シソ 紫蘇

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Flora of Mikawa

シソ科 Lamiaceae  シソ属

別 名 シソ(広義)
中国名 回回苏 hui hui su (広義)
英 名 beefsteakplant
学 名 Perilla frutescens (L.) Britton var. crispa (Thunb.) H.Deane
 synonym Perilla crispa (Thunb.) Tanaka
 synonym Perilla frutescens (L.) Britton 広義
シソの花序
シソの萼の腺点
シソの葉裏の腺点
シソの雑種の分果
シソ
シソの葉表
シソの葉裏
花 期 9~10月
高 さ 60~150㎝
生活型 1年草
生育場所 道端、草地
分 布 帰化種  中国原産
撮 影 新城市  12.10.3
シソは全草に特有の芳香があり、多くの品種がある。中でもアオジソとアカジソの栽培が多く、両者の交雑種も出来やすい。近くに畑が見えない林縁の道端にシソが生えていた。表面が紫色を帯びた緑色、裏面の紫色もはっきりしない。アオジソとアカジソの交雑種と思われる。
 シソ属は広義のシソ Perilla frutescens (L.) Britton 1種だけの種であり、学名は多説あり異名も多いが、POWOではシソ(var. crispa)、エゴマ(var. frutescens)、レモンエゴマ(var. hirtella)の3変種に分類し、その下位分類は認めていない。シソは日本では古代に中国から渡来したものとする説が主流である。縄文時代の遺跡からシソの種子が出土しているが、栽培が確認されているのは奈良時代である。POWOは日本原産とし、中国を分布域に含めていないが、中国では2000年以上前から栽培されている。
 シソの代表的な品種は次のとおり。
 アオジソ f. viridis (Makino) Makino
 チリメンアオジソ  'Viridi-crispa'
 アカジソ f. purpurea (Makino) Makino
 チリメンジソ(アカチリメン) f. crispa (Thunb.) Makino
 カタメンジソ 'Discolor'
 葉の色は2色あり、緑色のアオジソと赤紫色のアカジソに大別される。葉にしわが有るものと無いものがあり、赤紫色でしわの有るものはチリメンジソという。カタメンジソは葉表が緑色、葉裏が赤紫色のもの。
 日本の野生種のレモンエゴマ、トラノオジソ、セトエゴマはレモンエゴマ(var. hirtella)に統合されている。レモンエゴマは通常、強いレモン様の臭いがある。
 エゴマは油採取用などに栽培され、逸出して野生化している。独特な臭いがある。
シソ、エゴマ、レモンエゴマ、は容易に交雑が起き、中間型など様々な形態のものがあるといわれている。

シソ属

 family Lamiaceae - genus Perilla

 1年草、芳香がある。葉は鋸歯縁。輪散花序(verticillaster)には花が2個つき、頂生、腋生の偏側生の総状花序になる。苞は広卵形~類円形。花は花柄がある。萼は鐘形、10脈があり、花時は直線状、果時には大きくなり、広がり又は垂れ下がり、片側が膨れる。萼ののど部には環状に軟毛がある。萼の拡大部は2唇形、上唇は3歯があり、中央の歯が最も小さい。下唇は2歯、歯は披針形。花冠は白色~紫赤色、鐘形、のど部は斜め。花冠の拡大部は2唇形に近く、上唇は凹形、下唇は3裂し、側裂片は中裂片より小さく、上唇に似ている。雄しべ4個、ほぼ等長又は前側の2個が長く、直立、分離。葯は2室、平行、分枝又は開出する。花柱は突き出ず、先が2裂、裂片は等形、錐形。小堅果は類球形、網状。
 世界に1種(Perilla frutescens )だけ、アジアに分布。

