オドリコソウ 踊子草
Flora of Mikawa
シソ科 Lamiaceae オドリコソウ属
中国名 | 野芝麻 ye zhi ma |
英 名 | white dead-nettle |
学 名 |
Lamium album L. var. barbatum (Sieb. et Zucc.) Franch. et Savat. synonym Lamium barbatum Siebold et Zucc. |
花 期 | 4~5月 |
高 さ | 30~50㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 半日陰の山野、道端 |
分 布 | 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、ロシア |
撮 影 | 吉良町 07.4.28 |
道端や河川の土手に群生していることが多い。茎は4稜形、中空、しばしば紫褐色を帯び、茎稜には下向きの毛がまばらに生える。葉は十字対生し、長い柄がつき、長さ5~10㎝。葉表に白毛がある。葉裏の脈付近には白色の長毛とごく柄の短い腺毛があり、葉柄に続き、面上にも細かな腺点(小さすぎて柄が見えない)がある。若芽が食用となるが、芳香ではなく、やや不快臭。上部の葉腋に2~3個(まれに1個)の集散花序が集まる仮輪をつけ。花は1個の集散花序に普通、5~7個つく。集散花序の基部には4~5個程度の披針形の不揃いの苞がある。花は長さ3~4㎝の白色~淡紅白色の唇形。花冠の筒部は湾曲し、上唇は曲がって上部は丸くなり、白毛を密生する。下唇の側裂片は小さく、刺状、大きい中央裂片は先が2裂し、裂片には白毛と腺毛がある。萼は10脈があり、5中裂し、裂片は細長く尖り、縁付近に白毛と腺毛が多い。萼筒の根元の下面に黒色の班紋がある。雄しべは4個、外側の2個がやや長く、花糸に短腺毛があり、白毛が散生する。葯は黒色、4個が並び、周囲に白毛が密生し、縦に裂開して黄色の花粉を出す。雌しべの花柱は先端が2裂し、先が尖り、雄しべとほぼ同長、先が雄しべの葯の間にあり、見えにくい。果実は4分離果(シソ科の特徴)。小堅果は長さ3~3.5㎜、3稜があり、種沈がつく。2n=18。
オドリコソウ属
family Lamiaceae - genus Lamium1年草又は多年草。茎葉は葉身が円形~腎形~卵状披針形、縁は粗い円鋸歯~歯状鋸歯。輪散花序は花が4~14個。花葉(floral leave)似ていて、輪散花序の長さより長い。苞は±線形、早落性。萼は筒状鐘形~鐘形、5又は10脈があり、外側は±毛があり、のど部はわずかに斜め又は標準。萼歯は5個、ほぼ等長、錐形、筒部の長さと同長又は長い。花冠は紫赤色~帯赤色~汚白色、2唇形、萼の長さの2(~3)倍、外側に毛がある。花冠筒部は真っすぐ又は内側に曲がり円筒形又は環状の毛(annulus)の上で広くなり、類袋状、上唇は直立、長円形、円形又は凹形、±かぶと形(galeate)。下唇は広がり、3裂する。中裂片は倒心形、凹形又は2裂する。側裂片は半円形、縁には円鋸歯又は歯がある。雄しべは4本、毛があり、前2本は長く、上唇の下で斜上する。葯は2室、散開する。子房の裂片は先が切形、無毛またはこぶがあり、ときに縁が膜質。花柱は先がほぼ等しく、2分岐する。
世界に約40種があり、アフリカ、アジア、ヨーロッパに分布し、北アメリカに帰化している。
オドリコソウ属の主な種と園芸品種
1 Lamium album L. タイリクオドリコソウ 大陸踊子草synonym Lamium vulgatum Benth.
synonym Lamium vulgatum var. album (L.) Benth.
日本全土、朝鮮、中国(甘粛省、内モンゴル、山西省、新疆ウイグル自治区)、モンゴル、ロシア、インド、ネパール、パキスタン、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア(イラン、イラク、トルコ)、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は短柄野芝麻 duan bing ye zhi ma 。英名はwhite nettle , white dead-nettle。標高1400~2400mのカラマツ林の縁、伐採されたトウヒ林地帯の湿地、半日陰の草地の丘陵斜面に生える。若葉は食用、花は薬用として利用され、蜜源植物としても利用される。
多年草。茎は高さ30~60㎝、剛毛があるかほぼ無毛。根生葉は小さい。上部の葉は葉柄が長さ1~6㎝。上部の葉の葉身は卵形~卵状披針形、長さ2.5~6㎝×幅1.5~4㎝、下面はまばらに微細な伏せた剛毛があり、とくに縁付近に多く、基部は心形、縁は歯状鋸歯、先は鋭形~尾状尖鋭形。輪散花序は花が8~9個、花葉は茎葉に似るが、ほぼ無柄。苞は線形、萼の長さの約1/6。萼は鐘形、長さ9~13㎜×幅2~3㎜、基部はときに、紫赤色、まばらに剛毛があり、微細な剛毛がある。萼歯は披針形、筒部の長さと同長、芒があり、縁毛がある。花冠は帯黄色又は汚白色、長さ2~2.5㎝。花冠筒部は少なくとも萼の長さと同長、直径2~2.5㎜、軟毛があり、内側に環状に毛があり、のど部は広がる。上唇は倒卵形、長さ7~10㎜×幅6㎜、鈍頭。下唇は長さ1~1.2㎝、中裂片は長さ4~6㎜×幅3~4㎜、倒腎形、縁毛がある。側裂片は円形、長さ約2㎜、縁に長さ約1㎜の錐形の歯をもつ。葯は黒紫色、絨毛がある。小堅果は暗灰色、狭卵形、3稜形、長さ3~3.5㎜×幅1.5~1.7㎜、無毛、こぶがある。花期は7~9月。果期は8~10月。
品種) 'Ashfield Variegated' (v) , 'Aureovariegatum' , 'Brightstone Gem' (v) , 'Dunkirk' , 'Friday' (v) , 'Golden Halo' , 'Goldflake' (v) , 'Pale Peril'
1-1 Lamium album subsp. albumタイリクオドリコソウ 大陸踊子草 狭義
日本全土、朝鮮、中国(甘粛省、内モンゴル、山西省、新疆ウイグル自治区)、モンゴル、ロシア、インド、ネパール、パキスタン、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア(イラン、イラク、トルコ)、ヨーロッパ原産。1-2 Lamium album subsp. barbatum (Siebold & Zucc.) Mennema オドリコソウ 踊子草
synonum Lamium album L. var. barbatum (Siebold et Zucc.) Franch. et Sav.
