マメグンバイナズナ 豆軍配薺

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Flora of Mikawa

アブラナ科 Brassicaceae  マメグンバイナズナ属

別 名 セイヨウグンバイナズナ、コウベナズナ
中国名 北美独行菜 bei mei du xing cai
英 名 common peppergrass, poor-man's-pepper,Virginia pepper-weed
学 名 Lepidium virginicum L.
マメグンバイナズナ花
マメグンバイナズナ花2
マメグンバイナズナ萼
マメグンバイナズナ萼の毛
マメグンバイナズナ果実
マメグンバイナズナ未熟な種子
マメグンバイナズナ花序の茎
マメグンバイナズナ
マメグンバイナズナ茎上部の葉
マメグンバイナズナ茎下部の葉
マメグンバイナズナ根生葉
マメグンバイナズナ種子
花 期 5~6月
高 さ 20~50㎝
生活型 越年草
生育場所 道端、畑
分 布 帰化種 北アメリカ原産
撮 影 蒲郡市 11.6.10
明治時代中期に渡来したもの。和名の由来は果実の形が相撲で使う軍配の形に似ていることから。茎は直立し、よく分岐し、毛がまばらにあるが、腺毛はない。根生葉は羽状に深裂し、ロゼットを形成し、花期には普通、根生葉は見られない。茎葉は互生し、無柄で粗く不規則な鋸歯があり、長楕円形、茎上部の葉ほど小さく鋸歯が少ない。花は直径約3㎜の白色の4弁花。萼片も4個で、4個の背にわずかに毛がある。雄しべは2~4個。果実は長さ約3㎜の円形で、扁平、縁に翼があり、左右2室に分かれる。種子は果実の1室に1個入り、両面に1本の浅い曲がった溝があり、翼がある。2n=32。
 キレハマメグンバイナズナは茎葉が1~2回羽状に深裂し、種子の背側に鰭がある。ヒメグンバイナズナは茎に腺毛があり、花弁が微小又は無く、果実が惰円形、種子に翼がない。ダイコクマメグンバイナズナは花弁が無いか、細いへら形、果実は惰円形、種子は狭卵形で、翼がない。コバノコショウソウは葉が羽状に深裂し、種子に翼がない。

マメグンバイナズナ属

  family Brassicaceae - genus Lepidium

 1年草、2年草、又は多年草、ときに亜低木、まれに低木又はつる性。毛状突起は無いか又は単純。茎は直立~斜上、ときに這い、単純又は基部や先で分枝する。根生葉はロゼットになるか又はならず、単葉、全縁又は羽状全裂する。茎葉は葉柄が有又は無、基部はくさび形、漸尖形、耳形、矢じり形、又は抱茎、縁は全縁、歯状又は全裂。総状花序は苞が無く、散房花序状、果時に長くなるか又はならない。果時の花柄は円柱形、扁平、又は翼があり、直立又は散開する。萼片は卵形~長円形、まれに円形、側対の基部は袋状にならない。花弁は白色、黄色、又はピンク色、直立又は開出し、ときに未発達又は無い。花弁の弁部は倒卵形、へら形、長円形、倒披針形、円形、線形、又は糸状、先は鈍形、円形、又は凹形。爪部は無いか又は明瞭。雄しべは2個で中央、ときに6個で4強又はほぼ等長、まれに4個で全て中央又は2個が中央で2個が側部。葯は卵形~長円形。蜜腺は4又は6個、分離、中央の蜜腺は常にある。胚珠は子房に2個、頂生胎座。果実は裂開性の短角果(silicle)、長円形、卵形、倒卵形、心形、倒心形、楕円形、又は円形、強く狭い隔壁がある(angustiseptate)。バルブは脈が無く又は脈が明瞭にあり、竜骨は有又は無、先に翼があるか又は無い。レプルム(replum:果実のバルブを分ける薄い隔壁)は円い。隔壁は完全又は穴があり、膜質。花柱は無く、廃れ、又は明瞭、果実の先のノッチから突き出ないか又は突き出る。柱頭は頭状、全縁又はまれに2裂。種子は室に1個、翼があるか、縁があり、又は翼がなく、長円形~卵形、丸みがあるか又は扁平。種皮は平滑、小さな網目があるか、又はパピラがあり、普通、湿ると粘る。子葉は背位(incumbent)又はまれに側位(accumben)又は回折(diplecolobal)。
 世界に約180種があり、南極大陸を除き、全ての大陸に分布する。

