きのこ図鑑
Flora of Mikawa 
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 イドタケ  井戸茸
学  名 Coniophora puteana (Schumach.) P. Karst.
分  類 坦子菌門 ハラタケ亜門 ハラタケ綱 ハラタケ亜綱 イグチ目(Boletales)
科  属 イドタケ科  Coniophoraceae  イドタケ属
 日本、ヨーロッパ、アメリカに分布。主に針葉樹、ときに広葉樹に発生する褐色腐朽菌。
 1年生又は多年生。全背着生、20㎝以下に膜状に広がり、厚さ2㎜以下、付着し、新鮮なときは柔らかく、肉質。子実層表面は平滑~疣状、折り畳まれ又はしわがあり、初め、白クリーム色、後に淡黄土灰色~紫褐色(オリーブ色を帯びた褐色)になり、やがて成熟した胞子のように暗色になる。縁は帯白色~クリーム色(帯黄色)、薄く、疎に粗い又は細かい菌糸のひもや基物の上に放射状に広がるひもがある。子実体形成菌糸層はクリーム色、薄く、柔らかい。菌糸は1菌糸型。子実体形成菌糸層の菌糸は無色、壁は薄くて硬く、ほとんど1隔壁、たまに分枝し、直径2~8µm、また、いくつかは1個、2個、多数のクランプがあり、直径11µm以下、ときに、フラスコ形に20µm以下に強く膨れる。隔壁のところに多数のクランプがある。シスチジアは無く、狭紡錘形~菌糸状の不稔の組織(シスチジオール)が担子器の間に多く、しばしば、波打ち又は捻じ曲がり、分枝又は分裂し、薄壁、直径2~4µm、長さ80µm以下。担子器は狭棍棒形~嚢形(類円柱形)、基部がわずかに膨れ、4小柄、長さ30~100 (~120)µm、幅 (6~)7~9 (~10) µm、基部に1隔壁、クランプは無い。胞子は狭楕円形~広楕円形~卵形、KOH中で淡黄褐色、厚壁、先端に浅い発芽孔があり、メルツァー試薬でデキストリノイドの反応は無又は弱、好青染性、長さ8~13(~16)µm、幅5~8(~10)µm、先に小さなくぎのような尖りがある。
イドタケ
発生時期 秋~春
大 き さ 不定形、20㎝以下
栄養摂取 褐色腐朽菌 
発生場所 針葉樹、広葉樹の枯木
分  布 日本、ヨーロッパ、アメリカ
食  毒 不食
撮  影 西尾市 16.10.26
イドタケ2
イドタケ3

 類似種

 1  カベタケ Coniophora arida (Fr.) P. Karst.
 世界に広く分布すると考えられている。ヨーロッパから報告が多い。針葉樹、広葉樹に発生し、褐色腐朽菌。1年生又は多年生。全背着生、数㎝に広がり、薄く付着し、簡単に剥がすことができる。子実層表面は平滑、淡帯黄色~褐色[又は胞子が成熟するとオリーブ褐色(olivaceous brown~Isabella color~tawny-olive~light brownish olive)]になる。縁は薄く、繊維状、白色~クリーム色~バフ色(cream buff ~ deep colonial buff~ honey yellow~ chamois)、普通、目立つ菌糸のひも又は基物の上に放射状に広がるひもがある。子実体形成菌糸層は薄く、白色~クリーム色。菌糸は1菌糸型。子実体形成菌糸層の菌糸は無色、壁は薄く、硬く、ほとんど1隔壁、直径3~5µm、たまに分枝し、また、いくつかは1個、2個、多数のクランプがあり、直径5~9.5µm(まれに12µm)。担子器は小嚢形~狭棍棒形~円柱形、長く、4小柄があり、長さ40~70(80)µm、直径7~10µm。胞子は卵形~広楕円形、帯黄色、KOH中で黄褐色に変色し、平滑、厚壁、メルツァー試薬で中間~強くデキストリノイドであり、好青染性、長さ7.5~12(14)µm、幅5.5~8µm、先にくぎ状の目立つ突起がある。シスチジアは無い。菌糸状のシスチジオールがある。
