全背着生・管孔状の類似種
全背着生 管孔状
【タマチョレイタケ科 ウスキアナタケ属】
1 ウスキアナタケPerenniporia medulla-panis (Jacq.) Donk
世界に広く分布し、被子植物(広葉樹) 又はまれに裸子植物(針葉樹)に発生し、白色腐朽を引き起こす。
3~4年までの多年生、広く広がり、厚さ10㎜以下。分離又は合着、普通、苦く、縁は白色~クリーム色、ときに多少、褐色になり、クモの巣状又は長毛縁~マット状、狭く~広い。管孔面は白色又は汚白色、たまに乾くとやや黄色を帯び、光沢が無い。管孔は新鮮なとき硬く又はコルク質、乾くと、硬くなり、脆く又は革質になり、各層で長さ2.5㎜以下、層は不明瞭又は明瞭。孔口は円形~角形、約5~8個/㎜、縁は厚く又はかなり厚い。肉は白色、乾くと柔らかいコルク質、薄く、実質に変化することなく、連続し、隣接する管孔組織が詰まると不明瞭になる。組織はKOH中で変色しない。菌糸型はやや不確か、おそらく、3菌糸型。肉は複雑に分枝し、厚壁~中実、隔壁は無い(?)。結合菌糸は直径1.5~3µm、たまに7µm以下に膨れ、しばしば、細かい点にまで先が細くなる(?)。骨格菌糸は分枝しない又はまれに分枝することを除いて似ている。原菌糸はしばしば分枝し、薄壁、まれに節のある隔壁をもち(nodose-septate)、おそらく1隔壁?、直径2~3
(~4)µm。実質は肉と連続し、菌糸は似ている。子実層は厚さ9~14µm、菌糸状突起(hyphal peg)があり、埋め込まれ、目立たず、直径3~7µm。担子器は棍棒形、長さ9~12µm、幅6~9µm。胞子は無色、平滑、IKI(-)又は赤褐色(デキスストリノイド)、壁はしばしば厚くなり、長楕円状楕円形~楕円形~類球形、普通、切形、長さ4~7µm、幅2.5~5µm。
2 キンイロアナタケ(ワタグサレモドキ)Perenniporia subacida (Peck) Donk 北アメリカ、ヨーロッパ、アジアの温帯全域に分布し、裸子植物、被子植物に発生する。主に針葉樹に発生する。中国名は黄白多年卧孔菌(huang
bai duo nian wo kong jun ), 微酸多年卧孔菌(wei suan duo nian wo kong jun)。
1年草又は多年草、背着生、広く広がり、厚さ15(20)㎜以下、分離可能又は着生、やや樹脂のように苦く、縁は白色~淡クリーム色~帯赤色、密綿毛があり、平滑な薄皮又は放射状の長毛縁、狭い~広い。管孔面は普通、やや暗クリーム色又は黄色~バフ色になり、乾くと、わずかに暗色又は退色し、やや赤色や褐色を帯び、ときに斜めになる。管孔は新鮮なとき、コルク質、普通、乾くとコルク質であるが、脆いコルク質~堅い軟骨質になり、各層で長さ5㎜以下。層は普通、不明瞭。孔口は円形~角形、約2~4
(~6)個/㎜、縁は薄くなり、全縁~長毛縁又は裂ける。肉は白色~クリーム色。乾くと質感は様々になり、 普通、堅いが、コルク繊維状~柔かくふわふわに変化し、厚さ0.6㎜以下、実質に変わることなく連続する。組織はKOH中で変色しない。菌糸はおそらく2菌糸型。肉は主に骨格菌糸であり、様々な量の原菌糸をもつ。骨格菌糸はまれに分枝し、普通、厚壁~中実、隔壁は無く、直径3~5µm。原菌糸は薄壁、節のある隔壁をもち、極まれにクランプがあり、直径2~4µm。ときに結合菌糸があることがあり、複雑に分枝し、細く、直径1~3µm。実質の組織は肉の組織に連続し、菌糸はより細いことを除き似ており、直径1.5~3.5µm。子実層は厚さ9~13µm。菌糸状突起(hyphal
peg)がある。シスチジアは様々、ときに欠き、普通、小さく、ほとんど埋まり、錐形~棍棒形、ときに、基部が膨らみ、まれに頭状、直径8µm以下。担子器は広棍棒形、長さ10~13µm、幅5~8µm。胞子は無色、平滑、IKI(-)、ほとんど卵形ときに、横に微突形、
しばしば、一端が切形、普通、小さな油滴を1個もち、長さ4~5.5µm、幅3~4µm、非アミロイド、非デキストリノイド。
Poria crustulinaはよく似ているが、胞子がソーセージ形である。Perenniporia discolor は変色の度合いが異なる。
3 Perenniporia ellipsospora Ryvarden & Gilb. 北アメリカなどに分布。白色腐朽菌。
全背着生、白色~クリーム色、孔口は2~4/㎜。2菌糸型。菌糸は厚壁。骨格菌糸はデキストリノイド。胞子は楕円形、弱いデキストリノイド。
4 Perenniporia maackiae (Bondartsev & Ljub.) Parmasto 朝鮮、中国、ロシアに分布。
1年生~多年生、背着生~半背着生。柔軟~革質、乾くとコルク質。縁は不稔、幅2㎜以下。上面(背面)は若い時、赤褐色、古くなると暗灰色になり、粗く、環紋がある。管孔面は明るい黄色、古くなるとわら色になる。孔口は5~8/㎜、孔壁は厚く、全縁。子実体形成菌糸層は淡黄色、コルク質、厚さ2㎜以下、管孔層は管孔面と同色、管孔はコルク質、長さ2㎜以下。菌糸は2菌糸型。原菌糸はクランプがあり、KOHで変色しない。子実体形成菌糸層の原菌糸は薄壁、無色、多数、分枝し、直径2~2.5µm、骨格菌糸は支配的、厚壁、目立つ内腔があり、多数分枝し、直径1.5~(3.3)µm、直径10µm以下に膨れる骨格菌糸もある。菌糸は絡み合い、好青染性、デキストリノイド。管孔の実質菌糸は子実体形成菌糸層と似ていて、絡み合い、多少、垂直につく。シスチジアとシスチジオールは無い。担子器は広棍棒形、長さ9~15
µm、幅 (4~)5~7 µm。胞子は楕円形、厚壁、多少、切形、平滑、CB+、デキストリノイド、長さ(4.8~)5~6.5(~7) µm、幅(3~)3.5~4.5(~5)µm。
5 Perenniporia tenuis (Schwein.) Ryvarden
synonym: Poria tenuis (Schwein.) Cooke
ヨーロッパ、北アメリカに分布。広葉樹、針葉樹の枯木に発生。白色腐朽菌。
1年生。広くひろがり、全背着生。管孔面はvar. tenuisが新鮮なときクリーム色[乾くと黄褐色(warm buff)]、var. pulchellusは新鮮なとき明るい鶯色(citric
yellow)[乾くとクローム・イエロー]。孔口は3~5個/㎜、円形~角形。子実体の縁は普通、不稔、クリーム色~淡バフ色、綿毛状、幅4㎜以下。子実体形成菌糸層は非常に薄く、白色~クリーム色、柔らかい、繊維状。管孔層は子実体形成菌糸層と同色、厚さ3㎜以下。菌糸は2菌糸型。子実体形成菌糸層の原菌糸は薄壁、無色、クランプがあり、直径2~4µm。子実体形成菌糸層の骨格菌糸は厚壁、無色、隔壁が無く、若干分枝し、デキストリノイド、直径2~3µm。実質の菌糸も同様。シスチジアは無く、紡錘形のシスチジオールがあり、埋め込まれるか又はわずかに突き出し、長さ18~25µm、幅8~9µm、基部にクランプがある。胞子は楕円形、いくらか切形、薄壁、無色、平滑、メルツァー試薬でデキストリノイドに変色し、長さ4.5~6µm、幅3.5~4.5µm。
