ガンピ 雁皮

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Flora of Mikawa

ジンチョウゲ科 Thymelaeaceae ガンピ属

別 名 カミノキ
学 名 Diplomorpha sikokiana (Franch. et Savat.) Honda
 synonym Wikstroemia sikokiana Franch. & Sav.
ガンピの花序
ガンピの花序2
ガンピの果実
ガンピの花
ガンピの幹
ガンピ
ガンピ葉
ガンピ枝
花 期 4~6月
高 さ 1~2m
生活型 落葉低木
生育場所 日当たりのよい岩場
分 布 在来種(日本固有種) 本州(東海地方以西)、四国、九州
撮 影 幸田町  12.5.30
コウゾ、ミツマタと並んで、和紙の原料として使われる。幹は濃褐色、サクラの木にやや似る。新枝には絹毛が密生する。
 高さ1~2m。茎は直立。シュートは単純、直立~開出し、絹毛がある。葉はまばらに互生し、紙質、全縁、両面に密に伏した絹毛があり、卵形、先は鋭形~尖鋭形、基部はくさび形~円形、長さ1.5~8㎝×幅1~4㎝。花序は頭状花序、頂生し、花が7~20個、下向きにつく。花柄は短い。花は両性、淡黄色、密に毛がある。萼筒は長さ約8㎜、先は4裂し、外面は絹毛が密生する。萼片は長さ2~2.5mm、子房は長円形、基部は尖鋭形で柄があり、密に直軟毛がある。花盤は1~3個の鱗片、半円筒形又は錐形、不規則に深裂又は浅裂する。果実は長さ5~6㎜、乾き、長軟毛があり、長期間、咢筒に包まれて残り、果柄が長さ約1mm。核は長さ3~4㎜の黒色、紡錘形。花期は4~6月。
 キガンピは近畿地方以西に分布し、葉が対生する。
 コガンピは花期が夏。

ガンピ属

  family Thymelaeaceae - genus Diplomorpha
              genus Wikstroemia sect. Diplomorpha
 低木、多数分枝し、シュートはときに毛がある。樹皮は非常に粘り強い。分枝はDiplomopha-type(WikstroemiaではWikstroemia-subtype)。葉は落葉性、対生又は互生、膜質又は紙質、有毛又は無毛、短い葉柄がある。花序は頭状花序、散形花序、又は穂状花序、ときに全て円錐花序(paniculiform)、通常、頂生、毛がある。花柄は関節がある(Diplomorphaは関節の上に花柄がなく、Wikstroemiaでは少なくとも1mmの花柄がある)。花は2形型、両性又は二形(?)、4又は5数性。萼は筒状、膜質、有毛又は無毛、早落性又は宿存性。花弁は無く、萼が花弁のように見える。雄しべは8又は10本、2列につき、上側の雄しべは筒の口につく。花糸は非常に短く、葯は長円形。子房は柄があり、有毛又は無毛。花柱は短い。柱頭は頭状、しばしば、パピラがある。花盤(子房下の)は1~4個の鱗片になり、子房に側生し、錐形又は拍子木形(clapper-shaped)、浅裂~深裂する。果実は核果、乾き、柄がある。種子は紡錘形。シュートは少数の内部師部繊維をもつだけであり、葉軸の維管束は普通、内部師部(internal phloem)をもつが、内部繊維は無く(Wikstroemiaには有る)、断面は深い三日月型又は円形(diplomopha-type)。管状要素(tracheary element)は少し目立つが、螺旋状に太くならない。結晶は無い。花粉粒の外膜は網状。
 世界に約20種があり、アジア東部、南部にあり、日本には6種が自生又は栽培されている。
※  WikstroemiaとDiplomorphaはよく似ており、分枝のタイプ、花柄の関節、葉軸の内部繊維の有無に違いがあるとされているが、World Flora Online、Flora of China ではWikstroemiaにまとめている。Ylistにしたがって、Diplomorphaとした。

