ガンピ 雁皮

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Flora of Mikawa

ジンチョウゲ科 Thymelaeaceae アオガンピ属

別 名 カミノキ
学 名 Wikstroemia sikokiana Franch. & Sav.
 synonym Diplomorpha sikokiana (Franch. et Savat.) Honda
ガンピの花序
ガンピの花序2
ガンピの果実
ガンピの花
ガンピの幹
ガンピ
ガンピ葉
ガンピ枝
花 期 4~6月
高 さ 1~2m
生活型 落葉低木
生育場所 日当たりのよい岩場
分 布 在来種(日本固有種) 本州(東海地方以西)、四国、九州
撮 影 幸田町  12.5.30
ガンピはコウゾ、ミツマタと並んで、和紙の原料として使われる。幹は濃褐色、サクラの木にやや似る。新枝には絹毛が密生する。ガンピ属(Diplomorpha)とする見解もあるが、POWOではアオガンピ属(Wikstroemia)としており、これに従った。
 高さ1~2m。茎は直立。シュートは単純、直立~開出し、絹毛がある。葉はまばらに互生し、紙質、全縁、両面に密に伏した絹毛があり、卵形、先は鋭形~尖鋭形、基部はくさび形~円形、長さ1.5~8㎝×幅1~4㎝。花序は頭状花序、頂生し、花が7~20個、下向きにつく。花柄は短い。花は両性、淡黄色、密に毛がある。萼筒は長さ約8㎜、先は4裂し、外面は絹毛が密生する。萼片は長さ2~2.5mm、子房は長円形、基部は尖鋭形で柄があり、密に直軟毛がある。花盤は1~3個の鱗片、半円筒形又は錐形、不規則に深裂又は浅裂する。果実は長さ5~6㎜、乾き、長軟毛があり、長期間、萼筒に包まれて残り、果柄が長さ約1mm。核は長さ3~4㎜の黒色、紡錘形。花期は4~6月。
 キガンピは近畿地方以西に分布し、葉が対生する。
 コガンピは花期が夏。

アオガンピ属

  family Thymelaeaceae - genus Wikstroemia

 低木又は亜低木、たまに小高木又はまれに多年草(W. linoides)、常緑又は落葉。葉は対生又は互生。花序は普通、頂生及び亜頂生、まれに腋生、束生又は単生、穂状花序、総状花序、散形花序又は頭状花序、ときに複合の頂生の円錐花序になり、しばしば、総苞が無い。花序柄は長又は短。花は両性又は単生(Hawaii)、4又は5数性、ほぼ無柄又は明瞭な花柄がある。葉柄には関節がある。萼筒は黄色又は緑色、まれに、帯紫色、赤色、又は白色、円筒形又は筒状、ときにわずかに漏斗形になり、しばしば、花後に早落し、ときに宿存する。咢片は4又は5個、広がる。花弁状の付属体は無い。雄しべは萼片の数の2倍、2列につく。花糸はごく短い。葯は長円形、上側の葯がときにわずかに突き出る。葯隔は目立たない。花盤は2又は4個ごくまれに1又は5個の鱗片をもち、まれにごく狭い環で基部が結合し、膜質。子房は無柄、まれに短柄があり、普通、楕円形、無毛又は先に毛があり、1室。花柱は頂生、短く、明瞭又は不明瞭。柱頭は大きく、頭状、球形、又は円盤形。果実は多汁の液果(核果)又はかなり乾く。胚乳は乏しいか又は無い。子葉は肉質。
 世界に約93種があり、東アジア、マレーシア、太平洋諸島に分布し、ハワイに多様な種が集まり、重要な小さなポイントになっている。半数以上が中国固有種。