6 Perenniporia variegata Ryvarden & Gilb.
synonym Poria discolor Overh
全背着生、管孔面は新鮮なとき白色~帯黄色、乾くとクリーム色~淡黄褐色に退色する。孔口は円形~角形、2~3個/㎜。菌糸は2菌糸型。骨格菌糸はデキストリノイド。原菌糸にクランプがある。胞子は楕円形~類球形、わずかに厚壁、デキストリノイド。
7 Yuchengia narymica (Pilát) B.K. Cui, C.L. Zhao & Steffen 【タマチョレイタケ科 ユチェンギア属】
synonym: Perenniporia narymica (Pilát) Pouzar
1年生、全背着生。子実体はコルク質、新鮮なとき無味無臭、乾くと硬いコルク質になり、長さ16㎝以下、幅7㎝以下、中央で厚さ1㎝以下。管孔面は新鮮なときクリーム色、乾くと、薄いバフ色~クリームバフ色になる。孔口は角形、4~5個/㎜、孔壁は薄く、全縁。子実体の不稔の縁は狭く、クリーム色~クリームバフ色、幅1㎜以下。子実体形成菌糸層はクリーム色、薄く、太さ0.5㎜以下。管孔は管孔面と同色、硬いコルク質、長さ9.5㎜以下。菌糸は2菌糸型。原菌糸はクランプがある。骨格菌糸はメルツァー試薬で弱いアミロイド~アミロイド、CB-、KOHに溶解する。子実体形成菌糸層の原菌糸は稀、無色、薄壁、たまに分枝し、直径2.3~4µm。子実体形成菌糸層の骨格菌糸は支配的、無色、厚壁、広い~狭い内腔をもち、分枝せず、絡み合い、直径1.9~4.8µm。実質の原菌糸は稀、無色、薄壁、稀に分枝し、直径2~3.5µm。実質の骨格菌糸は支配的、無色、厚壁、広い~狭い内腔をもち、分枝せず、絡み合い、直径1.8~4.6µm。樹木状の菌糸(Arboriform
hyphae)があり、無色、IKI-, CB-。シスチジアは無い。紡錘形のシスチジオールがあり、無色、薄壁、長さ14.2~20.7µm、幅3.6~6.3µm。担子器は棍棒形、4小柄、基部にクランプがあり、長さ16.8~19.2µm、幅5.8~8.8µm。バシジオールは支配的、担子器に形が似ているが、わずかに小さい。胞子は楕円形、切形では無く、無色、厚壁、平滑、IKI-、CB+、長さ(4.1~)4.2~5.2(~5.3)µm、幅(3.1~)3.2~4(~4.1)
µm。
8 Flaviporus stramineus (Bres.) Ginns 黄孔菌属(中国名 和名なし)
synonym: Perenniporia straminea (Bres.) Ryvarden
synonym: Antrodiella straminea (Bres.) Ryvarden & I. Johans)
synonym: Poria straminea Bres(フィリピン)
フィリピン、ケニア、タンザニアで確認され、アジアのかなり広い地域に分布すると考えられている。落葉樹の枯木に発生する。
子実体は全背着生、広がり、新鮮なとき密で丈夫、乾くと硬い木質でわずかに縮む。大きい子実体は割れてばらばらになる 。味は温和。管孔面は新鮮なとき、わら色、乾くと淡黄褐色(isabelline)で橙色を帯び、入射光が当たると光沢がある。子実体の縁は白色、無いか又は非常に狭い。孔口は微細、肉眼では見えなく、7~9個/㎜。管孔は管孔面と同色、厚さ5㎜以下、厚い個体の層は不明瞭。子実体形成菌糸層は無いか又は非常に薄く、黄土色。菌糸は2菌糸型。原菌糸は無色、クランプがあり、普通、見つけるのが困難、幅1.5~3µm。骨格菌糸は支配的、幅2~4µm、厚壁、広く、目立つ幅4~6µmの内腔をもち、先は薄壁、しばしばわずかに膨れるか小さな電球状。シスチジアは頻出~ごくわずか、骨格菌糸から生じ、子実層に一部が斜めに突き刺さり、先が膨れた器官でもあり、他の水平な骨格菌糸からなる子実層の中に曲がる。担子器は長さ7~10µm、4小柄。胞子は小さく、楕円形、切形、長さ2.5~3(3~4)µm、幅2(2.5~3)µm、無色、薄壁、非アミロイド、弱いデキストリノイド。シスチジアはアフリカの2採取品で明瞭であり、同場所の薄い1採取品は不明瞭。