マメグンバイナズナ属の主な種と園芸品種

1 Lepidium africanum (Burm.f.) DC. ダイコクマメグンバイナズナ 大国豆軍配薺

 アフリカ原産。英名はcommon peppercress。
 2年草または短命な多年草、淡緑色または黄緑色、高さ15~75㎝、茎は1~数本、上部でのみに分枝し、枝には微細な毛があるかまたは、平滑。ロゼット状の根生葉は長さ10cmまで、倒披針形、粗い鋸歯状、頂点近くに数個の大きな歯があり、無毛また柔毛があり、葉柄があり、葉柄には縁毛がある。 茎葉は根生葉に似ているが、より小さい。上部の茎葉は鋸歯状でなく、多くの場合、頂点近くに数本の歯があるだけ、または全体が無毛または柔毛がある、葉柄は縁毛がある。総状花序は頂生、果時に長くなり、緩くまたは密、花序軸は無毛または柔毛がある。 小花柄は上面にほとんどが柔毛があり、果時に長さ1.5~3.5mm、斜上または弓状。萼片は長さ0.6~0.9㎜、長円形、緑色または紫色を帯び、縁が膜質。花弁は長さ0.2~0.5㎜、線状長円形、白色。雄しべは2本。花糸は錐形。 蜜腺は小さく、三角形または細長い三角形。長角果は長さ1.8~2.7㎜x幅1.3~1.9㎜、広卵形~卵状長円形、浅い凹形。花柱は切れ込みより短いかまたは同長(非常にまれに花柱が縁を越えてちょうど突き出す)。 種子は長さ1~1.3㎜x幅0.5~0.7㎜、黄褐色または赤褐色。

2 Lepidium apetalum Willd. ヒメグンバイナズナ 姫軍配薺
 日本、韓国、中国、モンゴル、インド、ネパール、パキスタン、カザフスタン原産。中国名は独行菜 du xing cai。
 1年草又は2年草。高さ(5~)10~25(~40)㎝、微軟毛(puberulous)があり、毛状突起はこん棒形又は頭状。茎は直立、基部や上部で分枝する。根生葉は葉柄が長さ(0.5~)1~3㎝、葉身は長円形、披針形、又は等披針形、長さ1.5~4(~5)㎝×幅0.7~1.2(~1.5)㎝、羽状中裂又は歯状。上部の茎葉は無柄、葉身は狭披針形、線状長円形、又は線形、長さ0.6~3(~4)㎝×幅1~3(~5)㎜、基部は類耳形またはときにくさび形、縁は間隔の開いた鋸歯縁又は全縁、先は鋭形~類鈍形。果時の花柄は細く、しばしば反曲し、長さ2~4(~5)㎜、上面だけに微軟毛があり、こん棒形又は頭状の毛状突起をもち。わずかに扁平、又は狭い翼がある。萼片は早落性、長円形、長さ0.7~0.8㎜×幅0.3~0.4㎜、無毛又は微軟毛があり、縁や先が白色。花弁は無く又は未発達、線形、長さ約0.3㎜。雄しべは2本、長さ0.7~0.8㎜。葯は広卵形、長さ0.1~0.2㎜。果実は広楕円形、長さ2.2~3.1㎜×幅1.7~2.3㎜、中間で最も幅が広く、先は狭い翼があり、先端のノッチは0.1~0.3㎜。花柱は先のノッチから突き出ず、長さ0.05~0.15㎜。種子は赤褐色、卵状長円形、長さ1.1~1.3㎜×幅0.6~0.8㎜、翼は無く、細かいパピラがある。子葉は背位(incumbent)。花期は4~8月。果期は5~9月。

3 Lepidium bonariense L.  キレハマメグンバイナズナ 切葉豆軍配薺
 南アメリカ原産。英名はArgentine pepperweed。
 1年草、越年草。高さ30~50㎝。茎は直立してよく分岐し、毛があるが腺毛はない。葉は1~2回、羽状に細裂し、葉縁や脈上に細毛がある。枝先に総状花序を上向きに多数つける。花序軸には白毛がある。花は雌しべ1個、雄しべ2個。小形の白色の花弁4個だが、3個のものやほとんど花弁が無いものもある。萼片4個のうち1個だけの背に白毛がある。開花に近い蕾は萼片の白毛が目立つ。果実が大きくなると萼片は脱落する。果実は長さ2.5㎜、扁平な円形で、上半部に翼があり、中央に隔壁があって、2室に分かれ、種子が1個ずつ入る。完熟して、種子が落ちると隔壁だけが残る。種子の外側部分に翼がある。花期は5~6月。

