類似種
1 カベタケ Coniophora arida (Fr.) P. Karst. 世界に広く分布すると考えられている。ヨーロッパから報告が多い。針葉樹、広葉樹に発生し、褐色腐朽菌。1年生又は多年生。全背着生、数㎝に広がり、薄く付着し、簡単に剥がすことができる。子実層表面は平滑、淡帯黄色~褐色[又は胞子が成熟するとオリーブ褐色(olivaceous brown~Isabella color~tawny-olive~light brownish olive)]になる。縁は薄く、繊維状、白色~クリーム色~バフ色(cream buff ~ deep colonial buff~ honey yellow~ chamois)、普通、目立つ菌糸のひも又は基物の上に放射状に広がるひもがある。子実体形成菌糸層は薄く、白色~クリーム色。菌糸は1菌糸型。子実体形成菌糸層の菌糸は無色、壁は薄く、硬く、ほとんど1隔壁、直径3~5µm、たまに分枝し、また、いくつかは1個、2個、多数のクランプがあり、直径5~9.5µm(まれに12µm)。担子器は小嚢形~狭棍棒形~円柱形、長く、4小柄があり、長さ40~70(80)µm、直径7~10µm。胞子は卵形~広楕円形、帯黄色、KOH中で黄褐色に変色し、平滑、厚壁、メルツァー試薬で中間~強くデキストリノイドであり、好青染性、長さ7.5~12(14)µm、幅5.5~8µm、先にくぎ状の目立つ突起がある。シスチジアは無い。菌糸状のシスチジオールがある。
2 Coniophora olivacea (Fr.) P. Karst. 世界に広く分布、針葉樹(ヨーロッパアカマツ、オーストリアマツ、オウシュウトウヒ)、広葉樹(ヨーロッパナラ、ヨーロッパブナ)に発生。北半球の温帯の針葉樹林に特に多い。褐色腐朽菌。
膜質、厚さ0.4㎜以下、10㎝以下に広がる。子実層表面は平滑~シスチジアでビロード状、シスチジアが30倍のレンズで明瞭、暗オリーブ褐色~紫褐色(olive
brown ~ clove brown ~ sepia~grey brownish ~ brown olivaceous )。縁は薄く、繊維状、クリーム色、幅3µm以下の菌糸のひもが放射状につく。菌糸は1菌糸型。子実体形成菌糸層は壁が薄く、硬く、無色~かすかに着色し、隔壁は1個、頻繁な分枝があり、ほとんど直径2.5~5µm、ときに8µm以下、子実体形成菌糸層の中に平行な菌糸の目立つひもがあり、子実体形成菌糸層の菌糸にはクランプは無い。淡色の縁組織の菌糸はほぼ直径3~8µm、しかしときに12µmになり、隔壁は1個、クランプは無い。シスチジアは明瞭、円柱形又は先が細くなり、薄壁~硬壁、いくつかは1隔壁を持ち、軽く~重く皮殻で被われ、粗い、不規則な結晶物質をもち、長さ100~200(~210)µm、幅8~15µm、150µm以下突き出す。担子器は棍棒形、4小柄、長さ30~60µm、幅6~8µm、基部に1隔壁があり、基部にクランプは無い。胞子は広楕円形~卵形~楕円形~先が細いパイプ形、帯黄色~帯褐色、KOH中で暗褐色、平滑、厚壁、メルツァー試薬でデキストリノイド、好青染性、長さ8~12µm、幅(4~6)5~7.5µm。
3 Coniophora fusispora (Cooke & Ellis) Sacc. ヨーロッパに分布する。針葉樹(ブラックパイン)に発生する。
担子器果は全背着生、広がり、クモ膜質~膜質、薄皮状、しばしば基物から緩み、厚さ0.5㎜以下。子実層托は平滑~いぼ状、橙黄色~褐色、縁はクモ膜状、帯白色。菌糸は1菌糸型。菌糸はクランプが無く、又は基部の菌糸に多少、輪生のクランプをもち、普通、幅、3~6µm、たまに15µm以下、無色又は帯褐色、菌糸のひもがしばしば有る。シスチジアは無い。菌糸状のシスチジオールがある。担子器は類円柱形、曲がりくねり、長さ60~100µm、幅8~12µm、4小柄、基部のクランプは無い。胞子は紡錘形、長さ14~20µm、幅5~8µm、平滑、厚壁、帯黄色~帯褐色、
微突頭、デキストリノイド(観察は簡単ではない)、好青染性。
4 ナミダタケSerpula lacrymans (Wulfen) P. Karst. アジア、ヨーロッパ、北アメリカに分布。
英名は dry rot fungus , true dry rot。乾腐病の病菌であり、乾いた木材や古い木の家を腐らせる。胞子の色がイドタケと似ていて間違えやすい。イドタケは湿った材に発生し、40~50%の含水率が必要であるといわれていが、ナミダタケは乾いた材に発生し、これをdry
rot(乾腐朽)と呼ぶ。水分量が過剰なときは菌糸の先端に水滴を溜めるため、ナミダタケ(涙茸)という。
担子器果は全背着生~半背着生、普通、厚さ5~10㎜。子実層托はしわ孔状~不規則な管孔状、若い時は黄色~橙色、成熟すると暗褐色になる。縁は目立ち、白色、綿毛状、根状菌糸束をもつ。菌糸は2菌糸型。原菌糸はクランプがあり、幅2~4µm、薄壁、子実下層の菌糸はゼラチン状の基盤に埋め込まれる。子実体形成菌糸層の菌糸はしばしば幅が広く、薄壁、子実体形成菌糸層中に少数の骨格菌糸状の菌糸がある。また、骨格菌糸もあり、根状菌糸束中では多く、厚壁、幅2~4µm、好青染性。シスチジアは無い。菌糸状のシスチジオールがある。担子器は棍棒形、長さ30~60µm、幅5~8µm、4小柄、基部にクランプがある。胞子は狭楕円形、長さ9~12µm、幅5~6µm、平滑、厚壁、帯黄色、デキストリノイドでは無く、好青染性。
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