setaceum Michx. var. setaceum ヒゲスズメノヒエ 髭雀の稗 基準変種
 英名はthin paspalum。
 直立する。葉は主に茎葉。葉身は長さ22㎝以下、幅1.5~7㎜、緩く~真っすぐ、目立って粗毛があり、普通、長く堅い毛と短い柔らかい毛があり、灰緑色、縁に粗毛がある。円錐花序の枝は長さ2~11.2㎝、枝軸は幅0.3~0.9㎜。小穂は長さ1.4~1.9㎜×幅1.1~1.6㎜、楕円形、卵形、円形、またはほぼ円形、有毛~ほぼ無毛。下側の護穎は明瞭な中脈がない。上側んの護穎は長さ1.3~2㎜。

13 Paspalum thunbergii Kunth  スズメノヒエ 雀の稗
 本州、四国、九州、沖縄、朝鮮、中国、台湾、インド、ブータン原産。中国名は雀稗 que bai。英名はJapanese paspalum。日当たりのよい草地、道端、荒地に生える。
 多年草。高さ40~90㎝。地下茎は無い。葉鞘や葉の両面に毛があり、葉舌は膜状。花序の総(花序の枝)は3~6個、総の基部に長毛が生えることが多く、無いこともある。小穂は2列(まれに3~4列もある。)につき、長さ約3㎜の楕円状円形、縁に微毛が生える程度でほとんど無毛。葯は黄色、柱頭は黒紫色。小花は2個。第1小花は退化して護頴(第3頴)だけになっている。第1苞頴は無いかあっても小さい。第2小花の表面は革質で、半球形状の護頴(第4頴)の縁が、内頴の縁を包み込むように覆い、熟すと淡黄褐色になる。花期は8~10月。

14 Paspalum urvillei Steud. タチスズメノヒエ 立雀の稗
 南アメリカ原産。中国名は丝毛雀稗 si mao que bai。英名はvasey grass , Vasey's grass。道端、荒地、空き地に生える。
 多年草。高さ70~150㎝。草丈が高く目立つため、道端でよく目につく。上部の葉鞘にはわずかに毛がある程度であるが、根元近くでは剛毛が生える。葉の縁はざらつく。稈は斜上し、総(穂の枝)を10~20個つける小穂は2~3列に並び、穂全体に毛が密生しているように見える。小穂は2小花からなり、長さ約2.5㎜卵形、柄が長く、葯は淡黄色で、橙色に変わる。柱頭は紫褐色。第1苞頴は無く、第2苞頴は3脈があり、縁には絹糸状の長毛が密生する。第1小花は退化し、護頴(第3頴)だけとなっている。果実の出来る第2小花は長さ約1.7㎜の卵形、護頴(第4頴)と内頴ともに淡黄褐色で、質が硬い。中の果実(頴果)は長さ約1.4㎜、熟すと褐色になる。2n=40,60。花期7~9月。

15 Paspalum vaginatum Sw. サワスズメノヒエ 沢雀の稗
 世界中の熱帯と亜熱帯に広く分布。中国名は海雀稗 hai que bai。英名はseashore paspalum。砂浜の海岸、沼地、遅い流れの小川の縁などに生える。
 多年草。短い根茎と長い匍匐茎を持つ。稈は単生または房状、多節状で、高さは10~50㎝。 葉鞘は覆瓦状、しばしば竜骨があり、縁は膜質。 葉身は2列生、線形、かなり堅く、斜上し、長さ2.5~15㎝×幅0.3~0.8㎝、先は鋭形。葉舌は長さ0.5~1mm。 花序は稈の先に(1~)2(~3)個の総状花序が一緒に生じる。総状花序は長さ2~5㎝、普通、若いときはほとんど近接し、後に広がる。 小穂は1個、2列につき、花序軸は幅1~2mm。小穂は淡褐緑色、狭披針状長円形、強く平らになり、長さ3.5~4㎜、鋭形。第1苞穎はないか、まれに小さな痕跡になる。第2苞穎は薄い紙質、弱く5脈があり、中脈はしばしば抑圧され、無毛。下部の護穎は第2苞穎に似る。上側の護穎は淡緑色、長さ2.5~3 mm、小穂よりも短く、軟骨質、先には細かい毛がある。花期および果期は6~9月。
品種) 'Te-13'

16 Paspalum virgatum L.   
 北アメリカ~南アメリカ原産。中国名は粗秆雀稗 cu gan que bai。英名はtalquezal。湿った場所、湿地に生える。
 多年草。短い根茎がある。稈は丈夫で、密な茂み(tussock)を形成し、直立し、高さ1~2m。 葉鞘は扁平、普通、縁と頂部にパピラ状の粗毛がある。 葉身は線形、平らで、堅く、長さ30~75㎝×幅1~2.5㎝、縁には鋸歯があり、先は尖鋭形。葉舌は長さ2~3㎜。 花序軸は長さ10~30㎝。総状花序は20個以下、長さ5~15㎝、斜上または垂れ下がる。小穂は対になり、密な4列につく。花序軸は幅0.5~1.5㎜、ザラつき、無毛、または少数の剛毛があり。小穂は帯褐色、倒卵形、長さ2.2~3㎜、鋭形。第2苞穎は膜質、3~5脈があり、背に微軟毛があり、縁は中間より上に短い絹毛の縁取りがある。下部の護穎は第2苞穎に似るが、無毛。 上側の護穎は帯褐色、小穂の長さと同長、革質、細かい孔状の条線があり、ほぼ鋭形。花期および果期は夏~秋。2n=40, 80。


参考

1) Flora of China
 Paspalum
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=124125
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Paspalum
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:325790-2
3) World Flora Online
 Paspalum
http://worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000028287;jsessionid=1C2B088A5477DC77210AFFDE565336F2
4) World Checklist of Vascular Plants
 Paspalum
https://wcvp.science.kew.org/
5) FNA - Flora of North America
 Paspalum
http://floranorthamerica.org/Paspalum
6) 植物研究雑誌 (Journal of Japanese Botany) 46(11): 348–348(1971)
 伊延敏行 : 新帰化植物アメリカスズメノヒエ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_046_348_348.pdf
7) 植物研究雑誌 (Journal of Japanese Botany) 79巻 5号 338-339(2004)
 日本新産の帰化植物ヒゲスズメノヒエ(新称)(米倉浩司)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_079_338_339.pdf