ミカヅキグサ 三日月草
Flora of Mikawa
カヤツリグサ科 Cyperaceae ミカヅキグサ属
中国名 | 白鳞刺子莞 bai lin ci zi guan |
英 名 | white beaksedge, white beak-rush |
学 名 | Rhynchospora alba (L.) Vahl. |
果 期 | 7~8月 |
高 さ | 20~60㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 湿原 |
分 布 | 在来種 在来種 北海道、本州、九州、朝鮮、中国、台湾、ロシア、カザフスタン、西南アジア、ヨーロッパ、北アメリカ |
撮 影 | 新城市 07.9.8 |
多年草。高さ20~60㎝×太さ0.5~0.8㎜。やや叢生し、直立する。葉は稈より短く、幅0.5~1.5㎜の細い糸状、縁は内巻き。茎頂に白色の狭いこま形~半球形の花序をつける。花序は小穂が2~7個集まった小穂群が(1)2~3個からなる。小穂は長さ(3.5)5~6(8)㎜、狭卵形~披針形、鋭頭、花が(1~)2(~3)個つく。苞穎は初め白色、後に淡褐色、卵形~卵状披針形、膜質、中肋があり、微突頭。果実は果体(小堅果)が長さ1.5~2.5㎜(柱基を含む果実の長さは2.5~3㎜)の倒卵形、両凸レンズ形、柱基は円錐状錐形、果体の長さの1/2~2/3。刺針状花被片は8~15本つき、果体より長く(1.5倍以下=わずかに柱基を超える程度)、下向きにザラつき(稀に平滑)、基部に剛毛がある。花柱は糸状、基部は広がる。柱頭は2岐。2n=26。
解説では一般に花被の剛毛のザラつきは下向きとされているが、写真のように基部では長い毛状でやや上向きである。Flora of Chinaのように、後ろ向きのザラつきがあり(retrorsely scabrous)、基部に剛毛があるとするのが正しいと思われる。Flora of North Americaではザラつきを barbellateと表現し、基部に剛毛があるとしている。
ミカヅキグサ属
family Cyperaceae - genus Rhynchospora多年草、まれに1年草。稈は叢生し、直立、3稜形又は円柱形。葉は根生葉と茎葉。鞘は閉じ、葉舌は有又は無。葉身は線形、平ら又は樋状。苞(involucral bracts 総苞片)は葉状、鞘がある。花序は円錐花序、頂生と側生のイグサ形花序(anthelae)からなり、ときに穂状花序又は頭状花序になる。小穂は無柄又は花序柄があり、狭卵形~卵形~楕円形、わずかに両側面が扁平又は円柱形。苞穎(glume:鱗片)は少数~多数、螺旋状に覆瓦状につき、又はまれに2列につき、1脈がある。基部の3~4個の苞穎は先の苞穎より短く、空。花は両性又は基部の花が両性で先の花は雄性又は不稔。(花被は無く、)刺針状花被片(perianth bristles)は0~6(~13)本、前向き(上向き)又は後ろ向き(下向き)にザラつき、まれに平滑。雄しべは2~3本。柱頭は2岐。小堅果(nutlet or achenes)は普通、倒卵形~卵形、両凸レンズ形、様々な装飾があり又はまれに平滑。宿存する柱基(style base, tubercle)は太くなり、ほとんど円錐形又はまれに三日月形、スポンジ状、基部は切形又は±分裂する。
世界に約350種があり、全世界に分布し、とくに新世界の熱帯、亜熱帯に多い。
ミカヅキグサ属の主な種
1 Rhynchospora alba (L.) Vahl ミカヅキグサ 三日月草日本(北海道、本州、九州)、朝鮮、中国、台湾、ロシア、カザフスタン、西南アジア、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は白鳞刺子莞 bai lin ci zi guan 英名はwhite beaksedge, white beak-rush 。湿原に生える。
