ワタカラカサタケの学名はLepiota clypeolaria (Bull.) P. Kummとされてきたが、よく似たLepiota magnisporaとする見解が出され、コツブノワタカラカサタケは日本産きのこ目録では別名とされている。Vellinga (2000, 2001a)のDNA研究により、Lepiota magnisporaとLepiota clypeolariaの2種が異なることが明らかにされた(Lepiota magnisporaはさらに遺伝子上、少なくとも3つのグループに分けられる)。幸いにも両者には物理的な相違があり、DNAのシークエンシングなしにそれらを確認できる助けとなる。 Lepiota magnisporaはより明るい色を持ち、傘中央のコントラストの強い「目」が特徴になる可能性が強い。顕微鏡下ではLepiota magnisporaの胞子は普通、長く、よりはっきりするのは、しばしば、平らな裏面(abaxial side)=便腹形であるのが特徴である。Lepiota clypeolaria の胞子は平均の長さが短いだけでなく、裏面が凸面である。Lepiota magnisporaはLepiota ventriososporaと同一種とされ、ventriososporaは便腹形の胞子を意味する。(参考MushroomExpert.Com)。
日本のワタカラカサタケは胞子の長いものと、短いものがあるものと推定される。北陸のきのこ図鑑はLepiota clypeolariaとしており、胞子が長さ12.5~15µm、幅4~5.5µm。ひだを傷つけると赤褐色に変色する。原色日本新菌類図鑑では長さ14~22.5µm、幅4.5~6µm、狭紡錘形。変色性の記載がない。
●Lepiota clypeolaria (Bull.) P. Kumm は世界に広く分布する。中国名は细环柄菇。林内の腐葉上に発生する腐生菌。傘は直径3~7㎝、初めのボタンステージでは球形に近い。その後、広鐘形~ほぼ扁平、柔らかく、乾き、細かい小繊維状又は伏した小繊維に全体が覆われ、縁近くは小さい、柔らかな鱗片があり、たまに中央は無鱗片になり、鈍橙褐色~帯褐色~ベージュ色、普通、かなり均等な色であるが、たまに、中央がわずかに暗色になり、縁に帯白色の被膜残片が垂れ下がる。ひだは離生、やや密(密)、短ひだが多数あり、白色。柄は長さ4~7(5~12)㎝、幅6~12(3~10)㎜、ほぼ上下同径、中空、つばの上は無毛、つばの下部は傘のように小繊維状、帯褐色、鞘状の淡黄色~帯白色のつば又は環帯があり、しばしば消失する。基部の菌糸体は白色、しばしば多数つく。肉は白色、切断しても変化なく、無味、無臭(不快臭)。KOHにより傘表面は変色性無し。胞子紋は白色。胞子は長さ12~18µm、幅4~6µm、イグチ属胞子形(bolete
spore)=紡錘形、平滑、KOH中で無色、デキストリノイド。縁シスチジアは目立たず、担子器様、棍棒形、長さ約40µ以下、幅約12.5µm以下。側シスチジアは無い。傘上表皮はトリコデルム型毛状被、他に平行菌糸、構成菌糸は幅7.5~20µm、円柱形、平滑、KOH中で橙褐色、ときに目立たないクランプをもつ菌糸もある。末端細胞は類棍棒形~円柱形。
●Lepiota magnispora Murrill =Lepiota ventriosospora D.A. Reidは世界に広く分布する。林内の腐葉上に発生する腐生菌。中国名は梭孢环柄菇。傘は直径4~7㎝、初め饅頭形、その後広饅頭形~広鐘形~ほぼ扁平、乾き、細かい繊維状の鱗片があり、黄褐色~銹褐色、中央が暗色でコントラストがあり、ときに縁に被膜の残片が垂れ下がる。ひだは離生、やや密、短ひだがあり、白色、古くなるとわずかに褐色を帯び、初め、白色の内被膜に覆われる。柄は長さ4~9㎝、幅0.5~1.5㎝、ほぼ上下同径、わずかに基部が膨れ、先付近は無毛、下部は小繊維状~毛むくじゃら、帯白色~帯褐色、鞘状の白色のつば又は環帯があり、しばしば消失する。基部の菌糸体は白色、多数つく。肉は白色、切断しても変化なく、無味、無臭。KOHにより傘表面は変色性無し。胞子紋は白色。胞子は長さ13~20µm、幅4~5µm、紡錘形、裏面が平ら、KOH中で無色、デキストリノイド。縁シスチジアは目立たず、担子器様、棍棒形、長さ約30µ以下、幅約10µm以下。側シスチジアは無い。傘上表皮はトリコデルム型毛状被からもつれた円柱形の構成菌糸が立ち上がり、KOH中で赤褐色、クランプをもつ菌糸もある
コゲチャワタカラカサタケL. clypeolaria f. umbrinosquamosa Hongo=Lepiota magnispora
Murrill
|