クルマバナ 車花

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Flora of Mikawa

シソ科 Lamiaceae トウバナ属

学 名

Clinopodium chinense (Benth.) O. Kuntze var. parviflorum (Kudo) Hara

 synonym Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze subsp. grandiflorum (Maxim.) H.Hara

 synonym Clinopodium coreanum (H.Lév.) H.Hara subsp. coreanum
 synonym Clinopodium chinense (Benth.) O. Kuntze 広義
クルマバナの花序
クルマバナの花
クルマバナの花2
クルマバナの葉裏の毛
クルマバナの茎2
クルマバナ
クルマバナの萼
クルマバナの小苞
クルマバナの葉表
クルマバナの葉裏
花 期 8~9月
高 さ 20~80㎝
生活型 多年草
生育場所 山地の草原
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、千島、朝鮮
撮 影 面ノ木  06.9.16
クルマバナはシソ科トウバナ属の多年草。和名の由来は花が数段の仮輪に輪生することから。葉脈の深さ、仮輪の大きさや毛の量など変化が多い。学名は多説あり、混乱がある。POWOではClinopodium chinense var. parviflorumは日本、朝鮮を分布域とし、subsp. grandiflorumの分布域から日本を除外している。このため、日本のクルマバナはClinopodium chinense var. parviflorumを指しているものとも考えられる。これに対し、YListではvar. parviflorumもsubsp. grandiflorumもクルマバナ(Clinopodium coreanum (H.Lév.) H.Hara subsp. coreanum)のsynonymとしている。神奈川県植物誌ではクルマバナをClinopodium chinense subsp. grandiflorumとし、var. parviflorumはsynonymとしている。しかし、Flora of Chinaのsubsp. grandiflorumと日本のクルマバナの解説では花の大きさや腺毛の有無などが異なるため、Clinopodium chinense var. parviflorumを狭義のクルマバナの学名とした。
 多年草。高さ20~80㎝。茎の断面は四角形、下向きの毛がある。茎や葉に毛があるが、毛の量には変化があり、毛のほとんど無いものもあり、腺毛はない。葉は対生し、短い柄があり、長さ2~4㎝の長卵形、鋸歯があり、基部は円形。葉表に光沢があることもあり、葉脈が深く、両面に白毛があり、葉裏の腺点はまばらで目立たない。小苞は線形、開出する長剛毛が多く、小花柄より長い。花序は茎の中部以上の葉腋ごとに、半球形の数段の輪散花序(仮輪)になり、密集して多数、花がつく。花は唇形、長さ8~10[7~11]㎜。上唇は小さく、浅い切れ込みが入り、下唇は大きく3裂する。萼は長さ6~8㎜、腺毛はなく[まれに腺毛があり]、開出する長剛毛があり、紅紫色を帯びることが多い。萼歯は5個、下側の2個は細く尖る。果実は4分果。2n=38。花期は8~9月。

1 Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze オキナワクルマバナ(クルマバナ) 広義

  synonym Calamintha chinensis Benth.
  synonym Calamintha clinopodium var. chinensis (Benth.) Miq.
  synonym Satureja chinensis (Benth.) Briq.
 日本、朝鮮、中国、台湾、ロシア、サハリン、ベトナム原産。

1-1 Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze subsp. chinense オキナワクルマバナ 沖縄車花

  synonym Clinopodium chinense f. setilobum H.Hara ニッコウクルマバナ

  synonym Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze [Flora of china 风轮菜]

 日本(九州、沖縄)、中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、山東省、雲南省、浙江省)、台湾、ベトナム原産。中国名は风轮菜 feng lun cai。標高0~1000mの丘陵、川辺、草地、茂み、森林に生える。
 茎は高さ1mまで、基部は這い、細かい条線があり、密に毛があり、腺毛がある。葉柄は長さ3~8㎜。葉身は卵形で、先は苞状、長さ2~4㎝×幅1.3~2.6㎝、紙質、上面に密に伏した微細な剛毛があり、下面に細柔毛(pilose)があり、基部は円形~広楔形、縁は円鋸歯鋸歯があり、先は鋭形~鈍形。輪散花序は花が多数あり、半球形、直径3㎝まで、上部の輪散花序は直径約1.5㎝、間隔が広い。苞は多数あり、針状で、長さ3~6㎜。萼片は狭い筒形、紫赤色を帯び、長さ約6㎜、細柔毛があり、腺微軟毛があり、歯の内側に細柔毛があり、果時には基部の片側がわずかに膨らむ。上側の歯は±反り返り、狭三角形、先端は尖鋭形。下側の歯は真っ直ぐで芒がある。花冠は紫赤色、長さ約9㎜、微軟毛がある。喉には2列の毛があり、幅約2㎜、上唇は先が凹形。小堅果は黄褐色、倒卵形、約・長さ1.2㎜×幅 0.9㎜。花期は5~8月。果期は8~10月。

