トウカイタンポポ 東海蒲公英
Flora of Mikawa
キク科 Asteraceae タンポポ属
別 名 | ヒロハタンポポ |
学 名 |
Taraxacum platycarpum Dahlst. var. longeappendiculatum (Nakai) Morita synonym Taraxacum longeappendiculatum Nakai |
花 期 | 4~5月 |
高 さ | 10~30㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 道端、草地 |
分 布 | 在来種(日本固有種) 本州(千葉県~東海地方) |
撮 影 | 岡崎市 05.4.3 |
外来種のセイヨウタンポポは、総苞外片が蕾の時から反曲して白っぽく、総苞内片の緑が濃く、黒っぽいことで区別できる。しかし、セイヨウタンポポと在来タンポポとの交雑がおき、純粋なセイヨウタンポポは少ないとの報告もある。反曲した総苞片の先にこぶ状の突起があるものなども確認されている。外観だけの判別では難しいのかもしれない。
三河地域でトウカイタンポポを外観によって見分ける簡単な方法は頭花が黄色で、総苞が濃緑色でなく、総苞外片、内片の角状突起が大きいことである。あてはまらないものはより詳しい観察が必要(タンポポ詳細参照)。
タンポポ属
family Asteraceae - genus Taraxacum多年草、ロゼットになり、直根をもち、根の頭はときに薄皮をもつ(乾いた褐色の前年から残った葉柄の残片により覆われる)。茎は1本~ときに数本、中空、葉が無く(scape)、分枝せず、まれに、1~3枝をもつ。密毛はクモ毛。葉と花茎はときに低いこぶ又はうねの上に毛がある。小花の筒上の毛は真っすぐで単純。葉は全縁又は様々に分裂し、逆向き羽状分裂(runcinate)~羽状全裂。頭花は上向きに直立し、花後に下向きになる。総苞は2列の目立つ総苞片をもつ。総苞片はしばしば先に角状の突起又は角があるものがある。外総苞片は長さや形が様々(覆瓦状)又はほとんど均一(覆瓦状でない)、普通、大体は内総苞片より小さく、伏せ~後屈し、無毛~縁毛があるか又は表面にクモ毛をもち、淡色~帯白色の縁が無~有。花托は裸であり、無毛又はまばらにクモ毛がある。小花は黄色、白色、白黄色、淡~濃ピンク色、橙色、褐橙色、又は赤褐色。舌部は平ら、内巻、又は筒状、内面の表皮細胞キューティクルは±ドーム形、横向きの条線がある。痩果は帯白色、わら褐色、オーカー色、帯赤色、赤褐色、濃褐色、又は±黒色、普通、果体は狭いが等色の円錐体cone(果頭)と先に嘴(冠毛托)をもつが、ときに円錐体が不明瞭又は発達しない。果体は上部(円錐体の下)が小刺や小さな鱗片で覆われ、しばしば下部にこぶが(いぼ)あり、又は完全~ほとんど平滑、又は小刺とこぶ(いぼ)が全体にあり、円錐体に向かって急に又は次第に狭くなる(円錐体が発達するとき)。嘴は普通、痩果の円錐体を含んで果体より長く、又は短く、ときに全く発達せず、細い又は太い。冠毛は多数のザラつく剛毛をもち、白色、帯黄色、又は薄赤褐色。この植物は単為生殖=無融合生殖(agamospermous reproduction)又は有性生殖、自家不和合性、又はまれに自家和合性である。x=8(2倍体から多倍体)。2倍体は常に、有性、4倍帯は普通、単為生殖(単為生殖は4倍体の有性種が3種知られている)。他の多媒体は単為生殖。
世界に約2500種以上があり、主に北半球の極地と温帯に分布し、分布の中心はユーラシアの山地にあり、少数の種が南半球の温帯に分布する。(Flora of China)
【Flora of North Americaの解説】
多年草、高さ (10~)30~400(~600+ 果時に)㎝。 (有性生殖及び単為生殖 apomictic)、直根又は分枝するてい幹をもつ。茎は (1~10+本) 、直立又は斜上し、 花茎状(円柱形)、単純 (中空)、無毛又は下部~頭まで絨毛がある。葉は根生, (ロゼットにつき、直立又は開出~水平に近く)。葉柄は有又は無。葉身は長円形~倒卵形~倒披針形~線状倒披針形、逆向き羽状分裂(runcinate)又は頭大羽状分裂(lyrate)(基部は楔形~±漸尖形)、縁は類全縁~歯状~羽状分裂(先は円形又は鈍形~鋭形~尖鋭形、面は無毛~ほぼ無毛~まばらに絨毛~長軟毛~小絨毛がある)。頭花は単生。副咢(calyculi)は宿存 し、(6~)8~18(~20)個、広卵形~披針形の小苞が(1~)2~3列につき、目立ち (開花の前は伏せ、果時に反曲~開出~下屈する)、不等長(総苞片より短く、縁は薄膜質、縁毛は有又は無、先は角状突起(corniculate)、カロース=肥厚(callose)又はどちらも無い)。総苞は鐘形~円筒状鐘形~つぼ形~円筒形、直径8~40㎜。総苞片は7~25個、2(~3)列、蕾中は下部が弱く密着し(縁が折り重なり)、後に分離し、花時に直立し(ときにわずかに広がり)、果実が熟すと(開花が終わると)閉じ、散乱時に後屈し(完全に冠毛を広げ、痩果をさらす)、±等長、草質、無毛。内総苞片は披針形~線状披針形、縁は薄膜質、縁毛は有又は無、先は尖鋭形、ときに角状突起があり(corniculate)、カロース=肥厚(callose)又は平ら。花托は±平ら、パレアは無い。小花は(15~)20~150個つき、花冠は黄色、ときに、帯緑色、まれに、クリーム色又は淡ピンク色 [白色]、しばしば、外面には帯紫色又は灰色の縞模様があり(葯は黄色又は黄クリーム色、ときに暗色、花柱は黄色又は帯緑色、ときに帯灰色又は帯黒色)。痩果はわら色~オリーブ色、褐色~赤色~淡灰色~暗灰色、果体は倒披針形~倒卵形、±偏平(上部は±膨れ、嘴を支える別個の円錐形又は円柱形の”円錐体 コーンcones)を形成し[コーンが無く]、嘴があり[嘴が無く]、うねは4~12(~15)本、面には微細突起があり(少なくとも上部にあり) [平滑に近く]、無毛。冠毛は宿存し、ひげ状の剛毛が1列につく。x=8。
世界に種は60(~2000)種あり、北アメリカ、南アメリカ、ユーラシアに分布する。世界中に広がるの雑草である。(例 セイヨウタンポポTaraxacum officinale , アカミタンポポT. erythrospermum)
※ Flora of North Americaの解説では外総苞片を副咢(calyculi)としている。
日本で見られるタンポポ
1 section Mongolica(モウコタンポポ節):東アジアの低地に分布する暖温帯の種群
T. albidum Dahlst. シロバナタンポポ 2n=40 単為生殖 固有種T. ceratolepis Kitam. ケンサキタンポポ 2n=(24) , 32 , (40) 単為生殖 固有種
T. denudatum H. Koidz. オクウスギタンポポ 2n=40 単為生殖 固有種
var. arakii ヤマザトタンポポ 2n=(16) , 32
T. hideoi Nakai ex H. Koidz. キビシロタンポポ 2n=32 単為生殖 固有種T. japonicum Koidz. カンサイタンポポ 2n=16 有性生殖
T. kiushianum H. Koidz. ツクシタンポポ 2n=32 単為生殖 固有種
T. mongolicum Hand.-Mazz. モウコタンポポ 2n=24,32 単為生殖
T. pectinatum Kitam. クシバタンポポ 2n=32 単為生殖 固有種
T. platycarpum Dahlst. カントウタンポポ 2n=16 有性生殖 固有種
var. elatum (Kitam.) Morita セイタカタンポポ 2n=16 有性生殖 固有種
var. longe-appendiculatum (Nakai) Morita. トウカイタンポポ 2n=16 有性生殖 固有種
subsp. hondoense (Nakai ex H. Koidz.) Morita. シナノタンポポ 2n=16 有性生殖 固有種
subsp. maruyamanum (Kitam.) Morita. オキタンポポ 2n=16 有性生殖 固有種
2 section Borealia(ミヤマタンポポ節):北半球の北部に広く分布する寒帯~冷帯の種群
T. alpicola Kitam. ミヤマタンポポ 2n=24,64 単為生殖 固有種T. brachyphyllum H.Koidz.(T. venustum H. Koidz.) エゾタンポポ 2n=24,32,40 単為生殖
T. kuzakaiense Kitam. クザカイタンポポT. ohirense Watan. et Morita. オオヒラタンポポ 2n=16 有性生殖 固有種
T. shikotanense Kitam. シコタンタンポポ 2n=64 単為生殖 固有種
T. trigonolobum Dahlst. クモマタンポポ 2n=32 単為生殖T yatsugatakense H.Koidz. ヤツガタケタンポポ 2n=24 単為生殖 固有種
T. yuparenses H. Koidz. タカネタンポポ(ユウバリタンポポ) 2n=16 有性生殖 固有種
3 section RuderaliaT. officinale Weber ex F.H. Wigg. セイヨウタンポポ 2n=16,24,32,48 単為生殖
4 section Erythrosperma
T. laevigatum (Willd.) DC. アカミタンポポ 2n=16,24,32 単為生殖
タンポポ属の主な種と園芸品種
1 Taraxacum albidum Dahlst. シロバナタンポポ 白花蒲公英日本固有種(本州の関東地方以西、四国、九州)。西日本が分布の中心。
多年草、高さ30~50㎝。葉は根生し、ロゼットになり、5~15個つき、斜上~類直立し、長さ15~20㎝×幅3~7㎝、羽状中裂~深裂、葉の緑色も薄く、淡緑色~緑色、葉脈は紫色を帯びず、白色。頭花は直径3.5~4.5㎝、白色。総苞は花時に長さ約2㎝。総苞外片及び総苞内片にはトウカイタンポポのような大きな角状突起があり、総苞外片は卵状長楕円形~卵形、内総苞片の長さの約1/2、開花期~結実期に外側に反り返る。痩果は色がセイヨウタンポポに似て、灰褐色、長楕円形、セイヨウタンポポより大きく、長さ4~6㎜×1.3~1.7㎜。5倍体 2n=40。花期は4~5月。在来種ではめずらしく、セイヨウタンポポのように単為生殖する(agamosperm)。カンサイタンポポとケイリンシロタンポポの交雑種と確認されている。
1-1 Taraxacum albidum var. igaense H. Koidz. イガウスギタンポポ 伊賀薄黄蒲公英
三重県、愛知県に分布。キビシロタンポポ(T. hideoi)と同一とされた。1-2 Taraxacum albidum forma sulfurcum(H.Koidz.)Kitam. キバナシロタンポポ 黄花白蒲公英
シロバナタンポポ集団の中に見られる黄花のタンポポ2 Taraxacum alpicola Kitam. ミヤマタンポポ 深山蒲公英
日本固有種(本州の高山帯)。別名はタテヤマタンポポ。高山帯の岩礫地や草地に生える。
多年草。高さ10~20㎝。葉は根生し、多数つき、長さ10~20(~30)㎝幅3~6㎝、倒披針形、先は円形、基部は次第に狭くなり、狭い翼になって葉柄に続き、葉縁は浅裂~中裂する。 頭花は単生、濃黄色、直径4~5㎝。総苞は黒緑色で粉白を帯び、花時に長さ1.5~1.8㎝×直径2.5㎝。外総苞外は長さ約6㎜、長円状披針形、先は鋭形、内総苞片の長さの半分かやや長く、外片が反曲するものが多く、角状突起は目立たない。舌状花の筒部は淡色、長さ約5㎜。 痩果は長さ3.5~4㎜、狭卵形、淡褐色、先の嘴は長さ8~9㎜。冠毛は白色、長さ約8㎜。主に3倍体2n=24 , 64。
2-1 Taraxacum alpicola Kitam. var. shiroumense (H.Koidz.) Kitam. シロウマタンポポ 白馬蒲公英
北アルプス(白馬岳)、南アルプス(荒川岳、赤石岳)に分布。総苞外片、総苞外内片ともに先端に角状突起があり、葉は切れ込みが深い。花期は7~8月。3 Taraxacum brachyphyllum H.Koidz. エゾタンポポ 蝦夷蒲公英
synonym Taraxacum venustum H.Koidz. [YList]
synonym Taraxacum shinanense H.Koidz.
