シシウド 猪独活

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Flora of Mikawa

セリ科 Apiaceae シシウド属

別 名 ウドタラシ
中国名 毛当归 mao dang gui
英 名 pubescent angelica
学 名 Angelica pubescens Maxim.
 synonym Angelica polyclada Franch.
シシウドの花序
シシウドの花
シシウドの小花序
シシウドの大花序
シシウドの未熟な果実
シシウドの果実
シシウド
シシウド
シシウド
シシウド実
花 期 8~11月
高 さ 100~200㎝
生活型 多年草
生育場所 山地の日当たりのよい草地
分 布 在来種(日本固有種)  本州、四国、九州
撮 影 豊田市 07.9.2
中国の独活(du huo)はAngelica biserrata 重齿当归(chong chi dang gui) =Angelica pubescens f. pubescens の根のことであり、古くから薬用に使われてきた。日本のシシウドAngelica pubescens とは別種とされている。
 葉はウコギ科のウドと同じような臭いがあり、食べられる。
 根は太い直根であり、薬用に用いられる。多年草であるが、冬には地上部は枯れる。大型で、茎が太く、中空、分枝し、褐色の細毛がある。葉は2~3回羽状複葉。小葉は長さ5~10㎝、鋸歯があり、先端の基部は翼状になる。葉柄の基部は鞘状に膨らむ。葉の両面の脈上に縮れた細毛がある。大散形花序に小さな白花を多数つける。大散形花序の柄は長さ3~18㎝と不揃い。総苞も小総苞片も無い。花弁は3~5個で、先が2裂し、やや内側に曲がり、わずかに黄色を帯びることもある。果実は長さ7~9(11)㎜、幅5~7㎜、翼は広く、2個に分果し、向き合ってつく。果実の表面の油管が明瞭に見える。2n=22
 類似の大型のハナウドは花期が春。
 アマニュウは花序を除き、無毛。小葉の基部が広い楔形~心形。狭三角形の小総苞片がある。果実は長さ6~7㎜、幅3~4㎜。

シシウド属

  family Apiaceae - genus Angelica

 2年草または多年草。 根はしばしば頑丈で、円錐形または円筒形。 葉は葉柄があり、葉鞘は著しく膨らむ。葉身は1~4回羽状複葉または1~3回3出羽状複葉。 複散形花序、頂生および側生。苞=総苞片は多数または少数、まれに欠く。大散形花序の柄(ray)は多数~ほとんど無い。小散形花序(Umbel1ets)の小苞=小総苞片(involucel1ate bracts)は 多数または少数、全縁、萼歯は廃れ又は卵状三角形。 花弁は白色、まれにピンク色または暗紫色、卵形~倒卵形、先は内側に曲がる。柱下体(stylopodium)は短い円錐形。果実は双懸果(cremocarp )、乾き、2個の分果(mericarp)はその合成面(commissure)で繋がり卵形~円形、背側が扁平。分果の背隆条(dorsal ribs)は糸状で、側隆条(lateral ribs)は広い~狭い翼があり、熟すと分離する。油管(vittae)はしばしば、各溝に1~2個、分果が接しあう合成面(commissure)に2~4個。種子は表面が平らまたはわずかに凹面状。分果柄(carpophore)は基部まで2裂する。
 世界に約90種以上があり、北半球の温帯に分布する。

シシウド属の主な種と園芸品種

1 Angelica acutiloba (Siebold et Zucc.) Kitag. トウキ 当帰
 日本、朝鮮、中国原産。中国名は东当归 dong dang gui。英名はJapanese Angelica。薬用に栽培される。
 多年草、高さ30~100cm。根は黄褐色、長さ10~25㎝×幅1~2.5㎝、強い芳香がある。茎は中実、帯紫色、細い肋がある。根生葉と下部の葉は葉柄がある。葉柄は長さ10~30㎝、葉鞘は長円形。葉身は三角状卵形、長さ10~25㎝、1~2回3出羽状複葉、無毛。 羽片は短い小葉柄があり、長さ2~9㎝×幅1~3㎝、3裂し、裂片は披針形、縁は不規則な鋭鋸歯状、先は尖鋭形~鋭形。花序柄は長さ5~20 cm、無毛または有毛。苞は無いかまたは1~数個つき、線状披針形、長さ1~2㎝。大散形花序の柄18~30本、不等長、毛がある。小苞は5~8個、線形、長さ5~15 mm。小散形花序は花が約30個つく。花柄は細い。萼歯は廃れる。花弁は白色、倒卵形~長円形。 果実は狭い長円形、長さ4~5×幅1~1.5 mm。背隆条は糸状で、側隆条は狭い翼がある。油管は各溝に3~4個、合成面に4~8個。花期は7~8月。果期は8~9月。
品種) 'Dong Dang Gui'
1-1 Angelica acutiloba (Siebold et Zucc.) Kitag. f. tsukubana Hikino ツクバトウキ 筑波当帰
 筑波山の岩上、割れ目に生える。
 分果が長さ3.5~4.5㎜×幅1~1.5㎜、隆条間に油腺が2~4個ある。花期は8~9月。
1-2 Angelica acutiloba (Siebold et Zucc.) Kitag. subsp. iwatensis (Kitag.) Kitag. ミヤマトウキ 深山当帰
  synonym Angelica iwatensis Kitag.
  synonym Angelica acutiloba (Siebold et Zucc.) Kitag. var. iwatensis (Kitag.) Hikino
 北海道南西部、本州中部地方以北に分布する。別名はイワテトウキ、ナンブトウキ。亜高山帯以上の岩礫地や渓流沿いの岩上などに生える。
 高山型亜種であり、小型で高さは20~50cm。トウキに比べて小葉や裂片が広い。果実は長さ4~6mm、楕円形、背隆条は脈状、側隆条は翼があり、油管は各溝に3~6個、合生面に8~10個。
1-3 Angelica acutiloba (Siebold et Zucc.) Kitag. var. sugiyamae Hikino ホッカイトウキ 北海当帰
 北海道に自生するホッカイヨロイグサとニホントウキの交雑とされている。
 根は主根が太くて長く、側根はやや少ない。草丈は高い。茎と葉柄の多くはトウキのように帯紫ではなく、緑色。

