シオデ 牛尾菜

mark

Flora of Mikawa

サルトリイバラ科 Smilacacea シオデ属

中国名 牛尾菜 niu wei cai
学 名 Smilax riparia A.DC. var. riparia

 synonym Smilax riparia A.DC. var. ussuriensis (Regel) H.Hara et T.Koyama

 synonym Smilax riparia A.DC. subsp. ussuriensis (Regel) Kitag.

シオデの雄花
シオデの雄花拡大
シオデのでき始めの果実
シオデの葉柄
シオデの茎
シオデ
シオデの葉表
シオデの葉裏
花 期 7~8月
高 さ つる性
生活型 多年草
生育場所 山野
分 布 在来種 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾、ロシア、ベトナム、フィリピン
撮 影 稲武町  04.7.4
シオデは若芽はおいしい山菜としてよく知られている。
 茎は綾があり、つる状に長くのび、托葉が変化した巻きひげで、他のものに絡みつく。葉は長さ5~15㎝、幅2.5~3.5㎝の卵状長楕円形、先は尖り、基部は浅い心形~切形、3~7の平行脈がある。葉柄は長さ1~2.5㎝、不規則に切れ込む狭い翼がある。雌雄異株。葉腋の球形の散形花序に小さな花を多数つける。花は淡黄緑色、花被片が6個つく。花被片は強く反り返り、垂れ下がってつき、雄花は長さ4~5㎜の披針形、雌花はやや短く、長楕円形。雄しべ6個。葯は長さ約1.5㎜、細く、釣針状に曲がる。花柱は3個。果実は直径7~9㎜、球形の液果、種子を1~4個入れ、黒く熟し、光沢がある。種子は橙赤色。2n=32
 葉の幅が1.2~3㎝と狭いものはホソバシオデ form. stenophylla として品種に分類されている。
 タチシオデ Smilax nipponica は茎が直立し、花期がシオデより早く、春に咲く。花被片が平開し、葯が長さ約1㎜、惰円形。
 タチシオデの葉の幅が狭いものはホソバタチシオデ Smilax nipponica form. tenuifolia。
 ヤマカシュウ Smilax sieboldii は本州、四国、九州、朝鮮、中国台湾に分布する。葉幅がやや広く卵形、無毛。花被片は長さ4~5㎜の長楕円形、斜開~平開し、先はやや外曲する。葯は長さ約1.2㎜。

シオデ属

  family Smilacacea - genus Smilax

 蔓性木よじ登り又は低木、木質、頻繁ではないが、ほぼ直立又は草本、雌雄異株、普通、短く太い根茎をもつ。茎や枝は普通、刺がある。葉柄は普通、下部に狭い翼があり、翼部分と先の間に離脱ゾーン(abscission zone)をもつ。巻きひげがしばしばある。葉身は普通、卵形~披針形、主脈は3~7本、横脈と細脈の網によりつながる。花序は葉腋又は鱗片状の苞腋につき、1(~3)個の散形花序又は散形花序からなる1個の円錐花序、総状花序、又は穂状花序。花序柄はときに、基部に鱗片状の前出葉(prophyll)をもつ。花は小さい。花被片は6個、普通、分離(Smilax synandraでは合着)。雄花は雄しべが6本、まれに8本又はそれ以上、花被片の基部につく。葯はほとんどが1室。雌花は子房が3室。胚珠は各室に1又は2個。花柱はごく短い。柱頭は3個。仮雄しべは0~6個。果実は液果、赤色~黒色、種子は普通1又は2個。種子は暗褐色。
 世界に約300種があり、両半球の熱帯、亜熱帯、温帯に分布する。

シオデ属の主な種と園芸品種

1 Smilax aspera L. スミラックス・アスペラ
 中国、ブータン、インド、ミャンマー、ネパール、西南アジア、アフリカ、ヨーロッパ(地中海沿岸)原産。中国名は穗菝葜 sui ba qia。英名はcommon smilax , rough bindweed , sarsaparille , Mediterranean smilax。
 蔓性木、よじ登り。茎と枝は木質、角(かど)に尾根があり、普通、ごくまばらに刺がある。刺は短く、わずかに扁平。葉柄はしばしば曲がり又は捻じれ、長さ3~4㎝、ときにまばらに刺があり、翼は無く、先に脱離ゾーン(abscission zone)がある。巻きひげはかなり長い。葉身は心形状三角形~卵状披針形、長さ6~15㎝×幅5~9.5㎝。花序は穂状花序、5~25個の散形花序からなり、長さ7~45㎝、基部に前出葉がある。両性の散形花序は長い花序軸があり、無柄、花が3~6個つき、基部はわずかに太くなる。小苞は多数、広卵形。雄花は花被片が白色、長さ4~5mm×幅約1mm。雄しべは長さ2~2.5mm。雌花は花被片が雄花よりわずかに小さい。仮雄しべは6個。花期は1~2月。果期は11~12月。2n=32。
品種) 'Silver Shield'

2 Smilax amamiana Z.S.Sun et P.Li アマミヒメカカラ 奄美姫カカラ
 日本固有種(南西諸島)。
 木質、多年草、落葉性。根茎は這う。茎は直立、長さ8~30㎝、密に分枝し、屈曲し、うねがあり、しばしば刺を散生する。葉柄は長さ2~5mm、その長さの約2/3に狭い翼があり、翼部分のすぐ上に脱離ゾーン(abscission zone)がある。巻きひげは長さ0~2mm。葉身は厚い紙室、緑色、下面は帯白色、3脈があり、広卵形~円形、長さ1.2~2.4(~3.0)㎝×幅1.4~3.0(~3.5)㎝、基部は円形~急にくびれ、先は円形~小凹形、微突形。散形花序は腋生、短い花序柄があり、花が1~2個つく。花は黄緑イオ。雄花の花被片は楕円形、斜めに広がり、上部は反曲し、長さ約3mm。内側の輪は狭い長円形。雄しべは6本、花被片の長さの約1/2。液果は赤色、球形、長さ4~7mm。2n = 32。

3 Smilax arisanensis Hayata アリサンサンキライ 阿里山山帰来
  synonym Smilax oxyphylla auct. non Wall. ex Kunth
 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、江西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、ベトナム原産。中国名は尖叶菝葜 jian ye ba qia。海抜1500m付近の森林、茂み、谷や小川沿いの日陰の場所に生える。
 蔓植物で這い登る。茎は枝分かれし、長さ10mまで伸び、木質で、まれに刺がある。葉柄は長さ0.7~2㎝、通常捻じれ、長さの1/2~3/4には狭い翼がある。脱離ゾーン(abscission zone)は頂端付近にあり、巻きひげが普通、ある。葉身は乾くと通常青銅色になり、長円形~卵状披針形、長さ7~12(~15)㎝×幅1.5~3.5(~5)㎝。花序は1個の散形花序で、基部はときに前出葉がある。花序柄は細く、長さ1.5~3.5㎝。雌雄異花の散形花序には5~25個の花がつき、基部はほとんど肥厚しない。雄花:花被片は緑白または淡緑色で、長さ2~3㎜×幅約1㎜。雄しべは長さ約1.5㎜。雌花:花被片は長さ1.5~2㎜×幅約0.8㎜、仮雄しべは3個。果実は紫黒色、球形、直径約8㎜。花期は4~5月。果期は10~11月。

