きのこ図鑑
Flora of Mikawa 
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 クシノハシワタケ  櫛歯皺茸
中 国 名 灰齿脉菌 hui chi mai jun
学  名 Lopharia cinerascens (Schwein.) G. Cunn.
Lopharia mirabilis (Berk. et Broome) Pat.
分  類 坦子菌門 ハラタケ亜門 ハラタケ綱 タマチョレイタケ目(Polyporales)
科  属 タマチョレイタケ科   Polyporaceae  クシノハシワタケ属
 Lopharia mirabilisとLopharia cinerascensは異種とする説が主流であったが、最近(The Catalogue of Life, 3rd January 2011)、Lopharia cinerascens とする見解がとられるようになった。
 同種とする説
 Lopharia cinerascens 子実体は背着生、多少、捲れ上がり、厚さ1㎜以下、新鮮な時にかなり強靭。子実層托は平滑、普通、淡色~淡褐色。2菌糸型。骨格菌糸は幅3~6µm、厚壁、無色、不分岐、直線状~曲がりくねり、クランプはない。原菌糸は無色、平滑、わずかに堅い外層があり、幅2~4µm、クランプは散在するか、しばしば見られないこともある。シスチジアは大きく、長さ50~160 (200)µm、幅12~25(30) µm、厚壁、先が尖り、堅い外層で覆われ、埋め込まれるか又は坦子器より上に突き出ることも多く、無色~古くなると淡黄褐色、子実下層菌糸又は骨格菌糸から伸び、若いシスチジアは鋭く尖り、しばしば平滑である。坦子器は棍棒形、基部は細くなり、4小柄、長さ40~55µm、幅8~10µm、基部にクランプがある。胞子は円筒形、平滑、薄壁、大きさに変化があり、長さ10~16µm、幅6~7.5µm(Hjortstam, K.; Ryvarden, L. 2007)
 Lopharia cinerascens 子実体は1年生又は2年生、皮革状、固着性、大きく広がり、縁が捲れ上がり、背着生、最初は小さく円形、最終的には不規則長さ7~12㎝、幅1~4㎝になる。傘は狭い扁平形、しばしば単に縁の捲れ上がるか又は無くなることもある。表面はわら色~青白いオーカー色、しばしば瓦状に圧毛をまとい、又は、放射状に溝がある。子実層面はクリーム色~青白いオーカー色、ときにバフ色、ビロード状、しまいには深い小区画状に裂け目又は細かい結節ができ、(背着生したとき)縁は薄くなり、小繊維で覆われ、 固着し、同色。肉はクリーム色~麦わら色~鹿毛褐色、厚さ0.2~1㎜(子実層の毛を含む)、基部層と傘の毛との間に有色帯があり、基部層はよく発達して肉の大部分を占め、平行あるいは織り合わさった菌糸が密につき、基部方向へ色づき、直立した菌糸の中間層は密に詰まり、周りの裂孔はシスチジアをもつ。骨格菌糸は幅4~5µm、 内腔は毛管状、無色、裸状、わずかに分岐、無隔壁。原菌糸は幅2.5~4µm、壁は厚さ0.2µm、無色、分岐があり、隔壁があり、クランプはない。子実層は深さ70µm以下、密な柵状の坦子層であり、側糸とシスチジアがある。坦子器は長さ40~64µm、幅8~12µmの類棍棒形、4胞子性、小柄は細く、弧状、長さ8µm以下。側糸は類棍棒形、坦子器と似ているが小さい。シスチジアは中間層から出て、90µm突き出し、狭い円錐形、短く強く有色の柄があり、長さ80~180µm、幅16~26µm、粗く、結晶に覆われる。胞子は楕円形、円頭、長さ9~14µm、幅7~9µm、平滑、無色、壁の厚さ0.5µm。(Thelephoraceae of New Zealand Parts VII and VIII)
 異種とする説
 Lopharia mirabilis 子実体は1年生、背着生、まれに半背着生し棚状の傘をもち、新鮮なときに柔らかいコルク質~革質、乾くとコルク質で軽く、長さ2.5~10㎝、接合して不定形に大きくなり、長さ45㎝以下、幅25㎝以下、厚さ3㎜以下。子実層托は灰白色~黄褐色(幼時、クリーム色、その後、淡黄クリーム色~淡わら色、古くなると淡褐色を帯び、乾くと灰クリーム色~淡褐色~灰麦わら色になり、縁は新鮮なときに白色~クリーム色、古くなるとクリーム色~淡灰クリーム色になる)。子実層托は幅1㎜以下で不規則、幼時は管孔状、幅1~2㎜の多角形、0.3~1/㎜、後に不規則な孔状~歯状~部分的に迷路状になり、隔壁は薄い。子実体形成菌糸層は2層からなり、上層(基物に近い層)は淡灰色、柔らかく、フェルト状~ビロード状、下層は木材色~灰麦わら色、コルク質、2層は暗褐色の薄層で分かれる。子実体形成菌糸層は併せて厚さ0.3㎜、管孔の実質はコルク質、管孔は浅く、管孔長は1.5~2.5㎜。菌糸型は2菌糸型。原菌糸はクランプがあり、ときに隔壁があり、無色、薄壁、よく分枝する。骨格菌糸は支配的であり、厚壁、デキストリノイド、CB+、 KOHで(-)。