synonym Taraxacum hondoense auct. non Nakai ex H.Koidz.
synonym Taraxacum otagirianum Koidz. ex Kitam. オダサムタンポポ 小田寒蒲公英
日本(北海道、本州東北地方~関東地方北部~中部地方)、朝鮮、ロシア原産。日当たりのよい山野や道端に生える。標高の高いところにも生える。よく似た2倍体はシナノタンポポ(T. platycarpum subsp. hondoense)。YListではTaraxacum venustum H.Koidz. としているが、Kewscienceではヨーロッパ原産のTaraxacum venustum Dahlst.(1907)を認め、Taraxacum brachyphyllum H.Koidz.としている。
多年草。花茎は花時に高さ10~30㎝、果時にはさらに伸び、上部に白毛が密生する。 葉はやや質が厚く、倒披針形、長さ約30㎝以下、羽状深裂~全縁まで変化が多い。 頭花は大きく、直径3.5~6㎝。舌状小花は多数つき、花冠は濃黄色、まれに淡黄白色(ウスジロエゾタンポポ)、先に5歯がある。花粉は大きさが不均一。総苞は花時に長さ1.5~2㎝。外総苞片、内総苞片ともに角状突起がほとんどない。 外総苞片は内総苞片に密着して反り返らず、内総苞片の長さの1/2又は以下、総苞内片より幅が広く、卵形~広卵形、先は鋭形、縁毛があり、角状突起は普通、無く、まれにあっても小さい。総苞内片は細く、背面がときに黒色を帯びる。 痩果は褐色、果体は狭倒卵形、長さ4~5㎜×幅1.2㎜。冠毛は長さ5~8㎜。2n=24,32,40 3~5倍体。花期は3~5月。Bot. Mag. (Tokyo) 47: 109 (1933)
4 Taraxacum ceratophorum (Ledeb.) DC. カンチヒメタンポポ 寒地姫蒲公英
synonym Leontodon ceratophorus Ledeb.synonym Taraxacum lacerum Greene microspecie
synonym Taraxacum officinale subsp. ceratophorum Schinz & R. Keller
synonym Taraxacum sachalinense Kitam. カラフトタンポポ
synonym Taraxacum chamissonis Greene 2n=32
ロシア、北アメリカ原産。英名はhorned dandelion , rough dandelion 。
※Kewscienceではカラフトタンポポやクモマタンポポをsynonym としている。
高さ (1~)6~50㎝。直根は分枝する。茎は1~10+本、斜上~直立、±帯紫色 (少なくとも下部は)、若い時は密に絨毛があり、無毛になり、下部はまばらに絨毛~ほぼ無毛~無毛、上部は±密に絨毛がある。葉は±10個つき、水平~開出い、ときに直立、無柄又は葉柄があり、±広い翼がある(基部は葉身よりわずかに狭くなる)。葉身は狭倒披針形~線状倒披針形~線状長円形(しばしば±逆向き羽状分裂)、長さ4~30㎝×幅(0.4~)0.5~5㎝、基部は楔形~漸尖形、縁は±深く分裂~切り裂かれ、不規則~規則的に、しばしば歯状、単に小歯状、又はほぼ全縁、裂片は後ろ向き、真っすぐ、又は前向き、デルタ形~三角形、鋭形~尖鋭形、裂片に歯が1~2個、しばしば、切れ込みにはより多く、又はほとんどあり、先は鈍形~ときに鋭形、ときに微突形、面は無毛又はほぼ無毛~ごくまばらに絨毛がある。副咢(calyculi)は12~16(~20)個、伏し~開出し、淡色の卵形~楕円形~槍状卵形~披針形(ときに薄い)小苞であり、2~3列につき、長さ5~12㎜×幅(0.9~)1.5~5㎜、縁は透明、白色又は帯紫色、薄膜質、先は尾状~尖鋭形、±強く角状突起があり、硬くなり、又はたまに角が無いこともあり(まれに全て無く)、先端は鈍形~円形、薄膜質、微細不整歯がある。総苞は暗緑色、ときに±粉白を帯び、鐘形~±半球形、長さ (5~)8~19(~21)㎜。総苞片は(10~)12~14(~17)個、2列につき、披針形~卵状披針形(内総苞片)、幅1.5~4.5㎜、縁は薄膜質又は薄膜質でなく(外総苞片)、内総苞片は下部1/2で広く薄膜質、先に普通、角状突起があり、たまに角状突起が無く、角状突起はたまに頂点を超え、先端は白色~帯紫色、薄膜質、微細不整歯がある。小花は40~85+個、花冠は黄色、乾くとクリーム色~帯白色(外側の花弁の外面は乾くと灰色又は紫色の縞模様があり)長さ10~22㎜×幅1~2.8㎜。痩果はオリーブ色~オリーブ褐色、タン色~オリーブタン色、褐色~赤褐色、灰褐色、又はわら色、果体は倒披針形~倒卵形、幅2.5~4(~5)㎜、コーン(cones)は円錐形~狭円錐形~広円柱形、長さ0.5~0.9㎜、嘴は細く長さ 4.5~14㎜、うねは5本、大きく (10~15本の狭いうねをもつ)、面は下部がこぶ状又はときに平滑に近くなり(普通、すくなくともこぶがある)、上部の1/3~1/2に微歯突起があり、ときに全体に微細突起がある。冠毛は白色~クリーム色、長さ5~7.5(~8)㎜。2n=16, [24], 32, 40, 48。
5 Taraxacum coreanum Nakai ケイリンシロタンポポ
synonym Taraxacum pseudoalbidum Kitagawa
朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は朝鲜蒲公英 chao xian pu gong ying。別名はコウライシロタンポポ)。シロバナタンポポと混同されやすい。KewscienceやFlora of Chinaでは日本は分布域に入っていない。日本でツクシシロタンポポといわれている種がケイリンシロタンポポのクローンの1つではないかといわれている。
シロバナタンポポの外総苞片は総苞の2分の1ほどであるのに対し、ツクシシロタンポポは約4分の3、ケイリンシロタンポポは3分の2である。シロバナタンポポの外総苞片は幅広く、ツクシシロタンポポは細長い、小角突起はツクシシロタンポポが大きい傾向があるが、ケイリンシロタンポポの外総苞片の小角突起は変異が大きく、シロバナタンポポとの間に有意な差が無い。
多年草、高さ20~25㎝。葉柄は帯紫色又は±緑色、上部は白褐色のクモ毛があり、 ±翼がある。葉身は緑色、しばしば±紫色を帯び、±線状倒披針形、長さ13~20㎝×幅(2~)2.5~3(~5)㎝、まばらにクモ毛があり、深く羽状全裂し、側裂片は(3 ~)4~6個、普通、線状デルタ形~線状三角形、開出し、外側の葉では縁が類全縁~小さな歯があるが、中間と内側の葉では歯と、しばしば小裂片がある。小裂片もまた、開出し、縁にはときに歯があり、先は鋭形~舌形、裂片間には翼があり、縁は歯状~小裂片状、又はまれに全縁。頂裂片は平らな菱形~平らな三角形、基部の裂片は±三角形、鋭形。花茎は褐緑色~帯紫色、葉の長さとほぼ等しく、下部にクモ毛があり、頭花の下にはクモ毛状の羊毛状毛が密にある。頭花は幅2.5~3.5㎝。総苞は薄緑色、幅0.9~1.1㎝、基部は狭く丸くなる。外総苞はは10~12個、薄緑色~緑色、±覆瓦状ではなく、±披針形、狭卵形、又はときに卵形。最も外側の総苞片は長さ7~9㎜×幅2.2~3.6㎜、内総苞片の長さの1/2~3/5、緩く伏せ、脈が目立ち、縁は非常に目立つのではなく、幅0.5㎜以下、±膜質、ときに先付近がピンク色になり、縁に縁毛~先端部にまばらに縁毛あり、先付近に長さ約1㎜の暗色の角状突起(horn)をもつ。内総苞片は長さ1.3~1.6㎝、先にはカロース(callose)~角状突起(corniculate)がある。舌状花は白色又はごく淡色の白黄色。外側の花弁は外側が±帯ピンク色、両面に紫灰色の縞がある。内側の花弁は先に帯黒色の歯をもつ。柱頭は濃灰緑色。葯は花粉を生じ、花粉粒は大きさが不規則。痩果は±わら色の褐色~薄褐色、長さ5.6~6㎜×幅1.4~1.6㎜、果体は下部にこぶがあるか又は小鱗片があり、上部の1/5~1/3に密に小鱗片と小刺があり、ほぼ次第に狭くなり、類円筒形の長さ1~1.4㎜の円錐体になる。嘴は長さ8~9㎜。冠毛は帯黄色、長さ約7㎜。花期は春~夏。単為生殖。4倍体 2n= 32。(Flora of China)
6 Taraxacum denudatum H.Koidz. オクウスギタンポポ 奥薄黄蒲公英
synonym Taraxacum sinanense H.Koidz. ウスギタンポポ
日本固有種(東北地方~関東地方北部)。別名はナンブシロタンポポ。
高さ20~25㎝。 葉は倒披針形~披針形、長さ20~30㎝、羽状深裂~中裂。 頭花は花茎の先に単生、直径約4㎝、淡黄色、中心部は黄色。外総苞片は卵形~広卵形、長さは内総苞片の約1/2、ほとんど密着し、反り返らず、先が赤味を帯びることも多く、角状突起は小さい。痩果は淡褐色~黒褐色。花期は4~5月。5倍体。
ウスギタンポポTaraxacum shinaenseはナンブシロタンポポと同一種の5倍体で西日本に分布する薄黄色のキビシロタンポポ(T.hideoi)とシナノタンポポ(T.platycarpum ssp.hondoense)との交雑種と推定されている。
6-1 Taraxacum denudatum H.Koidz. var. arakii (Kitam.) Seriz. ヤマザトタンポポ 山里蒲公英
synonym Taraxacum arakii Kitam ヤマザトタンポポsynonym Taraxacum ceratolepis Kitam. ケンサキタンポポ (角状突起2㎜以上)
日本の本州(愛知県~岡山県)に分布。多年生草本、根は深く地中に伸びる。葉はロゼット状に根生し、線状楕円形~倒披針形、長さ12~30㎝、幅 2.5~5㎝、先端は鋭頭~鈍頭、基部は漸尖し柄状になり、普通、羽状に浅~深裂、裂片は斜上することも、開出して多少逆向きになることもある。花茎は多数つき、初めはクモ毛があり、上部には密毛があり、花時には長さ10~25cm 、普通、葉と同長か又は短く、花後に伸長して長さ20~40㎝。総苞は大きく、花時に長さ15~20㎜。総苞外片は密着し、長楕円状卵形~卵形、内片の長さの1/2~1/3、縁は多少紅色を帯び、先端の角状突起はほとんどないもの(1㎜以下:狭義のヤマザトタンポポ)から3㎜(2㎜以上:ケンサキタンポポ)に達するものまであり、縁には密に綿毛があり、中脈は緑色。総苞内片は線状披針形、緑色、小角状突起はなく、上部は紫黒色。花弁はレモン色に近い淡黄色である。痩果は淡黄褐色~帯褐色~灰褐色~黒褐色、果体の長さは約5㎜、上部に刺状突起があり、下部にはまばらにこぶ状突起がある。長い嘴の先に冠毛がつく。花期は4月。2n=32。
近畿地方に多いケンサキタンポポとヤマザトタンポポは外総苞片の角状突起の大きさと痩果の色で区別していたが、変化が連続しているため同種とされるようになった。
7 Taraxacum erythrospermum Andrz. ex Besser アカミタンポポ 赤実蒲公英
synonym Taraxacum officinale var. erythrospermum (Besser) Babsynonym Taraxacum laevigatum (Willd.) DC.