synonym Lamium barbatum Siebold et Zucc.synonym Lamium barbatum var. hirsutum C.Y.Wu & S.J.Hsuan
synonum Lamium album var. kitadakense N.Yonez. キタダケオドリコソウ
synonum Lamium album var. takeshimense (Nakai) Kudô タケシマオドリコソウ
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ロシアに分布。半日陰の山野、道端に生える。多年草。高さ30~50㎝。茎は4稜形、中空、しばしば紫褐色を帯び、茎稜には下向きの毛がまばらに生える。葉は十字対生し、長い柄がつき、長さ5~10㎝。葉表に白毛がある。葉裏の脈付近には白色の長毛とごく柄の短い腺毛があり、葉柄に続き、面上にも細かな腺点(小さすぎて柄が見えない)がある。若芽が食用となるが、芳香ではなく、やや不快臭。上部の葉腋に2~3個(まれに1個)の集散花序が集まる仮輪をつけ。花は1個の集散花序に普通、5~7個つく。集散花序の基部には4~5個程度の披針形の不揃いの苞がある。花は長さ3~4㎝の白色~淡紅白色の唇形。花冠は筒部が湾曲し、上唇は曲がって上部は丸くなり、白毛を密生する。下唇は側裂片が小さく、刺状、大きい中央裂片は先が2裂し、裂片には白毛と腺毛がある。萼は10脈があり、5中裂し、萼片は萼筒より短く、細長く尖り、縁付近に白毛と腺毛が多い。萼筒の根元の下面に黒色の班紋がある。雄しべは4個、外側の2個がやや長く、花糸に短腺毛があり、白毛が散生する。葯は黒色、4個が並び、周囲に白毛が密生し、縦に裂開して黄色の花粉を出す。雌しべの花柱は先端が2裂し、先が尖り、雄しべとほぼ同長、先が雄しべの葯の間にあり、見えにくい。果実は4分離果(シソ科の特徴)。小堅果は長さ3~3.5㎜、3稜があり、種沈がつく。2n=18。花期は4~5月。
以下の変種はPOWOではオドリコソウの異名とされる。
(1) Lamium album L. var. kitadakense N.Yonez. キタダケオドリコソウ 北岳踊子草
本州の北岳固有変種。高さ30~50㎝。オドリコソウに似ているが、植物体が紫色を帯びず、花がやや大きく、長さ3~4㎝、淡黄色花期が7~8月。
(2) Lamium album L. var. takeshimense (Nakai) Kudo タケシマオドリコソウ
synonym Lamium takesimense Nakai1-3 Lamium album subsp. crinitum (Montbret & Aucher ex Benth.) Mennema
synonym Lamium crinitum Montbret & Aucher ex Benth.synonym Lamium leucolophum Hausskn. ex R.R.Mill
synonym Lamium oreades Azn.
synonym Lamium persicum Boiss. & Buhse
synonym Lamium petiolatum Royle ex Benth.
アフガニスタン、イラン、イラク、インド、ネパール、パキスタン、トルコ、トルクメニスタン原産。標高3500mまでの湿った場所や日陰の場所に生える。萼歯が萼筒より長い。
多年草、短い匍匐性の根茎を持つ。茎は少数または単生、斜上または直立し、通常は分枝せず、長さ20~70㎝、断面が四角形で、しばしば下側は紫がかり、葉があり、通常はまばらに後屈する微細剛毛(hispidulous)がある。葉は卵形で約長さ4~9㎝×幅2.5~5㎝、縁は鋸歯があり、先は鋭形、基部は心形~切形、薄く、腺のない毛がある。葉柄は根生葉では長さ8㎝以下、上部の茎葉ではそれより短い。輪散花序(verticillasters)は3~7個つき、最大20個の花が付き、間隔が離れる。苞は±線形、長さ2~7㎜、縁毛がある。萼は長さ10~15㎜、萼筒は筒状鐘形で±薄く、腺のない毛がある。萼歯は三角状線形~錐形、等長、縁毛の微細剛毛で覆われ(ciliate-setulose)、通常萼筒より長く、果時には広く広がる。花冠は白色、まれに薄バラ色、長さ20~25㎜。上唇は±密にビロード状またはひげがあり、長さ8~10㎜、フード状になる。下唇は±反り返る。花冠筒部は±S字状(sigmoid)、基部は凸状(gibbous)、不完全に斜めの環状。雄しべは±上唇の下に含まれる。半葯(thecae)は通常暗色でひげがある。花柱は±ほぼ等分に2分岐する。小堅果は約・長さ3~3.5㎜×幅1.5~2㎜、短く幅広い柄があり、暗褐色、基部は三角状、先は切形~円形、湿っても粘液性はない(not mucilaginous)。花期は6~9月(Flora of Pakistan)。
Flora IranicaではMennema は Lamium album subsp. crinitum (Montb. & Auch. ex Benth.) Mennema という名前を使用しており、チトラル(Chitral)とスワット(Swat)からのいくつかの種をこの名前で引用している。一方、Flora Turkey (7: 144. 1982) の Mill は、種としての Lamium crinitum の分布域をトルコ、アゼルバイジャンおよびおそらく北西イランに限定してる。Flora of Pakistanの資料の萼歯は一般に筒よりも明らかに長く、Mennema が彼の subsp. crinitum で強調した特徴である。しかし、この種が特に萼歯の長さについては様々であり、非常に広範囲に分布する分類群であることからFlora of Pakistanでは Lamium albumとしている。
2 Lamium amplexicaule L. ホトケノザ 仏の座
北海道を除く日本全土、中国、ロシア、西アジア、中央アジア、ヨーロッパ原産。北アメリカ、オーストラリアなどに帰化。英名はhenbit , henbit dead-nettle , henbit , lamier amplexicaule 。中国名は 宝盖草 bao gai cao。別名はサンガイグサ(三階草)。花期が長く、普通は春と言われているが三河地方では秋にも普通に群生している。