アオガンピ属の主な種と園芸品種

1 Wikstroemia albiflora Yatabe ミヤマガンピ 深山雁皮
  synonym  Diplomorpha albiflora (Yatabe) Nakai
  synonym Wikstroemia gynopoda Maxim.
 日本固有種(本州の紀伊半島、四国、九州)。別名はヒオウ。深山の岩石地に生える。
 高さ約1m、多数、分枝する。シュートは単純、細く無毛。葉は対生、膜質、無毛、卵形~卵状長円形、先は鋭形~鈍形、基部はくさび形~円形、長さ1~4㎝×幅0.7~2.5㎝。散形花序は頂生、花が1~4個(普通2個)つく。花序柄は長さ1~10mm。花柄は長さ1~9mm。花は両性、白色、無毛。萼筒は長さ8~9㎜。萼片は長さ3mm。子房は倒卵形、直軟毛がある。子房の柄は長さ2㎜。花盤は普通、1個の半円筒状、分裂する。果実は乾きわずかに直軟毛がある。果柄は長さ約4mm。花期は5~7月。

2 Wikstroemia ganpi (Siebold & Zucc.) Maxim. コガンピ 小雁皮
  synonym Diplomorpha ganpi (Siebold et Zucc.) Nakai
 日本(本州の東海地方以西、四国、九州、朝鮮原産。別名はイヌガンピ、ノガンピ。
 高さ0.5~1m。冬に茎は高さ20㎝以上の先が枯れてなくなる。幹は赤褐色、枝には白色の伏毛が密生する。シュートは毛があり、直立し、ほうき状(fastigiate)、そのほとんどが枯れて落ちる。葉柄はごく短い。葉は密に螺旋状に互生し、紙質、毛があり、長円形、全縁、基部と先は鋭形~鈍形、長さ1~4.5×幅1~2㎝。穂状花序は頂生及び腋生、密にほうき状(fastigiate)又は漸体で円錐花序になる。花柄は短い。花期は7~9月。花は両性、白色又は薄ピンク色、密に毛がある。萼筒は長さ7~10㎜先が4裂する。萼片は長さ2~3mm。子房は楕円形、柄まで尖鋭形になり、密に直軟毛がある。花盤は錐形又は鱗片状、深裂する。雄しべは8個、4個ずつ2段に萼筒内部につく。果実は乾いた核果、直軟毛があり、大きくなった筒部に包まれる。果柄は短い。核は長さ約3㎜、黒色。花期は7~9月。

3 Wikstroemia indica (L.) C.A.Mey. インドガンピ 印度雁皮
 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、湖南省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、インド、アッサム、スリランカ、ミャンマー、バングラデシュ、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア(ボルネオ、スラウェシ、スマトラ、マルク)、ニューギニア、オーストラリア(ニューサウスウェールズ、ノーザンテリトリー、クイーンズランド)、ニューカレドニア、バヌアツ、ソロモン諸島原産。中国名は了哥王 liao ge wang。標高1500m以下の森林、岩の多い低木林の斜面に生える。
 低木、高さ0.5~2m以上。枝は赤褐色で無毛。葉は対生。葉柄は長さ約1㎜。葉身は乾燥すると両面とも赤褐色になり、倒卵形、楕円状長円形、または披針形、長さ2~5㎝×幅0.5~1.5㎝、紙質~薄い革質、両面とも無毛、基部は広または狭楔形、先は鈍形または鋭形、側脈は密で細く、中脈に対して狭角につく。花序は頂生、頭状、花は数個つく。花序柄は長さ0.5~1㎝、無毛。小花柄は長さ1~2㎜。萼は黄緑色、長さ7~12㎜、外側は無毛、裂片は4個、広卵形~長円形、長さ約3㎜、先は鋭形または鈍形。雄しべは8本。花盤の鱗片はしばしば2または4個。子房は倒卵形または楕円形、無毛または先にまばらに毛がある。花柱は非常に短い。柱頭は頭状。核果は赤色~暗紫色、楕円形、長さ7~8㎜。花期と果期は夏~秋。
 この広範囲に分布し、変化に富む無融合生殖種のより広範な同義語については、Halda (Genus Daphne、145 ~ 146、2001) を参照。

