きのこ図鑑
Flora of Mikawa 
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 アカエノズキンタケ  赤柄頭巾茸
英  名 jelly babies
学  名 Leotia viscosa Fr.
Leotia stipitata (Bosc.) J. Schröt.
Leotia lubrica f. aurantipes S. Imai,
分  類 子嚢菌門 チャワンタケ亜門  ズキンタケ綱 ズキンタケ亜綱 ビョウタケ目(Helotiales)
科  属 ズキンタケ科 Leotiaceae  ズキンタケ属
 アカエノズキンタケは学名がLeotia stipitataとされている。今井三子(いまいさんし)博士の1936年の論文ではLeotia lubrica .f. aurantipesとされていた。アメリカ産のLeotia stipitataは頭が緑色で柄が淡黄色又は白色であり、アオガシラズキンタケとされていたものである。現在はこれに含める見解らしい。しかし、現在のアメリカではLeotia stipitataはLeotia viscosaの異名とされているため、ここでは学名をLeotia viscosa Fr.した。アオズキンタケも学名がLeotia chlorocephala からLeotia atrovirens に統合されている。DNA解析によりアメリカ産の3種Leotia lubrica、Leotia viscosa、Leotia atrovirensは別種である事が確認されている。
【Leotia viscosaの解説】
 北アメリカに広く分布。 英名はhicken lips , green-headed jelly club 。
 落葉、土壌、朽木に単生~群生、7~9月(夏~秋)に発生する。傘は幅1.5~3㎝、半円形~饅頭形、盤はたまにつぶれ、縁は内巻、ときに分裂し、表面は湿時粘性があり、ほぼ無毛、鈍いオリーブ緑色(~緑青色、しばしばほぼ黒色になり)、下面は青白い。肉はゼラチン質。柄は長さ2.5~6㎝、幅0.5~1㎝、中空又は芯がゼラチン状、上下同径又は先が細くなり、表面は平滑、青白色~バフ色~帯黄色、緑色の顆粒の斑点がある。胞子は長さ18~25µm、幅4~6.5µm、わずかに紡錘形、外形が曲がり、端は丸く、成熟すると隔壁ができる。特徴は頭部が粘性のある帯緑色、下面は青白色。柄は帯黄色で、緑色の顆粒の斑点があり、特に柄の先に多い。Leotia lubricaに似ているが、Leotia lubricaは頭部が黄色。
【Leotia stipitataの解説】
 子実体は単生又は束生し、粘性のあるゼラチン状、高さ3~6㎝又はそれ以上。子嚢形成部(頭部)は幅1~2㎝又はそれ以上、縁は柄に向かって内巻き、等しく又は不規則に結節があり(nodulose)、凸面。子実層は濃暗緑青-緑色(deep aeruginous green)、下部は帯白色。柄は円柱形又はわずかに上向きに細くなり、白色又は淡黄白色(pale ochroleucous)、高さ2~4㎝、幅0.5~1㎝、しばしば、微細な緑色の鱗片がつく。子嚢は狭い棍棒状円柱形、長さ118~150µm、幅10µm。胞子は8個、無色、平滑、5以上の隔壁になり、長さ16~28µm、幅5~6µm。側糸は糸状、分枝し、新鮮なとき、先端が強烈な緑色。林内の豊富な腐植質や土壌に生える。色は条件が変わっても一定である。頭部が暗青緑色で、柄が淡黄色又は白色であり、他種と簡単に区別できる。
アカエノズキンタケ
アカエノズキンタケ2
アカエノズキンタケ3
発生時期
大 き さ 小型 高さ2~5㎝
栄養摂取 腐生菌 
発生場所 林内の腐葉間の地上
分  布 日本、北アメリカ
食  毒 不明
撮  影 長野県 17.9.13

  昔(1936年)の日本産のズキンタケ属の分類 Leotia lubricaの9品種

I. Plants large, larger than about 2 cm. in length.
 1. Plants usually entirely yellowish-ochraceous or sometimes tinged with light olive ..................f. typica(ズキンタケ)
 2. Pileus green ; stipe white to yellowish .........f. viscosa(アオガシラズキンタケ)=L. stipitata
 3. Pileus olivaceous or green ; stipe yellow-orange to orange f. aurantipes.(アカエノズキンタケ)
 4. Pileus dull orange-yellow; stipe greenish ......f. anthocephala (ハナズキンタケ)
 5. Plants entirely greenish or olivaceous.........f. Stevensoni (クサズキンタケ)
 6. Plants greenish or green, ramoso-lobate .......f. portentosa (ヤブレズキンタケ)
 7. Plants entirely green ..........................f. chlorosoma (アオズキンタケ)
II. Plants small, less than about 1.5 cm. in length.
 8. Plants entirely yellowish-ochraceous or ochraceous f. minima (ヒメズキンタケ)
 9. Plants entirely greenish or green .............f. atrovirens (ヒメアオズキンタケ)