1年草(越年草)。夏に見かけることもままある。茎は4稜形、下向きの毛があり、基部で分枝し、直立する。葉は長さ1~2㎝の扇形、対生して段々につき、別名、三階草とも呼ばれる。葉は両面に白毛がある。上部の葉には柄がなく、下部の葉には長い柄がある。頭頂部付近の葉腋に3~6個の花の仮輪をつける。苞は茎を抱き、無柄、普通、幅が長さより広い。花冠は2唇形、下唇は3裂し、大きな中央の裂片はさらに2裂する。この大きな下唇がハナバチ類の目印になり、蜜を吸う足場になる。花冠は萼よりかなり長く、普通、上唇及び筒部背面が紅紫色で、下唇は長さ1.5~2.5㎜、白色。全体に赤味が強く、下唇も赤味を帯びるものもある。花の頭部には赤色の毛が密生する。萼は長さ5~7㎜、筒形、先が5裂して鋭く尖り、白毛が密生し、腺点がまばらにある。果実は4分離果。小堅果は長い倒卵形、背側わずかに凸面、腹側の2面は平らで屋根状、目立つうねがあり、長さ2~2.2㎜×幅0.9~1.1㎜、表面は不規則な帯白色の突起で覆われ、鈍い、灰褐色、基部に種沈がつく。秋に閉鎖花をつけることもある。2n=18。花期は10~6月。
2-1 Lamium amplexicaule L. f. albiflorum D.M.Moore シロバナホトケノザ 白花仏の座
花が完全に白色のもの3 Lamium bifidum Cirillo ラミウム・ビフィドゥム
地中海沿岸地域(イタリア、サルジニア島、シチリア島、コルシカ、クロアチア南部、ギリシャ、クレタ島、スペイン、ポルトガル、アルジェリア、ブルガリア、ルーマニア、ユーゴスラビア、チュニジア)原産。
1年草、無毛又は軟毛がある。茎は高さ10~40㎝。葉は葉柄があり、葉身は縁に深い欠刻状の歯があり、三角形、先は尖鋭形、緑色。小苞は線形。萼は斜め、毛があり、萼歯は広がり、萼筒よりわずかに短い。花冠は白色、長さ20~25㎜。花冠筒部は小さく真っすぐ、萼の長さの3~4倍。上唇は2裂、裂片は広がり、倒卵形。小堅果は倒卵形、3稜形、背側は凸面、腹側は屋根状、両面とも平ら、先は切形、長さ2.5~3㎜×幅1.3~1.5㎜、面は密に帯白色のいぼがあり、かすかに光沢があり、灰色。花期は3~6月。
4 Lamium galactophyllum Boiss. & Reuter ex Boiss. ラミウム・ガラクトフィルム
トルコ原産。標高1400~2550mの山岳地帯の岩の間、がれ場、不安定な斜面に生える。1年生。茎は直立または傾伏し、単純または基部で分枝し、高さ(10~)20~25(~30)cm、幅2~3(~5)mm、ほぼ無毛。葉:葉柄は長さ(0.5~)2~3(5)㎝、通常葉身より長い。花の葉(floral leaves:輪散花序をもつ葉)は抱茎。葉身は腎形または心形、上部の葉は通常わずかに尖鋭形、中程度~(上部)粗く重円鋸歯または鋸歯があり、両面にまばらに伏した軟毛がある。茎葉は長さ(1.5~)2~3(~3.5)㎝、葉形指数(index:葉長/葉幅)は0.9~1.0(~1.1)。花の葉(floral leaves:輪散花序をもつ葉)は長さ(1.5~)2~3.5(~4)㎝、葉形指数は0.7~0.8(~0.9)。上部の葉の基部には必ず帯白色の斑点がある。輪散花序は(2~)3~4(~6)個、離れており、花は16~18(~20)個つく。苞は長さ1~2(~3)㎜、幅0.3~0.5㎜、粗毛があり、短い腺毛がある。萼片は多数の脈があり、長さ1(~1.25)㎝、花後に長くなり、基部は通常無毛で、先端に向かって短い伏毛があり、まばらに粗毛があり、また、短い腺毛がある。萼歯は萼筒より1.3~1.5倍長く、狭三角形で、内側に軟毛があり、外側の縁には短い腺毛がある。花冠は白色、ときに唇弁に小さな暗紫色の斑点があり、長さ1.5(~1.6)㎝。花冠筒部は急に広がり、上唇に向かって背にとさかがあり、長さ1~1.25㎝、萼から突き出ない。外側の基部は無毛で、唇に向かって毛があり、内側には腹側の尖った後ろ向きの基部から2.5~3.5mmに背側に斜めの輪状の毛がある。上唇は弓形で、長さ6~8㎜、幅5~6㎜、先端は丸く、縁は波打ち、外側には密に絹毛があり、内側は無毛。下唇は上唇より長く、上唇に対して鋭角になり、無毛、側裂片は円形、長さ1.5㎜、歯は長さ約1㎜。中裂片は長さ4~5mm、幅6~7mm、2深裂し、縁は波打つ。前側の雄しべは長さ7~8㎜で、後側の雄しべより約3㎜長く、約1~1.5㎜下のところに付く。花糸にも短い腺毛がある。葯は長さ1.5~1.8㎜×幅0.8~1㎜。花粉の色は不明。花盤は幅約1㎜。花柱は長さ約1.3㎜、花冠より短く、無毛。小堅果は長さ(2.5~)2.8(~3)㎜×幅1.25~1.5㎜。
5 Lamium galeobdolon (L.) L. キバナオドリコソウ 黄花踊子草
synonym Galeobdolon luteum Hudssynonym Galeopsis galeobdolon L
synonym Lamium galeobdolon (L.) Crantz
ヨーロッパ、西アジア(アゼルバイジャン、ジョージア、イラン、トルコ)原産。英名はyellow archangel 。林や日陰の野原に生える。
多年草。±まばらに毛がある。茎は平伏~直立、高さ15~60㎝、通常、花後に匍匐枝を伸ばし始める。葉柄は長さ1~3㎝。葉身は長さ2~9㎝、卵形~±広卵形、縁は円鋸歯~通常粗い歯状、通常斑入りで、基部は切形~±心形、先は鋭形~尖鋭形。花序は頂生及び腋生、頭状花序状、±無柄、花が2~10個つく。萼は長さ7~10㎜、萼歯はほぼ等長、普通、尖鋭形。花冠は長さ14~25㎜、明るい黄色、±褐色の斑点があり、2唇形。上唇はフード状。下唇は3裂し、中裂片は側裂片より大きく、三角形、全縁、鋭形。花冠筒部は萼より長く、内部に毛が輪状につく。雄しべは稔性、普通、上唇に包まれる。葯は普通、毛がある。花柱は±等長に2裂する。小堅果は断面で三角形、先は切形。2n=18,36。花期は4~6月。
品種) 'Dark Angel' , 'Emil Tramposch , 'Florentinum' (v) , 'Hermann's Pride' , 'Jade Frost' , 'Kirkcudbright Dwarf' , 'Petit Point' , 'Purple Heart' , 'Silberteppich' , 'Silver Angel' , 'Silver Carpet' , 'Silver Spangled' , 'Variegatum'(白色の斑入り)
5-1 Lamium galeobdolon subsp. argentatum (Smejkal) J.Duvign.