1-2 Clinopodium chinense subsp. grandiflorum (Maxim.) H.Hara クルマバナ 車花

  synonym Calamintha chinensis var. grandiflora Maxim.
  synonym Clinopodium chinense var. grandiflorum (Maxim.) H.Hara
  synonym Clinopodium chinense var. urticifolium (Hance) Koidz.

  synonym Clinopodium coreanum H.Hara in J. Jap. Bot. 12: 40 (1936), pro syn.

  synonym Clinopodium urticifolium (Hance) C.Y.Wu & S.J.Hsuan ex H.W.Li [Flora of china 麻叶风轮菜]

  synonym Clinopodium coreanum (H.Lev.) H.Hara subsp. coreanum [YList]

  synonym Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze subsp. grandiflorum (Maxim.) H.Hara var. parviflorum (Kudô) H.Hara

 朝鮮、中国(河北省、黒龍江省、河南省、江蘇省、吉林省、遼寧省、陝西省、山東省、山西省、四川省)、ロシア、サハリン原産。中国名は麻叶风轮菜 ma ye feng lun cai。別名はマンシュウクルマバナ。標高300~2200の丘陵草原、森林に生える。POWOでは日本を分布域に含めていない。YListでは日本を分布域に含め、Clinopodium coreanum (H.Lev.) H.Hara subsp. coreanumのsynonymとしている。Flora of Chinaでは日本を分布域に含めClinopodium urticifoliumのsynonymとしている。基本亜種のオキナワクルマバナは毛がきわめて多く、萼や小苞に長剛毛と腺毛がある。
 多年生草本。根茎は木質。茎は直立し、長さ25~80㎝、細かい条線があり、堅い。基部は半木質で、赤紫色、まばらに後屈し、微細な剛毛がある。葉柄は下部の茎葉で長さ1~1.2㎝、上部の茎葉で長さ2~5㎜。葉身は卵形~卵形長楕円形で、長さ3~5.5㎝×幅1.2~3㎝、紙状で、上面にはまばらに微細な剛毛があり、下面にはまばらに細柔毛があり、基部はほぼ切形~円形、縁は鋸歯状、先は鈍形~鋭形。輪散花序には多数の花が付き、半球形で、下部では直径3㎝以下、上部では直径約2㎝で、間隔が広い。花序柄は長さ3~5㎜で、多数分岐する。下部の花葉は輪散花序より長く、上部の花葉は輪散花序と同長で、苞状。苞は線形、赤紫色を帯び、顕著にうねがあり、萼片の長さの2/3~3/4で、白色の縁毛がある。小花柄は長さ1.5~2.5㎜。萼は狭い筒形、長さ約8㎜、赤紫色を帯び、腺毛があり、脈には白色の縁毛があり、歯は内側にまばらに細柔毛があり、果時に基部は片側がわずかに膨らむ。上側の歯は反り返り、狭三角形で短い芒がある。下側の歯は真っすぐで芒がある。花冠は赤紫色で、長さ約1.2㎝、微軟毛があり、喉部に2列の毛があり、花冠筒部は基部で幅約1㎜、基部から1/3を超えて徐々に拡張し、喉部で幅約3㎜になる。前側の雄しべはほとんど花冠に含まれるか、またはわずかに突き出る。小堅果は倒卵形、約・長さ1㎜×幅0.8㎜。 花期は6~8月。果期は8~10月。Clinopodium chinense var. chinenseと明確に区別できるものではなく、しばしばClinopodium chinense var. chinense の同義語として扱われる。[Flora of China]。
 subsp. grandiflorumはオキナワクルマバナは毛がきわめて多く、萼や小苞に長剛毛と腺毛があり、日本のクルマバナには普通、腺毛がない。
【日本のクルマバナ】
 和名の由来は花が数段の仮輪に輪生することから。葉脈の深さ、仮輪の大きさや毛の量など変化が多い。Flora of China(Clinopodium urticifolium)の解説では萼に腺毛があるが、日本のクルマバナには普通、腺毛がない。日本のクルマバナは丘陵地や山地に生え、花期が遅く8~9月。花や萼もやや小さい。ただし、オオクルマバナと呼ばれる花や萼が大きく、腺毛のあるものも日本でみられる。

(1) Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze subsp. grandiflorum (Maxim.) H.Hara f. albiflorum H.Hara シロバナクルマバナ 白花車花