4 Smilax biflora Siebold ex Miq. ヒメカカラ
  synonym Smilax china L. var. biflora (Siebold ex Miq.) Makino in Bot. Mag. (Tokyo) 14: 184 (1900)
 日本固有種。屋久島と奄美大島に分布。別名はヒメサルトリ。山頂近くに生える。カカラは九州の方言でサルトリイバラのこと。
 蔓性落葉低木、矮性、高さ20~30㎝。茎はやや直立し、ジグザグに曲がり、枝は若い枝は赤色を帯び、稜があり、長さ1~3㎜の小刺を散生する。葉は薄緑色、直径約1㎝、円形、全縁、先は微突形、若い葉は縁が赤褐色になる。花は葉腋に1~2個つき、直径約3㎜、淡黄緑色。果実は球形で赤熟する。花期は4月。
 Bot. Mag. (Tokyo)(1900)では矮小な特異な型で栽培され、雌花はまだわからないとされている。

5 Smilax bockii Warb. カラスキバサンキライ 唐鋤葉山帰来
  synonym Smilax japonica (Kunth) P.Li et C.X.Fu
  synonym Smilax stemonifolia H.Lév. et Vaniot
  synonym Smilax planipedunculata Hayata 
  synonym Heterosmilax japonica Kunthm  [Flora of China]
  synonym Heterosmilax indica A.DC.
 日本(南西諸島)、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、湖南省、江西省、陝西省南部、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、ネパール、ブータン、インド、アッサム、ミャンマー、ラオス、タイ原産。中国名は肖菝葜 xiao ba qia。標高500~1800mの密林の斜面、丘陵の混交林、雑木林に生える。
 蔓性。茎は木質。葉柄は長さ1~3㎝、長さの1/4~1/3は狭い翼があり、巻きひげはよく発達する。葉身は卵状披針形~ほぼ心形、長さ(3~)6~22㎝×幅2.5~12㎝。花序は葉腋または鱗片状の苞腋に生じる。花序柄は長さ1~3㎝、雌雄の散形花序には20~50個の花が付き、基部の直径は2~4㎜。小花柄は長さ2~7(~11)㎜。雄花は花被片が長円形または狭楕円形、長さ3.5~4.5(~6)㎜×幅2~3㎜。雄しべは(2 本または)3(または)4本。花糸は長さの1/3~2/5が合着し、柱状になる。葯は長円形、長さ0.5~1㎜。雌花:花被片はほぼ円形または卵状円形、長さ2.5~3㎜×幅1.5~2㎜。柱頭は直立する。仮雄しべは3~6個。果実は黒色、直径6~10㎜。花期は6~8月。果期は7~11月。

6 Smilax bona-nox L. スミラクス・ボナノックス
 北アメリカ(USA、メキシコ)原産。英名はbullbrier , catbrier , chinabrier , saw greenbrier , tramp's trouble , zarzaparrilla 。標高0~1000mの森、野原、茂み、生垣、氾濫原の森林などの水はけのよい湿地、直射日光の当たる場所から半日陰に生える。
 蔓性植物。根茎は塊茎があり、木質、または匍匐茎を持つ。茎は多年生で、よじ登り、しばしば上部がジグザグになり、分枝し、円柱形~4角柱で太く、長さ5m以上×幅5㎜、木質、無毛または稀に星状毛があり、刺はしばしば上部になく、先端は黒色、扁平、基部が広く、丈夫、長さ4~9mmで硬い。葉は常緑、±均等に散在する。葉柄は長さ0.7~1.5㎝。葉身は淡緑色、しばしば白色のしみがあり、乾くと均一な黄褐色(tan)になり、やや厚く、広卵形~披針状卵形または矛形~バイオリン形、約3(~5)本の顕著な葉脈があり、長さ3~10㎝×幅2.5~9㎝、粉白色ではなく、無毛または下面に微細な毛があり、基部は心形~切形、しばしば裂片があり、縁は全縁~離れた棘状縁毛があり、肋が厚くなり、軟骨性の帯になり、しばしば外巻きし、顕著な葉脈が縁と平行に現れ、先は円形~短い小突起形。散形花序は少数~多数、葉腋につき、花が10~15個以上つき、中程度に密。花序柄は長さ1.5~6+㎝、小花柄は長さ0.8~1.2㎝。果実は黒色、卵形~球形、長さ6~8㎜、光沢があるかまたは鈍く、ときに粉白色。2n=32。花期は4~5月。
森、野原、茂み、生垣、氾濫原の森林などの水はけのよい湿地、直射日光から半日陰。。アラバマ州、アーカンソー州、デラウェア州、ワシントン D.C.、フロリダ州、ジョージア州、イリノイ州、インディアナ州、カンザス州、ケンタッキー州、ルイジアナ州、メリーランド州、ミシシッピ州、ミズーリ州、ノースカロライナ州、オハイオ州、オクラホマ州、サウスカロライナ州、テネシー州、テキサス州、バージニア州。メキシコ。西インド諸島。  Smilax bona-nox には、主に葉の形の違いに基づく多数の変種が提案されているが、個々の植物でさえ変異が非常に大きいため、これらの変種を識別することは不可能である。 J. A. Steyermark (1963) は葉の変化は植物の成熟段階と相関関係にある可能性があると示唆している。この種は雑草のように密集して絡み合った塊を形成することが多いと考えらている。
品種) 'Cantab'

7 Smilax bracteata C.Presl サツマサンキライ 薩摩山帰来
  synonym Smilax stenopetala A.Gray
 日本(九州南部以南)、中国、台湾、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム原産。中国名は圆锥菝葜 yuan zhui ba qia。標高450mまでの低地の森林に生える。
 高くよじ登る蔓植物であり、雌雄異株、茎は直径2.5㎝、長さ1㎜の刺のある疣状突起がある。小枝は剛毛(setose)と微細な刺がある。葉は広卵形でしばしば3裂し、不明瞭な歯があり、先は鋭形、基部は心形、上面は無毛でわずかに小毛で粗く(asperulous)、下面は短い帯褐色の毛で密に覆われ、触ると柔らかいが、脈にはより硬い剛毛状の毛が生え、長さ10~20㎝×幅7~15㎝、基部の掌状脈は7本、上部の羽状脈は2~3本、湾曲して上向き、上面ではわずかに窪み、下面は明瞭な低い網状脈がある。葉柄は長さ3~7㎝。雄性の円錐花序は主に腋生で、単生または2~3個が側生し、穂状花序状、全体に短い灰褐色の綿毛があり、長さ10~20㎝×x幅約2㎝で、P. palmata の円錐花序に似ているが、花序柄は糸状の宿存する苞葉(長さ約1㎝)で覆われる。雌花は長円形~ほぼ球形の柄のある頭花で、単生または腋生して2~3 個ずつつく。核果は垂れ下がった球形の塊で、直径20㎝以下、各核果は卵形状楕形、両端が細くなり、伏した長く柔らかい帯黄色の剛毛で密に覆われ、長さ4.5~8㎝×幅1.5~2.3㎝。内果皮は外側に微細な穴があり、内側にかすかに疣状突起があり、長さ4㎝×幅2㎝×厚さ1.5㎝・以下。花期は12月~2月。[e-Flora of Thailand]