synonym Lamium argentatum (Smejkal) Henker ex G.H.Loosベルギー、チェコスロバキア、デンマーク、ドイツ原産。イタリア、イギリス、アイルランド、オーストラリアなどに帰化している。
蔓性多年草、下部の節から根を張る。枝には軟毛があり、ほとんどの角に曲がった毛が生える。葉は広卵形、長さ2~7㎝×幅1.5~6㎝、表面には細柔毛(pilose)があり、白色と緑色の斑入り、先は鈍形、基部は切形または広楔形、縁は円鋸歯状~鋸歯状、葉柄は長さ1~4㎝(ただし、しばしば苞では非常に小さくなる)。花序の節間は明瞭で、花は主に苞あたり3~5個つく。萼片は5~10脈があり、長さ7~10㎜、萼筒に短い後屈する毛があり、脈と萼片の縁に開出する硬い毛があり、萼片は長さ2~3㎜。花冠は長さ15~25㎜、明るい黄色で、帯褐色の斑紋があり、花冠筒部は萼よりほとんど長くなく、内側の唇弁とほぼ同じ長さで、外側の唇弁は内側の約3分の1の長さで、3個のほぼ等しい裂片があり、内側の唇弁は全縁で、上部が広がる。花期は9月~11月(オーストラリア)。
5-2 Lamium galeobdolon subsp. flavidum (F.Herm.) Á.Löve & D.Löve
synonym Lamium flavidum F.Herm.synonym Lamium pallidum F.Herm.
オーストリア、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、ユーゴスラビア原産。
匍匐茎(runners)はない。花の咲く茎は通常、基部に密に毛が生える。最下の葉腋の短い側枝にしばしば花がつく。葉はほとんど斑がない。最上部の茎葉は、幅の2~3.5 倍の長さがあり、披針形、縁に鋭く尖った歯がある。輪散花序に花が10~16個つく。花は長さ1.2~1.7㎝。葯は長さ1.3~1.6㎜。2n=18。花期は4~8月。2n=18(Flora Helvetica 2018)。
5-3 Lamium galeobdolon subsp. galeobdolon キバナオドリコソウ 黄花踊子草 狭義
synonym Lamium cavernianum Losasynonym Lamium luteum Krock.
synonym Lamium vulgare (Pers.) Fritsch
ヨーロッパ、西アジア(アゼルバイジャン、ジョージア、イラン、トルコ)原産。北アメリカに帰化。
5-4 Lamium galeobdolon subsp. montanum (Pers.) Hayek
synonym Lamium montanum (Pers.) Hoffm. ex Kabathヨーロッパ、トルコ、イラン原産
開花中または開花直後に長い匍匐茎を出す。花茎は通常、基部の周りに密に毛がある。葉は斑点(斑)がない。最上部の茎葉は狭披針形、鋭く尖った歯があり、長さは幅の2~3.5倍ある。輪散花序は花が8~16個つく。花冠は長さ1.8~2.5㎝。葯は長さ1.7~2㎜。果時の萼は長さ8~12㎜(© Flora Helvetica 2018)。
品種) 'Canfold Wood' , 'Florentinum'
6 Lamium garganicum L. ラミウム・ガルガニウム
synonym Lamium striatum Sibth. & Sm.
西アジア(トルコ、イラン、イラク、パレスチナ、レバノン・シリア、サウジアラビア、カザフスタン、キルギスタン、トランスコーカサス、トルクメニスタン、ウズベキスタン)、ヨーロッパ(アルバニア、バレアレス諸島、ブルガリア、コルシカ島、キプロス、東エーゲ海諸島、フランス、ギリシャ、イタリア、クリティ、北コーカサス、ポルトガル、ルーマニア、サルデーニャ島、スペイン、ユーゴスラビア)、北アフリカ(アルジェリア、チュニジア)原産。山地に生える。
多年草、様々に変化し、叢生~マット状に広がる。根茎は球根状(cauliform:球根状の形状)、木質、非常に短く長さ約10㎝、匍匐茎を持つ。茎は通常傾伏し、単純で、長さ5~40(~70)㎝、直径(1~)1.5~2.5(~4)㎜、完全に無毛からほぼ無毛、または基部で中程度~先でより密に、開出する粗毛、または剛毛がある。葉柄は長さ(0.5~)1.5~3(~7)㎝、通常は葉身より短い。葉身は腎形または(上部で)卵状長円形、基部は心形~切形、先は鋭形、縁は粗く部分的に重円鋸歯~(上部で)ときに歯があり、両面がほぼ無毛~かなり密な毛~絹毛がある。茎葉は長さ0.5以下~5(~9.5)㎝、葉形指数(index:葉長/葉幅)は0.7~1.5(~1.8)。花葉(floral leaves:輪散花序をもつ葉)は長さ1.5~4(~8.5)㎝、指数は0.7~1.5(~2.0)。輪散花序は2~4(~6)個、通常は離れてつき、各輪に花が2~16(~20)個つく。苞は長さ1~10(~13)㎜×幅0.3~1(~1.5)㎜、通常は粗毛~剛毛があり、特に縁には短い腺毛がある。萼は5~10脈があり、長さ0.8~1.5(~2)㎝、花後は長くなり、基部はほぼ無毛~密に粗毛~ビロード状毛または絹毛があり、先に向かって中程度~密に粗毛がる。萼歯は通常、萼筒よりもはるかに短く、三角形~狭三角形、縁には短い腺毛がある。花冠はピンク色~紫色、まれに白色、長さ1.5~4(~4.5)㎝、花冠筒部は急に広がり、長さ1~2.5(~3.5)㎝、萼から突き出ており、基部の外側は無毛で唇に向かって毛があり、通常は内側の毛の輪は無い。上唇はアーチ形、長さ4~12(~15)㎜×幅3~8(~10)㎜、先は通常2裂し、縁はかすかに波打ち、外側は通常中程度に絹毛があり、内側は無毛。下唇は上唇とほぼ同長で上唇に対して直角になり、無毛、側裂片は円形、長さ1~2㎜、歯がもしあれば、通常は微細で、長さ0.8㎜、中裂片は長さ2~6㎜×幅3~9㎜、2裂~2深裂し、縁は波打つ。前側の雄しべは長さ6~14㎜、後側の雄しべより3~5㎜長く、1.5~3.5mm低い位置につく。花糸は特に先に短い腺毛がある。葯は長さ1~2㎜×幅0.5~1.3㎜。花粉は黄白色。花盤は幅約0.8㎜。花柱は長さ1.5~5㎜、花冠よりも短く、無毛。小堅果は倒卵形、背側が凸面、両腹面は平ら、屋根形、先は切形、底部は狭く、長さ2.5~4.8㎜×幅1.3~2.5㎜、帯白色のいぼ状、光沢が無く、灰色。2n=18。花期は夏。
品種) 'Golden Carpet' (v)
6-1 Lamium garganicum var. armenum (Boiss.) Mennema
synonym Lamium armenum Boiss.synonym Lamium garganicum L. subsp. striatum (Sibth. & Smith) Hayek var. armenum (Boiss.) Mennema
トランスコーカサス、トルコ原産。標高2000~2800山岳地帯に散在し、岩や滑石の岩屑の上に生え、石灰質土壌を好む。根茎は長さ約10㎝。茎は高さ10~15(~20) cm。葉身は腎形、上部は菱形、葉柄に沿下し、不規則な円歯状。茎葉は長さ0.5~1 cm、幅(index)0.8~0.9(~1.0)。花の葉(floral leaves)は長さ1(~1.5) cm、幅(index)0.8~0.9。輪散花序は3~4(~5) 個で、密集し、花は(~4)6(~10)個つく。苞は長さ3~5 mm。花冠の上唇は通常、切形。小堅果は長さ4.5~4.8×幅2.3~2.5 mm、灰色の斑点は無い。
6-2 Lamium garganicum subsp. corsicum (Gren. & Godr.) Arcang.