(2) Clinopodium chinense f. setilobum H.Hara オオクルマバナ 大車花

  synonym Clinopodium coreanum (H.Lev.) H.Hara subsp. stoloniferum Yonek.

  synonym Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze subsp. grandiflorum (Maxim.) H.Hara var. parviflorum (Kudô) H.Hara f. setilobum H.Hara, pro parte excl. typo ニッコウクルマバナ

 日本(青森~福井の日本海)に分布する。別名はニッコウクルマバナ。
 茎は分枝しない。萼は長さ6.5~8㎜。萼片の先が長く鋭く尖り、針状になり、萼筒には腺毛が混じる。花冠は大きく長さ10~14㎜。花期は6~8月。Flora of Chinaのクルマバナ(Clinopodium urticifolium)に近い。

1-3 Clinopodium chinense var. parviflorum (Kudô) H.Hara クルマバナ 車花 狭義

  synonym Satureja chinensis var. parviflora Kudô , J. Coll. Sci. Imp. Univ. Tokyo 43(8): 38 (1921)

  synonym Clinopodium chinense f. albiflorum H.Hara

  synonym Clinopodium chinense (Benth.) Kuntze subsp. grandiflorum (Maxim.) H.Hara var. parviflorum (Kudô) H.Hara [YListのsynonym]

 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮原産。英名はsmall-flower asian calamint。別名はオククルマバナ。POWOではvar. parviflorumは日本、朝鮮を分布域とし、subsp. grandiflorumの分布域から日本を除外している。YListではvar. parviflorumもsubsp. grandiflorumもクルマバナ(Clinopodium coreanum (H.Lév.) H.Hara subsp. coreanum)のsynonymとしている。
 初め、クルマバナ Satureia chinensis α. parviflora とオククルマバナ Satureia chinense Benth. ß. megalamtha に分けられ、中国も分布域に含められていた。α. parvifloraは花が小さく、萼とほぼ同長または花冠が半分出る程度で長さ7㎜、オククルマバナは花冠が長さ11㎜[ J. Coll. Sci. Imp. Univ. Tokyo 43(8): 38 (1921)]。
【クルマバナの原記載】
 茎は枝分かれするか、単純。輪散花序はほぼ無柄。苞は萼とやや間隔が開き、開出する硬い粗毛がある。花は長さ7~11㎜、萼から突き出る。萼は粗毛があり、毛は硬く、開出し、わずかに微軟毛があり、まれに腺毛があり、通常は紫色[J. Jap. Bot. 12: 41 (1936)]。
原文:Caules lamosi vel simplices. Verticillastri subsessiles. Bractea calyce suba quilonga, patenter et rigicle hirsuta. Flores 7-11 mm. longi calycem superantes. Calyces hirsuti, pilis patentibus rigidulis, et inferne minute pubescentes raro glancduloso-pilosi, sape purpurascentes.
【日本のクルマバナの解説】
 多年草。高さ20~80㎝。茎の断面は四角形、下向きの毛がある。茎や葉に毛があるが、毛の量には変化があり、毛のほとんど無いものもあり、腺毛はない。葉は対生し、短い柄があり、長さ2~4㎝の長卵形、鋸歯があり、基部は円形。葉表に光沢があることもあり、葉脈が深く、両面に白毛があり、葉裏の腺点はまばらで目立たない。小苞は線形、開出する長剛毛が多く、小花柄より長い。花序は茎の中部以上の葉腋ごとに、半球形の数段の輪散花序(仮輪)になり、密集して多数、花がつく。花は唇形、長さ8~10[7~11]㎜。上唇は小さく、浅い切れ込みが入り、下唇は大きく3裂する。萼は長さ6~8㎜、腺毛はなく[まれに腺毛があり]、開出する長剛毛があり、紅紫色を帯びることが多い。萼歯は5個、下側の2個は細く尖る。果実は4分果。2n=38。花期は8~9月。

 ヤマクルマバナ var. shibetchense は全体に軟弱で、茎は斜上し、萼が通常紫色を帯びず、開出毛が多く、ときに短い腺毛がある。花はクルマバナより密につき、やや小さい。
 オキナワクルマバナ subsp. chinense (var. chinense )は九州(南部以南)、沖縄、中国に分布し、中国名を 风轮菜(feng lun cai )という。茎に下向きの毛と腺毛がある。苞葉は多数つき、線形(針状)、長さ3~6㎜、開出する長剛毛がある。萼は長さ約6㎜、紅紫色を帯び、長剛毛と腺毛が多数ある。
 ミヤマクルマバナ Clinopodium macranthum は側脈が中軸に対して鋭角になり、花冠が大きい。
 トウバナ Clinopodium gracile は葉が無毛、葉裏に腺点がない。