8 Smilax china L. サルトリイバラ 猿捕茨
  synonym Smilax china L. var. taiheiensis (Hayata) T.Koyama
  synonym Smilax china L. f. gigantifolia (Sasam.) T.Koyama
 日本全土、小笠原諸島、朝鮮、中国、台湾、アッサム、ミャンマー、タイ、ベトナム、フィリピン原産。中国名は菝葜 ba qia。英名はChina root。別名はサンキライ(山帰来)。
 落葉つる性低木。塊状の地下茎がある。茎は長さ1~5m、木質、緑色で硬く、地面から直立し、節ごとに曲がり、まばらに刺があり、巻きひげにより周囲の樹木などにからみつく。巻きひげは托葉が変化したものである。葉柄は長さ0.5~1.5㎝、その長さの1/2~2/3に狭い翼があり、離脱ゾーン(abscission zone)は翼のすぐ上にある。葉は互生し、長さ3~10(12)㎝×幅1.5~6(~10)㎝ の円形~楕円形で3脈が目立ち、光沢がある。葉の先は少し尖り、基部は心形で、全縁。雌雄異株。散形花序は花が10~25個つき、基部に前出葉はない。花序柄は長さ1~2㎝。花は両性、黄緑色。小苞は小さく多数。花被片は6個、離生する。雄花は花被片が黄緑色、長さ3.5~4.5mm×幅1.5~2.5mm。雄しべは6個、長さ3~4mm。花糸は糸状。雌花は柱頭3個。仮雄しべが6本。果実は直径(6)7~9(~15)㎜の球形の液果、赤色、わずかに白く粉状になる。種子は直径約4㎜の球形、果実に1個だけ入る。2n=30,90。花期は(2~)4~5月。果期は9~11月。2n=30,90。
 トキワサルトリイバラ茎にほとんど刺の無い変種。果実や葉が大きく、葉の先端が円頭~凹頭。落葉が2月頃と遅く、別名トゲナシサルトリイバラともいわれる。
8-1 Smilax china var. china

  synonym Smilax china L. f. igaensis (Masam. et T.Kurok.) T.Koyama コミノサルトリイバラ

  synonym Smilax china L. var. igaensis Masam. et T.Kurok.
  synonym Smilax china L. f. xanthocarpa Sugim. キミノサルトリイバラ 
  synonym Smilax china L. var. yanagitae Honda トキワサルトリイバラ 
  synonym Smilax china L. f. yanagitae (Honda) T.Koyama
  synonym Smilax boninensis Nakai ex Tuyamam

8-2 Smilax china var. kuru Sakag. ex Yamam. オキナワサルトリイバラ 沖縄猿捕茨

 日本(沖縄)、中国原産。
 大型で刺がないこともあり、葉はサルトリイバラに似にてるが、やや大きく、卵形で長さ4~10㎝×幅2~8㎝、薄い革質。

9 Smilax corbularia Kunt スミラックス・コルブラリア
 中国(広東省、広西チワン族自治区、海南省、雲南省)、ミャンマー、ラオス、カンボジア、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア(ボルネオ)原産。中国名は筐条菝葜 kuang tiao ba qia。海抜1600m付近の森林、茂みに生える。
 蔓性で、刺を持たない。茎は分枝し、長さ3~9m、木質。葉柄は長さ0.8~1.4㎝、長さの約半分には狭い翼がある。翼の先端には披針形の耳介(長さ2~6㎜)がある。離脱ゾーン(abscission zone)は先にある。巻きひげは通常ある。葉身は下面が粉白色、卵形~長円形、長さ4~14㎝×幅2~4.5(~7)㎝、革質、縁は反り返る。花序は1個の散形花序、基部には前出葉はない。花序柄は長さ4~15㎜。散形花序には雌雄ともに10~20個の花が付き、基部は太くなる。小苞は多数あり、宿存性がある。雄花は、花被片が広がらず、緑黄色、外花被片は舟形、長さ2.5~3㎜×幅約2㎜、内花被片は長さ2~2.5㎜×幅約1㎜、厚く、外側が凹面状。花糸は合着し、短い柱状になる。雌花:花被片は長さ2~2.5㎜、仮雄しべは3個。果実は暗赤色、球形、直径6~7㎜。花期は5~7月。果期は12月。
 3 つの近縁種、Smilax corbularia、S. hypoglauca、および S. synandra は、東南アジアで自然群を形成している。その中でも、S. synandra は、部分的に合着した花被片 (Heterosmilax に似ている) が他の種とかなり明確に異なり、花筒は4角形になることがある。中間的な特徴がいくつかあるため、S. corbularia と S. hypoglauca の区別があいまいである。重要な特徴に加えて、S. hypoglauca の葉身は S. corbularia の葉身よりも薄い傾向があり、前者の種の散形花序は後者の種の散形花序よりも花がはるかに少ない。分類群間の違いは生態学的なものである可能性があり、その場合は今後の徹底的な現地調査が必要になる。
9-1 Smilax corbularia var. corbularia
  synonym Smilax banglaoensis R. H. Miao.
 中国(広東省、広西チワン族自治区、海南省、雲南省)、ミャンマー、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム原産。中国名は筐条菝葜 kuang tiao ba qia。海抜1600m付近の森林、茂みに生える。
 葉身は卵形、卵状長円形、または狭楕円形、葉の上面にはわずかに光沢があり、上面には網状の葉脈が目立ち、基部はほぼ円形で、縁はわずかに反り返る。
9-2 Smilax corbularia var. woodii (Merr.) T.Koyama
  synonym Smilax woodii Merrill
 中国(海南島)、マレーシア、インドネシア(ボルネオ)原産。光叶菝葜 guang ye ba qia。海抜500m付近の森林に生える。
 葉身は卵形~卵状楕円形、上面に光沢があり、目立たない網状脈があり、基部は浅い心形~広楔形で、縁は強く反り返る。

10 Smilax discotis Warb. スミラックス・ディスコティス
 中国(安徽省、福建省、甘粛省、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江西省、陝西省、四川省、雲南省、浙江省)原産。中国名は托柄菝葜 tuo bing ba qia。標高600~2100mの森林、茂み、斜面の日陰の場所に生える。
 植物は低木状、ほぼ直立~ほぼ攀縁性。茎は分枝し、円柱形、長さ0.5~3m、ほとんどないかまたはまばらに刺がある。葉柄は長さ4~5(~15)㎜、全長にわたって幅広い翼がある。翼は ± 貝殻形で、幅3~5㎜。離脱ゾーン(abscission zone)は先にあり、巻きひげがときにある。葉身は下面が粉白色で、通常はほぼ楕円形、長さ4~10(~20)㎝×幅2~5(~10)㎝、基部は心形。花序は比較的若い葉の葉腋の新しい小枝につき、1個の散形花序で、基部には前出葉はない。花序柄は長さ1~4㎝。雌雄の散形花序には数個の花が付き、基部はわずかに太くなり、ときに長くなる。小苞は小さい。雄花: 花被片は黄緑色、長さ約4㎜×幅1~1.8㎜。雌花:花被片は雄花よりわずかに小さい。仮雄しべは3個。果実は黒色、球形、直径6~8㎜、白色の粉状。花期は4~5月。果期は10月。