多年草。高さ20~60㎝×太さ0.5~0.8㎜。やや叢生し、直立する。葉は稈より短く、幅0.5~1.5㎜の細い糸状、縁は内巻き。茎頂に白色の狭いこま形~半球形の花序をつける。花序は小穂が2~7個集まった小穂群が(1)2~3個からなる。小穂は長さ(3.5)5~6(8)㎜、狭卵形~披針形、鋭頭、花が(1~)2(~3)個つく。苞穎は初め白色、後に淡褐色、卵形~卵状披針形、膜質、中肋があり、微突頭。小堅果は果体が長さ1.5~2.5㎜(柱基を含む果実の長さは2.5~3㎜)の倒卵形、両凸レンズ形、柱基は円錐状錐形、果体の長さの1/2~2/3。刺針状花被片は8~15本つき、果体より長く(1.5倍以下=わずかに柱基を超える程度)、下向きにザラつき(小刺があり、稀に平滑、基部に剛毛がある。花柱は糸状、基部は広がる。柱頭は2岐。2n=26。
【Flora of Chinaの解説】
多年草は短く、細い。稈は叢生し、直立、高さ15~42(~50)㎝×太さ0.5~0.8㎜、先部がわずかにザラつく。葉は稈より短い。鞘はわら褐色、基部の鞘は葉身が有るか又は無い。葉身は糸状、幅0.7~2㎜、紙質、縁は内巻き。苞葉は葉状、基部の苞葉は鞘をもち、先部の苞葉は鞘が無い。花序は円錐花序、頂生と側生の類頭状花序状のイグサ形花序からなる。小穂は2~7個、集まって束生し、花序柄が無又は有、狭卵形、長さ5~6㎜、花が2個つく。苞穎は5~6個つき、初め白色、淡褐色に変わり、卵形~卵状披針形、膜質、竜骨があり、先は微突形。花被の剛毛は9~13本、小堅果より長く、後ろ向きのザラつきがあり、基部にはまばらに剛毛がある。雄しべは2本。花糸は小堅果と柱基の長さと同長。葯は線形。花柱は糸状、基部は広がる。柱頭は2個、花柱の長さとほとんど同長。小堅果は黄緑色~緑褐色、倒卵形~長円状倒卵形、長さ1.5~2.5㎜、両凸レンズ形、±平滑~不明瞭な小しわがある。宿存する柱基は円錐状錐形、小堅果の長さの1/2~2/3。花期と果期は8月。2n=26。沼地、湿った場所に生える。(Flora of China)
【Flora of North Americaの解説】
多年草、密に群生し、高さ6~75㎝。根茎はほとんど無い。稈は直立~曲がり、葉があり、目立たない3稜形~円柱形に近く、少数のうねがあり、細い。主な葉はほとんど稈に乗り越えられる。葉身は狭線形~糸状、下部は平ら、幅0.5~1.5㎜、先は細くなり、3稜形。花序は密散花序(束生)が1個又は2~3個、その後広く、広がり、狭いこま形~半球形になり、幅1.5~2.5㎝。基部を抱く葉状の苞はしばしば上部の密散花序によって超えられる。小穂は淡褐色~白色に近く、楕円形、長さ3.5~5.5㎜、先は鋭形。稔性の鱗片は楕円形、長さ3~3.5(~4)㎜、先は鋭形~尖鋭形、中肋は微突起として突き出る。花被の剛毛は10~12本、わずかに柱基(tubercle)を超え、後ろ向きのひげ状の剛毛(barbellate)があるか又はまれに平滑、基部はしばしば剛毛で覆われる。果実は小穂に1(~2)個つき、長さ (2.3~)2.5~3 ㎜、果体(body)は淡褐色、中央部が淡く、柄のある倒卵形、レンズ形、長さ1.5~1.8(~2)㎜×幅0.9~1.2㎜、表面に横の条線があり、比較的に平滑、縁は狭く、柱基の基部に流れる。柱基は狭三角状錐形、長さ0.5~1.2㎜。果期は夏~秋。酸性のミズゴケの生える沼地の開けた場所、湿原(poor fens)、しばしば浮かんだマットの上又は岩の多い海岸の泥炭の隙間に生える。(Flora of North America)
2 Rhynchospora boninensis Nakai ex Tuyama シマイガクサ 島毬草
synonym Rhynchospora parva (Nees) Steud. var. boninensis (Nakai ex Tuyama) T.Koyama
日本固有種。小笠原諸島に分布。日当たりのよい湿地、岩場に生える。茎は、直立し、高さ20~40㎝、断面は三角形、平滑。葉は根生し、多くの枯葉を着生し、幅2.5~4㎜。苞(総苞片)は無鞘。花序は分枝せず、頂生、1個の頭状花序、多数の無柄の小穂を球形(イガ状)に束生する。小穂は卵状楕円形、淡黄褐色、扁平、先は鋭形。鱗片は小穂に5~6個つき、披針形、先は鋭形。痩果は長円状倒卵形、長さ2.5~3㎜、上部の縁にまばらに短毛がある。刺針状花被片は6本、痩果より長く、下向きの小刺がある。柱頭は分岐しない。n=20。花期は5~6月。