4 Wikstroemia lanceolata Merr. ナガバガンピ 長葉雁皮
  synonym Daphne lanceolata (Merrill) Halda
  synonym Wikstroemia angustissima Merrill.
 台湾、フィリピン原産。中国名は披针叶荛花 pi zhen ye rao hua。森林の斜面、茂みに生える。フィリピンでは、Wikstroemia lanceolata が繊維作物として有望視されている。フィリピンでは、Wikstroemia lanceolata が繊維作物として有望視されている。  低木、高さ4mまで。若い枝は伏した微軟毛があり、無毛になる。葉は対生する。葉柄は長さ1~2.5㎜、無毛。葉身は披針形、長さ4~6(~8.5)㎝×幅0.8~1.2(~2.5)㎝、膜質~紙質、両面とも無毛、基部は楔形または広楔形、先は尖鋭形、側脈は8~10(~16)対あり、下面にわずかに突出する。花序は散形花序または短い総状花序で、花が(1~)3~6(~20)個つく。花序柄は長さ0.2~0.3(~1.5)㎝。小花柄は長さ1~1.5㎜。萼片は緑色または黄緑色。萼筒は長さ5~14㎜、外側に微軟毛があり無毛になる。萼片は4個、長さ約1㎜、微軟毛があり、先は鈍形。雄しべは 8本、下側の輪生は萼筒の中央に挿入され、上側の輪生は喉部に挿入される。花盤鱗片は2個、線形。子房は卵形、先にはまばらに軟毛がある。花柱は短く、柱頭はほぼ球形。核果は卵形、約・長さ8㎜×幅5㎜、通常は無毛だが、ときに先にまばらに毛がある。フィリピンでは、Wikstroemia lanceolata が繊維作物として有望視されている。
5 Wikstroemia mononectaria Hayata ヒメガンピ 姫雁皮
  synonym Daphne mononectaria (Hayata) Halda
  synonym Diplomorpha mononectaria (Hayata) Nakai
 台湾原産。中国名は独鳞荛花 du lin rao hua。
 低木。枝は黒紫色、長くて細い、微細なしわがあり、はじめは薄く伏剛毛がある(strigose)が、すぐに無毛になる。葉は対生、ほぼ対生、または互生し、しばしば同一枝につく。葉柄は長さ2~3㎜。葉身は上面は緑色、下面は淡色、卵形~広披針形、長さ2.5~5㎝×幅1~2㎝、膜質または紙質、下面は軟い白色の伏剛毛があり、上面はときに中脈を除いて無毛、基部は楔形、先は鋭形~鈍形、微細な小突起があり、側脈は中脈の片側に10~11本あり、細く、中脈に対して狭い角度につく。花序は頂生、総状花序、長さ約4㎝、しばしば花が6~8個付き、無毛。萼は赤紫色、萼筒は円柱形、長くて細く、約・長さ15㎜×幅1㎜、外側は無毛、萼片は4個、卵形、約・長さ2㎜×幅1.5㎜、先は円形。雄しべは8本、下側の輪生は萼筒の中央に挿入され、上側の輪生は喉の下につく。花盤鱗片は1個、線形、長さ約2㎜。子房は倒円錐形、柄があり、無毛。核果は帯赤色、曲がった卵形、約・長さ5㎜×幅4㎜、先は尖鋭形。

6 Wikstroemia pauciflora Franch. & Sav. サクラガンピ 桜雁皮
  synonym Diplomorpha pauciflora (Franch. & Sav.) Nakai

  synonym Wikstroemia canescens var. pauciflora (Franch. & Sav.) Franch. & Sav.

  synonym Daphne zephyrina Halda
  synonym Wikstroemia franchetii Koidz.
 日本固有種(本州の伊豆半島、箱根)。別名はヒメガンピ、イヌコガンピ、ミヤマコガンピ。
 高さ約2m。茎は直立又はやや垂れ下がる。シュートは開出し、毛がある。葉はまばらに二列生(distichous)、紙質、密に毛があり、卵形~卵状披針形~三角状卵形、先は鋭形、基部は切形~くさび形、長さ1~5.5㎝×幅0.5~3.5㎝。穂状花序は全体でまばらな円錐花序。花柄は短い。花は両性、薄黄色、密に毛がある。萼筒は長さ5㎜、萼片は長さ2~2.5mm、子房は倒卵形、基部は尖鋭形で柄があり、密に直軟毛がある。花盤は1~2個、錐形、深裂する。果実は乾き、大きくなった萼筒に包まれる。花期は7~8月。