4 Lepidium campestre (L.) R.Br. ウロコナズナ 鱗薺
 中国(黒竜江省、遼寧省、山東省)、ロシア、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は绿独行菜 lu du xing cai。畑、道端、牧草地、荒地、荒地、山の斜面に生える。
 1年草または2年草、高さ(8~)12~50(~60)㎝、粗毛が密にあり、開出毛をもつ。茎は直立し、単純または上部で分枝する。根生葉はロゼットになる。葉柄は長さ(0.5~)1.5~6㎝。葉身は倒披針形または長円形、長さ(1~)2~6(~8)㎝×幅0.5~1.5㎝、基部は漸尖し、縁は全縁、羽状中裂または頭大羽状、先は鈍形またはほぼ鋭形。茎葉は無柄、葉身は長円形、披針形、または狭三角状披針形、長さ(0.7~)1~4(~6.5)㎝×幅(2~)5~10(~15)㎜、基部は矢じり形状または耳があり、縁は歯状またはほぼ全縁、先は鋭形~ほぼ鈍形。果時の小花柄は細く、水平につき、長さ(3~)4~8(~10)㎜、毛がある。萼片は長円形、長さ(1~)1.3~1.8㎜、直立~斜上し、有毛または無毛。花弁は白色、へら形、長さ(1.5~)1.8~2.5(~3)㎜×幅(0.2~)0.5~0.7㎜、基部に爪部があり、先は円形。雄しべは6本。花糸は長さ(1.2~)1.5~1.8(~2)㎜。葯は長円形、長さ0.3~0.5㎜。果実は卵形または広長円形、中間より上で内側に曲がり、長さ(4~)5~6(~6.5)㎜×幅(3~)4~5㎜、上部に翼があり、先は凹形、バルブは小胞があり(vesicled)、翼は長さ1~2㎜。花柱は基部で翼と融合し、自由部分は長さ0.2~0.5(~0.7)㎜、先のノッチに含まれる。種子は暗褐色、長円形、長さ2~2.3(~2.8)㎜×幅1~1.3㎜、パピラがあり、翼はない。子葉がある。花期は5~6月。果期は6~8月。2n=16。

5 Lepidium cartilagineum (J.Mayer) Thell. アツバナズナ 厚葉薺
 中国(内モンゴル、新疆)、モンゴル、ロシア、パキスタン、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は碱独行菜 jian du xing cai。標高400~1000mの塩分の多い低地または草原に生える。
 多年草、高さ(10~)15~35(~40)㎝、思春期、乳頭状または湾曲した毛状突起を持つ。 尾部には前年の繊維質の葉柄の残骸がある。 茎は直立し、分枝する。 根生葉は発声し、多肉質で持続性があります。 葉柄は長さ1.5~5(~7)㎝。 葉身は卵形、長円形、または楕円形、長さ(0.7~)1.7~4(~5)㎝×幅(0.5~)0.8~1.5(~2.2)㎝、通常無毛、基部は楔形または漸尖形、縁は全縁、先は鋭形または鈍形。茎葉は無柄。葉身は楕円形、長円形、または披針形、長さ0.2~4.7㎝×幅1~9㎜、無毛またはほぼ伏した毛状突起を持ち、基部は通常、抱茎、縁は全縁、先は鋭形。果時の小花柄は散開し、真っすぐまたはわずかに曲がり、長さ3~6㎜、上面に毛がある。萼片は長円形、長さ1~1.2㎜×幅約0.5㎜、直軟毛があり、縮れた毛状突起を持ち、縁と頂点は白色、先は鋭形。花弁は白色、倒卵形または倒披針形、長さ1~1.6㎜×幅0.3~0.8㎜、先は円形、爪部は不明瞭。雄しべは6本。花糸は長さ0.8~1.1㎜。葯は長円形、長さ0.2~0.3㎜。果実は卵形、長さ2.3~3.3㎜×幅2.1~2.7㎜。バルブは無毛、網状脈が目立ち、翼は長さ0.1~0.2㎜、先のノッチは長さ0.05~0.2㎜。花柱は長さ0.2~0.4㎜、先のノッチから突き出る。種子は褐色~赤褐色、卵形、長さ1.3~1.7㎜×幅0.7~1㎜、パピラがある。子葉がある。花期は8月。2n=16。