11 Smilax elongatoumbellata Hayata ホソバサンキライ 細葉山帰来
  synonym Smilax elongatoreticulata Hayata

  synonym Smilax elongatoumbellata Hayata f. elongatoreticulata (Hayata) T.Koyama

 日本(沖縄)、中国原産。中国名は台湾菝葜 tai wan ba qia。英名はNarrow-leaved greenbrier。
 茎はほぼ直立~攀縁性(scandent)、刺があり、ときに平滑、枝分かれする。枝は刺があるかまたは平滑。葉身は楕円形~卵状長円形または卵状楕円形、長さ2.5~9㎝×幅1~4㎝、基部は円形、先は狭まり、短い鋭形、薄い革質で、不透明~わずかに光沢があり、下面は淡色、やや粉白色、肋は(3~)5本あり、顕著に隆起し、側脈は斜めまたは斜上し、密に網目があり、上面と下面に明瞭に隆起する。葉柄はわずかに湾曲し、長さ5~7㎜、狭い翼があり、鞘の上部は巻きひげをもち(cirrhose)、巻きひげは葉身とほぼ同長か、かなり短縮する。散形花序は前出葉ではない葉腋に単生し、花序柄は長さ2.5~4㎝。雌花序には花が13~24個、雄花序には花が9~28個つく。雄花は、花被片が直立または直立・開出し、わずかに内曲し、粉白色を帯び、緑色で基部が帯赤色、外花被片は広楕円形でやや鈍形、長さ4.5~5(~5.2)㎜×幅1.8~2㎜、内花被片は外花被片とほぼ同じ長さで倒披針形、先は鈍形、幅約0.6㎜、雄しべは6本、葯は長さ0.8㎜、長円形、黄色、花糸は長さ2~2.2㎜。雌花:花被片は開出し、雌しべよりわずかに短い、外花被片は卵形で、長さ3.5~4㎜×幅1.8㎜、中心が赤みがかった不規則な緑色、先は円形~鋭傾、内花被片はは倒披針形~倒披針状長円形、先が鈍形、外花被片よりわずかに短く、薄い膜室、雌しべは卵形~球形、柱頭は3個、雄しべは3個で針状。液果は球形、直径6~8㎜、暗青色、粉状。種子は1~3個、広楕円形、長さ4㎜、栗色(castaneous)、不透明。花期は春。

12 Smilax glabra Roxb. ナメラサンキライ 滑山帰来
 中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、台湾、インド、ミャンマー、アッサム、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム原産。中国名は土伏苓 tu fu ling。英名はEarth Fu Ling。別名は ケナシサルトリイバラ、カラサンキライ。標高300~1800mの森林、藪、谷沿いのうっそうとした森林の斜面、川岸に生える。
 蔓性で、刺を持たない。茎は分枝し、円柱形、長さ1~4m、木質、平滑。葉柄は長さ5~15(~30)㎝、その長さの1/4~3/5には狭い翼があり、脱離ゾーン(abscission zone)は先端にあり、巻きひげはよく発達する。葉身は楕円形または卵状披針形、長さ6~15㎝×幅1~7㎝。花序は1個の散形花序、基部に前出葉はない。花序柄は長さ1~5(~8)㎜で、葉柄より著しく短い。雌雄の散形花序には花が10~30(~60)個つき、基部は太くなる。小苞は多数。雄花:花被片は緑白色、わずかに6角(かど)があり、ほとんど開かない。外花被片は広倒卵状円形、僧帽形 、約・長さ2㎜×幅3㎜、下面に深い溝があり、内花被片は約・長さ2㎜×幅1㎜、縁は不規則な小歯状。雌花: 内側の花被片は縁が全縁。仮雄しべは3個。果実は青黒色、直径6~10㎜、白色の粉状。花期は7~11月。果期は11~4月。

13 Smilax glaucochina Warb. スミラックス・グラウコティナ
 中国(安徽省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、山西省、四川省、浙江省)、台湾原産。中国名は黑果菝葜 hei guo ba qia。英名はBlack Fruit Greenbrier。海抜1600m付近の森林、茂み、草地の斜面に生える。
 蔓性植物。茎は枝分かれし、円柱形で、長さ0.5~4m、木質、まばらに刺がある。葉柄は長さ0.7~1.5(~2.5)㎝、翼があり、翼は長さ4~8㎜×幅1.5~2㎜。脱離ゾーン(abscission zone)は上部にあり、巻きひげは通常ある。葉身は下面が粉白色、楕円形、長さ5~8(~20)㎝×幅2.5~5(~14)㎝、厚い紙質、ときに下面が白粉色。花序は比較的若い葉の腋の新しい小枝に生じ、1個の散形花序で、基部には前出葉はない。花序柄は長さ1~3㎝、雌雄の散形花序には5~18 個の花が付き、基部はやや厚くなる。雄花:花被片は黄緑色で、長さ5~6㎜×幅1.5~3㎜。雌花:花被片は雄花とほぼ同長。仮雄しべは3個。果実は黒色、球形、直径7~8㎜、白色の粉状。花期は3~5月。果期は10~11月。

14 Smilax hayatae T.Koyama ホソガタサンキライ 細形山帰来
  synonym Smilax gracillima Hayata
 中国(広東省北部)、台湾原産。中国名は菱叶菝葜 ling ye ba qia。英名はHemsley’s Greenbrier。標高900~1500mの森林、谷や小川沿いの丘陵地帯に生える。
 低木で、直立またはほぼ攀縁する。茎は分枝し、円柱形で細く、平滑。葉柄は長さ2~5(~8)㎜、長さの1/2~3/5に翼がある。翼は長さ約3㎜、先端に1~1.5㎜の三角状披針形の耳がある。脱離ゾーン(abscission zone)は先端にあり、巻きひげはない。葉身は卵状菱形または菱状楕円形、長さ3~5(~7)㎝×幅1~2.5(~4.5)㎝。雄花序は1子の散形花序で、基部には前出葉はない。花序柄は細く、長さ0.7~1.7(~2.2)㎝。散形花序には 2~7個の花がつき、基部はほとんど肥厚しない。雄花: 花被片は帯緑色、外花被片は線状長円形、長さ1~2㎜×幅0.4~0.8㎜、内花被片は約・長さ1㎜×幅0.2㎜。雄しべは花被片の約1/2の長さ。葯はほぼ球形。雌花は不明。果実は赤色、球形で、直径約8㎜。花期は4月。果期は10月。

15 Smilax horridiramula Hayata アラゲサンキライ 粗毛山帰来
 台湾原産。中国名は刺枝菝葜 ci zhi ba qia。台湾中部および東部に生える。
 蔓植物はよじ登る。茎と枝は全体に密生して剛毛が生える。剛毛は水平に広がり、細く、針状で、長さ約5㎜、先はときに2股に分かれる。葉柄は長さ約1㎝で翼がある。翼は長さ約5㎜×幅1~1.5㎜。脱離ゾーン(abscission zone)は上部にあり、巻きひげは通常ある。葉身は下面がわずかに粉白色、楕円形~長円状卵形、長さ5~6㎝×幅3~3.5㎝、紙質、基部は円形、先はやや微突形、主脈は5本ある。花序は1個の散形花序で、基部には前出葉はない。花序柄は長さ3~4㎝。花は不明。果実は成熟すると青黒色になり、球形、直径約6㎜。

16 Smilax hypoglauca Benth. ウラジロサンキライ 裏白山帰来
  synonym Smilax corbularia Kunth var. hypoglauca (Benth.) T.Koyama
 中国(福建省、広東省、貴州省、江西省、雲南省)原産。中国名は粉背菝葜 fen bei ba qia。英名はLong-Leaved Greenbrier。海抜1300m付近の開けた森林、茂みの縁に生える。
 蔓性で、刺はない。茎は枝分かれし、長さ2~3(~4)m、木質、平滑。葉柄は長さ0.7~1.3㎝、長さの約半分には狭い翼がある。翼は先が披針状耳形、脱離ゾーン(abscission zone)は先にある。巻きひげは通常かなり長い。葉身は下面が粉白色、狭楕円形~卵状長円形、長さ5~12㎝×幅2~5㎝、革質、主脈は3~5本、縁はわずかに反曲する。花序は1個の散形花序、基部には前出葉はない。花序柄は長さ1~5㎜。雌雄の散形花序には10~20個の花がつき、基部は太くなる。小苞は多数あり、小さい。雄花は花被片が広がらず、帯緑色、外花被片は約・長さ2.5㎜×幅1.8㎜。内花被片は約・長さ2.2㎜×幅1㎜、厚く、外側が凹面状。花糸は合着し、短い柱状になる。雌花:花被片は長さ2.2~2.5㎜、仮雄しべは3個。果実は球形、直径8~10㎜。花期は7~8月。果期は12月。