ガンピ属の主な種と園芸品種

1 Diplomorpha albiflora (Yatabe) Nakai ミヤマガンピ 深山雁皮

  synonym Wikstroemia albiflora Yatabe
  synonym Wikstroemia gynopoda Maxim.
 日本固有種(本州の紀伊半島、四国、九州)。別名はヒオウ。深山の岩石地に生える。
 高さ約1m、多数、分枝する。シュートは単純、細く無毛。葉は対生、膜質、無毛、卵形~卵状長円形、先は鋭形~鈍形、基部はくさび形~円形、長さ1~4㎝×幅0.7~2.5㎝。散形花序は頂生、花が1~4個(普通2個)つく。花序柄は長さ1~10mm。花柄は長さ1~9mm。花は両性、白色、無毛。萼筒は長さ8~9㎜。萼片は長さ3mm。子房は倒卵形、直軟毛がある。子房の柄は長さ2㎜。花盤は普通、1個の半円筒状、分裂する。果実は乾きわずかに直軟毛がある。果柄は長さ約4mm。花期は5~7月。

2 Diplomorpha ganpi (Siebold et Zucc.) Nakai  コガンピ 小雁皮
  synonym Wikstroemia ganpi (Siebold & Zucc.) Maxim.
 日本(本州の東海地方以西、四国、九州、朝鮮原産。別名はイヌガンピ、ノガンピ。
 高さ0.5~1m。冬に茎は高さ20㎝以上の先が枯れてなくなる。幹は赤褐色、枝には白色の伏毛が密生する。シュートは毛があり、直立し、ほうき状(fastigiate)、そのほとんどが枯れて落ちる。葉柄はごく短い。葉は密に螺旋状に互生し、紙質、毛があり、長円形、全縁、基部と先は鋭形~鈍形、長さ1~4.5×幅1~2㎝。穂状花序は頂生及び腋生、密にほうき状(fastigiate)又は漸体で円錐花序になる。花柄は短い。花期は7~9月。花は両性、白色又は薄ピンク色、密に毛がある。萼筒は長さ7~10㎜先が4裂する。萼片は長さ2~3mm。子房は楕円形、柄まで尖鋭形になり、密に直軟毛がある。花盤は錐形又は鱗片状、深裂する。雄しべは8個、4個ずつ2段に萼筒内部につく。果実は乾いた核果、直軟毛があり、大きくなった筒部に包まれる。果柄は短い。核は長さ約3㎜、黒色。花期は7~9月。

3 Diplomorpha pauciflora (Franch. et Sav.) Nakai サクラガンピ 桜雁皮 広義
  synonym Wikstroemia pauciflora Franch. & Sav.
3-1 Diplomorpha pauciflora (Franch. et Sav.) Nakai var. pauciflora  サクラガンピ 桜雁皮
 日本固有種(本州の伊豆半島、箱根)。別名はヒメガンピ、イヌコガンピ、ミヤマコガンピ。
 高さ約2m。茎は直立又はやや垂れ下がる。シュートは開出し、毛がある。葉はまばらに二列生(distichous)、紙質、密に毛があり、卵形~卵状披針形~三角状卵形、先は鋭形、基部は切形~くさび形、長さ1~5.5㎝×幅0.5~3.5㎝。穂状花序は全体でまばらな円錐花序。花柄は短い。花は両性、薄黄色、密に毛がある。萼筒は長さ5㎜、萼片は長さ2~2.5mm、子房は倒卵形、基部は尖鋭形で柄があり、密に直軟毛がある。花盤は1~2個、錐形、深裂する。果実は乾き、大きくなった咢筒に包まれる。花期は7~8月。

3-2 Diplomorpha pauciflora (Franch. et Sav.) Nakai var. yakushimensis (Makino) T.Yamanaka シマサクラガンピ 島桜雁皮
  Wikstroemia yakushimensis (Makino) Nakai ex Masam.
  synonym Diplomorpha yakushimensis (Makino) Masam.
  synonym Diplomorpha sikokumontana Akasawa
Wikstroemia pauciflora Franch. & Sav.  日本固有種(九州の大分県以南の東側、屋久島)。別名はシマコガンピ,ヤマサクラガンピ。
 高さ約2m。茎は直立又はやや垂れ下がる。シュートは開出し、毛がある。葉はまばらに二列生(distichous)、紙質、まばらに毛があり、披針形~卵形、先は長い尖鋭形、基部は円形~鈍形、長さ1~7.5㎝×幅0.8~4.5㎝。花序はサクラガンピより花が密。花は両性、黄緑色、密に毛がある。萼筒は長さ8~9㎜、萼片は長さ2~2.5mm、子房は倒卵状長円形、基部は尖鋭形で柄があり、密に直軟毛がある。花盤は1~2個、鱗片又は錐形、深裂又は浅裂。果実は乾き、長い柄があり、葉だか又は大きくなった咢に包まれる。花期は7~8月。