6 Lepidium densiflorum Schrad. コマメグンバイナズナ 小豆軍配薺
 北アメリカ原産。中国名は密花独行菜 mi hua du xing cai。韓国、モンゴル、ロシア、タジキスタンなどに帰化。海抜3800mまでの海岸、砂地、道端に生える。
 1年草または2年草、高さ(10~)25~50(~65)㎝、微軟毛があり、微細な真っ直ぐなパピラがあり、まれに無毛。茎は直立し、上部で分枝する。根生葉はロゼットになり、早く枯れる。葉柄は長さ0.5~1.5(~2)㎝。葉身はしばしば、倒披針形、まれにヘラ形または長円形、長さ(1.5~)2.5~8(~11)㎝×幅5~10(~20)㎜、基部は漸尖形、縁には粗い鋸歯または羽状中裂し、先は鋭形。茎葉は短い葉柄がある。葉身は狭倒披針形または線形、不規則な小鋸歯または歯があり、まれにほぼ全縁、茎上部ではサイズが小さくなる。花序は密、花序軸はパピラが真っ直ぐ、細く、またはほぼこん棒形。果時の小花柄は細く、散開し、わずかに反り返り、やや平らで、長さ(1.5~)2~3.5(~4)㎜、微軟毛または内面にパピラがある。萼片は長円形、長さ0.5~0.8(~1)㎜×幅0.3~0.5㎜、無毛または先付近にまばらに直軟毛があり、縁は白色。花弁は通常はなく、まれに糸状で長さ0.3~0.9㎜。雄しべは2本。花糸は糸状、長さ0.6~1㎜。葯は卵形、長さ0.1~0.2㎜。果実は倒卵形~倒卵状ほぼ円形、長さ(2~)2.5~3(~3.5)㎜×幅1.5~2.5(~3)㎜、中間より上で最も幅が広く、先は鈍形または凹形、先の翼は長さ約0.5mm、先のノッチは長さ0.2~0.4㎜。花柱は長さ0.1~0.2㎜、先のノッチに含まれる。種子は褐色、卵形、翼が無くまたは不明瞭な翼があり、長さ1.1~1.3(~1.5)㎜×幅0.8~0.9㎜。子葉が存在する。花期は5~6月。果期は6~7月。2n=32。

7 Lepidium didymum L. カラクサナズナ 唐草薺
 南アメリカ原産。英名はlesser swinecress。別名はカラクサガラシ、インチンナズナ。ヨーロッパ、アジア、北アメリカ、アフリカ、オーストラリアなど世界の温帯地域に広く帰化している。ヨーロッパ原産という説もある。日本では明治時代に見つかり、現在では関東地方以西に広く分布している。全体に独特の臭みがあり、牛が食べると、牛乳に異臭がついてしまうため、強害雑草とされている。
2年草。高さ10~20(45)㎝。茎は根元から分枝して、斜上する。茎葉は長さ1~6(8)㎝、2回羽状全裂。裂片は披針形。葉腋から花序を出し、淡黄白色の直径約1㎜の小さな花を多数つける。萼片は4個、長さ0.5~0.7(0.9)㎜の卵形。花弁は4個、黄白色、長さ0.4~0.5㎜、幅約1㎜、先が尖った長楕円形~線形。雄しべ2個。果実は長さ1.3~1.7㎜、幅2~2.5㎜、眼鏡形、扁平、翼は無く、表面に幅0.2~0.4㎜の窪みがある。小果柄は長さ1.4~1.7㎜。種子は長さ1~1.2㎜、卵形。花期は4~5月。

