ヨーロッパで見られるLeucocoprinus bresadolaeとアメリカのLeucoagaricus americanusは同一種とされ、Leucoagaricus
americanus に統合されている。ツブカラカサタケはLeucoagaricus americanusとする説と、Leucoagaricus
meleagrisとする説があり、両者を同一とする説もある。9月にウッドチップ(草も混じったもの)上に多数、発生していた。初期には帯白色で、次の日には暗色になる。幼菌の傘は頭が切形になるものが多いが、鈍く尖るものもある。傘中央のこぶ状突起が目立ったが、発生の遅いものはほとんどわからないものもある。傘は大きさに変化が多く、小さいものもあり、直径3~12㎝。柄の長いものは15㎝、太い部分が幅約2㎝あった。傘の鱗片のパッチは小さく、柄の小鱗片は目立つものとほとんど無いものがあった。つばはリング状に暗色で残るものと、ほとんど無いものがある。ひだは離生し、密、若い小さなものは白色、大きいものはやや黄色を帯びる。帯赤色(橙赤色)のしみがあるものが多い。ひだを傷つけるとすぐに薄い帯赤色になり、古くなると褐色~暗褐色になる。肉は傷つけるとわずかに淡黄色になり、その後、帯赤色になり、古くなると褐色になる。大きなものはアメリカ産のものに傘の大きさが一致し、ヨーロッパ産に柄が似ている。学名は日本産きのこ目録に従い、Leucoagaricus
americanus とした。
【ヨーロッパ産】
傘は幅(7)10~13.5(23)[3~12]㎝、初期には円柱形~類円柱形、わずかに側面が凸面、先は切形。その後、饅頭形~広饅頭形~ほぼ扁平、しばしば、中央に低いこぶ状突起があり、乾き、初期段階(button
stage)では無毛、単層で被われ、平滑、しかし、すぐに中央が小さな微粉状小鱗片に覆われ、その後、中央の周りは大、小に壊れ、同心円状~散在したパッチ状になり、ときに縁に小さな繊維状の尖った鱗片がある。傘の中央は褐色~暗紫褐色(Mu.
5YR 4/3, 10YR 7/5)~やや淡褐色、中央の周りは紫褐色~赤ワイン褐色(vinaceous brown)~より淡色のオーカー色(ochraceous=10YR
7/6と同じ淡色)であり、傷つけたり、古くなると、淡赤ワインピンク色(pale vinaceous pink)に変わる。縁が剥がれると帯白色になり、放射状の小繊維状、溝のある縁に、内被膜のかけらをつけているものもある。ひだ数は(L=c.100
, l=0-7)、ひだは密、かなり密、離生又は隔生、幅は中位、幅18㎜以下、帯クリームホワイト、後に汚い黄色(2.5Y 8/4より淡色)、下から見ると黄色の反射があり、白色の縁と同色の小さな細かい綿毛がある。しかし、局部的に暗赤ワイン褐赤色(おそらくダメージを受けて)になる。柄は長さ9.5~18㎝、幅1.2~2㎝、下部に向けて太くなり、足部は細くなり、中空、上部は白色、下部はピンク色を帯びた褐色~触ることにより紫褐色(5
YR 8/3~5 YR 4/5)、先はやや密に細かい綿毛があり、下部はほぼ無毛~疎に長い小繊維があり、帯白色~ピンク褐色、基部は白色の類綿毛がある。つばは斜上し、カフス状の部分があり、フレアー部は幅3~11㎜、帯白色、その後、両面とも暗赤ワイン色~紫褐色になる。肉は白色~帯白色、切るとすぐに、又はやや早く局部的に、又は全体が鮮黄色又は硫黄色(c.