シソ属の種と園芸品種

1 Perilla frutescens (L.) Britton シソ 紫蘇 広義
 日本、韓国、中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、湖北省、江蘇省、江西省、山西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、 台湾、ロシア、インド、アッサム州、ミャンマー、ネパール、ブータン、バングラデシュ、ラオス、タイ、ベトナム、インドネシア(ジャワ)原産。北アメリカ、カンボジア、ヨーロッパで広く栽培されている。中国名は紫苏 zi su。英名はshiso, beefsteak plant , rattlesnake weed, perilla mint, chinese basil。荒地、耕作地、庭の畑に生える。
 1年草、直立し、茎は高さ0.3~2m、緑色または紫色、細かい細柔毛または密に絨毛がある。葉柄は長さ3~5cm、葉身は広卵形~円形、長さ4.5~13㎝×幅2.8~10㎝、緑色、紫がかった色、または紫黒色で、軟毛があるかまたは上面に細柔毛があり、下面に絨毛があり、基部は円形~広楔形、縁は狭く~粗い鋸歯があり、先は短い尖鋭形または微突形。輪散葉序は長さ1.5~15cm、密に絨毛がある。苞は長さ約・長さ4㎜×幅4㎜、短い尖鋭形、赤褐色の腺がある。小花柄は長さ約1.5㎜、密に絨毛がある。萼は長さ約3㎜、直立し、基部は絨毛があり、黄色の腺があり、下唇は上唇より長い。果時の萼は長さ4~11㎜、基部に絨毛または細柔毛があり、腺がある。花冠は長さ3~4㎜、わずかに微軟毛があり、花冠筒部は長さ2~2.5㎜。小堅果は灰褐色または黄褐色、直径1~1.5㎜。花期は8~11月。果期は~12月。2n=40。
品種) 'Acuta Kudo'=シソ , 'Fantasy' , 'Hojiso' , Jeok Ssam Ip' , 'Korean Shiso' , 'Magellanica' , 'Magilla'=Magilla® Vanilla=Balmagnilla(Magilla Series) , 'Oriana's Tia To' , 'Tricolor'
1-1 Perilla frutescens var. crispa (Thunb.) Hand.-Mazz. シソ 紫蘇
  synonym Ocimum crispum Thunberg (1784)
  synonym Perilla crispa (Thunb.) Tanaka
  synonym Perilla frutescens var. acuta (Thunb.) Kudô 尖叶紫苏
  synonym Perilla ocymoides var. crispa Bentham(1848)

  synonym Perilla frutescens f. crispa (Thunb.) Makino in J. Jap. Bot. 3: 7 (1926) チリメンジソ

  synonym Perilla ocymoides var. crispa (Thunb.) Benth.
  synonym Perilla frutescens var. nankinensis (Lour.) Britton

  synonym Perilla ocymoides f. purpurea Makino in Bot. Mag. (Tokyo) 26: 78 (1912) アカジソ

  synonym Perilla ocymoides var. rosea G.Nicholson in Ill. Dict. Gard., Cent. Suppl.: 580 (1901) マダラジソ

  synonym Perilla ocymoides f. viridicrispa Makino in Bot. Mag. (Tokyo) 28: 180 (1914) チリメンアオジソ

  synonym Perilla ocymoides f. viridis Makino in Bot. Mag. (Tokyo) 26: 78 (1912) アオジソ

 日本原産。別名はチリメンジソ。POWOでは日本原産とし、朝鮮、北アメリカに帰化しているとして、中国を分布域から除外している。Flora of Chinaでは日本、中国で広く栽培されているとしている。英名はshiso , beefsteak plantant , curly perilla。中国名は回回苏 hui hui su。葉は狭鋸歯縁で、紫色。葉と花序は調味料として、または塩漬けにして食べる。葉は、塩漬けしたウメの果実に紫がかった赤色を与える。苗の子葉も調味料として使用される。栽培植物であるが各地に野生化したものがある。日本では北海道、本州、四国、九州、沖縄と全国的に栽培され、収穫量が最も多いのは愛知県であり、特に三河地域で栽培が盛んである。
 高さ50~100㎝、茎には長軟毛が疎生する。葉は広卵形で時に縮み、質は薄く、長さ8~10㎝、幅6~8㎝、色は赤紫色、または緑色。葉の上面が緑色で裏面は赤紫色のものもある。先は尖り、鋸歯があ るが基部では曖昧である。花穂は太短い円柱形。花冠は紅色~赤紫色、または白色で長さ4~5㎜。雄 蕊は花冠からあまり突出しない。萼は花時の長さ4~6㎜で短軟毛と長軟毛が生える。苞は卵形~広卵 形で中肋から縁がやや波うつように反り返り、鋭先頭、縁の毛は短くて疎らであり、あまり目立たな い。色は緑色~赤紫色で果時宿存性。分果は偏球形で隆起した網紋があり、色は黒褐色~褐色。2n=40。(参考4)
品種) 'Laciniata'(葉縁が深く細裂する)
 POWOでは下位分類を認めていない。YListでは以下を分類している。