synonym Taraxacum officinale var. laevigatum (Willd.) Bouvier
ヨーロッパ原産。英名はrock dandelion ,red-seeded dandelion 。ヨーロッパからアジアへと広がり、セイヨウタンポポと同じ明治期に持ち込まれた。北アメリカにも広く帰化している。別名キレハアカミタンポポ。日本では学名はTaraxacum laevigatumとされてきたが、最近はTaraxacum erythrospermumのsynonymとされている。
セイヨウタンポポと同じ3倍体(2n=24)で、単為生殖して広く帰化し、乾燥に強い。根は地中に深く伸びる。葉はすべて根生、長さ1~5cm の柄があり、葉身は長さ5~15cm、雑種性でないものは多くの場合深く切れ込むか,三角形~半三日月形の裂片が規則的に並ぶ。花茎は花時に長さ3-15cm、先端に1個の頭花をつける。頭花は直径3cm 程度、小花はすべて舌状花、総苞外片は著しく反曲する。果期には花柄が長く伸び、痩果は赤褐色、本体は長さ約3mm、嘴は長く伸びてその先に冠毛がある。花期は主に4~5月。(ブルーデータブック愛知 6.主要移入種の現状・植物)
【Flora of North Americaの解説】
高さ (1~)5~30(~60)㎝、直根はめったに分枝しない。茎は1~15+本、斜上~直立、帯ピンク色~帯赤色(葉と±同長)、無毛又はまばらに絨毛があり、普通、上部で濃い。葉は20+個つき、水平~直立、葉柄は上部に±わずかに翼がある。葉身は倒卵形~倒披針形(逆向き羽状分裂)、長さ5~25㎝×幅1~4㎝、基部は漸尖し、縁は不規則に分裂し(lacerate)。裂片は後ろ向き、三角形~披針形に近く、鋭形~長い尖鋭形、頂裂片は上部の側裂片と同じ大きさ程度。歯は普通、少数、稀に無く、不規則、真っすぐ~後ろ向き、微小~目立ち、又は2次の小裂片、先は普通、鋭形又は尖鋭形、ときに鈍形、まれに円形、面は無毛又はほぼ無毛~まばらに微絨毛がある(主に中脈に)。副咢(calyculi)は16~18個、後屈~反曲し、ときに粉白色又は帯紫色、披針形の小苞であり、2列につき、長さ3.8~10㎜× 幅1~2㎜、縁は白色~帯紫色、狭く薄膜質、先は鋭形又は長い尖鋭形、微細不整歯があり、角状突起は無い。総苞は緑色、先端は赤灰色、つぼ形(閉じた)~円筒状鐘形(開いた)、長さ10~25㎜。総苞片は18~19個、2列につき、披針状線形、幅1.2~2.1㎜、縁は薄膜質、緑色の端(エッジ)がわずかに外巻きし、先は長い尖鋭形、微細不整歯の薄膜質、普通、少なくとも角状突起がある。 小花は約70~75+個、花冠は硫黄黄色、外側の花冠は外面に帯紫色又は帯灰色の縞模様があり、長さ12~16㎜×幅1~1.5 ㎜。痩果はレンガ赤色~赤褐色~赤紫色、果体は倒披針形~倒卵形、長さ(2.2~)2.5~3(~4)㎜、円錐体(cones)は円柱形、長さ0.8~1.3㎜、嘴は細く、長さ(5~)7~8.5㎜、うねは約15本、鋭く、面は下部に±こぶがあり(ときにわずかにあり)~上部の1/2に目立つ微細突起がある。冠毛は白色~汚白色(sordid)、長さ4~7㎜。2n=16, 24, 32 (Europe)。花期は通年に近い。
8 Taraxacum formosanum Kitam. タカサゴタンポポ 高砂蒲公英
台湾原産。中国名は台湾蒲公英 tai wan pu gong ying 。海岸の砂丘、荒れ果てた場所に生える。
高さ8~15㎝。葉は多数、平伏~直立して開柄する。葉柄は狭い。葉身は灰緑色、狭倒披針形~線形、長さ6~18㎝×長さ1~3㎝、ほぼ無毛、羽状浅裂~羽状全裂し、側裂片は3~5対、広三角形で、しばしば、先の縁に鈍く幅の広い歯があり、裂片の間は広く、縁は全縁、頂裂片は三角形~兜形、長さ1.5~3㎝×幅1~2㎝、しばしば五角形になり、先は円形~ほぼ鈍形。花茎は褐緑色で、ほぼ同高~わずかに葉を超え、くも毛が散在する。頭花は幅約3㎝。総苞は淡緑色、幅6~8㎜、基部は±丸い。外総苞片は13~15個、緑色、±覆瓦状、線状披針形~狭披針形、最も外側の総苞片は長さ4.5~6㎜×幅0.8~1.5mm、内側の総苞片の長さの1/3~2/5、ゆるく伏せ、明瞭な脈があり、 境界は不明瞭、淡緑色~膜質、幅0.2㎜以下、縁は無毛、先には長さ1㎜以下の緑色~帯紫色の太い角(つの)がある。内側の総苞片は長さ1.1~1.3㎝、先は小角状(corniculate)。小舌は黄色。外側の小舌は外側に黒紫色の縞模様がある。内側の小舌は先に帯黒色の歯がある。柱頭は淡緑色~±黄色。葯は花粉があり、花粉粒は大きさが規則的。痩果は褐色、長さ約4㎜×幅1~1.2㎜、果体の全体にいぼ状突起があり、先にはいぼ状突起のある小鱗片があり、次第に狭くなり、長さ0.8~1㎜のほぼ円筒状の円錐体になる。嘴は長さ7~10mm。冠毛は白色、長さ4~5㎜。花期は3~4月。2n=16, 24, 32。
9 Taraxacum hallaisanense Nakai イワタンポポ 岩蒲公英
朝鮮(済州島)原産。高地の荒地に生える。別名はタンナタンポポ。
多年草、太い根茎が地中深くあり、主茎はない。 葉は長さ5~14.5㎝×幅0.9~2㎝、長円形~線状倒披針形、先は鈍形~尖鋭形、下部が狭くなって葉柄のようになり、白色の毛があるが次第に無くなり、縁は大根の葉のように分裂し、裂片は4~6対。頭花はすべて舌状花で構成され、花序柄は花時に葉と長さが同じだが徐々に長くなる。総苞は花時に長さ0.9~1.3㎝、赤緑色で、総苞片は先が尖り、下部が広く、外側の総苞片に角状突起がほとんどなく、長円状被針形で、総苞の長さの1/2程度である。内側の総苞片は線状披針形で無毛。 舌状小花は黄色。 周辺の舌状小花は長さ1.3~1.8㎝、筒部は長さ4.5~5.5㎜、無毛。果実は痩果、約・長さ3㎜×幅1㎜、褐色、嘴は長さ6㎜、下部にこぶがあり、肋があり、冠毛がある。冠毛は長さ6㎜、白色。2n=16。花期は5~6月。
10 Taraxacum hideoi Nakai ex H.Koidz. キビシロタンポポ 吉備白蒲公英
synonym Taraxacum albidum var. igaense H. Koidz. イガウスギタンポポ
日本固有種(岡山県及びその周辺、北九州)。別名はイガウスギタンポポ。開花時に花茎が短い。葉は明るい緑色、倒披針形~長披針形、葉脈は紫色を帯びない。頭花は直径3.5~4.5㎝。舌状小花は100~200個、白色~淡黄色、シロバナタンポポよりやや黄色を帯びる。総苞は緑色~淡緑色、花時に長さ15~19㎜。総苞外片は密着して開出せず、披針形~卵形、長さ6.5~8.5㎜×幅3.5~4.5㎜、内総苞片の長さの約1/2、幅が広く、縁毛が多く、小角突起は長さ0.5㎜、しばしば無い。痩果は黒褐色。4倍体2n=32。花期は4~5月。
11 Taraxacum japonicum Koidz. カンサイタンポポ 関西蒲公英
日本固有種(本州の滋賀県南東部~岡山県を中心に広い範囲、四国、九州、沖縄)19府県に分布するが、山陰、山陽西部、四国西部、九州北部ではかなりまれ。英名はJapanese dandelion。
短く太い根茎からロゼット状に根生葉を出す。葉は緑色、倒被針状線形、長さ15~30㎝×幅3~5㎝、羽状中裂し、裂片はそり返る。葉や茎などを傷つけると白色の乳液が出る。地上茎はなく、花茎を出す。花茎は数本、高さ5~20(35)㎝、中空、細く、頭花を単生。頭花は小型で、直径2~3㎝。舌状小花は黄色、先に5歯がある。花柱と柱頭は黒ずむ。総苞は緑色、開花時に長さ12~15㎜。総苞片は反り返らず、総苞外片、内片とも角状突起がほとんどない。総苞外片は卵状被針形、幅が狭く、内片と同幅、内片の長さの1/2以下、角状突起は普通、無く、あってもごく小さく、長さ1㎜以下。痩果は淡黄褐色、長さ3.5~4㎜。花期は4~5月。2n=16。
12 Taraxacum junpeianum Kitam. ミヤコタンポポ 都蒲公英
中国(吉林省)原産。英名は长春蒲公英 chang chun pu gong ying 。草原に生える。
高さ12~20㎝。葉柄は赤みを帯び、狭い。葉身は緑色~濃緑色、中脈は淡緑色~帯紫色、±倒披針形、長さ6~15㎝×幅1.3~2.5㎝、まばらにくも毛があり、羽状全裂、ときに中脈まで分裂し、側裂片は3~5個、狭三角形~線状三角形、開出~ほぼ反曲し、下部の縁はわずかに歯があるかまたは全縁、上部の縁は普通、基部近くに数個の微細な歯があり、中間裂片は幅2~3(~4)㎜、縁にはいくつかの鋭い糸状の歯または小裂片がある。頂裂片は三角形~深裂し、縁は全縁、または基部の裂片の基部に1~2個の歯があり、先は鋭形。花茎は褐緑色で、葉を超え、頭花の下にくも毛がある。頭花は幅2~3㎝。総苞は幅 0.9~1.1㎝、基部は丸い。外側の総苞片は(10~)13~16個、緑色またはピンク色で覆われ、±覆瓦状で無く、卵形、最も外側の総苞片は長さ(6~)7~9㎜×幅(2.3~)3.5~4(~5.5)㎜ で、内側の総苞片の長さの1/2~3/5、密着し、表面に明瞭な脈があり、幅1㎜以下の不明瞭な淡色の膜質の白緑色の縁があり、縁はほぼ無毛、先近くで小角状になる(corniculate)。 内総苞片は長さ1.3~1.4cm。小舌は黄色。外側の小舌の外側は縞が灰色。小舌の筒部には軟毛がある。柱頭は±黄色。葯は花粉を生じる。花粉は大きさが不規則。痩果は赤褐色~薄赤色、長さ(3.4~)3.6~4(~4.2)㎜×幅0.7~0.9㎜、果体は上に小刺があり、やや徐々に細くなり、長さ0.7~0.8㎜の細い円筒状の円錐形(cone)になり、刺は±直立~開出し、鋭形。嘴は長さ8~9㎜。冠毛は黄白色、長さ5~6㎜。花期は春。単為生殖(agamosperm)。