synonym Lamium corsicum Gren. & Godr.コルシカ島、サルデーニャ島原産。標高100~2000(2500)mの岩場やガレ場の上に生える。石灰質土壌を好む。
茎は高さ(20~)25~30(~35)㎝、無毛~ほぼ無毛。葉身は心形、ほぼ無毛。茎葉は長さ(1.5~)2(~3)㎝×幅(1.2~)1.3~1.4(~1.5)㎝。花の葉は長さ1.5~2(~3)㎝、葉形指数(index)1.2~1.3(~1.6)。輪散花序は(2~)3~4個(段)つき、各輪に花が(6~)10~12(~14)個つく。苞は長さ1~2㎜、ときに欠く。萼は長さ0.8(~1)㎝。花冠は長さ1.5(~2)㎝。花冠筒部は長さ約1㎝。上唇は長さ4~5㎜×幅3~4㎜、2裂する。下唇の外側の裂片は長さ1㎜まで、中裂片は長さ約2㎜×幅2~3㎜。前側の雄しべは長さ約6㎜、後側の雄しべよりも約3㎜長く、1.5~2㎜下につく。葯は長さ1~1.5㎜×幅0.5~0.8㎜。花柱は長さ1~1.5㎜、花冠より短い。小堅果は長さ2.5(~2.8)㎜×幅1.3(~1.5)㎜。
6-3 Lamium garganicum subsp. garganicum
synonym Lamium conradiae G.Bosc
synonym Lamium garganicum subsp. grandiflorum (Pourr.) Briq.
西アジア(トルコ、イラン、イラク、パレスチナ、レバノン・シリア、サウジアラビア、カザフスタン、キルギスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)、ヨーロッパ(アルバニア、バレアレス諸島、ブルガリア、コルシカ島、東エーゲ海諸島、フランス、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、ルーマニア、スペイン、ユーゴスラビア)、北アフリカ(アルジェリア、チュニジア)原産。茎は高さ(20~)30~40(~70)㎝、無毛からほぼ無毛。葉身は心形、ほぼ無毛。茎葉は長さ(1.5~)3.5~5(~9.5)㎝×幅(1.0~)1.2~1.5(~1.8)㎝。花の葉は長さ(2~)3~4(~8.5)㎝、幅(index)(1.0~)1.2~1.5(~2.0)。輪散花序は3~4(~6)(段)つき、各輪に花が(8~)10~16(~20)個つく。苞は長さ(1~)2~7(~10)㎜。萼は長さ(1~)1.25~1.5(~2)cm。花冠は長さ(2.3~)2.8~4(~4.5)㎝。花冠筒部は長さ(1.5~)2~2.5(~3.5)㎝。上唇は長さ(~8)10~12(~15)㎜×幅7~8(~10)㎜、通常は2裂する。下唇の側裂片は長さ1.5~2㎜。中裂片は長さ約2×幅2~3mm。前側の雄しべは長さ12~13㎜、後側の雄しべより4~5㎜長く、3~3.5㎜下につく。葯は長さ1.5~2㎜×幅0.8~1.3㎜。花柱は長さ3~5㎜、花冠より短い。小堅果は長さ(2.5~)3~3.3(~3.8)㎜×幅(1.3~)1.5(~2)㎜。
6-4 Lamium garganicum var. microphyllum (Boiss.) Mennema
synonym Lamium microphyllum Boiss.synonym Lamium garganicum L. subsp. striatum (Sibth. & Smith) Hayek var. microphyllum (Boiss.) Mennema
ギリシャ、レバノン・シリア、トルコ原産。標高1500~2800mの山岳地帯に散在し、非常にまれで、岩や岩屑の上に生え、石灰質および蛇紋岩質の土壌を好む。根茎は長さ約10㎝。茎は高さ5(~10)㎝。葉身は腎形で、規則的に鋸歯状。茎葉は長さ0.5(~1)㎝未満、幅(index)0.7~0.8(~1.0)。花の葉(floral leaves)は長さ0.5~1(~1.5)㎝、葉形指数(index)0.7~0.8(~1.0)。苞は3~4(~5)個つき、密集し、花は2~4個つく。苞は長さ(3~)7~10(~13)㎜。花冠の上唇は通常2裂する。小堅果は長さ4.3~4.8㎜×幅2.3~2.5㎜、灰色の斑点は無い。
6-5 Lamium garganicum subsp. striatum (Sm.) Hayek
synonym Lamium striatum Sm.synonym Lamium garganicum L. subsp. striatum (Sibth. & Smith) Hayek var. striatum
ヨーロッパ(アルバニア、ブルガリア、キプロス、東エーゲ海諸島、ギリシャ、イタリア、クリティ、北コーカサス、トランスコーカサス、ユーゴスラビア)、西アジア(トルコ、イラン、イラク、レバノン・シリア、パレスチナ)原産。標高400~3000mの主に南向きと東向きの山の斜面、特に乾燥した開けた場所のがれ場の岩の上、石の間に生え、石灰質の土壌を好む。根茎は通常短い。茎は高さ(10~)15~30(~35)㎝、無毛~粗毛があるかまたは剛毛がある。葉身は通常腎形、まれに心形、規則的な円鋸歯があり、ほぼ無毛~軟毛または絹毛がある。茎葉は長さ(1~)2~2.5(~4.5)㎝、指数(index)は(0.8~)1.0~1.1(~1.3)。花の葉(floral leaves)は長さ(1~)1.5~2.5(~4.5)㎝、指数は(0.7~)0.9~1.1(~1.3)。輪散花序は07~11(~13)個(段)つく。苞は2~3(~4)個、間隔が離れており、花は(4~)8~10(~16)個つく。苞は長さ(1~)5~8(~11)㎜。萼は長さ(0.8~)1.5(~1.8)㎝。花冠は長さ(2.5~)3~3.5(~4.3)㎝。花冠筒部は長さ(1.5~)2~2.5(~3.5)㎝。上唇は長さ(8~)10~12(~15)㎜×幅7~8(~10)㎜、通常2裂する。下唇の側裂片は長さ1.5~2㎜。中裂片は長さ約2㎜×幅2~3㎜。前側の雄しべは長さ12~13㎜で、後側の雄しべより4~5㎜長く、3~3.5㎜下につく。葯は長さ1.5~2㎜×幅0.8~1.3㎜。花柱は花冠より約3~5㎜短い。小堅果は長さ2.8~3.3(~3.5)㎜×幅1.5(~1.8)㎜、小さな灰色の斑点がある。
【var. armenum, var. microphyllumを含む広義のLamium garganicum subsp. striatum】