8 Lepidium draba L. アコウグンバイ
 中国、ロシア、カシミール、パキスタン、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ、北アフリカ原産。中国名は群心菜 qun xin cai。英名はwhitetop, hoary cress, Thanet cress。標高0~3300mの山の斜面、道端、畑、農地、小川の畔、荒れ地、牧草地、荒地に生える。北アメリカ、南アメリカ、オーストラリアに帰化。
 多年草。(根茎性) 粗毛があるかまたは無毛。茎はしばしば基部から単純で、直立または基部が傾伏し、上部で(数個)分枝し、高さ(8~)20~65(~90)㎝。 根出葉(早く枯れ)は、ロゼットにならない。葉柄は長さ1~4cm。葉身は倒卵形、へら形、または卵形、長さ(1.5~)3~10(~15)㎝×幅10~40㎜、縁は波状~歯状または全縁。茎葉は無柄。葉身は卵形、楕円形、長円形、または披針形、倒披針形、または倒卵形、長さ(1~)3~9(~15)㎝×幅(5~)10~20(~50)㎜、基部は矢じり状抱茎または耳があり、縁は歯状 または全縁(表面が有毛または無毛)。 総状花序(散房花序状の円錐花序)、果時にわずか~またはかなり長くなる。花序軸は無毛または微軟毛があり、毛状突起は真っすぐまたは曲がり、円筒形。果時の小花柄は斜上~水平、真っ直ぐ、(円柱形)、長さ5~10(~15)㎜×幅0.2~0.3㎜、上面は無毛またはまばらに軟毛がある。花:萼片は長円形~卵形、長さ1.5~2.5㎜×幅0.7~1.2㎜。花弁は白色、倒卵形、長さ(2.5~)3~4(4.5)㎜×幅(1~)1.3~2(~2.2)mm、爪部は長さ1~1.7㎜。雄しべは6本。花糸は長さ2~3 mm (無毛)。葯は長さ0.4~0.5㎜。 果実(非裂開)、心形~亜腎形、長さ(2~)2.5~3.7(~4.3)㎜×幅(3.2~)3.7~5(~5.6)㎜、頂端(鈍形~亜鋭形)、翼はなく、頂端の切れ込みは無い。バルブは薄く、平滑、網状脈があり、無毛。花柱は長さ(0.6~)1~1.8(~2)㎜。種子は卵形、長さ1.5~2.3㎜×幅1~1.3㎜。2n=32, 64。花期は4~8月。

9 Lepidium englerianum (Muschler) Al-Shehbaz ハマガラシ 浜辛子
  synonym Coronopus integrifolius Spreng.
 アフリカ、マダガスカル原産。英名はgarden cress , peppergrass。別名はヤンバルガラシ。
 多年草、平伏、傾伏、または直立し、高さは最大30㎝まで。茎と枝は微軟毛があり(puberulous)、毛は透明ときにこん棒形。根生葉は密なロゼットになり、開花前に頻繁に枯れ、櫛状に7~15裂し、裂片は半月形で、全縁または浅い歯があり、上面は微軟毛がある。茎上部では次第に葉が小さくなり、分裂~歯が少なくなる。茎葉は長さ0.5~7.5㎝×幅1~5㎜、披針形~倒披針形、全縁、先は鋭形、基部は楔形で、下半分の縁に数本の毛がある。総状花序は多数の花がつき、初めは密集して収縮し、果時には長さ10㎝までになる(劣悪な条件ではかなり縮小し、かろうじて長さ1㎝になる)。花序軸には柔毛がある。萼片は長さ0.7~0.8㎜、緑白色または紫色を帯びる。花弁は萼片よりわずかに長く、白色。雄しべは2本。花糸は錐形。角果(siliculae)は長さ1~3㎜の直立した小花柄の上につき、ほぼ球形の2個の半分(halves)に分かれ、それぞれ直径(0.5~)0.8~1㎜、竜骨があり、いぼ状または穴がある(まれにほぼ平滑かまたはパピラがある)。花柱は切れ込みから突き出るまたは突き出ない。花期は9~3月。

10 Lepidium fasciculatum Thell. タマザキマメグンバイナズナ 玉咲豆軍配薺

 オーストラリア原産。英名はbundled peppercress , fascicled peppercress。広範囲に分布し点在する。三重県で採取された。
 1年草、高さ60cmまで。茎は通常無光沢で、若い時には針状の毛(acicular hairs)がある。根生葉は長さ8㎝までで、まれに宿存し、羽状全裂~2回羽状複葉、裂片は線形、歯があり、針状の毛ある。茎葉は長さ2~6㎝、線形、無柄、全縁、縁にパピラがある。花序は散房花序、伸長しないで、直径約1㎝の頭状。萼片の長さ0.5~1㎜。花弁は減ったり、無くなったりする。雄しべは通常 2本、短角果は扁平、倒卵形、長さ3~4㎜×幅約2mm、翼は上半分はごくわずかにあり、先に小さなノッチがある。小花柄は直立し、花時に長さ1~2㎜、果時に長さ2~3(3~4)mm、平らで無毛。種子は各室に1個、褐色、長楕円形、長さ1.2~1.5㎜×幅0.6~0.7㎜。

