オモダカ 面高
Flora of Mikawa
オモダカ科 Alismataceae オモダカ属
別 名 | ハナグワイ |
中国名 | 野慈姑 ye ci gu |
英 名 | threeleaf arrowhead , swamp-potato , Chinese arrowroot , Japanese arrowhead , old world arrowhead , common arrow leaf |
学 名 | Sagittaria trifolia L. synonym Sagittaria trifolia L. var. angustifolia (Siebold) Kitag. synonym Sagittaria trifolia var. typica Makinosynonym Sagittaria japonica E.Vilm. |
花 期 | 8~10月 |
高 さ | 20~80㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 池、湖、沼地、水田、水路 |
分 布 | 在来種 日本全土、韓国、中国、台湾、ロシア、インド、パキスタン、ネパール、ブータン、アッサム、アフガニスタン、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン、イラン、イラク、ミャンマー、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア |
撮 影 | 豊川市 09.9.3 |
多年草。高さ20~80㎝。秋に匍匐枝を出し、通常長さ2~3㎝(栽培種のクワイなど大きいものは幅4~6㎝以下)の塊茎をつけて越冬する。葉は生育場所により様々である。沈水葉(水中葉)は線形。葉は少なくとも成熟すると水面上に出る(aerial)。水上葉(気中葉)は幅は様々で、長さ7~15㎝の矢じり形で、下の2個の側裂片が頂(中)裂片より長くなり、先が鋭く尖る。花は総状花序につき、3個ずつ輪生し、3個~多数つき、下部の1~3輪生は通常分岐する。苞は離生または基部が合着する。花は単性花で、花序の上部に黄色の雄しべが目立つ雄花、下部に雌花がつく。雄花だけの花序や雌花だけの花序もある。雌花は短い花柄があり、雄花は長さ0.5~1.5㎝の花柄がある。雄花、雌花とも直径約2㎝。萼片は反り返り、卵形、長さ3~5㎜×幅2.5~3.5㎜。花弁は3個、倒卵形、萼片の約2倍の長さ。雄しべは多数、葯は黄色。果実は扁平な痩果が多数集合して球形になり、表面にとげがある。痩果は斜めの倒卵形、長さ3~5㎜[長さ4.5~5.5㎜×幅4~5㎜]、扁平、翼があり、先端に直立した嘴を持つ。2n=22。花果期は5~11月[通常花期は8~10月]。
POWOでは下位分類を認めず、synonymとしている。栽培種のクワイ、シナクワイ、スイタクワイも園芸品種とされる。
ホソバオモダカ(f. longiloba)は著しく葉幅の狭いもの。葉の幅は変異が多く、現在では分類しない。
ヒトツバオモダカは葉の左右にはり出す裂片がないものであり、現在では分類しない。
食用のクワイはオモダカの栽培品種で、塊茎が2~3倍あるもの。学名はSagittaria trifolia L. subsp. leucopetala (Miq.) Hartogなどと分類されていたが、現在ではSagittaria trifolia L. 'Caerulea'である。中国のシナクワイや日本のスイタクワイもこれに含まれる。
類似のアギナシは匍匐枝を出さず、葉腋に多数の球芽をつけ、葉の側裂片の尖った先が丸くなる。
オモダカ属
family Alismataceae - genus Sagittaria水生の多年草、稀に1年草、水中生(submersed)、浮葉(floating-leaved)または抽水葉=水上葉(emersed:水面上に出る)、無毛~疎に毛がある。根茎はしばしばあり、たまに塊茎(tubers)=殖芽(turion)で終わる。匍匐茎(stolons)はしばしばあるが、球茎(corms)はない。塊茎は白色~褐色、平滑である。根には隔壁がある。葉は無柄または葉柄がある。葉柄は円柱形~三角形。葉身は半透明の斑点はなく、線形~倒卵形、基部は漸尖形~矛形(hastate)または矢じり形(sagittate)、縁は全縁、先は円形~鋭形。花序は総状花序、円錐花序、まれに散形花序、1~17個の輪生花が直立し、抽水または浮上し、まれに水中生[花序は普通、3個の花が輪生し、各花は3個の苞をもつ]。苞は粗いまたは繊細で、先は鈍形~鋭形、基部~上部まで平滑またはパピラがある。花は単性または雌雄混株(polygamous:単性花と両性花をもつ)、基部にまれに不稔の雄花の輪がある。雄花は小花柄があり、上部~雌花までにつく。雌花はほとんどが小花柄があり、まれに無柄である。苞は小花柄の基部につき、披針形、小花柄より短く、先は鈍形~鋭形である。小花柄は斜上~反り返る。花托は凸形。萼片は雄花では反り返り、雌花では反り返る~直立し、しばしば彫紋状であり(sculptured)、草質~革質。花弁は白色、まれにピンク色の斑点またはピンク色を帯び、全縁。雄しべは(6~)7~30本。花糸は線形~幅が広がり、無毛~軟毛がある。雌しべは1500本以上あり、螺旋状に配置され、星状に放射状には広がらず、離生。胚珠は1個。花柱は頂生またはほぼ内側につく。果実(痩果)は縦肋がなく、側部が扁平、外面に竜骨があるか、またはなく、外面に翼がしばしばあり、側翼がしばしば1個つき、湾曲し、先端又は側部に花柱の嘴をもち、腺がある。x=11。
世界に約43種があり、主に西半球、ヨーロッパ、アジアの熱帯と温帯に分布する。