【トンビマイタケ科 スルメタケ属】
9 Rigidoporus vitreus (Pers.) Donk.
synonym: Physisporinus vitreus (Pers.) P. Karst. フィシスポリヌス・ヴィトレウス -フィシスポリヌス属
日本、ヨーロッパ、ニュージーランド、北アメリカに分布する。広葉樹、針葉樹の枯木に発生する。白色腐朽菌。
1年生。全背着生、広く広がり、厚さ5㎜以下[10㎜以下]、剥がしやすい。無味無臭。縁は管孔面と同色、マット状で広い。管孔面は白色(watery
white #b4ccca)、乾くと多少、帯ピンク色、鈍い。管孔は乾くと軟骨質、長さ3㎜以下。孔口は角形、約5~8[5~6]個/㎜、縁は薄く、全縁又はほぼ全縁。肉はクリーム白色、軟骨質、薄く、変わることなく、実質に連続する。断面はKOH中で変色しない。菌糸は1菌糸型。肉の原菌糸は密集して絡み合い、圧力や櫛を使って分離するのは困難、分枝はまれで、薄壁~厚壁、たまに~頻繁に隔壁があり、直径3~8[3~5]µm。実質は肉に連続し、菌糸は細いことを除いて似ており、ほとんど直径3~6µm。子実層は厚さ12~17µm。シスチジアは無い[頂部に結晶をつけた厚壁の菌糸末端を子実層から突き出し、シスチジア状に見える]。担子器は棍棒形、長さ12~17µm、幅5~7µm、担子器の網状組織を形成し、幅4~7µmの管腔(lumina)をもつ。胞子は無色、平滑、IKI
-、類球形~球形、先は小尖頭(apiculus)、長さ5~6µm、幅4~5µm。
※猿の腰掛類きのこ図鑑p129に掲載されている。[ ]がその数値。
【トレキスポラ目 ヒドノドン科 トレキスポラ属】
10 シロアナコウヤクタケTrechispora mollusca (Pers.) Liberta
アジア、ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリアに分布する。広葉樹、針葉樹の枯木に発生する。1年生、全背着生、緩く着生し、剥がれやすく、脆く、厚さ1800µm以下。子実層面は白色~バフ色(buff)[乾くとクリーム色]、管孔状。孔口は不規則、円形~角形、波状、裂ける部分もあり、(1~5)2~6個/㎜[2~15/㎜2]、縁は白色、薄くなり、クモの巣状、繊維状、長毛縁状、ときに菌糸束を生じる。断面では類無色、膜質、子実下層は無い。菌糸は1菌糸型。菌糸は直径2~6.5µm、平滑、節状隔壁、薄壁、しばしば、隔壁で瓶(びん)状、ときに、不規則な結晶状の物質で覆われる。シスチジアは無いが、ときに球形で薄壁の直径15~30µmの小嚢(vesicles)
が子実体形成菌糸層にある。担子器は棍棒形~円柱形、わずかにくびれ、長さ9~16.5µm、幅4~6µm、基部にクランプがあり、4小柄。胞子は長さ3.5~5µm、幅2.5~3(3.5)µm(疣を除く)、広楕円形(卵形)~楕円形、疣があり(疣は長さ0.25µm以下)いがぐり状、無色、薄壁~わずかに厚壁(厚さ0.25µm以下)、非アミロイド。
【アナタケ科Schizoporaceae アナタケ属Schizopora】
11 アナタケ Schizopora flavipora (Berk. & M.A. Curtis ex Cooke) Ryvarden
アナタケ科Schizoporaceaeウスカワタケ属 Hyphodontia からアナタケ属Schizoporaに変更された。
日本、中国、台湾、ロシア、ベトナムに分布する。広葉樹の枯木に発生する。子実体は全背着生、不定形に広がる。厚さ1~2㎜、縁の成長部分は白色、繊維状、その他は子実層を形成しクリーム色~淡バフ色。子実層托は柔軟な革質、管孔状、孔口は円形~角形、乱れることが多く、迷路状~薄歯状、3~5個/㎜、管孔長は0.5~1㎜。肉は類白色、革質、乾くと脆く、無味、無臭。担子器は類つぼ形、長さ15~20µm、幅4~5µm。胞子紋は白色。胞子は長さ4.5~5.5
µm、幅3~3.5µm、 楕円形、無色、平滑、非アミロイド。シスチジアは無く、シスチジオールがあり、シスチジオールはフラスコ形、薄壁。菌糸は1菌糸型、幅2~3µm、クランプがある。
12 クダアナタケSchizopora paradoxa (Fr.) Donk.
日本、朝鮮、中国、台湾、ロシアに分布。広葉樹の枯木に発生する白色腐朽菌。全背着生、不定形。白色の薄膜状に枯木に広がり、表面にまだらに子実層托を形成する。厚さ2~3.5㎜。子実層托は淡ニッケイ色~ニッケイ色。管孔は斜め下向きに孔口がつき、管孔長は2~4㎜。孔口は楕円形~紡錘形、3~5個/㎜。肉は白色、革質、乾くと脆く、無味無臭。胞子紋は白色。長さ(4.5)5~5.5µm、幅(3)3.5~4µm。シスチジアは無く、シスチジオールは薄壁フラスコ形、長さ28~60µm、幅6~9µm。菌糸は2菌糸型。原菌糸にはクランプがある。
【タマチョレイタケ目 シワタケ科 ニクイロアナタケ属】
13 ニクイロアナタケJunghuhnia nitida (Pers.) Ryvarden
世界に広く分布する。ヨーロッパ、熱帯アフリカの普通種。1年生。管孔面がクリーム色で、秋~春に広葉樹の枯木、枯枝にきわめて普通に見られる白色腐朽菌。子実体は全背着生、初め円形のパッチ状、後に膜状に不定形に大きく広がり、普通幅10(15以下)㎝程度、厚さ1(2)㎜以下、基物から離れやすく、しばしば、乾くとコルク質で脆い。縁の成長部分は不稔性、狭い~広い、白色(pale)~クリーム色(~ochraceous
buff)、繊維状(綿毛状)、管孔面より明らかに淡色。管孔面の子実層を形成部分は淡黄褐色(ochraceous buff)~肉色(pinkish
cinnamon)[クリーム色でピンク色や汚ピンク色を帯びる]。子実層托は柔軟なコルク質~繊維質、管孔状、しばしば斜めになり、孔口は小円形~角形、5~7個/㎜。担子器は棍棒形、4胞子性、長さ12~16µm、幅4~5µm、基部にクランプがある。胞子は凸平レンズ状、広楕円形~卵形、長さ(3)3.5~4.5(5)µm、幅2~2.5(3)µm、無色、平滑、非アミロイド。シスチジアは豊富、棍棒形、長さ40~80(~100)µm、幅(5~)9~15µm、厚壁、結晶に覆われる。菌糸は2菌糸型。原菌糸は幅2~3(4)µm、まれに分枝し、薄壁、無色、クランプがある。骨格菌糸は幅2~3.5(4)µm、厚壁、隔壁は無く、まれに分枝する。
【タマチョレイタケ目 グラムモテレ科 テレポルス属】
14 アナタケモドキTheleporus calcicolor (Sacc. & P. Syd.) Ryvarden
スリランカ、マレーシア、タンザニアに分布。落葉樹に発生する。1年生。子実体は全背着生。幅や長さは15㎝以下、厚さ5㎜以下。縁は白色、細かい繊維状。管孔面は白色~淡クリーム色~古くなると淡バフ色。孔口は不規則、角形、5~7個/㎜、深さ200µm以下。凸凹や切れ目のある孔壁は微粉状。子実層は穴の基部に限定され、孔壁より明らかに白い。子実体形成菌糸層は非常に薄く、アフリカ産ではより綿毛状。菌糸は3菌糸型。原菌糸はクランプがあり、幅2~3µm。骨格菌糸は細く、中実、幅2~3µm、管孔壁に平行。結合菌糸は子実体形成菌糸層やその隔壁の中にあり、幅1~1.5µm、分枝は少ない。栄養菌糸は非アミロイド、非デキストリノイド。樹枝状ハイフィディウムがあり、古いと見つけにくく、無色、薄壁、隔壁中では見つけやすいが、子実層にもある。担子器は棍棒形、長さ30~35µm、4胞子性。胞子は広楕円形~類球状卵形、長さ5~7.5µm、幅4~5µm。
