【類似種】
鮮やかな赤色~赤橙色を帯びた類似種は多い。
ベニヒガサHygrocybe cantharellus 夏~秋に広葉樹の林内に生え、ときにミズゴケなどコケの上に束生~散生~疎に群生する。傘は直径0.5~2(3)㎝、半球形~饅頭形~浅皿形、朱紅色(スカーレット)~橙赤色、縁が内巻きし帯黄色、橙色や淡橙色に退色する。表面は乾き又はわずかに微粘性があるが、ぬめりは無く、微細な鱗片に覆われ、鱗片は黒変しない。柄は中空、平滑、乾き又はわずかに微粘性、無毛、長さ1.5~7(9)㎝、幅1~4㎜、上下同径、ときに扁平になり、傘と同色、基部は淡色~黄白色。ひだは疎につき、垂生、隔生に近く、厚く、淡黄色、小ひだがある。肉は帯黄色~橙色、無味無臭,、変色性なし。胞子紋は白色。坦子器は2胞子性と4胞子性がある。胞子は卵形~惰円形、非アミロイド性、2胞子性の胞子は大きく、長さ9~12.5µm、幅6~7.5µm。4胞子性の胞子は小さく、長さ7~9.5µm、幅4.5~6.5µm。子実層托にシスチジアは無い。ひだ実質は平行。傘表皮は透明な成分の毛状被、構成菌糸は無色、菌糸の端は円筒形又は類紡錘形。
フタツミベニヒガサHygrocybe cantharellus (学名は同じ) 担子器が2胞子性のもの。胞子がやや大きい。
ベニヤマタケHygrocybe coccinea 傘は直径2~5㎝、半球形~饅頭形~浅皿形。背面は粘性なく、濃緋紅色~橙色~黄色。柄は中実~髄状、表面は平滑、傘と同色~淡色、下部は黄白色。ひだはやや疎につき、直生、厚く、ピンク色を帯びた橙色~橙黄色、縁が淡色。胞子は長さ6~11µm、幅4~5.5µmの楕円形。坦子器は4胞子性、2胞子を混在し、長さ60µm以下。子実層にシスチジアは無い。傘表皮は粘毛状被。
ミイノベニヤマタケ Hygrophorus marchii Bres = Hygrocybe coccinea var. marchii (Bres.)
Krieglst夏~秋に発生。傘は直径1~4.5㎝、半球形~饅頭形~扁平、中央がやや凹み、湿時粘性、朱赤色~黄色、乾くと光沢があり、縁に条線あり。柄は中空、ときに扁平になる。ひだは疎につき、淡黄色。胞子は長さ6.5~9µm、幅4~5µmの楕円形。
ヒイロガサHygrocybe punicea 夏~秋に発生する。傘は鐘形~扁平、湿時粘性、濃赤血色~橙黄色。柄は上下同径~中太(便腹状)、中空、条線がある。ひだはやや疎、脈絡あり。胞子は長さ8~11µm、幅4~6µmの長楕円形~紡錘形。可食。
チシオヒメノカサHygrocybe cruenta 春~秋に林内に発生。傘が直径0.7~2㎝、血赤色、粘性なく、平滑、縁は黄色、条線がやや見え、乾くと全面が橙色になる。柄は頂部がしばしば血赤色になる。胞子は長さ5.5~9µm、幅2.5~3.7(5)µm細い円柱形、ややくびれる。
ネッタイベニヒガサHygrocybe firma 夏~秋に発生。傘は直径2~4㎝、濃赤色、低い饅頭形、中央がやや凹む。背面は粘性なく、微細な鱗片に覆われる。ひだは疎につき、直生~垂生、帯赤色。柄は傘とほぼ同色。坦子器は2型あり、胞子も大小2型ある。
ネッタイアカヌメリガサHygrocybe hypohaemacta var. boninensis は日本では小笠原諸島に分布し、傘や柄が著しく粘る。
シュイロガサHygrocybe suzukaensis 夏~秋に林内に発生。傘は直径1.5~5㎝、饅頭形~浅杯形、中央が凹む。背面は粘性なく、平滑、真紅色、中央より黄色に退色し、縁に短い条線がある。ひだは疎、垂生、橙黄色。胞子は長さ11~15µm、幅8~9.5µmの惰円形。
アカヌマベニタケHygrocybe miniata は初夏~秋に林内の地上に発生。傘は直径0.5~2.2(4)㎝、饅頭形、後に広饅頭形~~浅皿形、ときに中心部がやや窪み、緋色~赤橙色、粘性なく、フェルト状(ふけ状)~細鱗片に覆われる。柄は長さ(2~4)4~6㎝、幅(2~4)4~7㎜、やや先太~便腹形、扁圧することもあり、中空、乾き、無毛平滑、色は傘と似ているが、ゆっくり退色し、基部は白色。ひだは直生~上生~やや垂性、疎、小ひだが多く、脈絡があり、淡黄色~黄色~橙色~帯赤色、後に黄色になる。肉は橙色~淡黄色、無味、無臭(若干の悪臭)。胞子紋は白色。胞子は長さ7~9(10)µm、幅4~5.5(6)µmの惰円形、ときに類洋ナシ形、KOH中で無色、非アミロイド。