3 Rhynchospora brownii Roem. et Schult. トラノハナヒゲ 虎の鼻髭
synonym Rhynchospora rugosa (Vahl) Gale var. condensata (Kuk.) T.Koyama
synonym Rhynchospora rugosa (Vahl) Gale subsp. brownii (Roem. et Schult.) T.Koyama
日本(本州の静岡県以西、四国、九州、沖縄)、中国、台湾、インド、ネパール、スリランカ、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、パプアニューギニア、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリア、太平洋諸島、インド洋諸島、マダガスカル原産。中国名は白喙刺子莞 bai hui ci zi guan 。沼地、湿った川岸に生える。愛知県の絶滅危惧ⅠB類に指定されている。多年草。根茎はごく短い。稈は叢生し、直立、高さ30~55(~90)㎝。細く、3稜があり、平滑だが、先は普通、ザラつく。葉は根生葉と少数の茎葉、離れ、稈より短い。鞘は褐色、閉じ、長さ2.6~6㎝、無毛、口部にごく短い葉舌がある。葉身は狭線形、幅1.5~3㎜、平ら又は樋状、縁と下面の中脈がザラつき、先は長い尖鋭形。苞は葉状、基部の苞には鞘があり、最も上部の苞には鞘が無い。花序は円錐花序、狭く、3~4個の密~±疎の散房花序状のイグサ形花序からなる。側生の花序柄は単生又は双生、圧縮され、しばしば鞘から長く突き出る。花序枝は長さが異なり、直立する。小花序枝は剛毛状。小穂は暗褐色、楕円形~類卵形、長さ3~4.5㎜、花が3~4個つき、基部は±鈍形、先は鋭形。苞穎は7~8個つき、楕円状卵形~卵形~広卵形、基部の3~4個の苞穎は空。刺針状花被片は6本、小堅果の長さよりわずかに短く、長さが異なり、前向きにざらつく。雄しべは(1~)3本。花糸は小堅果と柱基より長い。子房は倒卵形。花柱は糸状。柱頭は2岐、花柱と同長。小堅果は淡さび色、広楕円状倒卵形、長さ約1.7㎜、両凸レンズ形、細かい横の小しわがあり、縦の表皮細胞をもち、宿存する柱基は広円錐形、小堅果の長さより短い。花期と果期は6~10月。2n=36。
4 Rhynchospora capitellata (Michx.) Vahl アメリカイヌノハナヒゲ
synonym Schoenus capitellatus Michx
北アメリカ原産。英名はbrownish beaksedge。
多年草、叢生、高さ20~100㎝。根茎は無い。稈は弓なりに斜上し、葉がつき、鈍い3稜があり、細い。主な葉は花序に覆われる。葉身は平ら、幅3㎜以下、先は細くなり、3稜形。花序は頂生と腋生、密散花序(束生)は1~5個又はそれ以上、小型、こま形又は半球形、幅1~1.5㎝。花序柄は稈の上部で次第に短くなる。苞は基部に抱く複合花序を超えてほとんど突き出る。小穂はアスファルト色(rich deep brown)、まれに、淡褐色、披針状楕円形、長さ3.5~4(~5)㎜。稔性の鱗片は楕円形、長さ2.7~3㎜、先は鋭形又は円形、中肋は短く突き出るか又は突き出ない。刺針状花被片は5~7本、柱基の先に届き、小刺(barbs)は下向き。果実は小穂に(1~)2~3(~5)個つき、長さ(2~)2.5~3㎜(柱基を含めて)、果体(body)は赤褐色で中心に淡色の円盤をもち、柄があり、レンズ形、倒卵形、長さ1.2~1.5㎜×幅0.7~1(~1.2)㎜、縁は淡色、針金状、表面は滑らか。柱基(tubercle)は三角状錐形、長さ(0.8~)1~1.2(~1.6)㎜。花期は7~8月。
5 Rhynchospora colorata (L.) H. Pfeiffer シラサギカヤツリ 白鷺蚊張吊