※Flora of North Americaでは属の解説に球茎(corms)はないとされるが、種の解説では球茎(corms=tubersに似る)があるものも多い。
オモダカ属の主な種と園芸品種
1 Sagittaria aginashi Makino アギナシ 顎無し日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、ロシア原産。溜池畔、湿地、休耕田、用水路などに生える。
多年草。高さ30~80cm。葉腋に多数の球芽つけて繁殖し、ストロンはない。葉は根生し、長い葉柄がある。 葉身は矢じり形、頂裂片は披針形~線形、長さ7.5~17.5㎝、先は鈍形。側裂片は頂裂片より少し短く、先は鈍形、両面とも無毛。花茎は高さ30~80㎝、輪生総状花序をつける。雌花は下部にあり少数、花柄は長さ10~20mm。苞は3個、狭卵形。萼片3個、卵円形で長さ5~6mm。花弁3個、仮雄しべがあり、雌しべは多数、花柱は短く先は曲がる。 雄花は花序の上部に多数つき、花柄は10~30mm。花弁3個で円形、長さ10~13mm。雄しべは多数、葯は黄色、花糸は扁平で線形。痩果は広い翼があり、倒卵形、全長3~3.5mm。花期は7~10月。
2 Sagittaria calycina Engelm. サジタリア・カリキナ
synonym Sagittaria montevidensis subsp. calycina (Engelmann) Bogin
USA,メキシコ原産。標高5~2000mの湖や川の干潟に生える。
干潮時に漂流しない1年草または多年草。葉は水中または水面に出る。水中葉は無柄、葉身は線形。抽水葉(水面葉)は葉柄があり、葉身は矛形~矢じり形。花序は1~15 個の輪生で、浮遊または水面に出る。苞は離生。花は雌花で、不稔の雄しべの輪がある。花弁の基部に紫色の斑点はない。花期は夏中期~秋。
3 Sagittaria chapmanii (J.G.Sm.) C.Mohr サジタリア・チャンプマニー
synonym Sagittaria graminea subsp. chapmanii (J. G. Smith) R. R. Haynes & Hellquist
synonym Sagittaria graminea var. chapmanii J. G. SmithUSA(アラバマ州、フロリダ州、ジョージア州、サウスカロライナ州)に分布。英名はChapman's arrowhead。標高0~100mの沼地、池、小川の縁に生える。
多年草、高さ100㎝以下。根茎は粗い。ストロンは無い。球茎は無い。葉は水中又は水面上に出る。沈水葉(submersed)は下面に角(かど)があり、上面は平らな葉状体(phyllodial:葉状柄ともいう)、長さ6.4~35㎝×幅1㎝以下。水上葉(emersed)は三角形の長さ6.5~17㎝(通常15㎝以上)の葉柄をもち、葉身は線形~線状倒披針形(狭い楕円形)、長さ2.5~17.4㎝×幅0.2~4㎝、先は鋭形。花序は枝分かれし円錐花序、花が1~12輪生し、水上に出て、長さ2.5~21㎝×幅1~8㎝。花序柄は長さ6.5~29.7㎝。苞は全長の1/4以上に渡って合着し、広錐形~披針形、長さ20~50㎜、粗く、パピラは無い。果時の花柄は開出し、円筒形、長さ0.5~5㎝。花は直径2.3㎝以下。萼片は反曲~開出し、花を包まない。花糸は広がり、葯より短く、軟毛がある。雌花は長さ0.5~3㎝の花柄があり、不稔の雄しべの輪は無い。果時の頭状花序は直径0.6~1.5㎝。痩果は倒披針形、外側の竜骨はなく、長さ1.5~2.8㎜×幅1.1~1.5㎜、嘴があり、面に、いぼは無く、外側の翼は0~1個、±全縁、腺が1~2個、嘴は側部に直立し、長さ0.2㎜。花期は夏~秋(5~9月)。
4 Sagittaria graminea Michaux サジタリア・グラミネア
北アメリア(カナダ、USA)、南アメリカ(キューバ)原産。英名はcoastal arrowhead , delta arrowhead , grass-leaf arrowhead , slender arrowhead , grassy arrowhead。標高0~700mの河川、湖沼、潮汐地帯に生える。和名ヒメオモダカの名で水草として販売されている。多年草、高さ100㎝以下。根茎は粗い。ストロンは無い。球茎は無い。葉は水中又は水面上に出る。沈水葉(submersed)は下面に角(かど)があり、上面は平らな葉状体(phyllodial:葉状柄ともいう)、長さ6.4~35㎝×幅1㎝以下。水上葉(emersed)は三角形の長さ6.5~17㎝の葉柄をもち、葉身は線形~線状倒披針形長さ2.5~17.4㎝×幅0.2~4㎝。花序は総状花序、花が1~12輪生し、水上に出て、長さ2.5~21㎝×幅1~8㎝。花序柄は長さ6.5~29.7㎝。苞は全長の1/4以上に渡って合着し、広錐形~披針形、長さ20~50㎜、粗く、パピラは無い。果時の小花柄は開出し、円筒形、長さ0.5~5㎝。花は直径2.3㎝以下。萼片は反曲~開出し、花を包まない。花糸は広がり、葯より短く、軟毛がある。雌花は長さ0.5~3㎝の小花柄があり、不稔の雄しべの輪は無い。果時の頭状花序は直径0.6~1.5㎝。痩果は倒披針形、外側の竜骨はなく、長さ1.5~2.8㎜×幅1.1~1.5㎜、嘴があり、面に、いぼは無く、外側の翼は0~1個、±全縁、腺が1~2個、嘴は側部に直立し、長さ0.2㎜。2n=22。花期は夏~秋。
Flora of North Americaでは3亜種(subsp. chapmanii, subsp. graminea, subsp. weatherbiana)に分類しているが、POWOではそれぞれ独立種(S. chapmanii, S. graminea, S. weatherbiana)としている。