5Y 8/6)になり、その後、1分間又はもっとゆっくり、明赤レンガ色~褐橙色(c. 2.5YR 6/8)に変わる。その後、赤ワイン赤色~汚紫褐色になる。臭いは弱く、快く、ややチョコレートのような香りがする。味は不明瞭、わずかに渋味がある。胞子紋は不明(白色)。アンモニア溶液により傘肉やひだを青緑色~暗青色に変色する。乾燥すると赤ワインピンク色になり、数年保存すると退色する。胞子は長さ(7)8~11.5µm、幅(5.5)6~8µm、平均(7.7)9.1~9.7µm、幅(6)6.4~7µm、Q=1.2~1.6、Qav=(1.25)1.35~1.45、広楕円形~楕円形、厚壁、小孔(発芽孔)があり、偽アミロイド(デキストリノイド)、しかしそれほど強くなく、コンゴーレッド親和性、好青染性、クレーシル・ブルーの中で内壁と発芽孔の栓がピンク色になる。担子器は長さ28~39µm、幅9.5~11µm、4胞子性が主で、2胞子性が混じる。ひだの縁は不稔。縁シスチジアは豊富、長さ30~74µm、幅9~18µm、狭い棍棒形又は次第に上部で幅広くなり、急にわずかに数珠形の付属物がある又は無い。付属物はさ2~32µm、幅3~6µm、ときに幅広の小頭があり、緑褐色の内容物があり、ときにアンモニア中で暗赤色の顆粒を持つ。側シスチジアは無い。傘は小鱗片があり、直立した構成要素(菌糸)からなる。構成要素は長さ100~160µm、幅8~12µm、曲がりくねり、先に急な又は次第に尖る付属物があり、付属物は曲がり、ときに小頭があり、ときにわずかに数珠状、厚壁、アンモニア中で緑褐色、また、構成要素の下部は褐色の壁がある。結合菌糸の染料はときに、皮殻で被われる。柄表皮は平行菌糸被
、直径2~4µmの円筒形の菌糸があり(つばの上から下まで全体に)、偽シスチジアの構成要素は付属物を含んで長さ65~180µm、幅9~13µm、次第に細くなり又は急に曲がった付属物に終わる。また、結合菌糸の中の染料はアンモニア中で緑褐色。クランプ結合は無い。束生、群生する腐生菌、おがくず、ウッドチップの堆積場などに発生する。オランダでは1895年にPuttern近くで8月に発見され、2番目は1999年8~9月にアムステルダム近くで、おそらく牧草地の古木の上に生えていたものが発見された。山地や高山地帯の亜寒帯を除いてヨーロッパ全体に記録がある。しかし、普通種ではなく、熱帯起源と思われる。顕微鏡的な記述は一部は地域固有でないものや文献に従っている。この種には2つの変種があるように思われ、1つは傘表面のパッチが小さく、Brunelli(in
Schweiz. Z. Pilzk. 63:OPP p.174, 1985)によって書かれた。もう1つは傘表面がカラカサタケ属Macrolepiotaによく似ている。Gerhardt
(Gr.Pilzif.:36,1997)による。胞子サイズはごく大きく、2胞子性の担子器によるものである。傘の構成要素はReid(in Mycol.
Res.94:650. 1990)により、260µm以下の短いものが報告されている。(参考 Flora Agaricina Neerlandica-5
;M. E. Noordeloos、T. W. Kuyper、E. C. Vellinga)
【アメリカ産】
この本来都市型のきのこはおがくず堆肥、ウッドチップ、荒地のまわりや、造園地又は切り株に夏~秋に発生する。まれに林内にもみられる。大形のサイズと膨らんだ柄により、同定するのはかなり易しい。柄は擦ると黄色に変わり、その後ゆっくり赤色に変わる。傘は鱗片に覆われ、これもまた成熟すると、帯赤色に変わる。Leucoagaricus
americanusは北アメリカ東部に普通にある。ときに西部でも見られ、多分、ウッドチップとともに持ち込まれたものである。Leucoagaricus
americanusとLeucocoprinus bresadolaeは同義語である。腐生菌、単生~散生~群生し、夏~秋、ウッドチップ~造園地~荒地の近くの攪乱された地面の上や切り株の上に発生し、ときに林内の切り株の上や死木の周りにも発生する。
傘は直径3~12㎝、幼時は丸く、饅頭形~広饅頭形~ほぼ扁平になり、しばしば中央に低いこぶ状突起(central hump)があり、乾き、初期(button
stage)には無毛平滑、すぐに全体に鱗片状になり、中央は平滑。傘表面の色は初期には帯白色で、タン色~褐赤色の鱗片があって帯白色、その後、濃赤褐色の鱗片に覆われ、ピンク色を帯びた褐色(pinkish
brown)になる。触ると赤色になる。ひだは柄から離生、やや密~密、短ひだは頻繁にあり、幼時、クリームホワイト色、ピンク色を帯びたしみがあり、やがて赤褐色になる。柄は長さ4.5~12㎝、幅1~4㎝、下半分が明らかに膨れ、中空、無毛又は細かい絹毛があり、初期には帯白色、すぐに赤色~赤褐色に変色し、擦ると、すぐに黄色になり、その後、ゆっくり帯赤色に変色する。つばは上部にあり、えり状の崩れた輪は初期に白色、その後、赤色に汚れる。基部の菌糸体は白色、基部は細い白色のひもにつく。肉は全体に白色、切ると、ゆっくり黄色~橙黄色に汚れ、時間がたつと乾いて、帯赤色になる。無味、無臭。新鮮な傘表面はKOHで赤色になるが、古い傘ではしばしば無反応。アンモニアでは傘表面が緑色になると報告されている(Vellinga,
2010)。胞子紋は白色。胞子は長さ9~11µm、幅6~7µm、楕円形、非常に小さい小孔(発芽孔)があり、平滑、KOH中で無色、偽アミロイド(デキストリノイド)。縁シスチジアは長さ50~85µm、幅7.5~23µm、棍棒形又は広紡錘形、先に長さ3~25µmの1個の尖り(mucro)があり、薄壁、KOH中で帯褐色~褐色。側シスチジアは無い。傘上表皮層は平行菌糸被、構成菌糸の幅は5~13µm、KOH中で透明~帯褐色。末端の細胞は円筒形又は先細、先はやや尖るか丸い。(参考 MushroomExpert.Com)
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