synonym Dichromena colorata (L.) C.L.Hitchc.USA、メキシコ、中央アメリカ、南アメリカ、西インド諸島原産。中国名は白鹭莞 bai lu guan。英名はstarrush whitetop, white star sedge, white-topped sedge, star sedge。別名はシラサギスゲ、スターグラス。
多年草、叢生又は単生、高さ30~70㎝。根茎は細く、鱗片があり、太さ2㎜以下。稈は直立、細く、基部に葉があり、三角形、数個のうねがある。葉は広がり~直立し、、稈により越水し、葉身は狭線形、基部は扁平になり、幅0.5~3㎜、先は細くなり、三角形。花序は頂生、1個つき、頭状、密に白色の葉状の苞(総苞)がつき、苞(総苞片)は数個、フレアー状~反曲、広い基部~中間近くまで白色、そこから細くなった先まで緑色。長い苞は長さ13㎝、幅2~7㎜。小穂は白色、卵形、長さ5~7㎜、先は鋭形。雌鱗片は多数、舟形、鋭い曲がった竜骨があり、長さ3~4(~5)㎜、先は鋭形又は鈍形。花は刺針状花被片が無い。果実は小穂に数個、長さ1.5~1.7(~2)㎜。柱基を除いた果実本体は黄色~マホガニー色、広梨状倒卵形、薄いレンズ形、長さ約1㎜、幅0.5~0.7㎜、先が最も広く、縁は厚くなり、先端の疣の基部で終わり、表面に横の波打つしわがあり、うねに短い線形のパピラがある。先端の柱基(tubercle)は広三角形、0.5~0.6㎜、灰色、甲殻質、先は短い尖鋭形。2n=12。花期は(5)6~9月 。
6 Rhynchospora corymbosa (L.) Britton ヤエヤマアブラスゲ 八重山油菅
synonym Scirpus corymbosus Linnaeus
synonym Rhynchospora aurea Vahl.
中国(広東省、広西チワン族自治区、海南省、湖南省、雲南省)、台湾、インド、スリランカ、バングラディシュ、タイ、ベトナム、ミャンマー、インドネシア、マレーシア、フィリピン、パプアニューギニア、オーストラリア、インド洋諸島、太平洋諸島、アフリカ、マダガスカル、中央アメリカ、南アメリカ原産。中国名は伞房刺子莞 san fang ci zi guan 。英名はgolden beak sedge。標高100~900mの谷沿いの湿った川の縁に生える。
多年草。 根茎は短い。 稈は直立し、高さ60~140㎝、丈夫で、3角(かど)があり、数個の節があり、角(かど)は平滑または細かくザラつく。葉は根生葉と茎葉。鞘は半円形、長さ2~6㎝、膜質、口部に葉舌がある。葉身は広線形、長さ30~60㎝×幅0.9~1.7㎝、平ら、草質~薄い革質、縁と下面の中脈はザラつき、先は長い尖鋭形。苞(総苞片)は3~5 枚、葉状、花序より短く、基部に鞘がある。花序は2~5個の離れた散房状のイグサ形花序からなる大きな複合の円錐花序であり、長さ20~50cm。 イグサ形花序の複合体は直径15㎝まで、±密集、広がり、多数の分枝する。小苞は剛毛(setaceous)。小穂は多数、2~5個束生し、直立または斜めに開出し、狭卵形~紡錘形、長さ7~10㎜、基部の花は両性、先の1~2個の花は雄花。苞穎(glumes:鱗片)は7または8個、卵形~卵状披針形、基部の4個と最も先端の苞穎は空。刺針状花被片は6本、小堅果と同長さで、前向きにザラつく。雄しべは3本。花糸は小堅果と柱基よりも短い。葯は線形、葯隔は錐形。花柱は長さ約1.7㎝、基部は広がる。柱頭は2岐。小堅果は褐色、長円状倒卵形~倒卵形、長さ3~4㎜、扁平、中央部に細かい横向きのしわがあり、縁に向かって粗く波状のしわがある。宿存する柱基は長い円錐形、長さ約5.5㎜、幅は小堅果とほぼ同じ幅、扁平、両側に顕著な溝があり、平滑または凹凸がある。花期と果期は3~12月。2n=18。
7 Rhynchospora chinensis Nees et Meyen イヌノハナヒゲ 犬の鼻髭 広義
日本(本州、四国、九州、沖縄、小笠原諸島)、朝鮮、中国、台湾、インド、ミャンマー、カンボジア、タイ、ベトナム、マダガスカル、レユニオン、モーリシャス、ハワイ原産。