(1) Perilla frutescens (L.) Britton var. crispa (Benth.) W.Deane f. viridis (Makino) Makino アオジソ 青紫蘇

 栽培種。中国名は青紫苏。英名はgreen shiso , beefsteak plant。別名はオオバ。アオジソは最近、栽培されることが多く、ときに逸出する。
 1年草、高さ60~150㎝。茎は4稜形、長い下向きの軟毛が密生又はまばらに生える。葉は対生し、広卵形、長柄がある。葉質は薄く、しわが少なく、縮れない。葉の鋸歯は粗く、葉の基部は広い楔形で鋸歯はない。葉裏には腺点が密にある。苞は緑色、卵形~広卵形。花序は枝先につき、2花の仮輪からなり、長い。花冠は白色、まれに淡紅色。萼は釣鐘形で、先が5分裂し、果期にはやや大きくなり、長さ5~6㎜。萼筒には白色の長毛が密生し、黄色の腺点がある。果実は4分果であり、分果は長さ0.7~1.5㎜の球形、網目模様がある。2n=40。花期は9~10月。
品種) 'Aoshiso'アオジソ , 'Shizo Green'アオジソ , Perilla 'Hojiso'=アオジソ

(2) Perilla frutescens (L.) Britton var. crispa (Benth.) W.Deane f. purpurea (Makino) Makino アカジソ 赤紫蘇

 栽培種。英名はred shiso , purple-leaved beefsteak plant。中国名は红紫苏、家苏叶。アカジソは梅干しの着色に昔から使われている。栽培が多く、逸出していることも多い。
 茎は4稜形、長い下向きの軟毛がまばらに生える。葉は対生し、広卵形、赤紫色、長柄がある。葉質は薄く、しわが少なく、あまり縮れない。葉の鋸歯は粗く、葉の基部は広い楔形で鋸歯がない。葉裏には腺点が密にある。苞は赤紫色、卵形~広卵形。花序は枝先につき、2花の仮輪からなり、長い。花冠は淡紅色。萼は釣鐘形で、先が5分裂し、果期にはやや大きくなり、長さ5~6㎜。萼筒には白色の長毛が密生し、黄色の腺点がある。果実は4分果であり、分果は長さ0.7~1.5㎜の球形、網目模様がある。2n=40。
品種) 'Akashiso' アカジソ , 'Atropurpurea' , 'Atropurpurea Laciniata'

(3) Perilla frutescens (L.) Britton var. crispa (Benth.) W.Deane f. crispa (Benth.) Makino チリメンジソ 縮緬紫蘇

 別名はアカチリメン。中国名は皱叶紫苏。英名はruffled red shiso 。葉は両面とも赤紫色、縮れがある。

(4) Perilla frutescens (L.) Britton var. crispa (Thunb.) H.Deane f. rosea (G.Nicholson) Kudô マダラジソ 斑紫蘇

  synonym Perilla frutescens f. rosea (G.Nicholson) Kudô
 英名はvariegated shiso。葉の両面に緑色と赤紫色の斑が入る。

(5) Perilla frutescens (L.) Britton var. crispa (Thunb.) H.Deane 'Discolor' カタメンジソ 片面紫蘇

  synonym Perilla frutescens (L.) Britton var. crispa (Benth.) W.Deane f. discolor Makino

  synonym Perilla frutescens f. crispidiscolor Makino in J. Jap. Bot. 7: 7 (1931)

  synonym Perilla ocimoides var. crispa forma discolor Makino
 英名はbicolor shiso。別名はうらシソ。葉の表面は緑色で葉脈の部分が赤紫色となり、葉の裏面は暗紫色~赤紫色、縁には歯状鋸歯がある。花は紫色。葉にはシソの香りがあり、梅干しや紅しょうが、しそ巻などに利用される。