17 Smilax lanceifolia Roxb. タイワンサンキライ 台湾山帰来

 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、湖北省、湖南省、江西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、ブータン、カンボジア、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シッキム、タイ、ベトナム原産。中国名は马甲菝葜 ma jia ba qia。標高100~2800mの森林、林縁、茂み、斜面の日陰の場所に生える。
 蔓性植物。茎は分枝し、円柱形、長さ1~2m、木質。小枝はときにジグザグになる。葉柄は長さ1~2(~2.5)㎝、長さの1/5~1/4に狭い翼があり、中間に脱離ゾーン(abscission zone)があり、巻きひげが通常ある。葉身は披針形~卵状長円形、長さ6~17㎝×幅2~8㎝。花序は1(または 2)個の散形花序、基部には前出葉がある。花序柄は長さ1~1.5㎝、下部に関節がある。雌雄ともに散形花序に20~30個の花が密につき、基部はやや太くなる。雄花: 花被片は黄緑色、長さ3~4.5㎜×幅約1㎜。雄しべは長さ3~4㎜。雌花: 花被片は長さ1.5~2㎜×幅約0.6㎜。仮雄しべは6個。果実は黄赤色~黒色、球形、直径6~7㎜。花期は9~3月。果期は10~11月。

18 Smilax laevis Wall. ex A.DC. スミラックス・ラエビス
  synonym Smilax asiatica Kladwong, Chantar. & D.A.Simpson
  synonym Smilax laevis var. ophirensis A.DC.
  synonym Smilax lanceifolia Roxb. var. opaca A.DC.
  synonym Smilax opaca (A.DC.) Norton

  synonym Smilax lanceifolia Roxb. subsp. opaca (A.DC.) T.Koyama タイワンサンキライ

 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、湖南省、江西省、雲南省、浙江省)、マレーシア、タイ、ベトナム原産。中国名は暗色菝葜 an se ba qiaa。標高100~1000(~2000)の森林、茂み、斜面の日陰の場所に生える。Flora of Chinaでは台湾、カンボジア、ラオス、インドネシアを分布域に含めSmilax lanceifolia subsp. opacaとしている。Flora of ThailandではSmilax lanceifoliaのsnonymとしている。
 葉身は革質で、通常は卵形~卵状披針形、通常は幅の1~3倍の長さで、上面には明らかに光沢があり、主脈は上面に隆起している(ときに中脈はわずかに凹む)。

19 Smilax luei T.Koyama レンゲチサンキライ 
 台湾原産。中国名は吕氏菝葜 lu shi ba qia。英名はLue’s Greenbrier。海抜700m付近の森林の縁に生える。
 蔓性で、刺はない。茎は分枝し、長さ1~4m、木質。葉柄は長さ1~1.7㎝、短く狭い翼がある。脱離ゾーン(abscission zone)はほぼ先にある。巻きひげはよく発達する。葉身は披針状卵形~長円状披針形、長さ(3~)5~13㎝×幅1~3.5㎝。花序は苞の腋に1個の散形花序をつけ、基部には前出葉はない。花序柄は細く、葉柄より長い。雌雄の散形花序には10~25個の花がつく。雄花: 花被片は緑紫色、長さ3.2~3.7㎜×幅1~1.2㎜、上面に縦のしわがあり、数本の隆起がある。雄しべは9(または10)個、長さ1.7~2㎜、花糸は短い。雌花: 花被片は濃い緑色。仮雄しべは5~6個、糸状。果実は黒色。球形、直径6~8㎜。

20 Smilax nantoensis T.Koyama ナントウサンキライ 南投山帰来

 台湾原産。中国名は南投菝葜 nan tou ba qia。英名はNantou Greenbrier。標高800~900mの標高800~900mの森林の縁、草地の森林の開けた場所に生える。
 蔓性植物。茎は先端で大きく分枝し、円柱形、長さ0.8~2m、木質、刺はない。葉柄は長さ0.7~1.5(~2)㎝、長さの2/3~3/4は狭い翼があり、翼のすぐ上に脱離ゾーン(abscission zone)がある。巻きひげは通常長さ5~10㎝。葉身は通常卵形または楕円形、長さ3~10㎝×幅1.5~4㎝。花序は若い葉の葉腋または新しい枝の苞腋に生じ、散形花序は1個、基部には前出葉はない。花序柄は長さ5~10㎜。雌雄の散形花序には3~10個の花が付き、基部は太くも長くもならない。雄花:花被片は黄色、帯ピンク赤色、長さ4.5~5㎜×幅1.3~1.5㎜。雄しべは長さ4~4.5㎜。雌花:花被片は長さ2.5~3㎜×幅1~1.7㎜、仮雄しべは3個。果実は赤色、球形、直径 6~8㎜。

21 Smilax nervomarginata Hayata ササバサンキライ 笹葉山帰来
  synonym Smilax liukiuensis Hayata

  synonym Smilax nervomarginata Hayata var. liukiuensis (Hayata) F.T.Wang et Tang

 日本(沖縄)、中国(安徽省、貴州省、湖南省、江西省、浙江省)原産。中国名は缘脉菝葜 yuan mai ba qia。海抜1000m付近の森林、森林の縁、茂みに生える。
 蔓性で、枝分かれしない。茎は枝分かれし、円柱形、長さ1~2m、木質。枝には条線のうねがあり、ときに、微細な小疣がある。葉柄は長さ0.6~1.8㎝、長さの約1/4に狭い翼がある。脱離ゾーン(abscission zone)は頂端付近にある。巻きひげはよく発達している。葉身は長楕円形、楕円形、または卵状楕円形で、長さ6~12㎝×幅1.5~4.5(~7)㎝、革質、5~7脈があり、中脈は明らかに上面に隆起し、基部は鈍形、先は尖鋭形。雄花序は葉腋または鱗片状の苞腋に生じ、散形花序は1個、基部には前出葉はない。花序柄はわずかに扁平、細く、長さ1.5~4㎝。散形花序には6~17個の花がつき、基部はわずかに太くなる。雄花: 花被片は紫褐色、約・長さ2.5㎜×幅1㎜。雌花は不明。果実は球形、直径7~10㎜。花期は4~5月。果期は10月。

