コウゾ 楮

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Flora of Mikawa

クワ科 Moraceae コウゾ属

学 名 Broussonetia x kazinoki Siebold
コウゾの未熟な果実
コウゾの果実
コウゾの果実2
コウゾ葉裏の拡大
コウゾの幹
コウゾ
コウゾ葉表
コウゾ葉裏
花 期 4~5月
高 さ 2~6m
生活型 落葉低木~小高木
生育場所 山林
分 布 在来種   本州、四国、九州
撮 影 豊田市  14.6.26
古くは和紙の原料として栽培されたもので、各地に野生化している。ヒメコウゾとカジノキの雑種とされている。和紙の原料として、コウゾ、ミツマタガンピがよく知られている。コウゾは若い枝の樹皮が使用され、繊維が長いため紙は強く、穀紙(こくし)又は梶紙(かじかみ)と呼ばれる。
 幹は褐色、皮目がある。冬芽の芽鱗は褐色、有毛。葉は互生し、長さ10~20㎝の歪んだ卵形で、先が尖る。葉柄はヒメコウゾとカジノキの中間の長さ、1~3㎝。カジノキに近いものは雌雄別株、ヒメコウゾに近いものは雌雄同株。雄花序はやや惰円形。雌花の花柱はやや長い。果実が結実することがほとんどないものもある。ヒメコウゾに近いものはヒメコウゾと区別するのは難しく、雌雄別株のものは判別しやすい。雄株より雌株が多い。雄花又は雌花だけであり、葉裏にビロード状の毛がなく、葉柄が1㎝以上あればコウゾである。芽鱗でもヒメコウゾと判別できる。
 ヒメコウゾ Broussonetia monoica は芽鱗が褐色、無毛。葉が不規則に2~3裂し、葉柄が長さ0.5~1㎝。雌雄同株。雄花序は直径約1㎝の球形。果実は直径約1.5㎝の球形。
 カジノキ Broussonetia papyrifera は高木。芽鱗は褐色、有毛。葉は長さ10~20㎝の歪んだ卵形、3~5裂するものもある。葉柄が長さ3~10㎝。葉裏と葉柄にビロード状の軟毛が密生する。雌雄別株。雄花序は長さ3~9㎝の円柱形。果実は直径約3㎝の球形。

コウゾ属

  family Moraceae - genus Broussonetia

 高木又は低木、蔓性、落葉、ラテックスをもつ。雌雄同株又は雌雄異株。冬芽は小さい。托葉は離生、側生、卵状披針形、早落性。葉は互生、螺旋状につくか、又は二列生。葉身は単葉~掌状分裂、縁には歯がある。1次脈は3~5本で離基(plinerved)、2次脈は羽状。雄花序は腋生、穂状花序状又は±頭状花序、花が多数つく。雌花序は密な頭状花序~±長くなる。苞はこん棒形、宿存する。雄花は萼が(3又は) 4裂、敷石状。雄しべは蕾では内曲する。雌花は萼片が合着して筒になり、先は全縁又は3~4裂し、宿存する。子房は包まれ、柄がある。花柱は側生。柱頭は線形、しばしば基部に痕跡の2次裂片がある。果実は密に集合し、球形の集合果になる。 果皮は膜質、大きく、外果皮は肉質。子葉は円形、平ら又は2つ折り。胚は曲がる。
 世界に約4種があり、東アジア、太平洋諸島に分布する。