(6) Perilla frutescens (L.) Britton var. crispa (Thunb.) H.Deane 'Viridi-crispa' チリメンアオジソ 縮緬青紫蘇

  synonym Perilla ocymoides f. viridicrispa Makino
  synonym Perilla ocimoides var. crispa forma viridi-crispa Makino
 英名はruffled green shiso。葉は緑色、縮れがある。
1-2 Perilla frutescens var. frutescens エゴマ 荏胡麻
  synonym Acinos jegoma Siebold
  synonym Perilla ocymoides var. japonica Hassk
  synonym Ocimum frutescens Linnaeus
  synonym Melissa cretica Loureiro
  synonym Melissa maxima Arduino
  synonym Mentha perilloides Lamarck
  synonym Perilla avium Dunn
  synonym Perilla ocymoides Linnaeus
  synonym Perilla urticaefolia Salisbury

  synonym Perilla frutescens var. purpurascens (Hayata) H.W.Li タイワンエゴマ

  synonym Perilla schimadae Kudo.
  synonym Perilla ocymoides f. discolor Makino
 韓国、中国、台湾、ロシア、インド、アッサム州、ネパール、ブータン、ミャンマー、バングラデシュ、ラオス、タイ、ベトナム、インドネシア(ジャワ)原産。中国では広く栽培され、中国名は紫苏 zi su。日本、カンボジア、北アメリカ、ヨーロッパに帰化。各地で栽培され、野生化したものも見られる。
 茎には密に絨毛がある。葉は広卵形~円形、長さ7~13㎝×幅4.5~10㎝、緑色または紫色、上面に細柔毛があり、下面に伏した絨毛があり、縁は粗い鋸歯状。果時の萼は長さ1.1㎝まで、基部は絨毛があり、腺がある。小堅果は灰褐色、直径約1.5㎜。種子は亜麻仁油に似た乾性油であるシソ油の原料で、防水紙、安価なラッカー ワニスの製造、印刷インク、絵画に使用されている。葉はインドと中国で料理の風味付けに使用されている[Flora of China]。
 日本で広く栽培されているのは全体にひとまわり大きく、果実もやや大きい。花色はほぼ白色、葉の色が濃く、不快な臭気がある。
高さ100~250㎝、茎には1~2㎜の長軟毛が疎~密にある。葉は卵形~広卵形で長さ10~20㎝、幅6~10㎝、先は尖り、鋸歯があるが基部では曖昧である。葉の質は厚く、時に薄く、色は鮮緑色~濃緑色。花穂は太短い円柱形で、その長さは野生種のトラノオジソやセトエゴマに比べてかなり短い。花冠は白色、時に桃白色、長さ4~6㎜、雄しべは花冠からほとんど突出しない。萼は花時の長 さ4~7㎜、短軟毛と長軟毛が生える。苞は卵形~広卵形で中肋から縁がやや波うつように反り返り、 鋭先頭、縁の毛は短くて疎らであり、あまり目立たない。色は緑色で果時宿存性。分果は偏球形で隆起した網紋があり、色は白色~淡褐色~褐色、また灰色~灰褐色。花期は9~10月。2n=4x=40(参考4)。
品種) 栽培されている地方により分類し、多数の品種がある。
 愛知名倉在来 , 山口在来 ,長野在来種 , 福島田村種(黒種), 岩手二戸種(黒種),福島田村種(白種), 宮城在来種(白種), 飛騨在来 , 飛系アルプス1 号 , 中国種 , 韓国種
※タイワンエゴマはエゴマに含められている。Flora of Chinaでは変種(var. purpurascens)としている。