品種) 'Crushed Ice'
5 Sagittaria guayanensis Kunth サジタリア・グアヤネンシス
中国、台湾、インド、ネパール、ブータン、ミャンマー、パキスタン、アフガニスタン、カンボジア、バングラデシュ、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、中央アフリカ、マダガスカル、メキシコ、中央アメリカ、南アメリカ、西インド諸島原産。中国名は冠果草 guan guo cao。
2つの亜種、新熱帯(Neotropics)の S. guayanensis subsp. guayanensis と、古熱帯(Paleotropics)のSagittaria guayanensis subsp. lappula (D. Don) Bogin。に分けられた。2つの亜種は、分布域に加えて、果実の形と大きさによって分けられた。Sagittaria guayanensis subsp. lappulaは2.5㎜を超える扁平な痩果を持ち、一方subsp. guayanensisは2.5㎜未満のふっくらとした痩果を持つ。
5-1 Sagittaria guayanensis subsp. guayanensis
メキシコ、中央アメリカ、南アメリカ、西インド諸島原産。標高0~100mの水田、一時的な池、道端の溝、小川に生える。
1年草または多年草、高さ50㎝まで。根茎はなく、匍匐茎は無く、球茎(corms?=tuber)がある。葉は水中の葉状体(phyllodial)であり、平ら、長さ4~7㎝×幅0.4~0.8㎝、または浮遊の葉柄は三角形、長さ42㎝まで。葉身は矢じり状(sagittate)、長さ3.5~10.5㎝×幅1.5~8.5㎝、基部の裂片は葉身の残りの部分の長さより短い。花序は総状花序で、1~7個の輪生し、浮遊し、長さ0.9~9㎝×幅0.6~4㎝。花序柄は長さ10.9~22㎝。苞は離生または全長の1/4未満が合着し、広披針形~線状披針形、長さ 2.8~15㎜、繊細、パピラはない。果時の小花柄は広がり~反り返り、円筒形で、長さ0.6~2.1㎝。花は直径1.2~2㎝。萼片は雄花で広がり、雌花では直立し、花または果実の頭を包む。花糸は円筒形、葯の長さとほぼ等長、無毛。雌花は小花柄があり、不稔の雄しべの輪をもつ。果実の頭は直径0.5~1.8㎝。痩果は倒披針形で、外面に竜骨があり長さ1.7~2.2㎜×幅1.2~1.5㎜、嘴があり、面に疣状突起があり、翼は1~3個、±歯状、腺はなく、嘴は側部にあり、直立し、長さ0.2~0.5㎜。花期は夏~秋。
5-2 Sagittaria guayanensis Kunth subsp. lappula (D.Don) Bogin オモダカモドキ 面高擬
中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、湖北省、湖南省、江西省、雲南省、浙江省)、台湾、インド、ネパール、ブータン、ミャンマー、パキスタン、アフガニスタン、カンボジア、バングラデシュ、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、中央アフリカ、マダガスカル原産。池、湖沼、沼地、水田、水路に生える。匍匐茎は通常ない。浮葉は広卵形~心状卵形、長さ1.2~9㎝×幅1~10㎝、基部は深い心形、先は鈍形。水中葉は線形または披針形、長さ3~11㎝×幅5~10㎜。花序は総状花序、長さ8~40㎝、3個の花が2~6輪生し、苞は基部で合着する。両性花は通常下部の1~4輪につき、小花柄は長さ1~1.5㎝で太くなる。雄花は小花柄が長さ2~5㎝。萼片は開花後に反り返らず、卵形、長さ0.5~1.5㎝×幅3~15㎜。花弁は早落性(fugacious)、倒卵形で、萼片とほぼ等長。雄しべは6本~多数、葯は黄色。痩果は倒卵形または楕円形、長さ2~4㎜×幅1.5~3㎜、鶏冠状の翼をもち、斜めの背側の嘴がある。花期は5~9月。果期は6~11月。2n=22。
6 Sagittaria latifolia Willd. サジタリア・ラティフォリア
北アメリカ(カナダ、USA、メキシコ)原産。英名はwapato , broad leaf arrowhead , common arrowhead , duck-potato , muskrat-potato , swamp potato , swan potato , Indian potato。標高0~1500mの湿地、池、小川や湖の縁に生える。伝統的なネイティブアメリカン野菜。
多年草、高さ45cmまで。根茎はない。匍匐茎はある。クワイに似た球茎(corms=tuber)がある。葉は水面上に出て(emersed)、葉柄は三角形、直立~斜上し、長さ6.5~51㎝。葉身は矢状(sagittate)、まれに矛形(hastate)、長さ1.5~30.5㎝×幅2~17㎝、基部の裂片は葉身の残りの部分と同程度かそれ以下。花序は総状花序、まれに円錐花序、3~9輪生、浮遊し、長さ4.5~28.5㎝×幅4~23㎝。小花柄は長さ10~59㎝。苞は全長の1/4以上が合着し、楕円形~披針形、長さ3~8mm、繊細でパピラはない。果時の小花柄は広がり、円筒形、長さ0.5~3.5㎝。花は直径4㎝まで。萼片は反曲~広がり、花や果実の頭(fruiting head)を包んでいない。花糸は円筒形、葯より長く、無毛。雌花は小花柄があり、不稔の雄しべの輪はない。果実の頭の直径は1~1.7㎝。痩果は倒披針形、背側の竜骨はなく、長さ2.5~3.5㎜×幅2㎜以下で嘴があり、面に疣状突起はなく、翼はなく、腺は(0~)1(~2)個あり、嘴は側部にあり、水平で、長さ1~2㎜。2n=22。花期は夏~秋。
