レモンエゴマ 檸檬荏胡麻

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Flora of Mikawa

シソ科 Lamiaceae シソ属

学 名 Perilla frutescens var. hirtella (Nakai) Makino
 synonym Perilla citriodora (Makino) Nakai
 synonym Perilla hirtella Nakai
 synonym Perilla setoyensis G.Honda
レモンエゴマの花序
レモンエゴマの花
レモンエゴマの花と苞
レモンエゴマの苞
レモンエゴマの果実
レモンエゴマの葉裏の腺点
レモンエゴマの茎
レモンエゴマ
レモンエゴマの葉表
レモンエゴマの葉裏
レモンエゴマの分果
花 期 8~10月
高 さ 50~90㎝
生活型 1年草
生育場所 林縁
分 布 在来種  本州、四国、九州
撮 影 東栄町  15.9.23
レモンエゴマはシソ科シソ属の多年草。葉からレモンのような強い香りがする。よく目にする草であるが交雑もあり、臭いの弱いものもある。くらがり渓谷の近くの県道37号線の道端に多く見られ、ここのものは臭いが強く、レモンエゴマであることがはっきりわかる。花が白色のものも多い。
 日本の野生種のレモンエゴマ、トラノオジソ、セトエゴマは POWOではvar. hirtella(広義のレモンエゴマ)に統合されている。

1 Perilla frutescens var. hirtella (Nakai) Makino レモンエゴマ 檸檬荏胡麻 広義

  synonym Perilla citriodora (Makino) Nakai [YList]
  synonym Perilla hirtella Nakai トラノオジソ [YList]

  synonym Perilla citriodora (Makino) Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 31: 285 (1917) レモンエゴマ

  synonym Perilla ocymoides f. citriodora Makino in Bot. Mag. (Tokyo) 28: 180 (1914)

  synonym Perilla setoyensis G.Honda in J. Jap. Bot. 71: 39 (1996) セトエゴマ

 日本(本州、四国、九州)、朝鮮原産。林縁に生える。
 葉からレモンのような強い香りがする。よく目にする草であるが交雑もあり、臭いの弱いものもある。くらがり渓谷の近くの県道37号線の道端に多く見られ、三河地方のものは臭いが強く、レモンエゴマであることがはっきりわかる。花が白色のものも多い。
 高さ50~90(~100)㎝、全体に紫色を帯びることが多く、紫色を帯びないこともある。茎は長さ0.2~0.3(0.5)㎜の下向きに曲がった短軟毛が密生する。葉柄は長さ7~12㎝。葉身はシソの葉より丸く、長さ7~13㎝×幅5~8cm、基部は広楔形、縁に鋸歯があるが通常基部で不明瞭になり、ときに基部まで明瞭で、鋸歯が丸みを帯びず、上面には長さ0.1~0.2㎜の微細な短毛があり、ときに長毛が散生し、下面には腺点がある。花序は2花の仮輪を多段に密につけ、花数は頂芽で60~80(~100)個、長さ10~18㎝。花冠は長さ(3~)4~5㎜、唇形の白色~淡紅色~紅色~紅紫色。苞は長さ約4㎜、緑白色または緑色、または縁が紅色を帯び、縁に白毛があり、果時には脱落または宿存する(トラノオジソ)。萼には長い毛があり、白毛と黄色の腺点が多い。雄しべや花柱は花冠から突き出ないまたは突き出る(トラノオジソ、セトエゴマ)。果実は4分果。分果は直径0.9~1.3㎜(三河地方のものは1.4~1.6)㎜のほぼ球形、紫色に熟し、乾くと褐色になり、表面に網目模様がある。2倍体、2n=20。
 var. hirtellaに統合されたレモンエゴマ(狭義)、トラノオジソ、セトエゴマは次のとおり。