11 Lepidium latifolium L. ベンケイナズナ 弁慶薺
  synonym Lepidium sibiricum Schweigg.
  synonym Lepidium latifolium L. var. affine (Ledeb.) C.A.Mey.
 中国(甘粛省、河北省、黒竜江省、河南省、遼寧省、内蒙古、寧夏、青海省、陝西省、山東省、山西省、四川省、新疆、西蔵)、モンゴル、ロシア、インド、カシミール、パキスタン、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア、南ヨーロッパ、北アフリカ原産。中国名は宽叶独行菜 kuan ye du xing cai。標高100~4300mの野原、道端、斜面、塩分を含んだ牧草地に生える。
 多年草、高さ(20~)35~120(~150)㎝。茎は直立し、上部で多数分枝し、基部はわずかに木質で、無毛または毛があり、しばしば白っぽくなる。葉は革質。 基部および下部の茎葉の葉柄は長さ1~7(~11)㎝。葉身は楕円形、卵形または長円形、長さ(2~)3.5~15(~25)㎝×幅(0.5~)1.5~5(~8)㎝、無毛または毛があり、通常湾曲した毛状突起を持ち、基部は漸尖形、縁は通常鋸歯があり、先は鈍形~ほぼ鋭形。上部の茎葉はほぼ無柄または無柄。葉身は楕円形~卵形、長楕円形、または披針形、長さ1~9㎝×幅0.3~4.5㎝、基部は楔形、耳はなく、縁は円鋸歯があるかまたは全縁、先は鋭形。花序は円錐花序、最終枝はほぼ頭状。果時の小花柄は細く、長さ2~5(~6)㎜、無毛またはまれに毛がある。萼片は落葉性、長円形またはほぼ円形、長さ1~1.4㎜×幅0.8~0.9㎜、無毛または毛があり、縁と先は白色。花弁は白色、倒卵形、長さ1.8~2.5㎜×幅(0.8~)1~1.3㎜、先は円形、爪部は長さ0.7~1㎜。 雄しべは6本。花糸は長さ0.9~1.4㎜。葯は卵形、長さ0.4~0.5㎜。果実は長円状楕円形、卵状楕円形、またはほぼ円形、長さ(1.6~)1.8~2.4(~2.7)㎜×幅1.3~1.8㎜、有毛または無毛、竜骨(carinate)はなく、翼がなく、基部は円形、先のノッチは無いか廃れる。花柱は廃れる。種子は薄褐色、長円形、長さ(0.8~)1~1.3㎜×幅0.7~0.9㎜、扁平、翼がなく、細かいパピラがある。子葉が存在する。花期は5~9月。果期は6~10月。2n=24。

12 Lepidium perfoliatum L. コシミノナズナ
 日本(北海道、四国、九州)、中国、ロシア、インド、パキスタン、アフガニスタン、カザフスタン、キルギススタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ、北アフリカ原産。中国名は抱茎独行菜 bao jing du xing cai。
 1年草又は2年草、高さ (7~)15~40(~65)㎝、全体に無毛又は下部にまばらに軟毛があり、しばしばわずかに粉白色。茎は直立、基部は1本、上部で分枝する。葉は強く2形。根生葉と最下部の茎葉は葉柄が長さ(0.5~)1~2(~4)㎝、葉身は2~3回羽状中裂又は羽状全裂、長さ (1~)3~8(~15)㎝、最終裂片は線形~狭長円形。上部の茎葉は無柄、葉身は広卵形、心形、又はほぼ円形、長さ(0.5~)1~3(~4)㎝×幅(0.5~)1~2.5(~3.5)㎝、基部は深い心形で抱茎 、縁は全縁、先は鋭形。果時の花柄は散開し、長さ3~5(~7)㎜、細く、真っすぐ、無毛、円柱形。萼片は黄緑色、長円形、長さ0.8~1(~1.3)㎜×幅0.5~0.8㎜。花弁は黄色、狭へら形、長さ1~1.5(~1.9)㎜×幅0.2~0.5㎜、基部は漸尖し、爪部は長さ約0.5㎜。雄しべは6本、花糸は長さ0.6~0.9㎜。葯は長さ0.1~0.2㎜。果実は菱形又は円形、長さ3~4.5(~4.8)㎜×幅3~4㎜、上部に狭い翼があり、翼は上部で幅0.2~0.4㎜、先端のノッチは約0.3㎜。花柱は長さ0.1~0.3㎜、先端のノッチと同長又は短い。種子は暗褐色、卵形、長さ1.6~2(~2.3)㎜×幅1.2~1.4㎜、周囲全体に狭い翼があり、子葉は背位(incumbent)。花期は3~6月。果期は5~7月。2n=16。