2 Angelica anomala Ave-Lall. アレナレノダケ 
  synonym Angelica jaluana Nakai
  synonym Coelopleurum rupestre (Koidz.) T.Yamaz. エゾヤマゼンゴ [Kew Science]
 (日本、)朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は狭叶当归 xia ye dang gui。英名はwild celery , dang gui。
 Kewscienceではエゾヤマゼンゴ(Coelopleurum rupestre)を含め、日本も分布域に含めている。
 多年草、高さ80~150㎝。 根は丈夫、黄褐色、円錐形、最大・長さ20㎝×幅3㎝。 茎は帯紫色、薄い肋あり、毛がある。根生葉および下部の葉の葉柄は長さ5~13 cm、鞘は狭長円形、抱茎、密に毛がある。葉身は三角状卵形、長さ15~30㎝×幅8~25㎝、2~3回3出羽状複葉、羽片は2~4対、無毛。 小葉は無柄、楕円形~披針形、長さ2~4㎝×幅0.3~1.5㎝、ときに3裂し、基部はわずかに沿下し、縁は白色の軟骨質で、微突状鋸歯がある。花序柄、大散形花序の柄、及び花柄にはすべて密に小剛毛がある。花序柄は長さ5~20㎝。苞は無いか、または1個、脱落性。大散形花序の柄は20~45本、ほぼ等長。小苞は3~7個、錐形、有毛。小散形花序()は花が20~40個つく。萼歯は廃れる。花弁は白色、倒卵形。果実は楕円形、長さ4~6㎜×幅3~4㎜、背隆条は糸状、側隆条には広い翼がある。ハネビロノスリ。油管は各溝に1個、合成面に2個。花期は7~8月。果期は8~9月。n=22。

3 Angelica archangelica L. セイヨウトウキ 西洋当帰
 ヨーロッパ原産。英名はgarden angelica。湿原や山地に自生する。観賞用と料理用の両方の目的で庭で長年、栽培されてきた。薬用としてヨーロッパとアジアで長い民俗的な歴史がある。
 料理の用途には次のものがある。(1)葉をサラダに混ぜることができる。(2)茎と若い芽はセロリのように使用するか、ケーキの装飾やスナックに砂糖で結晶化することができる。(3)葉、種子、根をお茶に使用できる。(4)種子はリキュールの風味付けに商業的に使用されてる(Chartreuseとして)。
 2年草、高さ90~180㎝、最初の年は複葉の塊を作り、苦味のある黄緑色の葉は、独特の膨らんだ茎の基部をもつ。2年目に中空で頑丈な茎が180㎝の高さに伸び、大きく魅力的な球形の複散形花序(直径15㎝以下)に多数の花が咲く。花は小さく、緑白色。初夏に咲き、種子は晩夏に熟す。種子が成熟した後、植物は全て枯れる。花期は6~8月。
品種) 'Blbp01' , 'Corinne Tremaine' (v) , 'Markusteigen'

4 Angelica boninensis Tuyama  ムニンハマウド 
  synonym Angelica japonica A.Gray var. boninensis (Tuyama) T.Yamaz.
 日本固有種(小笠原諸島)

5 Angelica cartilaginomarginata (Makino ex Y.Yabe) Nakai
5-1 Angelica cartilaginomarginata (Makino ex Y.Yabe) Nakai var. cartilaginomarginata ヒメノダケ 姫野竹
 本州(近畿)、四国、九州に分布。別名はツクシノダケ、キビノダケ。山地の日当たりの良い草原に生える。
 高さ50~80cm。茎は直立し、上部で分枝する。葉は葉柄があり、葉柄の下部は鞘になり、鞘は膨らまない。葉身は1回羽状複葉。小葉は3~5個、小葉柄は無く、縁に鋸歯がある。頂生の複散形花序は長さ約10㎝。総苞片はない。小総苞片は少数つき、線形。花は白色、直径約2mm。花弁は(3~)5個。果実は広楕円形、長さ約2mm。花期は8~11月。
5-2 Angelica cartilaginomarginata (Makino ex Y.Yabe) Nakai var. distans (Nakai) Kitag. オニシラハノダケ 
5-3 Angelica cartilaginomarginata (Makino ex Y.Yabe) Nakai var. matsumurae (H.Boissieu) Kitag. コウライヒメノダケ  synonym Angelica boissieuana Nakai
  synonym Angelica cartilaginomarginata (Makino ex Y.Yabe) Nakai var. matsumurae (H.Boissieu) Kitag. f. latipinna Kitag.
 四国に分布する。小葉が細長く、切れこみが少ない。

6 Angelica cryptotaeniifolia Kitag.  ミヤマノダケ 深山野竹
  synonym Angelica gigas Nakai var. minor Momiy.
  synonym Angelica gigas auct. non Nakai
 日本固有種(九州、四国)。別名はイシヅチノダケ。丘陵地の林縁などに生える。
 ノダケに似るが、全体に大きく、小葉は大きくて薄く、基部が葉柄に流れず翼にならない。  高さ80~180㎝。茎はよく分枝する大型の一稔性草で、開花まで数年かかり、開花、結実した後に枯れる。葉は3出羽状複葉、小葉は幅の広い長卵形で小葉柄があり、その基部は葉柄に流れず翼にならない。頂生の複散形花序、暗紫色の5弁花を多数、密につける。果実は長さ4mm×幅2.5mm、側隆条の翼は幅0.5mm。花期は8~11月。
6-1 Angelica cryptotaeniifolia Kitag. var. kyushiana T.Yamaz.  ツクシミヤマノダケ 筑紫深山野竹
 九州に分布。葉や花はミヤマノダケと差がないが、果実が異なる。果実は長さ6に離×幅4mm、側隆条の翼の幅は1mm。

7 Angelica czernaevia (Fisch. et C.A.Mey.) Kitag.  タチウド 
  synonym Czernaevia laevigata Turczaninow var. laevigata [Flora of China]
 朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は柳叶芹 liu ye qin
7-1 Angelica czernaevia (Fisch. et C.A.Mey.) Kitag. f. flaccida (Kom.) Pimenov  ウスゲタチウド 