(1) Perilla citriodora (Makino) Nakai レモンエゴマ 檸檬荏胡麻 狭義

 本州中部以南の太平洋側、四国、九州、朝鮮に分布。
 高さ50~90㎝、茎には0.2~0.3㎜の下向きに曲がった短軟毛が密生する。葉は卵形~広卵形で長さ8~12㎝、幅6~8㎝、色は緑色~暗緑色、先は尖り、鋸歯があるが基部では曖昧である。葉面には0.1~0.2㎜の短毛があり、長毛は無い。葉の裏面や葉脈、葉柄が赤紫色を帯びることが多い。若い花穂は、苞が白色のために白っぽく、また、トラノオジソやセトエゴマに比べて早期に展開するため先端は截頭状でかさだかい。1花穂当りの花数は頂芽で60~80。花冠は淡紅色、長さ4~5㎜。雄しべは花冠からほとんど突出しない。葯の色は赤紫色。萼は花時の長さ4~6㎜で短軟毛が密に生え、0.7~1.2㎜の長毛が生える。苞は横長の楕円形~平円形で凸頭、巾3.5~4.5㎜、長さ4~5㎜、縁に長毛が疎らにあり、色は白っぽく、花穂が伸び出すと大きく反り返り、果時には殆ど脱落する。分果は偏球形で網紋があり、直径約1.3㎜。葉をもむとレモン様の香のするものがある。
(2) Perilla hirtella Nakai トラノオジソ 虎の尾紫蘇
 本州(関東以西の太平洋側)、四国、九州に分布する。山地谷筋に生え、稀に海岸部にも生育する。
 高さ50~90cm、茎には0.2~0.3㎜の下向きに曲がった短軟毛が密生する。葉は広楕円形で長さ7~11cm、幅5~8cm、色は淡緑色~暗緑色、先は尖り、鋸歯が基部まで明瞭にある。[レモンの香りがやや弱い。]葉面に約0.1㎜の短毛 があり、さらに1~2㎜の長毛が散生する。葉柄が赤紫色を帯びることがある。若い花穂は緑色で、苞があり、先細りの円柱状、シソやエゴマに比べてかなり長い。1花穂当りの花数は頂芽で80~100。花冠は唇形、[淡紅色、]紅色で長さ3~4㎜[長さ4~5㎜]、雄蕊が花冠から突出する。葯の色は赤紫色。萼は小さく、花時の長さ3~4㎜、幅約2㎜[果時に長さ5~6㎜]、長さ約0.1㎜の短軟毛が密生し、1.0~1.5㎜の長軟毛が生える。苞は卵円形~菱形に近い円形で先は急に尖り、長さ約5㎜、幅3.5~4.0㎜、縁に0.7~1.0㎜の長毛が密に生え、色は緑色で縁が紅色を帯びる。果時宿存性。苞の中肋先端部にも長毛の生えるものが多い。分果は偏球形で隆起した網紋があり、野生種3種のうちでは最も小さく、直径0.9~1.0㎜。2n=20。花期は9~10月。
(3) Perilla setoyensis G.Honda セトエゴマ 瀬戸荏胡麻
 本州(近畿以西)、四国に分布する。やや乾いた半日陰の林縁道端など、崩壊しやすい地形の草地に生える。
 高さ50~100㎝、茎には0.2~0.5㎜の下向きに曲がった短軟毛が密生する。葉は卵形~広卵形で長さ10~13㎝、幅6~8cm、先は尖り、鋸歯があるが基部では曖昧である。葉の色は鮮緑色~緑色で葉柄や葉の裏面がトラノオジソやレモンエゴマのように赤紫色を帯びることは殆ど無い。葉面には長さ0.1~0.2㎜の短毛があるが、トラノオジソのような長毛は無い。若い花穂は緑色、苞のつまった先細りの円柱形で形態はトラノオジソの花穂に類似する。1花穂当りの花数は頂芽で80~100。花冠は白色で長さ4~5㎜、雄しべが花冠から突出する。葯の色は初め白色、後に褐変し、紫色でない。萼は花時に長さ5~7㎜、幅約2~3㎜、長さ約0.1㎜の短軟毛が密生し、1.0~1.5㎜の長毛が生える。苞は卵円形~平円形で縁に0.5~1.0㎜の長毛が多く生え、長さ6~7㎜、幅4.5~5.0㎜、色は緑色で果時宿存性。分果は偏球形で隆起した網紋があり、直径1.0~1.2㎜。
 エゴマ P. frutescens var. frutescensは特有の臭いがあり、茎に短毛と縮れた毛が疎生し、葉は鋸歯がやや丸みを帯びる。また、花は白色が普通である。果実が1.5~1.9(約1.7)㎜とやや大きい。ただし、小粒の品種もある。
 シソ P. frutescens var. crispa はシソ特有の匂いがあり、茎に短毛と縮れた毛が疎生し萼が果時に長さ5~6㎜。葉が赤色でしわがあるチリメンジソ form. crispa 、赤色で葉にしわがないアカジソ form. purpurea 、葉が緑色のアオジソ form. viridis など品種が多い。