マツナ 松菜

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Flora of Mikawa

ヒユ科 Amaranthaceae マツナ属

中国名 碱蓬 jian peng
学 名 Suaeda glauca (Bunge) Bunge
マツナ花
マツナ花
マツナの未熟な果実
マツナの葉
マツナ
マツナ果実と種子
花 期 8~10月
高 さ 40~100㎝
生活型 1年草
生育場所 海岸の塩湿地
分 布 在来種 本州(関東地方以西)、四国、九州、朝鮮、中国、ロシア
撮 影 田原市(渥美町)  06.6.25
新分類(APG)ではアカザ科はヒユ科に含まれるようになった。
 海水の影響する砂地に生え、塩湿地植物と呼ばれる。愛知県では絶滅危惧種ⅠA類に指定されていたが、2001年以降、激増し指定から除外された。
 茎は直立し、よく分枝する。葉は互生し、肉質、鮮緑色の線形で長さ1~3㎝。秋に小さな緑色の花が葉脇に1~2個、固まってつく。雄しべ5個、葯が黄色で目立ち、黄色の花のように見える。花被は5裂。上部の花には花柄があり、葉と基部が合着して葉から花が出ているように見える。胞果は花被に包まれて星形、熟すと直径約3㎜の球形に近くなる。種子は長さ約2㎜、黒色。
 同様な場所に生えるハママツナは草丈が低く、葉がオカヒジキと同様にやや太い。

マツナ属

  family Amaranthaceae - genus Suaeda

 1年草、亜低木、または低木、ときに粉白を帯び、無毛、まれに、毛がある。茎は直立、斜めに広がるか、または平伏する。葉は普通、無柄で線形、円柱形または半円柱形、まれにこん棒形またはわずかに扁平、肉質で、縁は全縁。花は小さく、両性、ときに雌性であり、普通、団散花序(glomerulus)に花が3~多数、これらは腋生または矮性で腋生の小枝につき、ときに、矮性の小枝の基部が葉の基部および団散花序に融着するため、葉柄から生じているように見える。小苞は花ごとに2個つき、白色、鱗片状、膜質。花被はほぼ球形、半球形、またはつぼ形、5深裂または浅裂し、わずかに肉質または草質。花被片は、外面が厚くなるか、翼状または角状になり、まれに変更されず、内側は凹面形または僧帽形。雄しべは5本。花糸は短く、扁平。葯は円筒形、楕円形、またはほぼ球形、付属体は無い。子房は卵形または球形。柱頭は2または3(~5)個、普通、反曲し、全体にパピラがある。胞果は花被に囲まれ、果皮は膜質、種子から分離する。種子は水平または垂直、レンズ形、腎形、卵形、または球形。種皮は薄い革質または膜質。胚は緑色また帯白色、平巻き(planospiral)で、細い。 外胚乳は乏しいか、または無い。x=9。
 世界に約90種あり、アジア、ヨーロッパ、北アメリカ、そして世界中の海岸に分布する。

マツナ属の主な種と園芸品種

1 Suaeda australis (R.Br.) Moq. ヒジキアカザ 
  synonym Suaeda nudiflora auct. non (Willd.) Moq.
 日本(?)、中国、台湾、南西アジア、オーストラリア原産。中国名は南方碱蓬 nan fang jian peng。英名はaustral seablite。
低木は小さく、高さは20~50㎝。茎は多数、分枝し、普通、下部に不定根があり、灰褐色~淡黄色、葉痕がはっきり残る。葉は普通、斜めに広がり、灰緑色または赤紫色、線形、真っすぐまたはわずかに曲がり、半円柱形、長さ1~2.5㎝×幅2~3mm、基部は漸尖し、関節があり、先は鋭形または鈍形。上部の葉は短く、狭卵形~楕円形、下面は凸面状、上面は平坦。団散花序(glomerulus)は腋生、花が1~5個つく。花は両性。花被は緑色または赤紫色、凹み、5深裂し、やや肉質。 花被片は卵状長円形、果時に厚くなり、脈はなく、縁は類膜質。葯は広卵形、長さ約0.5mm。花柱は不明瞭。柱頭は2個、反曲せず、黄褐色~黒褐色、ほぼ錐形に近く、パピラがある。胞果は扁球形、果皮は膜質、種子から分離する。種子は黒褐色、やや光沢があり、レンズ状で、直径0.8~1mm、わずかに穴がある。花期および果期は7~11月