8 Angelica dahurica (Hoffm.) Benth. et Hook.f. ex Franch. et Sav. ヨロイグサ 鎧草
  synonym Angelica porphyrocaulis Nakai et Kitag.  コバノヨロイグサ 
 日本、朝鮮、中国、台湾、ロシア原産。中国名は白芷 bai zhi。低地や低山地の湿地の草原に生える。
 多年草、高さ1~2.5m、頑丈。根は円筒形、褐色、太さ3~5㎝、強い芳香がある。茎は紫緑色で、太さ2~5(~7~8)㎝、肋があり、上部には毛がある。根生葉と下部の葉は長い葉柄あり、葉鞘は長円形で膨らみ、無毛。葉身は三角状卵形、長さ30~50㎝×25~40㎝、2~3回3出羽状複葉。小葉は無柄、長円状楕円形~長円状披針形、長さ4~10㎝×1~4㎝[、最終裂片は小さくて長さ2~8cm×幅0.7~3㎝]、基部はわずかに沿下し、縁は白色の軟骨質で粗い尖頭の鋸歯状、先は鋭形、上面は脈に毛がある。上部の葉は小さく、鞘は袋状に膨らみ、葉身が無い。散形花序は直径10~30cm。花序柄は長さ5~20㎝、ザラつく。苞は無いか又は1~2個つき、最上部の葉に似ている。大散形花序の柄は18~40(~70)本、短毛がある。小苞は多数、線状披針形、ザラつく。花柄は多数、ザラつく。萼歯は廃れる。花弁は白色、倒卵形、ノッチがある。子房は無毛または有毛。果実はほぼ円形、長さ4~7mm×幅4~6mm、背隆条は目立ち、鈍く太く丸みがあり、溝よりはるかに広く、側隆条は広い翼がある。油管は各溝に1個、合成面に2個。花期は7~8月。果期は8~9月
8-1 Angelica dahurica var. dahurica
 子房と果実は無毛。n=11。
8-2 Angelica dahurica (Hoffm.) Benth. et Hook.f. ex Franch. et Sav. var. formosana (H.Boissieu) Yen  タイワンシシウド 台湾猪独活
  synonym Angelica formosana H.Boissieu
 台湾原産。中国名は台湾当归 tai wan dang gui。
 植物は丈夫。上部の散形花序は密に毛があり、下部の散形花序は無毛又はまばらに毛がある。子房と果実に毛がある。

9 Angelica decursiva (Miq.) Franch. et Sav. ノダケ 野竹  本州(関東地方以西)、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、ロシア、ベトナム原産。中国名は紫花前胡 zi hua qian hu。山野の林内、林縁に生える。
 多年草、高さ80~150㎝。茎は暗紫色を帯び、縦脈がある。葉は3出羽状複葉、小葉の基部は翼状になり、小葉の柄はない。小葉は長楕円形~長卵形、縁に粗い鋸歯がある。複散形花序に暗紫色(まれに淡緑色)の花をつける。花序の柄はほぼ同長で花序が丸くなる。花序の基部には葉の退化した袋状の葉柄がつき、蕾のときは帽子をかぶったように見える。小総苞片は濃紫色、全縁。果実はやや厚い翼がつき、長さ4~6㎜の扁平な広楕円形。2n=22。花期は9~11月。
9-1 Angelica decursiva (Miq.) Franch. et Sav. f. albiflora (Maxim.) Nakai  シロバナノダケ 白花野竹
 花弁が白色の品種。
9-2 Angelica decursiva (Miq.) Franch. et Sav. f. angustiloba (Makino) Hatus. et Nakash.  ホソバノダケ 
  synonym Angelica decursiva (Miq.) Franch. et Sav. var. angustiloba (Makino) Honda
9-3 Angelica decursiva (Miq.) Franch. et Sav. f. discolor (Makino) Hatus. et Nakash.  ウスイロノダケ 

10 Angelica edulis Miyabe ex Y.Yabe  アマニュウ 甘にゅう
 日本固有種(北海道、本州の中部地方以北、中国地方、四国)。英名はedible angelica。別名はマルバアマニュウ、マルバエゾニュウ。山地や草原に生える。
 多年草、高さ1~2(3)m。茎は直立し、中空、上部で分枝する。葉は互生し、茎の全部または下部につく葉柄の基部は多少、膨れ鞘状になる。葉身は1~2回3出羽状複葉。小葉は広卵形~菱状広卵形、長さ幅ともに10~20cm、基部は心形、縁は鋭鋸歯、頂小葉はさらに3中裂し、先は鋭形、やや質が薄く、上面は鮮やかな緑色、光沢があり、下面は脈上に毛がある。茎先や分枝した枝先に直径20cm以上の大型の複散形花序をつけ、小さな花を密につける。大散形花序の柄(ray)は25~30本ある。苞は無く、小苞は数個。花柄は30~50個。花弁は5個、白色、先が内側に曲がる。雄しべは5本、花弁より長く、突き出る。果実は長楕円形、長さ6~7mm、背隆条は3本、側隆条はやや狭い翼が張り出す。油管は各溝に1個、合生面に2個ある。花期は7~8月。

11 Angelica furcijuga Kitag. ヒュウガトウキ 日向当帰
  synonym Angelica tenuisecta (Makino) Makino var. furcijuga (Kitag.) H.Ohba
 日本固有種(宮崎県、大分県)。日当たりの良い林縁の岩場に生える。イヌトウキと同様、日本山人参と呼ばれる。br>  多年草、高さ1.8~2.5m。茎は直立し、分枝する。葉は1~2回3出羽状複葉。小葉と最終裂片は卵形または長披針形、先は長く尾状に細まる。大散形花序は直径5~15㎝。小散形花序は直径0.5~1㎝。花弁は初め緑色で、ときに赤みを帯び、後に白色となる。非常によく似た近縁のイヌトウキと違い、本種は一回結実性ではない。また、DNA多型解析による系統分類によりイヌトウキとは別種であることが確認されている(参考13)。花期は6~8月。

12 Angelica genuflexa Nutt.  オオバセンキュウ 大葉川弓
  synonym Angelica genuflexa Nutt. var. multinervis (Koidz.) M.Hiroe
  synonym Angelica genuflexa Nutt. subsp. refracta (F.Schmidt) M.Hiroe
  synonym Angelica refracta F.Schmidt
 本州(中部地方以北)、中国、ロシア、北アメリカ原産。中国名は毛珠当归 mao zhu dang gu。英名はkneeling angelica。
 多年草、高さ60~150㎝。茎は中空、無毛、葉がつく反対側にやや屈折して、上へ伸びる。葉は1~2回3出羽状複葉、両面の脈上に毛がある。小葉の長さは3~8㎝、縁はやや不揃いに切れ込み、単鋸歯状になり、裂片の先に突起状の毛がある。上部の葉柄の基部は袋状の鞘となる。花は複散形花序につく。大散形花序の柄40~50本、ほぼ同長。総苞片は無く、小総苞片は数個つき目立つ。花弁は白色~帯紫色、5個、外側の花弁がやや大きくなり、先が内曲する。雄しべ5個、葯は白色。花柱2個。果実は長さ、4~5㎜、幅広の翼がある。花期は7~9月。