13 Lepidium pinnatifidum Ledeb.  ニセマメグンバイナズナ
 ヨーロッパ、中央アジア、中東原産。英名はfeatherleaf pepperweed。標高0~600mの荒廃した場所、荒らされた場所に生える。
 1年草。 思春期の。 茎は基部から単純で、直立し、基部を越えてまたは上部を越えて(円錐花序状に)分枝し、高さ20~60㎝。 根出葉(多くの場合開花前にすぐに枯れる)はロゼットにならない。葉身は歯状~羽状中裂する。茎葉は短い葉柄があるか、無柄。葉身は狭倒披針形~線形、長さ1~3.3㎝×幅1~4㎜、基部は漸尖し、耳はなく、縁は全縁。総状花序(しばしば円錐花序)は果時にかなり長くなる。花序軸は無毛または微軟毛があり、毛状突起は真っ直ぐ、円筒形。果時の小花柄は散開して斜上~水平、真っ直ぐ、(円柱形)、長さ2~3.5㎜×幅0.1~0.15㎜、上面に微軟毛がある。花:萼片は長円形、長さ0.7~0.8㎜×幅0.3~0.4㎜。花弁(未発達)は白色、線形、長さ0.4~0.6㎜×幅0.05~0.1㎜、爪部は無い。雄しべは4本、中央と側部。 花糸は長さ0.6~0.8mm。葯は長さ約0.2㎜。果実は円形~広楕円形、長さ1.8~2㎜×幅1.7~1.8㎜、先に翼がなく、先のノッチは深さ0.05~0.1㎜。バルブは薄く、平滑、脈がなく、まばらに直軟毛がある。花柱は長さ約0.1㎜、先のノッチと等長。種子は長円形、長さ1~1.2㎜×幅0.7~0.8㎜。花期は5~6月。

14 Lepidium ruderale L. コバノコショウソウ
 中国、モンゴル、ロシア、インド、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は柱毛独行菜 zhu mao du xing cai 。葉が羽状に深裂し、種子に翼がない。
 1年草又は2年草、高さ(5~)10~35(~55) ㎝、悪臭があし、微軟毛があり、円柱形のパピラがある毛状突起をもつ。茎は直立~斜上し、上部で分枝する。根生葉は葉柄が長さ1~2(~3)㎝、葉身は(1~)2~3回羽状全裂、長さ(1.5~)3~5(~6)㎝×幅 (0.5~)0.7~2(~2.5)㎝、縁毛を除いて無毛、最終裂片は長円形、縁は全縁又はまれに歯状、先は鋭形。上部の茎葉は無柄、葉身は線形、長さ(0.4~)1~2(~3)㎝×幅(0.3~)0.5~2.5(~3.5)㎜、まばらに軟毛があり、基部はくさび形、耳形にならず、縁は普通、全縁、縁毛があり、先は鈍形~類鋭形。果時の花柄は細く、散開し、真っすぐ又はわずかに曲がり、長さ (1.5~)2~4(~-5))㎜、全体に微軟毛がある。萼片は長円形、長さ0.5~0.9(~1)㎜×幅0.2~0.4㎜、微軟毛があり、パピラのある毛状突起をもち、縁や先は白色。花弁は無く、ときに未発達で長さ0.4㎜以下。雄しべは2本、花糸は長さ0.7~0.8㎜。葯は卵形、長さ0.1~0.2㎜。果実は広楕円形、長さ(1.5~)1.8~2.5(~3)㎜×幅1.5~2(~2.3)㎜、先に狭い翼があり、先端のノッチは0.1~0.2㎜。花柱は長さ0.1㎜以下、先端のノッチから突き出ない。種子は褐色、長円形~卵状長円形、長さ1~1.5㎜×幅0.6~0.7㎜、翼は無く、細かいパピラがある。子葉は背位(incumbent)。花期と果期は5~7月。2n=16, 32。
品種)  'Ofarim' (PBR)

