ノアズキ 野小豆

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Flora of Mikawa

マメ科 Fabaceae ノアズキ属

別 名 ヒメクズ
中国名 野扁豆 ye bian dou
学 名 Dunbaria villosa (Thunb.) Makino
ノアズキの花
ノアズキの萼
ノアズキの葉
ノアズキ豆果
ノアズキ豆果の腺点
ノアズキの茎
ノアズキ
ノアズキ小葉
ノアズキ葉の腺点
ノアズキ萼の拡大
ノアズキ豆
花 期 7~8月
高 さ つる性
生活型 多年草
生育場所 山野の日当たりの良い場所
分 布 在来種 本州、四国、九州、朝鮮、中国、インド、カンボジア、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム
撮 影 西尾市  07.9.9
郊外の草むらや道端でよく見られ、地面を這っていることもよくある。
 多年草、つる性。全体に毛が多く、葉、萼、茎に橙色の腺点がある。葉は3小葉。小葉は長さ1~3㎝の菱形状。花は黄色、長さ1.5~2㎝で、栽培されるアズキの花と同じ蝶形花。旗弁は左右不対称、左右の翼弁も大きさが異なる。竜骨弁(舟弁)の先は鉤状に曲がる。萼は先が不等に5裂し、上側の2個は合着して萼片は4個、最下の萼片が最も長く、披針形で筒部よりわずかに長く、密に橙色の腺点があり、白色の短い微軟毛があり、基部が球形のいぼ状になる黄色の細柔毛(pilose)が散生する。豆果は広線形、長さ3~5cm×幅約8mm、扁平、短い軟毛があり、橙色の腺点があり、3~8個の種子が入る。熟すと暗褐色になり果皮が裂開し、ねじれてV字形になる。豆(種子)は長さ約4㎜、表面にうずら卵のような模様がある。花期7~8(~9)月。
 栽培されているアズキの原種といわれるヤブツルアズキは腺点がなく、葉がやや大きく、葉の形が異なり、豆果が線形。
 タンキリマメトキリマメは花が長く、豆果が赤く熟して短い。

ノアズキ属

  family Fabaceae - genus Dunbaria

 草本または木本のつる植物、平伏または絡みつく。葉は羽状複葉、3小葉。托葉は無く、または早落性、小托葉は普通ない。小葉は下面に明らかな無柄の腺が明瞭にある。花序は腋生、花が1個~総状花序。苞は早落性または欠く。小苞は普通、無い。萼は鐘形。萼片は不等長で、上側の2個は合着し、披針形または三角形、最も下につくものが最も長い。花は腋生の総状花序に単生または節上に対生する。花冠は帯黄色、萼より±長い。旗弁はほぼ円形、倒卵形、または横向きの楕円形、基部に耳がある。翼弁は普通、耳がある。竜骨弁は翼弁より短く、わずかに曲がる。雄しべは2体雄しべ(diadelphous:花糸が2束のグループに分かれて合着している雄しべ)。旗弁の雄しべ(vexillary stamen:花糸10本のうち9本が合着して1束になり、残った1本の雄しべ)は分離。葯は均一。子房は有柄(stipitate)または無柄。胚珠は多数。花柱は糸状、内向き、無毛。柱頭は小さく、頂生、頭状。豆果は広線形~線形または線状長円形、扁平、2バルブがあり、裂開する。種子はヘソが長いかまたは短く、種枕(strophiole)は薄くて小さい。
 世界に約20種あり、アジア、オセアニアに分布する。