 2  Coniophora olivacea (Fr.) P. Karst. 世界に広く分布、針葉樹(ヨーロッパアカマツ、オーストリアマツ、オウシュウトウヒ)、広葉樹(ヨーロッパナラ、ヨーロッパブナ)に発生。北半球の温帯の針葉樹林に特に多い。褐色腐朽菌。
 膜質、厚さ0.4㎜以下、10㎝以下に広がる。子実層表面は平滑~シスチジアでビロード状、シスチジアが30倍のレンズで明瞭、暗オリーブ褐色~紫褐色(olive brown ~ clove brown ~ sepia~grey brownish ~ brown olivaceous )。縁は薄く、繊維状、クリーム色、幅3µm以下の菌糸のひもが放射状につく。菌糸は1菌糸型。子実体形成菌糸層は壁が薄く、硬く、無色~かすかに着色し、隔壁は1個、頻繁な分枝があり、ほとんど直径2.5~5µm、ときに8µm以下、子実体形成菌糸層の中に平行な菌糸の目立つひもがあり、子実体形成菌糸層の菌糸にはクランプは無い。淡色の縁組織の菌糸はほぼ直径3~8µm、しかしときに12µmになり、隔壁は1個、クランプは無い。シスチジアは明瞭、円柱形又は先が細くなり、薄壁~硬壁、いくつかは1隔壁を持ち、軽く~重く皮殻で被われ、粗い、不規則な結晶物質をもち、長さ100~200(~210)µm、幅8~15µm、150µm以下突き出す。担子器は棍棒形、4小柄、長さ30~60µm、幅6~8µm、基部に1隔壁があり、基部にクランプは無い。胞子は広楕円形~卵形~楕円形~先が細いパイプ形、帯黄色~帯褐色、KOH中で暗褐色、平滑、厚壁、メルツァー試薬でデキストリノイド、好青染性、長さ8~12µm、幅(4~6)5~7.5µm。
 3  Coniophora fusispora (Cooke & Ellis) Sacc. ヨーロッパに分布する。針葉樹(ブラックパイン)に発生する。
 担子器果は全背着生、広がり、クモ膜質~膜質、薄皮状、しばしば基物から緩み、厚さ0.5㎜以下。子実層托は平滑~いぼ状、橙黄色~褐色、縁はクモ膜状、帯白色。菌糸は1菌糸型。菌糸はクランプが無く、又は基部の菌糸に多少、輪生のクランプをもち、普通、幅、3~6µm、たまに15µm以下、無色又は帯褐色、菌糸のひもがしばしば有る。シスチジアは無い。菌糸状のシスチジオールがある。担子器は類円柱形、曲がりくねり、長さ60~100µm、幅8~12µm、4小柄、基部のクランプは無い。胞子は紡錘形、長さ14~20µm、幅5~8µm、平滑、厚壁、帯黄色~帯褐色、 微突頭、デキストリノイド(観察は簡単ではない)、好青染性。
 4  ナミダタケSerpula lacrymans (Wulfen) P. Karst. アジア、ヨーロッパ、北アメリカに分布。
 英名は dry rot fungus , true dry rot。乾腐病の病菌であり、乾いた木材や古い木の家を腐らせる。胞子の色がイドタケと似ていて間違えやすい。イドタケは湿った材に発生し、40~50%の含水率が必要であるといわれていが、ナミダタケは乾いた材に発生し、これをdry rot(乾腐朽)と呼ぶ。水分量が過剰なときは菌糸の先端に水滴を溜めるため、ナミダタケ(涙茸)という。
 担子器果は全背着生~半背着生、普通、厚さ5~10㎜。子実層托はしわ孔状~不規則な管孔状、若い時は黄色~橙色、成熟すると暗褐色になる。縁は目立ち、白色、綿毛状、根状菌糸束をもつ。菌糸は2菌糸型。原菌糸はクランプがあり、幅2~4µm、薄壁、子実下層の菌糸はゼラチン状の基盤に埋め込まれる。子実体形成菌糸層の菌糸はしばしば幅が広く、薄壁、子実体形成菌糸層中に少数の骨格菌糸状の菌糸がある。また、骨格菌糸もあり、根状菌糸束中では多く、厚壁、幅2~4µm、好青染性。シスチジアは無い。菌糸状のシスチジオールがある。担子器は棍棒形、長さ30~60µm、幅5~8µm、4小柄、基部にクランプがある。胞子は狭楕円形、長さ9~12µm、幅5~6µm、平滑、厚壁、帯黄色、デキストリノイドでは無く、好青染性。
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