●クロゲナラタケArmillaria cepistipesはヨーロッパ、日本、カナダに分布する。秋に普通、高度(500)600m~1500mの山地のブナ林などの針葉樹、広葉樹の枯木、倒木、切株、落ち枝、埋もれ木に発生、群生、束生する。傘は直径.3~6(15)㎝、丸山形~饅頭形~扁平、縁が内巻きし、表面は乾き、黄土色(淡褐色、榛色
hazel brown)、中央に暗褐色の細鱗片を密生し、辺縁は帯褐色、条線があり、古くなると褐色のしみが出る。柄は長さ4~7(12)㎝、幅0.4~0.7(3.5)㎝、逆棍棒形、基部は球根状に膨らみ(わずかに太くなり)、質は脆く、中実~髄状、上部に白色膜質の消失性のつばがある。柄の表面は濃くなく、淡赤褐色、つばより下は褐色の条線があり、古くなると下部から暗オリーブ色を帯びる。ひだは垂生、やや疎、白色(クリーム色)~淡褐色、古くなると褐色のしみが出る。肉は白色、表皮下は表面色を帯び、質が脆く、無味無臭。胞子紋は白色。胞子は楕円形(水滴形)、平滑、長さ7~9µm、幅5~6(7)µm(長さ6.2~9.6µm、幅4.2~6.3µm)。担子器は4小柄、小柄が太く、棍棒形、長さ25~40µm、幅5.5~8.5µm、基部にクランプがある。傘上の鱗片は長さ0.5~1.5㎜、円柱形~紡錘形の多隔壁菌糸からなり、菌糸細胞は長さ10~70µm、幅
5~25µm 。根状菌糸束は断面が円形、わずかな分枝がある。根状菌糸束の周りの寒天培地は相当な着色がある。(参考 Marcello G. Intini
Armillaria cepistipes and A. gallicain Italy 1997など)
クロゲナラタケArmillaria cepistipesとワタゲナラタケArmillaria gallicaは形態学.的には似た種である。リボソームDNAのITS範囲をターゲットとしたDNAに基づいた方法を使っても、しばしば、ほとんど区別できないことがある。クロゲナラタケとワタゲナラタケの形態学的及び生態学的な特徴を調べること及び2種を区別するためのDNAに基づく他の方法を試験したこの研究により、2種間の特徴的な、巨視的及び微視的な形態学的な特徴が明らかなった。とくに、傘の小点(central
pileus ocella傘中央に残る小鱗片)の存在、つばの形、柄の菌膜の残片の特徴、傘の鱗片の末端細胞の長さに特徴がある。ワタゲナラタケはより暖かい低地(コナラ属の林、沖積地の森林)を好み、クロゲナラタケはヨーロッパの中央の高又は低山地のブナ林に多くみられる。生態学的な好みがあるのにもかかわらず、高度300~500mの地域では両種が見られる。DNA検査では伸長因子1-αの配列は、種間の高い変動性を示し、この遺伝子がクロゲナラタケとワタゲナラタケを区別する適切な候補である。(Mycological
Progress August 2009, Volume 8, Issue 3, pp 259-271 )
●オニナラタケ(ツバナラタケ)Armillaria ostoyaeは高度1000~1500m以上の冷温帯の普通、針葉樹に強い病原性を示し、針葉樹の切株や枯木に発生する。傘は淡黄褐色~茶褐色地に黒褐色細鱗片をを密生し、後に中央部だけ濃く、辺縁は淡色になり、条線が見える。つばは白色膜質、永存性。
●ナラタケ(ハリガネタケ) Armillaria mellea subsp. nipponica は5~7月、晩秋に広葉樹や針葉樹の枯木や生木に発生する。病原性が強く、サクラ、ケヤキ、ヒノキに被害が出ている。傘の表面は幼時、汚白色~淡黄土色、成熟につれ茶褐色を増し、中央に黒褐色細が密生し、辺縁に条線がある。つばは上部に帯黄色膜質で丈夫。
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