ツタウルシ 蔦漆

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Flora of Mikawa

ウルシ科 Anacardiaceae ウルシ属

学 名 Toxicodendron orientale Greene

 synonym Toxicodendron radicans (L.) Kuntze subsp. orientale (Greene) Gillis

 synonym Rhus orientalis (Greene) C.K.Schneid
ツタウルシの花序
ツタウルシの花
ツタウルシの紅葉
ツタウルシ
地を這うツタウルシ
花 期 5~6月
高 さ つる性
生活型 落葉木
生育場所 山野の林内、林縁
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮
撮 影 豊田市(旧小原村)  06.5.20
他の樹木や岩肌に気根でからみついて広がる。幼木でもかぶれるのでツタと間違わないよう注意が必要。
 樹皮は黒褐色、若い枝には褐色の毛が密生する。葉は互生し、3出複葉。成木の小葉は卵形~楕円形で、葉脈がくぼんで目立ち、表面は無毛。幼木の小葉には粗い鋸歯があり、ツタに似ている。秋に紅色~黄色に紅葉する。雌雄異株。長さ約5㎝の総状花序に淡緑色の小さな5弁花を多数つける。花弁は反り返る。果実は直径約5㎜の扁球形の核果、8~9月に黄褐色に熟し、後に白色の中果皮が露出する。2n=30
 ツタは葉が普通3裂し、鋸歯の先に小突起がある。

ウルシ属

  family Cucurbitaceae - genus Toxicodendron

 落葉、低木又は高木、まれにつる性木。師管部(phloem)に白色の乳液をもち、空気にさらすと黒色に変わり、,雌雄混株又は雌雄異株。葉は奇数羽状複葉、3出複葉、又は単葉。花序は腋生、円錐花序又は総状花序、しばしば果序では垂れ下がる。花を抱く苞は脱落性。花は機能的に単性又は両性、5数性。子房は1質。花柱は3本、しばしば、基部で統合する。核果はほ球形又は斜め、無毛又は微細な軟毛~粗毛があり、腺毛は無い。外果皮は薄く、黄色、熟すと裂開又は非裂開、中果皮は白色のロウ質、褐色の縦の樹脂道(resin ducts)をもつ。
 世界に約20種があり、東アジア、北アメリカにバラバラに分布する。

ウルシ属の主な種と園芸品種

1 Toxicodendron orientale Greene ツタウルシ 蔦漆

  synonym Toxicodendron radicans (L.) Kuntze subsp. orientale (Greene) Gillis

  synonym Rhus orientalis (Greene) C.K.Schneid
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、ロシア
 落葉つる性木、他の樹木や岩肌に気根でからみついて広がる。樹皮は黒褐色、若い枝には褐色の毛が密生する。冬芽は裸生、密に褐色の毛がある。頂芽は長さ4~8㎜。側芽は球形~卵形、長さ1~3㎜。葉痕は心形~腎形、やや隆起する。維管束痕は7個。葉は互生し、3出複葉。成木の小葉は卵形~楕円形で、側脈は7~9対、葉脈がくぼんで目立ち、上面は無毛,、下面は側脈の脈腋に褐色の毛が密生し、基部は楔形又は円形、先は短い鋭形。頂小葉は長さ5~15㎝×幅3~9㎝。側小葉は長さ5~12㎝×幅3.5~7㎝。幼木の小葉には粗い鋸歯があり、ツタに似ている。秋に紅色~黄色に紅葉する。雌雄異株。花序は腋生の総状花序、長さ3~5㎝、花を多数つける。花は淡緑色の小さな5弁花。花弁は長円形、長さ約3㎜、反り返る。雄花は雄しべ5本。雌花は仮雄しべ5本、花柱は3裂。果実は直径5~6㎜の扁球形の核果、縦の条線があり、短い刺毛が散生し、黄褐色に熟し、後に白色のロウ質の中果皮が露出する。2n=30。花期は5~6月。果期は8~9月。
品種)  'Seven Year Itch'
1-1 Toxicodendron orientale subsp. orientale

  synonym Toxicodendron orientale Greene f. rishiriense (Nakai) Yonek. タチツタウルシ

  synonym Rhus rishiriensis Nakai
 日本、朝鮮、千島列島、サハリンに分布

1-2 Toxicodendron orientale Greene subsp. hispidum (Engl.) Yonek. タイワンツタウルシ 台湾蔦漆

  synonym Toxicodendron radicans (Linnaeus) Kuntze subsp. hispidum (Engler) Gillis [Flora of China]