13 Taraxacum ketoiense Tatew. et Kitam. ケトイタンポポ
千島列島原産。
14 Taraxacum kiushianum H.Koidz. ツクシタンポポ 筑紫蒲公英
日本固有種(本州の長野県、四国の愛媛県、高知県、九州の熊本県、大分県、宮崎県)
葉は大きく、広倒披針形、羽状深裂し、普通、鈍頭。花茎は花時に葉より長く、まばらに軟毛があり、頭花に近くなるにつれ毛が密になる。頭花は直径は3~4㎝、明るい黄色。総苞は花時に長さ13~14㎜。外総苞片は圧着~やや開出し、垂れ下がらず、広卵形~卵状長楕円形、内総苞片の長さの約1/2、先端部に小形の小角突起がある。花期は3~5月。2n=32 4倍体
15 Taraxacum kojimae Kitam. コタンポポ 小蒲公英
千島列島原産。小型で葉は葉柄がほとんど無く、開出し、花茎は1本、総苞外片は披針形。
16 Taraxacum kok-saghyz L.E.Rodin ゴムタンポポ 護謨蒲公英
中国、モンゴル、カザフスタン、キルギスタン原産。中国名は橡胶草 xiang jiao cao 。根に8~10%のゴム成分が含まれ、パラゴムノキに替わる天然ゴム資源として注目されている。小道の縁、川岸のある中程度の湿った亜塩性の牧草地に生える。
高さ4~15㎝。 葉柄は薄緑色、翼がある。 葉身は淡い灰色がかった灰色がかった緑色で、中脈は薄緑色~まれにピンク色を帯び、狭倒披針形~広倒披針形、長さ3~7(~10)㎝×幅1.2~3㎝、±肉質、非常にまばらにくも毛があるか無毛、分裂せず、縁は離れた歯があるか、規則的に羽状浅裂~羽状中裂し、側裂片は2~3(~5)対、広三角形、開出~ほぼ反曲し、下部の縁は±真っすぐで全縁、上部の縁は凸状で全縁、先は鈍形~ほぼ鋭形、裂片間には斑点がなく、幅が広く、縁は全縁。頂裂片は普通、三角形、縁は全縁、先は鈍形。花茎は薄緑色~帯ピンク色、±葉を超え、くも毛がある。頭花は幅2~3cm。総苞は幅5~8㎜、基部は楕円形で丸い。外側の総苞片は8~13個、薄緑色、ときに、先は紫色がかり、覆瓦状ではなく、線状披針形~狭卵形、最も外側の総苞片は長さ5.5~7㎜×幅(1~)1.2~2.2(~2.5)㎜、内側の総苞片の長さの1/2~4/5だが、ときに同長になり、緩く圧着~直立し、辺縁は白色を帯びた薄緑色または±膜質で、幅0.1~0.3mm、縁はまばらに縁毛があるか無毛で、先には垂直~直立する長さ2.5~4㎜の角(つの)がある。内側の総苞片は長さ8~12㎜、先端には長さ1~2㎜の細い角(つの)がある。小舌は薄黄色。外側の小舌は平らで、外側には縞模様がないか、またはかすかに帯紫色の縞模様がある。内側の小舌は先端に黄色い歯がある。柱頭は純黄色。 葯は花粉を出す。花粉粒は大きさが規則的。痩果は薄灰わら褐色、長さ2.8~3.8㎜×幅0.7~0.9、果体±上に密に刺があり、徐々に細くなってほぼ円筒形の長さ(0.5~)0.7~1㎜の円錐体(cone)になり、刺は普通不規則に上向きに曲がり、小鱗片は無い。嘴は長さ3~4.5㎜。冠毛は±白色、長さ3.5~4.5㎜。 花期は晩春~初夏。有性生殖。2n=16。
17 Taraxacum kuzakaiense Kitam. クザカイタンポポ 区界蒲公英
日本固有種(岩手県)。山地の草原や林縁などの日当たりがよい場所に生える。和名は岩手県区界高原に因む。エゾタンポポ類似種。エゾタンポポに含める見解もある。KewscienceではTaraxacum brachyphyllumに含めている。
多年草。根出葉ロゼットになり、線状倒被針形、他種より幅が狭く、羽状深裂する。頭花は黄色。総苞は緑色、長さ14~15㎜、総苞片の先端部の縁などに毛が多い。総苞外片は緑色、楕円形~長楕円形、エゾタンポポより少し細く、長さは内総苞片の約1/2、先はやや尖鋭形、角状突起は無く、反曲しない。舌状花は黄色、先端が黒変することがある。痩果はやや短い。花期は4~5月。
18 Taraxacum lamprolepis Kitag. アカジクタンポポ 赤軸蒲公英
中国(モンゴル自治区)、モンゴル原産。中国名は光苞蒲公英 guang bao pu gong ying 。丘の斜面、野原に生える。
高さ7~18㎝。葉柄は帯紫色、狭い翼があるか、または(内側の葉では)翼がない。葉身は緑色、狭長円形、長さ7~15(~18)㎝×幅0.8~3.5㎝、まばらにクモ毛があり、羽状全裂、側裂片は4~6(~7) 対、狭い三角形、線形 - 三角形、またはめったに ± 線形、通常 長さ9~17㎜×幅2.5~7㎜、反り返り、近位縁は直線で通常は全体、遠位縁は ± 直線で全体または 1~3本の歯; 葉間は狭く、辺縁はほとんどの場合離れて歯状になっています。 末端葉は狭い三角形-矢状または±三角形、通常は細長く、1つまたは2つの不規則な小葉または切り込みがあり、先端は鋭角。 花茎は紫がかった緑色で、葉は等間隔または±上にあり、まばらにくも形。 頭頂は幅3~4㎝。 総苞形は幅8~10㎜、基部±狭く丸みを帯びる。 外側の総苞片は8~12個、暗緑色~濃緑色、ときに薄緑色または黒緑色、±覆瓦状ではなく、広披針形~卵形、最も外側の総苞片は長さ(6~)7~9(~10)㎜×幅2.5~4㎜、長さは内側の総苞片の1/2~ 3/5、±緩く圧着するが後にしばしば直立し、脈はしばしば目立ち、中脈は暗色、縁はより淡色、薄緑色~白緑色だが、しばしば紫色を帯び、幅0.3~1mm、膜質で、 より暗い中央部分へ緩やかに移行し、縁は先近くにまばらに縁毛があり、初期の頭花では先が±平らだが、後期のものでは太い角状突起(つの)がある。内側の総苞片は長さ1.4~1.7㎝、先は平ら。 小舌は黄色。外側の小舌は平らで、外側には濃い灰色の縞模様でがある。柱頭は濃く汚れた黄色~灰黄色。葯は花粉がある。花粉は大きさが不規則。痩果は±淡い麦わら色褐色、長さ3.7~4.2㎜×幅1.2~1.3㎜、果体上部の約1/3に密に刺があり、急に狭くなり円錐形~ほぼ円筒形、長さ0.5~0.8㎜の円錐体(cone)になり、刺は短く、細く、直立開出~ときに開出し、鋭形。 嘴は長さ8~9㎜、薄い。冠毛は黄白色、長さ6~8㎜。花期は春。単為生殖(agamosperm)。
19 Taraxacum latifolium Kitam. ヨゴレタンポポ 汚れ蒲公英
朝鮮原産。中国名は斑叶蒲公英 ban ye pu gong ying。別名はヒロハタンポポ (Kitamura 1933)。朝鮮咸鏡北道の産であり、大井次三郎氏が延岩洞一上村間で採集された植物である。
根は太く、首には鱗がなく、褐色の樹皮がある。 葉は幅が広く、長さ15~25cm×幅6~10cm。 先は鈍形、葉柄に翼があり、深く羽状深裂し、裂片は開出または直立して開出し、大きな4~5個があり、ほぼ長三角形、先は鋭形~尖鋭形、基部は歯があるか切れ込み、裂片間は狭く切れ込むか、小さな歯がある。 茎はまばらに毛があり、花期には葉の高さになり、頭花の下には多少、密に毛がある。総苞は乾くと約・長さ18㎜×幅25mm。 外側の総苞片は長円形~長円状披針形、長さ8~10㎜×幅2.5~3mm、先は角状、長さ1~1.5㎜、長い鈍頭があり、ときに下側にカロースの縁があり、外側にはまばらに毛があるかまたは無毛。内側の総苞片は線状披針形、長さ14~16㎜×幅約3㎜、明瞭な透明な膜質の広い縁があり、先端は微細な小角形または無角形のカルスがあり、黒くなり、無毛。周辺小花は黄色、花冠は長さ約19㎜、筒部は長さ約4.5㎜、単細胞の毛の長い先端がある。花柱はわずかに暗色の柱頭をもつ。痩果は長円形、帯褐色、多少、扁平で長さ3.5㎜×幅1㎜、先端の幅1/2㎜、ずっと下で急に散開し、上部に刺のあるいぼ状突起があり、直立して開出する刺を伴うか、または、ほぼ開出する刺が線状に並び、基部に向かって突起が少なくなり、徐々に狭くなり、嘴は長さ9~10㎜。冠毛は白色、長さ約8mm。
20 Taraxacum mongolicum Hand.-Mazz. モウコタンポポ 蒙古蒲公英
synonym Taraxacum erythropodium Kitag. アツバタンポポ
日本(九州)、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は蒙古蒲公英 meng gu pu gong ying 。
