モミジカラマツ 紅葉唐松

mark

Flora of Mikawa

キンポウゲ科 Ranunculaceae モミジカラマツ属

英 名 false bugbane , tassel-rue
学 名

Trautvetteria caroliniensis (Walt.) Vail var. japonica (Sieb. et Zucc.)T. Shimizu

 synonym Trautvetteria japonica Sieb. et. Zucc.

 synonym Trautvetteria caroliniensis (Walt.) Vail

 synonym Trautvetteria palmata (Michx.) Fisch. & C.A.Mey
モミジカラマツの蕾
モミジカラマツの花
モミジカラマツの花拡大
モミジカラマツの花の終期と苞葉
モミジカラマツの果実
モミジカラマツの茎葉
モミジカラマツ
モミジカラマツ根生葉
花 期 7~8月
高 さ 25~60㎝
生活型 多年草
生育場所 亜高山の山地
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、ロシア
撮 影 東館山高山植物園  05.7.31
和名の由来は葉がモミジの葉に似たカラマツソウであることから。花はカラマツソウに似ている。
 高さ25~60㎝。根生葉は長さ5~12(30)㎝の単葉、掌状に7~9中裂し、縁には欠刻状の鋭い鋸歯があり、長柄がある。茎葉は小さく柄がない。花は直径10~13㎜、花弁のように見えるのは雄しべで、花弁はない。萼片は早落性。雄しべは多数つき、長さ5~8㎜、葯は白色。花糸も白色で、先がやや幅広い。雌しべは多数つき、黄緑色。痩果は長さ2.5~3.5㎜の広卵形、キツネノボタンに似ている。2倍体2n=16
 オクモミジカラマツ var. borealis は葉裏に軟毛が散生する変種である。
 母種のTrautvetteria caroliniensis はU.S.A、カナダに分布している。アメリカ東部に分布するvar. caroliniensis (Carolina Bugbane)と西部に分布するvar. occidentalis(Western bugbane)がある。両者の違いはあまりなく、変種に分けないのが普通になっている。オクモミジカラマツ var. borealisも同種としている。日本のvar. japonicaは地理的な問題は別にして、変種に分けるのは恣意的(arbitrary)といわれている(Flora of North America )。USDAでは日本、ロシアも分布域に入れ、var. japonicaには触れていない。
 高さ(30)50~80(150)㎝。葉は5~11裂。葉柄は長さ15~45㎝。茎葉の葉柄は長さ0~15㎝。苞は長さ2㎝以下。萼片は長さ(2.5)3~5(6)㎜、緑色~白色。雄しべは50~100個。長さ5~9(10)㎜。痩果は長さ(2.5)3~4(4)㎜。2n=16。

モミジカラマツ属

  family Ranunculaceae - genus Trautvetteria

 多年草、短い細い、根茎がある。葉は根生葉と茎葉、単葉、下部の葉は葉柄があり、上部の葉は無柄。茎葉は互生する。葉身は掌状に5~11裂、裂片は広楔形、縁は分裂~鋸歯状。花序は頂生、花が多数つく、散房花序、長さ2.5~43㎝。苞は不明瞭、線状披針形、総苞を作らない。花は両性、放射相称。咢片は果時に宿存せず、3~5(~7)個、緑白色、凹面の杯形、広卵形~倒卵形、爪部は長さ3~6㎜。花弁は無い。雄しべは約50~100本。外側の花糸は15~20本、へら形、しばしば上部が葯の幅より広い。内側の花糸は広がらない。仮雄しべは雄しべと雌しべの間に無い。雌しべは約15本、単純。胚珠は雌しべに1個。果実は胞果(utricles)、集合し、無柄、楕円形~倒卵形、断面は4角(かど)があり、側面に明瞭な脈がある。嘴が頂生し、曲がるか又は鈎状になり、長さ0.4~0.8㎜。x =8。
 世界に1(3)種あり、北アメリカ、東アジアに分布する。

 Trautvetteria caroliniensisを広義に扱い、世界に1種とする説と、Trautvetteria caroliniensisはアメリカ産に限定し、アジア産はTrautvetteria palmata とし、世界に2種とする説がある。狭義の説ではモミジカラマツの学名はTrautvetteria palmata(synonym Trautvetteria japonica )とされる。
 Trautvetteria fonticalcareaはKewscienceでは独立種と認めている。