品種) 'Flore Pleno' (d)
7 Sagittaria montevidensis Cham. et Schltdl. タイリンオモダカ 大輪面高
synonym Sagittaria montevidensis subsp. montevidensis南アメリカ原産。英名はgiant arrowhead , California arrowhead。海抜0~10mの川の湿地、干潟に生える。北アメリカ(アラバマ州、フロリダ州、ジョージア州)、メキシコ湾沿岸、アフリカに帰化。
1年草または多年草、高さ100cmまで。根茎あり、匍匐茎あり、球茎あり。葉は水中と浮上する。水中葉はないまたは葉状体(phyllodial)で、平らで、長さ17´2cmまで。浮上葉は三角形の葉柄を持ち、長さ21~55cm。葉身は逆立から矢状、長さ2.5~17.5㎝×幅0.6~22cm、裂片は葉身の残りの部分より長いか等しい。花序は総状花序または円錐花序で、1~15個の輪生があり、浮遊または浮上し、長さ1.5~28㎝×幅1.5~15cm。花柄は15~47cm。苞葉は明瞭または合着し、全長の1/4未満、披針形から楕円形、長さ4~34mm、繊細で乳頭状ではない。果実の小花柄は反り返った棍棒状で、長さ0.5~4.2 cm。花は直径2~5 cm。萼片は雄花では広がり、雌花では直立し、花または果実の頭を包む。花弁は白色、基部にワイン赤色の斑紋がある。花糸は円筒形、葯より長く、無毛。雌花は小花柄があり、不稔の雄しべの輪は有または無。果実の頭は直径1.2~2.1 cm。痩果は倒披針形、外側に竜骨はなく、長さ2~4.3㎝×幅0.7~1.5㎜、嘴があり、面には疣状突起はなく、翼はなく、腺は1個、嘴は側部にあり、水平、長さ0.4~0.8㎜。花期は夏~秋(7月~10月)。
3亜種に分けられていたが、Sagittaria montevidensis、Sagittaria calycina、Sagittaria spongiosaの3種とされた。
8 Sagittaria natans Pall. カラフトグワイ 樺太慈姑
日本(北海道、岩手県)、韓国、中国(黒龍江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、新疆ウイグル自治区)、モンゴル、ロシア、カザフスタン、ヨーロッパ原産。中国名は浮叶慈姑 fu ye ci gu。池、水路に生える。
匍匐茎を持つ。浮葉は線形、披針形~楕円形または矢じり形、長さ5~17㎝、基部は楔形~円形または心形、2個の短い裂片があり、側裂片は中裂片より短い。水中葉は披針形または縮小して葉状体(phyllodes)になる。花序は総状花序、長さ5~25㎝、3個の花が2~6輪生し、少なくとも下部の苞はない。花は単性花で、雌花は下部の1または2輪生で、小花柄は長さ5~12㎜、雄花は小花柄が長さ1~2㎝である。萼片は通常反り返らず、広卵形、長さ3~4㎜×幅約3㎜。花弁は倒卵形で長さ8~10㎜×幅約5.5㎜。雄しべは多数、葯は黄色。痩果は斜めの倒卵形、長さ2~3㎜×幅1~2.5㎜、ほぼ背に短い嘴を持つ。花期と果期は6~9月。2n=22。
9 Sagittaria platyphylla (Engelm.) J.G.Sm. ヒロハオモダカ 広葉面高
北アメリカ(USA、メキシコ)、南アメリカ(パナマ)原産。英名はdelta arrowhead。 標高0~900mの河川や湖沼に生える。多年草、高さ150㎝まで。根茎はなく、匍匐茎があり、球茎がある。球茎は長さ40㎜×幅15mm・以下。葉は水中と浮上する(emersed)。水中葉は無柄、葉状体(phyllodial)、扁平、長さ26㎝×幅0.5㎝まで。浮上葉は葉柄があり、葉柄は±三角形、長さ21~70.5cm、葉身は線状卵形~卵形、長さ4.6~16.4㎝×幅0.7~6.1㎝。花序は総状花序、3~9個の輪生、浮上し、高さ2.5~10㎝×幅2~4.5㎝。花序柄は長さ22~60㎝。苞は全長の1/4以上が合着し、披針形、高さ3~5.5㎜、繊細、パピラはない。果時の小花柄は広がって反り返った円筒形で、長さ0.5~3㎝。花は直径1.8㎝まで。萼片は広がって反り返り、花や果実の頭を包まない。花糸は膨張し、葯より長く、軟毛がある。雌花は小花柄があり、不稔の雄しべの輪はない。果実の頭は直径0.7~1.2㎝。痩果は倒披針形、外側に竜骨はなく、長さ1.2~2㎜×幅0.8~1.2㎜、嘴があり、面に疣状突起があり、翼はなく、腺もなく、嘴は側部につき、水平~直立し、長さ0.3~0.6㎜。2n = 22。花期は夏~秋。
10 Sagittaria pygmaea Miq. ウリカワ 瓜皮
日本(本州の福島県以西、四国、九州、沖縄)、韓国、中国、台湾、タイ、ベトナム原産。中国名は矮慈姑 ai ci gu。英名はdwarf arrowhead, pygmy arrowhead 。
多年草。高さ10~30㎝。地中に白色の長い匐枝を出し、その先端に小さな塊茎(直5㎜以下)をつけて増える。葉はすべて根元につき、長さ8~16㎝、幅4~8㎝の線形。雌雄同株、単性花。花は1~2段に輪生する。雄花は数個つき、有柄。雌花は1個、まれに2個つき、無柄。上段の花輪には雌花はつかない。花の直径は約2㎝。花弁は白色、3個。萼片は緑色、3個。雄花の雄しべ12~14個。雌花の雌しべは多数。痩果は長さ3~5㎜、幅3~3.5㎜、扁平、不規則に裂けた翼がある。2n=22。花期は7~9月。
11 Sagittaria sagittifolia L. セイヨウオモダカ 西洋面高
synonym Sagitta major Scop.