13 Angelica gigas Nakai  オニノダケ 鬼野竹
 日本(九州の大分県・宮崎県)、朝鮮、中国原産。中国名は朝鲜当归 chao xian dang gui。英名はpurple angelica。低山地の林縁や湿った河岸に生える。
 多年草、高さ1~2 m、頑丈。根は円錐形、灰褐色、太さ2~5㎝。茎は帯紫色、肋がある。根生葉と下部葉は葉柄があり、葉柄は長さ30~45㎝、鞘は広い。葉身は外形が三角状卵形、長さ20~40㎝×幅20~30㎝、2~3回3出羽状複葉、基部の羽片は小は柄がある。小葉は長円状披針形、長さ4~15㎝×1.5~5㎝、基部は沿下し、縁は不規則な粗い歯があり、先は鋭形、上面は脈がわずかにザラつく。上部の葉は紫緑色で、鞘は広く膨らみ、しばしば葉身がない。散形花序は紫色、ほぼ球形、直径5~8㎝、果時には最大12㎝になり、花序柄がある。大散形花序の柄(ray)はおよび花柄はすべて小剛毛がある。花序柄は長さ2~6㎝。苞は2個、袋状になり、暗紫色。大散形花序の柄は多数、丈夫、2~3㎝。小苞は暗紫色、数個、卵状披針形。花柄は多数、長さ3~8㎜。萼歯は廃れる。花弁は暗紫赤色、倒卵形。葯は紫色。果実は楕円形、長さ5~8㎜×幅3~5㎜、背隆条は明瞭、側隆条は広い翼がある。油管は各溝に1(~2)個、合成面で2(~4)個。花期は7~8月。果期は8~9月。n=11。
品種) 'Atropurpurea' , 'Gold Leaf' , 'Pershore Limelight'

14 Angelica hakonensis Maxim. イワニンジン 岩人参
  synonym Angelica nikoensis Y.Yabe ノダケモドキ
  synonym Angelica hakonensis Maxim. f. nikoensis (Y.Yabe) Kitam.
  synonym Angelica hakonensis Maxim. var. nikoensis (Y.Yabe) H.Hara
 本州(関東、東海)に分布し、山地の岩石地に生える。
 多年草。高さ30~120㎝。葉は(1)2~3回3出複葉、葉柄は長く基部は鞘状になる。小葉や裂片は楕円形~卵形~広卵形、中央部の幅が最も広く、長さ3~10(15)㎝、質はやや厚く、基部はくさび形~広くさび形、縁は鋭い鋸歯があり、先は尖鋭形、下面は淡色。複散形花序はやや小さめで、大散形花序の柄は10~30本、長さ2~5㎝、やや不等長。小苞(小総苞)、花柄(小花柄)ともに短毛が密生する。花は淡緑色、緑白色、白色、又は帯紫色。果実は長さ5~7㎜×幅3~4mm、楕円形、背隆条は細く、側隆条はやや広い翼となる。油管は背側の各溝に1個、合生面に2個ある。花期は8~9月。

15 Angelica hirsutiflora T.S.Liu, C.Y.Chao et T.I.Chuang  ナンゴクハマウド 
  synonym Angelica japonica A.Gray var. hirsutiflora (A.H.Liu, C.Y.Chao et T.I.Chuang) T.Yamaz.
 台湾原産。中国名は滨当归 bin dang gui。

16 Angelica inaequalis Maxim. ハナビゼリ 花火芹
 日本固有種(本州の東北以南、四国、九州)。山地に生える。
 多年草。高さ60~100㎝。茎は直立し、少数、分枝する。葉は互生し、2~3回3出羽状複葉、葉柄は下部が長い鞘状になるが、膨れない。小葉は長卵形~広卵形、質が薄く、粗い鋸歯があり、先が尖り、上面は濃緑色、下面は淡緑色。まばらな複散形花序を頂生する。大散形花序の柄は約10本、長く、長短がありバラバラ、無毛、平滑。花柄も不等長。苞(総苞片)は1~2個、小苞(小総苞片)は4~6個、いずれも線形。花は白色~紫緑色。果実は長さ7~8㎜×幅6~7㎜、背隆条は稜が低く、側隆条は広くて薄い翼になる。花期は8~9月。

17 Angelica japonica A.Gray  ハマウド 浜独活
  synonym Angelica kiusiana Maxim.
 本州(関東以西)、四国、九州、沖縄原産。海岸に生える。
 多年草。高さ100~150㎝。茎は太く、赤色の筋がある。葉は1~2回、3出複葉、葉柄の基部は膨らみ鞘状になる。小葉は厚く、光沢があり、細かい網状脈と細かい鋸歯がある。葉柄と葉軸の上面に開出毛が密生する。大散形花序の柄は20本以上つく。花は小さな白色の5弁花。果実は長さ7~10㎜、幅5~7㎜の広惰円形、翼の幅が広く、厚みがある。花期は4~6月。

18 Angelica keiskei (Miq.) Koidz.  アシタバ 明日葉
 日本固有種(本州の関東地方南部、伊豆諸島、東海地方、紀伊半島、小笠原諸島)。別名はハチジョウソウ。
 多年草。高さ50~120㎝。若葉は好んで食べられ、野菜としても栽培されている。和名は葉を摘んでも明日には葉がまた出てくるほど強いことから。全体にほぼ無毛。葉は2回3出複葉。小葉は広卵形で、羽状に切れ込み、不揃いの粗い鋸歯がある。葉柄の基部が袋状に膨らんで鞘状になり、茎の上部では葉身が退化して鞘だけになる。大散形花序に淡黄緑色~淡白緑色の小さな花を多数つける。大散形花序の柄は10数本、長さ2~7㎝。総苞片はなく、広線形の小総苞片は数個つく。小総苞片は縁が全縁又は繊維状になるが、裏面は無毛。果実は長さ7~10mmの長楕円形。茎や葉柄を切ると鮮やかな黄色の汁が出る。切ってから1日経っても鮮やかな黄色は変化しない。この色素はカルコン類である。花期は8~11月。

19 Angelica longiradiata (Maxim.) Kitag. ツクシゼリ 筑紫芹
 日本固有種(本州の岡山県、九州)。山地のやや乾いた草地に生える。
 多年草、高さ20~40㎝。根は太く、茎は低く、葉が横に広がる。葉柄の基部は、下部または全部が鞘状に膨れる。葉は2~3回3出羽状複葉。小葉は多数、中~深裂し、最終裂片は細い。苞は無い。大散形花序の柄は7~27本。小苞(小総苞片)は線形、数個~約10個。花柄は(5)10~35本。花は白色。果実は扁平な楕円形、約長さ3.5㎜×幅2mm、背隆条は稜がやや高く縁は尖り、側隆条は狭い翼になる。花期は8~9月。
19-1 Angelica longiradiata (Maxim.) Kitag. var. yakushimensis (Masam. et Ohwi) Kitag. ヒナボウフウ 雛防風
 屋久島の高地に生えるツクシゼリの矮性形。高さ2~10㎝。小苞が分裂し、果実は小さい。別名はヤクシマツクシゼリ。