【Flora of Chinaの解説】
多年草。根茎はごく短い。稈は叢生し、直立、高さ25~60(~125)㎝。細く、3稜があり、硬く、基部は1~2個の葉身の無い鞘に被われ、先はザラつく。葉は根生葉と茎葉、花序より短く、鞘は長さ5~9㎝。葉舌はさび褐色、短く、膜質。葉身は狭線形、幅1.5~2.5㎜、縁はザラつき、先は尖鋭形。苞は葉状、花序より長く、基部の苞には鞘があり、最も上部の苞は鞘が短いか又は無い。花序は円錐花序、3~5個の散房花序状のイグサ形花序からなり、ほとんど双生、類直立。花序柄は突き出し、小穂の2~9個の集団をやや緩くつける。小穂は褐色、狭卵形、長さ7~8㎜、花が2~5個つき、基部は±鈍形、先は鋭形。苞穎は5~8個つき、褐色~黄褐色、楕円状卵形~披針状楕円形、基部の2~3個の苞穎は空。先の苞穎は広卵形~披針状楕円形、膜質、1肋があり、先は微突形~尖鋭形。花被の剛毛は6本、前向きにざらつく。雄しべは3本。花糸は小堅果と柱基よりわずかに長い。葯は線形。子房は倒卵形。花柱は糸状、基部は広がる。柱頭は2個、花柱より短い。小堅果は暗赤褐色、広楕円状倒卵形、長さ2~3.7㎜、両凸レンズ形、細かい横の小しわがあり、縦の長円形の表皮細胞をもち、宿存する柱基は狭い円錐形、小堅果の長さよりわずかに短~同長。花期と果期は5~10月。
【e-Flora of Thailandの解説】
多年草、根茎がある。稈は疎~密に束生し、長さ(30~)50~140㎝×1~3㎜、上部は三角形(trigonous)~三稜形(triquetrous)、上部は平滑またはザラつく。 葉は根生葉と2~4枚の茎葉、葉身は線形、長さ10~60㎝×幅3~5㎜、長い尖形、平らでひだ状になります。 基底鞘は黄褐色から中褐色、尾鞘は緑色がかっています。 総苞は葉状で、最も長いものは長さ13cmにも達します。 花序は狭く、円錐花序状で、長さ20~40㎝、3~5(~6) の節があり、それぞれに1~3本の花序柄があり小穂を束生する。小穂は束あたり最大15個、卵状披針形、長さ6~8㎜×幅1.5~2.5㎜。苞穎は5~8個、卵形~卵状披針形、長さ1~5㎝、鋭形~微突形、側面は膜質、褐色~錆び褐色。刺針状花被片は6本、小堅果より長い。 雄しべは2(~3)本。葯は長さ2~2.5㎜。柱頭は2岐。小堅果は広倒卵形、扁平、長さ1.9~2.5㎜×幅1.5~1.8㎜、わずかに光沢があり、帯黄色~褐色、弱い横しわがあり、細い線状(lineolate)。柱基は円錐形で、下部が徐々に広がる。
7-1 Rhynchospora chinensis Nees et Meyen subsp. chinensis イヌノハナヒゲ 犬の鼻髭
synonym Rhynchospora japonica Makino
synonym Rhynchospora longisetigera Hayata
synonym Rhynchospora japonica Makino var. japonica [YList]
日本(本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国、台湾、インド、ミャンマー、タイ、ベトナム、モーリシャス、マダガスカル、レユニオン原産。中国名は华刺子莞 hua ci zi guan。英名はspiked beaksedge。沼地、湿った場所、湿った草原に生える。学名はYlistではRhynchospora japonica Makinoとしている。
多年草、高さ40~60(100)㎝。根茎は短く、茎は多数、叢生し、直立又は斜上する。葉はほとんど茎の下部に集まってつき、花序より短く、幅2~4㎜、基部に鞘があり、先はやや鋭形。花序は散房花序状、上部に離れて、3~6個つき、下部の枝は垂れ下がる。小穂は広披針形、長さ7~9㎜、褐色~濃褐色で光沢はなく、少数の鱗片に包まれた1小花からなる。痩果は2~2.2mm、広倒卵形~卵形。刺針状花被片は6本、長さは痩果の長さの2~3倍あり、上向きの小刺がある。宿存する柱基は長い円錐形。果期は7~10月。2n=62。