モミジカラマツ属の主な種と園芸品種

1 Trautvetteria caroliniensis (Walter) Vail モミジカラマツ 紅葉唐松 [広義]

  synonym Trautvetteria palmata (Michx.) Fisch. & C.A.Mey
 北アメリカ、メキシコ、東アジア原産。英名はCarolina bugbane, false bugbane, tassel-rue。樹木が茂った浸潤斜面、川岸、沼地、まれに草原や断崖、西部のドイツトウヒの森、亜高山帯の牧草地に生える。
 多年草、高さ(0.3)0.5~1.5m。根茎はひげ根を束生する。茎は1~数本、直立、普通、花序の下部で下部で分枝せず、無毛又はほぼ無毛。根生葉は1~2個、葉柄が長さ15~45㎝、葉身は幅10~30(~40)㎝、5~11裂し、裂片はくさび形、先は鋭形、上部に歯がある。茎葉は茎の上部小さくなり、葉柄は長さ0~15㎝。花序柄は長さ10~80㎝。苞は長さ2㎝以下。花柄は長さ4~10㎜、密に軟毛があり、微細な鈎状の毛状突起をもつ。花は5個以上つき、白色、直径1.8㎝以下。咢片は3~5個、長さ2.5~6㎜、早落性、広卵形、杯形、±緑白色。雄しべは白色、長さ5~10㎜、外側の花糸は平らで幅が広い。胞果は長さ2.5~4.5㎜、紙質、4角があり、脈が角と2内面に目立つ。2n=16。花期は夏。花期は(6)7~8月。
1-1 TTrautvetteria caroliniensis var. caroliniensis 
 北アメリカ東部原産。英名はCarolina Bugbane
 高さ(30)50~80(150)㎝。根茎はひげ根を束生する。茎は1~数本、直立し、普通、下部では分枝しない。葉は根生し、葉柄の長さ15~45㎝。葉身は幅10~30(~40)㎝、掌状に5~11裂。裂片は先が鋭形。茎葉は上部で小さくなり、茎葉の葉柄の長さ0~15㎝。花序は長さ0.5~1.5m、無毛~ほぼ無毛。花序柄は長さ10~80㎝。花柄は密に軟毛があり、小さな鈎状の毛状突起をもつ。苞は長さ2㎝以下。萼片は長さ(2.5)3~5(6)㎜、緑色~白色。雄しべ50~100個。長さ5~9(10)㎜。痩果(胞果Utriclesともいう)は長さ(2.5)3~4(4)㎜、紙質、角(かど)と内側の2面に明瞭な脈がある。2n=16。

1-2 Trautvetteria caroliniensis (Walter) Vail var. occidentalis (A. Gray) C.L. Hitchc.

 北アメリカ西部原産。英名はWestern bugbane
 高さ30~90㎝。茎は普通、無毛。葉は上面が緑色、下面は淡緑色。根生葉は1~2枚つき、長さ15~45㎝、±くさび形、上半分には歯がある。茎葉は葉柄が0~15㎝。花序は花が5+個。苞は長さ2㎝以下。花柄は長さ4~10㎜。咢片は長さ2.5~5㎜、早落性、卵形、杯状、緑白色。雄しべは長さ5~10㎜。花糸は平ら、葯より幅幅が広く又は狭い。果実は長さ2.5~4.5㎜、±丸い。

1-3 Trautvetteria caroliniensis (Walter) Vail var. borealis (H.Hara) T.Shimizu オクモミジカラマツ

  synonym Trautvetteria palmata Trautv. et C.A.Mey. var. borealis (H.Hara) Kadota

  synonym Trautvetteria japonica Siebold et Zucc. var. borealis H.Hara
  synonym Trautvetteria grandis Nutt.
 葉裏に軟毛が散生する変種である。

1-4 Trautvetteria caroliniensis (Walter) Vail var. japonica (Siebold et Zucc.) T.Shimizu モミジカラマツ 紅葉唐松

  synonym Trautvetteria japonica Siebold & Zucc.