15 Lepidium sativum L. コショウソウ 胡椒草
 パキスタン、西アジア、アラビア半島、北アフリカ(エジプト、エチオピア)、ヨーロッパ原産。中国名は家独行菜 jia du xing cai 。英名はgarden cress , pepperwort , tongue cress , town cress 。別名はガーデンクレス。
 1年草、高さ(10~)20~80(~100) ㎝。茎は直立、単純又は分枝し、上部にまばらに縮れた軟毛がある。根生葉はロゼットにならず、葉柄は長さ1~4㎝、葉身は形が様々で、1~2回羽状中裂~羽状全裂、長さ2~8(~10)㎝×幅1~3(~5)㎝、最終裂片は卵形~長円形、縁は歯状、先は鋭形。茎葉は葉柄があり、葉身は根生葉に似るが、分裂が少なく、側裂片は1~4対。最上部の葉はほぼ無柄、線形、縁は全縁。果時の花柄はほぼ直立、花序軸に伏せ、又は斜上し、真っすぐ、長さ1.5~4(~6)㎜、円柱形又はわずかに扁平、無毛。萼片は長円形、長さ1~1.8㎜×幅0.5~0.8㎜、無毛又は外面に軟毛がある。花弁は白色又はラベンダー色、へら形又は倒卵形。長さ2.5~3.5(~4)㎜×幅0.7~1.4㎜、基部は漸尖形。雄しべは6本、花糸は長さ1.5~2㎜。葯は長円形、長さ0.4~0.5㎜。果実は長円状卵形又は楕円形、長さ(4~)5~6(~7)㎜×幅3~4.5(~5.5)㎜、基部は円形、縁と先に広い翼があり、先端は凹形。翼は幅が先部で1~1.5㎜。先端のノッチは0.2~0.5㎜。花柱は長さ0.2~0.5(~0.8)㎜、翼から離れ、先端のノッチから突き出ず、又はまれに突き出る。種子は赤褐色、長円形、長さ2~2.6㎜×幅1~1.3㎜、翼は無い。子葉は背位(incumbent)、3裂する。花期は6~7月。果期は8~9月。2n=24, 32。
品種) 'Wrinkled Crinkled Crumpled'

16 Lepidium virginicum L. マメグンバイナズナ 豆軍配薺
 北アメリカ原産。中国名は北美独行菜 bei mei du xing cai 。英名はcommon peppergrass, poor-man's-pepper,Virginia pepper-weed。別名はセイヨウグンバイナズナ、コウベナズナ。明治時代中期に渡来したもの。和名の由来は果実の形が相撲で使う軍配の形に似ていることから。
 2年草。高さ20~50㎝。茎は直立し、よく分岐し、毛がまばらにあるが、腺毛はない。根生葉は羽状に深裂し、ロゼットを形成し、花期には普通、根生葉は見られない。茎葉は互生し、無柄で粗く不規則な鋸歯があり、長楕円形、茎上部の葉ほど小さく鋸歯が少ない。花は直径約3㎜の白色の4弁花。萼片も4個で、4個の背にわずかに毛がある。雄しべは2~4個。果実は長さ約3㎜の円形で、扁平、縁に翼があり、左右2室に分かれる。種子は果実の1室に1個入り、両面に1本の浅い曲がった溝があり、翼がある。2n=32。花期は5~6月。

17 その他ハイブリッド
品種) 'Emerald Beads'

参考

1) Flora of China
 Lepidium
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=118034
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Lepidium
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:329617-2
3)GRIN
 Lepidium
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=4440
4) Flora of North America
 Lepidium
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=112142
5) Flora of Victoria
 Lepidium africanum
https://vicflora.rbg.vic.gov.au/flora/taxon/fcbe10d3-db39-4f76-bd46-061d1f133d16
6)PlantNET - FloraOnline
 Lepidium fasciculatum Thell.
http://plantnet.rbgsyd.nsw.gov.au/cgi-bin/NSWfl.pl?page=nswfl&lvl=sp&name=Lepidium~fasciculatum
7)神奈川県立 生命の星・地球博物館
 三重県で採取された3種の日本新産帰化植物
https://nh.kanagawa-museum.jp/www/contents/1600215349455/simple/bul34-7.pdf