【タマチョレイタケ目 マクカワタケ科 ケリポリオプシス属】
15 Ceriporiopsis consobrina (Bres.) Ryv
中国、ヨーロッパ(イタリア、フランスなど)に分布。中国名は有关拟蜡菌。広葉樹の枯木に発生する白色腐朽菌。
一年生、全背着生、乾くと、はがれやすく、脆く、厚さ1㎜以下、管孔面はクリーム色~淡わら色(クダアナタケに似る)。孔口は不規則な多角形、(1~)2~4(~5)
㎜/個、孔壁は分裂又は歯状。子実体形成菌糸層は薄く、白色。管層は子実体形成菌糸層と同色、子実体形成菌糸層は約1㎜。菌糸は1菌糸型、原菌糸はクランプがあり、直径2~4µm、無色、繊細な薄壁、子実体形成菌糸層と狭い縁は細かい外皮で覆われる。膨らんだものがあり、密な隔壁組織が実質中にある。シスチジアは無く、薄壁の平滑なシスチジオールがあり、長さ15µm以下。担子器は棍棒形、4小柄、長さ15~22µm、幅4~6µm、基部にクランプがある。胞子は類球形、薄壁、無色、平滑、Melzer's試薬で変色無。長さ3~4µm、幅2.5~3µm。基準種は確定したものがない。
16 Ceriporiopsis aneirina (Sommerf.) Domański
synonym: Radulodon aneirinus (Sommerf.) Spirin
ヨーロッパ、アルジェリア、北アメリカに分布する。広葉樹(ポプラに多く)、まれに針葉樹に発生する。白色腐朽菌。
1年生、全背着生、広く、広がり、厚さ3㎜以下。普通、容易に剥がれる。味は温和。縁は白色、クモ膜状、狭い~広い。管孔面は白色~淡クリーム色、頻繁に目立つピンク色みを帯びる。乾くと、普通やや退色し、鈍い。管孔は乾くと類コルク質~脆い紙質、長さ3㎜以下。孔口は角形になり、約1~3個/㎜、縁は薄くなり、全縁~長毛縁。肉は白色、乾くと柔らかい繊維状、薄く、変化無く、実質に連続する。組織はKOH中で変色しない。菌糸は1菌糸形。肉の原菌糸はまれ~頻繁に分枝し、薄壁~厚壁、多数のクランプがあり、ときにまた、1隔壁があり、直径2~4(~5)µm。実質の組織は普通、肉と連続し、ときに、より密集して、かなり明瞭に分かれ、菌糸は直径2~2.5µmであることを除いて似ている。子実層は厚さ15~25µm、よく発達した子実下層がある。菌糸束突起がある。シスチジアは無い。担子器は狭い棍棒形、長さ15~25µm、幅5~7µm。胞子は長楕円状楕円形~卵形、長さ5~7µm、幅2.5~4µm、平滑、無色、IKI
-。
17 Ceriporiopsis gilvescens (Bres.) Domański
アジア、アフリカ、ヨーロッパ北アメリアに分布。広葉樹の枯木に発生。白色腐朽菌。
子実体は1年生、全背着生、広く広がり、新鮮なとき、ろう質で軟らかく、乾くと、硬く脆く、厚さ4㎜以下。縁は白色~淡ピンク黄色、羊毛状、古くなると毛がなくなる。管孔面は初め、白色でピンクの影があり、触れたり傷付くと暗色になり、乾くと、ワラ色~橙褐色になる。孔口は角形~円形、4~5個/㎜。子実体形成菌糸層は薄く、密、淡わら色。管孔層は子実体形成菌糸層と同色、しばしば、古い個体では密で樹脂質。菌糸は1菌糸型。原菌糸はクランプがあり、薄壁~わずかに厚壁、直径2~4µm。孔壁の中が、しばしば、特徴的な小さな棒状の結晶で覆われる。シスチジアや他の不稔の子実層要素は無い。担子器は4小柄、長さ14~18µm、幅4~6µm。、基部にクランプがある。胞子は類円筒形、無色、薄壁、平滑、メルツァー試薬(-)、長さ3.5~4.5(~5)µm、幅1.5~2µm。
18 Ceriporiopsis mucida (Pers.) Gilb. & Ryvarden
ヨーロッパ、北半球の極地付近に分布する。広葉樹、針葉樹の枯木に発生する。
子実体は1年生、全背着生、広く広がり、剥がしやすく、新鮮なとき、軟絡、乾燥すると繊維状、厚さ3㎜以下、縁は白色~淡クリーム色、幅が広~狭、根状菌糸束が有又は無。管孔面はクリーム色~淡黄色(pale
chrome yellow)~ワラ色。孔口は角形、一部わずかに波状で不規則、規則的なときに3~5個/㎜、孔壁は薄い。子実体形成菌糸層は白色、薄く、厚さ約1ミリ。管孔層は子実体形成菌糸層と同色、厚さ1.5㎜以下。菌糸は1菌糸型。原菌糸はクランプがあり、平滑又は小さな結晶をもち、特に縁や子実体形成菌糸層に結晶が多く、直径2.5~4µm。シスチジアや他の不稔の子実層要素は無い。担子器は4小柄、長さ13~16µm、幅4~6µm。、基部にクランプがある。胞子は広楕円形~類球形、無色、平滑、メルツァー試薬(-)、長さ2.5~3.5(~4)µm、幅2~2.5µm。
19 Ceriporiopsis resinascens (Romell) Domański
synonym: Poria resinascens (Rom.) Lloyd
ヨーロッパ、シベリア、北アメリカ(ワイオミング州)、アラスカに分布する。日本では確認されていない。広葉樹(ハンノキ、ヤナギ)の枯木、枯枝に発生する。白色腐朽菌。
子実体は1年生、全背着生、微細な小節を持ち(nodulose)、ほとんど直径数㎝、木目に沿って長さ8㎝、幅8㎝になり、厚さ3㎜以下、若く、新鮮なときには柔らかく、乾くと樹脂状で硬く脆い。不稔の縁は白色(汚わら色)、幅1~3㎜、毛状、根状菌糸束は無い。管孔面は初め帯白色、黄土色又は淡ワラ色~不均一な淡汚褐色、すぐに均一な淡褐色になる。孔口は角形、3~4個/㎜、微細な小節を持つ種では大きく、より不規則。子実体形成菌糸層は白色、繊維状、厚さ3㎜以下。管孔層は樹脂状で一部軟骨質、乾くと子実体形成菌糸層との境界にな密な暗褐色帯をもち、断面では白色の子実体形成菌糸層(厚さ)と強いコントラストになる。管孔層は管孔面と同色、乾くと脆く、厚さ6㎜以下。菌糸は1菌糸型。子実下層の原菌糸はクランプがあり、薄壁、無色、明瞭、直径2~4µm。実質中央では明瞭な厚壁、不規則な樹脂状物質を膠着する。この物質は一部結晶(立方体の結晶)で、一部が球形又はしずく状[IKIやCB中のでは油球のように、KOH中では帯褐色の物質として見える]。子実体形成菌糸層中では厚壁、明瞭、ほどほどに分枝し、クランプが散在し、断片や壊れたものの中では直径2~6µmの骨格菌糸として取られやすい。シスチジアは無いが、孔壁中にわずかに膨らんだ菌糸の端が見られる。担子器は4小柄、狭い棍棒形、長さ18~24µm、幅4~6µm、基部にクランプがある。バシジオールは円筒形~長楕円状楕円形、平滑、無色、メルツァー試薬(-)、長さ4~6(~8)µm、幅2~3[3~3.7]µm、無、、極薄壁、IKI
-、CB-(内容物はかすかにCB+)。(参考 1 Ceriporiopsis resinascens (Rom.) Dom. - Acta Soc.