7 Wikstroemia pseudoretusa Koidz. ムニンアオガンピ 
  synonym Daphne pseudoretusa (Koidz.) Halda
 小笠原諸島原産。別名はオガサワラガンピ。乾燥林、一般的には森林の縁、日当たりの良い岩場に生える。
 低木、通常常緑、雌雄異株だが稀に雌雄同株、高さ2mまでになる。茎は円柱形、赤褐色、頻繁に分枝して拡散し、若いときは密に伏毛があり、古い枝には目立つ葉痕と花序軸が残る。葉は対生し、厚い紙質~革質、濃緑色、狭倒卵形~楕円形、無毛、先は円形~鈍形、基部は楔形、長さ3~10㎝×幅1~4㎝、葉柄は短く毛がある。花序は頂生、短い頭状の穂状花序をつけ、花が4~10個つく。花序柄は長さ1~7㎜、密に毛がある。花は雄花、雌花、または両性花で、黄色から淡緑黄色。萼筒は外側に毛があり、長さ6~8㎜、雄花の方がわずかに細い。萼片は4個、長さ3~4㎜。雄しべは短い花糸を持ち、8本が2輪に並び、下側の輪生花は萼筒の中央に挿入され、上側の輪生花は喉のすぐ下につき、萼筒から半分突出する。葯は内向。雌花の花粉は不稔。花盤は2個、雌しべの基部に挿入され、鱗片状で浅い鋸歯がある。雌しべは長さ3~4㎜。子房は楕円形、無柄、長さ2~3㎜、雄花には胚珠がない。雌花と両性花の花柱は短いが明瞭である。柱頭は球形、雄花では小さい。果実は液果、広楕円形、赤色、上部は無毛またはほとんど毛がなく、長さ6㎜、ときにしおれた萼で覆われる。種子は卵形、先は鋭形、長さ5㎜。2n=18。花期は主に7~ 9月。

8 Wikstroemia phymatoglossa Koidz. オオシマガンピ 大島岩菲
  synonym Diplomorpha phymatoglossa (Koidz.) Nakai

  synonym Wikstroemia pauciflora var. phymatoglossa (Koidz.) Hatus.

 日本固有種(奄美大島と徳之島)
 オオシマガンピは葉の幅がガンピとサクラガンピの中間。  高さ約1m。シュートは毛があり、普通、直立し、丈夫。葉は密に螺旋状につき、紙質、毛があり、卵形~長円状卵形、先は鋭形~円形、基部はくさび形~鈍形、長さ2~6㎝×幅1~3㎝、花序はコガンピに似るが、花柄が短い。花は両性、黄褐色、密に毛がある。萼筒は長さ5~6㎜。萼片は長さ1.4~2mm。子房は倒卵形、柄に向かって尖鋭形、密に直軟毛がある。花盤は1個、鱗片状、分裂する。果実は見られない。花期は7~8月。

9 Wikstroemia retusa A.Gray アオガンピ 青岩菲
  synonym Daphne grayana Halda
  synonym Wikstroemia obovata Hemsl.
 日本(琉球諸島、奄美大島)、台湾、フィリピン原産。中国名は倒卵叶荛花 dao luan ye rao hua。別名はオキナワガンピ。森林の茂み、森林伐採された斜面、草原に生える。
 低木、ときに落葉、高さ1~3m。枝は赤褐色で頑丈、密に伏毛がある。葉は対生。葉柄は短く、長さ1~2㎜、±毛がある。葉身は上面は暗緑色、下面は淡色、倒卵形または長倒卵形、長さ1.5~5㎝×幅1~3.5㎝、厚い紙質、両面とも無毛、基部は円形~楔形、先は円形~円状鈍形、ときにわずかに微凹形、側脈は8~10対、下面にわずかに隆起し、上面では不明瞭。花序は頂生、穂状花序、花が4~6(~20)個つく。花序柄は長さ0.7~3㎝、密に毛がある。小花柄は長さ1~3㎜。萼は緑黄色。萼筒は長さ8~10㎜、外側にはまばらに毛がある。萼片は4個、卵形、長さ約3㎜。雄しべは8本、下側の輪生は萼筒の中央に挿入され、上側の輪生は喉のすぐ下部につく。花糸は短い。花盤鱗片は2または3個、対生し、長円形、先が2裂する。子房は先端に軟毛がある。花柱は短く、柱頭は球形。核果は赤色、球形、直径約6㎜。花期は7~9月。