  synonym Trautvetteria palmata Trautv. et C.A.Mey. var. japonica (Siebold et Zucc.) Huth

  synonym Trautvetteria palmata (Michx.) Fisch. & C.A.Mey.
  synonym Trautvetteria palmata var. borealis (H.Hara) Kadota
 日本(北海道、本州、四国、九州)、ロシア原産。英名はfalse bugbane , tassel-rue。亜高山の山地に生える。
 多年草。高さ25~60㎝。根生葉は長さ5~12(30)㎝の単葉、掌状に7~9中裂し、縁には欠刻状の鋭い鋸歯があり、長柄がある。茎葉は小さく柄がない。花は直径10~13㎜、花弁のように見えるのは雄しべで、花弁はない。萼片は早落性。雄しべは多数つき、長さ5~8㎜、葯は白色。花糸も白色で、先がやや幅広い。雌しべは多数つき、黄緑色。痩果は長さ2.5~3.5㎜の広卵形、キツネノボタンに似ている。2倍体2n=16。花期は7~8月。

1-4-1 Trautvetteria caroliniensis (Walter) Vail var. japonica (Siebold et Zucc.) T.Shimizu f. breviloba (Nakai) Yonek.  ミョウギモミジカラマツ 妙義紅葉唐松

  synonym Trautvetteria japonica Siebold et Zucc. f. breviloba Nakai
 群馬県妙義山固有。葉は3裂し、縁の欠刻状の鋸歯が浅いもの。

2 Trautvetteria fonticalcarea Floden
 北アメリカ(テネシー州)原産。英名はthe leatherleaf tassel rue 。
 Aaron Flodenが2017年に名付け、報告した。石灰岩地(calcareous seeps)に生える。高さ2m以下。かなり丈夫で葉は広く、硬く、3裂し、傾いた茎の頂部に白色の花を丸く束生する(半球形の花序)。Carolina Tassel-Rue (Trautvetteria caroliniensis) より、葉の裂片が少なく、葉質が粗い。
 【Trautvetteria caroliniensisの解説】
 北アメリカ北東部(ペンシルバニア州南部、ケンタッキー州、テネシー州、ジョージア州、ミズーリ州、少数がインディアナ州~イリノイ州)原産。英名はfalse bugbane。
 多年草。高さ60~120㎝、根茎がある。茎は丈夫で分枝する。葉は深く、掌状に5~11裂し、裂片に鋭い歯がある。根生葉は長い葉柄があり、花時に幅15㎝で、果時に幅20㎝まで増加する。茎葉はかなり小さく。葉柄は無~短で、裂片は根生葉より少ない。花は散房花序状に束生し、花弁が無く、白色、幅1.8㎝以下、根生葉よりかなり上部で分枝した枝先につく。咢片は3~5個、花弁状、早落性。雄しべの房は華やかな白色の花糸と黄色の葯をもつ。花は芳香がある。花後に1個の種子をもつ胞果(utricles)をつける。花期は6~8月。現在のところ、この種は北アメリカ西部原産の植物(Trautvetteria grandis又はTrautvetteria caroliniensis var. borealis)とアジア原産の植物(Trautvetteria japonica 又は Trautvetteria caroliniensis var. japonica)を含める植物と考えられている。[The Jepson Herbarium]

参考

1) Flora of North America
 Trautvetteria  
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=133299
2)GBIF
 Trautvetteria palmata Fisch. & E.Mey.  
https://www.gbif.org/species/7277057
3)Jepson Flora Project: Jepson Interchange
 Trautvetteria:T. caroliniensis (Walter) Vail var. occidentalis (A. Gray) C.L. Hitchc.  
https://ucjeps.berkeley.edu/cgi-bin/get_JM_treatment.pl?6434,6576,0,6577
4)The Jepson Herbarium
 Trautvetteria caroliniensis  
https://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_display.php?tid=46897
5)Trautvetteria caroliniensis - Plant Finder
 Trautvetteria caroliniensis  
http://www.missouribotanicalgarden.org/PlantFinder/PlantFinderDetails.aspx?taxonid=286171
6)#6 Southern Ridge and Valley Dolomite Seep ...
 #6 Southern Ridge and Valley Dolomite Seep  
https://www.segrasslands.org/blog/2017/12/13/6-southern-ridge-and-valley-dolomite-seep