ミズゴケノハナHygrocybe coccineocrenata (P.D. Orton) M.M. Moser 夏~秋に草地やミズゴケなど蘚類上に発生。傘は直径0.4~1㎝、低い饅頭形、中央はしばしばやや凹み、鮮赤色~朱赤色、微細な鱗片が全面につき、中央部の鱗片が黒色を帯びる。柄は長さ(1.2)2~5㎝、幅(1)1.5~3㎜、中空、平滑、傘と同色~淡橙色、基部に向かって濃色になる。ひだは疎につき、やや垂生、クリーム色~帯赤色。胞子は長さ7.5~12.5µm、幅4.5~7µmの惰円形、平滑。担子器は棍棒形。菌糸にクランプがある。以前はアカヌマベニタケHygrocybe
miniataの変種又は品種とみなされていた。
ヒメアカヌマベニタケHygrocybe coccineocrenatus (var. coccineocrenatus)ヨーロッパ、北アメリカなどに広く分布する。湿地の地上又は蘚(Sphagnum)上に単生又はやや群生する。傘は直径0.8~2.7㎝、饅頭形、縁は内巻き、その後、低饅頭形~中央が落ち込んだ扁平形、縁は小円鋸歯状、湿ったとき光沢があり、湿時、スカーレット~赤橙色、縁から橙黄色に退色し、中央付近は伏した又は突き出した褐色~帯黒色の鱗片に密に覆われ、ときに最初は表面が同色で、徐々に褐色に変わり、縁に向かって、褐色の繊維があり、短い透明な条線がある。乾くと鈍橙色又はオーカーオレンジ色で、褐色の鱗片がある。ひだはL(長ひだ)=13~23、l(短ひだ)=1~3、隔生~歯又は弓形の広く直生~垂生、厚く、幅4㎜以下、初め白色、その後、クリーム色~ロウ黄色(wax-yellow)、たまに、基部近くが白色に近い淡赤色。柄は長さ1~5㎝、幅1.5~4㎜、上下同径又は基部が細くなり、髄状~細い管状、スカーレット~赤橙色、次第に橙黄色に退色し、しばしば基部はオーカー色又はクリーム色になり、乾き、無毛。肉は表面色と同色、堅く、柄や傘の中央の肉は海綿状、淡黄色。無味無臭。胞子紋は白色。胞子は長さ(8)8.5~12.5µm、幅(5)5.5~7.5(8)µm、楕円形~長楕円形~卵状長楕円形、しばしば、豆形、ときに小さくなり(≦10%)、わずかに
狭窄する。担子器は長さ(32)35~60(67)µm、幅7.5~12µm、棍棒形~狭棍棒形、4胞子性、ときに少数が2胞子性。シスチジアは無い。
var. sphagnophila 傘の鱗片が帯黄色、最後には帯淡灰色になる。
var. coccineocrenatus f. ambigua 傘の鱗片が帯黄色又は帯赤色になり、褐色や黒色を帯びない。
オオミノアカヌマベニタケ Hygrocybe macrospora 梅雨期と秋に発生。傘は直径2~4㎝、饅頭形~浅皿形、幼時鮮紅色~橙色、全面に微細鱗片をつけ、中央から帯色する。柄は傘と同色、下部ほど淡色、基部白色。ひだは疎、白色~乳白色。胞子は長さ11~19µm、幅7.5~10µmの惰円形。
ザラツキキヤマタケHygrocybe turunda 日本、朝鮮、ヨーロッパに分布。中湿~乾燥の土壌の草地に単生又は小さく群生する。傘は直径(1)1.5~3㎝、饅頭形~すぐに低饅頭形、中央はやや凹み、たまに円鋸歯縁、湿ると弱い光沢がある。傘表面は湿時、卵黄色で中央が橙黄色、中央に微細な灰褐色~暗褐色の伏した鱗片がつき、縁に向かって放射状の帯褐色の小繊維がある。透明な縁の条線があることもある。乾くと黄土色で、褐色の鱗片と小繊維になる。ひだはL=22~26、l=1~3、やや疎、広く直生~類垂生、やや厚く、ときに便腹形、幅6㎜以下、淡黄色~鮮黄色。柄は長さ1.5~4㎝、幅2~4㎜、黄~橙色。ひだは疎につき、アーチ状に垂生、淡黄色。胞子は長さ10~15(16.5)µm、幅6~7.5µmの惰円形、赤く汚れることはない。柄は長さ3~4.8㎝、幅2.5~4㎜、上下同径又は基部に向かって細くなり、髄状~中空、橙黄色、基部から淡黄色になり、乾き、無毛。肉はややもろく、傘で厚み1.5㎜以下。無味無臭。胞子紋は白色。胞子は長さ(6.5)7~8.5(10.5)µm、幅4.5~5.5.(6)µm、楕円形~長楕円形。担子器は31~41µm、幅6~7.5µm、狭棍棒形、4(2)胞子性。シスチジアは無い。
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