10 Wikstroemia sikokiana Franch. & Sav. ガンピ 雁皮
  synonym Diplomorpha sikokiana (Franch. et Sav.) Honda
 日本固有種(本州の東海地方以西、四国、九州)。別名はカミノキ。
 高さ1~2m。茎は直立。シュートは単純、直立~開出し、絹毛がある。葉はまばらに互生し、紙質、全縁、両面に密に伏した絹毛があり、卵形、先は鋭形~尖鋭形、基部はくさび形~円形、長さ1.5~8㎝×幅1~4㎝。花序は頭状花序、頂生し、花が7~20個、下向きにつく。花柄は短い。花は両性、淡黄色、密に毛がある。萼筒は長さ約8㎜、先は4裂し、外面は絹毛が密生する。萼片は長さ2~2.5mm、子房は長円形、基部は尖鋭形で柄があり、密に直軟毛がある。花盤は1~3個の鱗片、半円筒形又は錐形、不規則に深裂又は浅裂する。果実は長さ5~6㎜、乾き、長軟毛があり、長期間、萼筒に包まれて残り、果柄が長さ約1mm。核は長さ3~4㎜の黒色、紡錘形。花期は4~6月。

11 Wikstroemia taiwanensis C.E.Chang タイワンアオガンピ 台湾青雁皮
  synonym Daphne taiwanensis (C.E.Chang) Halda
 台湾原産。中国名は台湾荛花 tai wan rao hua。低地から中高度の森林の斜面、茂みに生える。  低木、高さ2mまで。若い枝は淡黄緑色で、赤褐色に変わり、円柱形、伏した軟毛があり、無毛になる。葉は対生または互生。葉柄は長さ約2㎜。葉身は上面が明るい緑色、下面は淡色、楕円形または狭倒卵形~かたつむり形(cochleate)、長さ3~4㎝×幅1.2~1.8㎝、硬い紙質、両面とも無毛、基部は鈍形、先は鋭形~尖鋭形、側脈は8~9対あり、下面にわずかに隆起し、上面では不明瞭。花序は頂生、短い穂状花序状または散形花序、花が(1~)7~10個つく。花序柄は長さ約1㎝、無毛。小花柄は長さ1~5㎜、基部に関節がある。萼は黄白色または緑色、ときに紫色を帯びる。萼筒はわずかに卵形、長さ2~5㎜、外側に毛がある。萼片は4個、卵形または長円形、長さ1~2㎜。雄しべは8本。葯は長円形、長さ約0.4㎜、鈍形、萼筒内に含まれ突き出ない。花盤鱗片は2個、線形で、それぞれ深く2裂する。子房は長円形、無毛または先に毛がある。花柱は短く、長さ約1㎜。柱頭は球形。核果は赤色、卵形、長さ5~7㎜×幅約4㎜。