ノアズキ属の主な種と園芸品種

1 Dunbaria cumingiana Benth. コウトウノアズキ 紅頭野小豆
  synonym Dunbaria merrillii Elmer
  synonym Dunbaria discolor Harms & K.Schum.
 台湾、フィリピン、インドネシア(マルク、スラウェシ島)、ニューギニア原産。中国名は麥氏野扁豆。海岸の藪の中に生える。
 Dunbaria merrillii Elmer(通常はD. cumingiana Benthamの同義語として扱われる)は、インドネシアとフィリピンからも知られているが、台湾でも記録されている(Fl.Taiwan 1993 )。 ただし、提供されている図では、豆果が長さ10~12㎝と大きく、種子の間ではっきりくびれ、裂開後に捻じれるため、キマメ属(Cajanus)の種に近いことが示唆される。
 つる性の草本植物。葉は3出複葉で粉白色、3脈があり、葉柄は長さ3cm。頂小葉は菱状卵形、長さ4~7cm×幅4~7cm、先は尖鋭形、基部は楔形。小葉柄は長さ1.5cm。腋生の総状花序に花がつき、花は黄色、長さ1~2cm。莢は線形、先は尾状、長さ10~12cm×幅1~1.5cm、柄は長さ1cm。[Flora of Taiwan, 2nd Vol.3 1993]
2 Dunbaria podocarpa Kurz カイナンノアズキ 海南野小豆
 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、海南省)、カンボジア、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、タイ、ベトナム原産。中国名は长柄野扁豆 chang bing ye bian dou。標高100~800m以下の山の斜面、道端、開けた野原に生える。
 多年草、高さ1~4m。茎は蔓性で密に毛がある。葉は羽状3小葉、托葉は小さく脱落性。葉柄は長さ1.5~4cm、密に毛がある。小托葉は通常ない。小葉柄は長さ1~2mm、毛がある。頂小葉は菱形、長さ1.8~4cm×幅1.8~4cm、両面に密に毛がある。下面には赤い腺があり、基部の脈は3本、側脈は1~3対、基部は鈍形、円形、またはほぼ切形、先は鋭形。側小葉は小さく、斜めの卵形。総状花序は腋生、花は1個または2(~4)個つく。花序柄は長さ0.5~1cm、密に毛がある。花は長さ1.5~2cm。小花柄は長さ2~6mm、毛がある。萼は鐘形、軟毛があり、黄金色の腺がある。萼片は卵状披針形。花冠は黄色。旗弁は横長の楕円形で、幅より長く、基部に2個の耳がある。翼弁は狭楕円形、基部の片側に曲がった耳がある。竜骨弁は強く曲がり、耳はなく、先には長い嘴がある。子房は糸状、軟毛があり、オレンジ色の腺があり、先には長い嘴がある。豆果は線状長円形、長さ5~8cm×幅0.9~1.1cm、密に軟毛があり、オレンジ色の腺があり、先には長い嘴がある。柄は長さ1.5~1.7cm。種子は7~11個、黒色、ほぼ円形、扁平、直径約4mm。花期は6~11月。

3 Dunbaria rotundifolia (Lour.) Merr. タカサゴノアズキ 高砂野小豆
 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、江蘇省、江西省、四川省)、台湾、バングラデシュ、カンボジア、インド、インドネシア、ラオス、ミャンマー、ネパール、フィリピン、タイ、ベトナム、オーストラリア原産。中国名は圆叶野扁豆 yuan ye ye bian dou。標高約600mの斜面、草原に生える。
 多年草。茎は絡みつき、細く、まばらに毛がある。葉は羽状3小葉、托葉は小さく、脱落性。葉柄は長さ0.8~2.5cm、密に毛がある。小葉柄は長さ1~2mm、密に毛がある。小葉は紙質。頂小葉は円状菱形、長さ1.5~2.7(~4)cm、長さよりわずかに幅が広く、まばらに毛があるかまたはほとんど無毛、暗褐色の腺があり、基部の脈は3本、基部は円形、縁は波状、先は鈍形。側小葉は小さく、斜め。花序は花が1~2個つく。苞は狭卵形、長さ1~2mm。萼は鐘形、長さ2~5mm、毛があり、赤色~暗褐色の腺が密にある。萼片は卵状披針形、萼筒より短い。花冠は黄色、長さ1~1.5cm。旗弁は倒卵状円形、基部には2個の耳があり、先端はわずかに凹形。翼弁は倒卵状長円形で、わずかに曲がり、微突形。竜骨弁は鎌形で、先には鈍い嘴がある。子房は無柄。豆果は線状長円形で、長さ3~5cm×幅約0.8cm、わずかに曲がり、扁平、軟毛があるかまたはほぼ無毛で、先には針状の嘴を持ち、柄はない。種子は6~8個、暗褐色、ほぼ円形、直径約3mm。花期は9~10月。果期は10~11月。2n=22。