中国、ロシア、西アジア、コーカサス、ヨーロッパ原産。英名はarrowhead , Old World arrowhead
ランナーと球茎を持つ多年草、まれに根茎を持つ。球茎は6~10個つき、小さなタマネギ形。葉は浮上、浮遊、または水中に生える。最初の葉は水中で根生し、帯状で幅3~15㎜、長さ1mに達する。浮上した葉は矢じり形で、線形~卵形の三角状の葉身は長さ3~16 ㎝x幅0.3~7㎝、線形~披針形の三角形の基部の裂片は長さ2~20㎝x 0.2~4㎝、浮葉は線形~長円形、まれに心形、水中に生える葉は線状の扁平な葉状体(phyllodia)に変化し、長さ30cm以上になり、葉柄は長さ10~100㎝。花茎は長さ10~100㎝で、2~10輪生の花が付き、たまに最下部の輪生で分岐する。苞は離生または基部で結合し、多少硬く、披針形、長さ0.3~1.5㎝。雌花の小花柄は斜上し、長さ0.5~1.5㎝、たまにほぼ無柄になる。雄花の小花柄は典型的にはより長く、やや細い。萼片は反り返り、長さ0.4~0.7㎝。花弁は白色で、典型的には基部に紫色の斑点があり、萼片の約2倍の長さである。雄しべは多数、無毛。花糸は線形、長さ1~2㎜で、通常、線形~卵形の葯よりも長い。成熟した花托は直径1~2㎝。痩果は倒卵形~ほぼ円形、長さ2.5~4.5㎜x幅1.6~3.5㎜、背側の翼は広く、幅1.3㎜、腹側の翼の約2倍の幅になり、面には装飾がないか、または樹脂管が1本あり、先端の直立した嘴は長さ0.2~0.8㎜。花期は6~8月。(Memoirs of the New York Botanical Garden)
12 Sagittaria spongiosa (Engelm.) Werier サジタリア・スポンジオサ
synonym Sagittaria montevidensis subsp. spongiosa (Engelm.) BoginUSA東部(コネチカット州、デラウェア州、メイン州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニューハンプシャー州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ペンシルバニア州)原産。英名はTidal arrowhead。海抜0~5mの汽水から淡水の干潟および塩性湿地に生える。 1年草、干潮時に打ち上げられることが多い。葉は水面に浮き無柄、葉状体(phyllodial)、披針形、または葉柄があり、葉身はへら形、まれに矢じり形になる。花序は1~4輪生で水面に浮く。苞は合着する。花は雌花で、不稔の雄しべの輪がある。花弁の基部に紫色の斑点はない。2n=22。花期は夏~秋(7~10月)。
13 Sagittaria subulata (L.) Buchenau アメリカウリカワ
北アメリカ(USA)、南アメリカ(コロンビア)原産。英名はnarrow-leaf arrowhead。別名はヒメウキオモダカ。海抜0~100mの小川や汽水湾に生える。
多年草、高さ40cmまで、潮汐泥地に生える。根茎はなく、匍匐茎があり、球茎がある。葉は水中に生え、葉状体(phyllodial)、レンズ形、長さ5~40㎝×幅0.1~0.4㎝、まれに浮遊し、葉柄は円錐形で長さ2.4~4㎝、葉身は線状披針形~卵形、長さ1~2.5㎝×幅0.3~1.5㎝。花序は総状花序で2~7輪生、浮遊し、長さ2~11㎝×幅1.5~4.5㎝。花序柄は長さ5~40㎝。苞は全長の1/4以上が合着し、錐形、長さ1.5~4.2㎜、繊細、パピラはない。果時の小花柄は反り返り、円筒形~こん棒形、長さ0.2~1.1㎝。花は直径0.4~1.2㎝。萼片は雄花では広がって反り返り、雌花では直立し、花または果実の頭を包む。花糸は幅が広がり、葯より長く、無毛。雌花は小花柄があり、ときに不稔の雄花の輪がある。果実の頭は直径0.55~0.8㎝。痩果は倒披針形、外側に竜骨があり、長さ2㎜×幅1.5㎜、嘴があり、面は疣状突起がなく、翼が1~2 個、円鋸歯があり、腺は0~1個、嘴は側部にあり、直立し、長さ0.2~0.4㎜。2n=22。花期は夏~秋。
14 Sagittaria trifolia L. オモダカ 面高
synonym Sagittaria trifolia L. var. angustifolia (Siebold) Kitag.
synonym Sagittaria trifolia L. var typica Makino
synonym Sagittaria japonica E.Vilm.