  synonym Toxicodendron radicans (L.) Kuntze subsp. hispidum (Engl.) Gillis

  synonym Rhus intermedia Hayata
 中国(貴州省、湖北省、湖南省、四川省、雲南省)、台湾に分布。中国名は刺果毒漆藤 ci guo du qi teng。標高(600~)1600~2200mの丘陵林に生える。
 つる性木。小枝は褐色で、条線があり、最初は鉄さび色の毛がある。葉柄は長さ5~10㎝、黄色の毛があり、上面に溝がある。葉身は3小葉。側小葉は無柄~ほぼ無柄、葉身は長円形~卵状楕円形、長さ6~13㎝×幅3~7.5㎝、基部は斜め、円形、全縁。頂小葉は毛があり、長さ0.5~2㎜の小葉柄がある。葉身は倒卵状楕円形~倒卵状長円形、長さ8~15㎝×幅4~8.5㎝、基部は漸尖し、先は鋭形または短い尖鋭形。小葉の葉身は上面が無毛で、中肋および側脈に沿って下面に毛があり、側脈の腋に赤褐色の毛束がある。花序は円錐花序、長さ約5㎝、黄褐色の毛がある。花の周囲を覆う苞は長さ2㎜、毛がある。小花柄は長さ約2㎜、毛がある。花は黄緑色。萼は無毛、萼片は卵形、長さ約1㎜。花弁は長円形、長さ約3㎜、開花時には外巻きし、不明瞭な褐色の羽状脈パターンがある。雄しべは花弁と同長。花糸は線形、長さ約2㎜。葯は長円形、長さ約1mm。花盤は無毛。子房は球形、直径約0.5㎜。核果は斜の卵形、約・長さ5㎜×幅6㎜、成熟すると黄色になり、約・長さ5㎜×幅6㎜、剛毛は長さ約1㎜。中果皮は厚く、ワックス質。花期は5月。果期は6~8月。

2 Toxicodendron radicans (L.) Kuntze subsp. radicans アメリカツタウルシ

 北アメリカ(USA,カナダ)、南アメリカ原産。英名はpoison-ivy , eastern poison ivy 。別名はポイズンアイビー、ポイズンオーク。乾燥または湿った森林、茂み、谷、空き地、柵、道端、荒れ地など、さまざまな場所に生える。
 主に、茂みが茂った直立または這う高さ1.2mまでの低木、またはつる性木であり、または高さ10~25㎝のつる性草本となる。蔓には気根がある。乳白色の樹液があり、空気に触れると黒くなる。この植物のすべての部分にはウルシオールと呼ばれる有毒な植物油が含まれており、ほとんどの人が重篤な長期にわたる皮膚の炎症(アレルギー性皮膚炎)を引き起こす可能性がある。感染は植物との直接接触、間接的接触(犬、熊手、靴など)、または植物を燃やした火から出る煙を吸うことによって引き起こされる。まれに免疫を持つ人もいる。葉は落葉性、互生し、3出複葉、その形態は非常に多様であり、長さ3~12㎝、まれに長さ30㎝に達することもある。小葉は表面は平滑、縁が平滑(全縁)または歯があり、歯は丸いかまたは尖り、光沢があるかまたは光沢がなく鈍い。3個の小葉がついた葉柄があり、小葉柄は無毛~有毛。秋には葉が赤色、オレンジ色、黄色に紅葉する。雌雄異株。葉腋の長さ8㎝までの総状花序に多数の小さな花をつける。花は黄白色または緑白色。果実は液果状の核果、熟すと蝋状のクリーム色から黄白色になり、冬まで残る。果実を食べる鳥もいる。花期は5~7月。果期は8~11月。
 7亜種がある。

3 Toxicodendron succedaneum (L.) Kuntze  ハゼノキ 黄櫨
 日本(本州の関東地方南部以西、四国、九州、沖縄)、中国、台湾、インド、カンボジア、タイ、ベトナム、ラオス原産。中国名は野漆 ye qi 。英名はwax tree。別名はハゼ、リュウキュウハゼ。
 落葉高木。高さ7~10m。幹は灰褐色~暗赤色。若い樹皮には皮目があり、老木になると縦に裂け目が入る。全体に毛が少なく、ほぼ無毛。葉は互生し、長さ約30㎝の奇数羽状複葉。小葉は広披針形~狭長楕円形で、先が長くとがり、全縁、ほぼ無毛、小葉が垂れ下がることが多い。葉裏は緑白色、葉裏の側脈がヤマハゼやヤマウルシほど目立たない。若芽が無毛で、緑色又は赤くなる。雌雄別株。黄緑色の小さな花を円錐花序に多数つけ、花弁は5個で、外側に曲がって丸くなる。写真は雄花。果実は直径9~13㎜の扁球形、無毛、平滑、淡褐色に熟し、春まで残っている。冬芽は無毛。花期は5~6月。