  アメリカ産のズキンタケ属の分類

1 ズキンタケ Leotia lubrica (Scop.) Pers.:全体に黄色又は傘が緑色を帯びる
2 アカエノズキンタケ Leotia viscosa Fries:傘が緑色、柄が黄色
           synonym Leotia stipitata (Bosc.) J. Schröt:傘が緑色、柄が黄色~白色
 北アメリカに広く分布。 英名はhicken lips , green-headed jelly club 。
 落葉、土壌、朽木に単生~群生、7~9月(夏~秋)に発生する。傘は幅1.5~3㎝、半円形~饅頭形、盤はたまにつぶれ、縁は内巻、ときに分裂し、表面は湿時粘性があり、ほぼ無毛、鈍いオリーブ緑色(~緑青色、しばしばほぼ黒色になり)、下面は青白い。肉はゼラチン質。柄は長さ2.5~6㎝、幅0.5~1㎝、中空又は芯がゼラチン状、上下同径又は先が細くなり、表面は平滑、青白色~バフ色~帯黄色、緑色の顆粒の斑点がある。胞子は長さ18~25µm、幅4~6.5µm、わずかに紡錘形、外形が曲がり、端は丸く、成熟すると隔壁ができる。特徴は頭部が粘性のある帯緑色、下面は青白色。柄は帯黄色で、緑色の顆粒の斑点があり、特に柄の先に多い。Leotia lubricaに似ているが、Leotia lubricaは頭部が黄色。
3 アオズキンタケ Leotia atrovirens Pers. :全体に緑色
           synonym  Leotia chlorocephala Schwein
 ※ Leotia lubrica、Leotia stipitata、Leotia lubrica はよく似ていて、品種とされたこともあるが、DNA解析により、1系統種ではなく、多系統であることが、確認されている。また、Leotia stipitataはLeotia viscosaに、Leotia chlorocephalaはLeotia atrovirensに統合されている(2004)。