2 Suaeda corniculata Bunge  モウコマツナ 
 中国、モンゴル、ロシア(南ヨーロッパ部分、南シベリア)、中央アジア、南東ヨーロッパ(南東ウクライナ)原産。中国名は角果碱蓬 jiao guo jian peng。

3 Suaeda glauca (Bunge) Bunge マツナ 松菜
  synonym Suaeda asparagoides (Miq.) Makino
 本州(関東地方以西)、四国、九州、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は碱蓬 jian peng。海水の影響する砂地に生え、塩湿地植物と呼ばれる。愛知県では絶滅危惧種ⅠA類に指定されていたが、2001年以降、激増し指定から除外された。
 1年草。高さ40~100㎝。茎は直立し、よく分枝する。葉は互生し、肉質、鮮緑色の線形で長さ1~3㎝。秋に小さな緑色の花が葉脇に1~2個、固まってつく。雄しべ5個、葯が黄色で目立ち、黄色の花のように見える。花被は5裂。上部の花には花柄があり、葉と基部が合着して葉から花が出ているように見える。胞果は花被に包まれて星形、熟すと直径約3㎜の球形に近くなる。種子は長さ約2㎜、黒色。花期は8~10月。

4 Suaeda japonica Makino シチメンソウ 七面草
 九州北部(有明海北部、北九州市~大分県)に分布する。海岸や河川の感潮域に生える塩生植物。別名はミルマツナ、サンゴジュマツナ。
 1月頃に芽吹き、緑色で成長し、秋に開花とともに全体が淡黄色~赤色に変色する。
 1年草。茎は直立し、下部から分枝する。高さは20~40cm。葉は無柄、多肉質、こん棒形、長さ1~4㎝×幅2~4㎜、先は丸いかまたは鈍形。花は小さく、上部の葉腋付近に雄花と雌花が混じって2~10個集まってつく。萼は5深裂し、裂片は卵状円形、肉質で果時に直径約4mm。種子は扁球形、黒色、直径1.5~2mm。2n=18(2倍体)。花期は9~10月。

5 Suaeda malacosperma H.Hara ヒロハマツナ 広葉松菜
  synonym Suaeda maritima (L.) Dumort. var. malacosperma (H.Hara) Kitam.
 本州西部(愛知県、兵庫県、岡山県、広島県、山口県)、九州(福岡県、大分県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県)、韓国原産。河口付近や内湾の塩性湿地に生える。愛知県の絶滅危惧ⅠA類。
 1年草。茎は基部が直立し、多数、分枝し、高さ10~30㎝。葉はやや密に互生し、葉身は長楕円形~広線形、扁平、長さ約3.5㎝×幅2.5~4mm、縁は全縁、光沢が無く、灰白色。秋に葉が淡赤色に紅葉する。花は上部の葉腋に1~5 個かたまってつく。萼は肉質で5深裂する。胞果は扁球形、直径 2~2.5mm、花被に包まれる。種子は白色で、光沢がなく、直径約1.5mm。花期は 10~11月。

6 Suaeda maritima (L.) Dumort. ハママツナ 浜松菜 [広義]
  synonym Suaeda maritima (L.) Dumort. var. australis auct. non (R.Br.) Domin
  synonym Suaeda australis auct. non (R.Br.) Moq.
 本州(宮城県以西)、四国、九州、沖縄、ニュージーランド、アジア(アラビア)、ヨーロッパ、アフリカ、北アメリカ原産。英名はherbaceous seepweed , annual seablite , white sea-blite。別名はシマハママツナ。海水の影響する砂地に生える。  1年草。高さ20~60㎝。葉は互生し、多肉質の線形で長さ1~4㎝、幅約1㎜、先は刺状に尖らない。花は緑色、茎の上部の葉腋に数個、固まってつく。花被片5個、雄しべは花被片と対生。果実(胞果)は直径約2㎜の扁平な球形、1種子をもつ。種子は長さ約1.4(1.3~1.6)㎜、暗褐色、光沢がある。晩秋には全草が赤くなって目立つ。2n=36(ヨーロッパ)。花期は9~10月。
6-1 Suaeda maritima (L.) Dumort. subsp. asiatica H.Hara  ハママツナ 浜松菜
 本州中部以西、九州、朝鮮に分布。普通、1年生で2年生になることがあっても多年生にはならない。2n=18。

7 Suaeda salsa (L.) Pall.  ホソバハママツナ
  synonym Suaeda heteroptera Kitag.
  synonym Suaeda liaotungensis Kitag. リョウトウマツナ
 韓国、中国、モンゴル、アジア、ヨーロッパ原産。中国名は盐地碱蓬 yan di jian peng。

参考

1) Flora of China
 Suaeda
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=131865
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Suaeda
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:331991-2
3) World Flora Online
 Suaeda
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000037035;jsessionid=0B1A6816E3B589B2DD287B845379B20F
4) Flora of North America
 Suaeda
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=131865
5) 植物研究雑誌 38(4): 113–116(1963)
 原寛,黒澤幸子:日本植物の細胞分類学的予察 (2)シチメンソウとハママツナ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_038_113-116.pdf
6) 植物研究雑誌 84(1): 050–054(2009)
 移入と思われる伊勢湾のマツナ (アカザ科) 藤井伸二, 水野知巳
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_084_050_054.pdf
7) 植物研究雑誌 96(3): 180-182(2021)
 黒田啓太,小澤 潤 : 四国初記録のヒロハマツナ(ヒユ科)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB96-3_180-182_abstract.pdf