20 Angelica minamitanii T.Yamaz. ヒュウガセンキュウ 日向川弓
 本州(長野県、富山県、広島県)、四国(高知県)、九州(宮崎県、熊本県)に分布。和名は宮崎県で最初に発見されたことに因む。山地のやや湿った場所に生える。オオバセンキュウとの違いは①鋸歯が大きい(数が少ない)、②葉裏の葉脈の網目が大きい(オオバは網目が細かい)
 多年草、高さ60~200㎝。茎は無毛、直立し、上部で分枝する。葉は1~3回3出複葉。小葉は卵形から長円状卵形で、先は鋭形から鋭尖形である。多年草.草丈100~200 cm..葉は2~3回3出羽状複葉,無毛,小葉は卵形から菱状長卵形,鋸歯はやや大きく、不規則で、まれに不揃いに切れ込む。葉は下方へ弓上に曲がる。花序は大型の複散形花序、花が密につく。大散形花序の柄は多数。小総苞片は糸状で数個。花弁は白色、毛がある。分果は広楕円形、扁平、毛がある。花期は7~9月。2n=110(x=11)

21 Angelica morii Hayata モリゼンゴ 
 中国、台湾原産。中国名は福参 fu shen。

22 Angelica morrisonicola Hayata
22-1 Angelica morrisonicola Hayata var. morrisonicola  ニイタカシシウド 
 台湾原産。中国名は玉山当归 yu shan dang gui。
22-2 Angelica morrisonicola Hayata var. nanhutashanensis T.S.Liu, C.Y.Chao et T.I.Chuang  ナンコシシウド
 台湾原産。中国名は南湖当归 nan hu dang gui。

23 Angelica polymorpha Maxim.  シラネセンキュウ 白根川弓
 本州、四国、九州、朝鮮、中国原産。中国名は拐芹 guai qin。英名はChinese Angelica。山地の林縁、渓流沿い、湿地に生える。
 多年草。高さ50~150㎝。根は円錐形、灰褐色。茎は単一、節付近は紫色を帯び、葉がつく反対側にやや屈折して、上へ伸び、無毛又はわずかに有毛。葉柄は長さ15㎝以下、上部の葉柄の基部は袋状の鞘となり、葉鞘は狭長楕円形。葉身は長さ15~30㎝、幅15~25㎝、2~3(4)回3出羽状複葉、中軸と小葉柄は屈曲し、質が薄く、葉裏は無毛。小葉は長さ3~5㎝、幅2.5~3.5㎝、卵形~菱状長楕円、縁は不規則に2~3裂し、欠刻状尖頭の重鋸歯になり、裂片の先は尖る。葉の両面の葉脈に沿ってざらつき、又は葉裏は無毛。複散形花序は直径4~10㎝。散形花序の柄や花柄には小剛毛が密生する。総苞片は無いか、又は1~3個、狭披針形、縁毛がある。大散形花序の柄(ray)は10~20(30)本、長さ1.5~3(3~10)㎝。小総苞片は7~10個つき、小花柄と同長程度の狭線形、縁毛があり、紫色を帯びることがある。花弁は白色、へら形、5個、外側の花弁がやや大きくなる。雄しべ5個、葯は白色。花柱2個。果実は長さ6~7㎜、幅3~5㎜、長楕円形、側隆条は明瞭な幅広の薄い翼となり、背隆条は稜となるものとごく狭い翼となるものが混じる。油管はそれぞれの溝ごとに1本、合成面に2本。2n=22。花期は8~11月。
23-1 Angelica polymorpha Maxim. f. lineariloba T.Yamaz.  ホソバシラネセンキュウ 

24 Angelica pseudoshikokiana Kitag.  ツクシトウキ 筑紫当帰
  synonym Angelica saxicola Makino var. taneyoshiana Momiy.
 日本固有種(九州の長崎県・大分県)。山地の日当たりのよい岩場に生える。別名はクロカミトウキ。
 高さ30~90㎝。茎は直立、上部で分枝する。葉は2~3回3出羽状複葉。小葉は1~3対つき、長卵形~狭卵形、長さ約5㎝、縁に低鋸歯があり、先は尖鋭形、上面脈上に短毛があり、下面は無毛、ヤクシマノダケに似るが、油点はない。複散形花序は幅6~15㎝、小さな花を多数つける。花弁は帯緑色。葯は紫色。花期は6~8月。

25 Angelica pubescens Maxim. シシウド 猪独活
 日本固有種(本州、四国、九州)。中国名は毛当归 mao dang gui。英名はpubescent angelica。別名はウドタラシ
 葉はウコギ科のウドと同じような臭いがあり、食べられる。
 多年草。高さ100~200㎝。根は太い直根であり、薬用に用いられる。多年草であるが、冬には地上部は枯れる。大型で、茎が太く、中空、分枝し、褐色の細毛がある。葉は2~3回羽状複葉。小葉は長さ5~10㎝、鋸歯があり、先端の基部は翼状になる。葉柄の基部は鞘状に膨らむ。葉の両面の脈上に縮れた細毛が密にあり、下面は淡緑色で白味を帯びることはない。大散形花序に小さな白花を多数つける。大散形花序の柄は長さ3~18㎝と不揃い。総苞も小総苞片も無い。花弁は3~5個で、先が2裂し、やや内側に曲がり、わずかに黄色を帯びることもある。果実は長さ7~9(11)㎜、幅5~7㎜、翼は広く、2個に分果し、向き合ってつく(向き合った面が合生面)。果実の表面の油管が明瞭に見え、油管はやや小さく、細く、溝に1~4個あり、合生面の左右にそれぞれ 2~3個のやや扇平な油管がある。花期は8~11月。2n=22。
25-1 Angelica pubescens Maxim. var. matsumurae (Y.Yabe) Ohwi ミヤマシシウド 
  synonym Angelica matsumurae Y.Yabe  ミヤマシシウド
 葉軸と葉身の両面脈上に粗い毛があり、裏面は淡緑色で白味を帯びることはない。