Bot. Pol. 32:732, 1963. - Polyporus resinascens Rom.. Arch. Bot. 11:20,
1911. 2 Niemela, T. 1985. Mycoflora of Poste-de-la-Baleine, Northern Quebec.
Polypores and the Hymenochaetales. Naturaliste Canadien. 112:445-472)
全背着生 管孔状(濃色のもの)
1 チャアナタケ Fomitiporella umbrinella (Bres.) Murrill,
sionym Phellinus umbrinellus (Bres.) S. Herrera & Bondartseva キコブタケ属
世界の温暖帯以南に広く分布。広葉樹の枯木に発生する。ヨーロッパではコナラ属の上だけに発生し、中国、アフリカ、、北アメリカ、南アメリカなどから報告がある。子実体は全背着生、厚さ6㎜以下、表面は黄褐色~赤褐色、古くなると暗色~帯灰色。孔口は(4~6)6~8(7~10)個/㎜。胞子は類球形、褐色~銹褐色、長さ3.5~5µm
、幅 2.5~4.5 µm。剛毛体は無く。菌糸は2菌糸型。
【中国産】
子実体は多年草、背着生、分離できず、無味無臭、新鮮なとき硬い木質、乾くと硬い木質、長さ15㎝、幅5㎝、中央の厚さ2㎜以下。管孔面は黄褐色~赤褐色、多少、斜め、縁は暗褐色、後退し、幅3㎝以下。孔口は角形~曲がりくねり、8~9個/㎜、孔壁は薄く、全縁又はわずかに引き裂かれる。子実体形成菌糸層は暗褐色、薄く、厚さ1㎜以下。管孔は管孔面より淡色、長さ1㎜以下。菌糸は2菌糸型。原菌糸は1隔壁。KOH中で組織は暗色になるが、変色しない。子実体形成菌糸層の原菌糸はまれであり、無色、薄壁、頻繁に分枝し、隔壁があり、直径2~3.1µm。骨格菌糸は支配的であり、黄金色~銹褐色、厚壁、目立つ内腔があり、不分枝、隔壁が無く、多少、
屈曲性があり、絡み合い、直径2.8~4µm。管孔の原菌糸は無色、薄壁、たまに直角に分枝し、しばしば、隔壁があり、直径1.5~3µm。骨格菌糸は支配的、銹褐色、はっきり厚壁、狭い内腔があり、不分枝、隔壁が無く、直線状、管孔に沿って平行、直径2.5~3.5µm。剛毛体は無い。シスチジオールは便腹形、先が尖る。担子器は棍棒形、長さ11~14µm、幅5~6.5µm。バシジオールは形が担子器に似るが、わずかに小さい。2次菌糸は管孔の中に多く、無色、薄壁、しばしば分枝し、1隔壁、直径1.8~3µm。胞子は類球形、銹褐色、厚壁、平滑、IKI(-)、CB(-)、長さ(3.5~)3.8~4.5(~4.6)µm
、幅 (2.9~)3.1~3.9(~4) µm、L = 4.08µm, W = 3.31µm, Q = 1.18-1.29 (n=60/2).。
【北アメリカとブラジル】
USAの湾岸諸国とブラジル南部に分布し、多くの落葉樹に発生する。
多年生、背着生、合着して、広がる。厚さ約5㎜のタイプは木質、管孔面は黄褐色(fulvous )~暗ニッケイ色~灰褐色。孔口は円形、全縁、6~8個/㎜。管孔は同色、内側のものは白色の菌糸体が詰まる。肉はこのタイプではほとんど無く、他のものでは1㎜以下、基板に続く細い黒線がある。菌糸は2菌糸型。原菌糸は無色、1隔壁、幅1.5~2.5µm。骨格菌糸は全体的に優位を占め、厚壁、黄金色~淡銹褐色、幅2.5~3.5(~4)µm。子実層の剛毛体は無い。担子器は広棍棒形、長さ8~12µm、幅5~6µm。胞子は類球形~球形、厚壁、淡銹褐色、IKI(-)、長さ4~5µm、幅3.5~4µm。
【ヨーロッパ産】広葉樹の白色腐朽菌、ヨーロッパではコナラ属だけに発生する。多年生、背着生、広く広がる。表面は明るい黄褐色、古くなると暗色になる。孔口は円形~角形、4~6個/㎜、隔壁は厚く、全縁、縁は稔性又は狭く不稔、古くなるとしばしば、後退する。子実体形成菌糸層は暗赤褐色、厚さ1㎜以下。管孔層は不明瞭な層状、同色、子実体形成菌糸層があり、乾くと硬く木質、厚さ6㎜以下。菌糸は2菌糸型。子実体形成菌糸層の骨格菌糸は厚壁、KOH中で褐色、隔壁は無く、まれに分枝し、直径2.5~5µm。子実体形成菌糸層の原菌糸は薄壁、淡黄色~無色、1隔壁、たまに分枝し、直径2~3µm。実質の菌糸は似ている。剛毛体又は他の不稔の子実層要素は無い。担子器は広棍棒形、4小柄、長さ11~14µm、幅5~6µm、基部に1隔壁がある。胞子は卵形~広楕円形、淡赤褐色~暗赤褐色、厚壁、平滑、メルツァー試薬(-)、長さ4~5µm、幅3.5~4.5µm。
【南アメリカ産】 数年の多年生、広く広がり、厚さ6㎜以下、分離できず、無味、縁は多少、帯黄色又は帯赤褐色、ビロード状になり、かなり狭い。管孔面は黄褐色~赤褐色、古くなるとやや灰褐色になり、かすかに斜めになる。管孔は硬く、各層で長さ2㎜以下、層は普通、明瞭。孔口は類角形~角形、7~10個/㎜、縁は薄く、全縁~引き裂き状。肉は暗赤褐色、柔らかいスポンジ状又は繊維質~硬く、薄く、変化することなく実質へ続く。組織はKOH中で暗色になり、変色しない。菌糸は2菌糸型。肉はほとんど全体が骨格菌糸、まれに分枝し、薄壁~かなり厚壁、淡色の例ではまれに1隔壁があり、直径1.5~4µm。縁の組織は原菌糸をもち、薄壁であることを除き、似ており、より頻繁に1隔壁がある。実質は肉と連続し、菌糸も似ている。子実層は厚さ7~11µm、剛毛体は無い。担子器は棍棒形、長さ8~11µm、幅4~5µm。胞子は目立つ褐色、平滑、IKI(-)、長楕円状楕円形~楕円形、長さ3.5~4.5µm、幅2.5~3.5µm。
2 チャアナタケモドキFomitiporia torreyae Y.C. Dai & B.K. Cui タバコウロコタケ科、フォミトポリア属
synonym: Phellinus punctatus (Fr.) Pilát キコブタケ属
非赤枯性溝腐病の病原菌として知られ、針葉樹のスギ、サワラ、コウヤマキなどに被害を与え、広葉樹のナシの萎縮病などを引き起こす。白色腐朽菌。北半球温帯以北、日本、中国東部に分布する。剛毛体はまばら。