12 Wikstroemia trichotoma (Thunb.) Makino キガンピ 黄雁皮
  synonym Diplomorpha trichotoma (Thunb.) Nakai
  synonym Queria trichotoma Thunb.
  synonym Daphne trichotoma (Thunb.) Halda
 日本(本州の近畿地方・中国地方西部、四国、九州の大隅半島以北)、朝鮮、中国に分布。中国名は白花荛花 bai hua rao hua。別名はキコガンピ。
 高さ約1.5m。茎は多分枝する。シュートは分枝し、細く、無毛。葉は対生し、紙質、密に毛があり、膜質又は無毛、卵状長円形~披針形、先は鋭形~尖鋭形、基部はくさび形~円形、長さ1.5~7.5㎝×幅1~3.5㎝。穂状花序は小さく、頂生及び腋生し、全体で密又はまばらな円錐花序となり、無毛。花柄は長さ1mm以下。花は両性、白色又は黄色、無毛。萼筒は長さ6.5~7.5㎜、萼片は長さ約1.7mm、子房は倒卵状長円形、柄は長さ1.3mm、まばらに直軟毛がある。花盤は1~3個の鱗片、広錐形~線形、浅裂する。果実は乾き、わずかに長軟毛があり、果柄は長さ1~2mm。花期は7~9月。
【Flora of Chinaの解説】  常緑低木、高さ0.5~2.5m。樹皮は褐色、しわがある。主茎は丈夫で、強く、多数、分岐する。枝は直立し、光沢があり、わずかに黄色で、赤紫色~帯赤色に変わり、伸び、細く、無毛。葉は対生する。葉柄は長さ0.2㎝。葉身は乾燥すると上面が褐色、下面が薄褐色~帯白色、卵形~卵状披針形、長さ(0.8~)1.2~3.5(~8)㎝×幅(0.5~)1~2.2(4)㎝、薄い紙質、両面とも無毛、基部は広くさび形、円形、または切形、先は鋭形。側脈は6~8(~11)対、細く、下面ではより目立つ。花序は頂生、直立、穂状花序からなる円錐花序、花序軸は長さ0.2~1.5(~3.5)cm、花が少数~10(~26)個つき、まばらに微軟毛がある。花序柄は長さ1~2.5㎝、しばしば枝分かれし、無毛。花柄は長さ0.5~1mm、または不明瞭。萼は黄色または白色、咢筒は長さ6.5~20mm、外側は無毛。萼片は5個、広楕円形、長さ1.7~2mm、縁は波打ち、先は鈍形。雄しべは10本、下側の輪の雄しべは萼筒の長さの上約1/3につき、上側の輪の雄しべはのど部につく。葯は線形、長さ約1mm。花盤は1個、線形または線状長円形、子房の長さの約1/2、膜状、葉質、浅裂又は切形。子房は倒卵形、長さ2~3mm、柄があり、無毛または先にまばらに微軟毛がある。花柱は短く、長さ約0.5mm。柱頭は球形、大きい。核果は乾燥し、卵形、長さ約5mm、普通は無毛、宿存する萼に包まれる。花期は夏

12-1 Wikstroemia trichotoma var. flavianthera S. Y. Liou

 中国に分布。中国名は黄药白花荛花 huang yao bai hua rao hua。
 葉身は側脈が6~11対。花序軸は長さ0.8~3.5㎝、花が8~26個つく。萼筒は長さ20mm以下。花盤の鱗片は線状長円形。花盤の鱗片は線形~長円形、先は切径又はわずかに凹形。子房は長さ約2mm、無毛。
12-2 Wikstroemia trichotoma var. trichotoma 基準変種

  synonym Diplomorpha trichotoma (Thunb.) Nakai f. pilosa Hamaya ウスゲキガンピ 

 日本(本州の近畿地方・中国地方西部、四国、九州の大隅半島以北)、朝鮮、中国に分布。
 葉身は側脈が6~8対。花序軸は長さ0.2~1.5㎝、花は10個まで。萼筒は長さ6.5~7.5mm。花盤の鱗片は線形、浅裂し変化があり、長さ約3㎜。先にまばらに微軟毛がある。

(1) Diplomorpha trichotoma (Thunb.) Nakai f. pilosa Hamaya ウスゲキガンピ 

 枝に直軟毛があり、葉は部分的に互生し、直軟毛がある。花序にも直軟毛がある。

13 Wikstroemia yakushimensis (Makino) Nakai ex Masam. シマサクラガンピ 島桜雁皮

  synonym Diplomorpha pauciflora (Franch. et Sav.) Nakai var. yakushimensis (Makino) T.Yamanaka