茎は高さ5~30(~35)㎝、無毛~粗毛があるかまたは剛毛がある。葉身は主に腎形、ときに心形または菱形、ほぼ無毛~軟毛または絹毛がある。茎葉は長さ0.5~2.5(~4.5)㎝、指数(index)は0.7~1.1(~1.3)。花の葉は長さ0.5~2.5(~4.5)cm。輪散花序は07~11(~13)個(段)つく。苞は2~4(~5)個、花は2~10(~16)個つく。苞は長さ(1~)3~10(~13)㎜。萼は長さ(0.8~)1.5(~1.8)㎝。花冠は長さ(2.5~)3~3.5(~4.3)㎝。花冠筒部は長さ(1.5~)2~2.5(~3.5)㎝。上唇は長さ(8~)10~12(~15)㎜×幅7~8(~10)㎜、下唇の側裂片は長さ1.5~2㎜、中裂片は長さ約2㎜×幅2~3㎜。前側の雄しべは長さ12~13㎜で、後側の雄しべより4~5㎜長く、3~3.5㎜下につく。葯は長さ1.5~2㎜×幅0.8~1.3㎜。花柱は花冠より約3~5㎜短い。小堅果は長さ2.8~4.8㎜×幅1.5~2.5㎜。
7 Lamium hybridum Vill. モミジバヒメオドリコソウ 紅葉姫踊子草
synonym Lamium purpureum subsp. hybridum (Vill.) Nymansynonym Lamium purpureum var. hybridum (Vill.) Vill.
synonym Lamium dissectum With
synonym Lamium hybridum subsp. dissectum (With.) Gams
synonym Lamium incisum var. cryptanthum Pau
ヨーロッパ(オーストリア、バルト諸国、ベラルーシ、ベルギー、ブルガリア、カナリア諸島、ヨーロッパロシア、チェコスロバキア、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、マデイラ諸島、オランダ、ポーランド、ポルトガル、サルデーニャ、スペイン、スウェーデン、スイス)、アフリカ(アルジェリア、モロッコ)原産。北アメリカ、日本、ニュージーランドなどに帰化。英名はcut-leaved deadnettle , hybrid deadnettle。別名はキレハヒメオドリコソウ。耕作地、道端、海岸砂丘、森林、山岳地帯にも生える。ヨーロッパで普通に見られ、アメリカなどに帰化している。Lamium bifidum Cirilloと Lamium purpureum(ヒメオドリコソウ)の交雑起源とされていたが、ホトケノザとヒメオドリコソウの交雑起源ともいわれている。POWOでは独立種としているが、ヒメオドリコソウの変種や亜種とする見解もある。
1992年に初めて横浜市で確認され、現在では関東から九州に帰化している。三河地域にもかなり見られるようになっており、蒲郡市、岡崎市、幸田町、豊田市で確認している。特に幸田町、岡崎市などでは多く、大群生が見られ、ヒメオドリコソウより多くなっているところも多い。
1年草(越年草 winter annual)、高さ10~30㎝。不快な匂いがある。わずかに毛があり、茎は4稜形、斜上する。葉柄は細く、長さ4㎝以下。葉身は長さ1.5~4㎝×幅2~5㎝(花葉はしばしば小さい)、広卵形~ほとんど腎形、不規則な深い歯(欠刻状の歯状)又は円鋸歯があり、毛があり、基部は心形又は類心形。苞は葉に似るが、葉柄が短く、葉身は長さ3.5㎝×幅5㎝以下、基部が切形、葉柄に沿下する。萼は長さ8~10㎜、白毛と腺点があり、萼歯は萼筒と同長、錐形、明瞭な縁毛があり、萼片の先が尖り、萼片の先に延びるように脈が隆起し、脈の一部が紫褐色になる。花冠は長さ10~15㎜、淡紅色(ピンク色)、蕾もピンク色、花冠筒部は内側にほとんど不明瞭な毛の輪をもつ。花冠に濃色の斑紋があるものと不明瞭なものがある。上唇は長さ3~4㎜、外側に開出する直軟毛がある。下唇は長さ約2㎜、深く凹形。果実は4分離果、上から見ると十字に4個に分かれる。小堅果は倒卵形、背側はわずかに凸面、両腹側は平らで屋根形、角(かど)が鋭く、基部は狭く膜質、長さ2.1~2.4㎜×幅1.1~1.3㎜、帯白色の斑紋(いぼ)があり、光沢が鈍く、灰褐色、基部に種沈がつく。2n=36。花期は11~7月。6月末でも花が満開の場所もあるほどである。
【変種とする解説】
茎は長さ10~20(~25)㎝。葉身は心形~(下部)腎形で、深く不規則に欠刻状の切れ込みがあり、両面に軟毛~伏剛毛(strigose)がある。茎葉は長さ0.5~1.5㎝、葉形指数は(0.6~)0.9~1.1(~1.3)。花葉(floral leaves)は長さ1~1.5(~2)㎝、指数は(0.7~)1.0(~1.2)。輪散花序は密集している。萼片は長さ(0.5~)0.8㎝、歯は筒部より短いことが多い。花冠は長さ(0.5~)0.8~1.3㎝、花冠筒部は通常萼片から突出せず、通常、内部に輪状に生える毛がある。小堅果は長さ(2.3~)2.5㎜×幅1.3~1.5㎜。
ヒメオドリコソウは明治中頃に渡来し、どこでも見られるようになっているが、これによく似て葉の鋸歯が深く切れ込むものである。葉の色はヒメオドリコソウほど紫色が強くなく、ホトケノザと同じような色をしている。ホトケノザより花が短く、ヒメオドリコソウより花が長く、中間の形態をしている。花は下唇の形がホトケノザとやや異なり、花の色もうすく、ツボミがピンク色である。花色は淡紅色が普通であり、淡青色のものも見られる。
8 Lamium maculatum L. ツルオドリコソウ 蔓踊子草
synonym Lamium foliosum Crantz
中国(甘粛省、新疆ウイグル自治区)、ロシア、南西アジア、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は紫花野芝麻 zi hua ye zhi ma。英名はspotted dead nettle , deadnettle。標高 2400~2700mの丘陵の頂上、谷間に生える。
多年草、茎は高さ15~70㎝、まばらに白色の軟毛があり、中空。葉柄は細く、長さ1.5~3㎝。茎葉は葉身が長さ2.5~5㎜×幅1.5~3㎝、草質、伏した小剛毛があり、下面に腺点があり、基部は類切形~広楔形、縁は粗い内巻の鋸歯があり、先は尾状尖鋭形。輪散花序は花が8~12個。苞は線形、長さ2~3㎜、縁毛がある。萼は鐘形、約長さ1㎝×幅3.5㎜、5うねがあり、粗毛のある脈を除いて無毛。萼歯はほぼ等長、真っすぐ又は広がり、線状披針形、長さ5~6㎜、縁毛があり、先は長い芒がある。花冠は紫色、長さ1.8~2.5㎝。筒部は基部で幅約2㎜、外側に長軟毛があり、上唇の上は毛が濃く、内側に毛の輪と微軟毛がある。上唇は真っすぐ、長円形、長さ約7㎜、基部は狭く、わずかに曲がり、縁は波打つ。下唇の側裂片は浅い半円形、縁に1~1.5㎜の1個の歯をもつ。葯は暗紫色。子房裂片は無毛、先の縁が膜質。小堅果は倒卵形、背側はわずかに凸面、腹側は平らで屋根状、うねをもち、上部は切形、下部は狭くなり、長さ2.9~3.5㎜×幅1.6~1.8㎜、面はいぼがあり、鈍く、褐色。2n=18。花期は7~8月。