22 Smilax nipponica Miq. タチシオデ 立牛尾菜
  synonym Smilax nipponica Miq. var. manshurica (Kitag.) Kitag.
  synonym Smilax nipponica Miq. f. grandifolia H.Hara

  synonym Smilax nipponica Miq. f. tenuifolia Hisauti ホソバタチシオデ

 日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は白背牛尾菜 bai bei niu wei cai。
 1年草。茎は単一、円柱形、直立又はときに絡みつき、長さ80~100㎝、平滑、中空、やや強い。葉柄は長さ1.5~4.5㎝、わずかに翼があり、末端に脱離ゾーン(abscission zone)がある。巻きひげは托葉が変化したもの。葉身は長さ4~20㎝、幅2~14㎝の卵形(広惰円形)~長楕円形、質が薄い。葉裏は白色の短毛が密生し、粉白色。雌雄異株。葉腋に1個の球形の散形花序をつけ、苞は無い。花序柄は長さ3~9㎝、わずかに扁平。雌雄の花序とも花は20~30個つき、花被片は6個つく。雄花は花被片が開花時に反曲し、緑黄色~白色、長さ約4㎜、幅約1㎜、雄しべ6個、長さ2.5~3㎜、葯は短く、長さ約1㎜の長楕円形。雌花は花被片がほぼ平開し、雄花とほぼ同形。仮雄しべ6個、花柱は3個。果実は球形の液果、直径6~7㎜、粉白を帯び、黒色に熟す。種子は長さ4~4.5㎜の赤色。花期は4~5月。果期は8~9月。
 葉の細いものはホソバタチシオデといい、品種(f. tenuifolia)に分類されていたこともあるが、現在では分けない。

23 Smilax odoratissima Blume アラガタサンキライ 粗形山帰来

  synonym Smilax bracteata C.Presl var. verruculosa (Merr.) T.Koyama

  synonym Smilax bracteata C.Presl subsp. verruculosa (Merr.) T.Koyama

  synonym Smilax aspericaulis Wall. ex A.DC. [Flora of China]
  synonym Smilax trachyclada Hayata
  synonym Smilax verruculosa Merr.
 日本(沖縄)、中国(広西省、貴州省、海南省、西蔵、雲南省)、台湾、ブータン、アッサム、アンダマン諸島、ミャンマー、バングラデシュ、タイ、ベトナム、マレーシア、フィリピン、インドネシア(ボルネオ、ジャワ、小スンダ列島)原産。中国名は疣枝菝葜 you zhi ba qia。海抜0~1900m付近の森林、茂み、日陰の斜面に生える。
 蔓性。茎は木質。茎と枝は密に小疣(粒状突起)があり、ときにまばらに刺がある。葉柄は長さ1~1.5㎝、長さの2/5~1/2には狭い翼があり、脱離ゾーン(abscission zone)は上部にあり、巻きひげが通常ある。葉身は広卵状楕円形、長さ6~15㎝×幅4~10㎝、厚い草質または紙質で、基部は円形、先は亜ほぼ形。花序は総状花序、3~7個の散形花序がつき、長さ3~6㎝、基部には前出葉がある。雌雄ともに散形花序には多数の花がつき、基部はやや太くなる。雄花は外花被片が約・長さ5㎜×幅1.2㎜、内花被片はそれよりずっと狭い。雌花は花被片が雄花より小さい。仮雄しべは 3個。果実は紫黒色で、卵形~球形またはやや洋ナシ形、直径5~6㎜。花期は12~2月。果期は7~9月。
 Smilax aspericaulis は、S. bracteata の変種または亜種として扱われることが多い。これは、茎に小疣がある点のみが異なるためである (Smilax の茎は時折とげがあるが疣はない)。S. aspericaulis は、標高の高い場所に生息する S. bracteata の生態型である可能性がある。

24 Smilax outanscianensis Pamp. スミラックス・オウタンシアネンシス

  synonym Smilax discotis Warb. var. concolor Norton
 中国(湖北省、江西省、四川省)原産。中国名は武当菝葜 wu dang ba qia。標高1100~2100mの森林、茂み、谷や小川沿いの陰のある丘陵に生える。
 蔓植物はよじ登る。茎は枝分かれし、長さ2~3m、木質、ほとんど刺がない。葉柄は5~10㎜、翼がある。翼は長さ3~5㎜×幅1~2㎜。離脱ゾーン(abscission zone)は翼のある部分のすぐ上にある。巻きひげがときにある。葉身は楕円形~卵形、長さ4~10㎝×幅2~4.5㎝。花序は新しい小枝の若い葉の葉腋に1個の散形花序がつき、基部は前出葉ではない。花序柄は長さ5~12㎜。雌雄の散形花序には数個の花が付き、基部はわずかに太くなり、ときに長くなる。小苞は宿存する。雄花:花被片は黄緑色、長さ6~7㎜×幅1.4~2.8㎜。雌花:花被片は雄花より小さい。仮雄しべは3~6個。果実は紫黒色、球形、直径7~10㎜。花期は5月。果期は9~10月。

25 Smilax perfoliata Lour. ツキヌキサルトリイバラ 突抜猿捕茨

 中国(海南省、雲南省)、台湾、インド、スリランカ、アッサム、ネパール、ブータン、ミャンマー、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム原産。中国名は穿鞘菝葜 chuan qiao ba qia。海抜1500m付近の森林、茂みに生える。
 蔓性植物。茎は枝分かれし、長さ8mまで、木質になる。茎と枝は平滑、またはちきにまばらに刺げがある。葉柄は長さ2~4㎝、長さの1/2~2/3には幅広い翼があり、翼は幅7~12(~25)㎜、基部で節を深く抱き、先端に向かって細くなり、脱離ゾーン(abscission zone)は上部にあり、巻きひげは通常発達する。葉身は通常卵形で、長さ6~17㎝×幅3~12㎝。花序は10~30個の散形花序があり、長さ5~17㎝、基部は前出葉がある。花序軸はしばしばわずかにジグザグ形になる。雌雄の両性の散形花序は±2~4個が輪生し、花が密集し、基部は楕円形、約・長さ4㎜×幅3㎜。雄花は、外花被片が長さ5~6㎜×幅約1㎜、内花被片は約・長さ5㎜×幅0.3㎜。雄しべは長さ約5㎜。雌花: 花被片は雄花よりわずかに小さい。仮雄しべは3個。液果は球形、直径4~6㎜。花期は4月。果期は10月。2n=32。

26 Smilax pygmaea Merr. ランダイサンキライ 峦大山帰来
  synonym Smilax menispermoidea A.DC. subsp. randaiensis (Hayata) T.Koyama 
 台湾、フィリピン原産。中国名は峦大菝葜 luan da ba qia。山地の森林に生える。
 蔓は直立から斜上し、刺はない。茎は分枝し、長さ45~80㎝、木質、平滑。葉柄は長さ0.8~1.2㎝、長さの約2/3には狭い翼があり、脱離ゾーン(abscission zone)は先にあり、巻きひげはないかまたはかなり短い。葉身は下面が粉白色、卵形または披針状卵形、長さ3~6㎝×幅2~2.5㎝、厚いに草質~ほぼ革質、主脈は7本、基部は円形~浅い心形、先は鋭形または尖鋭形。花序は1個の散形花序で、基部に前出葉はない。花序柄は細く、長さ1.5~3㎝。雌雄の散形花序には3~10個の花がつく。雄花:花被片は赤褐色、披針状長円形、長さ2.5~3.5㎜。雄しべは長さ0.8~1.1㎜。雌花:花被片は披針形~卵形、長さ2~3㎜。液果は暗青色、球形、直径約6㎜。花期は8月。

27 Smilax riparia A.DC. シオデ 牛尾菜 広義

  synonym Smilax riparia A.DC. var. ussuriensis (Regel) H.Hara et T.Koyama

  synonym Smilax riparia A.DC. subsp. ussuriensis (Regel) Kitag.
  synonym Smilax riparia A.DC. f. ovatorotunda (Hayata) T.Koyama
  synonym Smilax riparia A.DC. f. maximowiczii (Koidz.) T.Koyama
  synonym Smilax riparia A.DC. f. acuta (Hiyama) Y.Kobay.