子実体は全背着生、1年生~多年生。孔口は円形、4~6又は7~8個/㎜、表面は黄褐色(10YR 6/8)~淡褐色(10YR 6/4)~褐色 (10YR
5/4)、孔壁は全縁。縁は目立たず、膜質、ほとんど管孔面と同色、普通、幅1㎜以下。管孔はコルク質~革質、層状又は単層、管の長さは様々で、各層の深さ5㎜以下。
子実体形成菌糸層は薄く、ほとんど無く、子実体形成菌糸層と基質の間に黒線は無い。菌糸は2菌糸型。実質の菌糸は正常~ほぼ正常、膠着しない。実質の原菌糸はたまに分枝し、1隔壁、薄壁~わずかに厚壁、直径1.5~3µm。実質の骨格菌糸はほとんどが直線状~波状、厚壁、明瞭な内腔をもち、隔壁は無く、淡褐色~褐色、直径2~4µm。子実層の剛毛体は種により様々であり、まばら~散生~管の限られた部分で豊富、便腹形~短い便腹形、基部が膨れ、たまに尖鋭形、長さ15~30µm、幅6~10µm。胞子は類球形、わずかに厚壁、無色デキスストリノイド、長さ4~6.5µm、幅3.5~6µm。
3 サビアナタケPhellinus ferruginosus (Schrad.) Pat. タバコウロコタケ科 キコブタケ属
チャアナタケに似るが剛毛体(setae)がある。
温帯地域に広く分布、南極を除き、ニカラグア、キューバ、マルチニーク島などにも分布する。被子植物や裸子植物に発生る普通種。白色腐朽菌。
子実体は全背着生、1年生、しばしば2~3年宿存する。広く広がり、厚さ5㎜以下[長さ60~70㎝、幅4~15㎝、厚さ15㎜以下]、分離できず、無味無臭。縁は暗赤褐色[黄褐色]、細かい剛毛があり、狭く~広く、剛毛菌糸は18倍で観察できる。管孔面は灰褐色~赤褐色[黄褐色~焦げ茶色]、光沢は無い。管孔はコルク質~堅くて曲がらず脆く、各層は長さ3㎜以下、層は不明瞭。孔口は円形、約4~5個[5~6]/㎜、縁は厚く~かなり薄く、全縁。肉は暗赤褐色、硬く、薄く、変化することなく実質に連続する。組織はKOH中で暗色になるが、退色しない。菌糸は2菌糸型。肉の骨格菌糸はまれに分枝し、薄壁~適度な厚壁、まれに1隔壁があり、直径2.5~3.5µm。肉の原菌糸はたまに分枝し、薄壁、1隔壁、直径2~5µm。肉組織の存在する剛毛体菌糸は直径5~10µm。実質は肉に連続し、より細いことを除いて肉菌糸に似ていて、直径2~2.5µm。子実層は厚さ9~14µm、剛毛体は多く、錐形、長さ25~45µm、幅5~9µm。担子器は棍棒形、長さ9~14µm、幅4~7µm。胞子は無色、平滑、IKI(-)、端が丸い長楕円形~広楕円形、しばしば片側が扁平になり、普通、1個の小油球を持ち、長さ4~5
(~6)µm、幅2.5~3.5 (~4)µm。
全背着生 網目状~管孔状(浅いもの)
【タマチョレイタケ目 マクカワタケ科 アミメアナタケ属】
1 アミメアナタケCeriporia reticulata (Hoffm.) Domański
ヨーロッパ、チュニジア、北アメリカ、ブラシルなど不規則に分布する。よく腐敗した被子植物、まれに裸子植物に発生する。
1年生、小さく独立したパッチ状又は広がり、厚さ1㎜以下、剥がしやすく、無味無臭。縁は白色、くも膜状、狭い。管孔面は白色、乾くと、白色又はクリーム色~橙色になり、鈍く、管孔はしばしば独立した殻斗(cupolas)として生じ、癒合して孔壁を形成し、柔らかく、脆く、長さ1㎜以下。孔口は円形~不規則、癒合し、約3~4個/㎜、縁は薄くなり、全縁。肉は白色、、柔らかい繊維状、薄く、厚い孔壁の中の実質だけに連続する。組織はKOH中で変色しない。菌糸は1菌糸型。肉の原菌糸は頻繁に直角に分枝し、薄壁、1隔壁、直径3~8µm。実質の組織は厚い孔壁の肉に連続し、似た菌糸からなる。子実層は厚さ14~16µm。シスチジアは無い。担子器は棍棒形、長さ12~15µm、幅5~8µm。胞子は平滑、無色、IKI
-、ソーセージ形、長さ6~10µm、幅2.5~3.5µm。
2 コアナタケCeriporia tarda (Berk.) Ginns
synonym: Poria tarda (Berk.) Cooke
中国、セイロン、ロシア(シベリア)、メキシコ、プエルトリコ、北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドに分布。広葉樹、まれに針葉樹の枯木に発生。白色腐朽菌。
1年生、全背着生、広く広がり、厚さ1㎜以下、剥がれやすく、無味無臭。不稔の縁はクリーム色、普通かなり広く、薄く、菌糸体状(mycelioid)を除いてマット状。管孔面は帯ピンク色~クリーム色、普通、乾くとクリーム色~ピンク・バフ色(pinkish-buff)~くすんだ褐色(sordid
brown)。管孔は初めは互いに独立した殻斗であり、後に癒合し、管孔状、乾くと脆く、長さ0.5㎜以下。孔口は円形~角形、3~5個/㎜、縁は中間の厚さで、全縁。肉は白色~クリーム色、かなり柔らかく、薄く、きれめなく実質に連続する。組織はKOH中で変色しない。菌糸は1菌糸型。原菌糸は1隔壁、無色、薄壁、たまに、節状隔壁(隔壁のところで瓶状になる)、頻繁に直角に分枝し、顆粒状の付着物をもつものもあり、幅3~5(~7)µm。実質の組織は肉に連続し、菌糸は似ている。子実層は厚さ約17~22µm、実質の組織とはっきり区別できる。子実下層の組織は厚さ約25µmの菌糸が密集し明瞭。シスチジアは無い。担子器は細い棍棒形、長さ(10)16~19(20)µm、幅4~5.5µm、4小柄。胞子は円筒形(長楕円形~類楕円形)、長さ4~5µm、幅1.5~2(2.5)µm、平滑、無色、IKI
-。類似種 Merulius bellusは酷似するが、胞子が大きく 長さ5~6.5µm、幅2.5~3.5µm 。セイロンのPoria leptodermaは酷似するが、孔口が6~7個/㎜。胞子が長さ5~6µm、幅3~4µm。
Polyporus tenellusはときにsynonymとされ、おそらくMerulius bellusである。(参考 Lowe, J.L.