4 Diplomorpha phymatoglossa (Koidz.) Nakai  オオシマガンピ 大島岩菲
  synonym Wikstroemia phymatoglossa Koidz.
  synonym Wikstroemia pauciflora var. phymatoglossa (Koidz.) Hatus.
 日本固有種(奄美大島と徳之島)
 オオシマガンピは葉の幅がガンピとサクラガンピの中間。  高さ約1m。シュートは毛があり、普通、直立し、丈夫。葉は密に螺旋状につき、紙質、毛があり、卵形~長円状卵形、先は鋭形~円形、基部はくさび形~鈍形、長さ2~6㎝×幅1~3㎝、花序はコガンピに似るが、花柄が短い。花は両性、黄褐色、密に毛がある。萼筒は長さ5~6㎜。萼片は長さ1.4~2mm。子房は倒卵形、柄に向かって尖鋭形、密に直軟毛がある。花盤は1個、鱗片状、分裂する。果実は見られない。花期は7~8月。

5 Diplomorpha sikokiana (Franch. et Sav.) Honda ガンピ 雁皮
  synonym Wikstroemia sikokiana Franch. & Sav.
 日本固有種(本州の東海地方以西、四国、九州)。別名はカミノキ。
 高さ1~2m。茎は直立。シュートは単純、直立~開出し、絹毛がある。葉はまばらに互生し、紙質、全縁、両面に密に伏した絹毛があり、卵形、先は鋭形~尖鋭形、基部はくさび形~円形、長さ1.5~8㎝×幅1~4㎝。花序は頭状花序、頂生し、花が7~20個、下向きにつく。花柄は短い。花は両性、淡黄色、密に毛がある。萼筒は長さ約8㎜、先は4裂し、外面は絹毛が密生する。萼片は長さ2~2.5mm、子房は長円形、基部は尖鋭形で柄があり、密に直軟毛がある。花盤は1~3個の鱗片、半円筒形又は錐形、不規則に深裂又は浅裂する。果実は長さ5~6㎜、乾き、長軟毛があり、長期間、咢筒に包まれて残り、果柄が長さ約1mm。核は長さ3~4㎜の黒色、紡錘形。花期は4~6月。

6 Diplomorpha trichotoma (Thunb.) Nakai  キガンピ 黄雁皮
  synonym Wikstroemia trichotoma (Thunb.) Makino
 日本(本州の近畿地方・中国地方西部、四国、九州の大隅半島以北)、朝鮮、中国に分布。中国名は白花荛花 bai hua rao hua。別名はキコガンピ。
 高さ約1.5m。茎は多分枝する。シュートは分枝し、細く、無毛。葉は対生し、紙質、密に毛があり、膜質又は無毛、卵状長円形~披針形、先は鋭形~尖鋭形、基部はくさび形~円形、長さ1.5~7.5㎝×幅1~3.5㎝。穂状花序は小さく、頂生及び腋生し、全体で密又はまばらな円錐花序となり、無毛。花柄は長さ1mm以下。花は両性、白色又は黄色、無毛。萼筒は長さ6.5~7.5㎜、萼片は長さ約1.7mm、子房は倒卵状長円形、柄は長さ1.3mm、まばらに直軟毛がある。花盤は1~3個の鱗片、広錐形~線形、浅裂する。果実は乾き、わずかに長軟毛があり、果柄は長さ1~2mm。花期は7~9月。
【Flora of Chinaの解説】  常緑低木、高さ0.5~2.5m。樹皮は褐色、しわがある。主茎は丈夫で、強く、多数、分岐する。枝は直立し、光沢があり、わずかに黄色で、赤紫色~帯赤色に変わり、伸び、細く、無毛。葉は対生する。葉柄は長さ0.2㎝。葉身は乾燥すると上面が褐色、下面が薄褐色~帯白色、卵形~卵状披針形、長さ(0.8~)1.2~3.5(~8)㎝×幅(0.5~)1~2.2(4)㎝、薄い紙質、両面とも無毛、基部は広くさび形、円形、または切形、先は鋭形。側脈は6~8(~11)対、細く、下面ではより目立つ。花序は頂生、直立、穂状花序からなる円錐花序、花序軸は長さ0.2~1.5(~3.5)cm、花が少数~10(~26)個つき、まばらに微軟毛がある。花序柄は長さ1~2.5㎝、しばしば枝分かれし、無毛。花柄は長さ0.5~1mm、または不明瞭。萼は黄色または白色、咢筒は長さ6.5~20mm、外側は無毛。萼片は5個、広楕円形、長さ1.7~2mm、縁は波打ち、先は鈍形。雄しべは10本、下側の輪の雄しべは萼筒の長さの上約1/3につき、上側の輪の雄しべはのど部につく。葯は線形、長さ約1mm。花盤は1個、線形または線状長円形、子房の長さの約1/2、膜状、葉質、浅裂又は切形。子房は倒卵形、長さ2~3mm、柄があり、無毛または先にまばらに微軟毛がある。花柱は短く、長さ約0.5mm。柱頭は球形、大きい。核果は乾燥し、卵形、長さ約5mm、普通は無毛、宿存する萼に包まれる。花期は夏.
6-1 Wikstroemia trichotoma var. trichotoma 基準変種
 日本(本州の近畿地方・中国地方西部、四国、九州の大隅半島以北)、朝鮮、中国に分布。
 葉身は側脈が6~8対。花序軸は長さ0.2~1.5㎝、花は10個まで。萼筒は長さ6.5~7.5mm。花盤の鱗片は線形、浅裂し変化があり、長さ約3㎜。先にまばらに微軟毛がある。
6-2 Diplomorpha trichotoma (Thunb.) Nakai f. pilosa Hamaya  ウスゲキガンピ 
 枝に直軟毛があり、葉は部分的に互生し、直軟毛がある。花序にも直軟毛がある。
6-3 Wikstroemia trichotoma var. flavianthera S. Y. Liou,
 中国に分布。中国名は黄药白花荛花 huang yao bai hua rao hua。
 葉身は側脈が6~11対。花序軸は長さ0.8~3.5㎝、花が8~26個つく。萼筒は長さ20mm以下。花盤の鱗片は線状長円形。花盤の鱗片は線形~長円形、先は切径又はわずかに凹形。子房は長さ約2mm、無毛。