  synonym Smilax ovatorotunda Hayata var. ussuriensis (Regel) H.Haram

  synonym Smilax oldhamii auct. non Miq.
  synonym Smilax maximowiczii Koidz.
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、陝西省、山東省、山西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア、ベトナム、フィリピン原産。中国名は牛尾菜 niu wei cai。海抜2100mまでの森林、雑木林、草地斜面、谷沿いの丘陵など山野に生える。若芽はおいしい山菜としてよく知られている。
 蔓性植物で、一年草またはときに多年草。茎は分岐し、円柱形(図では稜があり)、長さ 1~2 m、草質または基部近くがわずかに木質、平滑または軟毛があり、中空でわずかに髄がある。葉柄は長さ0.7~2㎝、ほとんど翼はない。脱離ゾーン(abscission zone)は上部にあり、巻きひげが通常ある。葉身は通常卵形~楕円形、長さ7~15㎝×幅5~11㎝、草質、下面は無毛、パピラ状微軟毛または軟毛がある。花序は1個の散形花序、基部には前出葉はない。花序柄はかなり細く、長さ3~5(~10)㎝、わずかに扁平である。雌雄の散形花序には5~20(~30)個の花がつき、基部は太くなる。小苞は長さ1~2㎜で、脱落しない。雄花:花被片は黄緑色、長さ4~5㎜×幅0.6~1㎜、雄しべは長さ4~5㎜。雌花:花被片は雄花よりわずかに小さい。果実は青黒色、球形、直径7~9㎜。花期は6~7月。果期は10月。[Flora of China]
 3変種に分けられる。

27-1 Smilax riparia var. acuminata (C.H.Wright) F.T.Wang & Tang

  synonym Smilax herbacea var. acuminata C.H.Wright
 中国(河南省、湖北省、陝西省、四川省)原産。中国名は尖叶牛尾菜 jian ye niu wei cai。標高900~2100mの森林、草地の斜面、谷沿いの丘陵に生える。
 茎、枝、花序は無毛。葉身は特に下面の主脈に外側にパピラ状微軟毛があり、先はほぼ尖頭状尖鋭形。雌花は仮雄しべが6個。

27-2 Smilax riparia var. pubescens (C.H.Wright) F.T.Wang & Tang

  synonym Smilax herbacea var. pubescens C.H.Wright
 中国(湖北省西部)原産。中国名は毛牛尾菜 mao niu wei cai。
 茎、枝、葉、花序に軟毛がある。

27-3 Smilax riparia var. riparia シオデ 牛尾菜

  synonym Smilax riparia A.DC. f. sadoensis (Honda) T.Koyama サドシオデ

  synonym Smilax riparia A.DC. f. stenophylla (H.Hara) T.Koyama ホソバシオデ

  synonym Smilax ovatorotunda Hayata
  synonym Smilax sadoensis Honda
  synonym Smilax takaoensis Hayata
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、黒竜江省、河南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、陝西省、山東省、山西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア、ベトナム、フィリピン原産。中国名は牛尾菜 niu wei cai。中国では海抜1600m付近の森林、雑木林、草地斜面、谷沿いの丘陵に生える。日本では山野に生える。
 茎、枝、葉、花序は無毛。雌花は仮雄しべが無い。
 蔓性多年草。茎、枝、葉、花序は無毛。茎は綾があり、つる状に長くのび、托葉が変化した巻きひげで、他のものに絡みつく。葉は長さ5~15㎝、幅2.5~3.5㎝の卵状長楕円形、先は尖り、基部は浅い心形~切形、3~7の平行脈がある。葉柄は長さ1~2.5㎝、不規則に切れ込む狭い翼がある。雌雄異株。葉腋の球形の散形花序に小さな花を多数つける。花は淡黄緑色、花被片が6個つく。花被片は強く反り返り、垂れ下がってつき、雄花は長さ4~5㎜の披針形、雌花はやや短く、長楕円形、仮雄しべが無い。雄しべ6個。葯は長さ約1.5㎜、細く、釣針状に曲がる。花柱は3個。果実は直径7~9㎜、球形の液果、種子を1~4個入れ、黒く熟し、光沢がある。種子は橙赤色。2n=32。
 下記の品種はYListでは認められているが、POWOでは認められていない。

(1) Smilax riparia A.DC. f. sadoensis (Honda) T.Koyama サドシオデ 佐渡牛尾菜

  synonym Smilax oldhamii Miq. var. sadoensis (Honda) Satomi
 茎が太く、直立する。葉は間がつまり、密に互生する。

(2) Smilax riparia A.DC. f. stenophylla (H.Hara) T.Koyama ホソバシオデ 細葉牛尾菜

  synonym Smilax ovatorotunda Hayata var. ussuriensis (Regel) H.Hara f. stenophylla H.Hara

 葉の幅が1.2~3㎝と狭いもの。

28 Smilax trinervula Miq. サルマメ 猿豆

  synonym Smilax biflora Siebold ex Miq. var. trinervula (Miq.) Hatus. ex T.Koyama

  synonym Smilax china var. trinervula (Miq.) Makino in Bot. Mag. (Tokyo) 14: 184 (1900)

  synonym Smilax sarumame Ohwi in Acta Phytotax. Geobot. 6: 149 (1937)

  synonym Smilax esquirolii H.Lév.
 日本(本州の関東地方以西)、中国(福建省、貴州省、湖南省、江西省、浙江省)原産。中国名は三脉菝葜 san mai ba qia。別名はヒメサルトリ。標高400~1700mの森林、雑木林に生える。
 亜低木で、直立またはわずかに蔓性、落葉性。茎は分枝し、長さ0.5~2m、棘はないか、まばらに棘がある。葉柄は長さ3~5㎜、長さの約2/3には狭い翼があり、翼のすぐ上に離脱ゾーン(abscission zone)があり、巻きひげが通常ある。葉身は下面が粉白色で、通常は楕円形、長さ2~5㎝×幅1~2.5㎝、紙質。花序は若い葉の葉腋から出る新しい小枝につき、1個の散形花序または総状花序で、基部に前出葉はない。花序柄は長さ3~7㎜。散形花序には1~5個の花がつき、基部は肥厚しない。雄花: 花被片は黄緑色、長さ約4㎜×幅0.8~1.5㎜。雌花: 花被片は長さ約4㎜。仮雄しべは6個。果実は赤色、球形、直径5~6㎜。花期は3~4月。果期は10~11月。

29 Smilax sebeana Miq. ハマサルトリイバラ 浜猿捕茨
  synonym Smilax iriomotensis Masam.
  synonym Smilax maritima Hatus.m
 日本(鹿児島南部以南~南西諸島)、台湾原産。別名はトゲナシカカラ。海岸沿いの岩場の斜面にときに生える。
 常緑の攀縁性の蔓性、茎は円柱形で平滑または緩く刺がある。葉は紙質~厚い紙質、円状卵形、卵形、長円形または楕円形、長さ3~12㎝、幅1.3~10㎝、上面は光沢があり、下面は極めて粉白色で蝋質、基部は楔形から円形、先は短鋭形~円形、脈は3~7本、側脈は網状で下面で顕著に隆起する。葉柄は短く湾曲し、下側の2/3~1/2には鞘があり、巻きひげは葉身より短いものからほぼ同じ長さである。散形花序は単生で、花序枝(rays)は17~56本、平滑で細く、長さ15㎜まで。花序枝は扁平、平滑。花被片は花時にわずかに反曲し、雄花では長さ3.5~5㎜、雌花では長さ3~3.5㎜。雄しべは6個。液果は球形で、直径(5~)7~8㎜、青黒色~暗紫色。種子は液果に1~2個、倒卵形、暗赤色。花期は12~4月。