1966. Polyporaceae of North America. The genus Poria. Technical Publication
of the State University College of Forestry at Syracuse University. 90:1-183)
3 ケリポリア・アラクアナ Ceriporia alachuana (Murrill) Hallenb.
synonym: Poria alachuana Murr.
北アメリカに分布する。被子植物に発生する。白色腐朽菌。
1年生、全背着生、広がり、厚さ2㎜以下、味は不明瞭な樹脂様。縁は淡クリーム色、細かい繊維のマット状、幅はかなり狭い。管孔面はピンク・クリーム色(pinkish-cream
)~暗クリーム色、管孔は乾くと、堅くて曲がらず、かなり脆く、長さ3㎜以下。孔口は角形、5~8個/㎜、縁は薄く、長毛縁。肉はクリーム色、柔らかい繊維状、薄く、変化無く、実質に連続する。組織はKOH中で変色しない。菌糸は1菌糸型。肉の原菌糸はまれに分枝し、薄壁、普通、多数ある1隔壁でややくびれ、直径3~4.5µm。実質の菌糸は密集してつき、ほとんど偽実質(pseudoparenchymatous)、強く密着し、肉の菌糸に似ている。子実層は厚さ9~13µm。菌糸束突起(hyphal
peg)がある。シスチジアは無い。担子器は棍棒形、長さ9~13µm、幅4~5µm。胞子は平滑、無色、IKI -、長楕円状楕円形~楕円形、長さ3~4.5µm、幅2~2.5µm。
Poria latitans や Poria rimosaはよく似ているが、原菌糸に節状隔壁があり、シスチジアをもつ。
(参考 Lowe, J.L. 1966. Polyporaceae of North America. The genus Poria. Technical Publication of the State University College of Forestry at Syracuse University. 90:1-183)
※猿の腰掛類きのこ図鑑p59に掲載されているものは広葉樹の枯木に発生し、厚さ0.5㎜以下、浅い管孔状~網目状、、孔口が3~4個/㎜。
4 ムラサキアナタケCeriporia purpurea (Fr.) Donk
北アメリカ、ヨーロッパ、アルジェリアに分布する。被子植物、裸子植物上に散生。白色腐朽菌。
1年生、全背着生、普通、初め小さく、独立し、癒合して広く広がり、厚さ1㎜以下、剥がれやすく、無味、無臭。縁は管孔面と同色又は淡色、クモ膜状又は長毛縁、狭い~広い。管孔面は新鮮なとき、帯ピンク色~暗い肉色(flesh-color)、ときに、傷が少なくとも赤色になり、乾くと、ピンキッシュ・タン(pinkish-tan
#d99b82)~暗紫色(dark purple)になる。管孔はしばしば、縁の組織の中に独立した孔口として生じ、広がって管孔面を形成して広がり、新鮮なときに柔らかく、ろう質、乾くと脆く、長さ0.5㎜以下。孔口は円形~やや角形、約3~5個/㎜、縁は薄くなり、全縁。肉は管孔と同色又は淡色、柔らかい繊維状、薄く、広い実質の区域に変化なく連続する。組織はKOH中で変色しない。菌糸は1菌糸型。肉の原菌糸は下部に密集して並び、上部に疎にしばしば垂直に並び、頻繁に直角に分枝し、しばしば、KOHでピンク色~赤褐色になる顆粒状の物質で覆われ、薄壁、頻繁に1隔壁があり、直径2~5(~6)µm。広い実質の菌糸は疎に並び、管孔に続く肉に連続し、より狭い実質の中に押し出され、小さく(直径2~2.5µm)、密集してつく。子実層は厚さ14~18µm。シスチジアは無い。担子器は棍棒形、長さ14~18µm、幅5~7µm。胞子は平滑、無色、IKI
-、円筒形、普通、多少曲がり、長さ5~7(~9)µm、幅1.5~2(~3)µm。(参考 Lowe, J.L. 1966. Polyporaceae
of North America. The genus Poria. Technical Publication of the State University
College of Forestry at Syracuse University. 90:1-183 )
※猿の腰掛類きのこ図鑑p60に掲載されているものは針葉樹の枯木に発生し、浅い管孔状、孔口が1~3個/㎜。
5 Ceriporia excelsa S. Lundell ex Parmasto
ヨーロッパ、北アメリカに分布。広葉樹、まれに針葉樹の枯木に発生する。白色腐朽菌。
子実体は1年生、全背着生、広く広がり、柔らかく、剥がれやすい。不稔の縁は狭く、白色~ピンキッシュ・タン(pinkish tan)~帯紫色、くも膜状又は羊毛状。管孔面はピンク色~赤橙色。管孔は独立した孔壁を形成し、後に融合し、孔口は円形~角形、2~3個/㎜、孔壁は厚く、古くなると薄くなり、裂ける。子実体形成菌糸層は白色又は帯ピンク色~タン色、環紋は無く、厚さ1㎜以下。管孔層は子実体形成菌糸層と同色、厚さ0.5㎜以下。菌糸は1菌糸型。子実体形成菌糸層の菌糸は無色、薄壁~わずかに厚壁、ほとんど1隔壁、隔壁でわずかに膨れ、しばしば枝が輪生し、まれに、1重、2重、多重クランプがあり、直径5~15µm。実質の菌糸は1隔壁、直径3~4.5µm。シスチジアや他の不稔の子実層要素は無い。担子器は棍棒形、4小柄、長さ14~16µm、幅4~6µm、基部に1隔壁がある。胞子は長楕円形~短い円筒形、無色、平滑、メルツァー試薬(-)、長さ3.5~5µm、幅2~2.5µm。
6 Ceriporia lacerata N. Maek., Suhara & R. Kondo
日本、朝鮮、中国に分布する。主に針葉樹の枯木、まれに広葉樹の枯木に発生する
子実体は全背着生、硬く基物に着生して広がり、新鮮なとき柔らかく、脆く、乾くときに亀裂が入る。子実層托.は管孔状~歯状、孔壁は全縁~裂ける。孔口は角形、2~5(6)個/㎜。管孔面は白色~バフ色(buff)~黄土色(ochereous)~黄褐色(fulvous)。肉は白色、厚さ300µm以下。管孔層は肉と同色、厚さ3㎜以下。縁は白色、薄くなり、ときにレンズ(x
20)で繊維状、断面は類無色、膜質。菌糸は1菌糸型。肉の菌糸は直径2.5~6(7.5)µm、平滑、薄壁~わずかに厚壁(0.75µm以下)、クランプの無い隔壁がある。実質の菌糸は直径2.3~4.6(5)µm、平滑、薄壁~わずかに厚壁(0.75µm以下)、クランプの無い隔壁があり、たまに結晶状の物質で覆われる。シスチジアは無い。担子器は棍棒形、長さ11~16.5µm、幅3.5~5.5µm、基部にクランプは無く、4小柄。胞子は長楕円状楕円形~楕円形、長さ3.5~5µm、幅2~3µm、無色、薄壁、平滑、非アミロイド。
7 ウスチャコメバタケ Kneiffiella alutacea (Fr.) Julich & Stalpers クネイフィーラ属
synonym: Hydnum alutaceum Fr.