日本全土、韓国、中国、台湾、ロシア、インド、パキスタン、ネパール、ブータン、アッサム、アフガニスタン、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン、イラン、イラク、ミャンマー、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア原産。中国名は野慈姑 ye ci gu。英名はthreeleaf arrowhead , swamp-potato , Chinese arrowroot , Japanese arrowhead , old world arrowhead , common arrow leaf。別名はハナグワイ。池、湖、沼地、水田、水路に生える。
多年草。高さ20~80㎝。秋に匍匐枝を出し、塊茎をつけて越冬する。葉は生育場所により様々である。沈水葉(水中葉)は線形。葉は少なくとも成熟すると水面上に出る(aerial)。水上葉(気中葉)は幅は様々で、長さ7~15㎝の矢じり形で、下の2個の側裂片が頂(中)裂片より長くなり、先が鋭く尖る。花は総状花序につき、3個ずつ輪生し、3個~多数つき、下部の1~3輪生は通常分岐する。苞は離生または基部が合着する。花は単性花で、花序の上部に黄色の雄しべが目立つ雄花、下部に雌花がつく。雄花だけの花序や雌花だけの花序もある。雌花は短い花柄があり、雄花は長さ0.5~1.5㎝の花柄がある。雄花、雌花とも直径約2㎝。萼片は反り返り、卵形、長さ3~5㎜×幅2.5~3.5㎜。花弁は3個、倒卵形、萼片の約2倍の長さ。雄しべは多数、葯は黄色。果実は扁平な痩果が多数集合して球形になり、表面にとげがある。痩果は斜めの倒卵形、長さ3~5㎜[長さ4.5~5.5㎜×幅4~5㎜]、扁平、翼があり、先端に直立した嘴を持つ。2n=22。花果期は5~11月[通常花期は8~10月]。
POWOでは下位分類を認めず、synonymとしている。栽培種のクワイもシナクワイも園芸品種とされる。
14-1 Sagittaria trifolia subsp. trifolia オモダカ 面高 狭義の野生
日本全土、朝鮮、中国、台湾、ロシア、ウクライナ、南アジア原産。中国名は野慈姑 ye ci gu。池、湖、沼地、水田、水路に生える。塊茎は通常長さ2~3㎝。葉は大きく、中裂片は線形ではなく、幅1.5㎝以上あり、先は尖鋭形、側裂片は中裂片の1~1.4倍の長さがある。花序の基部には1~2 (~3)の輪生枝がある。
14-2 Sagittaria trifolia L. subsp. leucopetala (Miq.) Q.F.Fang クワイ 慈姑
synonym Sagittaria sagittifolia var. leucopetala Miquelsynonym Sagittaria trifolia var. edulis (Schlechtendal) Ohwi ex W. T. Lee
synonym Sagittaria trifolia var. sinensis (Sims) Makino.栽培種。中国名は华夏慈姑 hua xia ci gu。シナクワイ(var. sinensis)慈姑 ci guを含む。
塊茎は長さ5~10㎝×幅4~6㎝。葉は大きく、中央の裂片は広卵形、先は鈍形。花序は基部に3本の輪生枝を持ち、各輪生枝は3本以上に分岐する。
14-3 Sagittaria trifolia L. f. longiloba Makino ホソバオモダカ 細葉面高
synonym Sagittaria trifolia var. longiloba (Turcz.) Kitag.
著しく葉幅の狭いもの。中国名は剪刀草。
14-4 Sagittaria trifolia L. var. alismifolia (Makino) Makino ヒトツバオモダカ 一つ葉面高
葉の左右にはり出す裂片がないもの。別名はサツマオモダカ。オモダカの栽培品種
日本で主に栽培されているのはアオクワイといわれ、塊茎が藍色、直径約5㎝までの球形~の扁球形、粉質で、味が良い。旬は11~12月。日本では芽がついているため、「芽が出る」とかけ、縁起が良いことから、おせち料理の1品として食べる習慣がある。Flora of China ではシナクワイ(var. sinensis)をクワイ Sagittaria sagittifolia subsp. leucopetalaに含めて扱っている。ヤエオモダカは花の観賞用。
品種) 'Caerulea'クワイ(広義)、'Aokuwai'青クワイ(暗青色、藍色)、'Sirokuwai'白クワイ(乳白色)='Sinensis' シナクワイ ,'Suita Kuwai'吹田クワイ(小粒) , 'Plena'ヤエオモダカ
(1) Sagittaria trifolia L. 'Caerulea' クワイ 慈姑
synonym Sagittaria trifolia f. caerulea Makino
synonym Sagittaria trifolia L. var. edulis (Siebold ex Miq.) Ohwi
synonym Sagittaria trifolia L. subsp. leucopetala (Miq.) Q.F.Fang [Flora of China]
synonym Sagittaria sagittifolia L. subsp. leucopetala (Miq.) Hartogオモダカの食用の栽培品種。別名はアオクワイ。オモダカの塊茎は小さく、苦くて食べられないが、クワイのいもはサトイモのように食べられる。日本では栽培されてきた歴史が古く、また葉の形が独特なため、地域により様々な呼び名があり、田草、燕尾草、クワエなどが知られている。
多年草、水生、長さ110~125㎝まで。葉は幅が広く、長さ30㎝までの切り欠きが無い矢じり形、内部は海綿質。匍匐茎は茎の各節から発生し、長さ60~80㎝まで、節から2次の匍匐茎が2~3本生じ、匍匐茎の先端には塊茎(球茎)がつき、塊茎は直径約(1.5)3~4(5)㎝(Mサイズ:2.7~3.3㎝)、塊茎の底が平らな系統を[新田クワイ]、やや腰高で円球系統のものを[京クワイ]と呼び区別し、青味を帯びて水平に節輪が見られ、薄い鱗片に包まれて、先端部に長さ5~6㎝の頂芽がつく。雌雄異花同株、円錐花序に白色の花がつく。花後はほとんど結実しない。