4 Toxicodendron sylvestre (Siebold et Zucc.) Kuntze ヤマハゼ 山黄櫨

 日本(本州の関東地方以西、四国、九州)、朝鮮、中国原産。中国名は木蜡树 mu la shu 。別名はハゼ。山地、丘陵に生える。
 落葉小高木。高さ5~8m。樹皮は灰白~灰褐色、丸い皮目があり、老木は縦長に裂ける。若葉の裏や芽に赤褐色の長毛が密生する。葉は互生し、小葉が4~6対の奇数羽状複葉。小葉は毛があり、側脈の数が多く、明瞭で、側脈と主脈との角度が大きく、卵形~卵状長楕円形、葉先が尖る。縁は全縁で、幼木には鋸歯が出ることがある。雌雄異株。花は小さな黄緑色で、花弁は5個。果実は直径約7㎜の扁球形、無毛、平滑で、黄褐色に熟す。外果皮に包まれたまま果実が落ちる。核は黄褐色、冬に落葉の間に露出した核(種子)が落ちているのもよく見られる。冬芽は毛が密生する。花期は5~6月。

5 Toxicodendron trichocarpum (Miq.) Kuntze ヤマウルシ 山漆
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国原産。中国名は毛漆树 mao qi shu
 落葉低木。高さ3~8m。幹は灰白色、褐色の縦筋がある。葉や芽に軟毛が密生する。葉は互生し、小葉が4~8対の奇数羽状複葉、葉軸が赤褐色を帯びる。枝先で葉がきれいに丸く束生する。小葉は卵形~楕円形で、先が急にとがり、幹に近い小葉が小さくなる特徴がある。縁は全縁又は1、2個の鋸歯があり、特に幼木では鋸歯が目立つことが多い。葉の側脈と主脈との角度が45~60度程度と小さい。雌雄異株。花は小さな黄緑色で、花弁は5個。果実は直径約5㎜の扁球形で、刺毛が密生し、黄褐色に熟す。外果皮ははがれやすく、縦筋のある白色の中果皮が見えるようになる。花期は5~6月。

5-1 Toxicodendron trichocarpum (Miq.) Kuntze f. viride (H.Hara) Yonek. アオヤマウルシ 山青漆

 葉柄や葉軸が緑色のもの。

6 Toxicodendron vernicifluum (Stokes) F.A.Barkley ウルシ 漆
 日本、朝鮮、中国、インド原産。中国名は漆树 qi shu。古くから広く栽培され、特に渓谷沿いなど比較的湿潤な環境に植栽されることが多い。日本に自生していたと考えられている。
 落葉高木、高さ20m以下、小枝は黄褐色、軟毛がある。葉柄は長さ7~14㎝、基部が膨れ、葉柄と葉軸には微細な軟毛がある。葉身は奇数羽状複葉、長さ15~30㎝。小葉は9~13個、対生し、小葉柄は長さ4~7㎜、軟毛がある、小葉の葉身は卵形~卵状楕円形~長円形、長さ6~13㎝×幅3~6㎝、膜質~紙質、上面は無毛又は中脈に微軟毛があり、下面は黄色の軟毛があり、基部は斜めの円形~広楔形、縁は全縁、先は鋭形~尖鋭形、側脈は10~15対、両面で明瞭。花序は円錐花序、長さ15~30㎝、灰黄色、微軟毛があり、細い枝をもつ。花柄は長さ1~3㎜、雌花の花柄より短く、丈夫。萼片は卵形、長さ約0.8㎜、先は鈍形、無毛。花弁は黄緑色、長円形、約・長さ2.5㎜×幅1.2㎜、褐色の羽状脈をもつ。雄しべは長さ約2.5㎜。花糸は葯の長さと同長、雌花では短い。葯は長円形。花盤は5裂する。子房は球形、無毛。花柱は3個。果序は垂れ下がる。核果は対称形、長さ5~6㎜×幅7~8㎜、無毛、外果皮は薄く、非裂開。中果皮は厚く、ロウ質、褐色の縦の樹脂道をもち、内果皮は約・長さ3㎜×幅5㎜。花期は5~6月。果期は7~10月。

参考

1) Flora of China
  Toxicodendron
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=133197
2) Plants of the World Online | Kew Science
  Toxicodendron
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30179638-2
3)GRIN
  Toxicodendron
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=16822
4)Flora of North America
  Toxicodendron
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=119075