26 Angelica sachalinensis Maxim. エゾノヨロイグサ 蝦夷の鎧草
26-1 Angelica sachalinensis Maxim. var. sachalinensis  エゾノヨロイグサ 蝦夷の鎧草
  synonym Angelica anomala auct. non Ave-Lall.
  synonym Angelica cincta auct. non H.Boissieu
  synonym Angelica anomala Ave-Lall. subsp. sachalinensis (Maxim.) H.Ohba
  synonym Angelica amurensis Schischk. [Flora of China]
 日本(北海道、本州の本州の東北地方の太平洋側、中部地方以北および山陰地方)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は黑水当归 hei shui dang gui。山地の林縁など、日当たりのよい場所に生える。エゾノヨロイグサは大型で葉の最終裂片も大きく、小苞が無い。葉の羽片の付着部に僅に毛があり、表面脈上に点状の毛があるほか無毛であり、裏面は白味を帯びる。果実は普通、長さ6~7㎜×幅5㎜のほぼ円形。
 多年草、高さ60~150cm、ときに2mを超える。根は円錐形、黒褐色、太さ1.5~3㎝、刺激性の芳香がある。 茎は丈夫で、帯紫緑色、上部に微軟毛がある。根生葉と下部の葉は長い葉柄があり、葉鞘は帯紫色、長円状卵形。 葉身は広三角状卵形、長さ20~40㎝×幅20~30㎝、2~3回3出羽状複葉、羽片は2~3対、小葉柄があり、羽片の付着部にわずかに毛がある。小葉はほぼ無柄、卵形~長円状卵形、長さ3~8㎝×幅1.5~4㎝[最終裂片は披針形~狭卵形、長さ9~20㎝×幅4~9cm]、基部はくさび形、縁は白色の軟骨質の欠刻状の微突形の鋸歯があり、先は鋭形、下面は毛がある。花序軸、花序柄、 大散形花序の柄、及び花柄はすべて密に小剛毛がある。花序柄は長さ6~20㎝。苞はない。大散形花序の柄は20~45本、不等長。小苞は5~7個[ほとんど無い]、披針形、絨毛がある。小散形花序は花が30~45個つく。萼歯は廃れる。花弁は白色、広卵形で、長さ約1mm。 果実は楕円形~ほぼ円形、長さ5~7mm×幅3~5mm、 背隆条が目立ち、側隆条は翼があり、翼は果体の幅と同じかそれよりも広い。油管はやや太く、断面が円い油管1個が各溝につき、合成面の左右にそれぞれ1個ときに2個の楕円形の油管がつく。花期は7~8月。果期は8~9月。n=22。(Flora of China)[日本産は参考7,8]
26-1-1 Angelica sachalinensis Maxim. var. sachalinensis f. pubescens (T.Yamaz.) T.Yamaz. ケエゾノヨロイグサ 
  synonym Angelica sachalinensis Maxim. var. pubescens T.Yamaz.
  synonym Angelica anomala Ave-Lall. subsp. sachalinensis (Maxim.) H.Ohba
 北海道と本州の栃木県に分布する。
26-1-2 Angelica sachalinensis Maxim. var. sachalinensis f. saninensis T.Yamaz. サンインヨロイグサ 山陰鎧草
 本州(京都府、岡山県、鳥取県)に分布する。
 葉の下面に毛がなく、淡緑色で白味を帯びない。果実は背面の溝に油管が1(-2)本ずつつく。
26-2 Angelica sachalinensis Maxim. var. glabra (Koidz.) T.Yamaz. ミチノクヨロイグサ 陸奥鎧草
  synonym Angelica matsumurae Y.Yabe var. glabra Koidz.
  synonym Angelica pubescens Maxim. f. glabra (Koidz.) Murata
  synonym Angelica anomala Ave-Lall. subsp. sachalinensis (Maxim.) H.Ohba var. glabra (Koidz.) H.Ohba
  synonym Angelica pubescens Maxim. var. matsumurae (Y.Yabe) Ohwi f. muratae Ohwi
 本州(青森県~石川県の日本海側)に分布する。別名はケナシミヤマシシウド。ミヤマシシウドに似るが毛が無い。低山から亜高山の草地や林縁などに生える。
 高さ1~2m、ときに2m以上になる。茎は中空、太く、よく分枝する。葉は互生し、大きく、葉柄の基部は大きな鞘となる。葉身は2~3回3出複葉。葉の最終裂片は広披針形~狭卵状長円形、鋸歯縁、先は尖鋭形、下面は無毛、白味を帯びる。総苞片も小総苞片もない。花は白色。果実は油管が背面の溝に1~2個、合生面の左右に各2~3個つき、扇平な、背面はエゾノヨロイグサに、合生面はシシウドに似て両者の中間型である。花期は6~8月。
26-3 Angelica sachalinensis Maxim. var. kawakamii (Koidz.) T.Yamaz.  ホソバノヨロイグサ 
  synonym Angelica anomala Ave-Lall. var. kawakamii (Koidz.) Kitag.
 北海道利尻島に分布する。葉が細いだけでなく、果実が小さく長さ4~5mm×幅3~4mm、広楕円形。

27 Angelica saxicola Makino ex Y.Yabe  イシヅチボウフウ 石鎚防風
 日本固有種(四国の高知県と愛媛県)。石鎚山系の稜線付近の岩礫地に生える。
 多年草で、高さ20~80㎝。茎は多数、分枝し、毛があるがトサボウフウよりやや少ない。葉は互生し、葉柄は無毛またはわずかに微毛があり、鞘は倒卵形で膨大する。葉身は1~2回3出羽状複葉、小葉は中~深裂し、裂片は長卵形で鋭く粗い鋸歯があり、葉質は厚く、上面に強い光沢があり、毛は脈上だけにあり少なく、縁に毛がある。複散形花序は数個つき、平たく、軟毛がある。大散形花序の柄はほぼ同長。小散形花序に白色の花が多数つく。小総苞片は線形。花柄に毛がある。萼歯は小形ながら三角形で明瞭。子房は無毛。花柱は細くて曲る。果実は長楕円形。花期は7~8月。

28 Angelica shikokiana Makino ex Y.Yabe イヌトウキ 犬
 日本固有種(本州の紀伊半島、四国、九州)。朝鮮人参のように使用され、ヒュウガトウキ(Angelica furcijuga)とともに日本山人参と呼ばれる。
 シナノノダケに似るが、花柄は無毛またはほぼ無毛で、腺毛はない。山地の向陽の岩壁や河原の岩地に生える。  多年草、高さ40~80㎝。全草無毛。茎は下部からよく分枝する。葉は互生、1~3回3出羽状複葉。小葉は長卵形、長さ4~8㎝、先は尾状に伸び、縁には低い鋸歯があり、葉質はやや厚く、葉の上面には光沢はなく、無毛、下面はやや白色を帯びる。複散形花序は直径6~15㎝。総苞片はない。小総苞片は少なく、線形。萼歯はない。花は白色、小さく、多数つく。花柄には毛も腺毛はない。果実は長卵形、長さ6~7㎜、基部は湾入し、分果の背隆条は脈状、側隆条は狭い翼状、油管は各背溝に1個ずつ、合生面に2個ある。花期は8~9月。
28-1 Angelica shikokiana Makino ex Y.Yabe var. mayebarana (Koidz.) H.Hara クマノダケ
  synonym Angelica mayebarana (Koidz.) Kitag.
  synonym Angelica tenuisecta (Makino) Makino var. mayebarana (Koidz.) H.Ohba
 九州(佐賀、熊本)に分布する。カワゼンコに似るが、茎は高さ30~80cm。花弁は緑色。