コウゾ属の主な種と園芸品種

1 Broussonetia kaempferi Siebold  ツルコウゾ 蔓楮
  synonym Papyrius karinokii Kuntze
  synonym Broussonetia kaempferi var. kaempferi
 日本固有種(本州の山口県、四国、九州)。
 落葉蔓性木、長さ2~3m。樹皮は淡褐灰色、縦に細い裂目が入る。若枝は黄褐色、粗毛が散生し、白色の皮目が散在する。葉は互生し、葉柄は長さ0.8~2㎝、短毛がある。葉身は卵状長楕円形~長円形、長さ4~11㎝×幅1.3~4㎝、基部は歪んだ切形~浅い心形、縁にはやや細かい鋭鋸歯があり、先は尾状に尖り、質は薄く、上面には短毛が密生しザラつき、下面はやや淡色、脈が隆起し、脈上に短毛がある。雌雄異株。若枝の葉腋ごとに1個の花序を出し、雄花序は円筒形、長さ1~1.5㎝×幅約5mm。雌花序は球形、直径4~5㎜。集合果は球形、直径約15㎜、糸状の花柱が残り、橙色に熟す。花期は4~5月。
1-2 Broussonetia kaempferi Siebold var. australis T.Suzuki ナンゴクコウゾ 南国楮
 中国、台湾原産。中国名は藤构 teng gou。
 低木、攀縁性、花は常に葉のある茎に生じる。 雌雄異株。樹皮は黒褐色。小枝は著しく広がり、若い時に淡灰色の毛があり、無毛になる。葉は螺旋状につく。葉柄は長さ0.8~1㎝、毛がある。葉身は±卵状楕円形、単葉又はたまに2~3裂し、長さ3.5~8㎝×幅2~3㎝、ザラつき、無毛、基部は心形~くさび形、縁は細かい鋸歯があり、歯先に腺があり、先は漸尖形~短い尖鋭形。雄花序は穂状花序、長さ1.5~2.5㎝。雌花序は球形。雄花は萼が3~4裂、内面には毛がある。葯は黄色、楕円状球形。雌花は花柱が線形、突き出す。集合果は直径約1㎝、丈夫な強い毛の星状の束をもつ。花期は4~6月。果期は5~7月。

2 Broussonetia monoica Hance  ヒメコウゾ 姫楮
  synonym Broussonetia × kazinoki f. koreana M.Kim [Kewscience]
  synonym Broussonetia × kazinoki var. ruyangensis P.H.Liang & X.W.Wei [Kewscience]
  synonym Broussonetia rupicola F.T.Wang & Tang [Kewscience]
  synonym Broussonetia kazinoki auct. non Siebold
  synonym Broussonetia kazinoki Siebold [GBIF]  日本(岩手県以南、四国、九州)、中国、台湾、ベトナム原産。朝鮮半島は帰化とされている。ヒメコウゾをコウゾに含める見解もある(World Flora Online)。ヒメコウゾもコウゾとよばれ、ミツマタと並び和紙の原料として品種改良されたものが古くから栽培されていた。
 落葉低木。高さ2~5m。樹皮は褐色、狭楕円形の皮目がある。茎は直立するが、シュートはやや蔓状に伸びる。若枝には初め毛が密生するが、のちに少なくなる。冬芽は卵状三角形、芽鱗は2個、褐色、無毛、側芽は枝に圧着してつく。葉は互生し、葉柄は長さ5~10㎜、毛がある。葉身はゆがんだ卵形~広卵形、長さ4~10㎝×幅(2)3~4.5㎝、単葉~不規則に2~3裂の切れ込みがあり、縁には細鋸歯があり、先は尾状に尖る。葉の質は薄く、上面に毛があり、下面は脈上に毛がある。雌雄同株。新枝の下部の葉腋に雄花序、上部に雌花序がつく。雄花序は直径0.8~1㎝の球形、花序柄は長さ約1㎝。雌花序は直径4~5㎜の球形、長さ約5㎜の赤紫色の糸状の花柱が多数つく。集合果は直径(0.8)1~1.5㎝、橙赤色に熟し、独特な味がして食べられる。花期は4~5月。果期は6~7月。