品種) 'Album' , 'Anne Greenaway' (v) , 'Annecy' , 'Aureum' , 'Beacon Silver' , 'Beedham's White' , 'Brightstone Pearl' , 'Brocade' , 'Cannon's Gold' , 'Changeling' (v) , 'Checkin' (PBR) , 'Chequers' , 'Chequers' Bloom , 'Chequers Board' , 'Cosmopolitan' , 'Dellam' (PBR) , 'Dingle Candy' , 'Edinburgh Broadstripes' , 'Elaine Franks' , 'Elisabeth de Haas' (v) , 'Forncett Lustre' , 'Forncett White Lustre' , 'Friday' , 'Ghost' , 'Gold Leaf' , Golden Anniversary = 'Dellam' (PBR) (v) , 'Golden Nuggets' , 'Golden Wedding' , 'Hatfield' , 'Ickwell Beauty' (v) , 'Immaculate' , 'James Boyd Parselle' , L. 'Chequers' ambig. , Lami Mega Purple (Lami Series) , 'Lemon Frost' , 'Margery Fish' , 'Moonglow' , 'Orchid Frost' , 'Peck's Pink' , Pink Chablis = 'Checkin' (PBR) , 'Pink Nancy' , 'Pink Pearls' , 'Pink Pewter' , Purple Chablis™ , 'Purple Dragon' , 'Purple Winter' , 'Red Nancy' , 'Roseum' , 'Salmoneum' , 'Shell Pink' , 'Silver Dollar' , 'Silver Shield' , 'Sterling Silver' , 'White Nancy' , 'Wild White' , 'Wootton Pink'
9 Lamium orvala L. ラミウム・オルバラ
synonym Lamium grandiflorum Salisb.
synonym Lamium pannonicum Scop.
synonym Lamium phalacranthera St.-Lag.
synonym Lamium wettsteinii Rech.
synonym Orvala garganica L.
synonym Orvala lamioides DC.
ヨーロッパ原産。英名はbalm-leaved archangel , balm-leaved red deadnettle。
多年草、基茎は斜上、基部で分枝し、高さ10~100㎝。伏した粗毛がある。葉は互生し、葉柄は長さ5~10㎝。葉身は長さ15㎝以下、三角状卵形、基部は心形、先は鋭形、縁は不規則な細かい鋸歯又は歯があり、微細な白色の毛で覆われ、脈が目立ち、キルティング風に見える。葉は典型的な緑一色だが、ときに野生で中肋に銀色の筋の葉をもつものがある。あまりに乾燥すると夏の終わりに黄色で斑点に変わる。上部の葉腋に花が輪生する。花は2唇形、ピンク色~紫色、ビロード状。上唇はフード状、白色の毛の縁飾りがある。下唇はフレアーがあり、ひだ飾りがあり、面白い斑点模様がある。小堅果は倒卵形、側部はわずかに扁平、明瞭な円形又は楕円形のへそがあり、長さ2.8~3.2㎜×幅1.9~2.2㎜、表面に細かい顆粒があり、光沢があり、褐色。2n=18。
品種) 'Album' , 'Rubrum' , 'Silva
10 Lamium purpureum L. ヒメオドリコソウ 姫踊子草
synonym Lamiopsis purpurea (L.) Opiz
ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア原産。英名はpurple dead-nettle , red dead-nettle, red archangel。日本、北アメリカ、南アメリカ、オーストラリアなどに帰化している。明治中頃に日本に渡来した。道端や草地に生える。
1年草。高さ10~45㎝。茎は基部で分枝し、四角形で、しばしば紫色を帯び、下向きの白毛が生える。暖かい場所では冬にも花が見られる。葉は長さ1~5㎝、三角状卵形、鈍頭、基部は心形、縁は規則的な円鋸歯(やや不規則)~円鋸歯状鋸歯、脈が深く、花期に赤紫色を帯び、有柄。葉裏は軟毛が密生してやや白く、腺点がある。苞は葉に似るが、基部が円形又は切形、有柄又は上部ではほぼ無柄。花序はかなり密。萼は長さ5~7㎜、筒状鐘形、軟毛がある。萼歯は5個、萼筒の長さとほぼ同長、果時に広がり、裂片の先がとがり、裂片の先に延びるように脈が隆起し、脈の一部が紫褐色になる。花冠は長さ10~15㎜、ピンク紫色、花冠の下唇は長さ1.5~2.5㎜、花冠筒部は萼より長く、基部近くに毛の輪をもつ。雄しべ4個。花粉は橙色。花柱は先が2裂する。小堅果は約長さ2.3㎜×幅1.3㎜、3稜があり、頭部はほぼ平ら、平滑、オリーブ色~褐灰色、しばしば、白色の斑点があり、基部に大きな種沈がつく。2n=18。花期は3~10月。
【参考12の詳細な解説】
Lamium purpureum L.には4変種がある。モミジバヒメオドリコソウはヒメオドリコソウの変種 var. hybridum とされることもあるがPOWOでは独立種としている。
10-1 Lamium purpureum var. ehrenbergii (Boiss. & Reut.) Mennema
synonym Lamium ehrenbergii Boiss. & Reut.レバノン・シリア、トルコ原産。レバノンの山岳地帯ではそれほど珍しくない。標高1700~2300m岩の多い斜面、ときに草原に生える。
茎は高さ(<)5(~10)㎝。葉身は心形~(上部で)菱形、かすかに円鋸歯があり、両面に毛がある。茎葉は長さ約0.5㎝、葉形指数は1.0~1.2。花葉(floral leaves;輪散花序をもつ葉)は長さ約1㎝、葉形指数は1.2~1.3。輪散花序は密集し、ほとんどが閉花性。萼片は長さ0.5~0.8㎝、萼歯は短く、萼筒は萼歯の1.5~2倍の長さ。通常の花の花冠は長さ約1.5㎝、閉花性の花冠は著しく短く、内部に毛の輪が見られる。小堅果は長さ1.5(~2.8)㎜×幅1.3~1.5㎜。花期は5~9月。
10-2 Lamium purpureum var. incisum (Willd.) Pers.