【e-Flora of Thailandの解説】
無毛またはまばらに毛のある草本で、高さは100㎝まで。球茎は長さ2.5㎝×幅3cm。匍匐茎は長さ18㎝×幅0.3㎝で、しばしば先端に塊茎があり、塊茎は細長く、長さ約5~7㎝。葉は水中、浮遊、または地上に出る。水中葉は葉状体で無柄、長さ15㎝×幅0.7㎝まで。浮遊葉には葉柄があり、葉柄は円錐形で長さ28㎝まで、基部には鞘があり鞘は長さ7㎝まで。葉身は緑褐色で大部分は矢じり形、長さ3~5.5㎝×幅0.9~1.5cm、3~5本の葉脈があり、先は鈍形~鋭形、基部の裂片は長さ0.7~1.4㎝、1~2本の葉脈があり、先端は0.4~0.9㎝離れる。水上葉は葉柄があり、葉柄は三角形、長さ80㎝まで、幅1.5~3㎜、基部には長さ20㎝までの鞘があり、葉身は緑褐色で、矢じり形で、幅3.5~16cm×幅1.2~8㎝、葉脈は5~9本、先は鋭形、基部の裂片は長さ4.5~15㎝で1~4本の葉脈があり、先端は1.5~23㎝m離れる。花序は単純またはまれに円錐花序、2~10の輪生があり、水面上に出て(emergent)、幅4~35㎝×幅0.7~15㎝、輪生して3花がつく。花序柄は三角形、長さ5~30㎝×幅1.1~3㎜。雄花の苞は離れ、披針形~線形、繊細で、長さ2~4㎜、先は鋭形。心皮のある花(雌花)の苞は離れ、広披針形、繊細、長さ約 5㎜、先は丸い鋭形。雄花の小花柄は開出~直立し、円筒形、無毛、長さ5~10㎜×幅約0.2㎜。心皮のある花(雌花)の小花柄は直立~開出し、花時と果時に円筒形で無毛、長さ0.5~1㎝×幅約0.3㎜。花は不完全(放射相称ではない)。雄花は中央に不稔の心皮がなく、萼片は直立~後屈し、約・長さ3㎜×幅2㎜。花弁は爪部があり、長さ0.8~1.3㎝×幅0.7~0.9㎝。雄しべは多数。花糸は無毛、円筒形。葯は線形、先は丸い鋭形。心皮のある花(雌花)は不稔雄しべの輪がなく、花時と果時に萼片が直立し、約・長さ3㎜×幅2㎜。花弁は爪部があり、長さ0.8~1㎝×幅0.5~0.9㎝m、爪部は紫色~赤色、長さ約1.5㎜。集合果は直径約0.9㎝。痩果は倒披針形、嘴があり、竜骨があり、約・長さ2.5㎜×幅約1.5㎜、面には疣状突起はなく、0~3個の腺があり、側翼はなく、縁は全縁、嘴は側方にあり、直立し、長さ0.3~0.4㎜[e-Flora of Thailand:Sagittaria trifolia L. subsp. leucopetala (Miq.) Hartog]。
(2) Sagittaria trifolia L.'Sinensis' シナクワイ 志那慈姑
synonym Sagittaria trifolia L. var. sinensis (Sims) Makino
synonym Sagittaria trifolia L. var. sinensis Sims
中国南部に分布し、湿地や池に生え、水田でもよく栽培されている。中国名は慈姑 ci gu。草丈も大きく、葉も大型で葉色はやや淡い。別名はシナグワイ、ハクグワイ。中国では広く栽培されているが、日本では栽培は少なく、シロクワイの系統。塊茎は灰白色で多少食味が淡白で苦味が弱く、肉質も優れている。
多年草、直立性、水生または湿原に生える。根茎は横に走り、比較的太く、先端が肥大し、塊茎(球根状)ができる。球根は楕円形または球形で、長さ5~8㎝×幅4~6㎝・以下。葉は幅広で厚く、矢じり形、葉の長さと幅は様々で、上部の葉の先は鈍形で卵形~広卵形、通常は頂裂片が側裂片よりも短く、比は約1:1.2~1:1.5、ときに、側裂片が長くなる。頂裂片と側裂片の間は狭まり、葉柄の基部は徐々に広がり、鞘状になり、縁は膜質、横脈があるか、目立たない。花茎は直立し、高さ(15~)20~70㎝、またはそれ以上、通常は高くて丈夫。花序は総状花序形または円錐花序、長さ5~20㎝、ときに長くなり(長さ20~60㎝、ときに80㎝を超え)、1~2(3)枝があり、多数の花の輪があり、輪ごとに2~3個の花がつき、苞は3個あり、基部で合着し、先が尖る。花は単性、花被片は後屈する。外花被片は楕円形または広卵形、長さ3~5㎜×幅2.5~3.5mm、内花被片は白色~薄黄色、内側に紫色の斑点があり、長さ6~10㎜×幅5~7㎜、基部は狭まる。雌花は通常1~3個が輪生し、小花柄は短く太い。心皮は多数、側面は平ら。花柱は腹側から斜めに斜上する。雄花は複数輪生し、小花柄は斜上し、長さ約1.5㎝、雄しべが多数あり、葯は黄色、長さ1~1.5(~2)㎜、花糸は長さが異なり、長さ約0.5~3㎜、通常外側の輪の花糸は短く、内側に行くほど長くなる。痩果は両側が平らで、長さ約4㎜×幅約3㎜、倒卵形で翼があり、背側の翼はやや不規則で、果実の嘴は短く、腹側から斜めに斜上する。種子は褐色。花果期は5~10月(通常花は8~10月)。
var. sinensisは、植物が高くて丈夫であること、葉が幅広で厚いこと、上部の葉の先は鈍形で卵形~広卵形であること、匍匐茎の端が球根状に拡大していること、という点で基本変種とは異なる。球根は楕円形または球形で、長さ5~8㎝×幅4~6㎝・以下。円錐花序は高く、長さ20~60㎝、ときに80㎝を超え、基部に(1~2)(3)本の枝を出し、下部に雌花が1~2輪生し、主軸に雌花が3~4輪生し、側枝に位置し、雄花は複数の輪生で上部につき、大きな円錐花序を形成する。果期には水中にあることが多く、果期の花托は扁円形、直径4~5㎜、高さ約3㎜。種子は褐色、小突起がある。
(3) Sagittaria trifolia L. 'Suita Kuwai' スイタクワイ 吹田慈姑
synonym Sagittaria trifolia f. suitensis Makino
synonym Sagittaria trifolia var. sinensis (Sims) Makino