(1) Perilla frutescens var. purpurascens (Hayata) H. W. Li タイワンエゴマ

  synonym Perilla ocymoides Linnaeus var. purpurascens Hayata
  synonym Ocimum acutum Thunberg
  synonym Perilla albiflora Odashima
  synonym Perilla frutescens var. acuta (Thunberg) Kudo
  synonym Perilla schimadae Kudo.
 日本、中国(建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、湖北省、江蘇省、江西省、山西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、台湾原産。中国名は野生紫苏 ye sheng zi su。荒地に生え、庭で栽培される。  茎は細かい細柔毛がある。葉は卵形、長さ4.5~7.5㎝×幅2.8~5㎝、細柔毛がある。果時の萼は長さ4~5.5㎜、基部には細柔毛があり、腺がある。小堅果は黄褐色、直径1~1.5㎜。2n=40。

1-3 Perilla frutescens var. hirtella (Nakai) Makino レモンエゴマ 檸檬荏胡麻 広義

  synonym Perilla citriodora (Makino) Nakai [YList]
  synonym Perilla hirtella Nakai トラノオジソ [YList]
  synonym Perilla hirtella Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 31: 286 (1917)

  synonym Perilla citriodora (Makino) Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 31: 285 (1917) レモンエゴマ

  synonym Perilla ocymoides f. citriodora Makino in Bot. Mag. (Tokyo) 28: 180 (1914)

  synonym Perilla setoyensis G.Honda in J. Jap. Bot. 71: 39 (1996) セトエゴマ

 日本(本州、四国、九州)、朝鮮原産。林縁に生える。
 葉からレモンのような強い香りがする。よく目にする草であるが交雑もあり、臭いの弱いものもある。くらがり渓谷の近くの県道37号線の道端に多く見られ、三河地方のものは臭いが強く、レモンエゴマであることがはっきりわかる。花が白色のものも多い。
 高さ50~90(~100)㎝、全体に紫色を帯びることが多く、紫色を帯びないこともある。茎は長さ0.2~0.3(0.5)㎜の下向きに曲がった短軟毛が密生する。葉柄は長さ7~12㎝。葉身はシソの葉より丸く、長さ7~13㎝×幅5~8cm、基部は広楔形、縁に鋸歯があるが通常基部で不明瞭になり、ときに基部まで明瞭で、鋸歯が丸みを帯びず、上面には長さ0.1~0.2㎜の微細な短毛があり、ときに長毛が散生し、下面には腺点がある。花序は2花の仮輪を多段に密につけ、花数は頂芽で60~80(~100)個、長さ10~18㎝。花冠は長さ(3~)4~5㎜、唇形の白色~淡紅色~紅色~紅紫色。苞は長さ約4㎜、緑白色または緑色、または縁が紅色を帯び、縁に白毛があり、果時には脱落または宿存する(トラノオジソ)。萼には長い毛があり、白毛と黄色の腺点が多い。雄しべや花柱は花冠から突き出ないまたは突き出る(トラノオジソ、セトエゴマ)。果実は4分果。分果は直径0.9~1.3㎜(三河地方のものは1.4~1.6)㎜のほぼ球形、紫色に熟し、乾くと褐色になり、表面に網目模様がある。2倍体、2n=20。
 日本の野生種のレモンエゴマ、トラノオジソ、セトエゴマは var. hirtellaに統合されている。