7-2 Rhynchospora chinensis Nees et Meyen var. curvoaristata (Tuyama) Ohwi ムニンイヌノハナヒゲ 無人犬の鼻髭
synonym Rhynchospora japonica Makino var. curvoaristata Tuyama [YList]日本(小笠原諸島)に分布。
多年草。高さ40~70㎝。稈は平滑。葉は束生し、幅2~3㎜。基本変種とは苞穎(鱗片)が淡赤褐色で、先が反曲することで区別できる。花期は3~4月。果期は7~8月。2n=36。
7-3 Rhynchospora chinensis subsp. spiciformis (Hillebr.) T.Koyama
synonym Rhynchospora spiciformis Hillebr.ハワイに分布。英名はspiked beak sedge, spiked beaksedge。
8 Rhynchospora faberi C.B.Clarke イトイヌノハナヒゲ 糸犬の鼻髭
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は细叶刺子莞 xi ye ci zi guan 。沼地、小川の縁に生える。
多年草。根茎はごく短く、密に細いひげ根がある。稈は叢生し、直立、高さ20~40(~60)㎝×太さ0.5~1㎜、3稜があり、、基部は葉身の無い淡黄色の鞘に被われ、先はときに、わずかにザラつく。葉は根生葉と少数の茎葉、稈より短い。葉身は糸状、幅0.55~1㎜、3稜があり、ときにわずかにザラつき、先は細かい尖鋭形。苞は葉状又は剛毛状、鞘がある。花序は円錐花序、1個の頂生と3~4個の側生の散房花序状のイグサ形花序からなり、小さく、ごく離れ、2~5個の小穂をもつ。小穂は直立、暗褐色、狭卵形、長さ約3.5㎜基部は類切形、先は尖鋭形。苞穎は5~6個つき、卵形~楕円状卵形、花が1~2個つく。基部の3~4個の苞穎は狭卵形、空。刺針状花被片は6本、長さは小堅果よりわずかに長く、後ろ向きにざらつく。雄しべは1本。花糸は小堅果・柱基と同長。花柱は細い。柱頭は2個、小堅果は褐色~淡赤褐色、広倒卵形~倒卵状球形、長さ1.5~2㎜、両凸レンズ形、細かい横の小しわがあり、縦長の長円形の表皮細胞をもち、宿存する柱基は狭い円錐形、小堅果の長さの1/3~2/3。花期と果期は8~10月。
8-1 Rhynchospora faberi C.B.Clarke f. breviseta (Palla) Ohwi et T.Koyama チョウセンヒメイヌノハナヒゲ
8-2 Rhynchospora faberi C.B.Clarke f. exigua (Takeda) Ohwi et T.Koyama ネズミノハナヒゲ
8-3 Rhynchospora faberi C.B.Clarke f. umemurae (Makino) Ohwi et T.Koyama ヒメイヌノハナヒゲ
9 Rhynchospora fauriei Franch. オオイヌノハナヒゲ 大犬の鼻髭
synonym Rhynchospora chinensis Nees et Meyen var. fauriei (Franch.) T.Koyama
synonym Rhynchospora chinensis Nees et Meyen subsp. fauriei (Franch.) T.Koyama
日本(北海道、本州の中国地方以東)、朝鮮原産。低地の湿地、山地~亜高山の湿原に生える。多年草。高さ30~70㎝。稈は細く、叢生し、直立する。葉は線形、幅1.5~2.5㎜。花序は円錐花序、1個の頂生と数個の側生の散房花序状のイグサ形花序からなり、小さく、ごく離れ、小穂は約10個つき、垂れ下がらない。小穂は披針形、長さ7~9㎜。苞穎は小穂に4~5個つき、濃赤褐色、やや光沢があり、卵形。上部の1~2個の苞穎には花がつき、他の基部の苞穎は空。柱頭は2個。花被の剛毛は長さが小堅果の3~4倍、平滑または下向きの小刺があるかほぼ平滑。小堅果は倒卵形、長さ約2㎜。花期は7~9月。2n=62