大阪府吹田市の名産、伝統野菜。オモダカに最も近いクワイでありイモは一般的な青クワイより小粒で、味がほっくりとして濃く、独特のほろ苦さの中にうまみがあるのが特徴。吹田くわいは栽培の歴史が古く、全体にやや小型、高さ87㎝以下。水生で水がなくなるとすぐに葉が枯れるので、常に大量の水を必要とする。葉は矢じり形、白クワイや青クワイよりやや小さく葉柄も短く、長さ57㎝以下。葉鞘は長さ約20㎝まで。白クワイや青クワイに比べよく開花・結実し、自家受粉で種子を作り、多量の種子ができる。地下茎は基部から十数本が根のように地下に伸び、秋に先端部にほぼ球形の塊茎(イモ)をつけ、白クワイや青クワイより塊茎の数が多く、1株につき10~20(35)個つける。塊茎は小粒で、青クワイの半分程度の大きさであり、幅約1~3㎝、帯灰色、青色、赤紫色、その中間色、白色と色は様々であり、青クワイと区別が困難な場合もある。
(4) Sagittaria trifolia L. 'Plena' ヤエオモダカ
観賞用の栽培種。花が八重の白色、花弁が多数つき、ほぼ球形になる。葉などは普通のオモダカとあまり変わらない。
15 Sagittaria weatherbiana Fernald ナガバオモダカ 長葉面高
synonym Sagittaria graminea var. weatherbiana (Fernald) Bogin
synonym Sagittaria graminea subsp. weatherbiana (Fernald) R.R.Haynes & Hellq. [FNA]
USA(フロリダ州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、バージニア州)原産。英名はWeatherby's arrowhead, grass-leaf arrowhead , grass-leaved arrowhead , delta arrowhead。標高0~100mの様々な浅瀬、沼地、池に生える。日陰を好み、ときに群落状になる。世界各地で、水草として栽培され、日本はジャイアントサジタリアの名で販売され、栽培されたものが逸出している。京都の深泥池や東京で既に野生化が確認され、冬も枯れず繁殖力が旺盛なため、一度侵入すると、在来の水生植物群落に大きな影響を与える可能性がある。原産地では雌雄同株、異花であり、販売されているのも同様であるが、日本で野生化確認されているのは、雌花だけの雌株である。通常、高さ20~60㎝、水深により変化する。葉は根生し、沈水葉は長さ10~25㎝×幅1~2.5cmの線形で鈍頭。水上葉(抽水葉)は長い葉柄は先端部が広がり三角形、葉身は長さ7~25㎝×幅1.5~3㎝の長円形、全縁、質はやや厚い。冬は抽水葉は枯れるが、沈水葉は越冬する。葉と同じぐらいの高さの花茎を直立し、花茎はふつう分枝せず、3輪生の総状花序に雌花だけがつく。雌花は直径約1.5cm、花弁と萼片は3個で白色、中央部に多数の緑色の雌しべがある。日本では結実ぜず、走出枝を出して栄養繁殖する。花期は4~5月、8月下旬~9月上旬。
原産地のナガバオモダカは多年草、高さ100㎝以下。根茎は粗い。ストロンは無い。球茎は無い。葉は水中又は水面上に出る。沈水葉(submersed)は下面に角(かど)があり、上面は平らな葉状体(phyllodial:葉状柄ともいう)、長さ6.4~35㎝×幅1~2.5㎝。水上葉(emersed)は三角形の長さ6.5~17㎝の葉柄をもち、葉身は線形~線状倒披針形長さ2.5~17.4㎝×幅0.2~4㎝[通常、狭い楕円形で約・長さ20㎝×幅1.3~2.5㎝]。花茎は高さ30~45㎝。花序は総状花序、花が1~12[通常3~8個]輪生し、水上に出て、長さ2.5~21㎝×幅1~8㎝。花序柄は長さ6.5~29.7㎝。苞は全長の1/4以上に渡って合着し、広錐形~披針形、長さ20~50㎜、粗く、パピラは無い。果時の花柄は開出し、円筒形、長さ0.5~5㎝。花は直径2.3[2.5]㎝以下。萼片は反曲~開出し、花を包まない。花糸は広がり、葯より短く、軟毛がある。雌花は長さ2.1~5㎝の小花柄があり、不稔の雄しべの輪は無い。果時の頭状花序は直径0.6~1.5㎝。痩果は倒披針形、外側の竜骨はなく、長さ1.5~2.8㎜×幅1.1~1.5㎜、嘴があり、面に、いぼは無く、外側の翼は0~1個、±全縁、腺が1~2個、嘴は側部に直立し、長さ0.2㎜。2n=22。花期は(4~6)5~9月。
オーストラリアのビクトリア州で現在確認されているものは Sagittaria graminea var. weatherbiana (Fernald) Bogin とSagittaria platyphylla (Engelm.) J.G.Sm. var. platyphylla Engelm.の両方の変種がオーストラリアに導入され、両者の区別が失われているのか、それともオーストラリアに導入された元の変種が変化し、現在では両方の変種の典型的な特徴を含むようになったのかは明らかではないとされている。
オーストラリア産の種は水上葉が線形~狭卵形、長さ10~28㎝、幅2~8㎝。先端は漸尖し、基部の裂片は通常ない。花序には3~8個の偽輪生花がつく。苞は長さ0.4~0.9㎝。雌花は小花柄が斜上~開出し、長さ1~5(~6.5)㎝。外花被片は成熟すると反り返り、長さ0.3~0.6(~0.8)㎝。内花被(花弁)は白色(またはピンク色)で、外花被の約2倍の長さ。雄花の花糸には軟毛がある。痩果は長さ(1.7~)2~2.5㎜×幅(0.8~)1.1~1.5㎜、表面には装飾がないか、1~3個の狭い翼があり、先端には長さ0.4~1.0mmの雄花柱の基部が残る。花期は9月~6月。
参考
1) Flora of ChinaSagittaria
Sagittaria
Sagittaria
Sagittaria
牧野富太郎 : オモダカ並にクワイの葉
Sagittaria sagittifolia subsp. leucopetala (Miq.) Hartog
クワイの特性分類調査における基準品種の特性
くわい亜種
くわいの来歴と品種特性
Sagittaria weatherbiana Fernald
富山県高岡市の湧水に野生化した外来水生植物ヒメウキオモダカ