4 Dunbaria villosa (Thunb.) Makino ノアズキ 野小豆
 日本(本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国(安徽省、広西チワン族自治区、貴州省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、浙江省、海南省)、台湾、インド、ミャンマー、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、インドネシア(ジャワ島、スマトラ島)、フィリピン、原産。中国名は野扁豆 ye bian dou。別名はヒメクズ。郊外の草むらや道端でよく見られ、地面を這っていることもよくある。
 蔓性多年草、軟毛が顕著。茎は細く、開出するかまたは後屈する毛がある。托葉は狭卵状三角形、鋭形、長さ約2mm。反り返り、毛がある。小葉はやや密に短く、斜上する軟毛があり、下面に赤褐色の無柄の円盤形の腺(橙色)がある。頂小葉は側小葉よりやや大きく、凹んだ菱形(depressed-rhombic)、先は急に鋭形で先端は鈍形、長さ2~3cm、幅も同じ。小托葉は微細。総状花序は腋生、短い花序柄を持ち、3~8個の花が緩くつく。花は総状花序の各節に単生し、幅15~18 mm、黄色。小花柄は長さ6~8 mm。萼は長さ約10mm、密に腺点があり、短い微軟毛があり、時に疎に細柔毛(pilose)があり、萼歯は上側の2個が合着し、最下の萼歯が最も長く、披針形で筒部よりわずかに長い。旗弁は円形で、短い爪部があり、拡大部の基部の両側に鈍い突起があり、竜骨弁は半円形で右に湾曲し、距はない。豆果は扁平、広線形、長さ4.5~5cm×幅約8mm、短い軟毛があり、6または7個の種子がある。花期は8~9月[Flora of Japan 1953]。
【Flora of Chinaの解説】
 多年草。茎は絡み合い、細く、まばらに軟毛がある。葉は羽状3小葉。托葉は小さく、通常は脱落する。葉柄は細く、長さ0.8~2.5cm、毛がある。小托葉は非常に小さい。小葉柄は長さ約1mm、毛が密生する。小葉は薄い紙質。頂小葉は大きく、菱形またはほぼ三角形、両面にまばらに毛があり、帯赤色の腺点を持ち、基部脈は3本、側脈は1対または2対、基部は円形、広楔形またはほぼ切形、先は鋭形または尖鋭形。側小葉は小さく、斜めで、長さ1.5~3.5cm×幅2~3.7cm。総状花序または複総状花序は腋生、長さ1.5~5cm、密に毛があり、花が2~7個つく。花は長さ約1.5cm。萼は鐘形、長さ5~9mm、4裂する。萼片は披針形または線状披針形、不等長、通常、下側の萼片が最も長い。花冠は黄色。旗弁はほぼ円形または横長の楕円形で、基部の片側に耳がある。竜骨弁(舟弁)は翼弁に似るが曲がり、短い爪部あり、先には嘴がある。子房は密に毛があり、赤さび色(rubiginous)の腺がある。豆果は線状長円形、長さ3~5cm×幅約0.8cm、扁平、毛があるかまたはほぼ無毛で、先には嘴があり、柄はほぼ無い。種子は6または7個、黒色、ほぼ円形、約・長さ4mm×幅3mm。花期は7~9月。果期は8~10月。

参考

1) Flora of China
 Dunbaria
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=111060
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Dunbaria
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:22320-1
3) World Flora Online
 Dunbaria
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000012743;jsessionid=EA952E5E19692E7B656A10AE1949D821
4) GRIN
 Dunbaria
http://tn-grin.nat.tn/gringlobal/taxonomylist?category=species&type=genus&value=Dunbaria&id=4038
5) 台灣植物資訊整合查詢系統
 Dunbaria merrillii Elmer
https://tai2.ntu.edu.tw/species/409%20040%2001%200
6) BHL | Flora of Japan 1953
 Dunbaria villosa (Thunb.) Makino ノアズキ p567
https://www.biodiversitylibrary.org/item/95083#page/595/mode/1up