7 Diplomorpha x ohsumiensis (Hatus.) Hamaya  タカクマキガンピ 
  synonym Diplomorpha trichotoma Nakai var. ohsumiensis (Hatus.) Hamaya
 コガンピとキガンピの交雑種

8 Diplomorpha x ramulosa Hamaya  ミトガンピ 
  synonym Wikstroemia x ramulosa (Hamaya) Hatus.
 コガンピとサクラガンピの交雑種

アオガンピ属

  family Thymelaeaceae - genus Wikstroemia

 低木又は亜低木、たまに小高木又はまれに多年草(W. linoides)、常緑又は落葉。葉は対生又は互生。花序は普通、頂生及び亜頂生、まれに腋生、束生又は単生、穂状花序、総状花序、散形花序又は頭状花序、ときに複合の頂生の円錐花序になり、しばしば、総苞が無い。花序柄は長又は短。花は両性又は単生(Hawaii)、4又は5数性、ほぼ無柄又は明瞭な花柄がある。葉柄には関節がある。萼筒は黄色又は緑色、まれに、帯紫色、赤色、又は白色、円筒形又は筒状、ときにわずかに漏斗形になり、しばしば、花後に早落し、ときに宿存する。咢片は4又は5個、広がる。花弁状の付属体は無い。雄しべは萼片の数の2倍、2列につく。花糸はごく短い。葯は長円形、上側の葯がときにわずかに突き出る。葯隔は目立たない。花盤は2又は4個ごくまれに1又は5個の鱗片をもち、まれにごく狭い環で基部が結合し、膜質。子房は無柄、まれに短柄があり、普通、楕円形、無毛又は先に毛があり、1室。花柱は頂生、短く、明瞭又は不明瞭。柱頭は大きく、頭状、球形、又は円盤形。果実は多汁の液果(核果)又はかなり乾く。胚乳は乏しいか又は無い。子葉は肉質。
 世界に約70種があり、東アジア、マレーシア、太平洋諸島に分布し、ハワイに多様な種が集まり、重要な小さなポイントになっている。半数以上が中国固有種。

参考

1) Flora of China
 Diplomorpha
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=110810
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Wikstroemia
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:332063-2
3) World Flora Online
 Wikstroemia
http://worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000040707
4) A dendrological monograph of the Thymelaeaceae plants of Japan
 日本産ジンチョウゲ科樹木のモノグラフ
file:///C:/Users/haovo/Downloads/esrh050007.pdf