synonym: Hyphodontia alutacea (Fr.) J. Erikss.
synonym: Ceriporia mellea (Berk. & Broome) Ryvarden
synonym: Alutaceodontia alutacea (Fr.) Hjortstam & Ryvarden
子実層托は管孔状でなく、顆粒状(grandinioid)~小さい刺状(aculei)、刺の間は多孔の網状。
アジア、ヨーロッパ、北アメリカに分布する。針葉樹(ヨーロッパクロマツ、ヨーロッパモミなど)の倒木などに発生する。
子実体は全背着生、広がり、初めクリーム白色(黄白色 buff~honey)、成長して乾くと汚れた黄土色。子実層は初め羊毛状~ぬか状(grandinioid)、その後、多少、歯状で小さい(普通1㎜未満)、円錐形の刺(aculei)がまばらに5~20個/㎜2、つき、時間とともに密になり、小さい枝に蓄積し、ほとんどサンゴ状の構造になる。刺の先は触れられていない子実層の中でほうき状なる(penicillate)。刺の間の子実体形成菌糸層の子実層は多孔の網状、成熟した子実体の中では取るに足りない。縁は不明瞭に薄くなり、周辺は白粉で覆われる。菌糸は1菌糸型。菌糸は幅約3µm、明瞭、多数、分枝し、クランプがある。刺(aculei)の中心では厚壁とをもち、まばらに分枝する。子実下層では薄く、密。菌糸は頻繁にくびれる。子実下層は成熟した子実体では厚くなり、菌糸壁はコットン・ブルーで染まる。シスチジアは数が変動し、非常に少ない~多数、薄壁、突き出す又は包まれ、円筒形、鈍形、しばしば、少数又は数個のくびれがあり、
極端な場合には H. breviseta の薄壁のシスチジアのようにときどき膨れ圧縮される(torulose) 。原形質は密、コットン・ブルーで強く、染まり、普通、長さ50~75µm、幅4~7µm、ときに長くなる。担子器は初め、類棍棒形、後に円筒形に近くなり、しばしば、中央にほぼ同形のくびれがあり、長さ10~16µm、幅4~5µm、普通、4小柄。胞子は
ソーセージ形、平滑、薄壁、非アミロイド、長さ6~8µm、幅1.5 (~2) µm。分生子がいくつかの採取品にあり、子実層の基部にクランプにある錐形の分生子柄から発達し、大きさや形が変わるが、ほとんど卵形~類楕円形、基部に向かって細くなり、おおよそ長さ8~10µm、幅3~4µm、しばしば原形質の中に油滴をもつ。
8 Ceriporia spissa (Schwein. ex Fr.) Rajchenb.
日本、ヨーロッパ(カナリア諸島)、北アメリカに分布する。針葉樹、広葉樹の枯木に発生する。白色腐朽菌。
子実体は1年生、全背着生、広く、広がる。管孔面は新鮮なとき、橙色、乾くと暗色になり、赤褐色。孔口は7~9個/㎜。縁は普通、不稔、子実の部分は不稔の菌糸体の大きな区域の上にしばしばパッチ状になる。不稔の部分はピンキッシュ・バフ(pinkish
buff)、細かい綿毛がある。子実体形成菌糸層はピンキッシュ・バフ、柔らかく、厚さ1㎜より薄い。管孔層は堅さがチーズのようであり、新鮮なとき橙色、乾くと赤褐色、厚さ1㎜以下。断面からKOH中で白色の油状の滲出液を出す。菌糸は1菌糸型。子実体形成菌糸層菌糸(subicular
hyphae)は無色、薄壁、1隔壁、頻繁に分枝し、直径2~3.5µm、非結晶質の 黄色のゴム質の物資で部分的に覆われるものがある。実質の菌糸は似ているが、平行で非常に集中してつき、分離するのは困難、中程度に分枝する。シスチジアや他の子実層要素は無い。担子器は棍棒形、4小柄、長さ12~24µm、幅5~6µm、いくつかはKOH中で光を屈折し、フロキシンで染まらず、基部に1隔壁がある。胞子はソーセージ形、無色、平滑、メルツァー試薬(-)、長さ4~6µm、幅1.5~2µm。
9 Ceriporia viridans (Berk. & Broome) Donk
ヨーロッパに広く分布し、おそらく全世界に分布すると考えられている。広葉樹、まれに針葉樹の枯木に発生する。
子実体は1年生、全背着生、小さなパッチ状に広がり、厚さ3㎜以下、新鮮なとき柔らかく、乾くと脆い。縁は狭く、白色。管孔面は変化しやすく、ほとんどクリーム色~シナモン色~汚褐色(sordid
brown #502D1D)=緑色を帯びる、まれにピンク色がかった汚白色(pinkish sordid white)。孔口は円形~波状、3~5個/㎜、大きく、不規則なものもある。管孔層は厚さ4㎜以下。子実体形成菌糸層は白色~古くなるとシナモン色、厚さ1㎜以下。菌糸は1菌糸型。原菌糸は1隔壁、多数、分枝し、しばしば、直角に分枝し、実質の中で幅2~4µm。子実体形成菌糸層や縁では幅10µm、より厚壁。シスチジアや他の子実層要素は無い。担子器は棍棒形、4小柄、長さ12~15µm、幅4~6µm、基部に1隔壁がある。胞子は円筒形~ソーセージ形、無色、平滑、メルツァー試薬(-)、長さ4~6µm、幅1.5~2µm。
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