30 Smilax seisuiensis (Hayata) P.Li et C.X.Fu シオデモドキ 牛尾菜擬

  synonym Heterosmilax seisuiensis (Hayata) F.T.Wang et Tang [Flora of China]

  synonym Pseudosmilax seisuiensis Hayata
  synonym Heterosmilax hogoensis (Hayata) T.Koyama
  synonym Heterosmilax septemnervia F.T.Wang & Tang
  synonym Smilax septemnervia (F.T.Wang & Tang) P.Li & C.X.Fu
 中国、台湾、タイ、ベトナム原産。中国名は台湾肖菝葜 tai wan xiao ba qia。
 蔓植物で、茎と枝は細く、円柱形で無毛。葉柄は長さ1~3㎝、下位円柱形で、裏面に隆起がある。鞘は狭く、長さ3~7㎜×幅約1㎜、巻きひげは長さ1~12㎝、細い。葉身は広卵形または卵形~卵状披針形、長さ5~15㎝×幅2~6㎝、紙質~革質、基部は円形または切形、先は鋭形または尖鋭形。主脈は(3~)5~7本、両面で目立ち、葉身の基部で分かれ、側脈は非常に細い。花序は単一の散形花序、花は11~40個つき、前出葉はない。散形花序の花序柄は円柱形または漸尖形、長さ0.3~7㎝。花托は球形、直径2~4㎜。小苞は卵形、長さ0.2~0.3㎜×幅0.1~0.5㎜。花序柄は長さ0.6~1.5㎝。花被片は合着して瓶状構造となり、先端に3つの鋸歯がある。雄花:花被片は広楕円形または狭楕円形、長さ2.5~8㎜×幅2~3.5㎜。先端は開いて3個の鋸歯があり、鋭い。雄しべは(7~)8~9(~10)個。葯は長さ2~4.5㎜、基部から半分以上まで合着して柱状になり、長さは不定、上部は離生。葯は楕円形~楕円状披針形、長さ1.5~2㎜、帯白色。雌花:花被片は卵形~球形で、長さ3~5㎜×幅2.5~3.5㎜。先端は開いて3本の鋸歯があり、鋭い。子房は卵形~球形で、花柱は短く、仮雄しべは3~6本で針状。液果は球形またはほぼ球形、帯緑色、直径7~13㎜、種子は1~4個。

31 Smilax sieboldii Miq. ヤマカシュウ 山何首烏

  synonym Smilax sieboldii Miq. f. inermis (Nakai) H.Hara  トゲナシヤマカシュウ

 日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は华东菝葜 hua dong ba qia。別名はヤマガシュウ、サイカチバラ。
 蔓性半低木。茎は分枝し、類円柱形(稜が多く)、長さ1~2m、±木質。茎や枝は帯黒色の針状の刺が散在する(多い)。葉柄は長さ1~2㎝、その長さの約1/2に狭い翼があり、上部に離脱ゾーン(abscission zone)がある。巻きひげはよく発達する。葉身は卵形~広卵形、長さ3~9㎝×幅2~5(~8)㎝、草質。花序は1個の散形花序、基部に前出葉(prophyll)が無い。花序柄は細く、長さ1~2.5㎝、葉柄の長さとほぼ等しいか又は長い。散形花序は両性、花が普通3~8個、基部は少し太くなる。雄花は花被片が黄緑色、長さ4~5mm×幅1.2~1.4mm、内側の花被片は外側の花被片よりわずかに幅が狭い。雄しべは長さ2~3mm。雌花は花被片が雄花より小さい。仮雄しべは6本。液果は青黒色、直径6~7mm。花期は5~6月。果期は10月。

32 Smilax stans Maxim. マルバサンキライ 丸葉山帰来
  synonym Smilax vaginata Decne. var. stans (Maxim.) T.Koyama
  synonym Smilax vaginata auct. non Decne.
 日本(本州、四国、九州)、中国、台湾原産。中国名は鞘柄菝葜 qiao bing ba qia。
 低木、落葉性、直立し、刺は無い。茎は密に、分枝し、長さ0.3~3m。葉柄は長さ5~12mm、下側に条線状のうねがあり、その長さの約2/3に狭い翼がある。翼は先が葉柄と合流し、離脱ゾーン(abscission zone)はほぼ先にある。巻きひげは無い。葉身は下面が粉白色を帯び、卵形~ほぼ円形、長さ1.5~4(~6)㎝×幅1.2~3.5(~5)㎝、ときに下面がわずかに粉状になる。花序は1個の散形花序、基部に前出葉(prophyll)が無い。花序柄は細く、長さ0.7~2㎝。散形花序は両性、花が1~3(~6)個つき、基部は太くならない。雄花は花被片が黄緑色又はときにピンク色、長さ2.5~3mm×幅0.7~1mm。雌花は花被片が雄花よりわずかに小さい。仮雄しべは6本。液果は黒色、球形、直径6~10mm、白色の粉状。花期は3~5月。果期は10~11月。

類似属

カラスキバサンキライ属 Heterosmilax


 蔓植物、よじ登り、木質又はやや草質。茎や枝は平滑、刺がない。葉柄は基部や下部に狭い翼があり、ほぼ先に離脱ゾーン(abscission zone)をもつ。巻きひげが普通ある。葉身は普通、卵形又は長円状披針形。主脈は5~9本、最も外側の対は普通、縁に沿って走る。花序は葉腋や鱗片状の苞腋に生じ、単生の多数の花のつく散形花序である。花序柄は普通、扁平、基部に鱗片状の前出葉(prophyll)が無い。花は小さく、花被片は合着し、ボトル形の筒部を作り、歯のある先だけが開く。雄花は雄しべが3、6又は9~12本。花糸は下部又は全体が合着し、筒(synandrium:集葯雄しべ)を形成する。葯は分離、内向き、葯隔は室を超えて突き出す。雌花は子房が3室。胚珠は1~2個。柱頭は3個、普通、反曲する。仮雄しべは3~6本。果実は液果、黒色、球形、種子が1~6個。種子は暗褐色。
 世界に12種あり、アジアの熱帯、亜熱帯に分布する。

参考

1) Flora of China
 Smilax
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=130567
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Smilax L.
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30001535-2
3) 台灣植物資訊整合查詢系統 | Plants of Taiwan
 Smilax elongato-umbellata Hayata
https://tai2.ntu.edu.tw/species/616%20002%2006%200
4) e-Flora of Thailand
 Phytocrene bracteata Wall.
https://botany.dnp.go.th/eflora/floraspecies.html?factsheet=bracteata
5) Thai Forest Bulletin (Botany) 50(2):153-160 (2022)
Notes on Smilax bockii and S. seisuiensis (Smilacaceae), two newly recorded species from Laos and Thailand
 Smilax bockii and Smilax seisuiensi
https://www.researchgate.net/publication/365282963_Notes_on_Smilax_bockii_and_S_seisuiensis_Smilacaceae_two_newly_recorded_species_from_Laos_and_Thailand
6) 日本植物誌 Flora of Japan(1953) p310-311
 Smilax sebeana Miq.
https://www.biodiversitylibrary.org/item/95083#page/336/mode/1up