(1) Perilla citriodora (Makino) Nakai レモンエゴマ 檸檬荏胡麻 狭義

 本州中部以南の太平洋側、四国、九州、朝鮮に分布。
 高さ50~90㎝、茎には0.2~0.3㎜の下向きに曲がった短軟毛が密生する。葉は卵形~広卵形で長さ8~12㎝、幅6~8㎝、色は緑色~暗緑色、先は尖り、鋸歯があるが基部では曖昧である。葉面には0.1~0.2㎜の短毛があり、長毛は無い。葉の裏面や葉脈、葉柄が赤紫色を帯びることが多い。若い花穂は、苞が白色のために白っぽく、また、トラノオジソやセトエゴマに比べて早期に展開するため先端は截頭状でかさだかい。1花穂当りの花数は頂芽で60~80。花冠は淡紅色、長さ4~5㎜。雄しべは花冠からほとんど突出しない。葯の色は赤紫色。萼は花時の長さ4~6㎜で短軟毛が密に生え、0.7~1.2㎜の長毛が生える。苞は横長の楕円形~平円形で凸頭、巾3.5~4.5㎜、長さ4~5㎜、縁に長毛が疎らにあり、色は白っぽく、花穂が伸び出すと大きく反り返り、果時には殆ど脱落する。分果は偏球形で網紋があり、直径約1.3㎜。葉をもむとレモン様の香のするものがある。2n=20(参考4)。
(2) Perilla hirtella Nakai トラノオジソ 虎の尾紫蘇
 本州(関東以西の太平洋側)、四国、九州に分布する。山地谷筋に生え、稀に海岸部にも生育する。
 高さ50~90cm、茎には0.2~0.3㎜の下向きに曲がった短軟毛が密生する。葉は広楕円形で長さ7~11cm、幅5~8cm、色は淡緑色~暗緑色、先は尖り、鋸歯が基部まで明瞭にある。[レモンの香りがやや弱い。]葉面に約0.1㎜の短毛 があり、さらに1~2㎜の長毛が散生する。葉柄が赤紫色を帯びることがある。若い花穂は緑色で、苞があり、先細りの円柱状、シソやエゴマに比べてかなり長い。1花穂当りの花数は頂芽で80~100。花冠は唇形、[淡紅色、]紅色で長さ3~4㎜[長さ4~5㎜]、雄蕊が花冠から突出する。葯の色は赤紫色。萼は小さく、花時の長さ3~4㎜、幅約2㎜[果時に長さ5~6㎜]、長さ約0.1㎜の短軟毛が密生し、1.0~1.5㎜の長軟毛が生える。苞は卵円形~菱形に近い円形で先は急に尖り、長さ約5㎜、幅3.5~4.0㎜、縁に0.7~1.0㎜の長毛が密に生え、色は緑色で縁が紅色を帯びる。果時宿存性。苞の中肋先端部にも長毛の生えるものが多い。分果は偏球形で隆起した網紋があり、野生種3種のうちでは最も小さく、直径0.9~1.0㎜。2n=20。花期は9~10月。(参考4)。
(3) Perilla setoyensis G.Honda セトエゴマ 瀬戸荏胡麻
 本州(近畿以西)、四国に分布する。やや乾いた半日陰の林縁道端など、崩壊しやすい地形の草地に生える。
 高さ50~100㎝、茎には0.2~0.5㎜の下向きに曲がった短軟毛が密生する。葉は卵形~広卵形で長さ10~13㎝、幅6~8cm、先は尖り、鋸歯があるが基部では曖昧である。葉の色は鮮緑色~緑色で葉柄や葉の裏面がトラノオジソやレモンエゴマのように赤紫色を帯びることは殆ど無い。葉面には長さ0.1~0.2㎜の短毛があるが、トラノオジソのような長毛は無い。若い花穂は緑色、苞のつまった先細りの円柱形で形態はトラノオジソの花穂に類似する。1花穂当りの花数は頂芽で80~100。花冠は白色で長さ4~5㎜、雄しべが花冠から突出する。葯の色は初め白色、後に褐変し、紫色でない。萼は花時に長さ5~7㎜、幅約2~3㎜、長さ約0.1㎜の短軟毛が密生し、1.0~1.5㎜の長毛が生える。苞は卵円形~平円形で縁に0.5~1.0㎜の長毛が多く生え、長さ6~7㎜、幅4.5~5.0㎜、色は緑色で果時宿存性。分果は偏球形で隆起した網紋があり、直径1.0~1.2㎜。2n=20(参考4)。

参考

1) Flor of China
 Perilla
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=124553
2) World Flora Online
 Perilla
https://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000028769
3) Plants of the World Online | Kew Science
 Perilla
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:326475-2
4)Kyoto University Research Information Repository
 日本産シソ属植物の類縁および化学分類に関する研究 1999
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/73164/1/D_Ito_Michiho.pdf
5)植物研究雑誌 J. J. Bot. 71: 39-43 (1996)
A New Species of Perilla (Labiatae) from Japan Perilla setoyensis G. Honda セトエゴマ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/71/1/71_71_1_9041/_pdf/-char/ja
6)植物学雑誌 1912年 26 巻 303 号 en77-en82
 Observations on the Flora of Japan. (Continued from p. 28.)T. Makino
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jplantres1887/26/303/26_303_77/_pdf/-char/ja