高さ8~25㎝。葉柄は普通、狭い。葉身は緑色、倒披針形、長さ.6~15㎝×幅2~3.5㎝、類無毛~まばらにクモ毛があり、羽状浅裂、羽状全裂、又は稀に分裂しない。側裂片は3~4対、広三角形、鈍デルタ形、又は広線形、開出~反曲、上部の縁にまばらに歯があるか又は全縁、先は鈍形。裂片間は広く、ときに暗紫色の斑点があり、縁は全縁~まばらに歯がある。頂裂片は広三角形、先は広い鈍形。花茎は1本又はまれに分枝し、斜上する側花茎をもち、褐緑色、葉の長さと同長又はわずかに超え、散在するクモ毛があり、頭花の下に密にクモ毛がある。頭花は幅3~4㎝。総苞は緑色、幅1~1.2㎝、基部は±丸い。外総苞片は9~15個、緑色~淡緑色、± 覆瓦状でなく、線状披針形~狭披針形。最も外側の外総苞片は長さ 6~9㎜×幅0.8~2.5㎜、内総苞片の長さの約1/2、緩く伏せ、脈が目立ち、境界は不明瞭、淡緑色~膜質、しばしばピンク色を帯び、幅0.1~0.3㎜、縁は±密に縁毛があり、先は緑色又は紫色の長さ1.5㎜以下の厚い角状突起をもつ。内総苞片は長さ1.1~1.5㎝、先は平ら、角状突起がある。小舌は黄色、外側の小舌の外面に這い紫色の縞模様があり、内側の小舌は先端の歯が帯黒色~紫色になる。柱頭は淡緑色。葯は花粉があり、花粉粒は大きさが不規則。痩果は±褐色~灰褐色、長さ4.2~4.6㎜×幅1.1~1.3㎜、果体は全体にこぶ(いぼ)があり、先には密にいぼ状の小鱗片があり、次第に狭くなり、類円錐形の長さ1~1.2㎜のコーンになり、その先の嘴は長さ7~10㎜。冠毛は帯黄色、長さ約6㎜。花期は春、たまに晩夏まで。単為生殖。2n=24 ,32(日本)。
21 Taraxacum multisectum Kitag. ミズナタンポポ 水菜蒲公英
中国(吉林省、遼寧省、モンゴル自治区)原産。中国名は异苞蒲公英 yi bao pu gong ying 。ステップ草原、牧草地に生える。
高さ11~20㎝。 葉柄は薄緑色または紫がかった色で、基部はまばらにくも毛があるが、それ以外は無毛で翼がない。 葉身は中緑色、狭い長楕円形、長さ7~16㎝×幅1.2~2.4㎝、まばらにくも毛があり、羽状深裂し、側裂片は3~5対、±線形、長さ8~16㎜×幅1.2~2.3㎜、±開出し、縁は±全縁、先は鋭形、間の裂片は長さ3~12㎜×幅1~2 ㎜、縁には糸状歯があるかまたは小裂片状。頂裂片は3深裂し、裂片の縁は全縁、先は鋭形。花茎は褐緑色、葉の高さを±超え、くも毛がある。頭花は幅3~3.5㎝。 総苞は幅0.9~1.1㎝、基部は丸い。外総苞片は10~14個、暗緑色、縁と先端はしばしば紫色になり、徐々に縁が薄くなり、明瞭な白色の縁は幅0.3㎜、覆瓦状ではなく、普通、広披針形~狭卵形、最も外側の総苞片は長さ(6~)7~9㎜×幅(2~)2.5~4mm、内側の総苞片の長さの約 1/2、圧着し、後に直立して開出し、縁は無毛またはまばらに縁毛があり、先は±カルスがあり、まれに平らになる。内側の総苞片は長さ1.4~1.6㎝、先は平ら~小角状(corniculate)。小舌は黄色。外側の小舌は±平ら、外側に灰色の縞模様がある。柱頭は灰緑色。葯は花粉がある。花粉は大きさが不規則。痩果は薄灰わら褐色、長さ4.6~5㎜×幅0.8~0.9㎜、果体は上部にまばらに刺があり、次第に±円筒状の長さ0.9~1㎜の円錐形に狭まり、刺は長く、最長のものは0.5㎜まであり、細く、直立して開存し、鋭形、一部は円錐形の基部にもつく。嘴は長さ1~1.1㎝、細い。冠毛は±白色、長さ約7㎜。花期は春。単為生殖(agamosperm)。
22 Taraxacum officinale Weber ex F.H.Wigg. セイヨウタンポポ 西洋蒲公英
synonym Taraxacum officinale aggr. Anon. [Kewscience] セイヨウタンポポ種群
synonym Taraxacum officinale F.H.Wigg.synonym Taraxacum officinale Weber
synonym Taraxacum campylodes G.E.Haglund
ヨーロッパ原産。英名はdandelion, common dandelion。中国名は西洋蒲公英 xi yang pu gong ying。現在では世界中に広く帰化し、日本に入ってきたのは明治時代といわれている。セイヨウタンポポは初夏に発芽し、夏期も地上部を維持するのに対して、土着のタンポポ属(カンサイタンポポやカントウタンポポ、シロバナタンポポなど)植物(2倍体)は秋に発芽し、夏期は葉を落として休眠する。
多年草。高さ15~45㎝。根は地中に深く伸びる。葉は全て根生し、葉柄は長さ約1.5㎝、葉身は長さ 7~25㎝、裂け方が深浅いろいろ変化する。花茎は花時に長さ8~30㎝、先端に頭花を単生する。頭花は直径2~3.3(5)㎝、黄色の舌状花が40~100個つく。総苞外片は12~18個、長さ5~8㎜、普通、90度以上に下向きに曲がり、(雑種性のものの中にはほとんど反曲しない系統もあり)、先にこぶ状突起がある。総苞内片は痩果が完熟するまで曲がらず直立して先が尖り、緑色が濃い。痩果は果体の長さ(2)2.5~2.8(4)㎜、嘴の長さ7~9㎜、灰褐色~淡黄褐色、先端部に多数の刺状突起がある。3倍体2n=24, 40(16, 32)。花期は3~11月(主に4~5月)。2n=16,24,32,48、3倍体が多く、2倍体はフランス、ドイツ南部、チェコスロバキア、北イタリアに分布する。日本では3倍体、4倍体が確認され、3倍体が多い。
品種) 'Ameliore Geant' , 'Clio' , 'Coeur Plein' , 'French Thick Leaf' , 'Italian Red' , 'Nouvelle' , 'Tapeley' (v) , 'Vert de Montmagny'
【Flora of North Americaの解説】
高さ (1~)5~40(~60)㎝。直根はめったに分枝しない。茎は1~10+本、直立~斜上、ときに± 帯紫色(普通、葉と同長又は葉を超え)、無毛又はまばらに絨毛があり、上部でわずかに多い。葉は20+個つき、水平~直立。葉柄には±狭い翼がある。葉身は倒披針形、長円形(oblong)、又は倒卵形(しばしば逆向き羽状分裂)、長さ(4~)5~45㎝×幅(0.7~)1~10㎝、基部は漸尖形~狭楔形、縁は普通、浅く~深く分裂~切り裂き~歯状になり、裂片は後ろ向き、広~狭三角形~披針形に近く、鋭形~長い尖鋭形。頂裂片は上部の側裂片と大きさが同じであり、最終の縁は歯状又は全縁(2次裂片は不規則、垂直~後ろ向き)、葉は微小~目立ち、先は鋭形~尖鋭形~鈍形、面は無毛又はまばらに絨毛がある(中脈上に普通)。副咢(calyculi)は小苞であり、12~18個、下屈し、ときに±粉白を帯び、披針形、2列につき、長さ6~12㎜×幅2.8~3.5㎜、縁はごく狭く白色の薄膜質、ときに上部に絨毛の縁毛があり、先は尖鋭形、角状突起は無い。総苞は緑色~暗緑色~褐緑色、先端は暗灰色又は帯紫色、鐘形、長さ14~25㎜。総苞は13~18個、2列、披針形、幅2~2.8㎜、縁は薄膜質(下部2/3)~狭い薄膜質、先は尖鋭形、薄膜質の微細不整歯があり、普通、角状突起はなく(めったに付属せず)、カルスがある(callous)。小花は40~100+個、花冠は黄色(橙黄色)、長さ15~22㎜××1.7~2㎜ (外側の小花)。痩果はオリーブ色~オリーブ褐色~わら色~帯灰色、果体は倒披針形、長さ(2~)2.5~2.8(~4)㎜、円錐体(コーン cone)は短円柱形、長さ0.5~0.9㎜、嘴は細く、長さ7~9㎜、うねは4~12本、鋭く、面は下部が平滑~± tこぶ状、上部の1/3に微細突起がある。冠毛は白色~汚白色、長さ5~6(~8)㎜。2n=24, 40, [16, 32]。
※ 中国ではTaraxacum officinale はTaraxacum sect. の意味で使われ、中国には次の3種があるとされている。Taraxacum section Ruderalia
(1) Taraxacum oblongatum (椭圆蒲公英 tuo yuan pu gong ying)
総苞外片は14-18個。痩果は灰色を帯びた淡黄褐色、長さ (3.4)3.8~4.3 ㎜、嘴の長さ10~11㎜。2n=24。
(2) Taraxacum rhodopodum (红座蒲公英 hong zuo pu gong ying )
総苞外片は13~16個。痩果は灰色を帯びた淡黄褐色、長さ3.2~3.5㎜、嘴の長さ9.5~10.5㎜。2n=24。
(3) Taraxacum yinshanicum (阴山蒲公英 yin shan pu gong ying )
総苞外片は15~18個、痩果は灰色を帯びた淡黄褐色、長さ3.3~3.5㎜、嘴の長さ8~9㎜。
23 Taraxacum ohirense S.Watan. et Morita オオヒラタンポポ 大平蒲公英
日本固有種(北海道の大平山)。高山帯の石灰岩地帯に生える。
タカネタンポポ(Taraxacum yuparense)によく似るが、タカネタンポポは総苞が長さ12~15㎜、葉は羽状深裂する。
高さ20~40㎝。葉は切れ込みが浅く、やや不規則。頭花は黄色。総苞は長さ15~18㎜。総苞外片に角状突起は無い。花期は7~8月。2n=16。
24 Taraxacum pectinatum Kitam. クシバタンポポ 櫛葉蒲公英
synonym Taraxacum Nemotoi. KOIDZ.