29 Angelica sinanomontana Kitag. シナノノダケ 信濃野竹
 日本固有種(長野県)。
 多年草、高さ約1m。葉の形は変異が大きく、最終裂片の小葉は卵形~披針形、基準標本では卵形。花弁が円形で先は反曲し,上部の縁は著しく波を打つ。花柄に乳頭突起状の短毛が密生する。果実は楕円形、約・長さ7mm×幅5㎜、無毛、背隆条は3本、ときに5本、糸状。側隆条は幅約1.2mmの翼がある。油管は背側に4個、間に1個。合成面(commissure)には2個。

30 Angelica sinensis (Oliv.) Diels ホントウキ 本当帰
 中国原産。中国名は当归 dang gui。
品種) 'Summer Delight'

31 Angelica stenoloba Kitag. ホソバトウキ 細葉当帰
  synonym Angelica acutiloba (Siebold et Zucc.) Kitag. var. lineariloba (Koidz.) Hikino
  synonym Angelica acutiloba (Siebold et Zucc.) Kitag. subsp. lineariloba (Koidz.) Kitam.
 日本固有種(北海道)。高山の蛇紋岩地帯に生える。
 多年草、高さ30~80㎝。茎は基部からよく分枝する。葉柄の基部は鞘状。葉は2~3回3出羽状複葉。葉の最終裂片は広線形、幅は3㎜以下、先は尖鋭形、質は硬く、光沢があり、縁には規則的な鋸歯があり、下面は紫色を帯びる。複散形花序に白色の小さな花を多数つける。小総苞片は少なく、糸状。花弁は5個、内側に巻き込む。花期は7~8月。
31-1 Angelica stenoloba Kitag. f. lanceolata (Tatew.) H.Hara トカチトウキ 十勝当帰
  synonym Angelica stenoloba Kitag. var. valens Kitag.
  synonym Angelica acutiloba (Siebold et Zucc.) Kitag. subsp. lineariloba (Koidz.) Kitam. f. lanceolata (Tatew.) S.Watan. et Kawano
  synonym Angelica acutiloba (Siebold et Zucc.) Kitag. var. lanceolata (Tatew.) Ohwi
 日高山脈に産。別名はオオホソバトウキ。小葉は幅約1㎝。

32 Angelica sylvestris L. ワイルドアンジェリカ
 中国、ロシア、ヨーロッパ原産。中国名は林当归 lin dang gui。英名は Wild angelica。
 多年草、高さ0.8~2m。根は円錐形、太く、わずかに芳香がある。 茎は太さ1~2.5㎝で、肋があり、散形花序の下に毛がある。根生葉と下部葉は葉柄があり、葉柄は長く、鞘は卵形~袋状に膨らむ。葉身は広三角状卵形、2~3回羽状複葉。小葉は無柄、披針形~卵形、長さ2.5~8㎝×幅1~4㎝、基部はくさび形、縁は小鋸歯縁、脈に沿ってわずかに小剛毛がある。大散形花序は直径10~20㎝。苞はないか、または1~2個、線形、脱落性。大散形花序の柄は15~30本、毛がある。小苞は多数、線形、花柄と同長。 萼歯は廃れる。花弁は白色、卵形~倒卵形。 果実は広卵形、長さ5~6㎜×幅3.5~5㎜。背隆条は糸状、側隆条には翼がある。 油管は各溝に1個、合成面に2個。花期は6~7月。果期は8~9月。n=11。
品種) 'Boraston Pink Lace' , 'Burgundy' , 'Ebony' , 'Purple Giant' , 'Purpurea' , 'Vicar's Mead'

33 Angelica tarokoensis Hayata タロコトウキ 
 台湾原産。中国名は太鲁阁当归 tai lu ge dang gui。

34 Angelica tenuisecta (Makino) Makino カワゼンゴ 川前胡
  synonym Angelica shikokiana Makino ex Y.Yabe var. tenuisecta Makino
 日本固有種(紀伊半島南部の三重県・和歌山県)。川岸の岩上に生える。
 多年草、高さ40~80㎝。茎は下部から分枝し、無毛。葉は1~3回3出羽状複葉。小葉は長卵形で小さく、低鋸歯があり、普通、先は尾状に伸び、上面に光沢があり、脈上に毛がある。複散形花序は直径6~15㎝。総苞片はなく、小総苞片は多い。花弁は白色。果実は楕円形、分果の基部は湾入しない。花期は8~9(10)月

35 Angelica ubatakensis (Makino) Kitag.  ウバタケニンジン 姥岳人参
 日本固有種(四国、九州)。山地の岩礫地に生える。宮崎県、大分県、熊本県の県境にまたがって祖母山があり、祖母山の別名を姥ケ岳といい、和名はこの名に因む。
 多年草、高さ20~50㎝。茎は直立し、上部で分枝する。 葉は互生し、葉柄は長く、基部は下部または全部が楕円状に膨らんだ鞘となる。葉身は2~4回3出羽状複葉、3角状広卵形、長さ5~25㎝。小葉は細かく分裂し、ニンジンの葉のように細裂し、最終裂片は線形~線状披針形、長さ1~3㎝×幅1~3mm、主脈だけが目立ち、側脈は細くあまり分枝しない。複散形花序は茎頂と枝先につき、直径4~8cm。総苞片は0または1個。小散形花序の小総苞片は数個つき、線形で長さ2~6mm、花柄は8~40個つく。花は白色の5弁花で、直径2~3㎜。花弁は内側に曲がる。果実は楕円形、長さ3~4㎜、やや広い側翼があり、背隆条は脈状で3脈ある。分果の油管は各背面の溝に1個ずつ、合生面に2個ある。花期は7~9月。
35-1 Angelica ubatakensis (Makino) Kitag. var. valida Kitag. オオウバタケニンジン 大姥岳人参
  synonym Angelica mukabakiensis T.Yamaz.
 宮崎県の行牒山から報告された。高さ約90cmになる。葉の裂片は大きくて幅が広く、披針形~卵形、長さ2~7㎝×幅0.5~1.5㎝、裂片の脈は主脈の脇から主脈とあまり太さの異ならない側脈が2~3本出て、よく枝分かれする。