10 Rhynchospora fujiiana Makino コイヌノハナヒゲ 小犬の鼻髭
synonym Rhynchospora yasudana Makino var. leviseta (C.B.Clarke ex H.Lev.) T.Koyama f. retrorsoscabra (Takeda) T.Koyama
synonym Rhynchospora yasudana Makino var. leviseta (C.B.Clarke ex H.Lev.) T.Koyama
synonym Rhynchospora yasudana Makino subsp. leviseta (C.B.Clarke ex H.Lev.) T.Koyama
synonym Rhynchospora yasudana Makino ミヤマイヌノハナヒゲ [Kewscience The Plant List]
北海道、本州、四国、九州、朝鮮原産。低地~山地の湿地に生える。多年草。高さ40~50㎝。茎は細く、弓なり状に斜上し、中間で曲がったり、倒れることが多い。葉は幅約1㎜と細い。茎の上部に花穂がとびとびに離れてつく。花序の茎は引っ張ると抜けやすい。小穂は長さ5~6㎜、茶褐色。果実は長さ約2㎜の狭倒卵形~倒卵形、刺針状花被片は6本つき、果実より少し長く、細くて平滑。刺針状花被片がざらつくものがある。
10-1 Rhynchospora fujiiana Makino f. scabriseta (Makino) T.Koyama ミカワコイヌノハナヒゲ
synonym Rhynchospora yasudana Makino var. leviseta (C.B.Clarke ex H.Lev.) T.Koyama f. scabriseta (Makino) T.Koyama
刺針状花被片に上向きの小刺があり、ザラつくもの。10-2 Rhynchospora fujiiana Makino. f. retrososcabrata Takeda サカゲコイヌノハナヒゲ
刺針状花被片に下向きの小刺があり、ザラつくもの。11 Rhynchospora malasica C.B.Clarke ミクリガヤ 三稜茅(実栗茅)
synonym Rhynchospora nipponica Makino
日本(本州の中部以西、九州)、朝鮮、中国、台湾、インドネシア、マレーシア原産。中国名は日本刺子莞 ri ben ci zi guan 。沼地、浅い水中に生える。
多年草。根茎は短く、這う。稈は直立、1本、高さ60~100㎝、硬く、数個の節をもち、平滑、基部は鈍い3稜があり、汚褐色の葉身の無い鞘に被われ、先には鋭い3稜がある。葉は稈より長い。鞘は長く、きつく稈を取り囲む。葉舌はさび褐色、短く、膜質。葉身は広線形、幅5~9㎜、やや平ら、先は長い尖鋭形~鋭形。苞(総苞片)は開出し、長さ7~20㎝、花序よりかなり長く、鞘は無い。花序は穂状花序、長さ3~20㎝、2~7個の頭状花序をもち、基部は途切れ、先は類接触し、頭状花序は無柄、球形、直径1~1.5㎝。小穂は狭卵形、長さ6~7㎜、弱く横方向に扁平、花が1個つき、基部は収縮し、先は尖鋭形。苞穎は5~6個つき、基部の3~4個は灰褐色、卵形、他よりかなり小さく、膜質、1脈があり、先は鋭形。先の2苞穎は披針状卵形。刺針状花被片は6本、糸状、長さ3.5~4.5㎜、小堅果の長さの約2倍、曲がりくねり、平滑。雄しべは3本。葯は長さ約2㎜。花柱は細い。柱頭は2岐。小堅果は暗褐色、倒卵形~広倒卵形、長さ2~2.3㎜、両凸レンズ形、不明瞭な横の小しわがあり、光沢があり、基部は漸尖する。宿存する柱基は狭い円錐状錐形、長さ4~5㎜、無毛。花期と果期は9~10月。
12 Rhynchospora rubra (Lour.) Makino イガクサ 毬草
synonym Schoenus ruber Loureiro
synonym Morisia wallichii Nees
synonym Rhynchospora wallichii (Nees) Kunth.