子実層上層の菌糸は無色、厚壁、内腔が狭いかほぼ中実、クランプがなく、分枝がなく、屈曲し、織り合わされ、幅2.5~4.2µm。下層の原菌糸は無色、薄壁、よく分枝し、クランプがあり、幅1.5~3.2µm。骨格菌糸は支配的、無色、厚壁、内腔が狭いかほぼ中実、ときに分枝し、屈曲し、細かい外皮で覆われ、織り合わされ、幅3~5.5µm。暗褐色層の菌糸は下層に似ているが淡褐色、強く膠着している。 管孔の原菌糸は透明、薄壁、よく分枝し、普通、クランプがあり、ときに一重隔壁があり、幅1.5~3µm、骨格菌糸は透明。シスチジアは多数つき、大きく、先細、厚壁、内腔が狭いかほぼ中実、ときに分岐し、長さ2.8~4.6µmが結晶で覆われ、先端が尖り、アミロイド、CB(コットンブルー)+、長さ(75)80~130(150)µm、幅(16)18~35(38)µm (n = 40/2)。坦子器は棍棒形、基部にクランプがあり、4小柄、長さ30~44µm、幅11~14µm。バシジオールは子実層で支配的であり、坦子器に似ているが、小さい。胞子紋は白色。胞子は無色、惰円形、平滑、大きな油球があり、非アミロイド(IKI–)、 非デキストリノイド(indextrinoid)、非青染性CB–(acyanophilous)、長さ(8)9~12(13)µm、幅(5)5.5~7.2(8)µm、L = 10.54µm、W = 6.40µm,、Q=1.60~1.72 (n=101/3)。 Lopharia mirabilis は次のような識別可能な特徴を持つ。子実体が背着生、不規則な孔状~歯状、部分的に迷路状の子実層托、2菌糸型、骨格菌糸が好青染性(CB+)、デキストリノイド。シスチジアは大きく、アミロイド。胞子は惰円形、大きな油滴をもつ。Lopharia mirabilis はLopharia cinerascensとよく似ていて、同一種とされた (Welden, 1975)ことがある。しかし、Boidin(1900)とHjortstam と Ryvarden (1990)が2つの独立種として認めた。2つの種は次のように異なる。Lopharia mirabilis は普通、背着生であり、その子実層托は不規則な孔状~歯状、部分的に迷路状。シスチジアは頻繁に見られるが、多数ではない。胞子は基本的に円筒形であり、胞子長さの平均と幅の平均の比が1.60~1.72である。これに対し、Lopharia cinerascensは普通、半背着生、子実層托は平滑、わずかに結節状。シスチジアは多数。胞子は基本的に楕円形、胞子長さの平均と幅の平均の比が2.07~2.42である。Hjortstam と Ryvarden (1990)はLopharia mirabilisが半背着生であり、熱帯性としているが、中国のものは背着生であり、温帯や亜熱帯でも見つけられている。Welden (1975) はLopharia属の広い概念を示したが、Hjortstam と Ryvarden (1990)は狭い意味で扱っていた。現在の論文はいくつかの重要な顕微鏡的特徴を重視して後者の著者の概念(別種として扱う)に従っている。その特徴は次のとおり。2菌糸型。原菌糸にクランプがある。骨格菌糸がデキストリノイド、好青染性(CB+)。シスチジアは顕著であり、明瞭なアミロイド。大きな胞子。これらの特徴はいくつかのよく知られた属:ウスバタケ属(Irpex)、ニクハリタケ属(Steccherinum)、ウロコオクバタケ属(Basidioradulum)、メガスポロポリア属(Megasporoporia)、グラムモセレ属(Grammothele)、テレポルス属(Theleporus)に結び付ける特徴でもある。クシノハシワタケ属 Lopharia は不規則な孔状~歯状、部分的に迷路状の子実層托をもつウスバタケ属(Irpex)やウウロコオクバタケ属(Basidioradulum)に外観的に似ている。また、クシノハシワタケ属Lophariaと同様に、ウスバタケ属(Irpex)、ウウロコオクバタケ属(Basidioradulum)、 ニクハリタケ属(Steccherinum)の3属も、2菌糸型であり、外皮で覆われた骨格状のシスチジアがある。しかし、これらの3属は胞子が小さく(長さ9µm以下)、骨格菌糸がデキストリノイドでなく、シスチジアはメルツァー試薬に(-)である。(Notes on Lopharia mirabilis(Berk. et Broome) Pat. in China 2002)
クシノハシワタケ
発生時期 夏~秋
大 き さ 小型~大型 
栄養摂取 白色腐朽菌 
発生場所 広葉樹の枯木、倒木、落枝
分  布 日本、朝鮮、中国、ロシア、インド、セイロン、アフリカ(ケニア)、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランド、南北アメリカ
食  毒 不食
撮  影 静岡県 14.8.25
クシノハシワタケ2
クシノハシワタケ3
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