3 Broussonetia papyrifera (L.) L'Hér. ex Vent.  カジノキ 梶の木
 日本(本州の中南部以南、四国、九州)、韓国、中国、台湾、カンボジア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、シッキム、タイ、ベトナム。 太平洋諸島原産。中国名は构树 gou shu。別名はカジ(梶)、コウ(構)。
 高木高さ10~20m。花は常に葉のある茎に生じる。樹皮は暗灰色。小枝は密に毛がある。托葉は卵形、長さ1.5~2㎝×幅0.8~1㎝、先は漸尖する。葉は螺旋状につく。葉柄は長さ2.3~8㎝。葉身は広卵形~狭楕円状卵形、単葉又は若い木では3~5裂し、長さ6~18㎝×幅5~9㎝、下面に密に毛があるが、脈に粗い毛があり、上面は細かいザラつきとまばらに毛があり、基部は心形で非対称、縁は粗い鋸歯があり、先は尖鋭形、2次脈は6~7対。雄花序は長い穂状花序、長さ3~8㎝;。苞は披針形、毛がある。雌花序は球形、苞はこん棒形、先に毛がある。雄花は萼が4裂、咢片は三角状卵形、有毛。葯は球形。雌花は萼が筒状、萼片は先が花柱と合着。子房は卵形。柱頭は線形、毛がある。集合果は熟すと橙赤色、直径1.5~3㎝、丈夫な±刺状の毛が散生し、肉質。小核果は花序柄と等長、小さないぼ状突起が2列につき、外果皮は貝殻状。花期は4~5月。果期は6~7月。
品種) 'Billardii' , 'Cucullata' , 'Dissecta' , 'Golden Shadow' , 'Laciniata' , 'Leucocarpa' , 'Macrophylla' , 'Variegata'

4 Broussonetia x kazinoki Siebold  コウゾ 楮
  synonym Broussonetia kazinoki Siebold
  synonym Broussonetia x hanjiana M.Kim
  synonym Broussonetia kazinoki Siebold sensu Kitam. x B. papyrifera (L.) L'Hér. ex Vent.
  synonym Broussonetia kazinoki var. ruyangensis P. H. Ling & X. W. Wei
  synonym Broussonetia monoica Hance [World Flora Online]
 日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国中国名は楮 chu。
 古くは和紙の原料として栽培されたもので、各地に野生化している。ヒメコウゾ(B. monoica)とカジノキ(B. papyrifera)の雑種とされている。ただし、ヒメコウゾはWorld Flora Onlineではコウゾのsynonymとされている。コウゾは和紙の原料として、コウゾ、ミツマタガンピがよく知られている。コウゾは若い枝の樹皮が使用され、繊維が長いため紙は強く、穀紙(こくし)又は梶紙(かじかみ)と呼ばれる。
 落葉低木~小高木。高さ2~6m。幹は褐色、皮目がある。枝は若い時に毛があり、無毛になる。冬芽の芽鱗は褐色、有毛。托葉は線状披針形、長さ3~5mm×幅0.5~1mm、先は尖鋭形。葉は互生し、葉柄はヒメコウゾとカジノキの中間で、長さ1~3㎝。葉身は長さ10~20㎝の歪んだ卵形、単葉~3裂、下面はビロード状の毛がなく、ほぼ無毛、上面はザラつき、基部はほぼ円形~歪んだ円形、縁は三角状の鋸歯縁、先は漸尖形~長い尖鋭形。葉柄はカジノキに近いものは雌雄別株、ヒメコウゾに近いものは雌雄同株。花は常に葉のある枝につく。雄花序は球形~やや惰円形、直径0.8~1㎝。雌花序は球形、毛がある。雄花は咢片が3~4個、三角形、内側に毛がある。葯は楕円形。雌花は萼が筒状、先に歯又は裂片があるか又は全縁。花柱は1本、やや長く、中間にパピラがある。果実が結実することがほとんどないものもある。ヒメコウゾに近いものはヒメコウゾと区別するのは難しく、雌雄別株のものは判別しやすい。雄株より雌株が多い。雄花又は雌花だけであり、葉裏にビロード状の毛がなく、葉柄が1㎝以上あればコウゾである。芽鱗でもヒメコウゾと判別できる。集合果は直径0.8~1㎝、丈夫な強い毛の星状の束をもつ。小核果はいぼ状で扁平、外果皮は貝殻状。花期は4~5月。果期は5~6月。

参考

1) Flora of China
 Broussonetia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=110810
2) Flora of North America
 Broussonetia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=104684
2) World Flora Online
 Broussonetia kazinoki Siebold
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-0000572564;jsessionid=D0B398638C342E095CB3532B90F962B2