36 Angelica ursina (Rupr.) Maxim.  エゾニュウ 蝦夷丹生
 日本(北海道、本州の中部以北)、ロシア原産。山地の草原に生える。5月中旬~6月初旬頃採取した若い茎を主に山菜として利用する。アクが強いため、いったん塩蔵して塩抜きしてから食用とする。秋田県などではニョウサク、ミョウサクなどと呼ばれる。
 多年草、高さ1~3m。茎は直立し、中空、太く、直径10㎝以下、赤色を帯び、上部で多数、分枝する。葉柄の下部は著しく膨れて袋状になり、茎を抱く。葉は2~3回3出羽状複葉、上部の葉は退化して赤褐色の鞘だけとなる。花序は頂生の複散形花序。大散形花序の柄は40~60本。小散形花序は30~40個ほどの花柄を放射状に出しほぼ球形となる。花は白色、小さい。花弁は4~5個。雄しべは突き出る。果実は広楕円形、広い翼がある。花期は7~8月。

37 Angelica yakusimensis H.Hara ヤクシマノダケ 屋久島野竹
  synonym Angelica shikokiana Makino ex Y.Yabe var. yakusimensis (H.Hara) Ohwi
  synonym Angelica shikokiana Makino ex Y.Yabe subsp. yakusimensis (H.Hara) Kitam.
 屋久島固有種。
 クマノダケと比べて、小葉には著しく鋭い鋸歯があり、葉鞘は長く、数片の小総苞があり萼歯がやや発達している。
 茎は高さ1.5m、太さ2㎝、管状、多数の縦の条線が隆起し、無毛、花序の下のみ毛がある。根生葉と下部の葉は葉柄があり、葉身は三角形、長さ20~35㎝、3出2回羽状複葉。最終裂片は長裂片が披針形、しばしば卵形で3深裂、先はごく長く先細になり、基部はくさび形、縁は鋭い鋸歯があり、平滑、長さ4~8㎝×幅0.8~3㎝、上面は無毛、脈が目立つ。上部の葉は下部の葉に似ている。葉鞘は8~12㎝、無毛。散形花序は直径7~12㎝。苞は無く。大散形花序の柄は約20~30本、パピラ状の毛がある。小散形花序は15~20mm、多数の花がつく。小苞は線形、長さ8~12mm。子房は無毛。萼歯は小さく、長さ0.2~0.4㎜。花弁は倒卵形、先は尖鋭形で曲がり、白色。花糸は長く突き出す。葯は帯黄色。柱下体(stylopodium)は多肉質(carnosum)。花柱は短く、直立する。果実は不明。

38 Angelica yoshinagae Makino トサボウフウ 
  synonym Angelica saxicola Makino ex Y.Yabe var. yoshinagae (Makino) Murata et T.Yamanaka
m   synonym Angelica shikokiana Makino ex Y.Yabe var. yoshinagae (Makino) H.Hara
 日本固有種四国(徳島県・高知県)石立山、高知県旧土佐山村)に分布し、石灰岩地帯に生える。
 イシヅチボウフウに似るが形態的に異なっているとして報告された。茎の上部には毛があり、イシヅチボウフウに比べ小葉は幅広い。花柄の長さが同じでなく、短いもの長いものがある。形態的な違いだけであり、KewScienceやWorld Flora Onlineでは認められていない。
 多年草で、高さ20~80㎝。茎は多数、分枝し、毛がある。葉は互生し、葉柄はうねに毛が多く、鞘は倒卵形で膨大する。葉身は1~2回3出羽状複葉、小葉は浅裂し、裂片は長卵形でやや鈍く粗い鋸歯があり、葉質は薄く、上面は無光沢、毛は両面に毛あり、とくに脈上に多い。複散形花序は数個つき、平たく、軟毛がある。大散形花序の柄は不同長。小散形花序に白色の花が多数つく。小総苞片は線形。花柄に毛がある。萼歯は退化して不明瞭。子房は無毛。花柱は細くて曲る。果実は長楕円形。花期は7~8月。

39 Coelopleurum saxatile (Turcz. ex Ledeb.) Drude  タカネシシウド 
  synonym Coelopleurum alpinum Kitag.
 朝鮮、中国、ロシア原産。中国名高山芹 gao shan qin。

40 その他ハイブリッド
品種) 'Coconut Ice' , 'Loushan Filigree' , 'Summer Delight'

参考

1) Flora of China
 Angelica
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=110810
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Angelica
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:60452048-2
3) World Flora Online
 Angelica
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000012430;jsessionid=3725A4F3D661F11D7231B8D756E5CC1F
4) 茨木県自然博物館第1次総合調査報告書 植物
 筑波山・霞ヶ浦の維管束植物 - ミュージアムパーク 茨城県自然 ...
https://www.nat.museum.ibk.ed.jp/assets/data/materials/research/sougou//01/11Bp109-.pdf
5) 植物研究雑誌第 31(6): 187–188(1956)
 屋久島産セリ科の一新種 (原寛)ヤクシマノダケ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_031_187_188.pdf
6) 植物研究雑誌第 38(1): 19–22(1963)
 イシヅチボウフウとトサボウフウ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_038_19-22.pdf
7) 植物研究雑誌 第61(8): 238–245(1986)
 山崎 敬. 日本におけるエゾノヨロイゲサの変異
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_038_19-22.pdf
8) 植物研究雑誌 第 64(3): 85–94(1989)
 日本におけるヨロイグサ、エゾノヨロイグサ、シシウドについて
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_038_19-22.pdf
9) 植物研究雑誌J Vol.65 No.5 153-154(1990)
 シナノノダケの再発見(山崎敬)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_065_153_154.pdf
10) 植物研究雑誌J Vol.69 No.2 112-114(1994)
 ツクシゼリについて(山崎敬)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_069_112_114.pdf
11) 植物研究雑誌Vol.69 No.5 329-330 (1994)
 オオウバタケニンジンについて(山崎敬)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_069_329_330.pdf
12) 植物研究雑誌J Vol.71 No.2 120-120(1990)
 ミヤマノダケの新変種(山崎敬) ツクシミヤマノダケ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_071_120_120_d.pdf
13) ヒュウガトウキとイヌトウキのDNA多型解析による系統分類
http://www.naro.affrc.go.jp/org/karc/qnoken/yoshi/no68/68-068.pdf
14) 薬草データベース - 熊本大学薬学部
 ヒュウガトウキ
https://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusodb/detail/003662.php