日本(本州の千葉県以西、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、雲南省、浙江省)、台湾、インド、アンダマン諸島、スリランカ、ネパール、ブータン、ミャンマー、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、パプアニューギニア、太平洋諸島(カロリン諸島)、アフリカ、マダガスカル、インド洋諸島(マリアナ諸島)、オーストラリア原産。中国名は刺子莞 ci zi guan。英名はred beak rush, red star sedge。温暖な標高100~1400mの道路の縁取り、芝生の斜面、湿地、湿った場所に生える。
1年草または短命の多年草。根茎は短い。稈は直立、株立し、高さ30~65㎝、太さ0.8~2㎜、円柱形、硬く、平滑。葉は稈より短い。鞘は褐色がかった麦わら色、長さ1~7㎝。葉身は狭線形、幅1.5~3.5㎜、紙質、わずかにザラつき、先は尖鋭形。苞(総苞片)は4~10個、堅く広がり、葉状、長さ1~5(~8.5)㎝、花序より長く、不均等、幅広の基部に密な縁毛があり、鞘は無い。花序は1個、頂生、褐色~橙褐色、半球形~球形、直径1~1.8㎝、多数の小穂がつく。小穂は狭卵形、長さ6~8㎜、光沢があり、2~4個の花がつく。苞穎(鱗片)は7~8個、褐色、卵状披針形~楕円状卵形、薄い紙質、竜骨があり、脈は1本、先は鈍形~鋭形。基部の苞穎にはそれぞれ雌花がつく。先の1~2個の苞穎はそれぞれ雄花がつく。刺針状花被片は4~6本、不等長、長さは小堅果の1/3~1/2、前向き(上向き)にザラつく。雄しべは2または3本。花糸は基部を抱く苞穎よりも短い~長い。葯は線形、葯隔は明瞭。花柱は糸状。 柱頭は2岐、または分岐しない場合もあり、非常に短い。小堅果は成熟すると褐色、倒卵形、長さ1.5~1.8㎜、両凸形、縁はほぼ鋭形、上半分は剛毛のある小鋸歯(hispid-serrulate:小刺)があり、側部の主に先半分にまばらに剛毛のある小鋸歯があり、等径の表皮細胞をもつ微小な不明瞭な点がある。宿存する柱基は円錐形で、長さは小堅果の1/5~1/4、基部は急激に広がる。2n=20。花期と果期は5~11月。(Flora of China)
13 交雑種
(1) Rhynchospora x hakkodensis Mochizuki ミカヅキグサモドキ ミカヅキグサ×ミヤマイヌノハナヒゲ(コイヌノハナヒゲ)
参考
1) Flora of ChinaRhynchospora
Rhynchospora
Rhynchospora
Rhynchospora
カヤツリグサ科植物7分類群の細胞学的研究
New chromosome counts in Brazilian species of Rhynchospora (Cyperaceae)
Rhynchospora capitellata
Rhynchospora capitellata