  synonym Diplomorpha yakushimensis (Makino) Masam.
  synonym Diplomorpha sikokumontana Akasawa
 日本固有種(九州の大分県以南の東側、屋久島)。別名はシマコガンピ,ヤマサクラガンピ。
 高さ約2m。茎は直立又はやや垂れ下がる。シュートは開出し、毛がある。葉はまばらに二列生(distichous)、紙質、まばらに毛があり、披針形~卵形、先は長い尖鋭形、基部は円形~鈍形、長さ1~7.5㎝×幅0.8~4.5㎝。花序はサクラガンピより花が密。花は両性、黄緑色、密に毛がある。萼筒は長さ8~9㎜、萼片は長さ2~2.5mm、子房は倒卵状長円形、基部は尖鋭形で柄があり、密に直軟毛がある。花盤は1~2個、鱗片又は錐形、深裂又は浅裂。果実は乾き、長い柄があり、葉だか又は大きくなった萼に包まれる。花期は7~8月。

14 ハイブリッド
(1) Wikstroemia × ohsumiensis Hatus. タカクマキガンピ 高隅黄雁皮
  synonym Diplomorpha x ohsumiensis (Hatus.) Hamaya

  synonym Diplomorpha trichotoma Nakai var. ohsumiensis (Hatus.) Hamaya

 コガンピ(W. ganpi)とキガンピ(W. trichotoma.)の交雑種

(2) Wikstroemia x ramulosa (Hamaya) Hatus. ミトガンピ
  synonym Diplomorpha x ramulosa Hamaya
 コガンピ(W. ganpi)とサクラガンピ(W. pauciflora)の交雑種

ガンピ属

  family  Thymelaeaceae - genus Diplomorpha
               genus Wikstroemia sect. Diplomorpha
 低木、多数分枝し、シュートはときに毛がある。樹皮は非常に粘り強い。分枝はDiplomopha-type(WikstroemiaではWikstroemia-subtype)。葉は落葉性、対生又は互生、膜質又は紙質、有毛又は無毛、短い葉柄がある。花序は頭状花序、散形花序、又は穂状花序、ときに全て円錐花序(paniculiform)、通常、頂生、毛がある。花柄は関節がある(Diplomorphaは関節の上に花柄がなく、Wikstroemiaでは少なくとも1mmの花柄がある)。花は2形型、両性又は二形(?)、4又は5数性。萼は筒状、膜質、有毛又は無毛、早落性又は宿存性。花弁は無く、萼が花弁のように見える。雄しべは8又は10本、2列につき、上側の雄しべは筒の口につく。花糸は非常に短く、葯は長円形。子房は柄があり、有毛又は無毛。花柱は短い。柱頭は頭状、しばしば、パピラがある。花盤(子房下の)は1~4個の鱗片になり、子房に側生し、錐形又は拍子木形(clapper-shaped)、浅裂~深裂する。果実は核果、乾き、柄がある。種子は紡錘形。シュートは少数の内部師部繊維をもつだけであり、葉軸の維管束は普通、内部師部(internal phloem)をもつが、内部繊維は無く(Wikstroemiaには有る)、断面は深い三日月型又は円形(diplomopha-type)。管状要素(tracheary element)は少し目立つが、螺旋状に太くならない。結晶は無い。花粉粒の外膜は網状。
 世界に約20種があり、アジア東部、南部にあり、日本には6種が自生又は栽培されている。
※  WikstroemiaとDiplomorphaはよく似ており、分枝のタイプ、花柄の関節、葉軸の内部繊維の有無に違いがあるとされているが、POWO(Plants of the World Online | Kew Science)、Flora of China ではWikstroemiaとしている。

参考

1) Flora of China
 Diplomorpha
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=110810
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Wikstroemia
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:332063-2
3) World Flora Online
 Wikstroemia
http://worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000040707
4) A dendrological monograph of the Thymelaeaceae plants of Japan
 日本産ジンチョウゲ科樹木のモノグラフ
file:///C:/Users/haovo/Downloads/esrh050007.pdf
5) Curtis's Botanical Magazine Volume41, Issue3 2024 P.369-375
 1114. Wikstroemia pseudoretusa Koidz.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/curt.12588