synonym Taraxacum arakii Kitam.[Kewscience]
日本固有種(本州富山県、近畿地方、四国)。主に関西地方に分布するヤマザトタンポポ(Taraxacum arakii) を含める見解もあるが、明らかに別種とする見解もある。
多年草。高さ15~25㎝。根出葉は線状披針形、長さ10~30㎝×幅3~4㎝、櫛の歯状に羽状深裂し、裂片は線形、先は鋭形、頂裂片は小型。花茎は多数つき、葉より短いか又は同長、まばらにクモ毛があり、上部で密。頭花は黄色、直径3~4㎝。総苞は花時には長さ約2㎝。総苞外片は反り返らず密着し、内片の長さの1/3~1/2、広卵形~卵形~卵状長楕円形、角状突起はないが、こぶ状突起があり、時に無い。総苞内片は線状披針形、縁は透明、薄膜質、帯黒色。痩果は淡黄褐色~帯褐色、長楕円形、約長さ4.5㎜×幅1.3㎜、上部に微細突起があり、下部は多少、こぶ状。花期は4~5月。 2n=32。
25 Taraxacum platycarpum Dahlst. ニホンタンポポ 広義
日本、朝鮮原産。
日本の2倍体タンポポのうちは西日本のカンサイタンポポ(植物は総苞が小さく、頭花も小さく、小花は少ない)、関東地方のカントウタンポポや長野県~東北地方南部のシナノタンポポ型(植物は総苞が大きく、頭花も大きく、小花は多い)。トウカイタンポポは千葉県~東海地方。
典型的なカンサイタンポポ,トウカイタンポポ,シナノタンポポの分布域に挟まれた関東~東海~北陸地方にまたがる広い地域に存在する集団は三つの集団群の間の様々な中間形態をとる。
25-1 Taraxacum platycarpum Dahlst. var. platycarpum カントウタンポポ 関東蒲公英
synonym Taraxacum sendaicum Kitam.synonym Taraxacum variabile Kitam. キツネタンポポ(ミヤマカントウタンポポ )
synonym Taraxacum platycarpum Dahlst. var. variabile (Kitam.) H.Koidz.
synonym Taraxacum elatum Kitam. [Kewscience]日本の関東地方東、静岡県、山梨県に分布する。道端や草原などに生える。
多年草。高さ15~30㎝。葉はすべて根生し、長さ(8~)15~30㎝×幅 2.3~5㎝の倒披針形、羽状深裂~中裂するが、変異も多い。花茎は1~12本程度つき(多いものは20以上)、直立、長さ15~30㎝、上部に毛が密にある。頭花は頂生、単生し、直径3.5~4㎝、黄色(ときに薄黄色)、舌状小花だけからなり、花弁の先に5歯がある。花後に一旦うなだれるが、後に再び立ち上がってさらに伸長する。総苞は長さ1.5~2㎝、総苞片は狭卵形から広披針形、内外片とも直立し、上部に角状突起がある(トウカイタンポポより小さい)。総苞外片は総苞内片の長さの約1/2(~2/3)、幅は内片より広い。痩果は紡錘形~長楕円形、長さ4~5㎜、淡黄色~黄褐色、嘴は長い。冠毛は淡褐白色~淡褐色。花期は3~5月。2n=16。
25-2 Taraxacum platycarpum Dahlst. f. alboflavescens H.Koidz. ウスジロタンポポ
カントウタンポポの外側の舌状小花の色の黄色の薄い品種。25-3 Taraxacum platycarpum Dahlst. subsp. hondoense (Nakai ex Koidz.) Morita シナノタンポポ 信濃蒲公英
synonym Taraxacum venustum H.Koidz. subsp. hondoense (Nakai ex Koidz.) Morita
長野県~東北地方南部に分布。丘陵や低山地に生える。多年草。高さ20~30㎝。根出葉は倒披針形、長さ20~30㎝、羽状深裂又は欠刻がある。頭花は黄色、直径3.5~4㎝。総苞は長さ15~20㎜。総苞外片は総苞の長さの約2/3で、幅は広く、広卵形、圧着し、角状突起は無い。花期は4~5月。2n=16。
3~5倍体であるエゾタンポポ(Taraxacum venustum)と混同されていた。
25-4 Taraxacum platycarpum Dahlst. var. elatum (Kitam.) Morita セイタカタンポポ 背高蒲公英
synonym Taraxacum elatum Kitamsynonym Taraxacum elatum Kitam. var. ibukiense Kitam.
synonym Taraxacum elatum Kitam. var. deforme Kitam.
兵庫県北部など関西地方中心に滋賀県、福井県、三重県にも分布する。別名はイブキタンポポ。山地に生える。Kewscienceでは var. platycarpumに含める。
高さ20~30㎝。根は太く、長く、わずかに小鱗片がある。葉は少数つき、斜上し、葉柄は長さ3~5㎝、葉身は線状倒披針形、長さ25~35㎝×幅5~8㎝。基部は長く漸尖し、羽状深裂、裂片は三角形又はデルタ形、先は鋭形又は鈍形、縁は様々に分裂する。花茎は3~4本、花期に長さ20~30㎝、初めクモ毛があるが後に無毛になるが、頭花の下は毛が多く、花後にすこぶる長くなる。頭花は単生、直径3.5~4㎝、黄色。総苞は長さ(1.5)1.8~2㎝×幅約2.5㎝とカンサイタンポポより大きい。総苞内片は線状披針形、長さ15~18㎜縁が黒紫色。総苞外片は幅が広く、長楕円形~広披針形、内片の長さの約1/2[平均外総苞長/平均内総苞長(苞長率)は2/5~1/2.]、緑色で縁は透明でなく、小角突起はないか小さく又は肥厚するだけである。花冠は黄色、長さ15~22㎜、外面は長い縞模様がある。花冠筒部は長さ約5㎜。痩果は灰褐色、細長く、長さ約4㎜×幅1~1.3㎜、円錐体は長さ1.5~3㎜、嘴は長さ7~8㎜。冠毛は汚白色、長さ7~8㎜。花期は3~4月。2n=16。
25-5 Taraxacum platycarpum Dahlst. var. longeappendiculatum (Nakai) Morita トウカイタンポポ 東海蒲公英
synonym Taraxacum longeappendiculatum Nakai日本の本州(千葉県~東海地方)に分布。別名はヒロハタンポポ
高さ10~30㎝。総苞は長さ15~20㎜。総苞外片、内片ともに大きな角状突起(総苞外片の角状突起は長さ1.5~3㎜、ときに6㎜、日本産で最大)がある。総苞外片は広披針形~線状披針形、幅があまり広くなく、総苞内片と同幅程度が標準とされるが幅が広いものも多い。総苞外片の長さは内片の2/3程度が標準であるが、1/2~1/1と変化が多く、平均外総苞長/平均内総苞長(苞長率)は3/5~5/8.。総苞外片が総苞に接してつくのが標準であるが、やや離れてつくことも多く、横向きに開出したり、下向きになっていることもある。カントウタンポポでも変異や交雑が多いといわれており、トウカイタンポポでも同様であると思われる。総苞片の観察は蕾か花が終わった直後が見やすい。種子の完熟期には総苞内片及び外片ともに下向きになり冠毛を広げて全体が丸くなる。総苞の幅は広いものから狭いものまで場所によって差異がある。葉は変異が多く、切れ込みがほとんどないものや深く切れ込むものが混在することもある。別名はヒロハタンポポといわれるが、葉幅が必ずしも広いものではない。痩果は紡錘形、長さ3.5~4.5㎜、5~7本の縦溝があり、淡黄色~淡褐色で、セイヨウタンポポより色が淡色。幅が広く、長さは同程度でやや長いこともある。痩果の嘴の長さがセイヨウタンポポよりやや短いのが普通である。冠毛托は薄板状円錐形。2n=16。花期は4~5月。
25-6 Taraxacum platycarpum Dahlst. subsp. maruyamanum (Kitam.) Morita オキタンポポ 隠岐蒲公英
synonym Taraxacum maruyamanum Kitam. in Acta Phytotax. Geobot. 6: 20 (1937) [YList]
日本固有種(隠岐島)。島根半島で1ケ所だけ見つかっているが、フェリーが発着する港の近傍であり、隠岐諸島からの持ち込みの可能性が高い。YListでは別種としている。頭花は直径3.5~4㎝。小花は80~150(平均120)個つく。 総苞は花時、長さ15~20㎜。 外総苞片は直立~わずかに開き、長卵形~線状針形、長さ10~11㎜×幅4~4.5㎜、総苞の長さの3/2以上あり、角状の突起があるか又は無く、突起は長さ0~1.5㎜。花柱と柱頭は黄色。2n=16、 2倍体。
26 Taraxacum platypecidum Diels ネッカタンポポ
synonym Taraxacum licentii Soest.
朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は白缘蒲公英 bai yuan pu gong ying 。亜高山の草原の斜面に生える。
高さ12~40㎝、丈夫な草本。葉柄が狭い。葉身は濃緑色、狭倒披針形、長さ(6~)10~18㎝×幅2~4㎝、クモ毛があり、縁はほぼ全縁~歯状~浅く裂片があり、まれに深く羽状全裂。側裂片は3~5個、広三角形、反り返えり、間の裂片は(発達すれば)全縁。花茎は褐緑色、葉のたさを超え、白色のクモ毛があるが、頭花の下部には帯白色~帯褐色の綿毛がある。頭花は幅4~5cm。総苞は幅1~1.3cm、基部±丸い。外総苞片は14~19個、ほぼ覆瓦状、卵状披針形~卵形、長さ8~15㎜×幅(2.5~)3~4.5(~6)㎜、圧着~ゆるく圧着し、明瞭な脈はなく、中央部は黒緑色、白緑色~帯白色の幅1~2㎜の縁があり、辺縁には目立って密に帯白色の縁毛があり、先端の下に帯黒色のカルスがある(ときに、上部約1/3の表面にくも毛がある)。内総苞片は長さ1.5~1.7cm。小舌は黄色。外側の小舌の外面は縞模様で、かすかに紫灰色になる。 柱頭は帯黒色~濃緑色。葯は花粉が無く、または花粉があり、花粉は大きさが不規則。痩果は灰褐色~薄褐色、長さ(4.5~)5.5×幅1.5~2mm、果体の上部1/3に刺のある小鱗片があり、下部にいぼ状突起があり、急に狭まり、長さ±1.2~1.4㎜の太いほぼ円筒形の円錐体になる。嘴は長さ約9.5mm。冠毛は黄汚白色、長さ7~9 mm。花期は夏。2n=24。単為生殖(agamosperm)。
27 Taraxacum scariosum (Tausch) Kirschner et Stepanek アジアタンポポ 亜細亜蒲公英
中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン原産。中国名は深裂蒲公英 shen lie pu gong ying 。乾燥した草原、亜草原、道端、乾燥した牧草地に生える。高さ12~20(~25)㎝。葉柄は通常、かすかに帯紫色~基部が紫色で、翼は無い。 葉身は緑色~薄緑色、狭倒披針形、長さ12~15㎝×幅1.3~2.5㎝、クモ毛があり、縁は深く切り裂かれている。側裂片は6~10対、線形、±開出し、ときに、わずかに上または下に曲がり、しばしば、基部で幅が±広く、鋭い線形の小葉または歯に分かれる。 間の裂片は長さ5~12㎜×幅1.5~2㎜、縁には多数の普通、開出する線形の鋭い小裂片および/または歯がある。頂裂片は3深裂し、先端の裂片は線形、先は鋭形。晩夏の葉は、幅8㎜以下の広線形の裂片を持つ。花茎は緑褐色、くも毛があるが、頭花の下ではくも毛がより密につく。頭花は幅2~3cm。総苞は幅 0.9~1.1㎝、基部は丸い。外側の総苞片は14~18個、黄緑色~緑色、通常わずかにピンク色を帯び、±覆瓦状、披針形~広披針形、内側の総苞片はより狭い。最も外側の総苞片は長さ5~7(~8.5)㎜×幅(1.8~)2.5~2.8㎜、内側の総苞片の長さの2/5~3/5であり、圧着し、後に±直立し、幅0.2~0.3㎜の帯白色の縁があり、先端部分ではより明瞭で、しばしばピンク色を帯び、縁にくも毛の縁毛があり、先は最初は±平ら~微細な小角状(corniculate)なるが、花後の頭花では小角状になる。内側の総苞片は長さ1.2~1.4㎝、先は±小角状(corniculate)。小舌は黄色。外側の小舌は平らで、外面の縞模様は灰色~灰色がかったピンク。 内側の小舌は先端の歯が赤みを帯びる。柱頭は純粋な黄色~淡灰黄色。葯は花粉があり、花粉は大きさが不規則。痩果は淡灰麦わら色、長さ4.2~4.7㎜×幅約0.8㎜、果体は先端にまばら~±密に刺があり、±次第に細くなり、長さ0.8~1㎜の円筒形の錐体(cone)になる。嘴は長さ8~9mm、細い。冠毛は白色、長さ6~7㎜。花期は春~夏。単為生殖(agamosperm)。2n=24。
28 Taraxacum shikotanense Kitam. シコタンタンポポ 色丹蒲公英
synonym Taraxacum yezoense H.Koidz
北海道東部、千島原産。海岸の岩場、礫地、草地などに生える。別名はネムロタンポポ。
多年草、高さ約30㎝。根出葉は多数つく。 頭花は直径約5㎝。舌状小花が多数つき、花弁の幅が狭く、長く、濃黄色。総苞片は濃緑色、緩くつき、角状突起がある。総苞外片は縁が狭く白色を帯び、やや開出し、強くは反り返らない。花期は6~7月。2n=64。
29 Taraxacum sinicum Kitag. シナタンポポ 志那蒲公英
synonym Taraxacum borealisinense Kitam.
中国、モンゴル、チベット、ロシア、カザフスタン原産。中国名は华蒲公英 hua pu gong ying 。塩分濃度の低い牧草地、一時的に湿った草原、亜ステップの窪地に生える。
高さ8~15(~25)㎝。 葉柄は褐紫色、狭い。 葉身は±緑色、線状倒披針形、長さ7~10(~15)㎝×幅0.6~1㎝、ほぼ無毛~まばらにくも毛があり、縁は普通、羽状浅裂、羽状全裂、または非常に深く切れ込み、またはまれに不分裂。側裂片は5~7(~9)対、線形~線状三角形、±反り返る。間の裂片は狭く、普通5~7㎜、縁は全縁。頂裂片は狭く、細長く、基部は矢じり状で、先は±鋭形。 花茎は褐緑色で、葉の±上に張り出し、くも毛があり、頭花の下に密にある。頭花は幅1.5~2.5cm。総苞は幅6~7(~8)㎜、基部は±ほぼ倒円錐形。外側の総苞片は16~18個、黄緑色で先端が赤色~暗緑色、しばしば赤みを帯び、覆瓦状。最も外側の総苞片は卵状披針形、長さ4.5~6.5㎜×幅1.8~2.7mm、中間の総苞片は±披針形、長さ7~8㎜×幅1.5~2㎜、 内側の総苞片の長さの1/3~1/2であり、圧着し、縁が明瞭な膜質~帯白色の幅0.2~0.4㎜になり、辺縁は無毛、先は ± 平ら~わずかにカルスになる。内側の総苞片はは長さ10~13㎜×幅約1㎜、先が平ら。 小舌は濃黄色。 外側の小舌は±平ら、外面に暗灰色の縞模様がある。内側の小舌は先端の歯が黄色~帯灰色。柱頭は緑灰色。葯は花粉がある。花粉は大きさが不規則。痩果は帯薄灰色、長さ3.5~4.4㎜×幅0.9~1㎜、果体にはややまばら~±密に刺があり、±次第に細くなり、太いほぼ円筒形の長さ0.7~1㎜の円錐形になり、刺は粗く、最上部の刺は上向きに湾曲する。嘴は長さ5~6.5㎜、基部が±太い。冠毛は黄白色、長さ6.5~7㎜。花期は春~夏。単為生殖(agamosperm)。2n=24, 64。
30 Taraxacum togakushiense H.Koidz. トガクシタンポポ
日本固有種(長野県戸隠山)。亜高山帯の開けた岩場に生える。以前はミヤマタンポポと同一と されていた 。ミヤマタンポポは総苞が長さ1.5~1.8㎝。総苞外片に角状突起が無い。World Flora Onlineには記載があるが、Kewscienceには無い。
高さ5~15㎝。総苞は長さ1~1.5㎝。総苞外片は卵形、総苞内片の長さの1/2より短く、角状突起がある。
31 Taraxacum trigonolobum Dahlst. クモマタンポポ 雲間蒲公英
synonym Taraxacum yesoalpinum Nakai ex H.Koidz. クモマタンポポ(大雪山に生える)
日本(北海道)、ロシア、アラスカ原産。別名はアシベツタンポポ。 草地や礫地に生える。高さ8~41㎝(果時に高さ56.5㎝以下)。直根はめったに分枝しない。茎は1~5本、斜上又は直立、帯紫色、無毛又は下部が無毛になり、上部に±密に絨毛がある。葉は10個以下、水平又は開出~±直立。葉柄は広い翼がある。葉身は倒披針状倒卵形(上部の1/5で最も大きく)~倒披針形(しばしば逆向き羽状分裂、特に早期の葉)、長さ (3.5~)6~29.5㎝×幅 (1.3~)2.1~5.5㎝、基部は楔形~漸尖形、縁はときに下部が分裂又は±規則的に、深く、普通、±強く、下部に歯があり(上部の1/2~1/5ではそれほどではなく)、裂片は後ろ向き~真っすぐ又は前向きにつき、三角形~デルタ形、±尖鋭形、歯は主に下部にあり、まれに上部の1/4~1/5又は頂裂片にあり、小さく~粗く、不規則(裂片に1~5個)、先は円形~切形~鈍形、まれに鋭形、微突頭、面は無毛又はほぼ無毛(ごく稀に長軟毛がある、主に中脈に)。副咢(calyculi)は14~20個、伏せ(~開出)、しばしば、淡緑色、卵形~楕円状卵形の小苞、2~3列につき、長さ5~8㎜×幅2.8~4.5㎜、縁は狭く白色、薄膜質(たまに、外側のものに±縁毛があり)、先は尖鋭形~尾状、ときに強く角があり、先は暗色の薄膜質。総苞は暗緑色、±粉白を帯び、広鐘形、長さ15~20㎜。総苞片は14~20個、2列につき、披針形、幅2.1~2.8㎜、縁は±狭い薄膜質(下部は広く、又は外側の列では広くない)、先は強く角状、先端は帯紫色、中央が暗色になり、薄膜質、±微細不整歯がある。小花は120~150個、花冠は黄色、外側の外面に灰紫色の縞模様があり、長さ19~25㎜×幅1.3~2.3㎜。痩果は褐色~赤褐色、果体は倒披針形、長さ3~3.5㎜、円錐体(果頭=cone)は円錐形、長さ0.8~1㎜、嘴(冠毛托)は細く、長さ7.5~10㎜、うねは4~5本が目立ち(細かい15本以下)、面は下部が平滑(かすかにこぶがあり)、上部の1/4に微細突起がある。冠毛は帯黄色~クリーム色~白色、長さ7~8㎜。花期は7~8月。2n=32。単為生殖。
大雪山に生えるクモマタンポポ(Taraxacum yesoalpinum)は全体に小さく、頭花は直径約2㎝、総苞外片に角状突起がある。
32 Taraxacum ussuriense Kom. コウライタンポポ 高麗蒲公英
synonym Taraxacum ohwianum Kitam. [中国植物志]
synonym Taraxacum bornuurense R.Doll
synonym Taraxacum mandshuricum Nakai ex Koidz.
朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は东北蒲公英 dōng běi pú gōng yīng。別名はキバナコウライタンポポ。2n=16。草原や野原などに生える。
多年草。 葉は倒披針形、長さ10~30㎝、先は尖鋭形~鈍形、不規則に羽状浅裂~羽状深裂、頂裂片は菱状三角形または三角形、両側に4~5個の裂片があり、わずかに後方に向き、裂片は三角形~長三角形、縁は全縁またはまばらに歯があり、まばらに毛があるか、または両面が無毛。花茎は多数、高さ10~20㎝、花は葉を越えるか、または葉とほぼ同じ高さで、わずかにまばらに毛があり、先端近くまで白色の蜘蛛毛で密に覆われる。花序(頭花)は直径25~35㎜。総苞は長さ13 ~15㎜。外側の総苞片は花時に圧着し、広卵形、長さ6~7㎜×幅4.5~5㎜、先は鋭形またはわずかに鈍形、肥厚は無いかまたは目立たず、暗紫色、縁は狭い白色の膜質にない、辺縁にまばらに縁毛がある。内側の総苞片は線状披針形、外側の総苞片の長さの2~2.5倍あり、先は鈍形、角状突起がない。小舌は黄色、縁の小舌は背側に紫色の縞模様がある。痩果は長円形、わら黄色、長さ3~3.5㎜、上部に刺のような突起があり、下側はほぼ平滑、先はわずかにくびれ、円錐形~円筒形の嘴の基部になり、長さ0.5~1㎜、嘴は細く、長さ約8~11㎜。冠毛は白色、長さ8mm。花期と果期は4~6月。
北朝鮮から記載された Taraxacum ohwianum Kitamura は、中国で発生したことが何度か報告されている (e.g., FRPS 80(2): 43. 1999)。 Kitamura (Mem. Coll. Sci. Kyoto Imp. Univ., Ser. B, Biol. 24: pl. III, f. 4. 1957) に描かれたホロタイプはもはや現存せず、京都で本物の資料に頼らざるを得ない。 Taraxacum ohwianum は外側の総苞片は卵形で広く薄い縁取りがあり、痩果が薄わら色の長さ4.5~4.9㎜×幅1.1~1.3㎜で、果体の上部に密に短い刺があり、他は密に普通、密にいぼ状突起があり、次第に狭くなり、ほぼ円筒形(基部はほぼ円錐形で、上部は円筒形)の長さ1~1.3mmの円錐体(cone)になる。最も近い中国の分類群 (T. albomarginum、T. mandshuricum を含む)は痩果の刺の密度が実質的に低く、より狭く、円錐体がはるかに短く、T. ohwianum と同一視することはできない。T. ohwianum に属する説得力のある中国資料を見つけることができなかった(Flora of China)。
33 Taraxacum variegatum Kitag
中国(吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区)、ロシア原産。中国名は斑叶蒲公英 ban ye pu gong ying。草原、道端に生える。
高さ12~20㎝。 葉柄は緑色で、くも毛がまばらにあり、翼が狭い。葉身は濃緑色、± 広披針形、長さ9~20㎝×幅(2~)3~6㎝、まばらにくも毛があり、羽状全裂。側裂片は4~6対、幅の広い三角形の基部から狭まり、上部は線状三角形、または狭三角形、±開出し、下部の縁は±全縁または歯があり、上部の縁は普通、目立つ糸状の歯があり、先は鋭形、間の裂片(および裂片の基部)は目立つ褐紫色の斑点があり、縁には糸状の歯~小裂片がある。頂裂片は3深裂し、基部の小裂片は±開出し、先は鋭形。頂小裂は三角形~狭三角形、縁は基部に少数の歯があるか、または±全縁、先は鋭形。花茎は褐緑色、葉の高さとほぼ同程度で、まばらなクモ毛~クモ毛がある。頭花は幅4.5~5.5㎝。 総苞は幅 1.1~1.4㎝、基部は丸い。外側の総苞片は12~15個、緑色で中脈と縁は暗緑色、先端は普通、濃紫色を帯び、±覆瓦状ではなく、±広披針形~まれに狭披針形または±卵形、最も外側の総苞片は長さ(8~)9~11㎜×幅(2.5~)3~4㎜、直立し、脈が目立つ、淡色の縁は発達せず、縁は無毛、先には1~2.5㎜の太い角(つの)がある。 内側の総苞片は長さ1.6~1.9㎝、先は小角状(corniculate)。小舌は黄色。外側の小舌は±平らで、外面の縞模様は帯黒色。内側の小舌は先端の歯が±黄色。柱頭は汚黄色~淡灰黄色。葯は花粉があり、花粉粒は大きさが不規則。痩果は薄(黄色がかった)わら褐色、長さ(4~)4.1~4.4(~4.6)㎜×幅1.1~1.3㎜、果体全体または上部の約1/2のみに刺のある小鱗片(spinulose-squamulose)が密にあり、他の部分は±しわがあり、±ほぼ円錐形に急に狭まり、長さ(0.7~)0.8~0.9(~1)㎜×幅0.30.4㎜の円錐体になり、刺または小鱗片は短い。嘴は長さ8~9.5㎜、細い。冠毛は黄白色、長さ5~6㎜。花期は春。単為生殖(agamosperm)。
34 Taraxacum venustum Dahlst.
synonym Taraxacum robustum H.Koidz. in Bot. Mag. (Tokyo) 47: 92 (1933) アシブトシロタンポポ
synonym Taraxacum alpinum subsp. kalbfussii (Sch.Bip.) Hand.-Mazz.
synonym Taraxacum carinthiacum Soestヨーロッパ(オーストリア、ドイツ、イタリア、スイス)原産。亜高山帯~高山帯の乾いた~湿った栄養豊富な芝生の中、雪の小さな谷、小川の端、道端、細かい土壌が豊富な砂利地などに生える。
多年草(Taraxacum sect. Alpina)。高さ10~15(~20)㎝。頂裂片は側裂片とほぼ同じサイズで、±3角(かど)、3裂片、または矢形。側裂片は鈍く、短く、狭舌形~へら形、突出している。外側の総苞片は長さ(4~)5~7(~7.5)㎜。小舌は黄色。果実の嘴は長さ3~5(~6)㎜。 花粉はある。冠毛は白色。花期は7~9月。単為生殖(agamosperm)。2n=24。
アシブトシロタンポポ(Taraxacum robustum H.Koidz.in Bot. Mag. (Tokyo) 47: 92 (1933))がHeterotypic Synonymsとされているが、頭花は白色~白黄色で同一のものとは考えにくい。Kewscienceでは日本を分布区域から除いている。
エゾタンポポ(Taraxacum brachyphyllum H.Koidz.)はYListなど日本ではTaraxacum venustum H.Koidz.とされているが、先行のTaraxacum venustum Dahlst.が認められているため、KewscienceではTaraxacum brachyphyllum H.Koidz.としている。
35 Taraxacum yatsugatakense H.Koidz. ヤツガタケタンポポ 八ヶ岳蒲公英
日本固有種(八ヶ岳、南アルプス)。八ヶ岳の稜線など草地、岩場に生える。ミヤマタンポポ(Taraxacum alpicola)と区別しない見解もある。The Plant Listではエゾタンポポ(Taraxacum venustum H.Koidz.)のsynonym。
高さ10~25㎝。頭花は幅25~30㎜、黄色。総苞は長さ15~20㎜。総苞外片は卵形、総苞内片の長さの1/2以下、角状突起やカロース(callose)はない。花期は8月。3倍体2n=24。
36 Taraxacum yuparense H.Koidz. タカネタンポポ 高嶺蒲公英
synonym Taraxacum dissectissimum (Koidz.) H.Koidz.
日本固有種(北海道の夕張岳、日高山脈)。高山帯の蛇紋岩地やその周辺などに生える。別名はユウバリタンポポ。
多年草。高さ10~40㎝。根生葉は長楕円形、長さ5~20㎝×幅1.5~3㎝、羽状深裂、裂片の先は鋭形。頭花は明るい黄色、直径3~4㎝。総苞は長さ1.2~1.5㎝。総苞片は密着し、反り返らず、角状突起はない花期は(6)7~8月。2n=16。有性生殖。[J. Jap. Bot. 9: 358 (1933)]
36-1 Taraxacum yuparense H.Koidz. var. grandisquamatum Toyok. オオタカネタンポポ
総苞が長く、低山の蛇紋岩地に生育する
37 ハイブリッド
(1) Taraxacum officinale Weber ex F.H.Wigg. x T. platycarpum Dahlst. アイノコセイヨウタンポポ
(2) Taraxacum laevigatum DC. x T. platycarpum Dahlst. アイノコアカミタンポポ参考
1) Flora of ChinaTaraxacum
Taraxacum
Taraxacum .
Taraxacum
ヤマザトタンポポ
Taraxacum novum Japonicum (1)(Species insignis
日本産たんぽぽ属の研究(4)第三章たんぽぽ属ノ分類学的特徴の続き
日本産たんぽぽ属の研究(5)第四章邦産たんぽぽ属の種類
.日本産タンポポ属植物の染色体数
朝鮮及び中国東部におけるタンポポ属の2倍体種の分布
Compositae Novae Japonicae V日本菊科新植物(五)
芹沢俊介:淡黄色花タンポポの分類
芹沢俊介:オキタンポポは独立種である
羊蹄山のオダサムタンポポの研究史
北村四郎:日本菊科新植物(五)
p710 6 T. venustum DAHLST
Taraxacum Novum Orientali-Asiaticum I.
p92 Taraxacum robustum H. Komzumi sp. nov.