  現在の日本産のズキンタケ属の分類 5種と5品種

 1  アオズキンタケ (アオガシラズキンタケ) Leotia chlorocephala Schwein. 
                           syn.  Leotia lubrica f. chlorosoma IMAI
                           syn.  Leotia atrovirens Pers.
 日本、北アメリカ、中央アメリカに分布。
 子実体は単生又は束生し、類ゼラチン状、全体に緑色、高さ1~5㎝。子嚢形成部(頭部)は半球形、凸面形、縁は内巻き、鈍形、子実層は平滑又はうねがあり、縁はしばしば分裂又は結節があり、黄緑色(pea-green)~暗緑青色(aeruginous )幅2~10㎜。柄は円柱形、硬く、中間の層は緑色、表面は密に鱗状又はふけ状で、緑色の顆粒があり、高さ1~4.5㎝、幅2~4㎜、乾くと少し色が変わる。子嚢は狭い棍棒形、長さ125~150µm、幅10~12µm。胞子は8個、無色、かすかに帯緑色、狭楕円形、約5隔壁になり、長さ18~20µm、幅5~6µm。側糸は糸状、分枝し、先端が緑色。
 これは全体に緑色、光沢が無、茎はふけ状。頭が緑色のLeotia stipitata と混同されやすい。林内の砂質土壌又は峡谷のコケの中に生える。
 1-1 ヒメアオズキンタケ Leotia chlorocephala Schwein. f. atrovirens ( S. Imai) Y.Otani (ined.)
   高さが約1.5㎝より小さいもの
 2  アオガシラズキンタケ (クサズキンタケ) Leotia kawamurae (S. Imai) Y.Otani (ined.)
                   syn.  Leotia lubrica f. kawamurae S. Imai (1941)
 3  ズキンタケ(ハナズキンタケ、 トワダズキンタケ) Leotia lubrica (Scop.) Pers. 日本、ヨーロッパ、北アメリカに分布。
 子実体は普通密に束生する。多少、粘性のあるゼラチン状、黄土黄色、しばしば緑色又はオリーブ色を帯びる。とくに古くなり又は乾くと変色が多い。高さ3~6㎝、又はそれ以上。子嚢形成部(頭部)は傘状、上部は凸面、表面はしばしば不規則なうねがあり、縁は反曲し、しわ又は結節があり(nodulose)、幅1~1.5㎝。柄は円柱形又はやや扁平、普通、わずかに、上部が細くなり、隣接したものは下部が合着し、太さは下部で約1㎝、上部で約0.5㎝、微細な鱗片があり、ときに、先天的な緑色顆粒がある。子嚢は狭い棍棒形、長さ130~160µm、幅10~12µm。胞子は8個、無色、平滑、類紡錘形、長さ18~28µm、幅5~6µm、5~7隔壁になる。側糸は糸状、分枝し、無色。
 この種は可食といわれる。林内の豊富な腐植質又は砂質土壌に生える。
 3-1オオズキンタケ Leotia lubrica (Scop.) Pers. f. gigantea S. Imai
 3-2 ヒメズキンタケ Leotia lubrica (Scop.) Pers. f. minima S. Imai
 3-3 キズキンタケ Leotia lubrica (Scop.) Pers. f. ochracea S. Imai
 4  ヤブレズキンタケ Leotia portentosa (S. Imai & Minakata ) F. L. Tai
            syn. Leotia lubrica f. portentosa IMAI et MINAK
  中国、ブラジル、南極に分布する。日本はZipcodeZooの分布域に入っていない。
 子実体は密に群生又は叢生し、ときに単生、柄があり、粘性のあるゼラチン状、長さ1~7㎝又はそれ以上。子嚢形成部(頭部)は傘状、上部は凸面、表面は不規則なうねがあり、ごくまれに分裂し、鈍形で縁にしわがある。色は様々で、黄色がかった黄土色~黄土色~帯緑色~緑色、幅は0.3~1.5㎝又はそれ以上。柄は円柱形又はやや扁平、普通上がほそくなり、しばしば隣と合着し、太さは下部で約1㎝、長さ6㎝以下又はそれ以上、微細な鱗片があり、色は様々、白色~帯黄色~黄色がかった黄土色~黄土色~オレンジ色~オリーブ色~帯緑色~緑色。子嚢は狭い棍棒形、先が丸く、わずかに細くなり、ヨー素で青色にならず、長さ130~160µm、幅10~12µm。8胞子。胞子は上部で2列、下部で1列、無色、平滑、円柱状長楕円形~紡錘形、先は鈍形~錐形、真っすぐ又は曲がり、初め、連続し、後に多くの油滴があり、やがて、3~5~7隔壁になり、長さ18~28µm、幅5~6µm。側糸は糸状、分枝し、先は棍棒形又は梨状に太くなり、内容物は無色又は帯緑色。
 5  アカズキンタケ Leotia rutilans (S. Imai & Minakata) S. Imai = Cudoniella rutilans S. Imai & Minakata
 6  アカエノズキンタケ Leotia stipitata (Bosc.) J. Schröt 
                syn. Leotia viscosa Fries
 日本、北アメリカ.に分布。
 子実体は単生又は束生し、粘性のあるゼラチン状、高さ3~6㎝又はそれ以上。子嚢形成部(頭部)は幅1~2㎝又はそれ以上、縁は柄に向かって内巻き、等しく又は不規則に結節があり(nodulose)、凸面。子実層は濃暗緑青-緑色(deep aeruginous green)、下部は帯白色。柄は円柱形又はわずかに上向きに細くなり、白色又は淡黄白色(pale ochroleucous)、高さ2~4㎝、幅0.5~1㎝、しばしば、微細な緑色の鱗片がつく。子嚢は狭い棍棒状円柱形、長さ118~150µm、幅10µm。胞子は8個、無色、平滑、5以上の隔壁になり、長さ16~28µm、幅5~6µm。側糸は糸状、分枝し、新鮮なとき、先端が強烈な緑色。
 林内の豊富な腐植質や土壌に生える。色は条件が変わっても一定である。頭部が暗青緑色で、柄が淡黄色又は白色であり、他種と簡単に区別できる。
 6-1 ヒメアカエノズキンタケ Leotia stipitata (Bosc.) J. Schröt. f. parviaurantipes (S. Imai) Y.Otani (ined.)

  参考

1) S. 1MAj-STUDIES ON TILE GEOGLOSSACEAE OF JAPAN. 11. 9(Jan. 20, 1936.)
  日本産のズキンタケ属の分類(1936年)
  https://www.jstage.jst.go.jp/article/jplantres1887/50/589/50_589_9/_pdf
2)Illustrations of Fungi: V - Jstor
 北アメリカ産3種
 Leotia lubrica (Scop.) Pers.
 Leotia stipitata (Bosc.) J. Schröt.
 Leotia chlorocephala
 http://www.jstor.org/stable/3753625
3)Leotia - ZipcodeZoo
 Leotia
 世界の分布が地図で示される。
 http://zipcodezoo.com/index.php/Leotia
4) Leotia lubrica (MushroomExpert.Com)
 Leotia lubrica by Michael Kuo
 http://www.mushroomexpert.com/leotia_lubrica.html
5) The Fungi of California
 Leotia viscosa Fries
 http://www.mykoweb.com/CAF/species/Leotia_viscosa.html
6)Mycological Progress August 2004, Volume 3, Issue 3, pp 237-246
 Phylogenetic relationships among species of Leotia (Leotiales) based on ITS and RPB2 sequences
 L. stipitata (Bosc) J. Schröt. (now named Leotia viscosa Fr.)
 L. chlorocephala Schw.:Fr. (now called L. atrovirens Pers.: Fr.)
 L. viscosa, L. lubrica , L. atrovirens は多系統種(polyphyletic species)である。
 https://link.springer.com/article/10.1007/s11557-006-0094-8
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