synonym Lamium incisum Willd.synonym Lamium purpureum subsp. incisum (Willd.) Hartm.
synonym Lamium aeolicum Lojac.
synonym Lamium confusum Martrin-Donos
synonym Lamium felixii L.C.Lamb.
ヨーロッパ、レバノン・シリア、トルコ、アルジェリア原産。海抜0~2000mの耕作地、庭、道端、荒れ地、山の岩、森林などに生える。
茎は高さ(10~)20~30(~55)㎝。葉身は心形~上部で卵形または倒卵形、縁は深く不規則に切れ込みがあり、両面に毛がある。茎葉は長さ(0.5~)1~3.5(~6)㎝、指数(index)は(0.7~)0.9~1.1(~1.3)。花の葉(floral leaves)は長さ(1~)1.5~4(~7.5)㎝、指数(index)は(0.8~)0.9~1.1(~1.3)。輪散花序は密集する。萼は長さ(0.5~)7.5(~1)㎝、萼歯は萼部と同長かまたはそれより短い。花冠は長さ(1~)1.5(~2)㎝、花冠筒部は萼から突出し、内部の毛の輪毛は有または無。小堅果は長さ(2.5~)2.8~3(~3.3)㎜×幅(1.3~)1.5(~2)㎜。
10-3 Lamium purpureum var. moluccellifolium Schumach.
synonym Lamium amplexicaule subsp. moluccellifolium (Schumach.) Fiori
synonym Lamium moluccellifolium (Schumach.) Fr.ヨーロッパ(ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、フォロア、ドイツ、オランダ、ヨーロッパロシア、スウェーデン、スイス原産。英名はnorthern dead-nettle。低地の耕作地、庭、道端、空き地に生える。
1年草、高さ40㎝以下、ホトケノザより丈夫、綿毛がある。葉はやや三角形状の丸味のある卵形、縁には切れ込み又は鋸歯がある。苞は抱茎でなく、最下部の苞に短柄がある。花は花冠が長さ15㎜以下。花冠筒部は基部近くで急にくびれない。下唇は長さ約4㎜。萼は花時に長さ8~12㎜、伏毛があり、萼歯は普通、萼筒より長く、果時に広がる。小堅果は倒三角形、背側は凸面、腹側は屋根状、先は切形、底部は狭く、基部に橙色の種沈(curncula)がつき、長さ2~2.8㎜×幅1.1~1.3㎜、表面はいぼがあり、わずかに光沢があり、帯灰色。2n=36。Lamium amplexicaule(ホトケノザ)とLamium purpureum(ヒメオドリコソウ)のハイブリッド起源とされている。花期は5~9月。
10-4 Lamium purpureum var. purpureum ヒメオドリコソウ 姫踊子草 狭義
synonym Lamium albiflorum Schursynonym Lamium purpureum f. albiflorum H.Lindb.
synonym Lamium purpureum f. albiflora Gérard シロバナヒメオドリコソウ 白花姫踊子草
ヨーロッパ(西部~ロシアまで広く分布)、西アジア(レバノン・シリア、トルコ)、アフリカ(アルジェリア、チュニジア、モロッコ)原産。海抜0~1800mまでの野原、庭、道端、茂み、荒れ地、ゴミの山、斜面、開けた森林、様々な土壌に生える。茎は高さ(5~)15~30(~0)cm。葉身は心形~(下部)腎形、上部の葉身は卵形~倒卵形、かすかに円鋸歯があり、毛があり、特に上部に多い。茎葉は長さ(0.5~)1.5~2(~5)cm、指数は(0.8-)1.0~1.1(~1.5)cm、花葉は長さ(1~)1.5~2(~5)cm、指数は(0.8~)0.9~1.3(~1.5)cm。輪散花序は密集する。萼片は長さ0.5~0.8cm、歯は普通、筒部と同長。花冠は長さ(1~)1.3~1.5(~2)cm、筒部はほとんど萼片から突出せず、内部の輪毛は常に存在する。小堅果は長さ(2~)2.3~2.5(~2.8)×幅(1~)1.3~1.5mm。
11 ハイブリッド
(1) Lamium × Stachys, 'Lilac Falls'
(2) その他
品種) 'Ickwell Beauty' , 'Lambrook Silver' , Lami Blush (Lami Series) , Lami Dark Purple (Lami Series) , Lami Pink (Lami Series) , 'Marshmallow' , 'Mega Purple' , 'Silberlicht' , 'Wisley White'
参考
1) Flora of ChinaLamium
Lamium
Lamium garganicum
Lamiastrum galeobdolon
Lamium
Lamium garganicum p571
17. Lamium p413-414
Cut-leaved Dead-nettle
Lamium purpureum var. hybridum (Vill.) Vill.
Lamium album Linnaeus
Lamium argentatum (Smejkal) Henker ex G.H.Loos Aluminium Plant
A taxonomic revision of Lamium (Lamiaceae) ; J. Mennema